(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】網の製造方法
(51)【国際特許分類】
A01K 75/00 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
A01K75/00 E
(21)【出願番号】P 2020197341
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2019216523
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591018877
【氏名又は名称】日東製網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐介
(72)【発明者】
【氏名】大屋 克之
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-065685(JP,U)
【文献】実開平04-106390(JP,U)
【文献】特開2014-198031(JP,A)
【文献】特公昭37-015843(JP,B1)
【文献】特開昭60-036087(JP,A)
【文献】特公昭37-004925(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00-A01B 77/00
D04C 1/00-D04C 1/12
D04G 1/00-D04G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網地を切断する切断工程と、
切断された前記網地の切断端部を折り返す折り返し工程と、
前記切断端部を折り返した後、前記切断端部の網目と前記網地の網目とを重ね合わせ、前記切断端部と前記網地との重ね合わせ部分をミシン機によって縫製する縫製工程と、を含
み、
前記縫製工程は、網送りローラーを有し、前記網地を載置する基台の上で行い、
前記縫製工程において、少なくとも、前記ミシン機のミシン針の動作、前記ミシン機の動作、前記網送りローラーの動作、前記基台の動作の何れかを調整することで、前記重ね合わせ部分を左右交互に縫製する、
ことを特徴とする網の製造方法。
【請求項2】
多重巻部を所定の間隔で形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の網の製造方法。
【請求項3】
前記切断端部と前記網地を縫製した後に、前記多重巻部を複数形成する、
ことを特徴とす
る請求項2に記載の網の製造方法。
【請求項4】
前記ミシン機で使用する縫い糸が、前記網地の太さの0.1倍から2倍である、
ことを特徴とする
請求項1から請求項3
の何れか一項に記載の網の製造方法。
【請求項5】
前記網地が、無結節網である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の網の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
漁業用の網(漁網)は、過酷な環境下で長時間使用されるため、強固なものが望まれている。また、漁網には漁網同士の結合(連結)や離脱が求められることがある。このように漁網には、様々な高い機能性が求められている。これらの特性を考慮し、従来から、漁網や漁網の作製方法が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭61-128968号公報
【文献】特開2008-22786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
漁網は、例えば、サイズが一反以上ある網地を切断して、所望のサイズの網を作製している。そのため、長期間使用していると、切断部から糸がほつれてしまい、網としての機能が低下してしまう問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、短時間で作製することができ、網の機能を長期間維持することができる網の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る網の製造方法は、網地を切断する切断工程と、切断された網地の切断端部を折り返す折り返し工程と、切断端部を折り返した後、切断端部の網目と網地の網目とを重ね合わせ、重ね合わせ部分をミシン機によって縫製する縫製工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る網の製造方法は、縫製工程が、網送りローラーを有し、網地を載置する基台の上で行い、縫製工程において、少なくとも、ミシン機のミシン針の動作、ミシン機の動作、網送りローラーの動作、基台の動作の何れかを調整することで、重ね合わせ部分を左右交互に縫製することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る網の製造方法は、多重巻部を所定の間隔で形成することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る網の製造方法は、切断端部と網地を縫製した後に、多重巻部を複数形成することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る網の製造方法において、ミシン機で使用する縫い糸が、網地の太さの0.1倍から2倍であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る網の製造方法において、網地が無結節網であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る網の製造方法は、切断端部を折り返した後に、ミシンで縫製する。そのため、手縫いで作製する場合と比較し、短時間で、効率よく、所望の網を作製することができる。
【0013】
本発明に係る網の製造方法は、少なくとも、ミシン機のミシン針の動作、ミシン機の動作、網送りローラーの動作、基台の動作の何れかを調整することで、重ね合わせ部分を左右交互に縫製することができる。
【0014】
また、本発明に係る網の製造方法では、縫製工程において、多重巻部を形成する。多重巻部を形成することで、切断端部に強い力が加わった場合でも、縫製された糸が容易に外れることはない。そのため、本発明に係る網の製造方法で製造した網は、海のような過酷な環境下で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る網の製造方法の切断工程を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る網の製造方法の折り返し工程を説明するための図である。(a)は網の平面図であり、(b)は網の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る網の製造方法の縫製工程を説明するための図である。(a)は網の平面図であり、(b)は側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る網の製造方法において、重ね合わせ部分を左右交互に縫製する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態に係る網の製造方法を、
