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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】軟質基板の支持方法及び支持装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/00 20060101AFI20241028BHJP
   H05K 13/04 20060101ALN20241028BHJP
【FI】
H05K3/00 L
H05K3/00 Z
H05K13/04 P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021031245
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131967
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】594033824
【氏名又は名称】マイクロクラフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108958
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 英一
(72)【発明者】
【氏名】秀平 崇行
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-228347(JP,A)
【文献】特開2007-019448(JP,A)
【文献】特開2004-296631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 3/30
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板面の略中央部に設けられた被検査対象部位と、該基板面内の一方向における該被検査対象部位の両側にそれぞれ設けられ、該一方向の直交方向へ延びる一対の第一被支持部位とを備える軟質基板の支持方法であって、
一対の前記第一被支持部位における前記直交方向の略全長をそれぞれ保持する保持段階と、
少なくとも一方の前記第一被支持部位における該保持箇所よりも被検査対象部位側の前記直交方向の略全長を、前記基板面の略垂直方向における一方向に対して位置決めする位置決め段階と、
該位置決め箇所よりも反被検査対象部位側の前記第一被支持部位に対し、前記位置決めする方向の反対方向へ張力を付与することにより前記被検査対象部位の変形を矯正する矯正段階とを含んでいる
軟質基板の支持方法。
【請求項2】
前記軟質基板は、前記基板面内の前記一方向の直交方向における前記被検査対象部位の両側にそれぞれ設けられ、該一方向へ延びる一対の第二被支持部位を備え、
前記第一被支持部位への前記保持段階、前記位置決め段階、及び前記矯正段階と同様のことを、該第二被支持部位に対してそれぞれ行う保持段階、位置決め段階、及び矯正段階を含んでいる
請求項1に記載の軟質基板の支持方法。
【請求項3】
前記矯正段階では、前記位置決め箇所と前記保持箇所の間における前記直交方向の略全長を前記位置決めする方向の反対方向へ押圧手段により押圧することより、前記張力を付与するように構成されている
請求項1又は2に記載の軟質基板の支持方法。
【請求項4】
前記押圧手段は、前記直交方向の略全長に渡って軟質に形成されている押圧部材により押圧する
請求項3に記載の軟質基板の支持方法。
【請求項5】
前記押圧手段は、前記直交方向の略全長に渡って列設された複数の押圧要素によりそれぞれ押圧する
請求項3に記載の軟質基板の支持方法。
【請求項6】
前記矯正段階では、前記保持箇所を前記位置決めする方向の反対方向へ移動させることにより、前記張力を付与するように構成されている
請求項1又は2に記載の軟質基板の支持方法。
【請求項7】
基板面の略中央部に設けられた被検査対象部位と、該基板面内の一方向における該被検査対象部位の両側にそれぞれ設けられ、該一方向の直交方向へ延びる一対の第一被支持部位とを備える軟質基板の支持装置であって、
一対の前記第一被支持部位における前記直交方向の略全長をそれぞれ保持する保持部と、
少なくとも一方の前記第一被支持部位における該保持箇所よりも被検査対象部位側の前記直交方向の略全長を、前記基板面の略垂直方向における一方向に対して位置決めする位置決め部と、
該位置決め箇所よりも反被検査対象部位側の前記第一被支持部位に対し、前記位置決めする方向の反対方向へ張力を付与することにより前記被検査対象部位の変形を矯正する矯正部とを備えている
軟質基板の支持装置。
【請求項8】
前記軟質基板は、前記基板面内の前記一方向の直交方向における前記被検査対象部位の両側にそれぞれ設けられ、該一方向へ延びる一対の第二被支持部位を備え、
前記第一被支持部位への前記保持部、前記位置決め部、及び前記矯正部と同様のことを、該第二被支持部位に対してそれぞれ行う保持部、位置決め部、及び矯正部を備えている
