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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】単分散流体容積を有する粒子包含小滴系
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/546 20060101AFI20241028BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20241028BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241028BHJP
   B01J 13/14 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
G01N33/546
G01N33/543 597
C12Q1/02
B01J13/14
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021507857
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019046835
(87)【国際公開番号】W WO2020037214
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】62/719,476
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592110646
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ディ カルロ,ディノ
(72)【発明者】
【氏名】デ ルッテ,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ディマテオ,ロバート
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-522069(JP,A)
【文献】特表2015-528283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 1/00- 1/44
C12Q 1/02
B01J 13/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞からの分泌物を捕捉して分析するための複数の粒子において、
架橋されたヒドロゲルから形成された複数の3次元親水性粒子であって、各3次元親水性粒子が、その内部に形成された空隙又は空洞を有し、前記空隙又は空洞が、1つの細胞を収容する寸法であるとともに、前記3次元親水性粒子の表面に開口している複数の3次元親水性粒子と、
前記3次元親水性粒子におけるそれぞれの空隙又は空洞に配置された細胞結合性部分であって、それぞれの空隙又は空洞内に収容された前記細胞と結合する細胞結合性部分と、
前記3次元親水性粒子におけるそれぞれの空隙又は空洞に配置された細胞分泌物結合性部分であって、それぞれの前記空隙又は空洞内に結合された前記細胞から分泌された分泌物と結合してこれを捕捉する細胞分泌物結合性部分と、を含むことを特徴とする複数の粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の複数の粒子において、各3次元親水性粒子における空隙又は空洞が、前記3次元親水性粒子のエンベロープの総表面積の33%未満の面積を有する開口部で、前記3次元親水性粒子の表面に開口していることを特徴とする複数の粒子。
【請求項3】
請求項1に記載の複数の粒子において、前記複数の3次元親水性粒子の少なくとも一部における前記空隙又は空洞が、前記細胞結合性部分を介してそれぞれの前記3次元親水性粒子に結合されたそれぞれの細胞を内部に包含することを特徴とする複数の粒子。
【請求項4】
請求項1に記載の複数の粒子において、前記複数の3次元親水性粒子のそれぞれにおける前記空隙又は空洞が、約100fL~約10nLの範囲内の容積を有することを特徴とする複数の粒子。
【請求項5】
請求項1に記載の複数の粒子において、前記複数の3次元親水性粒子のそれぞれにおける前記空隙又は空洞が、約5μm及び約250μmの範囲内の長さ寸法を有することを特徴とする複数の粒子。
【請求項6】
請求項1に記載の複数の粒子において、前記細胞結合性部分が、核酸、ペプチド、細胞接着ペプチド、抗体、抗原、アプタマー、ビオチン又はビオチン/ストレプトアビジン複合体のうちの1つ以上を含むことを特徴とする複数の粒子。
【請求項7】
請求項1に記載の複数の粒子が、さらに、捕捉した前記分泌物に結合した2次親和性試薬を含むことを特徴とする複数の粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の複数の粒子において、前記2次親和性試薬が、さらに、フルオロフォア、磁性粒子、又は酵素を含むことを特徴とする複数の粒子。
【請求項9】
請求項3に記載の複数の粒子において、前記複数の3次元親水性粒子が、前記複数の3次元親水性粒子における前記空隙又は空洞内に配置された水性流体に結合して、油相に懸濁されていることを特徴とする複数の粒子。
【請求項10】
細胞からのmRNAを捕捉して分析するための複数の粒子において、
架橋されたヒドロゲルから形成された複数の3次元親水性粒子であって、各3次元親水性粒子が、その内部に形成された空隙又は空洞を有し、前記空隙又は空洞が、1つの細胞を収容する寸法であるとともに、前記3次元親水性粒子の表面に開口している複数の3次元親水性粒子と、
前記3次元親水性粒子におけるそれぞれの空隙又は空洞に配置された細胞結合性部分であって、それぞれの空隙又は空洞内に収容された前記細胞と結合する細胞結合性部分と、
前記3次元親水性粒子におけるそれぞれの空隙又は空洞に配置された1以上の分子捕捉部位であって、それぞれの前記空隙又は空洞に収容された前記細胞から放出されたmRNAと結合してこれを捕捉する結合性部分を有する分子捕捉部位と、を含むことを特徴とする複数の粒子。
【請求項11】
請求項10に記載の複数の粒子において、各3次元親水性粒子における空隙又は空洞が、前記3次元親水性粒子のエンベロープの総表面積の33%未満の面積を有する開口部で、前記3次元親水性粒子の表面に開口していることを特徴とする複数の粒子。
【請求項12】
請求項10に記載の複数の粒子において、前記複数の3次元親水性粒子の少なくとも一部における前記空隙又は空洞が、前記細胞結合性部分を介して前記3次元親水性粒子に結合された細胞を内部に包含することを特徴とする複数の粒子。
【請求項13】
請求項10に記載の複数の粒子において、前記複数の3次元親水性粒子のそれぞれにおける前記空隙又は空洞が、約100fL~約10nLの範囲内の容積を有することを特徴とする複数の粒子。
【請求項14】
請求項10に記載の複数の粒子において、前記複数の3次元親水性粒子のそれぞれにおける前記空隙又は空洞が、約5μm及び約250μmの範囲内の長さ寸法を有することを特徴とする複数の粒子。
【請求項15】
請求項10に記載の複数の粒子において、前記細胞結合性部分が、核酸、ペプチド、細胞接着ペプチド、抗体、抗原、アプタマー、ビオチン又はビオチン/ストレプトアビジン複合体のうちの1つ以上を含むことを特徴とする複数の粒子。
【請求項16】
請求項10に記載の複数の粒子において、前記複数の3次元親水性粒子が、前記複数の3次元親水性粒子における前記空隙又は空洞内に配置された水性流体に結合して、非混和性相に懸濁されていることを特徴とする複数の粒子。
【請求項17】
請求項10に記載の複数の粒子において、前記複数の3次元親水性粒子は固有のバーコード化がなされていることを特徴とする複数の粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、2018年8月17日に出願された米国仮特許出願第62/719,476号の優先権を主張し、当該出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国特許法第119条及びその他の適用法令にしたがって優先権が主張される。
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載
[0002] 本発明は、米国国立衛生研究所から付与された認可番号GM126414の下で政府の支援を得てなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
[0003] 本技術分野は、概して、その中に形成された規定の空隙又は空洞を有するミリメートル未満の小さな粒子に関し、規定の空隙又は空洞は、流体を保持し、かつ、別個の非混和性流体中に懸濁される。より具体的には、本技術分野は、その中に形成された空隙又は空洞内に流体を保持する小滴担体粒子から形成された滴状物(dropicle)構造に関する。好適な一実施形態では、小滴担体粒子は、親水性のヒドロゲル材料から形成され、かつ、空隙又は空洞内に水溶液を保持する。
【背景技術】
【0004】
[0004] マイクロ流体工学は、単分散エマルション(流体の別の連続相中の非混和性流体の分散小滴の懸濁液)を形成するための至適基準のアプローチである。マイクロ流体技術はより利用可能となったが、デバイスや機器は、高価であり、専門知識を必要とする。ある用途では、(例えば、固相反応を実行するため、又は、表面に付着する細胞を増殖させるため)粒子を包含する小滴を生成することも有利である。小滴ごとに単一粒子を包含する小滴を生成することは、小滴中の粒子カプセル化が確率過程であるために、現在は困難である。無作為に混合されたエマルションと比較して、単分散性が増大した水滴を生成するための代替のアプローチは、「Single-Cell Multiplex Gene Detection and Sequencing with Microfluidically Generated Agarose Emulsions」、Angewandte Chemie International Edition、50(2)、390-395(2011)でNovakらによって説明された。
【0005】
[0005] Novakらでは、油水懸濁液内への分散粒子を包含する水相の単純な攪拌(ボルテックス/ピペット)を用いて小滴が形成された。Novakらは、PCR増幅のための単離された区画を形成するために、細胞カプセル化アガロースビーズの再乳化を利用した。この研究は、アガロースゲル小滴中での細胞及びプライマー官能化ビーズのカプセル化のためのマイクロ流体デバイスに依存した。PCR後の下流分析は、放出されたプライマービーズについてサイトメトリにより実行されたが、より大きなアガロースビーズについては実行されなかった。
【0006】
[0006] 小滴に包含された粒子は、最小の小滴サイズを規定するための鋳型として機能することができる。しかしながら、流体は、薄い層内でのみ粒子を取り囲むので、このアプローチには顕著な欠点がある。このアプローチによって形成された小滴は、ヒドロゲル粒子の周囲に形成される「薄い」容積に大きな変動を有し、マイクロスケール物体(例えば、細胞、ビーズ)のカプセル化のための空間を提供せず、また、粒子マトリックス内で自由に拡散することができない大きな分子との反応に理想的ではない。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 一実施形態では、粒子表面に接続された又は粒子表面と連通した空隙又は空洞領域を包含する微小粒子の使用が、顕著に改良された粒子鋳型として機能して、小滴の均一な分布を生成する一方で、反応を実行し又は細胞、ビーズ及び他の小さな微小物体をカプセル化するための開放空間も包含することができる。これらの空洞包含粒子はまた、非空洞包含粒子と比較してより大量の液体試料(小滴当たり及び複数の粒子についての総試料容積)をカプセル化する能力を向上させ、これは細胞培養、細胞分泌物分析及び大量の試料の診断分析に重要である。
【0008】
[0008] 微小粒子の形状及び空隙の設計は、これらの粒子によって鋳型化された均一な容積エマルションを達成することを制御するための重要なパラメータである。集合して互いにネスト/連結することができる粒子の形状は、二流体相系との混合時に形成された小滴の均一性を減少させる凝集粒子を導く。好適な実施形態では、微小粒子の形状は、球形エンベロープ内に内接して取り去られた空隙容積を有する球形エンベロープによって規定される。取り去られた空隙又は空洞は、粒子の外面と連結する、連通する又は粒子の外面に開口する球体の形状をとり、三日月形の断面を有する最終粒子を生成することができる。内接した空隙は、流体充填のための経路を生成するために、その表面で球形エンベロープと交差する。好適な一態様において、空隙は、狭い開口部(すなわち、球形エンベロープの表面積の小さい画分)で球形エンベロープと交差する。ある実施形態では、開口部によって規定されるこの画分の面積は、粒子の球形エンベロープ全体の33%未満であり、他の実施形態では10%未満であり、さらなる実施形態では、画分の面積は5%未満である。代替的に、ある実施態様では、取り去られた空隙は、球形エンベロープの表面と交差しない。こうした実施形態では、細胞又は大きな分子は、粒子によって鋳型化された小滴によって単離されることはできないが、水及び小分子の拡散は、空隙の充填及び分子分析又は他の下流アッセイを可能にするヒドロゲル又は他の多孔質材料から形成された微小粒子について可能である。関連の実施形態では、空隙の容積は、微小粒子材料と比較して高い空隙率/分子拡散率を有するポリマー材料を含む。他の実施形態では、粒子のエンベロープ形状は、より大きな接触表面積を伴わない楕円形又は他の形状であってもよいことに留意されたい。空隙の容積は、粒子容積から取り去られた1以上の空隙領域を備えてもよい。
【0009】
[0009] 微小粒子の表面特性及び材料は、小滴の形成を支援するように制御されるべきである。例えば、親水性表面(例えば、油相と比較して水相との低い界面張力)を有する微小粒子を使用して、水性系の小滴を鋳型化することができる。代替的に、疎水性/フルオロフィリック(fluorophilic)の粒子(例えば、水相と比較して油/フッ素オイル相との低い界面張力)を使用して、別個の非混和性連続相の油系の小滴を鋳型化することができる。油系の小滴中の油相は、フッ素オイル、鉱油、シリコーン油、植物由来油、動物由来油、原油、炭化水素又は燃料、有機溶媒などを含んでもよい。好適な一実施形態では、微小粒子は、フッ素オイル連続相に包含される内接した空隙容積に基づいて均一な容積の水性小滴の形成を鋳型化する親水性ヒドロゲル材料から形成される。
【0010】
[0010] 例示的な一実施形態では、空洞又は空隙包含ヒドロゲル粒子は、小滴マイクロ流体力学と組み合わせられた水性二相系を使用して均一な空洞を生成するように製造される。例示的な実施形態では、PEG/デキストラン水性二相系が開示されているが、PEG/ポリビニルアルコール又はPEG/高イオン強度塩系(又は3-非混和性相系)のような他の水性二相系が使用されることもできる。特定の一実施形態では、PEG及びデキストランは、フローフォーカシング小滴生成器内で同時に流され、各小滴中に2つの別個の領域を生成するために相分離する混合材料からエマルションを生成する。外部PEG領域が架橋され(例えば、紫外光励起と光開始剤及び架橋剤の存在とを介して)、内部デキストラン層が洗浄除去されて、微小粒子内に大きな空隙空間を残す。PEG及びデキストランの両方の相対濃度を調節することによって、マイクロゲル粒子内の空隙空間又は空洞の形態及び/又は容積を調節することができる。空洞包含粒子の油内への乳化の最初の試験は小滴サイズの均一な範囲を示している。さらに、粒子内の空隙空間又は空洞は、空隙又は空洞に進入する高分子量FITCデキストラン溶液(500kDa)のような大きな分子に自由にアクセス可能であることが示されている。
【0011】
[0011] 一実施形態では、非混和性流体中に懸濁された固相粒子に結合された容積を用いる小滴ベース系は、架橋されたヒドロゲルから形成された複数の3次元親水性小滴担体粒子を含み、各親水性小滴担体粒子は、その中に形成された空隙又は空洞を有している。水性流体は、3次元親水性小滴担体粒子に結合され、かつ、複数の3次元親水性小滴担体粒子の空隙又は空洞内に配置される。水性流体に結合された複数の3次元親水性小滴担体粒子はさらに油相で配置される。ある実施形態では、3次元親水性小滴担体粒子の空隙又は空洞内に配置された水性流体は、実質的に同じ容積(例えば、実質的に単分散容積)を有している。したがって、系は、第1流体をその中に保持し、かつ、第2の別個の非混和性流体中に懸濁される、規定の空隙又は空洞がその中に形成された複数の固体粒子を含む。ある実施形態では、第1流体は水性流体であってもよい一方で、第2の別個の非混和性流体は油系流体である。他の実施形態では、第1流体は油系流体である一方で、第2の別個の非混和性流体は水性流体である。
【0012】
[0012] 別の実施形態では、非混和性流体中に懸濁された固相粒子に結合された容積を用いる小滴ベース系は、架橋されたヒドロゲルから形成された複数の3次元親水性小滴担体粒子を含み、各親水性小滴担体粒子は、その中に形成された空隙又は空洞を有する。水性流体は、3次元親水性小滴担体粒子に結合され、かつ、複数の3次元親水性小滴担体粒子の空隙又は空洞内に配置される。水性流体に結合された複数の3次元親水性小滴担体粒子は、さらに、油相で配置又は懸濁されて滴状物エマルションを形成する。好適には、形成される滴状物エマルションの実質的にすべては、その中に単一の小滴担体粒子を包含する。
【0013】
[0013] 別の実施形態では、親水性小滴担体粒子を製造する方法は、複数の入口を有するマイクロ流体小滴生成器デバイスを提供することを含む。光開始剤を包含する水性二相系の架橋可能な第1成分を包含する流体溶液は、複数の入口のうちの1つの入口に流され、架橋可能な第1成分はポリ(エチレングリコール)PEG又はPEG誘導体である。架橋剤を包含する水性二相系の第2成分の溶液が複数の入口のうちの別の入口に流される。油相が複数の入口のうちの別の入口においてデバイス内に流され、それにより、小滴がマイクロ流体デバイス内に形成され、各小滴は、それぞれの小滴内を別個の領域に分離し、別個の領域は、架橋可能な第1成分(例えば、PEG又はPEG誘導体)の富化相、及び、水性二相系の第2成分の富化相(例えば、デキストランのようなポリマー)を包含している。その後、架橋可能な第1成分の富化相が、光に暴露されることによって架橋され、親水性小滴担体粒子を形成する。
【0014】
[0014] 別の実施形態では、親水性小滴担体粒子を製造する方法は、複数の入口を有するマイクロ流体小滴生成器デバイスを提供することを含む。架橋剤を包含する水性二相系の架橋可能な第1成分の溶液は、複数の入口のうちの1つの入口において小滴生成器デバイス内に流され、架橋可能な第1成分は、ポリ(エチレングリコール)PEG又はPEG誘導体である。水性二相系の第2成分の溶液は、複数の入口のうちの別の入口において小滴生成器デバイス内に流される。油相が複数の入口のうちの別の入口において小滴生成器デバイス内に流され、それによって小滴がマイクロ流体デバイス内に形成され、各小滴は、架橋可能な第1成分(例えば、PEG又はPEG誘導体)の富化相及び水性二相系の第2成分の富化相を包含する、それぞれの小滴内の別個の領域に分かれる。その後、架橋可能な第1成分の富化相が、pHを増加させることによって架橋され、親水性小滴担体粒子を形成する。
【0015】
[0015] 別の実施形態では、小滴担体粒子を使用して細胞分泌物アッセイを実行する方法は、複数の3次元親水性小滴担体粒子を提供することであって、各粒子は、その中に形成された空隙又は空洞を有する、提供する工程と、複数の3次元親水性小滴担体粒子の空隙又は空洞内に細胞をローディングする工程と、対象の細胞分泌物に特化した親和剤を添加する工程と、細胞及び親和剤を包含する複数の3次元親水性小滴担体粒子を乳化して複数の滴状物を形成する工程と、複数の滴状物をインキュベートする工程と、滴状物のエマルションを破壊して、水溶液中に細胞を包含する3次元親水性小滴担体粒子を再生し、複数の3次元親水性小滴担体粒子の1以上に、対象の分泌物に特化した染色剤、染料又は他の2次親和剤を添加する工程と、複数の3次元親水性小滴担体粒子の1以上への対象の細胞分泌物に特化した染色剤、染料又は他の2次親和剤によって形成された又は生成されたシグナルのための、以前の工程の複数の3次元親水性小滴担体粒子を分析する工程と、を含む。複数の3次元親水性小滴担体粒子は、親和剤を添加する前に任意選択的に洗浄されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】[0016] 滴状物の一実施形態を示している。
図1B】[0017] 滴状物の別の実施形態を示している。
図2】[0018] 滴状物形成の全般的な概略図を示している。乾燥又は懸濁された小滴担体粒子が取り出され、任意の界面活性剤と共に分散相が添加又は交換される。任意の界面活性剤と共に連続相が添加され、懸濁液が攪拌されて(例えば、ボルテックス、ピペットなどを介して)、サイズを減少させたエマルションを生成する。十分な攪拌後、サテライト小滴と共に均一なサイズの滴状物が形成される。
図3】[0019] 分散相として5μMのFITCデキストラン(500kDa)溶液、及び、連続相として0.5%Pico-Surf(商標)を有するNovec(商標)7500フッ素オイルによる「滴状物」の形成を示している。蛍光画像は、滴状物の空洞内に区別可能なシグナルを示している。
図4A】[0020] マイクロゲル粒子懸濁液によって形成されたエマルションの画像を示しており、懸濁液は、TRITCチャネル(右)に示された球形の小滴担体粒子を有するNovec(商標)7500オイル+0.5%Pico-Surf(商標)に乳化される。
図4B】[0021] ほぼすべての小滴が0又は1粒子のいずれかを包含することを示す粒子/小滴の関数としての小滴の数のグラフを示している。
図4C】[0022] カプセル化された球形の粒子によって形成された小滴の均一領域と共に、不均一なサテライト小滴の範囲を示す小滴サイズ分布を示すグラフを示している。
図4D】[0023] カプセル化された三日月形の小滴担体粒子によって形成された滴状物の均一領域と共に、不均一なサテライト小滴の範囲を示す小滴サイズ分布を示すグラフを示している。
図4E】[0024] 小滴当たりの小滴担体粒子(三日月形)の数(n=1207)の関数としての小滴の画分のグラフを示している。ほとんどすべての小滴は単一の小滴担体粒子を包含している。
