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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】保持機能付塗装ノズル
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/06 20060101AFI20241028BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20241028BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20241028BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20241028BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
B05B13/06
B05D7/14 K
B05D7/22 H
B05D1/02 Z
B05D3/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021196664
(22)【出願日】2021-12-03
(65)【公開番号】P2023082759
(43)【公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000177472
【氏名又は名称】三和鋼器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水戸 信
(72)【発明者】
【氏名】小室 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晴之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-046448(JP,A)
【文献】特開平11-156254(JP,A)
【文献】米国特許第07112350(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 13/06
B05D 7/14
B05D 7/22
B05D 1/02
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に塗料を噴射する噴出口を有し、後部にホースへの接続部を有し、側面に長シャフトと短シャフトを取付けた胴体部を有するスプレーノズルであって、前記長シャフトの中央部と前記短シャフトの端部が前記胴体部に取付部を支点として回動可能に取付けられ、かつバネにより前記回動する面内で互いに逆方向に前記スプレーノズルの軸に対して、角度を持つ方向に付勢されていることを特徴とする塗装ノズル。
【請求項2】
前記長シャフトの両端と前記短シャフトの一端にローラーが取付けられていることを特徴とする請求項1記載の塗装ノズル。
【請求項3】
前記胴体部の両側面の前記長シャフトと前記短シャフトが対称に取付けられ、両側面の前記長シャフトの前記噴出口側の一端同士を横棒で接続し、両側面の前記短シャフトの一端同士を横棒で接続したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の塗装ノズル。
【請求項4】
前記胴体部への前記短シャフトの取付部位置を前記長シャフトの取付部位置より前記噴出口側としたことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の塗装ノズル。
【請求項5】
U字継手を有する鋼管内面の塗装方法において、前記バネの付勢を押さえて前記長シャフトと前記短シャフトを畳んで、U字プレートに狭められた前記鋼管の開口部より前記塗装ノズルを前記鋼管内に挿入することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の塗装ノズルを用いた鋼管内面の塗装方法。
【請求項6】
挿入された前記塗装ノズルは、前記バネの付勢により回動して前記長シャフトと前記短シャフトの先端が前記鋼管の内壁に接し、前記スプレーノズルが前記鋼管の中心線上に保持され、前記塗装ノズルを前記鋼管の奥まで押し込んでから、手前に移動させながら前記鋼管内面を塗装することを特徴とする請求項5記載の鋼管内面の塗装方法。