請求項7に記載の軟質基板の支持装置。
【請求項9】
前記矯正部では、前記位置決め箇所と前記保持箇所の間における前記直交方向の略全長を前記位置決めする方向の反対方向へ押圧手段により押圧することより、前記張力を付与するように構成されている
請求項7又は8に記載の軟質基板の支持装置。
【請求項10】
前記押圧手段は、前記直交方向の略全長に渡って軟質に形成されている押圧部材により押圧する
請求項9に記載の軟質基板の支持装置。
【請求項11】
前記押圧手段は、前記直交方向の略全長に渡って列設された複数の押圧要素によりそれぞれ押圧する
請求項9に記載の軟質基板の支持装置。
【請求項12】
前記矯正部では、前記保持箇所を前記位置決めする方向の反対方向へ移動させることにより、前記張力を付与するように構成されている
請求項7又は8に記載の軟質基板の支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄いリジッド基板やフレキシブル基板のような軟質基板の基板面における被検査対象部位が平面になるように矯正して保持する、軟質基板の支持方法及び支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術としては、特許文献1に記載されたプリント基板検査方法と検査装置を例示する。図9に示すように、この検査方法及び検査装置では、プリント基板101を縦方向にしてその上下の両端縁部の略全長を挟着する把持装置104,105にてそれぞれ把持し、ボールネジ106を回転させることで、上側の把持装置104が取り付けられている可動基台103を下側の把持装置105が取り付けられている基台102に対して昇降させるようになっている。この構成により該把持装置104,105でプリント基板101に縦方向への引張応力を加えて当該プリント基板101のソリを矯正する。そして、引張応力が加えられている状態のプリント基板101に対し、プリント基板面に平行で二方向に移動自在な測定用プローブを当接させ、該測定用プローブの位置ズレ及びバネ圧による撓みを防止しながら、所望の検査を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2899492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、背景技術では、プリント基板101の上下二辺を挟持し、上方へ引張する構成のため、左右方向には引張応力が加わらない。比較的厚みのあるリジッド基板のような硬質のプリント基板であれば、変形の態様がほぼ反りに限られるため、上下二辺の挟持と上下方向の引張応力のみでも十分であるが、薄いリジッド基板やフレキシブル基板のような軟質のプリント基板の場合には、前記硬質のプリント基板と比較して、変形し易く、伸びやすいため、一方向への反りだけでなく、曲面状に変形していたり、回路のパターンや回路部品の有無等の状態に応じて部位ごとに伸びやすさが異なっていたりすることがある。そのため、背景技術の構成では、左右方向における変形の矯正が不十分になることがあるという課題がある。
【0005】
また、変形しやすい前記軟質のプリント基板の場合には、上下二辺を挟持し、上下方向へ引張応力を加えただけでは、検査時にプローブが軟質のプリント基板に接触した際の圧力により、該プリント基板が接触前の位置を維持できない(該プリント基板がプローブに押されることで変形する)ことがあるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、第1の発明の軟質基板の支持方法は、
基板面の略中央部に設けられた被検査対象部位と、該基板面内の一方向における該被検査対象部位の両側にそれぞれ設けられ、該一方向の直交方向へ延びる一対の第一被支持部位とを備える軟質基板の支持方法であって、
一対の前記第一被支持部位における前記直交方向の略全長をそれぞれ保持する保持段階と、
少なくとも一方の前記第一被支持部位における該保持箇所よりも被検査対象部位側の前記直交方向の略全長を、前記基板面の略垂直方向における一方向に対して位置決めする位置決め段階と、
該位置決め箇所よりも反被検査対象部位側の前記第一被支持部位に対し、前記位置決めする方向の反対方向へ張力を付与することにより前記被検査対象部位の変形を矯正する矯正段階とを含んでいる。
【0007】
前記保持としては、特に限定されないが、前記軟質基板の両面を挟持することによる態様や、前記軟質基板に設けられた凹部、突部、穴、切欠等を係止することによる態様を例示する。
【0008】
この方法によれば、軟質基板に対し前記張力を付与することにより前記基板面内の前記一方向の変形を矯正するとともに、該一方向の直交方向の略全長に渡る位置決めにより該直交方向への変形をも矯正することができる。
【0009】
第2の発明の軟質基板の支持方法としては、前記第1の発明において、