図5】[0025] サテライト小滴からの滴状物の分離を概略的に示している。ある実施形態では、滴状物及びサテライト小滴が異なる力(大きさ及び/又は方向)を受けるように、外力又は外力の組み合わせ(例えば、磁力、重力、浮力、抗力、求心力など)が加えられる。
図6】[0026] 図6A及び図6Bは、チオール化磁性粒子(1μm)の存在下でゲル化され、その後、フッ素オイル中で乳化されたPEG-ビニルスルホンマイクロゲル粒子の画像を示している。図6Aは、最初の乳化が、空のサテライト小滴の大きなバックグラウンドにおいて磁性マイクロゲル粒子をカプセル化する水性小滴をもたらしたことを示している。図6Bは、乳化された磁性マイクロゲル粒子が空の小滴のバックグラウンドから分離されることを可能にする磁場の作用後に撮られたものである。
図7A】[0027] 水性二相系を介して空洞包含微小粒子を製造するために使用されるプロセスの一実施形態を示している。この実施形態では、PEG(例えば、4アームの10kDaのPEG-ノルボルネン)及びデキストラン(例えば、40kDa)相は、マイクロ流体小滴生成器デバイス(図7B)内で同時に流され、油(例えば、Novec(商標)7500+0.25%Pico-Surf(商標))中に単分散エマルションを生成する。小滴が形成された時点でPEG相及びデキストラン相が分離し、その後、PEG相が架橋される。一実施形態では、紫外光励起が使用されてゲルを架橋する。より具体的には、光開始剤(2%w/vのリチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィナート(LAP))がPEG相で予備分散させられ、架橋剤(DTT)がデキストラン相中に予備分散させられる。相分離後、紫外線が使用されて、PEG-ノルボルネンとDTT架橋剤との間のチオール-エン反応を誘導するラジカルを生成し、ゲルマトリックスを生成する。架橋後、粒子は洗浄されて油相及びデキストラン相を除去する。小滴生成、相分離及び洗浄のそれぞれの顕微鏡画像が、マイクロ流体小滴生成デバイスのそれぞれの領域の下方に示されている。
図7B】[0028] 図7Aの方法を使用して小滴担体粒子を形成するために使用されるマイクロ流体小滴生成デバイスを示している。
図8A】[0029] PEG-デキストラン水性二相系の例の相図を示している。この実施形態では、20kDaの8アームPEGビニルスルホン及び40kDaのデキストラン溶液が使用された。エマルションは、図7Bに示されたフローフォーカシング/小滴生成マイクロ流体デバイスを用いて形成された。PEG及びデキストラン領域の形態は、それらの相対濃度を変化させることによって調節されることができる。希釈濃度では、デキストラン相とPEG相とは混合されたままである。低い希釈濃度では、PEG及びデキストランは相分離を受ける。デキストラン対PEG濃度比が最終小滴で増加すると、内部デキストラン領域の容積画分が増加する。PEG及びデキストランの総濃度が増加すると、二相間の界面張力がデキストラン領域の突出を引き起こす(右上の画像)。図示されている小滴の直径は約100マイクロメートルである。
図8B】[0030] 例示的なPEG-デキストラン水性二相系の相図を示している。この実施形態では、10kDaの4アームPEG-ノルボルネン及び40kDaのデキストラン溶液が使用された。PEG及びデキストランの濃度を調整することにより、小滴の形態及び得られた紫外光架橋粒子の両方が調節されることができる。
図9】[0031] 水性二相系アプローチを使用して製造された小滴担体粒子の範囲を示している。架橋及び洗浄工程の後、小滴担体粒子は、それらの元の直径の約130%まで膨潤する。ここに示した条件については、20%w/vの40kDaのデキストラン及び15%w/vの4アームPEG-ノルボルネン(10kDa)が使用された。チャネル高さ70マイクロメートル、PEG流速4マイクロリットル/分、デキストラン流量1マイクロリットル/分、並びにそれぞれ油流速10及び20マイクロリットル/分のマイクロ流体小滴生成デバイスを使用して、100マイクロメートル及び80マイクロメートルの直径の小滴担体粒子12が製造された。直径55、45及び10マイクロメートルの小滴担体粒子12が、チャネル高さ18マイクロメートル、PEG流速2マイクロリットル/分、デキストラン流速0.5マイクロリットル/分、並びにそれぞれ油流速5、10及び20マイクロリットル/分のマイクロ流体小滴生成デバイスを使用して製造された。
図10A】[0032] フッ素オイル中に形成されたPEG-デキストランエマルションを示している。画像分析(右)はPEG(CV=0.75%)及びデキストラン相(CV=1.45%)の両方で高い均一性を示している。CVは変動係数である。
図10B】[0033] 水中に分散され、蛍光顕微鏡を使用して画像化された架橋小滴担体粒子を示している(左の2つの画像)。粒子は、TRITC-マレイミド染料と共役されて、それらを蛍光チャネルで観察した-蛍光バーコーディングのために同様のフルオロフォア(蛍光色素)共役工程が使用されることができる。粒子サイズの分布は、図10Bの右側に配置された直径に対する小滴担体粒子の数のグラフに見られるように均一である(CV<5%)。
図10C】[0034] 図10C及び図10Dは、水中に分散され、蛍光顕微鏡を使用して画像化された小滴担体粒子を示している。
図10D】[0034] 図10C及び図10Dは、水中に分散され、蛍光顕微鏡を使用して画像化された小滴担体粒子を示している。図10Dは、図10Cの拡大領域を示している。
図10E】[0035] 粒子数の関数としての開口部径及び粒子径のヒストグラムを示している。相分離された小滴の紫外線架橋によって高い均一性が達成された一方で、それらはマイクロ流体チップ内に残った(外径CV=1.5%、開口部径CV=2.1%)。
図11A】[0036] 小滴容積変動の理論的計算を示している。ここでは、球形の粒子及び三日月形又は中空の小滴担体粒子(すなわち、空隙又は空洞包含粒子)によって鋳型化される滴状物が考慮され、かつ、滴状物は、マイクロ流体デバイスによって形成された小滴(粒子なし)と比較される。小滴担体粒子は、一定のサイズに制限され、小滴の外径は、粒子径に対して変化させられる。グラフは、空洞を有する粒子を使用することによって、総容積に対する分散相容積の変動が直径の増加と共に減少することを示している。より具体的には、分散相容積の変動は、粒子外径に対する空洞内径の比が増加するにつれて減少し、このことは、滴状物において均一な反応を実行するのに有利である。
図11B】[0037] 図11B及び図11Cは、滴状物中の試薬カプセル化効率の理論的計算を示している。ここでは、球形の粒子及び三日月形又は中空の小滴担体粒子(すなわち、空隙又は空洞包含粒子)によって鋳型化された滴状物が考慮される。図11Bは、比較的大きい空洞を有する粒子、及び、より厚い外側水層を有する滴状物についてカプセル化効率が増加することを実証している。
図11C】[0037] 図11B及び図11Cは、滴状物中の試薬カプセル化効率の理論的計算を示している。ここでは、球形の粒子及び三日月形又は中空の小滴担体粒子(すなわち、空隙又は空洞包含粒子)によって鋳型化された滴状物が考慮される。図11Cは、滴状物の形成前に小滴担体粒子の濃度を増加させる(空隙率を減少させる)ことがカプセル化効率を増加させることを示している。
図12】[0038] 多くの標準アッセイによって粒子の官能化及び滴状物の適合性を可能にするために、小滴担体粒子が、多くの異なる反応性部分によってどのように修飾されることができるかを概略的に示している。粒子共役の3つの方法には、直交反応性化学、ビオチン-ストレプトアビジン結合又は細胞接着性ペプチドが含まれる。
図13】[0039] 図13A及び図13Bは、PCR(図13A)及びデジタルELISA(図13B)のようなデジタル核酸増幅アッセイが滴状物内でどのように実行されることができるかを示している。核酸又は抗体によって官能化された小滴担体粒子は、水溶液中で適当なアッセイ試薬と混合される。対象の検体は、小滴担体粒子の表面と優先的に自己結合し、その後の洗浄がバックグラウンドシグナルを除去することを可能にする。その後、粒子は、機械的攪拌を通じて乳化され、滴状物単離反応を形成し、かつ、小滴容積内に又は小滴担体粒子自体に付着する蓄積したシグナルを形成する。その後、滴状物は、標準的な顕微鏡、フローサイトメトリ又はプレートリーダを通じて分析されることができる。
図14】[0040] 図14A図14Cは、滴状物乳化が細胞生存率に影響を及ぼさないことを示している。ヘキスト(hoescht)及びカルセインによって染色されたジャーカット(Jurkat)細胞が小滴担体粒子と共に水溶液中に懸濁させられた。小滴担体粒子は、フッ素オイル中で機械的攪拌を通じて乳化されて、細胞を包含する滴状物を形成した。滴状物は、明視野における蛍光顕微鏡(細胞形態)(図14A)、DAPI(ヘキスト-核染色)(図14B)及びFITC(カルセイン-細胞生存性)チャネル(図14C)を介して画像化された。
図15A】[0041] 図15A図15Dは、バーコーディングの例示的な実施形態の概要を示している。図15Aは、小滴担体粒子の外径を変化させながら、内部空洞のサイズがどのように維持されるかを示している。滴状物はサイズ範囲によって識別される。
図15B】[0041] 図15A図15Dは、バーコーディングの例示的な実施形態の概要を示している。図15Bでは、小滴担体粒子は、様々な強度の1以上の染料によって修飾される。固有の粒子タイプは、強度又は複数の染料強度の比によって定義される。
図15C】[0041] 図15A図15Dは、バーコーディングの例示的な実施形態の概要を示している。図15Cでは、種々の数又は磁性包含量の磁性粒子が粒子上/粒子内に埋め込まれ/架橋され、相対的な磁力による分離を可能にする。
図15D】[0041] 図15A図15Dは、バーコーディングの例示的な実施形態の概要を示している。図15Dでは、様々な数及びサイズの光散乱粒子が、小滴担体粒子上又は内に埋め込まれ/架橋され、光散乱又は散乱角度の相対量/強度に基づく分離を可能にする。
図16】[0042] 細胞分泌物分析及び任意選択的なソーティングのための例示的な概略的ワークフローを示している。小滴担体粒子は、ウェルプレート、フラスコなど内に播種され、その後、細胞は小滴担体粒子の空隙又は空洞内に播種される。細胞が付着した後、小滴担体粒子及び結合した細胞は、油系連続相とピペット又は他の混合作用によって区画化するために滴状物内に形成される。細胞はインキュベートされ、分泌された分子は、結合した小滴担体粒子上に捕捉される。結合した細胞を有する小滴担体粒子は水相に戻され、捕捉された分泌物は、例えば、第2の親和性相互作用を通じて蛍光分子によって分類される。その後、小滴担体粒子及び結合した細胞は、フローサイトメータを使用して分析されてソーティングされることができる。
図17A】[0043] 細胞から分泌された抗体が、細胞に結合された小滴担体粒子上に捕捉される一実施形態を概略的に示している。この例では、抗-IL-8分泌CHO細胞が滴状物内でインキュベートされ、分泌された抗体は、小滴担体粒子に共役されたプロテインAによって捕捉される。水相に戻した後、捕捉抗体は、可視化のために蛍光抗-IgGによって分類される。
図17B】[0044] 細胞に結合された小滴担体粒子上の閾値を超える高い蛍光シグナルを示す、細胞が付着していない小滴担体粒子についての蛍光シグナルを示さない又は低い蛍光シグナルを示す例示的な顕微鏡画像を示している。明視野画像(左)は、小滴担体粒子及び1つの小滴担体粒子の空洞内の細胞を示している。中央の画像は、生細胞を示す蛍光染色剤を使用した細胞の蛍光顕微鏡画像を示している。右の画像は、小滴担体粒子を覆う分泌抗体の抗-IgG染色の蛍光顕微鏡画像を示している。
図18】[0045] 蛍光活性化細胞ソータを使用した、結合した分泌細胞と共に小滴担体粒子の高スループットソーティングを示している。画像の上段は、ソーティング前の小滴担体粒子及び結合した細胞を示している。明視野画像化が左側に示され、カルセインAMによって染色された生細胞を示す蛍光画像化が中央に示され、IgGに特化したCy5共役2次抗体によって分類された捕捉された抗体分泌物を示す別個のチャネルにおける蛍光画像化が右側に示されている。3つの(上のパネル)画像はすべて、同じ視野のものである。これらの小滴担体粒子及び結合した細胞はフローソータを通過させられる。サイトメータにおける小滴担体粒子の事象に対する前方散乱(FSC)及び側方散乱(SSC)が2次元プロットで示されている。事象の右上の四分円がゲートされ、それらの事象のための遠赤チャネルの蛍光強度がヒストグラム(蛍光強度を示す右側のグラフ)で示されている。顕微鏡画像化は、画像に「ソーティングゲート」として示されている特定の閾値を超える高い蛍光シグナル事象をソートオフすることによって、細胞を有する小滴担体粒子の蓄積と、高濃度の捕捉されたタンパク質と、を示している。スケールバーはすべて200ミクロンである。
図19】[0046] 総分泌に基づいて単一細胞又は単一細胞コロニーのソーティング/分析を実行するための例示的なワークフローを示している。前述したアプローチにしたがって、単一細胞が、小滴担体粒子に単離されることができ、かつ、分泌物がクロストークなしに蓄積して小滴担体粒子に捕捉される滴状物に乳化されることができる。その後、小滴担体粒子は、水中に戻され、分泌物の量を示すために染色され、付着した細胞と共に分析/ソーティングされることができる。その後、細胞のソーティングされたサブ集団は拡張されて反復選択工程を実行することができる。所望のサブ集団の選択を改善するために、複数のサイクルにわたってスクリーニングが実行されることができる。関連の実施形態では、小滴担体粒子中に播種された単一細胞が増殖させられて、乳化前に小滴担体粒子に付着したクローン性コロニーを形成することができる。これにより、クローンの増殖及び分泌に基づく分析及びソーティングを組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0047] 図1Aは滴状物10の一実施形態を示している。本明細書で使用される用語「滴状物」は、非混和性相16(例えば、油)中に懸濁された分散(例えば、水)相溶液又は流体14の別個の容積に包含され、別個の容積を包含し又は別個の容積に結合される固相粒子又は小滴担体粒子12のことを指している。小滴担体粒子12(又は、粒子12とも参照することもある)は、好適な一実施形態において、好適な一実施形態では親水性である架橋ヒドロゲル材料から形成される小型で、(それらの最長寸法において)サブミリメートルスケールで、球形又は楕円形の粒子である。小滴担体粒子12の典型的な寸法範囲(直径又は最長寸法)は、約10μm~約500μm、より好適には20μm~200μm、さらにより好適には40~120μmである。各小滴担体粒子12は、その中に形成された空隙容積又は空洞18を有している。空隙又は空洞18は、分散相溶液又は流体14(例えば、水相)の少なくとも一部を保持する3次元容積を規定する。空隙又は空洞18内に保持された典型的な流体容積は、約100fL及び約10nLの範囲の容積を含んでいる。小滴担体粒子12内の空隙又は空洞18の長さ寸法(例えば、球形の空隙の直径)は、数ミクロンであり、典型的には約5μmより大きく、かつ、約250μmより小さい。ある実施形態では、小滴担体粒子12は、水相溶液又は流体14の完全な小滴内に包含され、溶液又は流体14の一部は空隙又は空洞18内にも配置される。これは図1Aに示されている。
【0018】
[0048] 一実施形態では、非混和性流体中に懸濁された固相の小滴担体粒子12に関連する別個の容積を採用する小滴ベースのエマルション系が提供される。この系では、一実施形態によれば、複数の水性滴状物10は、油16に包含されるエマルションを形成する。油16は連続相(すなわち、エマルションの外部相)として作用する一方で、水性滴状物10は、分散相(すなわち、エマルションの内部相、又はカプセル化される相)として作用する。油16は、滴状物10を取り囲んで単分散滴状物10エマルションを生成する。単分散とは、滴状物10の各々内に実質的に同じ容積の流体を保持する滴状物10の能力のことを指している。
【0019】
[0049] 別の実施形態では、複数の油性滴状物10が、水性流体16に包含されるエマルションを形成する。水性流体16が、連続相(すなわち、エマルションの外部相)として作用する一方で、油性滴状物10が、分散相(すなわち、エマルションの内部相、又はカプセル化される相)として作用する。水性流体16は、滴状物10を取り囲んで単分散滴状物10エマルションを生成する。この実施形態は、小滴担体粒子12が疎水性であって周囲の連続相が水性である先の実施形態とは逆である。
【0020】
[0050] 図1Aは、小滴担体粒子12の外面と相互作用する、外面と連通する又は外面に開口する空隙又は空洞18を含む小滴担体粒子12の一実施形態を示している。本明細書で説明するように、空隙又は空洞18は、球体の形状をとる取り去られた空隙又は空洞として形成されてもよく、図1Aに図示されるもののような三日月形の断面を有する最終的な小滴担体粒子12を生成する。内接した空隙又は空洞18は、流体充填(並びに、細胞、ビーズ及び他の微小物体へのアクセス)のための経路を形成するためにその表面で球形又は楕円形のエンベロープと交差する。好適な一態様において、空隙又は空洞18は、狭い開口部(すなわち、小滴担体粒子12の球形又は楕円形のエンベロープの実際の表面積の小さい画分)で球形又は楕円形のエンベロープと交差する。ある実施形態では、開口部によって規定されるこの画分の面積は、小滴担体粒子12の全体の球形/楕円形のエンベロープ又は表面積の33%未満であり、他の実施態様では10%未満であり、さらなる実施形態では5%未満である。
【0021】
[0051] 代替的に、ある実施形態では、取り去られた空隙又は空洞18は、球形のエンベロープの表面と交差しない。例えば、図1Bは、3次元の親水性小滴担体粒子12の完全に内部に配置され、かつ、3次元の親水性小滴担体粒子12の表面と交差しない空隙又は空洞18を含む小滴担体粒子12のそうした一実施形態を示している。この実施形態では、小滴担体粒子12を形成する材料は、流体、試薬及び/又は試料が小滴担体粒子12を通じて空隙又は空洞18内に拡散し得るように透過性又は半透過性にされてもよい。同様に、ある実施形態における反応生成物が、サイズに応じて小滴担体粒子12から外側に拡散することができてもよい。拡散のための特定のサイズのカットオフは、小滴担体粒子12を形成する下地材料の多孔性を調整することによって調節されてもよい。典型的には、細胞、ビーズ又は他の微小物体のようなより大きな種は小滴担体粒子12を通じて拡散することができない一方で、流体及び小分子及び他の種は小滴担体粒子12を通じて拡散することができる。関連の実施形態では、空隙又は空洞18は、試料分子及び試薬の周囲流体(例えば、非架橋デキストラン)からの分子拡散を可能にする多孔質ポリマー材料を保持又は担持している。好適には、この実施形態では、空隙又は空洞18内に配置された多孔質ポリマー材料は、小滴担体粒子12を形成する下地材料よりもさらに多孔質である。
【0022】
[0052] ある態様において、小滴担体粒子12の表面は、図1A図12図13A図13B図16図17Aで見られるように、滴状物10の官能化及び多くの標準アッセイとの滴状物10の適合性を可能にするために1以上の反応性又は結合性部分20で修飾されてもよい。例えば、反応性又は結合性部分20は、空隙又は空洞18内の小滴担体粒子12の表面に形成されてもよい。結合性又は反応性部分20は、例として、核酸、ペプチド、細胞接着ペプチド、触媒、酵素、抗体、プライマー、抗原、アプタマー、ビオチン、又はビオチン/ストレプトアビジン複合体を含み得る。反応性又は結合性部分20の小滴担体粒子12への共役のために、当業者に公知の直交反応性化学物質が使用されてもよい。
【0023】
[0053] 本明細書で説明するように、親水性の小滴担体粒子12を使用する実施形態では、水相の小滴担体粒子12の懸濁液を油(及び任意の界面活性剤)と組み合わせ、図2に示すもののように混合(例えば、ボルテックス、ピペットなど)することによって、滴状物10の形成が実現される。攪拌と混合による流体力学的剪断とが、小さいサイズを有するエマルションを生成する。継続的な攪拌の後、小滴内に包含される小滴担体粒子12は、小滴のさらなる収縮を防止するサイズを拘束するものとして作用する。小滴担体粒子12が空隙又は空洞18を包含する固体鋳型小滴も熱力学的に安定化されることができる。温度又は時間の増加に伴い、滴状物10は、水相で分散相の支持されていない小滴が凝集時の系の界面エネルギーの減少に起因して凝集する方法と同じ方法で凝集しない。ピペット及びボルテックスの両方が使用されて滴状物10が形成されてもよい。ピペット及び/又はボルテックスによる混合を使用することによって、小滴担体粒子12を包含しないより小さなサテライト小滴とともに滴状物10の均一なエマルションを達成することができる。均一な粒子鋳型エマルションの一実施形態では、実質的に全ての粒子包含小滴(例えば、>95%、>99%、又は>99.9%)は各々、単一の小滴担体粒子12と結合される。それらの固有のサイズ範囲に起因して、滴状物10は、画像分析を使用して容易に識別されることができ、又は、標準的な濾過技術を使用して、周囲のより小さなサテライト小滴(すなわち、滴状物10の形成中に生成されたバックグラウンド小滴)から容易に濾過されることができる。また、サテライト小滴は、小滴担体粒子12に付着させられ、したがって、滴状物10内で起きるような反応を進行させない反応性部分20を包含しない。試料の全水量が、試料と混合された小滴担体粒子12の各々によって支持されることができる容積の合計以下である場合、サテライト小滴は有意に減少又は除去されることができる。
【0024】
[0054] 概して、滴状物10の形成については、ピペットは、単一の小滴担体粒子12のみを包含する水性エマルションの大きな画分を有する単分散滴状物10を形成するために、ボルテックスよりも良好に実行されることが見い出された(例えば、図4B及び図4E参照)。滴状物の形成は、最初に、試料を包含する試薬チューブを機械的に攪乱/タップすることによって、又は、より大きな直径の開口部(例えば、1000μLピペット)を有するピペットを使用することによって、のいずれかによって油中で小滴担体粒子12の最初の懸濁液を分解し、その後、ボルテックスによって、又は、より小さい直径を有するピペット(例えば、100、200μLピペット)によるピペットによってより微細なエマルションに分解することによって、改良されることができる。
【0025】
