(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】充電保管庫
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20241028BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20241028BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H02J7/10 J
H02J7/02 G
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2020174039
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】511089136
【氏名又は名称】センターピア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 康之
(72)【発明者】
【氏名】上野 芳久
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-105475(JP,A)
【文献】特開2011-135679(JP,A)
【文献】特開2011-155755(JP,A)
【文献】特開2012-182930(JP,A)
【文献】特許第6741961(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0279273(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H02J 7/02
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル端末の備えるバッテリの充電に用いられる複数のアウトレットと、
前記アウトレットへの給電オン/オフを切り替える複数のスイッチと、
複数の前記スイッチを制御する制御部と、
前記モバイル端末の使用予定を記憶する予定記憶部と、を備え、
前記アウトレットはそれぞれ、複数の前記スイッチのうちのいずれかに接続されており、
前記スイッチはそれぞれ、複数の前記アウトレットへの給電オン/オフを同時に切り替え可能であり、
前記制御部は、前記使用予定に基づいて前記スイッチを制御することを特徴とする、
充電保管庫。
【請求項2】
授業科目ごとに設定された負荷度を記憶する負荷度記憶部をさらに備え、
前記予定記憶部は、前記使用予定として、授業の時間割に基づいた前記モバイル端末の使用予定を記憶し、
前記制御部は、
前記バッテリの満充電量、前記使用予定および前記負荷度に基づいた前記授業の開始時点における前記バッテリのバッテリ残量と、前記使用予定と前記負荷度とに基づいたその後の使用電力量と、を推定し、
前記バッテリ残量と前記使用電力量とに基づいて、前記授業の授業時間中に給電オンにする前記スイッチを決定する、
請求項1に記載の充電保管庫。
【請求項3】
前記制御部は、前記授業時間中において、前記バッテリ残量が前記使用電力量以下である前記バッテリの充電に用いられる前記アウトレットへ給電する前記スイッチをオンにする、
請求項2に記載の充電保管庫。
【請求項4】
前記制御部は、前記バッテリを充電する時間を、前記バッテリ残量の前記使用電力量に対する不足量に基づいて決定する、
請求項3に記載の充電保管庫。
【請求項5】
前記制御部は、授業時間中において前記バッテリを連続して充電する時間を、放課後において前記バッテリを連続して充電する時間よりも短くする、
請求項1に記載の充電保管庫。
【請求項6】
前記制御部は、前記スイッチのすべてをオフにした状態から一つの前記スイッチをオンにする、請求項1に記載の充電保管庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校の授業で用いられるタブレット型やノートブック型の持ち運び可能なパーソナルコンピュータを保管する際に充電する充電保管庫に関する。
【背景技術】
【0002】