前記軟質基板は、前記基板面内の前記一方向の直交方向における前記被検査対象部位の両側にそれぞれ設けられ、該一方向へ延びる一対の第二被支持部位を備え、
前記第一被支持部位への前記保持段階、前記位置決め段階、及び前記矯正段階と同様のことを、該第二被支持部位に対してそれぞれ行う保持段階、位置決め段階、及び矯正段階を含んでいる態様を例示する。
【0010】
この方法によれば、互いに直交する位置関係にある前記第一被支持部位及び前記第二被支持部位に対して変形の矯正を行うことができるので、前記基板面における被検査対象部位をさらに全体的に均一な平面に矯正できる。また、互いに直交する二方向から軟質基板に対して引張張力を付与するようにしているので、検査時にプローブが軟質基板に接触しても、その際の圧力に抗して該軟質基板に接触前の位置を維持させることができる。
【0011】
第3の発明の軟質基板の支持方法としては、前記第1又は2の発明において、
前記矯正段階では、前記位置決め箇所と前記保持箇所の間における前記直交方向の略全長を前記位置決めする方向の反対方向へ押圧手段により押圧することより、前記張力を付与するように構成されている態様を例示する。
【0012】
この方法によれば、前記張力の付与をシンプルな構成で実現できる。
【0013】
第4の発明の軟質基板の支持方法としては、前記第3の発明において、
前記押圧手段は、前記直交方向の略全長に渡って軟質に形成されている押圧部材により押圧する態様を例示する。
【0014】
この方法によれば、前記直交方向における軟質基板の変形量や伸長性の変動を吸収し、該直交方向への変形を効果的に矯正することができる。
【0015】
第5の発明の軟質基板の支持方法としては、前記第3の発明において、
前記押圧手段は、前記直交方向の略全長に渡って列設された複数の押圧要素によりそれぞれ押圧する態様を例示する。
【0016】
この方法によっても、前記直交方向における軟質基板の変形量や伸長性の変動を吸収し、該直交方向への変形を効果的に矯正することができる。
【0017】
第6の発明の軟質基板の支持方法としては、前記第1又は2の発明において、
前記矯正段階では、前記保持箇所を前記位置決めする方向の反対方向へ移動させることにより、前記張力を付与するように構成されている態様を例示する。
【0018】
この方法によれば、前記張力の付与をシンプルな構成で実現できる。しかも、この構成では、前記押圧手段を省き、前記保持箇所を移動させることにより前記張力を付与しているので、前記被支持部位に押圧箇所を確保する必要がなく、該被支持部位を小さくすることができる。
【0019】
また、第7の発明の軟質基板の支持装置は、
基板面の略中央部に設けられた被検査対象部位と、該基板面内の一方向における該被検査対象部位の両側にそれぞれ設けられ、該一方向の直交方向へ延びる一対の第一被支持部位とを備える軟質基板の支持装置であって、
一対の前記第一被支持部位における前記直交方向の略全長をそれぞれ保持する保持部と、
少なくとも一方の前記第一被支持部位における該保持箇所よりも被検査対象部位側の前記直交方向の略全長を、前記基板面の略垂直方向における一方向に対して位置決めする位置決め部と、
該位置決め箇所よりも反被検査対象部位側の前記第一被支持部位に対し、前記位置決めする方向の反対方向へ張力を付与することにより前記被検査対象部位の変形を矯正する矯正部とを備えている。
【0020】
この構成によれば、前記第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0021】
第8の発明の軟質基板の支持装置としては、前記第7の発明において、
前記軟質基板は、前記基板面内の前記一方向の直交方向における前記被検査対象部位の両側にそれぞれ設けられ、該一方向へ延びる一対の第二被支持部位を備え、
前記第一被支持部位への前記保持部、前記位置決め部、及び前記矯正部と同様のことを、該第二被支持部位に対してそれぞれ行う保持部、位置決め部、及び矯正部を備えている態様を例示する。
【0022】
この構成によれば、前記第2の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
第9の発明の軟質基板の支持装置としては、前記第7又は8の発明において、
前記矯正部では、前記位置決め箇所と前記保持箇所の間における前記直交方向の略全長を前記位置決めする方向の反対方向へ押圧手段により押圧することより、前記張力を付与するように構成されている態様を例示する。
【0024】
この構成によれば、前記第3の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0025】
第10の発明の軟質基板の支持装置としては、前記第9の発明において、
前記押圧手段は、前記直交方向の略全長に渡って軟質に形成されている押圧部材により押圧する態様を例示する。
【0026】
この構成によれば、前記第4の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