[0055] 有機相で存在する界面活性剤の濃度は、形成された滴状物10の単分散性、及び、単一の小滴担体粒子12を包含する容積の画分にも影響する。一般的な傾向として、油相の界面活性剤の濃度を増加させると、小滴担体粒子12の単一粒子包含滴状物10へのより良好な分散がもたらされた。Novec7500中の0.5%v/vを超えるPico-Surf濃度は高い単分散性をもたらした。好適な実施形態では、Novec7500中に2%v/vのPico-Surfが連続相として使用され、形成された滴状物10のほぼ完全な単分散性をもたらす。水相内で水性界面活性剤(例えば、Pluronic F-127、Triton X-100)の添加を通じて、滴状物の単分散性のさらなる改善が達成されることができる。一実施形態では、0.1%のPluronic F-127が、粒子凝集を低減させ、界面張力を減少させ、より均一な滴状物10をもたらすために、水相に含まれる。別の実施形態では、水性分散相に1%w/vのPEG-5000を添加すると、粒子12の凝集を低減し、より均一な滴状物10が得られた。
【0026】
[0056] さらに、小滴担体粒子12のポリマー組成、又は、分散相の塩濃度などの因子が、溶液中の小滴担体粒子12の互いに対する親和性に影響を与えることに留意すべきである。例えば、より高い重量%のPEGから形成された球形の小滴担体粒子12が好まれた。6重量%のPEGは3重量%よりも好適であった。12重量%のPEG小滴担体粒子12がさらに好適であった。したがって、ポリマー骨格製剤は、小滴担体粒子12を溶液中に適切に分散させて単分散滴状物10を形成するのに必要な界面活性剤濃度に影響を与えることができる。さらに、脱イオン(DI)水のような低塩溶液を使用して滴状物の単分散性が増加させられた。
【0027】
[0057] 油相の選択はまた、得られた滴状物10の機能に影響し得る。例えば、Pico-Surf界面活性剤を注入されたNovec-7500は、RAN界面活性剤を有するFluorinert(商標)FC-40油のような代替油相よりも均一な滴状物10を形成する際に好ましかったが、この条件も滴状物10を形成することができた。しかしながら、RAN界面活性剤と共のFluorinert(商標)FC-40は、Pico-Surfと共のNovec-7500と比較した場合に熱安定性が改善された。したがって、ある用途は、油相の交換から利益を得ることができる。例えば、滴状物10は、Novec-7500内に形成されて単分散エマルションを生じさせることができ、その後、Novec油は、除去されて、DNA増幅のためのサーモサイクリングのような高温用途のためにFluorinert(商標)FC-40に置換されることができる。
【0028】
[0058] 図2は、滴状物10を形成する1つの方法を示している。まず、分散相で乾燥した又は懸濁された小滴担体粒子12が提供される。これらは、ホルダ又は容器22に包含されてもよい(例えば、エッペンチューブが図示されているが、他のホルダ又は容器が使用されることもできる)。分散相が存在しない場合、分散相(例えば、水相)がホルダ又は容器22に添加される。別の実施形態では、図2の工程100に見られるように、初期の分散相は、添加されるか、又は、別の分散相と交換されることができる。図2は、分散相14中に包含される小滴担体粒子12を示している。その後、工程110に見られるように、連続相26が、任意の界面活性剤と共に添加される(例えば、油相)。その後、ホルダ又は容器22は、ボルテックス、ピペットなどを含み得る撹拌工程120を受ける。攪拌工程120は、滴状物10及び場合によってはサテライト小滴28を生成する。サテライト小滴28は、例えば、混合物の濾過を使用して除去されてもよい。サテライト小滴28の形成は、滴状物10の形成中に添加される分散相の容積を制御することによって最小限に抑えられてもよい。
【0029】
[0059] 図3は、分散相14としての5μMのFITCデキストラン(500kDa)溶液と、連続相16として添加された0.5%Pico-Surf(商標)界面活性剤を有するNovec(商標)7500フッ素オイルと、による滴状物10の形成を示している。図3は、乳化前(左)と滴状物10が形成される乳化後に分散相14中に包含される小滴担体粒子12を示している。乳化前(左画像)及び乳化後(右画像)に対応する画像が下に提供されている。蛍光画像は、滴状物10の空隙又は空洞18内に明確なシグナルを示している(右画像)。
【0030】
[0060] 図4Aは、(0.5%Pico-Surf(商標)界面活性剤を有するNovec(商標)7500フッ素オイルから構成された連続相の水滴を鋳型とするために球形の粒子12を使用して)形成された結果として生じたエマルションの画像を示している。滴状物10は、明視野画像(左画像)に示されており、球形の小滴担体粒子12が、蛍光チャネル(右画像)で示されている。両方の非常にばらつきのあるサイズのサテライト小滴28と、蛍光染色された小滴担体粒子12と重なる均一な滴状物10と、が示されている。図4Bは、小滴当たりの小滴担体粒子12の関数としての小滴の数を示すグラフを示している。小滴担体粒子12を包含する小滴のうち、ほぼすべてが単一の小滴担体粒子12のみを包含している。図4Cは、カプセル化された小滴担体粒子12(すなわち、滴状物10)によって形成された小滴の均一領域と共に、不均一なサテライト小滴28の範囲を示す小滴サイズ分布を示すグラフを示している。
【0031】
[0061] 図4Dは、カプセル化された三日月形の小滴担体粒子12(すなわち、滴状物10)によって形成された小滴の均一領域と共に、不均一なサテライト小滴28の範囲を示す小滴サイズ分布を示すグラフを示している。三日月形の小滴担体粒子12が使用されて、0.5%Pico-Surf(商標)界面活性剤を有するNovec(商標)7500フッ素オイルから構成された連続相の水滴を鋳型にした。図4Eは、小滴当たりの小滴担体粒子12(三日月形)の関数としての小滴の数を示すグラフを示している。小滴担体粒子12を包含する小滴のうち、ほぼすべてが単一の小滴担体粒子12のみを包含している。
【0032】
[0062] 図5は、代替の実施形態に係る、サテライト小滴28からの滴状物10の分離を示している。これらの実施形態では、滴状物10及びサテライト小滴28が異なる力(大きさ及び/又は方向)を受けるように、外力又は外力の組み合わせ(例えば、磁力、重力、浮力、抗力、求心力など)が加えられる。例えば、小滴担体粒子12は、加えられた磁場に応答しないサテライト小滴28から滴状物10を分離するために使用される外部から加えられた磁場と共に磁性材料を包含してもよい。
【0033】
[0063] 例えば、図6A及び図6Bは、チオール化された磁性粒子(1μm)の存在下でゲル化され、続いて、フッ素オイル中で乳化され、その後、分離されたPEG-ビニルスルホンマイクロゲル粒子の画像を示している。図6Aは、最初の乳化が、無意味(empty)なサテライト小滴28の大きなバックグラウンドにおいて磁性マイクロゲル粒子をカプセル化する水性小滴(AD)をもたらしたことを図示している。図6Bは、磁場を加えた後、乳化された磁性マイクロゲル粒子が、無意味なサテライト小滴28のバックグラウンドから分離されることができることを示している。
【0034】
[0064] 空隙又は空洞18を有する小滴担体粒子12を製造するために、油相の単分散エマルションを形成するために使用されるマイクロ流体小滴生成器デバイス30が提供され、それによって内部分散相は水性二相系を含む。水性二相系の一部は、架橋性ヒドロゲル前駆体、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)又はその誘導体である。水性二相系の他の一部はデキストランのようなポリマーである。その後、水性二相系の二相は、形成された小滴内の別個の領域に散らばる。その後、二相系のうちの一成分(すなわち、架橋性成分)が架橋されて小滴担体粒子12を形成する。図7Aは、その中に形成された空隙又は空洞18を有する小滴担体粒子12を生成するプロセスを概略的に示している。図7Aに見られるように、水性二相系が使用されて小滴担体粒子12を形成する。この特定の実施形態では、水性二相系は、(架橋剤を使用して)架橋性成分であるPEG又はPEG誘導体(例えば、10kDaの4アームPEG-ノルボルネン)及び架橋されていないデキストラン(例えば、40kDa)を含む。マイクロ流体小滴生成器デバイス30は、油相内で水性二相系のエマルションを生成するために使用される。2つの水相成分(例えば、PEG及びデキストラン)を包含する小滴は、相分離工程における小滴形成後に分離する。相分離後、PEG又はPEG誘導体成分はゲル内に架橋される。例えば、PEG又はPEG誘導体成分内の光開始剤(例えば、Irgacure(登録商標)2959、LAPなど)の存在下でのジオチオトレートル(DTT)のような架橋剤は、その後、光暴露(例えば、紫外線励起)を受けて架橋を開始する。もちろん、システイン包含ペプチド又は他のジチオール又はマルチアーム架橋剤のような他の架橋剤が使用されてもよい。別の実施形態では、マルチアームPEG-ノルボルネン+ジチオール架橋剤の間のチオール-エン反応が紫外線及び光開始剤を介して開始される。関連の実施形態では、PEG及び/又はポリマー相のいずれかは、光開始剤及び架橋剤の一方又は両方の組み合わせを包含することができる。架橋後、小滴担体粒子12は洗浄されて油相及びデキストラン相を除去することができる。
【0035】
[0065] 図7Bは、フローフォーカシングを使用して空隙又は空洞18を有する小滴担体粒子12を生成するために使用されるマイクロ流体小滴生成器デバイス30のレイアウトを示している。マイクロ流体小滴生成器デバイス30は、エマルション(小滴)が生成される小滴生成ゾーン又は領域38に収束/交差する多数のマイクロ流体チャネル32、34、36を含む。生成された小滴は、小滴が蓄積して一時的に貯蔵され得るチャンバ又は領域42に導くことができる別のマイクロ流体チャネル40を下って移動する。デバイス30の出口44が使用されて小滴/小滴担体粒子12を除去してもよい。各マイクロ流体チャネル32、34、36は、様々な成分を入力するためのそれぞれの入口46、48、50を含む。この例では、PEG(例えば、4アームの10kDaのPEG-ノルボルネン)相及びデキストラン(例えば、40kDa)相がマイクロ流体デバイス30内で共に流されて、油(例えば、Novec(商標)7500+0.25%Pico-Surf(商標))中の単分散エマルションを生成する。一実施形態では、マイクロ流体チャネル32につながる第1入口46が使用されて界面活性剤と共に油相を送達する。マイクロ流体チャネル34につながる第2入口48がデキストランを送達するために使用される。マイクロ流体チャネル36につながる第3入口50がPEG並びに架橋剤及び光開始剤を送達するために使用される。別の実施形態では、マイクロ流体チャネル32につながる第1入口46が使用されて界面活性剤と共に油相を送達する。マイクロ流体チャネル34につながる第2入口48が使用されて架橋剤と共にデキストランを送達する。マイクロ流体チャネル36につながる第3入口50が使用されてPEG及び光開始剤を送達する。小滴生成前のポリマー前駆体及び架橋剤の分離は、試料シリンジ又はチャネル入口内で架橋し始め、流れを停止し得る高反応性化学物質を使用する場合に特に有用である。別の実施形態では、架橋剤は、PEG又はデキストラン相に含まれないが、代わりに、それ自身の追加の入口及び接続チャネルに注入される。これは、架橋剤がデキストラン相、例えばより大きなチオール化PEG架橋剤に容易に溶解しない場合に有用である。
【0036】
[0066] 小滴が形成されて、その後にPEG相が架橋された時点で、PEG相及びデキストラン相が分離する。上述したように、一実施形態では、紫外線励起が使用されてゲルを架橋する。より具体的には、光開始剤(2%w/vのリチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィナート(LAP))がPEG相中に予備分散され、架橋剤(DTT)はデキストラン相中に予備分散される。相分離後、紫外線が使用されて、PEG-ノルボルネンとDTT架橋剤との間のチオール-エン反応を誘導するラジカルを生成し、小滴担体粒子12を形成するゲルマトリックスを生成する。架橋は、マイクロ流体小滴生成器デバイス30の出口44を通じて小滴が出た後、マイクロ流体小滴生成器デバイス30又は「オフチップ」において起こり得る。架橋後、小滴担体粒子12が洗浄されて油相及びデキストラン相を除去した。
【0037】
[0067] 別の実施形態では、pHレベルの変化が使用されて小滴担体粒子12を架橋する。例えば、PEG-ビニルスルホン/マレイミド+ジチオール架橋剤が低いpHで使用されて、マイクロ流体小滴生成器デバイス30における小滴形成の前のゲル化を防止する。その後、pHは、下流の油相に有機塩基(例えば、トリエチルアミン)を添加することによって分散相で増加させられて架橋反応を開始する。関連の実施形態では、参照により本明細書に組み込まれるde Rutte,J.M.,Koh,L,Di Carlo,D.の「Scalable High-Throughput Production of Modular Microgels for In Situ Assembly of Microporous Tissue scafols」、Adv. Funct. Mater. 2019,29,1900071に記載されているような、並列ステップの乳化小滴発生成器マイクロ流体デバイス30が、単一の溶液中でデキストラン相と混合されたプレポリマー相上で動作し、相分離及び重合に先立って(例えば、紫外線又はpH変化を介して)単分散小滴を生成する。上述した実施形態のすべてにおいて、PEGの架橋後、デキストラン相が除去され、所望の水相が添加又は置換されて滴状物10を形成することができる。図1Bに例示されるように、ある実施形態では、例えば、中空の小滴担体粒子12を形成する場合には、内部デキストラン相が空隙又は空洞18内に維持されることができる。
【0038】
[0068] 図8Aは、PEG-デキストラン水性二相系の例の相図を示している。PEG及びデキストランの両方の相対濃度を調節することによって、小滴担体粒子12内の空隙空間又は空洞18の形態及び/又は容積を調節することができる。ここでは、20kDaの8アームPEGビニルスルホン及び40kDaのデキストラン溶液が使用された。エマルションは、図7Bのマイクロ流体小滴生成器デバイス30を使用して形成された。PEG及びデキストラン領域の形態は、それらの相対濃度を変化させることによって調節されることができる。希釈濃度では、デキストラン相及びPEG相は混合されたままである。希釈濃度が低い場合、PEG及びデキストランは相分離を受ける。デキストラン対PEG濃度比が最終小滴で増加すると、内部デキストラン領域の容積画分が増加する。PEG及びデキストランの総濃度が増加すると、二相間の界面張力がデキストラン領域の突出を引き起こす(右上画像)。図示の小滴の直径は約100マイクロメートルである。PEG及びデキストランの濃度が高い条件では、相分離が急速(<1秒)であることが分かった。バイノーダルの近傍の条件では、相分離はより長い(>1秒)ことが分かった。
【0039】
[0069] 図8Bは、PEG-デキストラン水性二相系の例の相図を示している。この実施形態では、10kDaの4アームPEG-ノルボルネン及び40kDaのデキストラン溶液が使用された。PEG及びデキストランの濃度を調整することによって、小滴の形態及び得られた紫外線架橋小滴担体粒子12の両方が調節されることができる。希釈濃度では、PEG相及びデキストラン相は単一相として混合されたままである(バイノーダル線より下)。より高い濃度(バイノーダルより上)では、PEG及びデキストラン相は、小滴内で別個のPEGリッチ相及びデキストランリッチ相に分離する。PEG及びデキストランの総濃度が増加すると、二相間の界面張力が増加し、デキストラン相が油界面のより大きな部分と接触させられる(右上画像)。紫外線で架橋した後、得られた小滴担体粒子12(相分離を受けなかった1つの例を除く)は、(小滴担体粒子12の全サイズに対して)同様の空洞容積を維持するが、空洞の開口部サイズを増加させる。PEGに対するデキストランの濃度の相対比が増加すると(右下)、デキストランリッチ相の容積も増加する。紫外線架橋後、より大きな容積のデキストランリッチ相を有する小滴担体粒子12は、比例してより大きな空洞又は空隙18を有していた。さらに、バイノーダル曲線近傍の条件、特に高量のデキストランでは、架橋後、空洞が完全に封入されたままである(空隙が外側粒子12のエンベロープに接触しない)ことが分かった。
【0040】
[0070] 図9は、マイクロ流体小滴生成器デバイス30を使用して水性二相系アプローチを使用して製造された小滴担体粒子12の範囲を示している。架橋及び洗浄工程の後、小滴担体粒子12は、それらの元の直径の約130%まで膨潤する。ここに示された条件に対して、20%w/vの40kDaデキストラン及び15%w/vの4アームPEG-ノルボルネン(10kDa)が使用された。接合部で70マイクロメートルのマイクロ流体チャネル高さ及び60マイクロメートルの幅、4マイクロリットル/分のPEG流速、1マイクロリットル/分のデキストラン流速、並びに、10及び20マイクロリットル/分の油流速を有するマイクロ流体小滴生成器デバイス30を使用して、100マイクロメートル及び80マイクロメートルの直径の小滴担体粒子12がそれぞれ製造された。接合部で18マイクロメートルのマイクロ流体チャネル高さ及び35マイクロメートルの幅、2マイクロリットル/分のPEG流速、0.5マイクロリットル/分のデキストラン流速、並びに、5、10及び20マイクロリットル/分の油流速をそれぞれ有するマイクロ流体小滴生成器デバイス30を使用して、55、45及び40マイクロメートルの直径の小滴担体粒子12が製造された。
【0041】
[0071] 図10Aは、フッ素オイル中に形成されたPEG-デキストランエマルションの外側PEGエンベロープ及びデキストラン内部成分の直径の関数として、非架橋エマルションの画像及び小滴数のグラフを示している。画像解析は、PEG(CV=0.75%)及びデキストラン相(CV=1.45%)の両方の直径に対して高い均一性を示した。CVは変動係数である。図10Bは、水中に分散された、蛍光顕微鏡を使用して画像化された架橋小滴担体粒子12の画像を示している。小滴担体粒子12は、TRITC-マレイミド染料と共役されて、それらを蛍光チャネル内で観察した-同様のフルオロフォア共役ステップが、小滴担体粒子12の蛍光バーコーディングに使用されることができる。図10Bはまた、架橋小滴担体粒子12の直径の関数としての粒子数のグラフを示している。粒子サイズの分布は均一である(CV<5%)。
【0042】
[0072] 図10C及び図10Dは、水中に分散された、蛍光顕微鏡を使用して画像化された小滴担体粒子12を示している。小滴担体粒子12は、小滴生成器デバイス30の出口領域を通過する間に紫外線で架橋された。小滴担体粒子12は、製造プロセス中にビオチン-PEG-チオールを添加することを通じてビオチン基を有するように修飾された。その後、小滴担体粒子12は、小滴担体粒子12の表面上のビオチンに結合されたAlexa Flour(商標)568ストレプトアビジンで標識され、それらを蛍光的に可視化した。図10Eで見られるように、蛍光画像の分析は高い均一性(外径CV=1.5%、開口部径CV=2.1%)を示した。
【0043】
[0073] 図11Aは、滴状物10の容積変動の理論的計算を示している。ここでは、球形の小滴担体粒子12によって鋳型化された滴状物10が、三日月形の小滴担体粒子12(すなわち、空隙又は空洞包含粒子)と共に考慮され、その中に粒子12が包含されていないマイクロ流体デバイス30によって形成された小滴と比較される。この分析は、小滴担体粒子12の周囲の流体の外径が、乳化プロセス中、ほとんど制御されない間に、空洞18内の容積が十分に制御されることができるという結果に基づいている。小滴担体粒子12は、一定のサイズに制限され、かつ、小滴の外径は粒子直径に対して変化する。空洞又は空隙18を有する小滴担体粒子12を使用することによって、総容積と比較した分散相容積の偏差は、直径が増加するにつれて減少する。より具体的には、分散相容積の変動は、内部空洞18の直径と粒子の外径との比が増加するにつれて減少し、これは、滴状物10において均一な反応を実行するのに有用である。例えば、Din/Dout=0.50及び0.75の場合、三日月形の粒子12の空隙率が増加すると、挙動は、内部粒子なしの球形の小滴の理想的な状況に近づく。
【0044】
[0074] 図11B及び図11Cは、滴状物10における試薬カプセル化効率の理論的計算を示している。ここでは、球形の小滴担体粒子12及び三日月形の小滴担体粒子12(すなわち、空隙又は空洞包含粒子)によって鋳型化された滴状物10が考慮される。カプセル化された試薬又は試料は、粒子マトリックス内に自由に拡散しないと仮定される。カプセル化効率は、滴状物形成後の滴状物10に結合される小滴担体粒子12の初期の濃縮懸濁液中の試料容積の画分として定義される。カプセル化されていない試薬は、サテライト小滴28を形成すると予想される。初期の粒子懸濁液の空隙率は、小滴担体粒子12のエンベロープの外側の領域を占める総容積(試料+粒子)の画分として定義される。三日月形の粒子12と球形の粒子12との間の計算を正規化するため、内部空洞18の容積は、初期の空隙率の一部とはみなされない。図11Bは、比較的大きい空洞を有する粒子12及びより厚い外側水層を有する滴状物10について、カプセル化効率の増加を実証している。いずれの場合においても、粒子12は、最終滴状物10の容積のより小さい画分を取り込んで、比較的多くの試料容積のカプセル化を可能にする。図11Cは、滴状物10の形成前に小滴担体粒子12の濃度を増加させる(空隙率を減少させる)ことが、カプセル化効率を増加させることを実証している。空隙率が増加する場合には、系内に比較的多くの試薬又は試料が存在し、滴状物10は急速に飽和し、その結果、より大きな容積のサテライト小滴28を形成し、及びしたがって、カプセル化効率を低下させる。
【0045】
[0075] 図12は、小滴担体粒子12が、多くの異なる反応性部分によって修飾されて、粒子官能化及び多くの標準アッセイとの滴状物10の適合性をどのように可能にするかを示している。例えば、反応性又は結合性部分20が、空隙又は空洞18内の小滴担体粒子12の表面上に形成されてもよい。結合性又は反応性部分20は、例として、核酸、ペプチド、細胞接着ペプチド、触媒、酵素、抗体、プライマー、抗原、アプタマー、ビオチン又はビオチン/ストレプトアビジン複合体を含み得る。当業者に公知の直交反応性化学物質が、反応性又は結合性部分20の小滴担体粒子12への共役のために使用されてもよい。