今後、順次実施される予定の新学習指導要領においては、情報活用能力が言語能力と同様に「学習の基礎となる資質・能力」と位置付けられている。そして、学校のICT(Information and Communication Technology(情報通信技術))環境整備とICTを活用した学習活動の充実が明記されている。このような状況の下、近年、学校の授業において、タブレット型やノートブック型の持ち運び可能なパーソナルコンピュータ(以下、適宜、モバイル端末ともいう)を各生徒が用いることが検討されている。モバイル端末の保管には充電保管庫(電源キャビネット)が用いられ、保管時にモバイル端末のバッテリが充電される。
【0003】
しかし、充電保管庫は多数のモバイル端末を同時に充電した場合、供給電力の合計が充電保管庫に電力を供給する電源コンセントの許容最大電力を超えてしまう可能性がある。このため、充電保管庫が収納する多数のモバイル端末を充電するときに、全体または一部への電力を制限する方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、複数の端末装置のそれぞれとケーブルを介して情報通信を行い、電圧および電流の組み合わせを示す電力プロファイルにより複数の端末のそれぞれにケーブルを介して電力供給をする充電制御部を備えた、複数の端末装置に対する電力供給を制御する制御装置が記載されている。また、同文献には、複数の装置に対して輪番充電をさせるように、1または複数の装置についてのプロファイル設定指示を充電制御装置に与えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の充電制御装置は、複数の端末装置とケーブルを介して情報通信を行うことにより、接続されている端末装置の台数を検出して、例えば、供給可能な総電力量を、検出した台数で除算して平均電力量を算出し、端末装置のそれぞれについて電力プロファイルを設定するものである。この電力プロファイルを決定するには、充電制御装置と端末装置との間で所定の手続に従って種々の情報をやり取りする必要がある。さらに、輪番充電において、充電対象とする端末を決定する具体的なプロセスや、その際に考慮する要素について記載されていない。
そこで、本発明は、簡単な構成により、供給電力の合計が許容最大電力を超えないように、多数のモバイル端末を効率よく充電することができる充電保管庫の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を備えている。
(1)モバイル端末の備えるバッテリの充電に用いられる複数のアウトレットと、前記アウトレットへの給電オン/オフを切り替える複数のスイッチと、複数の前記スイッチを制御する制御部と、前記モバイル端末の使用予定を記憶する予定記憶部と、を備え、前記アウトレットはそれぞれ、複数の前記スイッチのうちのいずれかに接続されており、前記スイッチはそれぞれ、複数の前記アウトレットへの給電オン/オフを同時に切り替え可能であり、前記制御部は、前記使用予定に基づいて前記スイッチを制御することを特徴とする充電保管庫。
【0007】
(2)授業科目ごとに設定された負荷度を記憶する負荷度記憶部をさらに備え、前記予定記憶部は、前記使用予定として、授業の時間割に基づいた前記モバイル端末の使用予定を記憶し、前記制御部は、前記バッテリの満充電量、前記使用予定および前記負荷度に基づいた前記授業の開始時点における前記バッテリのバッテリ残量と、前記使用予定と前記負荷度とに基づいたその後の使用電力量と、を推定し、前記バッテリ残量と前記使用電力量とに基づいて、前記授業の授業時間中に給電オンにする前記スイッチを決定する、(1)に記載の充電保管庫。
【0008】
(3)前記制御部は、前記授業時間中において、前記バッテリ残量が前記使用電力量以下である前記バッテリの充電に用いられる前記アウトレットへ給電する前記スイッチをオンにする、(2)に記載の充電保管庫。
(4)前記制御部は、前記バッテリを充電する時間を、前記バッテリ残量の前記使用電力量に対する不足量に基づいて決定する、(3)に記載の充電保管庫。
(5)前記制御部は、前記授業時間中において前記バッテリを連続して充電する時間を、放課後において前記バッテリを連続して充電する時間よりも短くする、(1)に記載の充電保管庫。
【0009】
(6)前記制御部は、前記スイッチのすべてをオフにした状態から一つの前記スイッチをオンにする、(1)に記載の充電保管庫。
【0010】
