(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】子宮内組織採取具
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
A61B10/02 140
A61B10/02 150
(21)【出願番号】P 2021537359
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020030075
(87)【国際公開番号】W WO2021025082
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2019144462
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509038108
【氏名又は名称】株式会社北里コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 太
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 千恵
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0106174(US,A1)
【文献】特開昭63-127745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0045924(US,A1)
【文献】中国実用新案第207024353(CN,U)
【文献】中国実用新案第202060807(CN,U)
【文献】特表昭63-501273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が子宮内に挿入可能な子宮内組織採取具であって、
前記子宮内組織採取具は、子宮内に先端部が挿入可能な可撓性外管と、前記可撓性外管内に挿入され、かつ、前記可撓性外管内を軸方向に移動可能な可撓性内管と、前記可撓性内管内に挿入され、かつ、前記可撓性内管内を軸方向に移動可能なシャフト部材とを備え、
前記可撓性外管は、略半球状の先端と、前記先端のほぼ中心より基端方向かつ側面方向に延び、かつ、前記可撓性外管の中心軸に対してほぼ等角度となるように配置された少なくとも3つのスリットを有する開口可能な外管先端部を備え、
前記可撓性内管は、閉塞先端と、前記閉塞先端より基端側に設けられた複数の側口を有する内管先端部を備え、
前記シャフト部材は、前記可撓性内管内を液密状態にて摺動する拡径先端部と、芯とを備え、前記拡径先端部は、先端に向かって拡径するラッパ状拡径部となっており、前記シャフト部材は、前記可撓性内管内における基端側への移動抵抗より、先端側への移動抵抗が高いものとなっており、
さらに、前記シャフト部材は、シャフトチューブと、前記シャフトチューブ内に収納されかつ固定された前記芯を備え、前記ラッパ状拡径部内には樹脂が充填されており、
前記可撓性外管は、前記可撓性内管の押込による前記スリットの形成部の広がりにより、前記外管先端部より、前記内管先端部の突出を許容するものとなっており、
前記子宮内組織採取具は、子宮内にて、前記外管先端部より前記内管先端部が突出した状態にて、前記シャフト部材を基端側に移動することにより、前記可撓性内管の前記側口より、子宮内組織を吸引採取可能であり、かつ、前記可撓性内管の基端側への移動により、子宮内にて、前記外管先端部より突出した前記内管先端部を前記可撓性外管内に再収納が可能であることを特徴とする子宮内組織採取具。
【請求項2】
前記子宮内組織採取具は、前記シャフト部材が位置する部分において、外力を付加することにより、湾曲形状付け可能である請求項1に記載の子宮内組織採取具。
【請求項3】
前記可撓性内管は、前記外管先端部より前記内管先端部が突出した状態にて、前記可撓性外管内での回転が可能である請求項1または2に記載の子宮内組織採取具。
【請求項4】
前記可撓性内管は、基端部に設けられ、前記可撓性外管の基端部に当接可能な内管ハブもしくは当接部を備え、前記可撓性内管は、前記外管先端部からの前記内管先端部の突出可能長が規制されている請求項1ないし3のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
【請求項5】
前記可撓性外管は、基端部に設けられた外管ハブを備える請求項1ないし4のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
【請求項6】
前記芯の先端は、前記ラッパ状拡径部内の充填樹脂の後端と離間している請求項1ないし5のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
【請求項7】
前記可撓性内管は、前記可撓性外管より抜去可能である請求項1ないし
6のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