【0046】
[0076] 一実施形態では、遊離システイン基を包含するペプチド又はより大きなタンパク質が、デキストラン相内のチオール系の架橋剤と共に添加されることができる。これらのペプチドはヒドロゲル相と融合するので、ノルボルネンを含むポリマー骨格上のチオール反応部位に共有結合的に結合することができる。小滴担体粒子12へのCHO細胞の接着を促進するために、このアプローチは、小滴担体粒子12の製造中に細胞接着ペプチドを含むように使用されてきた。少なくとも4mg/mLの濃度のインテグリン結合ペプチドRGDが、デキストラン相内で使用され、強力な機械的攪拌、遠心分離及び小滴担体粒子ソーティングの存在下でさえ、小滴担体粒子12との細胞結合を維持するために十分な接着強度を示した。別の実施形態では、遊離システイン基を包含するペプチド又はより大きなタンパク質が、PEG相に添加されて、デキストラン相との混合前又は混合後に架橋されることができる。
【0047】
[0077] 例示的な第2実施形態では、小滴担体粒子12は、小滴担体粒子12の製造中にPEG相内に0.5mg/mL~5mg/mLの5kDaのビオチン-PEG-チオールを任意の範囲で取り込むことによって、ビオチンによって直接修飾された。紫外線への暴露時に光開始剤の存在下で、本明細書に開示される種々の実施形態に記載されるように、これらの分子上の余分なチオール基は、ヒドロゲル骨格上のチオール反応性部分に結合し、ビオチン基で均一に修飾された小滴担体粒子12を生じさせる。ビオチン化部位は、通常、ストレプトアビジン基によって修飾され、2次ビオチン化分子への共役を可能にする。使用されるストレプトアビジンの量は、粒子当たりの結合部位の所望の数に基づいて調整されることができる。個別の細胞からの分泌タンパク質の捕捉を中心とする多くの実施形態では、8~10μg/mLのストレプトアビジンが、小滴担体粒子12の外側を被覆し、広いダイナミックレンジにわたって分泌物シグナルを生じさせるのに十分であることが実験的に特定された。しかしながら、細胞がビオチン-ストレプトアビジン反応を通じて粒子12に付着させられ、分泌物がビオチン化捕捉抗体を用いて小滴担体粒子12の表面上に同時に捕捉される他の実施形態では、より高い濃度のストレプトアビジンが10μg/mL~250μg/mLの範囲で使用された。特に、外因性ビオチンが、細胞培養培地中の一般的な添加剤であり、かつ、利用可能な結合部位の多くを前飽和させることができるので、ストレプトアビジンは、通常、PBS中の小滴担体粒子12に添加される。
【0048】
[0078] 図13A及び図13Bは、PCR(図13A)及びELISA(図13B)のようなデジタルアッセイがどのように滴状物10内で実行されることができるかを示している。核酸又は抗体によって官能化された小滴担体粒子12は、水溶液中で、適切なアッセイ試薬(例えば、標的DNA、検体、レポータ染料、2次抗体、プライマー、DNTP、ポリメラーゼ)と混合される。対象の検体は、小滴担体粒子12の表面と優先的に自己結合し、その後の洗浄がバックグラウンドシグナルを除去することを可能にする。その後、小滴担体粒子12は、機械的攪拌を通じて乳化されて、小滴容積内又は小滴担体粒子12自体上で、(例えば、酵素増幅を通じて)検体及び生成されたシグナルを単離する滴状物10を形成する。シグナルが小滴担体粒子12上に直接捕捉される実施形態では、蛍光顕微鏡又はフローサイトメトリを通じて(例えば、フローサイトメータ150を使用して)小滴担体粒子12上の蛍光又は比色シグナルを観察することによって、エマルションが破壊されて読み出しが直接行われることができる。シグナルが滴状物10内に蓄積するが小滴担体粒子12と直接結合しない実施形態では、滴状物10のエマルションは、蛍光顕微鏡又は他の蛍光画像診断法、若しくは、油連続相16と適合性を有するいくつかの市販のフローサイトメトリシステムを通じて蛍光又は比色シグナルの変化を観察することによって直接分析されることができる。
【0049】
[0079] 図14A図14Cは、滴状物の乳化が細胞生存率に影響を及ぼさないことを示している。ヘキスト及びカルセインによって染色されたジャーカット細胞が、小滴担体粒子12と共に水溶液中に懸濁された。小滴担体粒子12は、フッ素オイル中での機械的攪拌を通じて乳化されて、細胞を包含する滴状物10を形成した。滴状物10は、蛍光顕微鏡を介して、細胞形態を可視化するための明視野(図14A)、ヘキスト染色された核を可視化するためのDAPI(図14B)、及び、カルセイン標識された生細胞を可視化するためのFITC(図14C)を含む複数のチャネルで画像化された。
【0050】
[0080] 図15A図15Dは、小滴担体粒子12内に組み込まれたバーコーディングの代表的な実施形態の概要を示している。図15Aは、小滴担体粒子12の外形寸法を変化させながら、内部空隙又は空洞18のサイズがどのように維持されるかを示している。固有の化学又は特性を有する滴状物10はサイズ範囲によって識別される。図15Bでは、小滴担体粒子12は、様々な強度の1以上の染料によって修飾される(本実施形態では、2つの染料が様々な強度で示されている)。固有の小滴担体粒子のタイプは、複数の染料強度(例えば、Dye1:Dye2又はDye2:Dye1)の強度又は比によって定義される。図15Cでは、種々の数又は磁性包含量の磁性粒子52が、小滴担体粒子12上/内に埋め込まれ/架橋されて、相対的な磁力による分離を可能にする。図15Dでは、様々な数及びサイズの光散乱粒子54が、小滴担体粒子12上又は内に埋め込まれ/架橋されて、光散乱又は散乱角度の相対量/強度に基づく固有の小滴担体粒子タイプ12の分離又は分離分析を可能にする。
【0051】
[0081] 滴状物系の利点
[0082] 滴状物10を使用する系の明確な利点は、短時間(~1分)で多数の均一な小滴を生成する能力である。例えば、1000万個の細胞の試料が単一細胞分析のためにカプセル化される場合を考える。マイクロ流体的に生成された小滴に投入する単一のポアソン分布は10個の小滴の生産を必要とする(10%のカプセル化効率を仮定する)。典型的なマイクロ流体小滴生成器デバイス30は、1000Hzの速度で小滴を生成し、全細胞集団をカプセル化するのに28時間を必要とする。場合によっては、2次ビーズ/粒子のカプセル化が必要である(例えば、小滴シーケンス)。この状況において、二重ポアソンの投入は、単一ビーズ及び単一細胞のカプセル化(1%のビーズ+細胞のカプセル化効率)を確実にするために、10個の小滴の生産を必要とするであろう。この場合、カプセル化のための時間は約11.7日である。しかしながら、小滴担体粒子12は、大量に事前に短時間スケールで生産され、貯蔵され、かつ、ユーザに送られることができる。その後、ユーザは、膨大な数の細胞のカプセル化を可能にするバルク溶液中の単純な混合工程を使用して、滴状物10を大規模に並行して形成するために乳化工程を実行することができる。
【0052】
[0083] 界面活性剤、界面活性剤混合物、油の使用
[0084] 連続相の界面活性剤の量は、小滴の破壊及び滴状物10の形成を最適化するために、非混和性相間の界面張力を調整するために調節されることができる。分散相の界面活性剤(非イオン性、例えば、Pluronic又はイオン性)が添加されて、界面張力をさらに調整し、分散相の小滴担体粒子12の凝集を減少させてもよい。滴状物10の形成に使用される油は、意図された用途に応じて調整されることができる。例えば、フッ素オイル(Novec(商標)7500 3M社、FC-40 3M社など)は、滴状物の形成のために同等の界面活性剤(Pico-Surf(商標)、RAN界面活性剤など)と共に使用されることができる。これらの油は、その高い生体適合性のために生物学的検体の分析に特に適している。他の実施形態では、異なる油(例えば、シリコーン油、鉱油、植物由来油、動物由来油、長鎖炭化水素、有機溶媒)が、滴状物10同士の間の試薬の移動、滴状物10内のpHの変化などを可能にするために所望される場合がある。他の実施形態では、小滴担体粒子12は、疎水性材料(例えば、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート+ラウリルアクリレート、1H,1H,6H,6H-ペルフルオロ-1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、又はメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン)から製造され、かつ、油相に分散され、その後、水中油滴状物10のエマルションを生成する。
【0053】
[0085] 小滴担体粒子対分散容積比
[0086] 分散相14の小滴担体粒子12の相対数は、サテライト小滴28の過剰な形成を防止するだけでなく、効率的で一貫性のある滴状物10の形成を達成するために最適化されることができる。より高い分散容積比では、滴状物に関連付けられる分散容積のより低い画分が存在し、より多くのサテライト小滴の形成につながる。より低い容積比では、試薬及び粒子(滴状物10に関連付けられた試料からのマイクロスケール物体の画分)の滴状物10への捕捉効率が向上する。ある容積から分析される検体の画分が、カプセル化される容積の画分に依存するマイクロ流体小滴カプセル化とは異なり、滴状物10内の固相の存在が、分析されることが可能な検体の画分から、分析される容積を分離させる固相の表面(又はマトリックス内)上の検体の濃度を可能にすることに留意されたい。
【0054】
[0087] 滴状物の分散相への転移
[0088] 場合によっては、追加の洗浄工程、2次共役を実行し、分析/ソーティングなどのためフローサイトメータ150(図13A図13B図16及び図18)を通って小滴担体粒子12を流すため、小滴担体粒子12を大量の分散相14(例えば、水相)に戻すことが望ましい。ヒドロゲル基の小滴担体粒子12、水及びフッ素オイルを使用する系では、第2界面活性剤(ペルフルオロ-オクタノール)が油相16に添加されて、エマルションを不安定化し、水相14の小滴担体粒子12を回収することができる。より具体的には、過剰な油及び界面活性剤は、滴状物10を除去することなくピペットを介してエマルション懸濁液から除去される。その後、Novec(商標)7500フッ素オイル(3M社)中のペルフルオロ-オクタノールの20%溶液が、残りの懸濁液容積にほぼ等しい容積で懸濁液に添加される。追加の水相14が添加されて試料を希釈し、懸濁液をより容易に取り扱い、及び/又は、小滴担体粒子12同士の間のクロストークを防止する。懸濁液は穏やかに混合され、数分後に小滴が凝集する。粒子懸濁液は、発生する非混和性相の上部から直接除去されることができる。所望であれば、フッ素オイルと混和する低密度有機相を用いて追加の洗浄工程が実行されることができる。ヘキサンの添加によって、フッ素オイルが、水相の上方で分離されることを可能にし、かつ、ピペットを介して除去されることができる。電場を介した遠心分離及び不安定化のような他の方法が、エマルションを凝集させるために利用されており、かつ、潜在的な代替方法であり得る。
【0055】
[0089] 生物学的アッセイのための小滴担体粒子の洗浄
[0090] 生体試料の効率的な標識又は検出には、抗体又は蛍光性小分子のような試薬の存在下でのインキュベーションが必要である。さらに、サンドイッチELISAのような試薬の連続的な添加を必要とするアッセイは、以前の工程からの残留試薬を除去するための中間洗浄ステップに依存する。ここでは、滴状物10を洗浄/単離するための種々の方法並びに油相及び水相の両方におけるソーティングについて説明する。
【0056】
[0091] 小滴担体粒子12を水相に戻した後、溶液中の遊離検体を除去してクロストークを防止するために洗浄工程が実行されることができる。一実施形態では、粒子懸濁液が、水相で希釈され、遠心分離されて、(水よりも高い密度を有する粒子のための)容器22の底部で小滴担体粒子12を濃縮する。一実施形態では、小滴担体粒子12は、2000gで1分間遠心分離される。別の実施形態では、小滴担体粒子12は、300gで3~5分間遠心分離される。遠心分離速度がより低いと、感受性細胞が使用される場合に有利である。浮遊物が、除去されて新しい溶液で置換され、小滴担体粒子12がこの新しい溶液内に再混合される。遠心分離及び除去のこのプロセスは、洗浄のレベルを増加させるために、複数回にわたって繰り返されることができる。新しい溶液は、洗浄溶液又は新しい試薬溶液を含んでもよい。別の実施形態では、小滴担体粒子12は、磁性粒子(例えば、小滴担体粒子12のゲルマトリックス内に埋め込まれた)で修飾されて、磁気特性を付与し、洗浄又は溶液置換手順を可能にするために、容器22内のある位置における小滴担体粒子12の磁気操作/蓄積を可能にする。別の実施形態では、小滴担体粒子12は、マイクロバブル又は中空ガラス粒子によって修飾されてそれらの密度を低下させ、かつ、例えば、共役マイクロバブル(BACS)を使用して制御される浮力を用いて洗浄/分離されることができる。
【0057】
[0092] サテライト小滴からの滴状物の単離
[0093] サテライト小滴28からのバックグラウンドシグナルを低減するために、滴状物10は、本明細書に記載されるような種々の方法を用いてサテライト小滴28から分離されることができる。一実施形態では、非磁性であるサテライト小滴28から磁気的に修飾された小滴担体粒子12を有する滴状物10を分離するために磁場が加えられる(例えば、図5参照)。磁性粒子は、マイクロ流体製造中に溶液内にそれらを投入することによって、小滴担体粒子12のマトリックス内に埋め込まれることができる。外部磁場を使用して、磁気的に標識された小滴担体粒子12を容器22内のある位置に引き寄せるか又はサテライト小滴28から分離してスライドさせ、小滴担体粒子12は、そこで高純度で収集され、画像化され又は他の方法で分析されることができる。別の実施形態では、当技術分野で知られた周知のサイズ/変形可能性に基づく濾過スキームを使用して、より小さなバックグラウンドのサテライト小滴28からより大きな滴状物10を分離してもよい。これには、粒子及び小滴のサイズに基づく分離を可能にする周知のマイクロ流体粒子分離技術の使用が含まれ得る。例示的なアプローチは、慣性マイクロ流体分離デバイス、確定的横方向変位デバイス、接線流濾過デバイス、並びに、粒子のサイズ及び/又は密度差を利用する音響又は沈降に基づく分離デバイスを含む。浮力の相違も分離に利用されることができる。例えば、滴状物10は、抗力に対する浮力の比の増加によりエッペン管の上部に蓄積する傾向がある一方で、サテライト小滴28は、下部に蓄積し、ピペットにより部分的に除去されることができる。
【0058】
[0094] 小滴担体粒子を生産するための水性二相系アプローチ
[0095] 小滴マイクロ流体工学(図7A及び図7B)と組み合わせた水性二相系(ATPS)を利用してマイクロゲル小滴担体粒子12が製造されてもよい。これらのマイクロゲル小滴担体粒子12は内部空隙又は空洞18を有している。概して、ATPSの一方の相は架橋性成分を含むべきである一方で、他方の相は架橋性成分を包含すべきでない。一実施形態では、架橋性PEG相及びデキストラン相が、界面活性剤を包含する第3油相と共にマイクロ流体小滴生成器デバイス30内で共に流されて、PEG相及びデキストラン相の均一な画分が、油相に懸濁された各小滴中に存在する混合水性エマルションを生成する。PEG及びデキストランのある濃度レジームでは、二相が、別個の形態を有する小滴内の別個の空間的位置に分離する(図8)。1つの空間的位置は、PEG成分を包含する富化相を包含する一方で、別の空間的位置は、水性二相系(例えば、デキストランのようなポリマー)の第2成分を包含する。その後、PEG成分を包含する富化相において架橋が誘導され、形成された小滴担体粒子12が洗浄されて油及びデキストランを除去し、PEG小滴担体粒子12内に内接した空隙又は空洞18を有する球状又は楕円形のPEG粒子を生成する。空隙又は空洞18の形状は、各小滴の以前のデキストランリッチ領域の形状に対応する。
【0059】
[0096] PEG相の架橋はある技術の範囲を用いて達成されることができる。例示的なアプローチにおいて、PEG相の紫外線及びpH開始架橋の両方が実証されてきた。例えば、PEGDAは、紫外線及び光開始剤(Irgacure(登録商標)2959(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン)、LAP(リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィナート)など)によって引き起こされる鎖成長ラジカル重合を介して架橋された。別の実施形態では、マルチアームPEG-ノルボルネン+ジチオール又はマルチアームチオール架橋剤間のチオール-エン反応が紫外線及び光開始剤を介して開始される。関連の実施形態では、PEG-ビニルスルホン/マレイミド+ジチオール又はマルチアームチオール架橋剤が、小滴形成より前のゲル化を防止するために低いpHで使用される。pHは、下流で油相の有機塩基(例えば、トリエチルアミン)を添加することによって分散相で増加させられて架橋反応を開始する。
【0060】
[0097] 例示的な一実施形態では、小滴担体粒子12は以下の条件を用いて生産された:2.67μL/分で注入されたpH7のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に20%w/vの40kDaのデキストラン及び1.3%以下のDTT架橋剤を含むデキストラン相、8μL/分で注入されたPBS中に、17.5%w/vの4アームPEG-ノルボルネン、2%w/vのLAP(リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィナート)及び0.5mg/mlのビオチン-PEG-チオールを含むPEG相、並びに、チャンネル高さ70ミクロン及び接合幅60ミクロンのマイクロ流体小滴生成器デバイス30内に44μL/分で注入されたNovec7500油中の0.25%v/vのPico-Surf(商標)から構成された油相。小滴担体粒子12は、DAPIフィルタセット及び4X対物レンズを通じて、マイクロ流体デバイスの出口領域(高さ130ミクロン)付近で約1~3秒間にわたって、50~200mW/cmの電力で、集束紫外線によって架橋された。このアプローチを用いて、小滴担体粒子12は、高い幾何学的均一性で1000/秒以下の速度で生産された。粒子上の粒子12の均一性ビオチン基を特徴付けるために、8マイクログラム/mlのAlexa Flour(商標)修飾ストレプトアビジン溶液によって標識された。その後、小滴担体粒子12は、図10C及び図10Dに示すように、TRITCチャネル内で蛍光画像化された。画像解析の結果、小滴担体粒子12は、平均82.5ミクロンの外径及び1.5%のCVを有していた一方で、開口部径は、平均51.0ミクロン及び2.1%のCVを有していた。
【0061】
[0098] 小滴担体粒子12は、油及び界面活性剤の連続相内のエマルションとしてオフチップで収集される。精製された小滴担体粒子12が水相で所望される実施形態、又は、水相の精製された小滴担体粒子12がアッセイの開始点として役立つ実施形態では、小滴担体粒子12は、過剰な界面活性剤、未反応生体分子、及び関連の有機相を小滴担体粒子12から除去するためにいくつかの洗浄工程を経なければならない。一実施形態では、Novec-7500油、ヘキサン、エタノール及び0.1%Pluronic F-127を有するPBSの連続的な洗浄工程を通じて、精製された小滴担体粒子12が単離された。より具体的には、粒子エマルション及び関連の油相がオフチップで収集され、油相の大部分が除去される。小滴担体粒子12の1mLの収集のために、Novec-7500中の3~5ミリリットルのPBS及び1ミリリットルの20%ペルフルオロ-オクタノールが粒子エマルションに添加される。溶液は、数分間穏やかに攪拌されてエマルションを破壊し、過剰な油が再度除去される。次に、3mLのNovec-7500油が再度添加され、溶液は、攪拌されて2000Gで2分間にわたって遠心分離され、その後、過剰なNovec油が除去される。このプロセスが計3回の洗浄について繰り返される。次に、3mLのヘキサンが粒子懸濁液に添加され、撹拌されて遠心分離され、同様に除去される。このプロセスが、計3回の追加洗浄について繰り返される。次に、3mLのエタノールが粒子懸濁液に添加され、攪拌されて遠心分離され、同様に除去される。このプロセスが合計3回の追加洗浄について繰り返される。最後に、0.1%Pluronic F-127を有する3mLのPBSが粒子懸濁液に添加され、攪拌されて遠心分離され、同様に除去される。このプロセスが計3回の追加洗浄について繰り返される。これらの最後の洗浄の後、小滴担体粒子12は、残存する有機溶媒、界面活性剤及び未反応成分を含まず、かつ、アッセイに使用されることができる。細胞を伴う用途の場合、小滴担体粒子12は、滅菌のためにエタノールの溶液中で少なくとも8~10時間にわたって長期間貯蔵されるべきであり、かつ、細胞播種前に水相に戻るためにさらに洗浄されることができる。
【0062】
[0099] サイズ及び形状の変更
[0100] 小滴担体粒子12のサイズ及び空隙又は空洞18の容積は、サイズ及び形状において変化し得る。マイクロ流体小滴生成器デバイス30を使用して、油相の相対流量を水相に対して調整することによって、及び/又は、チャネル形状を変化させることによって、粒子の外径が調節されることができる。直径が100マイクロメートルを超える及び直径が40マイクロメートル未満の小滴担体粒子12は、異なるチャネル高さ/流速を使用して生産されてきた。例えば、100マイクロメートルの直径の小滴担体粒子12は、以下の流速:油=10マイクロリットル/分(一実施形態では)、PEG=4μL/分、デキストラン=1μL/分で、70マイクロメートルのチャネル高さのデバイスを使用して生産された。40マイクロメートルの直径の小滴担体粒子12は、流速:油=20μL/分、PEG=2μL/分、デキストラン=0.5μL/分(図9)で、18マイクロメートルのチャネル高さのデバイスを使用して生産された。
【0063】
[00101] 相対的な空洞容積及び形態は、濃度を、したがってPEG及びデキストラン領域のサイズを調整することによって調節されることができる(図8A及び図8B)。バイノーダル曲線によって定義された臨界濃度では、PEG及びデキストランは二相に分離する。二相間の界面張力はPEG及びデキストランの濃度に依存して変化し、PEG相、デキストラン相及び油相間の接触角を変化させる。例えば、PEG及びデキストラン濃度が増加すると、二相間の界面張力が増加し、より突出した形状になる。PEG及びデキストランの相対比を調整することによって、形態の一貫性を維持しつつ、2つの領域の相対容積が操作されることができる。