【請求項7】
前記塗装ノズルをU字継手のU字プレートに狭められた鋼管の開口部より引き出す時、前記U字プレートと前記鋼管の内壁により、前記バネの付勢が押さえられ、前記長シャフトと前記短シャフトが折り畳まれ、本塗装ノズルを鋼管外に取出すことができることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の塗装ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管鉄塔腹材の内面を塗装する際に使用するのに適した塗装ノズルで、主に鉄塔製作に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔等は一般に4本の主柱を上下多段に設けた腹材で連結した鉄骨構造を備えており、近年では主柱や腹材が鋼管部材(中空部材)で構成されることが多い。送電鉄塔等は長年、風雨に曝されるために、主柱や腹材は亜鉛メッキによる防錆処理が施されているが、さらに、防錆塗装を施されていることが多い。特に腹材を構成する鋼管部材は両端が開放された状態で使用されることが多いので、内部腐食の発生を防止するために、鋼管内面にも防錆塗装を施すことが望ましい。
【0003】
鋼管内面の塗装は、鋼管外面等に比較すると難しく、鋼管内面に対応可能な塗装方法の採用が必要となる。例えば特許文献1~特許文献6に開示されているような、鋼管内面の塗装方法が提案されている。
【0004】
特許文献1や特許文献2には鋼管内部に塗装用ノズルを挿入して、鋼管内面を塗装する塗装機が記載されている。塗装機の挿入部の外周部に備えたリンク式の支持装置が管壁に接し、塗装機の挿入部を保持することにより、鋼管の中心線上に塗装用ノズルを保持することができる。また、リンク式の支持装置の管壁に接する先端部には車輪が設けられ、移動の際は車輪が管内面を転がる様になっている。これらの塗装機では、塗装用ノズルを鋼管の中心線上に保持した状態で、移動させながら鋼管内面を塗装する。
【0005】
特許文献3や特許文献4にも鋼管内部に塗装用ノズルを挿入して、鋼管内面を塗装する塗装機が記載されている。塗装機の管内挿入部の外周部に備えた弾性体の保持体が管壁に接し、塗装機の管内挿入部を保持することにより、鋼管の中心線上に塗装用ノズルを保持することができる。これらの塗装機でも、この塗装用ノズルを鋼管の奥まで挿入してから鋼管の挿入口まで、鋼管内面から一定以上離れる位置に保持しながら、一定の速度で引き抜くとともに塗料を該塗装用ノズルから一定の圧力で噴射させることにより、鋼管内面が全長にわたって塗装される。
【0006】
また、これらの弾性体の保持体として例示される、芒星形の弾性板体や板バネは、簡単に変形するので、U字継手の鋼管開口部のU字プレートの脇の狭隘部からU字プレートに沿って塗装用ノズルと共に挿入することができる。挿入後は弾性体の保持体は回復変形して管壁に接し、塗装機の挿入した塗装用ノズルを所定姿勢に保持して内面を塗装することができる。このように、鉄塔等のU字継手のような腹材の鋼管内面の塗装方法も提案されている。
【0007】
特許文献5や特許文献6にも鋼管内部に塗装用のノズルを挿入して、鋼管内面を塗装する塗装機が記載されている。塗装機の挿入部の外周部に備えた保持体が管壁に接し、塗装機の挿入部を保持することにより、鋼管の中心線上に塗装用ノズルを保持することができる。この保持体として展開と折り畳み可能なクランプアームとからなるパイプ内面への固定手段と2本のシャフトと先端のキャスタとスライドリングを備えた支持脚が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開昭55-021004号公報
【文献】実開昭56-147655号公報
【文献】特開平06-296909号公報
【文献】特開平11-156254号公報
【文献】特開2004-337835号公報
【文献】特開2015-178074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、鋼管内部に塗装ノズルを挿入して、鋼管の中心線上に塗装ノズルを保持しながら、塗装ノズルを移動させることにより鋼管内面を塗装する塗装方法は公知技術となっている。