【請求項8】
前記可撓性外管は、側面に目盛りが付されている請求項1ないし
7のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
【請求項9】
前記可撓性外管は、前記スリットを前記可撓性外管の中心軸に対してほぼ等角度となるように4つ備えている請求項1ないし
8のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
【請求項10】
先端部が子宮内に挿入可能な子宮内組織採取具であって、
前記子宮内組織採取具は、子宮内に先端部が挿入可能かつ開口可能な外管先端部を有する可撓性外管内に挿入可能な可撓性内管と、前記可撓性内管内に挿入され、かつ、前記可撓性内管内を軸方向に移動可能なシャフト部材とを備え、
前記可撓性内管は、閉塞先端と、前記閉塞先端より基端側に設けられた複数の側口を有する内管先端部を備え、
前記シャフト部材は、前記可撓性内管内を液密状態にて摺動する拡径先端部と、芯とを備え、前記拡径先端部は、先端に向かって拡径するラッパ状拡径部となっており、前記シャフト部材は、前記可撓性内管内における基端側への移動抵抗より、先端側への移動抵抗が高いものとなっており、前記子宮内組織採取具は、前記シャフト部材を基端側に移動することにより、前記可撓性内管の前記側口より、子宮内組織を吸引採取可能であり、
前記シャフト部材は、シャフトチューブと、前記シャフトチューブ内に収納されかつ固定された前記芯を備え、前記ラッパ状拡径部内には樹脂が充填されていることを特徴とする子宮内組織採取具。
【請求項11】
前記芯の先端は、前記ラッパ状拡径部内の充填樹脂の後端と離間している請求項
10に記載の子宮内組織採取具。
【請求項12】
前記子宮内組織採取具は、前記シャフト部材が位置する部分において、外力を付加することにより、湾曲形状付け可能である請求項
10または
11に記載の子宮内組織採取具。
【請求項13】
前記複数の側口は、向かい合うように設けられ、かつ前記閉塞先端に近接した2つの側口と、前記閉塞先端に近接した2つの側口より、若干基端側に位置し、かつ、前記可撓性内管の中心軸に対して、前記閉塞先端に近接した2つの側口とほぼ90度ずれるように設けられた向かい合う2つの側口を備えている請求項
10ないし
12のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮内膜断片、子宮内粘膜、子宮内粘液などの子宮内組織を吸引して採取する子宮内組織採取具に関する。
【背景技術】
【0002】
子宮体部がん検査においては、子宮内組織を採取し、採取された組織を検体とする組織診が行われる。そして、組織診のために子宮内膜の組織を採取するときには、ゾンデキュレットと言われる金属棒状の器具を子宮内に挿入し、その器具先端に備えられた刃によって子宮内の組織を掻き出すこと(掻爬)が行なわれる。しかし、子宮は、膀胱側に傾いており、子宮口(詳しくは、膣部から内子宮口にかけて)が屈曲している。このため、ゾンデキュレットを直線的に子宮口に挿入することが困難な場合が多い。このため、子宮内膜の組織採取では、一回の採取では十分な量の組織を採取することができず、複数回の採取を行なうことが必要となるケースが少なくなかった。
【0003】
上記のゾンデキュレットと異なり、吸引による子宮内組織採取器具が提案されている。吸引型子宮内組織採取器具としては、例えば、特表平10-508240(特許文献1)がある。
【0004】
特許文献1の子宮内組織採取器具は、開放した近位端部(患者から最も遠い部分)と吸引アパーチャ(5)を除いて密封されている反対側の(遠位)端部(4)とを有する管(2)と、近位端部(患者の反対側)にグリップ用部材(9)を備えたロッド(8)の遠位端部に連結され、前記管(2)の中を移動できる密封されたプランジャとを備える。前記吸引アパーチャ(5)に隣接する前記管(2)の遠位端部(4)には、前記壁に対する前記管の機械的採取効果を改善し増大させるための手段(10)が設けられている。
【0005】
この既知の装置の一般的な使い捨ての使用法は以下の通りである。即ち、これを患者の子宮頸を通って子宮底まで導入する。管上に設けられた目盛により、(アパーチャが設けられた)管の遠位端部が子宮腔の開始部に到着した位置を特定することが可能となる。術者は、グリップ用部材により、患者との関係において取出し方向に管を保持しロッドを引っ張りながら、管の内部に負圧を、ひいては管の遠位端部に配置されたアパーチャのレベルでの吸引現象を作り出す。子宮壁及び子宮粘膜の断片の採取は、好ましくは管の遠位端部を壁に対して維持しながら長手方向往復運動及び長手方向軸線を中心にした回転により管を移動させることによって行なわれる。従って、粘膜の断片は、壁から引き裂かれ、吸引アパーチャを通って管の中へと吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表平10-508240(WO97-19642、USP6042552)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の子宮内組織採取器具によれば、子宮内組織を比較的容易に採取できる。しかし、子宮内組織を採取した子宮内組織採取器具は、採取後、膣等を経由するため、外面に子宮内組織以外のものが付着すること、開口から内部に侵入することがあり、検査用検体としては、必ずしも良好なものを採取できないことがあった。