(7)モバイル端末の備えるバッテリの充電に用いられる複数のアウトレットと、前記アウトレットへの給電オン/オフを切り替える複数のスイッチと、複数の前記スイッチを制御する制御部と、を備え、前記アウトレットはそれぞれ、複数の前記スイッチのうちのいずれかに接続されており、前記スイッチはそれぞれ、前記アウトレットへの給電オン/オフを切り替え可能であり、前記制御部は、前記バッテリのバッテリ残量に基づいて前記スイッチを制御することを特徴とする、充電保管庫。
(8)複数の前記アウトレットの使用履歴を記録する使用履歴記録部をさらに備え、前記制御部は、前記使用履歴に基づいて、前記使用履歴の長い前記アウトレットに接続される前記モバイル端末の前記バッテリの充電時間が長くなるように、前記スイッチを制御する、(7)に記載の充電保管庫。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モバイル端末の充電に用いられるアウトレットへの給電を切り替えるスイッチを制御して断続的に電力を供給することで簡単な構成により、最大電気容量の範囲内で多数のモバイル端末を効率よく充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】充電保管庫の扉を開いた状態の概要を示す斜視図
【
図2】第1の実施形態の充電保管庫の構成を模式的に示す機能ブロック図
【
図5】ログをネットに挙げてWEBで設定するシステムの構成例を示す模式図
【
図6】
図5に示すシステムにおける予定記憶部に使用予定を入力する画面の一例
【
図8】第2の実施形態の充電保管庫の構成を模式的に示す機能ブロック図
【
図9】一週間の時間割とモバイル端末の使用予定を示すテーブルの例
【
図11】推定したバッテリ残量および使用電力量に基づいてスイッチを制御する方法を示すフローチャート
【
図12】A~Dクラスの月曜日の使用予定テーブルと、授業時間中の充電対象クラスおよび充電時間の配分と、充電バッテリ残量の推定の推移と、を模式的に示す図
【
図13】第3の実施形態の充電保管庫の構成を模式的に示す機能ブロック図
【
図14】第4の実施形態の充電保管庫の構成を模式的に示す機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態について、以下、図を参照しつつ説明する。各図において、同一の部材には同じ番号を付して、適宜、説明を省略する。
図1は本実施形態の充電保管庫1の扉を開いた状態の概要を示す斜視図であり、
図2は充電保管庫1の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
これらの図に示すように、充電保管庫1は、アウトレット11、スイッチ(タイムスイッチ、TS)12、制御部13、予定記憶部14、通信部15、ブレーカ16および収納部17を備えている。
【0014】
アウトレット11は、モバイル端末2(
図5参照)のバッテリ充電に用いられるものであり、アウトレット11A1~11An、11B1~11Bn、11C1~11Cn、11D1~11Dnを備えている。以下では、これらを区別しない場合、アウトレット11と記す。アウトレット11は、例えば、コンセントタップやOAタップなどと同様の機能を備えており、収納部17に収納された状態のモバイル端末2のバッテリの充電に用いられる。
【0015】
スイッチ12は、スイッチ12A、12B、12Cおよび12Dを備えており、それぞれ、アウトレット11A1~11An、11B1~11Bn、11C1~11Cnおよび11D1~11Dnに接続されている。以下では、これらを区別しない場合、スイッチ12と記す。スイッチ12は、例えば、電磁コイルに電流を流したり、電流を遮断したりすることで、接点を開閉し、動作させる電磁開閉器(リレー)を用いることができる。
【0016】
制御部13は、所定のプログラムに従ってスイッチ12を制御するものであり、例えば、CPU(CentralProcessingUnit)、ROM(ReadOnlyMemory)およびRAM(RandomAccessMemory)等を含んで構成されている。
【0017】
予定記憶部14は、収納部17に収納されるモバイル端末2の使用予定を記憶するものであり、一般的なメモリを用いることができる。
【0018】