【0010】
但し、鋼管鉄塔腹材の場合は、鋼管の両端がU字継手等となっており、両端の開口部がU字プレートによって鋼管断面の1/2以下に狭められた鋼管を内部塗装する必要がある。特に小径鋼管の腹材の場合は、開口部は通常のスプレーノズルの外径程度しかなく、塗装ノズルの挿入が容易ではない。U字プレート溶接前に鋼管内面の塗装を行うことも考えられるが、常に採用できるわけではない。
【0011】
まず、U字継手の狭い鋼管開口部から鋼管内に塗装ノズルを挿入することを考慮すると、特許文献1、2、5、6に開示の塗装ノズルを利用できるか疑問である。特許文献3、4に開示の塗装ノズルの場合は、U字継手の狭い開口部から鋼管内に塗装ノズルを挿入できると記載がある。
【0012】
次に、鋼管内面の塗装する際に、鋼管内面に全長に渡って均等な塗膜を形成するためには、塗装ノズルを挿入後、鋼管の中心線上に塗装ノズルを保持しながら、塗装ノズルを移動させる必要がある。特許文献1、2、5、6に開示の塗装ノズルの場合は、安定して保持移動が可能と考えられるが、特許文献3、4に開示の塗装ノズルの場合は、安定して、保持した状態で一定の速度で移動可能かは疑問である。
【0013】
最後に、塗装後には塗装ノズルを鋼管内からU字継手の狭い鋼管開口部を通して鋼管外に抜き出す必要がある。従って、塗装ノズルは容易に抜き出すことができることが望ましく、また、塗装ノズルは繰り返し使用可能で、構造も複雑でないことが望ましい。しかしながら上記特許文献の塗装ノズルが、これらの条件を満たすかは疑問である。
【0014】
鋼管腹材の内部腐食を抑制するためには、鋼管内面に防錆塗装を施し、鋼管内面に防錆塗料の均等な塗膜を形成する必要がある。前記の通り、そのための鋼管内面塗装には、U字継手の狭い鋼管開口部から鋼管内に挿入可能で、鋼管の中心線上に安定して水平を保持しながら、一定速度で移動可能で、U字継手の狭い鋼管開口部から鋼管外に取出可能で、かつ繰り返し使用可能で、過度に複雑な構造とならない様な塗装ノズルが望ましい。従来の塗装ノズルは、前記の条件の一部を満たすものではあっても全てを満たす塗装ノズルはなかった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
先端に噴出口を有し、後部にホースへの接続部を有し、側面に長シャフトと短シャフトを取付けた胴体部を有するスプレーノズルであって、前記長シャフトの中央部と前記短シャフトの端部が前記胴体部に取付部を支点として回動可能に取付けられ、かつバネにより前記回動する面内で互いに逆方向に前記スプレーノズルの軸に対して、角度を持つ方向に付勢されていることを特徴とする塗装ノズルを採用する。
【0016】
前記長シャフトの両端と前記短シャフトの一端にローラーが取付けられた塗装ノズルを採用する。
【0017】
また、前記胴体部の両側面に前記長シャフトと前記短シャフトが対称に取付けられ、両側面の前記長シャフトの前記噴出口側の一端同士を横棒で接続し、両側面の前記短シャフトの一端同士を横棒で接続した塗装ノズルを採用する。
【0018】
また、前記胴体部への前記短シャフトの取付位置を前記長シャフトの取付部位置より、前記胴体部の前記噴出口側とした塗装ノズルを採用する。
【0019】
U字継手を有する鋼管内面の塗装方法において、前記バネの付勢を押さえて前記長シャフトと短シャフトを畳んで、U字プレートに狭められた鋼管の開口部より前記塗装ノズルを鋼管内に挿入して、前記塗装ノズルを用いて鋼管内面の塗装を行う。
【0020】
また、挿入された前記塗装ノズルは、前記バネの付勢により回動して前記長シャフトと前記短シャフトの先端が鋼管の内壁に接し、前記スプレーノズルの中心軸を鋼管の中心線上に保持するので、一定の速度で塗装ノズルを移動させながら鋼管内面を塗装する。
【0021】
この際は、塗装ノズルを一旦、鋼管の奥まで押し込んでから塗装すると良い。
【0022】