【0008】
本発明の目的は、子宮内組織以外のものにより、採取した子宮内組織が汚染されること、また、採取具の外面が汚染されることを防止し、検査用検体として良好な子宮内組織を容易に採取することができる子宮内組織採取具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
先端部が子宮内に挿入可能な子宮内組織採取具であって、
前記子宮内組織採取具は、子宮内に先端部が挿入可能な可撓性外管と、前記可撓性外管内に挿入され、かつ、前記可撓性外管内を軸方向に移動可能な可撓性内管と、前記可撓性内管内に挿入され、かつ、前記可撓性内管内を軸方向に移動可能なシャフト部材とを備え、前記可撓性外管は、略半球状の先端と、前記先端のほぼ中心より基端方向かつ側面方向に延び、かつ、前記可撓性外管の中心軸に対してほぼ等角度となるように配置された少なくとも3つのスリットを有する開口可能な外管先端部を備え、前記可撓性内管は、閉塞先端と、前記閉塞先端より基端側に設けられた複数の側口を有する内管先端部を備え、前記シャフト部材は、前記可撓性内管内を液密状態にて摺動する拡径先端部と、芯とを備え、前記拡径先端部は、先端に向かって拡径するラッパ状拡径部となっており、前記シャフト部材は、前記可撓性内管内における基端側への移動抵抗より、先端側への移動抵抗が高いものとなっており、さらに、前記シャフト部材は、シャフトチューブと、前記シャフトチューブ内に収納されかつ固定された前記芯を備え、前記ラッパ状拡径部内には樹脂が充填されており、前記可撓性外管は、前記可撓性内管の押込による前記スリットの形成部の広がりにより、前記外管先端部より、前記内管先端部の突出を許容するものとなっており、前記子宮内組織採取具は、子宮内にて、前記外管先端部より前記内管先端部が突出した状態にて、前記シャフト部材を基端側に移動することにより、前記可撓性内管の前記側口より、子宮内組織を吸引採取可能であり、かつ、前記可撓性内管の基端側への移動により、子宮内にて、前記外管先端部より突出した前記内管先端部を前記可撓性外管内に再収納が可能である子宮内組織採取具。
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
先端部が子宮内に挿入可能な子宮内組織採取具であって、前記子宮内組織採取具は、子宮内に先端部が挿入可能かつ開口可能な外管先端部を有する可撓性外管内に挿入可能な可撓性内管と、前記可撓性内管内に挿入され、かつ、前記可撓性内管内を軸方向に移動可能なシャフト部材とを備え、前記可撓性内管は、閉塞先端と、前記閉塞先端より基端側に設けられた複数の側口を有する内管先端部を備え、前記シャフト部材は、前記可撓性内管内を液密状態にて摺動する拡径先端部と、芯とを備え、前記拡径先端部は、先端に向かって拡径するラッパ状拡径部となっており、前記シャフト部材は、前記可撓性内管内における基端側への移動抵抗より、先端側への移動抵抗が高いものとなっており、前記子宮内組織採取具は、前記シャフト部材を基端側に移動することにより、前記可撓性内管の前記側口より、子宮内組織を吸引採取可能であり、前記シャフト部材は、シャフトチューブと、前記シャフトチューブ内に収納されかつ固定された前記芯を備え、前記ラッパ状拡径部内には樹脂が充填されている子宮内組織採取具。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の子宮内組織採取具の一実施例の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した子宮内組織採取具の部分省略拡大縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した子宮内組織採取具に用いられている可撓性外管の部分省略拡大正面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した子宮内組織採取具に用いられている可撓性内管の部分省略拡大正面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示した子宮内組織採取具に用いられているシャフト部材の部分省略拡大正面図である。
【
図11】
図11は、本発明の子宮内組織採取具の作用を説明するための説明図である。
【
図12】
図12は、本発明の子宮内組織採取具の作用を説明するための説明図である。
【
図13】
図13は、本発明の子宮内組織採取具の作用を説明するための説明図である。
【
図14】