アウトレット11A1~11An、11B1~11Bn、11C1~11Cnおよび11D1~11Dnは、スイッチ12A、12B、12Cおよび12Dに接続されている。スイッチ12はそれぞれ、接続された複数のアウトレット11への給電オン/オフを同時に切り替え可能である。制御部13は、予定記憶部14に記憶された使用予定に基づいてスイッチ12を制御する。充電保管庫1は、スイッチ12A、12B、12Cおよび12Dの4つのスイッチ12により、アウトレット11を4つのグループ(系)に分けて給電を制御することができる。
【0019】
通信部15は外部の端末3や携帯端末4との直接またはネットワーク5を介した通信に用いられる(
図5参照)。充電保管庫1は、通信部15を備えているから、外部の端末3や携帯端末4を用いて、制御部13の制御条件や予定記憶部14への使用予定を入力することができる。なお、充電保管庫1が通信部15を備えていない場合、充電保管庫1が備える図示しない入力手段や表示手段を用いて、制御条件や使用予定を入力する。
【0020】
ブレーカ16は、例えば、充電保管庫1に所定値以上の電流が流れた場合に、電流を遮断するものであり、スイッチ12と外部のコンセントとの間に設けられている。例えば、所定値が15Aの場合、スイッチ12の切り替えの際に規定値よりも大きい値になってしまうオーバーシュートを考慮して、充電保管庫1の電流が7.5Aまででの使用を想定している。ブレーカ16は、所定値の15Aを超えると、コンセントからスイッチ12への電流を遮断する。
【0021】
充電保管庫1の電流7.5Aでの使用を想定した場合、充電の際に比較的大きな電力を要するノートPCをモバイル端末2として収納、充電するとき、充電に要する電力を65W程度とすると、各スイッチ12により給電オン/オフを同時に切り替えるアウトレット11を11個程度とすることができる。なお、同時に切り替えるアウトレット11の数は例示であり、ブレーカ16が遮断する電流の所定値、モバイル端末2の種類等に応じて設定すればよい。また、各スイッチ12により同時に切り替える、同じグループに属するアウトレット11の数は異なっていてもよいが、同種のモバイル端末2を収納、充電する場合、充電保管庫1の電流を所定値以下に維持しつつ、効率的に充電する観点から、略同じまたは同じであることが好ましい。
【0022】
収納部17は、複数のモバイル端末2を収納するものである。複数のモバイル端末2は、充電保管庫1の使用態様に応じて、所定の位置(スロット、隙間)に収納されたり、任意の位置に収納されたりする。
【0023】
図3および
図4は、授業時間中における充電の例を示す模式図および放課後における充電の一例を示す模式図である。
図3に示す例では、制御部13は、授業時間中におけるモバイル端末2を連続して充電する時間を14分間とし、同じグループに属するアウトレット11に接続された複数のモバイル端末2を単位として、輪番充電する。対して、
図4に示す例では、放課後においてモバイル端末2を連続して充電する時間を1時間59分として、同様に輪番充電する。
【0024】
授業時間中における連続充電時間を短くすることで、多くのモバイル端末2を充電対象とすることができる。このため、授業時間中に多くのモバイル端末2につぎ足し充電を行い、使用可能な状態を維持できる。また、放課後における連続充電時間を長くすることで、各モバイル端末2のバッテリを満充電にできる。
【0025】
本実施形態において、授業時間中とは、昼休みなどを含めた学校の正規活動中の時間をいい、放課後とは学校の正規活動中以外の時間をいう。制御部13は、予定記憶部14の使用予定に基づいて、授業時間中と放課後とを区別することができる。なお、
図4の例では8時から16時までを授業時間中とし、16時から翌日の8時までを放課後としている。
【0026】
図3、
図4に示すように、制御部13は、すべてのスイッチ12をオフにした状態から一つのスイッチ12をオンにする。これにより、大きな電流が流れる時間が断続的になるから、スイッチ12への負荷を抑えてスイッチ12の製品寿命を延ばすことができる。
【0027】
図5はログをネットに挙げてWEBで設定するシステムの構成例を示す模式図である。本実施形態の充電保管庫1は通信部15を備えている(
図2参照)。このため、外部の端末3や携帯端末4を用いて、直接通信またはネットワーク5を介した通信により、予定記憶部14に使用予定を入力することができる。