【0064】
[00102] 生産の均一性
[00103] マイクロ流体(マイクロ流体小滴生成器デバイス30)を使用した単分散小滴の生成は、空隙領域を包含する形成された小滴担体粒子12の高い均一性を可能にする。具体的には、上述の実施形態では、非架橋PEG-デキストランエマルションは、外径についてCV<1%、かつ、内部デキストラン相の均等な直径についてCV<2%を維持する(図10A)。デキストラン相分離領域によって規定された空隙又は空洞18を有する形成された小滴担体粒子12は、CV<5%で高い均一性を維持する(図10B)。
【0065】
[00104] 小滴担体粒子のための三日月形状の粒子の利点
[00105] 球形の鋳型上の記述された幾何学的形状の明確な利点は、小滴担体粒子12に使用される材料空間の外部により均一な試薬容積を有する滴状物10を生成する能力である。これは、粒子材料マトリックス内に自由に拡散することができない大きな分子のカプセル化/定量化において特に重要である。球形の粒子によって鋳型化された小滴は、粒子の外部に小さな容積画分を包含している。この容積画分は、エマルションの分散相と小滴担体粒子12との間の相対直径に非常に敏感である。しかしながら、内部空洞又は空隙18を有する小滴担体粒子12を生成することは、カプセル化された流体容積の大部分を包含する所定の幾何学的形状を有することによって、小滴担体粒子12の外部の容積の均一性を顕著に改善する。ある実施形態では、固体の球形の粒子と比較して、空洞又は空隙18を包含する小滴担体粒子12を用いて形成された小滴の容積変動において3倍の減少が達成される(図11A参照)。容積の均一性が増大すると、滴状物10内で実行される反応の均一性が増大する。空洞又は空隙18の別の利点は、細胞、ビーズ及び他の対象のマイクロスケール物体をカプセル化するための空間を提供することである。さらに、空隙又は空洞18の形態及びサイズの操作は、特定のサイズ、形状、剛性などを有する物体の選択的捕捉を可能にすることができる。
【0066】
[00106] 一例では、空隙又は空洞18のサイズは、単一細胞、ビーズ又は他のマイクロスケール物体が適合するための空間のみが存在するように調節されることができる。このようにして、複数の標的がより高い濃度でカプセル化され得る標準的なポアソン負荷と比較した場合、単一細胞(又は他の対象のマイクロスケール物体)を有するより高い画分の滴状物10が達成されることができる。別の例では、複数の細胞型が、異なるサイズ特性(例えば、平均直径が30ミクロンの細胞型A及び平均直径が15ミクロンの細胞型B)で存在する場合、異なる細胞型は、細胞サイズに調節された空隙又は空洞18のサイズを有する小滴担体粒子12を用いて選択されることができる。例えば、細胞型Bは、まず、20ミクロンの空洞サイズ開口部を有する小滴担体粒子12によって選択的に捕捉され、その後、残りの細胞集団から単離されることができる。任意選択的に、40ミクロンの空隙又は空洞18サイズ開口部を有する小滴担体粒子12が、第2工程で使用されて細胞型Aを捕捉してカプセル化することができる。
【0067】
[00107] 小滴担体粒子を生産するための他のアプローチ
[00108] 小滴担体粒子12として作用するのに適した空洞包含粒子は、他の犠牲カプセル化材料の使用を通じて生産されることができる。一実施形態では、単一の犠牲粒子(小滴より小さいサイズ)は、架橋性材料を包含する小滴中にカプセル化される。その後、小滴の架橋性材料は、当該技術分野において公知の種々の方法(例えば、前述の方法及び当業者に公知の他の架橋方法)を使用して架橋され、埋め込まれた犠牲粒子は洗浄及び/又は分解される。代替的に、ある実施形態では、複数の犠牲粒子/材料が、架橋性エマルション内にカプセル化されて、各々生成された小滴担体粒子12内に空隙容積を含むマイクロ/ナノ多孔性空洞ネットワークを形成する。単一の犠牲粒子は、例えば、小滴カプセル化の前にマイクロ流体慣性オーダリング(ordering)の使用を通じて、マイクロ流体的に生成されたエマルションの各小滴中にカプセル化されることができる。犠牲粒子材料の例としては、アルギン酸塩、ゼラチン、MMP切断可能なPEG、ポリスチレンマイクロビーズなどが含まれる。ナノ多孔性を調節するために、多孔性の小滴担体粒子12から構成される一実施形態では、架橋前に架橋性PEG相に非架橋性PEGが添加される。架橋後、ゲルが洗浄されて非架橋PEGを除去し、空隙空間を明らかにする。
【0068】
[00109] 他の実施形態は、重合性流体中に空隙を形成するために三相系を利用する。例えば、3つの非混和性相エマルション:例えば、水、フッ素オイル、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(ETPTA)が使用されて、ETPTA重合粒子内に空隙を生成することができる。他の実施形態は、前駆体溶液のマスク+光開始架橋を利用して、含まれる空隙空間を有する重合性材料内に2次元/3次元突起を生成する(例えば、拡散液体成形、ストップフローリソグラフィ、連続フローリソグラフィ)。
【0069】
[00110] 小滴担体粒子の貯蔵
[00111] 一実施形態では、小滴担体粒子12は、分散相14中に懸濁されている間に貯蔵される。任意選択的に、グリセロール又は他の細胞保護剤が使用されて、粒子を損傷させずに、低温(-20又は-80℃)で小滴担体粒子12を貯蔵することができる。他の実施形態では、小滴担体粒子14は、乾燥又は凍結乾燥され、その後、使用前に分散相14内に又は分散相14を含む試料流体内に再分散されてもよい。これにより、所定の分散相容積の滴担体粒子12の密度を制御することができ、分散相/試料流体の高効率なカプセル化によって、小滴担体粒子12を油連続相内に分散させることができる。凍結乾燥は、小滴担体粒子12の長期間の貯蔵を可能にする1つの方法である。ヒドロゲル粒子の構造に損傷を与えないヒドロゲル粒子の凍結乾燥方法は、Sheikhiらによる「Microengineered emulsion-to-powder (MEtoP) technology for the high-fidelity preservation of molecular, colloidal,and bulk properties of hydrogel suspensions」、ACS Appl. Polym. Mater.,1, 8,1935-1941 (2019)に見出されることができ、当該文献は本明細書に参照によって組み込まれる。
【0070】
[00112] 滴状物の化学修飾
[00113] 多くの実施形態では、本明細書に記載される小滴担体粒子12は、広く入手可能であって多くのバイオテクノロジーの用途において使用されるポリマー前駆体から製造される。したがって、種々のバイオアッセイに適合可能又は有用とするため、乳化に先立って小滴担体粒子12に適用されることが可能な化学修飾の明確に定義された多くの方法がある。例としては、チオール-エン/チオール-インクリック化学、マイケル(Michael)付加、NHSエステル反応、アジド-アルキン化学、ビオチン-ストレプトアビジン結合、抗原-抗体相互作用などが挙げられる(図12)。これらの変更及びそれらの用途を説明するいくつかの実施形態を以下に示す。
【0071】
[00114] 粒子のビオチン化
[00115] ビオチンは、タンパク質アビジン及びストレプトアビジンと強く特異的に結合するので、バイオテクノロジー産業において極めて有用であることを見い出した小分子である。さらに、ビオチンは、その機能に影響することなく、より大きなバイオ分子に容易に共役され、ストレプトアビジン被覆基質又は対象の他の生体分子へのそれらの迅速かつ効率的な共役を可能にする。ポリマーとの共役には、多数のヒドロゲル前駆体と容易に架橋される反応基を包含する短いポリマー鎖に結合された多くの市販のビオチンがある。小滴担体粒子12をビオチン化する1つの好適な方法は、マイクロ流体小滴生成デバイス30内のPEG溶液内にビオチンPEG-チオールを取り込むことによるものである。より具体的には、空隙構造を有するビオチン官能化ヒドロゲル小滴担体粒子12が、PBS中の15重量%の10kDaのPEG-ノルボルネン及びPBS中の1.3%のDTTを包含する20重量%のデキストランを有する5mg/mLのビオチンPEG-チオールを共に流すことによって達成された。界面活性剤を除去し、ストレプトアビジン-FITCとゲルをインキュベートすることによって水相で小滴担体粒子12を再構成した後に蛍光シグナルを観察することによって、共役が検証された。小滴担体粒子12のビオチン化は、抗体、タンパク質、核酸、細胞、ナノ粒子及びプライマーのような多くの一般的な試薬の共役を可能にし、かつ、ELISA、PCR、他の核酸増幅アッセイ及びフローサイトメトリを含む広範囲のアッセイにおけるそれらの使用を可能にする。
【0072】
[00116] 細胞接着ペプチド
[00117] 細胞接着ペプチドは、粒子製造中又は製造後に小滴担体粒子12に結合されることもできる。一実施形態では、RGDペプチド(Ac-RGDSPGERCG-NH2)[配列番号1]又は別のインテグリン結合ペプチド又は誘導体ペプチドは、前駆体溶液内に取り込まれ、ペプチド内に存在するシステイン基との反応を通じてポリマー骨格内に共有結合的に架橋されることができる。インテグリン結合ペプチドは、基質上への細胞接着を促進し、接着性細胞集団における生存性を維持するために重要である。現在、長期インキュベーション又は細胞培養を必要とする小滴アッセイは、細胞が付着することができる標準的な油中水エマルションに固体表面が存在しないため、懸濁細胞に限定されている。このプラットフォームは、液体及び小分子が固体ゲル支持体を通じて容易に拡散することができるので、細胞に利用可能な培地の総容積(総小滴容積)を制限することなく、単一細胞シグナル(内部空隙又は空洞18の空間)の付着及び定量化のための均一サイズのポケットを提供することによって、小滴アッセイの有用性を拡大する。さらに、滴状物10の固有の性能は、カプセル化された細胞のサイズを制限するこし器として機能するため(例えば、白血球、赤血球又は細菌を大細胞のバックグラウンドから捕捉する)、かつ、カプセル化されることができる細胞の容積及び数を制御するための両方のために内部空隙又は空洞18の寸法を制御する能力であり、又は、接着細胞及び懸濁細胞の両方を同時に維持する能力である。このタイプの共培養は、細胞集団の対間の相互作用をプロービングするなどの現在の技術では困難であることが分かっている。例えば、患者由来腫瘍細胞への抗原特異的T細胞の検出及びその後の拡張を可能にする。
【0073】
[00118] FSL修飾による細胞付着
[00119] ビオチン化小滴担体粒子12は、10~250μg/mLのストレプトアビジンによって粒子を前処理する一方で遊離の脂質又はコレステロールに共役されたビオチン(FSL-ビオチン、1,2-ジステロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-PEG-ビオチン(DSPE-PEG-ビオチン)、コレステロール-PEG-ビオチン、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-PEG-ビオチン(DMPE-PEG-ビオチン)などとして市販されている)によって細胞を同時に修飾することによって、又は、ビオチン化粒子12と混合する前にビオチン化脂質及びストレプトアビジンによって細胞を修飾することによって、非接着性細胞型に同様に結合するために使用されることができる。好適な実施形態では、10~100μg/mLのビオチン化脂質が、PBS中の100万個の細胞の懸濁液に添加され、37℃で60~90分間インキュベートされる。水性溶液からの非接着性細胞の親和性及び結合は、高度に希釈された試料の分析に重要なサテライト小滴28ではなく、滴状物10にカプセル化された細胞の濃度の増大を可能にする。さらに、フローサイトメトリ(フローサイトメータ150を使用する)のような標準的技術を使用して、細胞集団の高性能部材の良好なソーティングが、水相においてより容易に達成され、及びしたがって、油中水エマルションを破壊した後に小滴担体粒子12内に細胞を保持する能力と、ソーティング後の小滴担体粒子12からの細胞のその後の放出の能力との両方に高度に依存する。FSL-ビオチンは、細胞膜に恒久的に結合されていないので、時間とともに分解され、最終的にはその基質から細胞を放出する。分解性ペプチドが、小滴担体粒子12の形成中にペグ化された骨格鎖に取り込まれることができ、適切なプロテアーゼ酵素への曝露によってアッセイの完了時に開裂されることができる。例えば、ペプチドAc-GCRDGPQGIWGQDRCG-NH2[配列番号:2]は、その末端に2つのシステイン基が存在するため、架橋剤として小滴担体粒子12の製造中に使用されることができ、かつ、マトリックスメタロプロテアーゼの基質であるペプチド配列に起因する分解性を付与する。
【0074】
[00120] 選択的接着による細胞の分離
[00121] 小滴担体粒子12の表面への修飾された抗体の共役又は共有結合も、水溶液中での共インキュベーションを通じて容易に達成される。表面共役抗体は、それらの表面上の特定のタンパク質の発現に基づいて、細胞集団のサブセットの選択的結合を可能にする。これにより、集団中のすべての細胞にわたって保存された表面抗原との、又は、混合集団中の外部由来細胞の大きなバックグラウンド内の細胞のサブセットを濃縮するよりまれな表面抗原との抗体相互作用を通じて直接的に対象の単一細胞の捕捉及び濃縮が可能となる。このような濃縮は、対象の小さな亜集団からのデータが、標的細胞からの測定に起因するノイズによって交絡されることが多い、多くの生物学的流体試料のアッセイにおいて重要な特徴である。保存されたタンパク質マーカを通じてすべての細胞の捕捉が望ましい態様では、ビオチン化抗体は、通常、試薬を保存しつつ、すべての利用可能な表面部分を修飾するために細胞に予め結合される。最大1000万個のT細胞が、10μg/mLのビオチン-抗-CD3抗体で1mL容積で修飾され、小滴担体粒子12上の遊離ストレプトアビジン部位に接着された。選択された細胞群の捕捉が必要とされる別の実施形態では、小滴担体粒子12は、対象の表面マーカを包含しない細胞の接着を排除するために、抗体によって直接修飾されなければならない。小滴担体粒子12のより大きな総表面積に起因して、これは、より高い濃度の抗体、例えば、標的抗原に対する抗体親和性に依存して、試料当たり10~250μg/mLの濃度を必要とする。
【0075】
[00122] 一実施形態では、細胞の選択的結合及び蓄積は、抗体と共役された小滴担体粒子12を包含する水溶液を混合細胞溶液とインキュベートして積極的に混合することによって達成される。細胞表面抗原(例えば、CD8、CD4)を標的とする抗体は、対象の細胞型(例えば、T細胞サブ集団)の選択的濃縮をもたらす。混合中、標的細胞は、小滴担体粒子12の空隙又は空洞18内に進入し、抗体に結合し、空隙又は空洞領域18内に付着されたままである。非標的細胞は、空隙領域に進入することができるが、選択的に付着せず、及びしたがって、溶液のその後の混合によって除去される。標的細胞は、小滴担体粒子12の外表面に結合することもできるが、溶液の混合中の剪断は、空隙又は空洞領域18内に維持されていないこれらの細胞を除去することもできる。一実施形態では、10μg/mLのビオチン-抗-CD3によって上述したように修飾されたTリンパ球(少なくとも1000万個の細胞/mL)の濃縮懸濁液が、5個の細胞/粒子の比率で濃縮ストレプトアビジン修飾小滴担体粒子ペレットに添加され、100μL、200μL又は1000μLピペットチップを用いて、2分間にわたって毎秒2~4回の反復の速度でピペットされる。その後、小滴担体粒子12は、Fisherbrandの40μm細胞濾過器を用いて濾過されて回収され、中央空洞18内に付着された細胞によって高度に濃縮された小滴担体粒子12の集団が得られる。小滴担体ポケット12の「ポケット」18内に結合された細胞の平均数の調整は、播種中の最初の細胞対小滴担体粒子12の比率を調整することによって可能である。特に、空洞又は空隙領域18は、平均して単一細胞、2つの細胞又は標的数の細胞の進入及び維持のみを可能にするサイズ(10ミクロン未満~20ミクロン未満)であり得る。その後、接着された細胞は、本明細書及び後のセクションに記載されるような油相でカプセル化されて、単一細胞アッセイを実行することができる。接着された細胞は、哺乳動物細胞を含むことができるが、代わりに、細菌、藻類、真菌若しくは他の細胞又は細胞断片、例えば、微小小胞体又はエクソソームを含むことができる。
【0076】
[00123] 架橋性分散相を介したマイクロ/ナノ物体(細胞/ビーズ/タンパク質/など)の捕捉
[00124] 別個の実施形態では、架橋性材料は、滴状物10中の分散相14としてカプセル化されるために試料に添加されることができる。分散相のゲル化は、下流分析/ソーティングのために、細胞、ビーズ又は他の試料をそれらのそれぞれの小滴担体粒子12中に結合又は固定化するために、小滴担体粒子12を水相に戻す前にトリガされることができる。一例では、温度感受性ゲル(アガロース、ゼラチンなど)が、水相に移行する前に(例えば、冷却を通じて4℃まで)、ゲルマトリックス中で細胞をゲル化してカプセル化するために使用されることができる。その後、カプセル化された細胞は、下流分析及びソーティング機器(例えば、フローサイトメトリ)を通って流されることができる。ある実施形態では、その後、アガロース(又は他のゲル材料)を溶融させる温度変化、又は、酵素、例えばアガラーゼの使用、若しくはそれらの組み合わせを介して、細胞が小滴担体粒子12及びゲル化領域から放出されることができるように可逆的ゲル化材料が使用される。
【0077】
[00125] 他の実施形態では、紫外線又はpHトリガ可能な架橋機構が、ゲル化及び捕捉(ラジカル重合、チオール-エン、マイケル付加など)を開始するために使用される。必要に応じて、可逆的架橋が可逆的架橋剤を用いて実行されることができる。ある実施形態では、ジスルフィド結合を有する架橋剤が、還元剤を用いて、酵素開裂可能な架橋剤を用いて(例えば、特定のペプチド配列を通じて)、又は、塩基(例えば、スルホン結合、アクリルアミド、エステル、チオエステルなどを包含する架橋剤と共役される分子など)の添加によって加水分解を受けやすい架橋化学を用いて、分解されることができる。
【0078】
[00126] 小滴反応性の変化のための多孔性の変化
[00127] 各小滴担体粒子12の多孔性は、架橋中に、ポロゲンの取り込み、前駆体鎖の長さの変化によって、又は、必要に応じて部分的な分解を可能にする2次化学的性質の追加を介して、操作されることもできる。この制御は、汎用性を有する追加の層を提供し、それにより、小滴担体粒子12は、特定のアッセイの要件に基づいて特別に設計されることができる。より小さい孔を有する小滴担体粒子12は、タンパク質及び他の大きな生物分子に対して不透過性であってもよく、そのようなアッセイの見かけ容積は粒子容積全体ではなく粒子空隙空間であるので、そうした種のより高感度の検出を可能にする。対照的に、より大きな孔間隔は、より大きな生体分子の拡散を可能にし、シグナル飽和前の付着のためのより多くの部位を提供し、定量可能な範囲を広げる。
【0079】
[00128] アッセイにおける滴状物の使用
[00129] 滴状物10は、多くの広く使用されている小滴又は容積を区画化することに依存する他のデジタルアッセイと適合するようにされることができる。材料化学及び粒子設計における慎重な選択を通じて、滴状物10は、多くのアッセイワークフローに直接適用されることができ、所望の細胞集団の濃縮を通じて、又は、検体検出のためのより小さい見かけ容積を提供することによって、収集されたデータを増強することができる。
【0080】
[00130] デジタル核酸増幅アッセイ
[00131] 遺伝子発現を監視し、遺伝性疾患を識別し、かつ、遺伝子改変ワークフローにおける適切な遺伝子導入を検証するために、核酸配列の識別及び特徴付けのための生物学において核酸増幅が広く使用されている。これらの増幅スキームの最もよく知られたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、小滴中での使用に適合されており、かつ、デジタルアッセイとして使用するためにBio-Rad社によって商品化されている。小滴デジタルPCR(ddPCR)は、マイクロ流体小滴生成器を使用して、核酸、プライマー、dNTP、蛍光インターカレーション染料、及びDNA合成酵素を包含する水性容積をナノリットル容積小滴にセグメント化する。試料がヒートサイクル試験されると、標的DNAが増幅され、標的配列の欠如のために増幅が進行しなかった小滴中のバックグラウンド蛍光と容易に区別される標的配列を包含する小滴内の蛍光シグナルの増加(例えば、インターカレーション蛍光染料による)がもたらされる。この技術は、生物学的試料内の標的配列の濃度の絶対的定量を提供するという付加的な利点を有する。
【0081】
[00132] デジタル核酸増幅アプローチ(デジタルPCR、デジタルループ媒介等温増幅(LAMP)又は他の等温増幅アプローチなど)は、ヒドロゲル粒子が、標的核酸配列を包含する試料と混合された水性PCR又は他の増幅カクテル中で簡単に再構成されることができるので(図13A)、滴状物10系に容易に移行される。その後のボルテックス又はピペットを介した試料乳化は、標準的なddPCRアプローチと類似して、標的配列及びカクテルミックスの分布を可能にする。その後、滴状物10内の均一な容積がヒートサイクル又は加熱されて、標的が存在して絶対的定量化のために標的が分析される場合に蛍光シグナルを生成することができる。重要なことに、滴状物10を支持している小滴担体粒子12の存在は、エマルションの熱安定性を向上させ、凝集を低減させることができる。このアプローチを通じた乳化は、同様に多数のサテライト小滴28を生成することができる。しかしながら、粒子で満たされたものに対するこれらのサテライト小滴28の相対比は、使用された界面活性剤、初期のマイクロゲル試料の乾燥度(空隙率)、及び、試料と混合された小滴担体粒子内の利用可能な容積と比較した試料容積に基づいて調節されることができる。したがって、空のサテライト小滴28内にカプセル化された試料の総容積を制限することができ、又は、滴状物10に分配された総水性容積の画分を計算し、補正係数を適用して、総容積中に存在する標的核酸配列の数を定量化することができる。例えば、標的のカプセル化効率は、小滴担体粒子12の所定の初期濃度、小滴担体粒子の幾何学的形状(粒子外径及び内部空洞容積)、及び、滴状物10の形成後の小滴担体粒子12を取り囲む水層の予想される厚さに対して近似されることができる(図11A図11C、及び、カプセル化効率理論に関する関連の文章を参照)。