図14は、本発明の子宮内組織採取具の作用を説明するための説明図である。
【
図15】
図15は、本発明の子宮内組織採取具の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の生体細胞移植具を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の子宮内組織採取具1は、先端部が子宮内に挿入可能な子宮内組織採取具である。子宮内組織採取具1は、子宮内に先端部が挿入可能な可撓性外管2と、可撓性外管2内に挿入され、かつ、可撓性外管2内を軸方向に移動可能な可撓性内管3と、可撓性内管3内に挿入され、かつ、可撓性内管3内を軸方向に移動可能なシャフト部材4とを備える。可撓性外管2は、略半球状の先端23aと、先端23aのほぼ中心より基端方向かつ側面方向に延び、かつ、可撓性外管2の中心軸に対してほぼ等角度となるように配置された少なくとも3つのスリット24を有する開口可能な外管先端部23を備える。可撓性内管3は、閉塞先端と、閉塞先端より基端側に設けられた複数の側口34a,34b,35a,35bを有する内管先端部33を備える。シャフト部材4は、可撓性内管3内を液密状態にて摺動する拡径先端部45と、芯(内芯)43とを備え、拡径先端部45は、先端に向かって拡径するラッパ状拡径部となっており、シャフト部材4は、可撓性内管3内における基端側への移動抵抗より、先端側への移動抵抗が高いものとなっている。可撓性外管2は、可撓性内管3の押込によるスリット24の形成部の広がりにより、外管先端部23より、内管先端部33の突出を許容するものとなっている。そして、子宮内組織採取具1は、子宮内にて、外管先端部23より内管先端部33が突出した状態にて、シャフト部材4を基端側に移動することにより、可撓性内管3の側口34a,34b,35a,35bより、子宮内組織5を吸引採取可能であり、かつ、可撓性内管3の基端側への移動により、子宮内にて、外管先端部23より突出した内管先端部33を可撓性外管2内に再収納が可能である。
【0012】
本発明の子宮内組織採取具1は、子宮内に先端部が挿入可能な可撓性外管2と、可撓性外管2内に挿入され、かつ、可撓性外管2内を軸方向に移動可能な可撓性内管3と、可撓性外管2内に挿入され、かつ、可撓性内管3内を軸方向に移動可能なシャフト部材4とを備える。
【0013】
可撓性外管2は、
図1ないし
図5に示すように、外管本体21と、外管本体21の先端に形成された外管先端部23と、外管本体21の後端部に設けられた外管ハブ22と、ルーメン25を備えている。
【0014】
外管先端部23は、子宮内に挿入可能なものとなっている。外管先端部23は、略半球状の先端23aと、先端23aのほぼ中心より基端方向かつ側面方向に延び、かつ、可撓性外管2の中心軸に対してほぼ等角度となるように配置された少なくとも3つのスリット24を有し、開口可能なものとなっている。この実施例では、外管先端部23は、
図4に示すように、スリット24を可撓性外管2の中心軸に対してほぼ等角度となるように4つ備えている。なお、スリットの数は3~8が好ましい。特に、4~6が好ましい。
【0015】
また、スリット24の長さは、先端23aの頂点に始端を有し、終端が外管本体21の円筒状部分の先端に到達していることが好ましい。外管先端部23は、外管が持つ可撓性と上記のスリット24により、内方より押圧されることにより、外方(先端方向)に広がり、開口する。これにより、後述する内管先端部33の可撓性外管2の先端からの突出を許容する。なお、外管先端部23は、未開口状態、言い換えれば、一度も内管先端部が突出していない状態では、実質的に閉塞端となっている。さらに、この実施例は、外管先端部23は、外管先端部23より内管先端部33が突出した状態にて、可撓性外管2内での可撓性内管3の回転が可能なものとなっている。
【0016】
外管本体21は、長さ80~300mm、好ましくは、100~200mmである。また、外径は、1~6mm、好ましくは、1.5~5.0mmである。また、内径は、0.8~5.8mm、好ましくは、1.3~4.5mmである。
【0017】
外管本体21の形成材料としては、ある程度の保形性を備えるものが好ましい。可撓性チューブの形成材料としては、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー)、ポリアミド(例えば、6ナイロン、66ナイロン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、フッ素樹脂(例えば、PTFE、ETFE)などが使用できる。さらに、外管本体21の外面には、
図1に示すように、複数の挿入深度確認用マーカー26を付すことが好ましい。
【0018】
この実施例では、外管ハブ22は、短い円筒状のものが用いられており、ハブ22は、外管本体21の基端部に固着されている。ハブの形成材料としては、外管本体21の形成材料として説明したものが好適に使用できる。