【0028】
図6は
図5に示すシステムにおいて、予定記憶部14に使用予定を入力する画面の一例である。同図では、学校の正規活動の開始時間および終了時間を使用予定として入力する例を示している。これにより、授業時間中と放課後とにおける充電方法を制御すること、例えば、連続して充電する時間を異ならせることができる(
図3、
図4参照)。
【0029】
図7は、充電保管庫1の制御部13による輪番充電の他の例を示す模式図である。同図に示すように、制御部13は、スイッチ12A、12B、12Cおよび12Dの連続充電時間を異なるようにしてもよい。同図には、一例として、スイッチ12A、12B、12Cおよび12Dの連続充電時間を、この順に、25分間、14分間、9分間および4分間とする場合を示している。このように、スイッチ12をオンにして連続充電する時間を異ならせることにより、モバイル端末2のバッテリ残量に応じて効率的な充電が可能となる。
【0030】
図7の輪番充電では、充電保管庫1に収納する際、使用者にモバイル端末2のバッテリ残量を確認してもらう。そして、バッテリ残量に応じて所定のアウトレット11に接続してもらうことにより、必要に応じて効率よく充電できる。例えば、バッテリ残量が25%未満のときはスイッチ12A、25%以上50%未満のときはスイッチ12B、50%以上75%未満のときはスイッチ12C、75%以上のときはスイッチ12D、に接続されたアウトレット11に接続すれば、バッテリ残量の少ないモバイル端末2を優先的に充電することができる。
【0031】
以上のように、本実施形態の充電保管庫1は、同じスイッチにより同時に切り替え可能な複数のグループ(系統)に分けて、グループごとにまとめて断続的に電力を供給する。スイッチを輪番でオンにすれば、簡単な構成により最大電気容量の範囲内で効率的に充電することが出来る。なお、上述した実施形態では、同時にオンにするスイッチの数を一つにしたが、ブレーカ16の所定値、各スイッチ12により同時に切り替えるアウトレット11の数、モバイル端末2のバッテリの充電に必要な電力により、2以上のスイッチ12を同時にオンにしてもよい。
【0032】
(第2の実施形態)
図8は、本実施形態の充電保管庫7の構成を模式的に示す機能ブロック図である。同図に示すように、本実施形態の充電保管庫7は、授業科目ごとに設定された負荷度を記憶する負荷度記憶部71をさらに備えている点において、第1の実施形態の充電保管庫1と異なる。
【0033】
本実施形態の充電保管庫7は、異なるクラスで使用されるモバイル端末2を単位として、同じスイッチ12に接続されたアウトレット11に接続して充電保管する態様で使用される。以下では、A~Dの4クラスが充電保管庫7を共用し、収納部17を4つの領域に分割し、所定の領域にA~Dの各クラスで用いるモバイル端末2を保管して充電する場合について説明する。
【0034】
図9は、4クラスの内の一つ(例えばAクラス)についての一週間の時間割と端末使用予定を示すテーブルの例である。充電保管庫7の予定記憶部14は、同図に示す授業の時間割に基づいたモバイル端末2(
図5参照)の使用予定をA~Dの各クラスについて記憶している。
【0035】
図10は、負荷度記憶部71が記憶する、各授業科目の負荷度を示すテーブルの例である。「負荷度」とは、モバイル端末2を使用した場合に、想定される電力消費量を数値化したものである。同図の例では、グラフィックを取り扱う図工の時間を最も大きい負荷度8とし、他の科目の負荷度を6または4とした。各科目の負荷度の値は、授業の実情に応じて変更することができる。
【0036】
以下では、A~Dクラスにおける各授業科目の負荷度が等しいとして説明する。ただし、A~Dクラスにおける各授業科目の負荷度は異なっていてもよい。例えば、A~Dクラスの学年が異なる場合、科目が同じでも負荷度が異なることがありうる。そこで、同じ科目に対して、学年に応じた異なる負荷度を設定してもよい。
【0037】
制御部13は、モバイル端末2(
図5参照)のバッテリの満充電量、予定記憶部14の使用予定、および負荷度記憶部71の負荷度に基づいて、授業の開始時点におけるバッテリのバッテリ残量を推定できる。また、制御部13は、使用予定と負荷度とに基づいて、その後の使用電力量を推定できる。そして、推定したバッテリ残量および使用電力量に基づいて、当該授業時間中に給電オンにするスイッチ12を決定し、充電が必要なモバイル端末2を充電することができる。