第11の発明の軟質基板の支持装置としては、前記第9の発明において、
前記押圧手段は、前記直交方向の略全長に渡って列設された複数の押圧要素によりそれぞれ押圧する態様を例示する。
【0028】
この構成によれば、前記第5の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
第12の発明の軟質基板の支持装置としては、前記第7又は8の発明において、
前記矯正部では、前記保持箇所を前記位置決めする方向の反対方向へ移動させることにより、前記張力を付与するように構成されている態様を例示する。
【0030】
この構成によれば、前記第6の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る軟質基板の支持方法及び支持装置によれば、軟質基板における基板面内の互いに直交する二方向への変形を矯正することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明を具体化した第一実施形態に係る軟質基板の支持装置の構成を模式的に表した正面図である。
図2図1に示す同支持装置のA-A線端面図である。
図3】同支持装置の動作を表した、図1のA-A端面の要部拡大図であり、(a)は矯正前の状態、(b)は矯正後の状態をそれぞれ表している。
図4】本発明を具体化した第二実施形態に係る軟質基板の支持装置の構成を模式的に表した正面図である。
図5図4に示す同支持装置の端面図であり、(a)はA-A線端面図、(b)はB-B線端面図である。
図6】本発明を具体化した第三実施形態に係る軟質基板の支持装置の構成を模式的に表した正面図である。
図7図6に示す同支持装置の端面図であり、(a)はA-A線端面図、(b)はB-B線端面図である。
図8】同支持装置の動作を表した、図6のA-A端面の要部拡大図であり、(a)は矯正前の状態、(b)は矯正後の状態をそれぞれ表している。
図9】背景技術に係るプリント基板検査装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した第一実施形態の軟質基板の支持装置について、それにより実施する支持方法とともに、図1図3を参照して説明する。本例の支持装置1は、薄いリジッド基板やフレキシブル基板のような軟質のプリント基板である軟質基板Wの被検査対象部位における回路の断線や短絡、実装された電子部品の電気的性能等を検査する検査装置に装備され、該軟質基板Wの基板面における被検査対象部位が平面になるように矯正して保持するためのものである。そして、本例の支持装置1は、フレーム部2と、保持部3と、位置決め部4と、矯正部5とを備えており、軟質基板Wを縦方向に支持するように構成されている。
【0034】
支持対象の軟質基板Wは、正面視で矩形に形成されており、基板面の略中央部に設けられた被検査対象部位Waと、該基板面内の一方向としての上下方向における該被検査対象部位Waの両側にそれぞれ設けられ、該一方向の直交方向としての左右方向へ延びる一対の第一被支持部位Wbとを備えている。本例では、図1に示すように、被検査対象部位Waが軟質基板Wの左右方向の全幅に渡って設けられているため、第一被支持部位Wbも軟質基板Wの左右方向の全幅に渡って設けられている。この第一被支持部位Wbとしては、被検査対象部位Waに対峙する長さをカバーしていればよいので、例えば被検査対象部位Waが軟質基板Wの左右方向の一部の範囲に設けられている場合であれば、少なくともその範囲をカバーするように設ければよく、必ずしも軟質基板Wの左右方向の全幅に渡って設けなくてもよい。
【0035】
フレーム部2は、本例では、4辺からなる枠状に形成されている。このフレーム部2の内側には、後述する保持部3、位置決め部4及び矯正部5が配設されている。
【0036】
保持部3は、フレーム部2の上辺及び下辺にそれぞれ設けられており、一対の第一被支持部位Wbにおける左右方向の略全長(即ち、左右方向における被検査対象部位Waの略全長)をそれぞれ保持するように構成されている。本例の保持部3としては、一対の挟持片3aにより第一被支持部位Wbを挟持するクランプ装置を採用している。
【0037】
位置決め部4は、上側の保持部3のすぐ下方において、上下に間隔を開けてフレーム部2にそれぞれ支持された一対の固定ローラー10を備えている。各固定ローラー10は、その周面の幅が被検査対象部位Waの左右方向の略全長に渡って延びるように形成されるとともに、左右方向に延びる軸10aに対して回転自在に支持されている。さらに、各固定ローラー10は、図3(a)に示すように、保持部3に保持された軟質基板Wの基板面に周面がちょうど接する位置関係に配置しており、これにより後述する矯正部5の可動ローラー11による押圧時に軟質基板Wの折れ曲がりを最小限に抑制することができるようにしている。この位置決め部4は、左右方向に延びる下側の固定ローラー10の周面により、上側の第一被支持部位Wbにおける該保持箇所よりも被検査対象部位側の左右方向の略全長を、前記基板面の略垂直方向における一方向に対して位置決めするように構成されている。上側の固定ローラー10は、後述する矯正部5の可動ローラー11による押圧時に保持部3による保持箇所の折れ曲がりを防止するように構成されている。