【0019】
可撓性内管3は、
図1、
図2、
図6および
図7に示すように、内管本体31と、内管本体31の先端に形成された内管先端部33と、内管本体31の後端部に設けられた内管ハブ32と、ルーメン36を備えている。また、可撓性内管3は、可撓性外管2より抜去可能なものとなっている。
【0020】
可撓性内管3は、可撓性外管2内に挿入され、かつ、可撓性外管2内を軸方向に移動可能である。また、可撓性内管3は、可撓性外管2内にて回転可能である。また、この実施例では、内管本体31の基端部(内管ハブ32の先端前方)に、当接部(リング部材)37が固定されている。この実施例では、当接部(リング部材)37が、可撓性外管2の基端部(ハブ22の基端)に当接可能であり、当接後の可撓性内管3の先端方向の移動を規制する。よって、この実施例の子宮内組織採取具1は、外管先端部23からの内管先端部33の突出可能長が規制されている。なお、突出長の規制は、内管ハブ32と可撓性外管2の基端部(ハブ22の基端)との当接により行うものとしてもよい。
【0021】
内管先端部33は、半球状の閉塞先端33aと、閉塞先端より基端側に設けられた複数の側口34a,34b,35a,35bを有している。側口34a,34bは、向かい合うように設けられており、同様に、側口35a,35bも向かい合うように設けられている。なお、側口34a,34bと側口35a,35bは、可撓性内管3の中心軸に対して、ほぼ90度ずれるように形成されている。また、側口34a,34bは、閉塞先端33aに近接し、かつそれより基端側の内管本体31の側面に形成されており、側口35a,35bは、側口34a,34bより、若干基端側に位置している。側口34a,34b,35a,35bは、真円、楕円、長円状などでもよく、特に、可撓性内管3の軸方向に長い楕円状もしくは長円状であることが好ましい。
【0022】
内管本体31は、長さ70~350mm、好ましくは、120~280mmである。また、外径は、0.5~4.5mm、好ましくは、0.7~4.3mmである。また、内径は、0.5~4.3mm、好ましくは、0.6~4.0mmである。
【0023】
内管本体31の形成材料としては、ある程度の保形性を備えるものが好ましい。内管本体31の形成材料としては、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー)、ポリアミド(例えば、6ナイロン、66ナイロン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、フッ素樹脂(例えば、PTFE、ETFE)などが使用できる。
【0024】
内管ハブ32の形成材料としては、硬質樹脂、例えば、ポリスチレン、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)ポリカーボネート、ポリアミド等が好適に使用できる。
【0025】
リング部材37としては、可撓性外管2の基端部(ハブ22の基端)との当接を考慮し、ある程度の弾性を有するものが好ましい。 形成材料としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴム、軟質塩化ビニール、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレンブチレン-スチレンコポリマー)などのエラストマー、ポリウレタン、特に、熱可塑性ポリウレタン(熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱可塑性ポリエステルポリウレタン、特に、好ましくは、ソフトセグメント部分とハードセグメント部分を有するセグメント化熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、より具体的には、ソフトセグメントの主成分としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが好ましく、ハードセグメントの主成分としては、1、4-ブタンジオールなどが好ましい。)等が使用できる。
【0026】
シャフト部材4は、
図1、
図2、
図8ないし
図10に示すように、可撓性内管3内に挿入され、かつ、可撓性内管3内を軸方向に移動可能である。また、シャフト部材4は、可撓性内管3内を液密状態にて摺動する拡径先端部45と、塑性変形可能な芯(金属製内芯)43とを備える。そして、拡径先端部45は、先端に向かって拡径するラッパ状拡径部となっており、シャフト部材4は、可撓性内管3内における基端側への移動抵抗より、先端側への移動抵抗が高いものとなっている。言い換えれば、シャフト部材4は、可撓性内管内において、基端側に引くことに比べて、先端側に押しにくいものとなっている。
このため、子宮内組織の可撓性内管3の内管先端部33内への採取のための操作(シャフト部材4の基端方向への移動)が容易であり、かつ、一度可撓性内管3の内管先端部33内に採取された子宮内組織を誤って流出させる可能性が少ない。