【0038】
図11は推定したバッテリ残量および使用電力量に基づいてスイッチを制御する方法を示すフローチャートである。同図に基づいて、授業の開始時点における、制御部13がバッテリのバッテリ残量および使用電力量を推定し、モバイル端末2の充電時間を決定する方法を説明する。
【0039】
以下では、各授業の開始時点において、バッテリ残量および使用電力量を算出する態様を例として説明する。しかし、バッテリ残量および使用電力量はいずれも、バッテリの満充電量、モバイル端末2の使用予定、およびの授業の負荷度に基づく推定値であるから、授業の開始前に算出できる。すなわち、満充電量、使用予定および負荷度が入力されていれば、各授業時間の開始、終了時点におけるバッテリ残量と使用電力量とを算出して、各授業における充電対象および充電時間を決定することが可能である。
【0040】
制御部13は、各授業の開始時点において、当該授業でモバイル端末2を使用する予定があるか否かを、予定記憶部14の使用予定に基づいて判断する(S10)。使用予定がある場合(S10のYES)、モバイル端末2は充電保管庫7に保管されていない。すなわち、モバイル端末2は所定のアウトレット11に接続されていない。このため、制御部13は、その授業時間中に、モバイル端末2用のアウトレット11に接続されたスイッチ12をオンにしない(S75)。
【0041】
使用予定がない場合(S10のNO)、制御部13は、バッテリの満充電量、使用予定、および負荷度に基づく、モバイル端末2のバッテリ残量を推定する(S20)。そして、使用予定、および負荷度に基づいて、その日の以後の授業の使用予定に基づく使用電力量を推定する(S30)。なお、バッテリ残量と、使用電力量とを推定する順番は逆でも、同時でもよい。
【0042】
続いて、制御部13は、バッテリ残量がその後の使用電力量よりも多いか否かを判断する(S40)。バッテリ残量が使用電力量よりも多い場合(S40のYES)、つぎ足し充電をする必要性が低い。そこで、その授業時間中には、モバイル端末2用のアウトレット11に接続されたスイッチ12をオンにしない(S75)。これにより、当該授業における充電時間を、充電を要する他のクラスのモバイル端末2に割り当てることが可能になる。
【0043】
バッテリ残量が使用電力量以下(使用電力量より多くない)の場合(S40のNO)、当該モバイル端末2を授業時間中の充電対象とする(S50)。そして、充電対象の充電時間、すなわち充電対象であるモバイル端末2が接続されるアウトレット11に接続されたスイッチ12を授業時間中にオンにする時間を決定する(S60)。
【0044】
授業時間中にオンにするスイッチ12が一つの場合、授業時間の全部を充電時間とすればよいが、オンにするスイッチ12が複数の場合、制御部13はその授業時間中の充電時間を各スイッチ12に分配する必要がある。充電時間を分配する方法は、特に限定されないが、例えば、充電するスイッチ12に対して均等に分配する方法、バッテリ残量の使用電力量に対する不足量に基づいて分配する方法などが挙げられる。前者には充電時間の決定が容易、後者には充電の必要性が高いモバイル端末2の充電量を多くできるという利益がある。
【0045】
制御部13は、その授業時間中において、バッテリ残量が使用電力量以下であるバッテリの充電に用いられるアウトレット11へ給電するスイッチ12を、決定した充電時間オンにする(S70)。
【0046】
図12は、A~Dクラスの月曜日の使用予定テーブルとバッテリ残量の推移を推定した結果を模式的に示す図である。同図を参照して、バッテリ残量と使用電力量に基づいたスイッチの制御によるバッテリ残量の増減について説明する。
【0047】
バッテリ残量の推移の推定は、以下のように行った。まず、放課後から翌日の授業開始までには充電時間が十分にあることから、1時間目の授業開始時点においては、A~Dクラスのモバイル端末2はいずれも満充電であるとした。そして、バッテリがフル充電された満充電状態をバッテリ残量16とし、1時間の充電によってバッテリ残量が4増加するとした。また、授業での使用によって、各科目の負荷度(