【0038】
矯正部5は、押圧手段としての可動ローラー11、移動機構12、及び駆動装置13を備えており、位置決め部4による位置決め箇所よりも反被検査対象部位側の第一被支持部位Wbに対し、前記位置決めする方向の反対方向(図3(b)の矢印の方向)へ該押圧手段により押圧して張力を付与することにより被検査対象部位Waの変形を矯正するように構成されている。
【0039】
可動ローラー11は、一対の固定ローラー10の上下方向における中間部に配設されており、その周面の幅が被検査対象部位Waの左右方向の略全長に渡って延びるように形成されるとともに、左右方向に延びる軸11aに対して回転自在に支持されている。可動ローラー11の全周面は軟質に形成してもよく、そうすると前記直交方向における軟質基板Wの変形量や伸長性の変動を吸収するので、該直交方向への変形を効果的に矯正することができる。
【0040】
移動機構12は、前記基板面の略垂直方向へ移動自在に可動ローラー11の軸11aを支持するように構成されている。本例の移動機構12では、軸11aが軟質基板Wの基板面と略平行な状態を保ったまま移動するように構成されている。
【0041】
駆動装置13は、移動機構12を駆動することにより、可動ローラー11を移動させるように構成されている。駆動装置13としては、特に限定されないが、駆動の動力源として、エアーシリンダーやモーター等を用いる態様を例示する。また、駆動装置13に代えて、手動の駆動機構(例えば、ボールネジを手動で回転させるように構成された機構)を用いるようにしてもよい。
【0042】
次に、本発明の支持装置1により実施される支持方法の例について順に説明する。
(1)まず、保持部3により、一対の第一被支持部位Wbにおける左右方向の略全長をそれぞれ保持する(保持段階)。
(2)すると、位置決め部4の下側の固定ローラー10により、上側の第一被支持部位Wbにおける該保持箇所よりも被検査対象部位側の左右方向の略全長が、前記基板面の略垂直方向における一方向に対して位置決めされる(位置決め段階、図3(a)参照)。
(3)最後に、矯正部5により、位置決め箇所よりも反被検査対象部位側の第一被支持部位Wbに対し、前記位置決めする方向の反対方向へ張力を付与することにより被検査対象部位Waの変形を矯正する(矯正段階、図3(b)参照)。
【0043】
以上のように構成された本例の軟質基板Wの支持装置1によれば、矯正部5によって軟質基板Wに対し前記張力を付与することにより基板面内の一方向としての上下方向の変形を矯正するとともに、該一方向の直交方向としての左右方向の略全長に渡る位置決め部4での位置決めにより該左右方向への変形をも矯正することができる。
【0044】
また、矯正部5では、前記位置決め箇所と前記保持箇所の間における左右方向の略全長を前記位置決めする方向の反対方向へ前記押圧手段により押圧することより、前記張力を付与するようになっているので、前記張力の付与をシンプルな構成で実現できる。
【0045】
次に、図4図5は本発明を具体化した第二実施形態の軟質基板Wの支持装置1及び支持方法を示している。この装置及び方法は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く。
【0046】
軟質基板Wは、第一被支持部位Wbに加え、前記基板面内の前記一方向の直交方向としての左右方向における被検査対象部位Waの両側にそれぞれ設けられ、上下方向へ延びる一対の第二被支持部位Wcを備えている。本例のように互いに直交する位置関係にある第一被支持部位Wb及び第二被支持部位Wcを軟質基板Wに設ける場合は、図4に示すように、それぞれが被検査対象部位Waに対峙する長さL1及びL2を少なくともカバーするように設ける。
【0047】
本例の支持装置1は、第一実施形態と同様に第一被支持部位Wbへの支持を行う保持部3A、位置決め部4A、及び矯正部5Aに加え、それらと同様のことを、該第二被支持部位Wcに対してそれぞれ行う保持部3B、位置決め部4B、及び矯正部5Bを備えている。
【0048】
次に、本発明の支持装置1により実施される支持方法の例について順に説明する。
(1)まず、保持部3Aにより、一対の第一被支持部位Wbにおける左右方向の略全長をそれぞれ保持するとともに、保持部3Bにより、一対の第二被支持部位Wcにおける上下方向の略全長をそれぞれ保持する(保持段階)。
(2)すると、位置決め部4Aの下側の固定ローラー10により、上側の第一被支持部位Wbにおける該保持箇所よりも被検査対象部位側の左右方向の略全長が、前記基板面の略垂直方向における一方向に対して位置決めされる(図3(a)参照)とともに、位置決め部4Bの左側の固定ローラー10により、右側の第二被支持部位Wcにおける該保持箇所よりも被検査対象部位側の上下方向の略全長が、前記基板面の略垂直方向における一方向に対して位置決めされる(位置決め段階)。