【0027】
シャフト部材4は、
図9に示すように、シャフトチューブ41と、シャフトチューブ41内に収納されかつ固定された金属製内芯43と、シャフトチューブ41と内芯43間に位置する接着層44を備えている。そして、シャフトチューブ41の先端に、拡径先端部(ラッパ状拡径部)45が設けられており、拡径先端部45の拡径端45a部分が、シャフト部材4の可撓性内管3内での移動時に、可撓性内管3の内面に密着しながら液密状態にて摺動する。また、可撓性内管3の内面とシャフト部材4の拡径先端部(ラッパ状拡径部)45以外の部分の外面間には、ある程度の隙間があり、摺動抵抗に影響を与えないものとなっている。
【0028】
また、この実施例では、
図9に示すように、ラッパ状拡径部45内には樹脂46が充填されており、拡径先端部45の拡径端45a部分の変形を規制している。さらに、この実施例では、
図9に示すように、金属製内芯43の先端は、ラッパ状拡径部45内に充填された樹脂の後端と離間している。このため、樹脂46と金属製内芯43の先端間に、隙間48が形成されており、シャフト部材4の先端方向への押圧時に、金属製内芯43が直接、ラッパ状拡径部45(具体的には、充填樹脂46)を押圧しないものとなっている。
【0029】
シャフト部材4の拡径先端部45の拡径端45aは、可撓性内管3の内径とほぼ同じ外径となっている。また、拡径端45aと拡径先端部45の最小外径部との外径差は、0.2~1mm程度が好ましく、特に、0.4~0.8mm程度が好ましい。シャフト部材4は、長さ100~400mm、好ましくは、120~350mmである。また、拡径先端部45部分以外の外径は、可撓性内管3の内径より、0.2~1.5mm小さいことが好ましく、特に、0.4~1.0mm小さいことが好ましい。
【0030】
芯(内芯)43としては、ある程度の剛性を有するものが好ましい。具体的には、内芯43としては、塑性変形可能な金属製棒状部材が好適である。棒状部材としては、中実状もしくは中空状のいずれのものであってもよい。内芯43として、塑性変形可能な金属製棒状部材を用いることにより、シャフト部材4が位置する部分において、子宮内組織採取具1に外力を付加することにより、子宮内組織採取具1に湾曲形状付けすることができる。金属製棒状部材としては、ステンレス鋼などの金属線が好適であり、特に、焼き鈍ししたステンレス鋼が好ましい。内芯43は、半硬質合成樹脂であってもよい。
【0031】
シャフトチューブ41の形成材料としては、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー)、ポリアミド(例えば、6ナイロン、66ナイロン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、フッ素樹脂(例えば、PTFE、ETFE)などが使用できる。
【0032】
さらには、シャフトチューブ41の形成材料としては、可撓性を有するものを用いてもよい。例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴム、軟質塩化ビニール、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレンブチレン-スチレンコポリマー)などのエラストマー、ポリウレタン、特に、熱可塑性ポリウレタン(熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱可塑性ポリエステルポリウレタン、特に、好ましくは、ソフトセグメント部分とハードセグメント部分を有するセグメント化熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、より具体的には、ソフトセグメントの主成分としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが好ましく、ハードセグメントの主成分としては、1、4-ブタンジオールなどが好ましい。)等が使用できる。好ましくは、シリコーンゴムなどのゴム、もしくはエラストマーである。特に、好ましくは、シリコーンゴムである。シリコーンゴムとしては、200%モジュラス30~90kg/cm2程度、好ましくは、40~60kg/cm2のものが用いられる。
【0033】
接着層としては、特に限定されず、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。また、シャフト部材4の後端部には、チューブ状の把持部42が設けられている。把持部42は、シャフトの摺動操作時に把持される。
【0034】
次に、本発明の子宮内組織採取具1の作用を
図2、
図11ないし
図15を用いて説明する。
本発明の子宮内組織採取具1は、子宮内にて、外管先端部23より内管先端部33が突出した状態にて、シャフト部材4を基端側に移動することにより、可撓性内管3の側口34a,34b,35a,35bより、子宮内組織5を吸引採取可能であり、かつ、可撓性内管3の基端側への移動により、子宮内にて、外管先端部23より突出した内管先端部33を可撓性外管2内に再収納が可能である。