【0082】
[00133] 関連の実施形態では、小滴担体粒子12は、乳化に先立って、水相の小滴担体粒子12への標的核酸結合を促進するために、標的配列(又は複数の配列)に特異的なプライマー及び/又は捕捉された核酸配列によって予め被覆されることができる。これは、小滴担体粒子12上の検体濃度を局所的に可能にし、ヒートサイクル中のサテライト小滴28の増幅を排除する。予想される試料標的配列に対して過度に多数の小滴担体粒子12を利用することによって、これらの系はデジタル計数レジームで動作するが、各小滴のより高い濃度のアナログ蛍光シグナルもまた、核酸濃度に関する情報を提供することができる。絶対蛍光値(単なるオン-オフ閾値ではない)が、滴状物10当たりの結合配列の平均数を再計算するために使用されることができ、かつ、試料中の標的配列の総数に対する絶対値を生じさせる。小滴担体粒子12上に標的配列を濃縮し、その後、下流で増幅及び読み出しを実行する能力は滴状物系の固有の利点である。さらに、試料から核酸配列を捕捉する能力は、異なる溶液(例えば、核酸増幅混合溶液、前述の洗浄セクションを参照)による洗浄及び置換を可能にし、増幅反応と相互作用し得る試料溶液からバックグラウンド汚染物質を除去する能力を可能にする。最後に、滴状物アプローチは、デジタルアッセイが完全にデバイスフリーになるという付加的な利点を有しており、そうでなければ入手不可能である若しくは大規模な設備及び/又は専門知識を必要とし得るこれらのアッセイへのマイクロ流体の容易なアクセスに関する知識をユーザに提供しない。
【0083】
[00134] 滴状物10のさらなる修飾は、BEAM(ビーズ、エマルション、増幅、磁気)デジタルPCRのようなデジタルPCRアッセイの最も複雑な実施形態でさえも滴状物10が実行することを可能にする。BEAMでは、バイオ流体試料が再びプライマー官能化ビーズと共に小滴内に分配される。標的核酸がビーズを有する小滴内に存在する場合、核酸はPCRによって増幅され、カプセル化ビーズ上のプライマーへのアンプリコンの付着につながる。ビーズ付着アンプリコンは、標的配列における突然変異に関する情報を包含することができる。ビーズの乳化はランダムであり、これは技術の欠点であるため、すべての小滴がBEAMの以前の実施において標的及び1つのビーズの両方を包含するわけではないことに留意されたい。増幅が完了すると、エマルションは破壊され、各ビーズが磁気的に回収され、異なる突然変異を含む配列に相補的である1以上のタイプの蛍光標識核酸レポータプローブによってインキュベートされる。増幅されてビーズに付着した対象の特定の突然変異は、そのビーズ上に固有の蛍光シグナルを生じさせる。その後、これらの蛍光標識ビーズはフローサイトメータ150に通されて、試料中に存在する標的配列における突然変異の有病率を特徴付けることができる。
【0084】
[00135] しかしながら、BEAMと同様のアッセイは、さらなる利点を伴って、小滴物10を用いて実行されることができる。一実施形態では、滴状物系は、BEAMのためのより多くの単分散エマルションを生成するように作用し、小滴担体粒子12内の空洞又は空隙領域18の開口部サイズ又は容積は、単一のビーズのみが各滴状物10内に進入することを可能にするように寸法決めされる。別の好適な実施形態では、小滴担体粒子12自体がプライマーと共役され、BEAMワークフローにおいて固相ビーズとして作用する。これは、各小滴が単一の付着固相(すなわち、小滴担体粒子12)を有するという点で有意な利点を有している。その後、小滴担体粒子12は、蛍光プローブ結合及びフローサイトメータ150内での分析のために水相14内で再懸濁されることができる。各小滴担体粒子12はまた、小滴担体粒子12に固有の指標を提供するために、多数の方法でバーコーディングされることができる。例えば、一実施形態では、小滴担体粒子は、核酸検出アッセイの多重化を可能にするために、異なる配列を標的とする各バーコードに関連付けられた別個のプライマー/核酸捕捉配列を包含してもよい。標的配列の一方又は両方の側のプライマーが小滴担体粒子12上に固定化されて、付着した標的核酸配列を生成することもできる。
【0085】
[00136] 本明細書に記載されているように、小滴担体粒子12内に磁性ナノ粒子を共有結合又は埋め込むことによって、サテライト小滴28のバックグラウンドから滴状物10を磁気的に分離することもできる。外部から印加された磁場の存在下で、小滴担体粒子12は蓄積又は移動させられて洗浄されることができる。標準のフローサイトメトリの臨界サイズカットオフ値未満(<50マイクロメートル)の磁性小滴担体粒子12を製造することによって、各小滴担体粒子12に関連付けられた閾値を超える蛍光シグナルから直接、試料中の突然変異の不均一性を定量化することができる。
【0086】
[00137] 関連の実施形態では、増幅された核酸配列は、水相のプレゲル溶液を含めて、増幅後に水性分散相をゲル化して、小滴担体粒子12を水相に戻した時点でアンプリコンの喪失を防止することによる分析のために小滴担体粒子12上に捕捉されることもできる。このアプローチは、長いアンプリコン(例えば、LAMP反応を用いて生成されたもの)の場合により好ましい。
【0087】
[00138] 別の実施形態では、完全に閉じ込められた空洞18を有する小滴担体粒子12が使用される。粒子マトリックスの多孔性は、DNA標的及び反応混合物がマトリックスを通じて拡散することができるように調節されることができる。滴状物10の形成及び増幅後、粒子マトリックスを通じて拡散するには大きすぎる増幅産物が保持されることができる。これは、小滴担体粒子12が、完全に閉じ込められた空洞内に保持されたままである増幅シグナルの喪失なしに、下流の分析及び定量化(例えば、フローサイトメータ)のために、水相に戻されることができるという点で有益である。
【0088】
[00139] 小滴担体粒子12のバーコーディングは、混合試料中の異なる標的核酸配列を同時に捕捉及び分析するために使用されることができる。別個のタイプのバーコード化された小滴担体粒子12と別個の核酸捕捉試薬との混合物が試料に導入されて、別個の標的を収集することができる。特定の小滴担体粒子12のためのシグナルは、その小滴担体粒子12のためのバーコードにリンクされ、標的型を識別することができ、複数の小滴担体粒子12を分析する場合に、マルチプレックスアッセイが実行されることができる。小滴担体粒子12をバーコーディングするためのアプローチは本明細書でさらに説明される。
【0089】
[00140] デジタルELISA
[00141] デジタルELISAは、サンドイッチ免疫認識反応を使用して、少量の水性分配内の低濃度のタンパク質又は他の検体を定量化するために使用される、ddPCRと概念的に類似した技術である。滴状物10内でデジタルELISAを実行するために、標的タンパク質又は他の検体に特異的な捕捉抗体が、まず、小滴担体粒子12の表面に共役される(図13B参照)。その後、抗体被覆小滴担体粒子12は、小滴担体粒子12の数が検体の数よりも大きく過剰になるように、標的検体を包含する溶液内に配置され、かつ、完全な結合を可能にするようにインキュベートされる。結合後、試料溶液は洗浄されて洗浄溶液と置換される。この最初の結合反応及び洗浄工程が完了すると、標的検体の第2領域に親和性を有し、かつ、シグナル増幅成分を包含する2次抗体が溶液に添加され、小滴担体粒子12と結合した検体に結合されることができる。余分な2次抗体は、本明細書に記載される技術を使用して、小滴担体粒子12から再度洗浄され、溶液は、シグナル(蛍光、比色、pH変化)を生成するために抗体の増幅成分と反応する基質を包含するシグナル現像溶液と置換される。シグナル増幅成分の例には、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRB)、β-ガラクトシダーゼ、エステラーゼなどの酵素が含まれる。基質の例としては、フルオレセイン ジ-β-D-ガラクトピラノシード(FDG)又はβ-ガラクトシダーゼの他の蛍光発生基質、並びにAmplex Red、QuantaRed、QuantaBluなどのHRPの蛍光発生基質が挙げられる。シグナル現像液の添加直後、小滴担体粒子12は油相16で乳化されて滴状物10を形成し、試料全体がインキュベートされて、滴状物10によって蛍光又は他のシグナルを蓄積する。シグナルの作成に続いて、滴状物10は、大きなリザーバ内に配置されることができ、そこで、顕微鏡又は広視野低コストの撮像装置を使用してすべての滴状物10が同時に画像化されて定量化され、滴状物10の総数に対して高いシグナルを有する滴状物10の画分を決定することができる。先に特定したように、これは、試料中の検体の予想される濃度の計算を可能にする。さらに、検体が、ELISAプロセスで洗浄及び再懸濁される小滴担体粒子12に結合され、かつ、試料が乳化された後、すべてのサテライト小滴28は、シグナル生成要素を含まず、また、問題なく廃棄されることができる。別の実施形態では、チラミドが使用されて、小滴担体粒子12自体の表面を、増幅された局所シグナルが小滴担体粒子12上に捕捉されることを可能にするHRP酵素代謝回転の生成物として連結することができる。その後、蛍光シグナルのようなこれらのシグナルは、滴状物10のエマルションが破壊された後、フローサイトメトリのような下流技術を使用して(フローサイトメータ150を使用して)、検体が各小滴担体粒子12上に結合されたかどうかの直接的な尺度を提供することができる。一実施形態では、Alexa Flour(商標)488-チラミドが、2次抗体上の増幅成分として作用するHRPによって活性化される基質として使用され、活性化された蛍光チラミド共役体は、小滴担体粒子12上又は内に取り込まれた近傍のタンパク質、ペプチド又は他のフェノール基に共有結合する。関連の実施形態では、ビオチン-チラミドが、多数のビオチン分子の小滴担体粒子12への共有結合によるシグナルの増幅を導く基質として使用される。その後、ビオチンは、ストレプトアビジン共役フルオロフォアを使用して蛍光的に多数の方法で標識されることができる。
【0090】
[00142] 核酸分析に関しては、小滴担体粒子12のバーコーディングが使用されて、混合試料中の異なる標的検体を同時に捕捉及び分析することができる。別個のタイプのバーコード化された小滴担体粒子12と別個の抗体捕捉試薬との混合物が試料内に導入されて別個の標的を収集することができる。特定の小滴担体粒子12のためのシグナルは、それらが共存しているので、その小滴担体粒子12のためのバーコードにリンクされることができる。これにより、複数の小滴担体粒子12についての標的型を分析して、多数のタンパク質/検体についてマルチプレックスアッセイを実行することができる。小滴担体粒子12をバーコンディングするためのアプローチは本明細書でさらに説明される。
【0091】
[00143] 単一細胞シークエンシング
[00144] 前述のシークエンシングアプローチのコストの低減と組み合わせて、細胞遺伝子発現測定の解像度を向上させるための推進は、RNA及びDNAの小滴媒介単一細胞シークエンシングへの関心を促進した。単一細胞RNAシークエンシングアプローチでは、個々の細胞が、固有の細胞バーコード及び分子識別子を包含する結合ポリ-T捕捉核酸を有するmRNAを捕捉することができるバーコード化されたビーズと共カプセル化される。これらのバーコード化された捕捉核酸は逆転写のプライマーとしても作用する。細胞は小滴内で溶解されてmRNAが放出され、バーコード化されたビーズ上のポリ-T捕捉核酸に結合する。その後、エマルションが破壊され、各ビーズ上の捕捉RNAが逆転写される。プールされたcDNAは、集団のその細胞メンバーに対応する固有の遺伝子発現読み取り値を取得するために、各個々の細胞からのバーコードを包含する。各小滴中に単一のバーコードビーズ及び細胞が存在する場合、このプロセスは、固有の分子署名を各個々の細胞からの読み取り値に帰属させ、かつ、試料分化を維持しつつプーリング及びバルク遺伝子シークエンシング及び署名の他の分析を可能にする。これらのアプローチのいくつか一般的なバリエ-ションには、Drop-Seq、InDrop及びCytoSeqなどがある。
【0092】
[00145] 単一細胞核酸シークエンシングは、デバイスフリーであるという顕著な利点を有する滴状物系を使用して適合され、エンドユーザのための複雑なマイクロ流体デバイス又は機器を必要とせずに、固有の細胞からの遺伝子発現の定量化を再度可能にする。単一細胞RNAシークエンシングのために滴状物10を使用する一実施形態では、小滴担体粒子12の空洞又は空隙領域18は、単一細胞を保持し、かつ、2以上の細胞が進入することを防止するように寸法決めされる。小滴担体粒子12は、本明細書で説明するように、固有にバーコード化されたそれらの表面上にmRNA捕捉部分を包含するようにさらに官能化される。小滴担体粒子12は、単一細胞RNAシークエンシングの前に選択的な細胞単離を可能にするために、本明細書で説明するように、任意選択的に、接着リガンド又は細胞に対する抗体を包含するように官能化されてもよい。細胞カプセル化及び滴状物10エマルションの形成前に、溶解試薬が小滴担体粒子12のマトリックスに取り込まれることもできる。溶解試薬は、捕捉された細胞を溶解するためにゆっくりと放出されるか、又は、以下でさらに議論されるように放出又は活性化されるように誘発されることができる。代替的に、付着した細胞を除去することなく滴状物10と相互作用する溶解剤を包含する追加の小滴と滴状物10を混合することによって、溶解試薬が添加されることができる。細胞の存在下での滴状物10のバルク乳化は、単一のマイクロ流体デバイスによって必要とされる数時間から数日ではなく、数分の時間スケールで数百万個の単一細胞をカプセル化することができる。別の実施形態では、油相16及び水相14の両方に混和性を有する溶解剤が使用されることができる。この場合、滴状物10の形成後、油16に溶解剤が添加されることができ、いくらかの画分が滴状物10内に分配されて細胞溶解を引き起こす。別の実施形態では、不活性な溶解試薬が分散相内に添加され、その後、滴状物形成後又は滴状物形成直前に、外部刺激によって活性化されることができる。例えば、サルコシルのようなイオン界面活性剤は、あるpH範囲で活性である。この例では、溶液のpHが低下させられてサルコシルを不活化させたままにし、その後、滴状物形成は、滴状物10の水相内に分配される油相に溶解されたプロトン受容体(例えば、トリエチルアミン)を通じてpHを増加させることによって活性化されることができる。
【0093】
[00146]
[00147] さらに、既存の方法における微小粒子上の核酸捕捉配列をバーコード化する標準的な方法は、分割及びプール合成を通じてであり、ここで、微小粒子は、各々が1ヌクレオチドを包含する4つの異なる溶液に分割され、収集され、かつ、合計n回に再度ランダムに分割され、長さnのランダムオリゴマーを形成する。このタイプの添加は、滴状物10を作製するために使用される小滴担体粒子12上で直接行われることができ、第2固相の必要性をなくし、DNA増幅を、官能化された粒子を包含する小滴のみに制限する。すなわち、滴状物10を使用することが、ビーズ及び細胞の両方の無駄であるビーズ及び細胞負荷の確率過程を克服することによって有意な利点を提供することができる。単一細胞ではあるが、ビーズを含まない小滴はシグナルを導かず、細胞を有しないビーズを有する小滴もシグナルを導かない。滴状物10は、単一のビーズ(小滴担体粒子12)を包含し、空隙領域は、単一細胞を単離するように寸法付けされることができる。
【0094】
[00148] 小滴担体マトリックスからの分子/試薬の放出の制御
[00149] ある実施形態では、小滴担体粒子12のマトリックス内に捕らえられた試薬は経時的に放出される。例えば、溶解試薬(すなわち、界面活性剤、洗浄剤及び/又は酵素)は、乾燥した小滴担体粒子12内に貯蔵されることができる。水和すると、溶解試薬はゆっくりと放出され、滴状物10内にカプセル化された細胞を溶解する。別の実施形態では、溶解試薬は、ほぼ飽和まで小滴担体マトリックス材料内でインキュベートされ、分散相は、カプセル化されるべき細胞を包含する非溶解性流体と交換され、滴状物10が形成される。小滴担体マトリックスに貯蔵された溶解試薬は拡散によってゆっくりと放出されて、カプセル化された細胞を溶解する。小滴担体粒子12のヒドロゲルマトリックスの多孔性は、本明細書で説明するように、試薬放出の時間経過を調節するために調整されることができ、多孔性が増加すると、より迅速な放出がもたらされ、かつ、多孔性が減少して長期間にわたる放出がもたらされる。
【0095】
[00150] 他の実施形態では、小滴担体粒子12のマトリックスは、環境条件(例えば、pH、温度、光など)の変化に応じて膨潤する材料から形成され、マトリックスに貯蔵されたカプセル化試薬のトリガされた放出を可能にする。例えば、小滴担体粒子12マトリックス中のo-ニトロフェニル包含主鎖ポリマーの光でトリガされた劣化は、架橋密度の減少、小滴担体マトリックスの膨潤及び試薬放出をもたらし得る。別の実施形態では、小滴担体粒子12のマトリックスは、荷電され、反対に荷電した試薬は電荷間の相互作用を介して結合される。荷電された試薬の放出は、試薬、小滴担体粒子12又はその両方の電荷を変化させるpHの変化によって誘導されることができる。一実施形態では、pHは、油相(例えば、酢酸、トリエチルアミン)内の有機酸/塩基の添加を通じて外部的に調節されることができる。他の実施形態では、上述のアプローチは、細胞応答をプローブするために、一定期間にわたって薬物/分子を放出するために使用されてもよい。
【0096】
[00151] カプセル化中の細胞生存率
[00152] いくつかのアッセイは、単一細胞測定後でさえ細胞生存性の維持を必要とする。例えば、有用なバイオ製品の生産のためや、ある種の疾患の治療に最適な表現型を有する細胞の選択のために、ハイパフォーマを選別するためである。これらのアッセイは、高度に細胞適合性であることが知られている油及び界面活性剤を使用することによって、滴状物10乳化系で実行されることもできる。好適な実施形態では、非イオン性細胞適合性界面活性剤を包含するフルオロカーボン連続相が使用される。このことを実証するために、ヘキスト及びカルセインの両方によって染色されたジャーカット細胞が、本明細書で説明するように製造された乾燥PEGマイクロゲル小滴担体粒子12と混合され、0.5%Pico-Surf(商標)を有するNovec(商標)7500内でピペットにより乳化された。乳化時、滴状物10は顕微鏡スライド上に配置され、明視野、DAPI、及び蛍光顕微鏡を介したFITCチャネルで画像化され、生存率を決定した(図14A図14C参照)。滴状物10内で乳化された細胞の大多数は、乳化前及び乳化後の両方でカルセイン陽性に染色され、提案されたカプセル化アプローチとの適合性を示した。
【0097】
[00153] 別の例では、チャイニーズハムスター卵巣由来(CHO)細胞が、Novec(商標)7500及び2%v/vのPico-Surf(商標)を油相として用いて、培地中の滴状物10にカプセル化された。Novec(商標)の20%v/vのPFOを用いて様々な時点で細胞が回収され、生染色としてカルセインAM、死染色としてヨウ化プロピジウムによって染色された。このプロセスを通じて、そして24時間以上(>80%の生存率)、細胞が高い生存率を維持したことが分かった。
【0098】
[00154] 単一細胞分泌物単離
[00155] 従来、均質であると考えられている細胞集団は、実際には、多くの一般的なアッセイにおける限定された分解によって単純にマスクされている表現型において非常に大きな不均一性を示すことがある。細胞集団動態の有用な指標を収集するために、これらのアッセイは、単一細胞レベルで実行されなければならない。例えば、生体内(in vivo)で局所微小環境の攪乱に対する大規模な免疫学的応答は、白血球間のシグナル伝達分子の分泌を通じて統合される。このシナリオにおいてタンパク質組成を決定するために体液を単純にバルクでプローブすると、総試料濃度が得られるが、どの亜集団が分泌しているかに関する情報は得られず、そのような協調的応答が理解され得る程度を制限する。
【0099】
[00156] 滴状物10を用いて、分泌されたタンパク質シグナルに基づいて細胞を捕捉、定量化及びソーティングするために多数のスキームが適用されることができる。図16は、滴状物10を使用して分泌物の捕捉及び分析を実行するための例示的なワークフローの一例を示している。細胞は、カプセル化された細胞集団の所望の構成に応じて、ビオチン化脂質、RGD及び/又は表面マーカ特異的抗体のいずれかを使用して、上述したように、小滴担体粒子12の表面に結合されることができる。分泌物を捕捉するために、ELISAシステムについて上述したように、捕捉試薬(例えば、分泌分子を標的とする抗体)が、小滴担体粒子12のマトリックス上及び/又はマトリックス内に固定化されることができる。カプセル化された時点で、細胞はインキュベートされる一方で、分泌されたタンパク質は、捕捉試薬に結合された粒子の表面に蓄積する。2次レポータ抗体、例えば、乳化溶液中にも存在する、又は、エマルションを破壊した時点で導入されることができる、付着したフルオロフォアを有する2次レポータ抗体が、捕捉されたタンパク質と結合する。小滴担体粒子12上へのシグナルの局在化は、エマルションを破壊して小滴担体粒子12を水相に再構成した後、標準的なフローサイトメトリ/FACSシステム150を通じたソーティングを可能にすることができる。さらに、粒子表面への細胞の可逆的結合は、例えば、ビオチン化脂質修飾を通じて、細胞が小滴担体粒子12と共にソーティングされることを可能にし、その結果、単一細胞レベルでの定量的分泌物分析だけではなく、所望の表現型を有する特定の細胞を選別することができる。
【0100】
[00157] 全般的なワークフロー
[00158] (1)水溶液内の小滴担体粒子12上への細胞のローディング