(3)最後に、矯正部5Aにより、位置決め箇所よりも反被検査対象部位側の第一被支持部位Wbに対し、前記位置決めする方向の反対方向へ張力を付与することにより被検査対象部位Waの変形を矯正する(図3(b)参照)とともに、矯正部5Bにより、位置決め箇所よりも反被検査対象部位側の第二被支持部位Wcに対し、前記位置決めする方向の反対方向へ張力を付与することにより被検査対象部位Waの変形を矯正する(矯正段階)。
【0049】
以上のように構成された本例の軟質基板Wの支持装置1及び支持方法によれば、第一実施形態と同様の効果に加え、次の効果を得ることができる。すなわち、互いに直交する位置関係にある第一被支持部位Wb及び第二被支持部位Wcに対して変形の矯正を行うことができるので、前記基板面における被検査対象部位Waをさらに全体的に均一な平面に矯正できる。また、互いに直交する二方向から軟質基板Wに対して引張張力を付与するようにしているので、検査時にプローブが軟質基板Wに接触しても、その際の圧力に抗して該軟質基板Wに接触前の位置を維持させることができる。
【0050】
次に、図6図8は本発明を具体化した第三実施形態の軟質基板Wの支持装置1及び支持方法を示している。この装置及び方法は、以下に示す点において、主に第二実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く。
【0051】
本例の保持部3A、3Bは、後述する移動機構12により可動に構成されており、矯正部5A、5Bとしても機能するように構成されている。
【0052】
本例の位置決め部4A、4Bでは、第二実施形態の各位置決め部4A、4Bにおける一対の固定ローラー10のうち、フレーム側の固定ローラー10を省いている。これにより、第一被支持部位Wb及び第二被支持部位Wcをより狭く形成することが可能になっている。
【0053】
本例の矯正部5Aは、保持部3A、移動機構12、及び駆動装置13を備えており、矯正部5Bは、保持部3B、移動機構12、及び駆動装置13を備えている。そして、保持部3A、3Bによる前記保持箇所を前記位置決めする方向の反対方向へ移動させて張力を付与することにより被検査対象部位Waの変形を矯正するように構成されている。
【0054】
移動機構12は、軟質基板Wの基板面の略垂直方向へ平行移動自在に保持部3A又は3Bを支持するように構成されている。
【0055】
駆動装置13は、移動機構12を駆動することにより、保持部3A又は3Bを前記基板面の略垂直方向へ移動させるように構成されている。
【0056】
以上のように構成された本例の軟質基板Wの支持装置1及び支持方法によれば、第二実施形態と同様の効果に加え、次の効果を得ることができる。すなわち、本例では、第二実施形態における前記押圧手段を省き、前記保持箇所を移動させることにより前記張力を付与しているので、第一被支持部位Wb及び第二被支持部位Wc内に押圧箇所を確保する必要がなく、該各被支持部位を小さくすることができる。
【0057】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)位置決め部4及び矯正部5を、被検査対象部位における上下方向の両側又は/及び左右方向の両側に設けるようにすること。
(2)軟質基板Wを挟持することに代えて、軟質基板Wに設けられた凹部、突部、穴、切欠等を係止することにより保持するように、保持部3を構成すること。
(3)第一実施形態及び第二実施形態において、各位置決め部4における一対の固定ローラー10のうち、フレーム側の固定ローラー10を省くこと。これにより、被支持部位をより狭く形成することが可能になる。
(4)周面の幅が被検査対象部位Waの左右方向の略全長に渡って延びる可動ローラー11に代えて、被検査対象部位Waの左右方向の略全長に渡って列設された複数の可動ローラー11を設けるとともに、それらが互いに独立して移動可能かつ押圧可能に移動機構12及び駆動機構を構成すること。この構成によれば、前記直交方向における軟質基板Wの変形量や伸長性の変動を吸収するので、該直交方向への変形を効果的に矯正することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 支持装置
2 フレーム部
3 保持部
3a 挟持片
3A 保持部
3B 保持部
4 位置決め部
4A 位置決め部
4B 位置決め部
5 矯正部
5A 矯正部
5B 矯正部
10 固定ローラー
10a 軸
11 可動ローラー
11a 軸
12 移動機構
13 駆動装置
W 軟質基板
Wa 被検査対象部位
Wb 第一被支持部位
Wc 第二被支持部位
図1
図2
図3
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図9