図9参照)分のバッテリ残量が減少するとした。なお、授業時間中にオンにするスイッチ12が複数ある場合、充電時間を等分するとした。
【0048】
1時間目の授業において、モバイル端末2の使用予定がないクラスはBとDである。B、Dクラスのモバイル端末2は、バッテリ残量が使用電力量以下であるから充電対象とされる。そして、バッテリ残量2に相当する1/2時間分の充電時間が割り当てられる。ただし、1時間目の授業の開始時点では、B、Dクラスのモバイル端末2のバッテリはいずれも満充電状態である、したがって、B、Dクラスのモバイル端末2のバッテリ残量は変化せず16のままである。
【0049】
なお、
図11のフローチャートでは、満充電状態でも充電対象としたが、満充電状態のモバイル端末2を充電対象から外してもよい。満充電状態のモバイル端末2を充電対象から外す場合、1時間目の授業時間中に充電対象となるモバイル端末2が無くなる。
【0050】
2時間目の授業において、モバイル端末2の使用予定がないクラスはCのみである。しかし、Cクラスのモバイル端末2は、バッテリ残量が12であり、その日の後の授業での使用に必要な使用電力量6よりも大きい。このため、Cクラスは2時間目の授業における充電対象とはならない。
【0051】
3時間目の授業において、モバイル端末2の使用予定がないクラスはAおよびCである。AおよびCのうち、バッテリ残量が使用電力量以下なのは、Aクラスのみである。したがって、3時間目の授業における充電対象は、Aクラスのみとする。3時間目の授業時間中の充電により、Aクラスのモバイル端末2のバッテリ残量は、授業開始時点の6から4増えて10となる。
【0052】
4時間目の授業において、モバイル端末2の使用予定がないクラスはBおよびDクラスである。B、Dクラスはいずれも、バッテリ残量が使用電力量以下だから、4時間目の充電対象とする。B、Dクラスのモバイル端末2にはそれぞれバッテリ残量2に相当する充電時間が割り当てられる。4時間目の授業時間中の充電により、BおよびDクラスのモバイル端末2のバッテリ残量はいずれも授業開始時点の4から2増えて6となる。
【0053】
充電対象の充電時間をバッテリ残量の使用電力量に対する不足量に基づいて分配した場合、上記とは異なる充電時間になる。この場合、Bクラスの不足量2、Dクラスに不足量4に対応させて、Bクラスの充電時間が1/3時間(バッテリ残量4/3に相当する)、Dクラスの充電時間が2/3時間(バッテリ残量8/3に相当する)となる。
【0054】
昼休みと掃除の時間において、A、B、CおよびDクラスのモバイル端末2は使用予定がない。開始時点において、バッテリ残量が使用電力量以下であるのは、BおよびDクラスであるから、B、Dクラスが充電対象となる。4時間目同様、B、Dクラスのモバイル端末2にはそれぞれバッテリ残量2に相当する充電時間が割り当てられ、バッテリ残量はいずれも、昼休み開始時点の6から2増えて8となる。
【0055】
5時間目の授業において、モバイル端末2の使用予定がないのは、A、CおよびDクラスである。バッテリ残量が使用電力量以下であるのはDクラスのみだから、Dクラスが充電対象となる。5時間目の授業時間中の充電により、Dクラスのモバイル端末2のバッテリ残量は、授業開始時点の8から4増えて12となる。
【0056】
以上のように、バッテリ残量および使用電力量の推定に基づいて、充電対象とするモバイル端末を決定することにより、充電が必要なモバイル端末に対して効率よく充電できる。
【0057】
(第3の実施形態)
図13は、本実施形態の充電保管庫8の構成を模式的に示す機能ブロック図である。本実施形態の充電保管庫8は、同じモバイル端末2が収納部17(
図1参照)の所定位置に収納されて使用されることを前提している。
【0058】
同図に示すように、本実施形態の充電保管庫8は、モバイル端末2の備えるバッテリの充電に用いられる複数のアウトレット11A~11Nと、アウトレット11A~11Nへの給電オン/オフを切り替える複数のスイッチ12A~12Nと、複数の前記スイッチ12A~12Nを制御する制御部13と、を備えている。以下、アウトレット11A~11N、スイッチ12A~12Nを区別しないときは、アウトレット11、スイッチ12という。
【0059】