鋼管内塗装後、本塗装ノズルをU字プレートに狭められた鋼管の開口部より引き出せば良い。引き出す場合はU字プレートと鋼管の内壁により、前記バネの付勢が押さえられ、前記長シャフトと前記短シャフトが折り畳まれるので、本塗装ノズルを鋼管外に取出すことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の塗装ノズルは、U字継手の狭い開口部から鋼管内に挿入可能で、鋼管の中心線上に安定して水平を保持しながら、一定速度で移動可能で、U字継手の狭い開口部から鋼管外に容易に取出可能で、かつ繰り返し使用可能で、過度に複雑な構造とならない様な塗装ノズルを提供できる。
【0024】
また、本発明の塗装ノズルを用いれば、斑のない塗装膜が得られ、かつ内面塗装の施工時間も短縮ができる。実際に、腹材の小径鋼管(φ76.3)のU字継手の鋼管内壁の塗装が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の塗装ノズル1例を示す説明図である。(a)は平面図、(b)はシャフトを折りたたんだ状態の側面図、(c)はシャフトを開いた状態の側面図である。
図2】本発明の塗装ノズル1例を示す説明図である。本塗装ノズルをU字継手の開口部から折り畳んで挿入する状態の管内部から見た正面図である。
図3】本発明の塗装ノズルを用いたU字継手を有する鋼管内面の塗装方法を示す説明図である。(a)は塗装ノズルを管内への挿入、(b)は鋼管内部の塗装ノズルの移動、(c)は塗装ノズルを用いた鋼管の内面塗装、(d)は塗装ノズルを管外への取出しの各様相を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本塗装ノズルはU字継手の開口部のような狭隘な開口部から挿抜可能で、鋼管内面を塗装するために鋼管内でスプレーノズルを安定に保持した状態で移動可能でなければならない。
【0027】
本発明の塗装用ノズルの1例を図1に示す。本発明の塗装用ノズル1は先端に噴出口を有し、後部にホース6の接続部4を有するスプレーノズル2で、中央部の胴体部3の側面に長シャフト10と短シャフト20が回動自在に取付けられている。
【0028】
図に示すように胴体部3の側面に、長シャフト10がシャフト中央部を軸として、長シャフトの取付部14に回動自在に取付られている。また短シャフト20もシャフト端部を軸として、短シャフトの取付部24に回動自在に取付られている。
【0029】
長シャフト10は長シャフトのバネ13により、かつ短シャフト20は短シャフトのバネ23により前記回動する面内で逆方向に付勢されている。
【0030】
図1(b)に示すように、長シャフトのバネ13の付勢と短シャフトのバネ23の付勢に抗して長シャフト10と短シャフト20を折り畳むことにより、本発明の塗装用ノズル1は図面上の上下方向の寸法を最小にすることができる。
【0031】
図1(c)に示すように、長シャフトのバネ13の付勢と短シャフトのバネ23の付勢が解放されると、バネによる胴体部3に対する各シャフトの付勢は回動する面内で相互に逆方向になるように取付けられており、長シャフト10が図面上で右回転し、短シャフト20が図面上で左回転し、本発明の塗装用ノズル1は図面上の上下方向の寸法が最大となる。
【0032】
本スプレーノズル2の先端の噴出口と、後部のホース6の接続部4は従来のスプレーノズルと同様のものが使用できる。
【0033】
胴体部3は側面に長シャフト10と短シャフト20が取付けられるように構成されているので、取付けるための寸法を確保が必要な点で相違するが、胴体部3の内部構造は従来のスプレーノズルの先端の噴出口と、後部のホース6の接続部との中間の胴体部の内部構造と同様のものが使用できるので、適宜フィルター機構、混合機構等を組み込んだ構成とすれば良い。
【0034】
また、従来のスプレ-ノズルを本例の胴体部3の先端に取付けて本発明の塗装ノズルを構成しても良い。もちろん、長シャフトと短シャフトの取付が可能な寸法の胴体部を有するものであれば従来のスプレーノズルを、その胴体部を利用して本発明の塗装ノズルを構成することも可能である。
【0035】
本発明の塗装ノズルは1流体ノズルの方が、寸法面や、ホースの面で有利ではあるが、2流体ノズルであっても、狭隘な開口部から挿入可能な寸法であれば使用可能である。
【0036】
長シャフト10の先端部には長シャフトのローラー11、短シャフト20の先端部には短シャフトのローラー21が設けられており、塗装用ノズル1を鋼管102内を移動させる際にスムーズに移動できるようになっている。