図1から
図4を参照し説明する。
【0017】
本実施形態に係る網の製造方法は、無結節の網地から所望のサイズの網を製造するものであり、網地を切断する切断工程と、切断された網地の端部を折り返す折り返し工程と、切断された網地の端部を折り返した後、ミシン機によって縫製する縫製工程とを含む。
網地には、例えば、線径が1mmから13mmのナイロン、ポリエステル、ポリエチレンが使用され、製造された網は、口編網として使用され、例えば、漁網に使用される。
以下、本実施形態に係る網の製造方法の各工程について、説明する。
【0018】
[切断工程]
切断工程では、
図1に示すように、無結節の網地1を所望のサイズに切断する。切断は、切断位置Cに沿って行う。無結節の網地1の切断は、例えば、電熱式のヒートカッター、電動式の自動カッター、ハサミを使用し、一つの無結節の網地1を複数の網地2に切断し、分割する。切断された網地2の端部には、切断部3Aが形成される。以下、折り返される側の端部を切断端部3と記す。
【0019】
[折り返し工程]
切断工程後、折り返し工程を行う。具体的には、
図2(a)及び(b)に示すように、切断端部3を折り返し、切断端部3が、網地2と重なり合わされる。この際、切断端部3の網目と網地2の網目が重なるように折り返す。なお、折り返し幅Wは、折り返し位置Aによって決定され、網の種類、サイズによって、適宜決定される。
【0020】
[縫製工程]
折り返し工程後、縫製工程を行う。この縫製工程は、網送りローラー11を有する基台12の上で行う(
図4)。縫製には、ミシン機10(ミシン機本体)を使用し、このミシン機10は、業務用のものを使用する。ミシン糸(縫い糸)には、例えば、ナイロン、ポリエステルが使用される。ミシン糸が細すぎると引っ張り力やスレで切れやすくなり、糸が太すぎると網同士をつなぎ合わせると嵩が増しすぎて扱いが難しくなるため、ミシン糸の太さは、例えば、網地2の太さの0.1倍から2倍のものを使用する。このミシン糸は、網の太さや用途に応じて、適切な太さが選択される。
また、ミシン機10の縫製の速度は、1倍から5倍とする。縫製は、
図3(a)及び(b)に示すように、切断部3Aよりも前後方向Yの前方の網目に沿って行う。網目に沿って縫製されるため、縫製部は、ジグザグ状に形成される。この縫製工程では、複数の多重巻部4を所定の間隔で形成させるように縫製を行う。ここで、多重巻部4とは、通常のミシン機で縫製される縫製部分よりも、糸の巻き数が多い部分、すなわち、他の縫製部分よりもミシン針を入れる回数が多くする部分を意味する。本実施形態では、2針から6針で縫製した部分を多重巻部4とする。この多重巻部4は、一度の縫製で形成しても、一旦ミシン機10で縫製した後に再度、多重巻部のみを形成するように縫製してもよい。
なお、多重巻部4は、隣合う多重巻部4同士の間隔がほぼ同じに形成されたり、多重巻部4の位置が一定の規則性を持って形成されていればよい。
【0021】
多重巻部4は、
図4に示すように、網地2の進行方向Zに対して、左右交互に形成される。重ね合わせた部分に、多重巻部4を左右交互に形成するために、少なくとも、ミシン機10のミシンの針の動作、ミシン機10の動作、網送りローラー11の動作、基台12の動作の何れかを調整することで、縫製する。これらの可動範囲(動作距離)は、1mmから40mmの範囲で変更することができる。折り返し幅Wが小さいときは、可動範囲を小さくし、折り返し幅Wが大きいときは、可動範囲を大きくする。
【0022】
次に、本実施形態に係る網の製造方法の作用効果について説明する。
【0023】
本実施形態に係る網の製造方法は、切断端部3を折り返した後に、ミシンで縫製するため、手縫いで網を作製する場合と比較し、短時間で、効率よく、所望の網(口編網)を作製することができる。また、本実施形態に係る網の製造方法では、ミシン操作を習得すれば、比較的容易に操作を行えるため、熟練した技術を有していない者でも容易に所望の網を作製することができる。
【0024】
本実施形態に係る網の製造方法によって製造された網地2は、切断部3Aよりも前方が縫製されている。そうすると、切断部3Aから網地2を構成する糸がほつれても、ミシンで縫製された位置よりも前方に糸がほつれることはない。そのため、例えば、海のような過酷な環境下で、長時間使用した場合であっても、網としての機能を維持することができる。
【0025】
多重巻部4は、
図4に示すように、網地2の進行方向Zに対して、左右交互に形成される。重ね合わせた部分に、多重巻部4を左右交互に形成するために、ミシン機10のミシンの針の動作、ミシン機10の動作、網送りローラー11の動作、基台12の動作の何れかを調整することで、縫製する。ミシンの針の動作、ミシン機10の動作、網送りローラー11の動作、基台12の動作の何れかを調整できるため、例えば、ミシン機(ミシン針)が固定され左右に可動できない場合、網送りローラー11の動作または基台12の動作によって、多重巻部4を左右交互に縫製できる。
このように本実施形態に係る網の製造方法は、多様な方法で、多重巻部4を形成することができ、網糸の太さや網の大きさなどに、多様に対応することができる。
【0026】
網地2のサイズや網地2の硬さに応じて、折り返し幅Wのサイズが異なる。本実施形態に係る網の製造方法は、ミシンの針の動作、ミシン機10の動作、網送りローラー11の動作、基台12の動作の可動範囲を1mmから40mmの範囲で変更できる。そのため、重ね合わせ部分の折り返し幅Wに応じて、多重巻部4を所望の位置に形成することができる。また、ミシン糸の太さを、網地2の太さの0.1倍から2倍のものを使用することで、引っ張り力やスレで切れやすくなることやミシン糸の嵩が増し扱いにくくなることを防止できる。
【0027】
また、網地2では、複数の多重巻部4が形成され、切断端部3は強固に縫製されている。そのため、切断端部3に強い力が加わった場合でも、縫製された糸が容易に外れることを防止することができる。
【0028】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本実施形態では、ミシン機10のミシンの針の動作、ミシン機10の動作、網送りローラー11の動作、基台12の動作の何れかを調整することを説明したが、これらの中から複数の動作を選択し、多重巻部4を形成することもできる。複数の動作を調整することで、1つの動作を調整した場合と比較し、より多様な位置に多重巻部4を形成することができる。
【0029】
また、本実施形態では、結節を多重巻する例について説明したが、結節と結節の間の網脚も多重巻することもできる。この場合、例えば、結節4針-網脚2針-結節4針として、縫製する。さらに、多重巻部4は、左右交互に縫製されていなくてもよく、例えば、多重巻部4が一列となるように縫製することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 無結節の網地
2 網地
3 切断端部
3A 切断部
4 多重巻部
10 ミシン機(ミシン機本体)
11 網送りローラー
12 基台
A 折り返し位置
C 切断位置
W 折り返し幅
X 左右方向
Y 前後方向
Z 進行方向