アウトレット11はそれぞれ、複数のスイッチ12のうちのいずれか一つに接続されている。スイッチ12はそれぞれ、接続されたアウトレット11への給電オン/オフを切り替え可能である。制御部13は、バッテリのバッテリ残量に基づいてスイッチ12のオン/オフにより、モバイル端末2のバッテリの充電時間を制御する。
【0060】
例えば、制御部13は、通信部15を介した通信により、各モバイル端末2のバッテリ残量を取得する。制御部13は、この取得したバッテリ残量に基づいて、所定の位置に収容されているモバイル端末2のバッテリの充電時間を割り当てる。なお、汎用品として市販されているモバイル端末2は一般に、バッテリ残量を充電保管庫8等の外部の機器に通知する機能を備えていない。しかし、例えば、各種製品の製造工場において使用される専用のモバイル端末2などでは、バッテリ残量を外部の機器に通知する機能を組み込んだ設計とすることも可能である。また、汎用のモバイル端末2に充電保管庫8の充電制御用プログラムをインストールして用いることもできる。
【0061】
制御部13は、厳密なバッテリ残量を取得しているから、取得時点におけるバッテリ残量の順位を特定することができる。したがって、バッテリ残量の順位により、充電時間を割り当てることができる。たとえば、輪番充電において、バッテリ残量が少ない順に上から25%以内のモバイル端末2の充電時間を25分間、25%を超えて50%以内のモバイル端末2の充電時間を14分間、50%を超えて75%以内のモバイル端末2の充電時間を9分間、75%を超えたモバイル端末2の充電時間を4分間とする。
【0062】
制御部13によるバッテリ残量の取得は、所定の時間に行う。所定の時間とは、例えば、一日の授業の開始時と、昼休み・掃除の開始時のような決まった時刻や、所定の時間(例えば2時間)毎に行う。所定の時間は、例えば、通信部15を介して充電保管庫8と通信可能な、外部の端末3や携帯端末4(
図5参照)によって設定可能に構成されている。
【0063】
(第4の実施形態)
図14は、本実施形態の充電保管庫9の構成を模式的に示す機能ブロック図である。同図に示すように、本実施形態の充電保管庫9は、各アウトレット11の使用履歴を記録する使用履歴記録部91を備えている点において、第3の実施形態の充電保管庫8と異なる。本実施形態の充電保管庫9は、充電保管庫8同様、同じモバイル端末2が収納部17(
図1参照)の同じ位置に収納される態様で使用される。
【0064】
使用履歴記録部91は、モバイル端末2が所定のアウトレット11に接続されていない時間は、モバイル端末2が使用されていると判断する。この視点より、使用履歴として、モバイル端末2がアウトレット11に接続されている時間を使用履歴記録部91に記録する。
【0065】
そして、制御部13は、使用履歴に基づいて、スイッチ12をオンにしてモバイル端末2を充電する時間を決定する。例えば、使用時間が長く、より充電の必要性が高いモバイル端末2のバッテリの充電時間が長くなるように、スイッチ12を制御する。
【0066】
あるいは、使用履歴記録部91の使用履歴を統計的に処理して、各アウトレット11に接続されるモバイル端末2の使用傾向を分析してもよい。すなわち、制御部13は、使用傾向に基づいて、モバイル端末2の充電時間を決定してもよい。
【0067】
以上のように、制御部13が使用履歴記録部91の使用履歴に基づいて、各モバイル端末2の充電時間を決めることにより、充電の必要性が高いモバイル端末2を優先して充電することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、供給電力の合計が許容最大電力を超えないように、多数のモバイル端末を効率よく充電する充電保管庫として有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 :充電保管庫
2 :モバイル端末
3 :端末
4 :携帯端末
5 :ネットワーク
7、8、9 :充電保管庫
11、11A、11A1、11An、11B、11B1、11Bn、11C、11C1、11Cn、11D、11D1、11Dn、11N:アウトレット
12、12A、12B、12C、12D、12N:スイッチ
13 :制御部
14 :予定記憶部
15 :通信部
16 :ブレーカ
17 :収納部
71 :負荷度記憶部
91 :使用履歴記録部