【0037】
図1(a)に示すように胴体部3の側面のスプレーノズル2の噴出口側の両長シャフト10の先端は長シャフトの横棒12で接続されており、両短シャフト20の先端は短シャフトの横棒22で接続されている。ホース側の両長シャフト10の先端同士は、両長シャフト10の回動の際に支障が出ないように横棒での接続はしていない。
【0038】
本発明の塗装ノズル1は、長短の両シャフトを胴体部3の側面に取付けることで、長短の両シャフトを折り畳んだ状態で、図1(b)に示すように、先端に噴出口を有し、後部にホースの接続部を有するスプレーノズルの図面上の上下方向寸法以下に抑えることが可能となる。必ずしもスプレーノズルの図面上の上下方向寸法以下でなくとも良く、折り畳んだ状態でU字継手100の開口部に挿入できる寸法以下となれば良い。
【0039】
図2は折り畳んだ状態でU字継手100の開口部に挿入した本塗装ノズル1を鋼管内から視た参考図である。U字継手100の開口部は弓形となるので、塗装ノズル1の挿入可能な寸法は、弓形の矢高と弦長に加えて孤の形状によって制限される。図に示すように矢高より弦長の方が大きいので孤の形状により制限されるが、図面上の上下方向より、図面上の左右方向の方が寸法的に余裕がある。
【0040】
このように、長短シャフトをスプレーノズル2の胴体部3の側面に取付ける方が有利である。長シャフト10を上側に、短シャフト20を下側に取付、短シャフトのローラー21を長シャフトのローラー11より内側に設置すると、寸法的に余裕を持たせることができる。
【0041】
本塗装ノズルの長短シャフト廻りの構造は、鋼管内で安定に保持するために重要な強度と、狭隘な開口部から挿抜するために必要な寸法的な制約をバランス良く満足する様に設定されている。
【0042】
本発明の塗装ノズルを用いたU字継手の鋼管内面の塗装手順を図3を参照して説明する。塗装ノズル1を折り畳んで開口部より挿入し、鋼管102内に挿入したら、まず鋼管102の先端まで押し込む。その後、塗装ノズル1を一定速度で引き出しながら、塗料を噴霧して、鋼管102内面の塗装を行う。塗装後、塗装ノズル1を折り畳んで開口部より抜き出す。
【0043】
最初に、図3(a)に示すように、図1(b)に示したように長シャフト10と短シャフト20を折り畳んで上下方向の寸法を小さくした本発明の塗装用ノズル1を、U字継手100の開口端部の鋼管102内壁とU字プレート101の隙間から挿入する。
【0044】
本塗装ノズル1は、長シャフト10と短シャフト20を手で折り畳んで押し込めば、U字継手100の開口部から管内に挿入できる。また、鞘のような治具を用いて、鋼管外で、塗装ノズル1を折り畳んでその鞘に収めて、鞘ごとU字継手100の開口部から挿入し、鞘を取り外す方法を採用しても良い。
【0045】
次に、図3(b)に示すように、鋼管102内壁とU字プレート101の狭隘部より先に塗装用ノズル1を押し込めば、この塗装用ノズル1は長シャフトのバネ13の付勢と短シャフトのバネ23の付勢が解放され、長シャフト10と短シャフト20が胴体部3を介した相互作用により図1(c)に示すように回動する。
【0046】
塗装用ノズル1の図面上の上下方向の寸法が鋼管102の内壁により制限され、長シャフトのバネ13の付勢と短シャフトのバネ23の付勢の方向が逆方向なので、鋼管102の内壁に長シャフトのローラー11が接触し、さらに短シャフトのローラー22が接触し、各バネの付勢力で各ローラーが内壁に押し付けられ、塗装用ノズル1の胴体部3と鋼管102の中心線との相対位置が安定する。
【0047】
次いで、塗装用ノズル1を鋼管102の先端まで押し込んで、噴霧塗装の準備をする。
【0048】
その後、図3(c)のように、塗装用ノズル1を引き抜きながら、塗料を噴霧して鋼管102内面を塗装する。この場合、塗装用ノズル1の胴体部3と鋼管102の中心線との相対位置が安定した状態で、塗料の噴霧と塗装用ノズル1を移動させることが、鋼管102の内面塗装の良否に重要である。
【0049】
塗装ノズル1を引き抜きながら塗装するのは、塗装直後の塗装面を塗装ノズル1が移動することを避けるためであり、この方が塗装時に塗装膜厚の斑無く、作業も短縮できる。
【0050】