[00159] 一実施形態では、小滴担体粒子12は、最初に、例えば、ピペットにより、平坦な底面を有するウェルプレート、ウェル、フラスコ又は他の容器内に装填される(図16参照-粒子播種及び細胞ローディング)。ある実施形態では小滴担体粒子12の形状が非対称であるため、小滴担体粒子12は、直立方向にそれらの空洞と共に沈降する(例えば、空洞18は、重力による加速の方向とは反対の表面に開く)。これは、その後、開放した空洞18に細胞が播種されることができる点で有利である。小滴担体粒子12の播種の量は、球体の閉じたパッキングを仮定することによって、所定の粒子径及びウェル表面積に近似されることができる。例えば、直径85ミクロンの粒子12及び12個のウェルプレート(ウェル当たりの表面積が2cm)について、30マイクロリットルの濃縮粒子12がウェル表面の底部の大部分を覆うことが分かった。
【0101】
[00160] 小滴担体粒子12が沈降した後(典型的には5~10分)、細胞は、ウェル内に慎重に播種され(例えば、ピペットを用いて)、沈降することを許容され、一部分の細胞は小滴担体粒子12の空洞18内に沈降する。空洞18内に入る細胞の画分に対する空洞18の外部にある細胞の画分は、小滴担体粒子径に対する空洞開口部幅の比を増加させることによって増加させることができる。概して、所定の数の細胞(すなわち、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の細胞)を包含する小滴担体粒子12の画分は、ポアソン統計から計算されることができ、播種段階中の細胞密度を調整することによって制御されることができる。一例の実験では、24個のウェルプレートの各ウェルに15マイクロリットルの濃縮小滴担体粒子12(外径85ミクロン、内径50ミクロン)が播種された。様々な量の細胞が、異なるウェルに添加され、小滴担体粒子12内に沈降させられた。細胞及び粒子12は画像化されて、粒子12当たりの細胞の数を決定した。ウェル当たり10,000個の細胞を添加すると、粒子12当たり約0.09個の細胞のポアソンローディングがもたらされた。より具体的には、93.1%の粒子12が空であり、6.65%が一(1)個の細胞を包含し、0.25%が二(2)個以上の細胞を包含していた。細胞を有する粒子12のうち、96%は一個の細胞のみを包含していた。ウェル当たり30,000個の細胞を添加すると、粒子12あたり約0.2個の細胞のポアソンローディングがもたらされた。より具体的には、粒子12の82.2%が空であり、15.9%は一(1)個の細胞を包含し、1.9%は二(2)個以上の細胞を包含していた。細胞を有する粒子12のうち、89%が一個の細胞のみを包含していた。ウェル当たり100,000個の細胞を添加すると、粒子12当たり約0.8個の細胞のポアソンローディングがもたらされた。より具体的には、粒子12の42.6%が空であり、32.6%は一(1)個の細胞を包含し、24.8%が二(2)個以上の細胞を包含していた。細胞を有する粒子12のうち、56.8%は一個の細胞のみを包含していた。
【0102】
[00161] 異なる細胞播種量が様々な用途について理想的である。アッセイの妥当性のために、粒子12当たり一個未満の細胞を捕捉することが重要である実施形態では、より低い播種密度が理想的である(例えば、24個のウェルプレートのウェル(表面積2cm)当たり10,000個の細胞)。対照的に、細胞間の相互作用の評価のためのように、粒子12当たり複数個の細胞が望ましい実施形態では、より高い播種密度が好ましい(例えば、15μLの濃縮小滴担体粒子12が各ウェルに播種される24個のウェルプレートのウェル(表面積2cm)当たり100,000個の細胞)。他の実施形態では、細胞の喪失が有害であって制限されるべきである場合、小滴担体粒子12の第1層の空洞18内に沈降しない細胞が、小滴担体粒子12の第2層又はその後の層内の空洞18内に沈降することができるように、小滴担体粒子12の複数の層がアレイ化されることができる。
【0103】
[00162] 小滴担体粒子12と細胞を結合させる第2の方法は、小滴担体粒子12の外表面に結合された細胞が経験する剪断力に対する、保護された小滴担体粒子の空洞18内に結合された細胞が経験する剪断力の差を利用する。要するに、小滴担体粒子12の表面に親和性を有する細胞の濃縮懸濁液(例えば、接着性リガンドを通じて)が、小滴担体粒子12の濃縮懸濁液内に混合され、100μL、200μL又は1mLピペットを使用して、毎秒50~100x当たり2~4ピペットの反復で激しく攪拌されることができる。細胞は、懸濁液全体に分布し、小滴担体粒子12の表面に急速に付着する。小滴担体粒子12の外側に結合する細胞は、急速に剪断されて懸濁液内に戻される一方で、空隙又は空洞18内に捕らわれる細胞は、外部流体剪断力の大部分からさらに保護され、小滴担体粒子12の空隙又は空洞18によって形成されるポケットの表面に付着したままとなる。粒子懸濁液が十分に攪拌された時点で、以下で説明するように粒子懸濁液は濾過されることができる。これは、小滴担体粒子の空洞18内に見られる細胞の画分を急速に濃縮する方法を提供する。
【0104】
[00163] 小滴担体粒子12の表面の修飾は、小滴担体粒子の空洞18内での播種された細胞の接着及びその後の培養を可能にする。例えば、小滴担体粒子12の表面内に取り込まれたRGDのような一般的に使用されているインテグリン結合ペプチドは、例えばインテグリンの存在に基づいて細胞の接着を可能にし、ピペットからの激しい機械的攪拌、遠心分離及びフローソーティング手順の存在下でも、小滴担体粒子12への細胞の付着を維持する。好適な実施形態では、RGDは、小滴担体粒子12の製造中に、デキストラン相で少なくとも4mg/mLの濃度で添加される。このアプローチでは、PEG相の光開始剤から生成されたラジカルは、ペプチドシステイン基上の遊離チオールと小滴担体粒子12前駆体のポリマー骨格上の非結合ノルボルネンとの間の共有結合を誘導する。そのようなRGD修飾小滴担体粒子12上に播種されたCHO細胞は、数日間、小滴担体粒子12の表面上に関連付けられて広がったままであった。
【0105】
[00164] 典型的には非接着性である細胞株は、小滴担体粒子12の表面と結合させられることもできる。一実施形態では、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用が、小滴担体粒子12に細胞を連結するために使用される。より具体的には、ビオチン化小滴担体粒子12は、ストレプトアビジンによって予め修飾され、標的細胞は、小滴担体粒子12と細胞集団又は細胞集団のサブセットとの間に親和性を生成するビオチン化脂質/コレステロール又はビオチン化抗体のいずれかによって予め修飾される。1つの好適なワークフローでは、PBS内の10μg/mLのストレプトアビジンによって最初にビオチン化小滴担体粒子12を予め修飾することによって、一次T細胞がビオチン化小滴担体粒子12に結合されることができる。同時に、10μg/mLのビオチン-抗-CD3抗体を1000万個未満の細胞に混合することによってT細胞が修飾され、37℃で20分間インキュベートされる。小滴担体粒子12及び細胞の両方が、PBSによって数回洗浄されて、結合していない材料の除去を確実にする。その後、小滴担体粒子12は2000Gで5分間遠心分離されて強固なペレットを形成し、これに濃縮抗-CD3修飾細胞懸濁液が添加される。その後、小滴担体粒子12の細胞及び懸濁液は、少なくとも2分間、手動によるピペットによって連続的に攪拌される。その後、試料は、後述するように、細胞濾過器を使用して濾過されて、小滴担体粒子12及びそれらの表面に結合された任意の細胞のみを収集する。ビオチン化脂質を用いる代替の実施形態は、表面タンパク質組成にかかわらず、このアプローチを用いて任意の細胞が修飾されることができるという重要な注意を払いつつ、ほぼ同じ方法で進行する。ここで、細胞は、10~100μg/mLのビオチン化脂質と共に37℃で、合計60~90分間インキュベートされた後、洗浄され、ピペットにより小滴担体粒子12に付着させられる。
【0106】
[00165] (2)結合していない細胞及び/又はバックグラウンド分泌物の洗い流し並びに対象の特定の細胞分泌物を捕捉する小滴担体粒子12に結合するための親和性試薬の添加
[00166] ある応用では、小滴担体粒子12と結合されないままである細胞は、望ましくなく、ノイズ源になる場合さえある。バックグラウンドを減少させるために、小滴担体粒子12は、滴状物10の形成の前に洗浄されて、アッセイが実施される前に溶液から、結合していない細胞を排除することができる。1つのアプローチでは、小滴担体粒子12の懸濁液、付着細胞を有する小滴担体粒子12及び非結合細胞が、細胞径よりも大きいが小滴担体粒子12の径よりも小さいメッシュサイズを有する細胞濾過器に添加される。これにより、付着細胞を有する小滴担体粒子12がメッシュによって保持される一方、非結合細胞がメッシュを通過することを可能にする。小滴担体粒子12は、保持される一方で、緩衝液の連続的な添加によって連続的に洗浄されることができ、小滴担体粒子12の表面にしっかり付着していない細胞を除去することができる。その後、小滴担体粒子12及びそれらの結合した細胞は、細胞濾過器の単純な反転、メッシュの下側からの緩衝液の添加、並びに、緩衝液及び付着細胞を有する溶出した小滴担体粒子12を包含する得られた溶液の回収を通じて単離される。この用途のための好適な細胞濾過器の1つは、Fisher Scientific社のFicherbrand 40μmの滅菌細胞濾過器である。
【0107】
[00167] 希少細胞への応用では、小滴担体粒子の空洞18に結合されない細胞を回収することが望ましい場合がある。この場合、上述の方策が使用されることができ、小滴担体粒子12の新しい試料内に後で播種するために収集された小滴担体粒子12と結合していない細胞を用いることができる。
【0108】
[00168] ある応用では、小滴担体粒子12上に分泌物を捕捉することが望ましい。このような実施形態では、分泌物の分子捕捉部位として作用するために、抗体又は免疫グロブリン結合タンパク質のような親和性試薬によって小滴担体粒子12の表面を修飾することが有益である(図16-分泌物の捕捉及びソーティング)。ビオチン-ストレプトアビジン反応におけるように、分泌速度が遅く、小滴担体粒子12への細胞の結合が急速である例示的な実施形態では、小滴担体粒子12は、小滴担体粒子12の内部又は表面上の分子捕捉部位によって予め修飾されることができ、結合した細胞から生じるシグナルを汚染することなく、滴状物10に急速に分配されることができる。付着細胞(例えば、CHO細胞)がRGD結合ペプチドに付着する場合のような、分泌速度が急速で、細胞が小滴担体粒子12の表面に強く付着するのに数時間を要する他の実施形態では、、細胞は、最初に、好適には2~12時間、小滴担体粒子12の表面に付着することを許容される。細胞が小滴担体粒子12に付着した時点で、試料は、遠心分離及び溶液交換を介して洗浄され、バックグラウンド分泌物及び非結合細胞を除去することができる。その後、小滴担体粒子12は、対象の分泌物に結合して小滴担体粒子12に付着した分子捕捉部位を形成するビオチン化プロテインA又はビオチン化抗体のような親和性試薬によって修飾されることができ、その後、滴状物10に急速に乳化される。詳細なプロトコルが本明細書に開示されている。好適な一実施形態では、小滴担体粒子12は、図12について詳細な説明で説明したように、製造中に小滴担体粒子前駆体のデキストラン相で4mg/mLのRGD及び小滴担体粒子前駆体のPEG相で0.5~5mg/mLのビオチン-PEG-チオールの両方を取り込むことによって、RGDペプチド及びビオチン基の両方によって官能化される。細胞はこれらのペプチド及びビオチン修飾小滴担体粒子12上に播種される。付着後、各小滴担体粒子12の試料(12個のウェルプレートに30μLの小滴担体粒子12)は、小滴担体粒子12の表面上のビオチン基に結合するPBSの0.02mg/mLストレプトアビジンで処理される。試料は、10分間にわたってインキュベートされ、0.5%BSAを有するPBSによって数回洗浄される。その後、各濃縮小滴担体粒子12の試料は、10μLの0.5mg/mLストックのビオチン化プロテインAによって修飾され、上述のように、10分間インキュベートされる。適切な修飾後、小滴担体粒子12は、分泌物測定用途に直接適用されることができ、後述するように乳化されることができる。
【0109】
[00169] (3)滴状物10を形成するための、付着細胞及び結合親和性試薬による小滴担体粒子12の油連続相への乳化
[00170] 滴状物10の最適な形成及び維持は、使用される界面活性剤のタイプ及び濃度並びに攪拌方法を含むいくつかの要因に依存する。例示的な一実施形態では、連続相としてのNovec(商標)7500で操作された流体中の2%Pico-Surf(商標)(Sphere Fluidics社)が、それぞれ2:1容積比の分散相としてのPBS又は細胞培養培地中の小滴担体粒子12と共に使用された。このような状況下で、手動によるピペット(100μL、200μL又は1mLピペットを使用して、毎秒50~100X、毎秒2~4回のピペットの反復)を介した激しい攪拌が、単一小滴担体粒子12のみを包含する高い画分を有する単分散滴状物10を確実かつ再現性良く形成することが分かった。
【0110】
[00171] (4)親和性試薬と結合する分泌物を蓄積するための滴状物10の所定時間にわたるインキュベート
[00172] インキュベーション中の細胞生存率を維持するため、滴状物10は、細胞培養培地(RPMI-1640/DMEMなど)及び2%FBSによって富化されたPBSの両方を使用して形成された。ほとんどの小分子は、ヒドロゲル小滴担体粒子12の孔を通じて容易に拡散することができるので、滴状物10の総容積は、栄養素リザーバとして役立つ。さらに、滴状物12は、標準的な細胞インキュベータ内で約37℃に維持されることができる。滴状物10の層の上部に軽質又は重質鉱油の層を加えると、蒸発及び凝集を減少させることによって安定性が改善されることが分かった。
【0111】
[00173] 滴状物10内にカプセル化された単一細胞によって生成されたすべての検体は、それらの関連する水相容積又は区画内に保持される。これらの比較的少量の滴状物10は、小滴担体粒子12の表面上の検出可能な量の分泌物の急速な結合を助ける分泌物シグナルの局所的蓄積をもたらす。予想される分泌物レベルに応じて、インキュベーション時間は、対象の細胞型及び分泌物標的に応じて調整されることができる。例えば、分泌レベルが少ないことが予想される場合には、より長いインキュベーション時間(>12時間)を用いることができ、分泌率が高い場合には、より短いインキュベーション時間(~2-3時間)を用いることができる。
【0112】
[00174] 予想される分泌レベルに応じて、分泌物結合部位の数及び結合部位の空間的位置が調節されることができる。一例では、利用可能な結合部位は、分泌物がゲルマトリックスを通じて自由に拡散することを可能にする孔径を有するマトリックス多孔性を有する小滴担体粒子12を製造することによって増加させられることができる。この実施形態では、小滴担体粒子12の完全な3次元幾何学的形状が使用されて、分泌された分子を捕捉して結合部位の総数を増加させることができ、このことは、結合部位が容易に飽和されずにより良好なダイナミックレンジの検出を可能にするので、高い分泌レベルの場合に有益である。場合によっては、例えば、低分泌レベルでは、より集中したシグナルを生成するために、結合部位を空間的に局在化させることが有利である。例えば、固体小滴担体粒子12を使用することによって、又は、分泌物が小滴担体粒子12のマトリックスを通じて自由に拡散することができないような多孔性を有する粒子を使用することによって、アクセス可能な結合部位が小滴担体粒子12の表面に局在化される。さらなる実施形態では、結合部位は、分泌物捕捉及び得されたシグナルをさらに局在化させるために、内部空洞又は空隙18の表面に局在化され得る。本明細書に記載される抗-IL-8抗体を分泌するCHO細胞の詳細な例示において、小滴担体粒子の孔径は、標的分泌物、抗IL-8の自由拡散を防止するのに十分に小さい。これにより、分泌された抗-IL-8は、小滴担体粒子12の外側(すなわち、空洞18内及び外縁の周囲)に結合し、蓄積された蛍光シグナルの視認性を強化する。
【0113】
[00175] (5)滴状物10のエマルションを破壊して、付着細胞を有する小滴担体粒子12を水溶液に戻す
[00176] 滴状物10が、可視化のために小滴担体粒子12上に十分な分泌物が蓄積及び結合するのに十分な長さでインキュベートされると、エマルションは、小滴担体粒子12及びそれらの結合細胞を回収する安定性を失う。これは、パーフルオロオクタノール(PFO)又はPico-Break(商標)のような2次界面活性剤を添加することによって達成される。一実施形態では、すべての過剰な油が滴状物10のエマルションから除去され、Novec(商標)-7500油中の等量の20%PFOに置換される。小滴が不安定化すると、水相と有機相との間に2分以内に明確な境界が見えるので、溶液は、チューブ表面を軽くたたくことによって弱く攪拌される。残りの任意の小さな有機サテライト小滴28は、低速(~100g)で急速に5秒以内の遠心分離を通じて水相から除去されることができる。その後、水溶液及び小滴担体粒子12は、下流分析の前に、解離した油相から(例えば、ピペットによって)容易に除去される。
【0114】
[00177] (6)分泌物に特異的な第2親和性試薬を用いた、捕捉された分泌物のために付着細胞による小滴担体粒子12の染色
[00178] 小滴担体粒子12に結合された分泌分子を分析するために、いくつかの異なる報告スキームが使用されることができる。好適な一実施形態では、分泌分子上の第2エピトープに対して特異的であるフルオロフォアに共役された2次抗体が添加されて、蛍光サンドイッチ免疫複合体を形成し、結合した分泌分子の存在を報告することができる。この方法は、フローサイトメータ150(図13A図13B図16及び図18に図示)、プレートリーダ及び蛍光顕微鏡のような多くの一般的に使用される分析ツールを通じた定量化を可能にする。
【0115】
[00179] 特に低濃度で存在する分泌分子については、レポータ抗体がホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素に共役され、粒子上の遊離部位に結合する蛍光色素を切断する増幅スキームは、チラミド化学の使用などを通じて、本明細書で説明するように、シグナルを増幅することができる。関連の実施形態では、磁性ナノ粒子又は磁性微小粒子が使用されて、対象の捕捉された分泌分子を標識することができる。磁気特性の付加は、多くの方法で使用されることができる。例えば、対象の小滴担体粒子12を濃縮するため、又は、磁力を用いて対象の試料をソーティングするため。染色は、これらの2つのモダリティ(例えば、蛍光及び磁気)に限定されず、複数のモダリティの組み合わせを含み得ることが理解されるべきである。他のモダリティには、当技術分野で公知のものの中でも、比色、燐光、光散乱粒子、プラズモニックナノ粒子が含まれ得る。
【0116】
[00180] (7)付着細胞を有する染色された小滴担体粒子12の分析(例えば、フローサイトメータ150を用いて)、及び、任意選択的に、分泌量/親和性に対応する染色に基づく強度の閾値に基づいて小滴担体粒子12に付着した対象の細胞のソーティング
[00181] 染色されると、小滴担体粒子12及びそれらの結合細胞は、市販のフローソータ150(図13A図13B図16及び図18に図示)を使用して、高スループットで分析され、かつ、ソーティングされることができる。好適な実施形態では、小滴担体粒子12は、PBS+2%FBSなどの栄養素が豊富なPBS内に懸濁され、ソーティングプロセス中、細胞生存性を維持する。小滴担体粒子12の相対サイズは、前方散乱シグナル及び側方散乱シグナルを使用して容易に識別することを可能にするソーティング中、汚染された塵埃、細胞残渣又は溶液中の小径油滴からの粒子の明確な識別を可能にする。細胞質トラッキング染料、核染色、生存性染色又はレポータ抗体によって染色された付着細胞も、小滴担体粒子12上で容易に検出され、小滴担体粒子12を包含する細胞の直接の分析を可能にする。最後に、エマルションの破壊時に小滴担体粒子12の表面に添加されたレポータ抗体は、小滴担体粒子12表面の相対蛍光強度から粒子空洞18内の個別の細胞クローンからの相対的なタンパク質生産の直接的な定量化を可能にする。対象のソーティングされた細胞、例えば、高レベルの所望のタンパク質を分泌するクローンは、容易に単離され、かつ、その後の増殖のために生存可能のままであり、有益な細胞表現型の濃縮を可能にする。
【0117】
[00182] 他の例では、総分泌物に基づく単一細胞のスクリーニングが複数サイクルにわたって実行されて、所望の亜集団の選択を改善することができる。この全般的なワークフローが図19に示されている。前述したアプローチに従い、単一細胞は、小滴担体粒子12内に単離され、滴状物10に乳化され、そこでクロストークなしに分泌物が蓄積して小滴担体粒子12上に捕捉される。その後、小滴担体粒子12は水中に戻され、分泌物の量を示すために染色され、付着細胞とともに分析/ソーティングされることができる。その後、ソーティングされた細胞のサブ集団が増殖されて、反復選択工程を実施することができる。一実施形態では、小滴担体粒子12に付着したソーティングされた細胞は、ウェルプレート又はフラスコ内に播種され、小滴担体粒子12から直接増殖させられることができる。例えば、培養の数日後、CHO細胞が、小滴担体粒子12の表面を横切って増殖し、最終的に、それらが播種されたウェルプレートの表面上で増殖することが分かった。これは、処理工程を減少させ、細胞のトリプシン処理を制限するという利点を有する。所望であれば、付着細胞は、標準的なトリプシン処理及び継代培養工程を用いて小滴担体粒子12から除去されることができる。細胞の増殖後、回収された細胞を再び小滴担体粒子12上に播種して前に概説した工程を繰り返すことによって、単一細胞の分泌及びソーティングサイクルが再度実行されることができる。関連の実施形態では、小滴担体粒子12に播種された単一細胞が増殖させられて、乳化前に小滴担体粒子12に付着したクローン性コロニーを形成することができる。これにより、クローンの成長及び分泌に基づく分析/ソーティングを組み合わせることが可能になる。例えば、大部分が単一細胞のみを包含するような濃度で、細胞が小滴担体粒子12内に播種されることができる。所望であれば、最初の集団がスクリーニングされて、(例えば、フローソータ150を使用して)多数の細胞を有する小滴担体粒子12を除去することができる。播種後、細胞は、単一細胞コロニーが形成されるように小滴担体粒子12上で直接増殖させられることができる。これは、用途に応じて、様々な時間(例えば、<24時間、24時間~1週間、>1週間)にわたって行われることができる。コロニー形成後、バックグラウンドシグナルは洗い流されることができ、小滴担体粒子12は分泌結合部位によって修飾されることができる。その後、単一細胞について先に概説したように分泌スクリーニングが実行される。滴状物10系は、カプセル化前に細胞が小滴担体粒子12上で増殖させられることができ、細胞増殖中に蓄積する任意の望ましくないバックグラウンドシグナルを除去する機会を与えるので、このワークフローに一意的に適している。単一細胞が直ちにカプセル化されて増殖させられる他のアプローチでは、シグナルは、望ましくないか又はシグナルの飽和につながり得る増殖期間中全般に蓄積される。