鋼管内壁の塗装なので、ホロコーンもしくはフルコーン型のスプレーノズル2での塗装が望ましい。
【0051】
最後に、塗装ノズル1を管内から抜きだす。図3(d)に示すように塗装ノズル1をU字継手100の開口端部の鋼管102内壁とU字プレート101の隙間から引き出す際には、ホース6引き出しに伴って、管壁とU字プレートの隙間にホース6、ホース継手5、ホース接続部4が管壁側に押しつけられることにより、長シャフト10と短シャフト20が折り畳まれ、徐々にスプレーノズル2の胴体部3と平行になり塗装ノズル1の図面上の上下方向の寸法が小さくなるため、塗装用ノズル1がU字継手100の開口端部から取出すことができる。
【0052】
塗装中などには、鋼管102の管内移動で多少ねじれても胴体部3と鋼管102の中心線との相対位置が大きく変わらなければ問題ないが、図3(d)のように図面上の下側のU字継手100の開口端から抜き出す場合は、引き出すホース6側の管壁に接触する長シャフト10の端部が図面上でU字プレート101の下側にないと、長シャフト10が邪魔になって、ホース6の引き出しに伴って折り畳んで引き出すことができない。
【0053】
塗装ノズル1の挿入時にはU字継手の開口部に対しての塗装ノズル1の上下方向がどちらでも、鋼管内に挿入可能な場合があり、鋼管内の移動、塗装時には特に問題とはならないが、U字継手の開口部から抜き出すときには図3(d)の状態でないと、ホース6を引き出そうとしても両シャフトが自動的には折り畳まれないので、抜き出すことができない。鋼管102内で塗装ノズル1を回転させることによって、抜き出せるが、使用する際は図3(a)の状態で挿入することが望ましい。
【0054】
最後に、例示した塗装用ノズル1の場合は、図1(c)のように解放された場合には、ローラーが取付けられた長、短シャフトの端部が、胴体部3の両側面に3個づつ、胴体部3の上面に1対、下面に2対が延在し、図3(b)のように、鋼管102の内壁に合計6個のローラーが接触して、塗装用ノズル1の胴体部3と鋼管102の中心線との相対位置が決定される。
【0055】
このように6個のローラーが鋼管102の内壁に接触する構成で説明したが、接触する個数が多少増減しても、内壁の塗装は可能である。増やすと塗装ノズルの構造が複雑となり、減らすと、塗装ノズル1を鋼管102との相対位置に保持する安定性に欠けることになる。
【0056】
長シャフトのバネ13、短シャフトのバネ23の付勢力のバランスも重要である。解放された場合に内壁に接触する程度の強さがないと、塗装ノズル1を鋼管102との相対位置に保持する安定性に欠けるし、強すぎると、長短の各シャフトを折り畳む際や、塗装ノズル1の移動に支障がある。
【0057】
又、長シャフトのバネ13、短シャフトのバネ23のバランスで、塗装用ノズル1の胴体部3と鋼管102の中心線との相対位置が変わるので、塗装に適したスプレーノズル2の姿勢を保持する様に設定する必要がある。
【0058】
長短の各シャフト10、20の先端を、横棒12、22で接続して一体化しているので、バネ13、23の選定が容易となり、移動させる際の塗装ノズル1を鋼管102との相対位置に保持する際の安定性も良好になっている。
【0059】
今回、市販のスプレーノズルを用い、胴体部3と長短シャフト廻りを自作した塗装ノズル1で、小径鋼管(φ76.3)のU字継手の鋼管内面の塗装を試行したところ、U字プレートと鋼管の開口部から、挿抜可能な塗装ノズルが作成可能であり、この塗装ノズルにより鋼管内面の塗装が可能であった。この塗装ノズルを上記手順通りに使用して、U字継手の鋼管内面の塗装を行ったところ、通常の鋼管内面の塗装と比較して、塗装膜厚の斑等で遜色なく、塗装の施工時間も殆ど遜色なく行うことができた。
【符号の説明】
【0060】
1 塗装ノズル
2 スプレーノズル
3 胴体部
4 ホース接続部
5 ホース継手
6 ホース
10 長シャフト
11 (長シャフトの)ローラー
12 (長シャフトの)横棒
13 (長シャフトの)バネ
14 (長シャフトの)取付部
20 短シャフト
21 (短シャフトの)ローラー
22 (短シャフトの)横棒
23 (短シャフトの)バネ
24 (短シャフトの)取付部
100 鋼管鉄塔腹材(U字継手)
101 U字プレート
102 鋼管
図1
図2
図3