【0118】
[00183] ワークフロー例
[00184] 高分泌CHO細胞を選択するためのワークフローの例を以下に詳述する。使用される細胞株の例は、CHO-DP12クローン#1934(ATCC)である。細胞培地は、ATCCにより規定されるように調製された。CHO-DP12細胞株は、この例の実験のための標的分泌物であるヒト抗-IL-8抗体を産生する。
【0119】
[00185] (1)水溶液中で小滴担体粒子12に付着するための細胞のローディング
[00186] この例では、外径82.5ミクロン、内径50ミクロンの小滴担体粒子12が使用された。小滴担体粒子12は、0.5mg/mLのビオチン-PEG-チオール(5000MW、nanocs社)及び4mg/mlのRGD(前述のように製造中にデキストラン相に添加される)によって修飾された。30μLの濃縮小滴担体粒子12が1mLの細胞培地で希釈され、12個のウェルプレートのうちの1つのウェル内に添加された。その後、小滴担体粒子12は10分間沈降することを許容された。CHO DP-12細胞が、1ml当たり400万個の細胞に濃縮された。粒子当たり~0.3個の細胞の標的カプセル化のため、18μLの濃縮細胞ストックがとられ、培地で50μLに希釈され、その後、小滴担体粒子12で予め播種されたウェル内に慎重に移された。粒子当たり~0.1個の細胞の標的カプセル化のため、6μLの濃縮細胞ストックが50μLに希釈され、その後、小滴担体粒子12で予め播種されたウェル内に慎重に移された。ウェルプレートをインキュベータに移動させる前に、細胞が10分間にわたって播種されることが許容された。4~12時間の範囲が、細胞が小滴担体粒子12に強く付着するのに必要であることが分かった。
【0120】
[00187] (2)結合されていない細胞及び/又はバックグラウンド分泌物を洗い流し、対象の特定の細胞分泌物を捕捉する小滴担体粒子12に結合する親和性試薬を加える
[00188] 細胞が十分な時間にわたってインキュベートされて小滴担体粒子12に付着した後、小滴担体粒子12はウェルプレートから15mLのコニカルチューブに移された。これは、ウェルプレートを約30°の角度で傾け、表面に付着した小滴担体粒子12を剪断するために上から過剰の培地をピペットし、除去された小滴担体粒子12及び結合した細胞を15mLのコニカルチューブにピペットすることによって行われた。小滴担体粒子12のコニカルチューブの壁への付着を制限するために、チューブは、0.1%Pluronic F-127を有するPBS、0.5%BSA(ウシ血清アルブミン)を有するPBS、又は、2%FBS(ウシ胎児血清)を有するPBSの溶液によって前処理されることができる。その後、小滴担体粒子12及び結合した細胞は、0.5%BSAを補充したPBS(カルシウム及びマグネシウムイオン)で2~3回洗浄された。この洗浄は、培地中に存在する可能性のあるビオチン及びバックグラウンド培地中に存在する可能性のある細胞からの任意のタンパク質を除去する。すべての洗浄工程について、試料は300gで3分間遠心分離された。その後、小滴担体粒子12は、小滴担体粒子12上の利用可能なビオチン基に結合するストレプトアビジンの0.02mg/ml溶液によって修飾される。10分間インキュベートした後、小滴担体粒子12及び結合した細胞は、PBS+0.5%BSAによって2~3回洗浄された。次に、小滴担体粒子12は、分泌された抗-IL-8タンパク質の捕捉部位の例として使用されるビオチン化プロテインAによって修飾された。この例では、ビオチン化プロテインA(Thermo Fischer Scientific社)の0.5mg/mlストック溶液10μLが各試料に添加され、その後、10分間インキュベートされた。代替的に、ビオチン化IgG1、FCマウス抗ヒトが使用されることができる。最後に、試料は、PBS+0.5%BSAによって2~3回洗浄された。最終洗浄時、PBSは細胞培養培地に置換された。
【0121】
[00189] (3)付着細胞及び油連続相の結合親和性試薬によって小滴担体粒子12を乳化して滴状物10を形成する
[00190] 小滴担体粒子12及び結合した細胞は、試料を遠心沈殿させることによって濃縮された。その後、約50μLの試料が残るまで浮遊物が除去された。その後、100μLのNovec(商標)油+2%w/vのPico-Surf(商標)が試料に添加された。その後、エッペンチューブが2~5xフリックされ、試料を大きな小滴に分解するのを助けた。その後、100μL又は200μLピペットのいずれかを用いて、試料が毎秒2~4ピペット、50~100Xの速度で上下にピペットされて、単分散滴状物10を生成した。その後、滴状物10形成後、試料の蒸発を防止し、試料をインキュベートする間の凝集を減少させるために、鉱油が試料の上部に添加された(~100-150μL)。
【0122】
[00191] (4)親和性試薬と結合する分泌物を蓄積するために滴状物10をある期間インキュベートする
[00192] 試料は、細胞インキュベータ(37℃、5%CO)内で2~24時間インキュベートすることを許容された。この工程中、分泌された抗-IL-8タンパク質は、小滴担体粒子12上のプロテインA結合部位に付着する(図17A参照)。
【0123】
[00193] (5)滴状物10エマルションを破壊して、付着細胞を有する小滴担体粒子12を水溶液内に戻す
[00194] 小滴担体粒子12及び細胞を水相に戻すために、試料の上部に~4-6mLのPBS+2%FBSが添加された。その後、添加された鉱油はピペットによって除去される。その後、Novec(商標)油中の50μLの20%v/vのPFOが試料に添加されて小滴の凝集を助けた。エッペンチューブを軽くたたくことによって凝集が助けられる。2~5分後、残りの小滴は、試料を100gで5~10秒間遠心分離することによって凝集されることができる。相移動が完了した時点で、小滴担体粒子12及び結合した細胞は、新しい15mlのコニカルチューブに移される(PBS中の2%FBS、又は、0.5%BSA、又は、0.1%Pluronic F-127によって前処理される)。
【0124】
[00195] (6)分泌物に特異的な第2親和性試薬を使用した、捕捉された分泌物のために付着細胞による小滴担体粒子12の染色
[00196] 水相14の小滴担体粒子12試料がPBS+2%FBSによって2~3回洗浄された。最後の洗浄で試料が遠心沈降されて、~100μLが残るまで浮遊物が吸引される。10μLの0.5mg/mlヤギ抗ヒトIgG H&L(Cy5)予備吸着(Abcam社、ab97172)が試料に添加されて、小滴担体粒子12上に捕捉された捕捉された抗-IL-8タンパク質を染色した(図17A)。37℃で30分間インキュベートした後、試料は、PBS+2%FBSによって2~3X洗浄され、共役していない染色剤をすべて除去した。その後、試料は、フローサイトメータ150への移送中に氷上に置かれた。
【0125】
[00197] 任意選択的に、この染色プロセス中、小滴担体粒子12と結合された細胞はカルセインAMによって染色されることができる。図17Bは、カルセインAMによって染色された結合した細胞を有する小滴担体粒子12を撮った顕微鏡画像の例を示している。蛍光イメージングは、カルセインAM染色生細胞が存在する小滴担体粒子12上のCy5チャネル(分泌物染色チャネル)において強いシグナルを明瞭に示している。結合した細胞を有しない他の小滴担体粒子12上にはバックグラウンドシグナルがほとんど示されていない。これは、分泌物捕捉及び標識が成功したこと、並びに、インキュベーション工程中の滴状物10同士の間の制限されたクロストークを示している。
【0126】
[00198] (7)分泌物の量/親和性に対応する染色に基づく強度の閾値に基づいて、付着細胞によって染色された小滴担体粒子12を(例えば、フローサイトメータ150を用いて)分析し、任意選択的に、小滴担体粒子12に付着した対象の細胞をソーティングする
[00199] 試料は、オンチップバイオテクノロジーズ社(日本国東京)からのオンチップソーティングフローサイトメータ150を使用して高スループットで分析された。試料は、PBS+2%FBSで200μLに希釈され、試料入口に添加された。ここでは、オンチップバイオテクノロジーズ社からの150μmフローチップが使用された。PBS+2%FBSもシース液として使用された。前方散乱高さ(FSC(H))及び側方散乱高さ(SSC(H))のゲーティングが使用されて、他のバックグラウンド事象/ノイズから小滴担体粒子12を選択した。他の事象は、溶液中にまだ存在する少量のNovec(商標)7500油小滴、小滴担体粒子12から解離した細胞、又は細胞破片と関連している可能性がある。ゲーティングプロットの例が図18に示されている。この最初のゲーティングの後、ソーティング事象は、その後、相対的遠赤色蛍光シグナルから選択された。例えば、図18において、遠赤色シグナルの上部10%はソーティングゲートとして選択された。その後、付着細胞を有する小滴担体粒子12を包含する試料がソーティングされて収集された。オンチップソータフローサイトメータ150を使用すると、事象率は、典型的には、試料について約50~300事象/秒であった。収集された試料は、カルセインAMによって染色され、図18に示すように蛍光顕微鏡下で可視化された。ソーティング後、カルセインAM生染色シグナルによって示されるように、細胞の大部分が生存性を維持した。Cy5チャネル(捕捉された分泌物染色チャネル)のさらなる画像は、小滴担体粒子12の明確な蓄積を示しており、ソーティング後、高レベルの捕捉された分泌物と結合する細胞を示している。これは、滴状物10系を使用して相対的な分泌物レベルから細胞をソーティングする能力を実証する。
【0127】
[00200] 滴状物のバーコーディング
[00201] 多数のスキームは、多数の標的(例えば、核酸、タンパク質、細胞又は他の検体)が同じ実験手順でプローブされることができるように、一意の識別子を用いて小滴担体粒子12のバッチをバーコーディングするために使用されることができる。これらには、上述したようなDNAオリゴの生成のためのスプリットアンドプール合成を通じたもの、若しくは、複数のフルオロフォアの様々な比率を有する蛍光強度(図15B)を通じたもの、予めカプセル化された磁性ナノ粒子52の様々な濃度を介した磁気親和性(図15C)を通じたもの、様々なサイズ及び量のナノ粒子54からの固有のフローサイトメトリ側方散乱特徴(図15D)を通じたもの、又は、均一なサイズの空洞又は空隙を維持しながら、小滴担体粒子12の直径又は他の寸法を一意の識別子として機能させる粒子形態の変化(図15A)を通じたものが含まれる。異なるバーコーディングアプローチを組み合わせて、様々なタイプの小滴担体粒子12の数をさらに増加させることもできる。
【0128】
[00202] 少数の異なる色のフルオロフォアの共有結合は、各分子の相対濃度の変動を単に通じて、膨大な量の識別可能性を提供する。例えば、8つの異なる濃度での3つの異なるフルオロフォアのみの付着又は他の方法での埋め込みは、特異的な小滴担体粒子に固有に検出されて帰属され得る、500を超える別個のバーコードを生じさせる。小滴担体粒子12の蛍光分析バーコーディングは、抗体、反応基、若しくは、通常は小滴担体粒子12の表面に結合され得るか又は小滴担体粒子12のマトリックス内に埋め込まれているか又は共有結合によってリンクされ得る任意の他の部分に共役されたフルオロフォアの付着を通じて容易に達成される。例えば、PEG-ノルボルネン又はPEG-VSのいずれかを使用して製造された小滴担体粒子12は、製造中又は製造後に、マレイミド修飾蛍光染料(例えば、Alexa Flour(商標)488マレイミド、Alexa Flour(商標)568マレイミドなど)をチオール化架橋剤に共役させることによって標識されることができる。固有のバーコードを作成するために、これらのフルオロフォアの異なる比率が混合されることができる。別の実施形態では、ビオチン-PEG-チオール(Nanocs社)が、小滴担体粒子12の架橋の前又は後に、PEG-ノルボルネン、PEG-VS又は任意の他のチオール反応性PEG基のポリマーに共役されることができる。その後、ビオチン基は、様々な色、濃度及び比で、蛍光ストレプトアビジン分子(例えば、とりわけAlexa Flour(商標)488、568、647、ストレプトアビジン)で修飾されることができる。粒子製造後に蛍光ストレプトアビジンによって修飾することによって、効率的なバーコーディングプロセスが可能になる。例えば、異なる標識ストレプトアビジン分子の予備混合物が、異なる濃度/比で予め混合されることができ、かつ、その後、製造された小滴担体粒子12が加えられて、多くの異なるバーコードを効率的に形成することができる。別の例では、濃度及び比が異なる蛍光ナノ粒子がヒドロゲル前駆体と混合され、一実施形態での製造中に小滴担体粒子12のヒドロゲルマトリックス内に埋め込まれることができる。水相又は滴状物10内のバーコーディングされた小滴担体粒子12の蛍光読み取りは、標準的な顕微鏡、フローサイトメトリ150、プレートリーダ、又は多くの他の実験機器の標準片を使用して実行されることができる。
【0129】
[00203] 印加された磁場内の磁気吸引力の変動を通じて、小滴担体粒子12及び得られた滴状物10をバーコーディングするために磁気が使用されることができる。小滴担体粒子12は、異なるレベルの磁気包含量で製造されることができ、異なる磁気バーコードを生成する。種々のレベルの磁気包含量は、重合の前に小滴担体粒子前駆体溶液内に水溶性磁性ナノ粒子又は微小粒子52を導入することによって達成されることができる。磁気バーコーディングを使用する一実施形態は、振動磁場の存在下で、磁気ピラーのアレイ上の表面上に滴状物10又は小滴担体粒子12を配置することを包含する。この振動は、移動の平面に沿ってますます離間されているピラーの平面を横切る正味の一方向移動をもたらす。その後、水相の滴状物10又は小滴担体粒子12によって覆われた総距離は、磁性包含量がより少ない小滴担体粒子12が最終的に停止し、次のピラー配列までの距離を通過することができなくなるので、磁気官能化の程度に比例する一方で、より大きな磁化の程度を有するものは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,144,911号に開示されているようなより強い引力によって移動し続ける。小滴担体粒子12の磁気官能化はまた、連続相全体にわたってエマルションの迅速な移動を可能にする。乳化された微小粒子内にカプセル化された磁性粒子42は、サテライト小滴28の大きなバックグラウンドから小滴を包含する小滴担体粒子12を分離するのに十分な力を印加磁場の存在下で提供する(図5参照)。したがって、このバーコーディングスキームの適用は、印加力の変動を通じて空間的に亜集団を分離することができるのみならず、多くのアッセイにおいてシグナルを改善するために、望ましくないサテライト小滴28から小滴担体粒子12を分離することもできる。
【0130】
[00204] 粒度は、細胞の別個のサブセットを互いに分離するためにフローサイトメトリにおいて一般的に使用される測定尺度である。小滴担体粒子12は、異なる角度及び/又は異なる強度で光を散乱する様々なサイズ及び/又は濃度の光散乱ナノ粒子54を添加することによってバーコーディングされることができる。ナノ粒子54(例えば、ポリスチレンナノ粒子)は、重合前の一実施形態における前駆体ヒドロゲル溶液内にローディングされて、散乱バーコードが埋め込まれた小滴担体粒子12を生成することができる。この代替アプローチは、例えば、補償を必要とする余分な蛍光シグナルを必要とせず、かつ、蛍光的に標識されて小滴担体粒子12に付着した検体の分析を妨げ得る側方散乱シグナルを分析することによって、フローサイトメータ150における小滴担体粒子12型の分析を可能にする。
【0131】
[00205] 小滴担体粒子をバーコーディングする別の方法は、小滴担体粒子12自体のサイズを通じてのものを含む。これは図15Aに示されている。異なるサイズの小滴担体粒子12は、フローサイトメータ150内で異なる前方散乱シグナルをもたらす。粒子径の差はまた、粒子クラス間の視覚的識別を可能にし、かつ、広視野イメージング及び顕微鏡観察を通じて容易に分類されることができる。さらに、慣性集束又は決定論的横方向変位のようなマイクロ流体技術を使用して、流動場内の各小滴担体粒子12に加えられる累積力の変動を通じて、異なるサイズの小滴担体粒子12を互いにソーティングすることができる。他の非蛍光バーコードと共に議論されるように、このようなサイズベースのバーコーディングは、バーコードからの干渉なしに、複数の波長にわたる蛍光シグナルを検体検出のために使用することを可能にする。さらに、フローサイトメータ150をイメージングするために、小滴担体粒子12及び空隙又は空洞領域18の形状/サイズが画像化されてバーコーディングの方法を同様に提供する。
【0132】
[00206] 滴状物/小滴担体粒子を読み取る及びソーティングする方法
[00207] 滴状物アッセイで生成されたシグナルを定量可能な測定値に変換するために、アッセイ出力を読み取る明確に定義された方法が滴状物系と適合しなければならない。さらに、シグナルを処理し、滴状物10のサブセットを異なる集団にソーティングする方法を開発することは、単一細胞研究からのハイパフォーマの単離にとって重要である。特に、小滴担体粒子12及び形成された滴状物10は、多くの一般的に使用される実験システムと適合性があり、適切な機器によって読み取り及びソーティングの両方を比較的に容易にする。
【0133】
[00208] ある実施形態では、滴状物10内にカプセル化された容積内で行われた反応に対応するシグナルは、小滴担体粒子12の表面に付着するか、又は、小滴担体粒子12内及び周囲の水相14内に蓄積する。これは、油連続相の滴状物10と適合し得るカスタム組立マイクロ流体デバイス、及び、一旦水相に戻された小滴担体粒子12と適合性を有する市販のフローサイトメータ150及びFACSシステム、の両方におけるシグナル検出器(例えば、光電子増倍管(PMT))を通じた蛍光又は比色シグナルの変動の検出を可能にする。いくつかの市販のフローサイトメータ150は、日本国東京のオンチップバイオテクノロジーズ株式会社のオンチップフローやオンチップソートなどの油連続相にも適合する。小滴担体粒子12の径は、標準的な市販のフローサイトメトリ機器150で使用するために、<~50マイクロメートルに調節されるべきであるが、他の市販のサイトメトリシステム(例えば、オンチップバイオテクノロジー社のもの又はUnion Biometrica社のバイオソータ)において、最大~500マイクロメートルまでのより大きなサイズが使用されることができる。バーコーディングシグネチャはまた、本明細書で説明するように、蛍光及び/又は散乱シグナルを用いて同時に読み取られることもできる。その後、各バーコードについての正のシグナル小滴担体粒子12の数は、閾値又はゲートが特定のサブ集団を識別するために使用される場合、フローサイトメトリ散乱プロットからカウントされることができ、特定のバーコードゲート内で高対低のアッセイシグナルで小滴担体粒子12の画分をカウントすることによって多重アッセイにつながる。これらのアッセイシグナルに基づくソーティングは、さらなる細胞分析及び増殖、又は、核酸分析及び下流シークエンシングのために、高対低の小滴担体粒子12を単離するためにも実行されることができる。他の実施形態では、捕捉された検体を包含する滴状物10(例えば、抗体を使用する)は、捕捉された検体にも結合してサンドイッチを形成する磁性粒子/微小気泡粒子にさらに暴露されることができる。その後、正のシグナル粒子は、それぞれ、磁場又は浮力を介して分離され得る。
【0134】
[00209] 標準的な蛍光顕微鏡法は、アッセイ出力をプロービングする有効な方法でもある。ここでは、広視野イメージングプロトコルを適用して、試料バッチ内のすべての滴状物10を測定し、別個のアッセイ測定値内の変動性のより良い理解を発展させることができる。ある実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0157351号公報又は米国特許第9,007,433号に開示されているものと同様に、オンサイト/ポイントオブケア分析(例えば、モバイルデバイス上の広視野蛍光イメージング)を可能にするために、携帯型イメージングシステムが使用されることができる。さらに、小滴担体粒子12の幾何学的形状の不均一性は、磁場を利用して、磁性滴状物10の集団を同じ方向に整列させて、イメージング中又は流動中の分析中に粒子空隙又は空洞18から均一なシグナルを得ることができることを意味している。
【0135】
[00210] 三日月形の小滴担体粒子12の非対称性を利用して、浮力に基づいて小滴担体粒子12を整列させることができる。例えば、水相よりも高い密度の三日月形の小滴担体粒子12は、それらの空洞18を直立に露出させて沈降して配向する傾向があることが分かった。これは典型的には5~10分の時間スケールで起こった。この好適な配列は、露出した空洞18内にマイクロスケールの物体をローディングすること(例えば、細胞をローディングすること)を容易にするために使用されることができる。また、小滴担体粒子12の形状を利用して、閉じ込められたチャネル内の流れの間に好適な配向を形成することもできる。例えば、小滴担体粒子12の形状は、粒子が、散乱シグネチャがより均一となるように好適な方向に配向するように調節されることができる。
【0136】
[00211] 本発明の実施形態が図示して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更がなされることができる。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物を除いて、限定されるべきではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17A
図17B
図18
図19
【配列表】
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