【0035】
本発明の子宮内組織採取具1を用いた子宮内膜もしくは子宮内液の採取過程について、説明する。膣鏡を挿入し、膣内を消毒した後、
図2に示すように、可撓性外管2の外管先端部23内に、可撓性内管3の内管先端部33が位置し、シャフト部材4の拡径先端部45の拡径端45aが、内管3の側口34a,34bより先端側に位置した状態の子宮内組織採取具1を子宮頸管を通して挿入する。そして、可撓性外管2の外管先端部が内子宮口を通過したところで、子宮内組織採取具1の可撓性外管2の挿入を止める。
【0036】
続いて、可撓性外管2の位置を保持した状態にて、可撓性内管3をシャフト部材4とともに、押し込む。外管先端部23は、内部より進行した可撓性内管3の先端部により、押圧され、外管が持つ可撓性と複数のスリット24を有することにより、外方(先端方向)に広がり、開口し、
図11に示すように、可撓性内管3の内管先端部33が、可撓性外管2の先端から突出し、子宮内にて、露出する。なお、内管先端部33は、少なくとも側口34a、34b、35a、35bが形成されている部分全体が、子宮内にて露出するように、押し込まれる。この状態において、外管先端部23は、
図11、
図12に示すように、スリット24部分にて広がり、その内面が、内管先端部33の側口が設けられていない外面部位に接触した状態となっている。
なお、必要な場合には、
図13に示すように、可撓性外管2の位置を保持した状態にて、可撓性内管3をシャフト部材4とともに、可撓性外管2内にて回転させてもよい。
【0037】
続いて、
図14に示すように、可撓性外管2、可撓性内管3の位置を保持した状態にて、シャフト部材4のみを基端方向に引く。これにより、可撓性内管3内が陰圧となるため、側口付近にある子宮内組織5が、可撓性内管3の内管先端部33内に採取される。なお、このシャフト部材4の牽引操作時と同時に、可撓性外管2を保持した状態にて、可撓性外管2を回転させてもよい。このようにすることにより、側口位置が変化するため、良好に子宮内組織を採取できる。
【0038】
そして、子宮内組織採取後、可撓性外管2の位置を保持した状態にて、子宮内にて、
図15に示すように、可撓性内管3をシャフト部材4とともに、基端側に移動させ(言い換えれば、引き)、子宮内にて、外管先端部23より突出した内管先端部33を可撓性外管2内に再収納する。続いて、子宮内組織採取具1全体を体内より、抜去する。これにより、可撓性内管3の内管先端部33および採取された子宮内組織5は、子宮内以外にて露出していないため、良好な検体が採取される。必要により、可撓性外管2より、可撓性内管3を抜去し、可撓性内管3の内管先端部33部分にて切断することにより、子宮内組織を採取する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の子宮内組織採取具は、以下のものである。
(1) 先端部が子宮内に挿入可能な子宮内組織採取具であって、
前記子宮内組織採取具は、子宮内に先端部が挿入可能な可撓性外管と、前記可撓性外管内に挿入され、かつ、前記可撓性外管内を軸方向に移動可能な可撓性内管と、前記可撓性内管内に挿入され、かつ、前記可撓性内管内を軸方向に移動可能なシャフト部材とを備え、
前記可撓性外管は、略半球状の先端と、前記先端のほぼ中心より基端方向かつ側面方向に延び、かつ、前記可撓性外管の中心軸に対してほぼ等角度となるように配置された少なくとも3つのスリットを有する開口可能な外管先端部を備え、
前記可撓性内管は、閉塞先端と、前記閉塞先端より基端側に設けられた複数の側口を有する内管先端部を備え、
前記シャフト部材は、前記可撓性内管内を液密状態にて摺動する拡径先端部と、芯(内芯)とを備え、前記拡径先端部は、先端に向かって拡径するラッパ状拡径部となっており、前記シャフト部材は、前記可撓性内管内における基端側への移動抵抗より、先端側への移動抵抗が高いものとなっており、
前記可撓性外管は、前記可撓性内管の押込による前記スリットの形成部の広がりにより、前記外管先端部より、前記内管先端部の突出を許容するものとなっており、
前記子宮内組織採取具は、子宮内にて、前記外管先端部より前記内管先端部が突出した状態にて、前記シャフト部材を基端側に移動することにより、前記可撓性内管の前記側口より、子宮内組織を吸引採取可能であり、かつ、前記可撓性内管の基端側への移動により、子宮内にて、前記外管先端部より突出した前記内管先端部を前記可撓性外管内に再収納が可能である子宮内組織採取具。
【0040】
この子宮内組織採取具では、子宮内にて、外管先端部より内管先端部が突出した状態にて、シャフト部材を基端側に移動することにより、可撓性内管の側口より、子宮内組織を吸引採取可能であり、かつ、可撓性内管の基端側への移動により、子宮内にて、外管先端部より突出した内管先端部を可撓性外管内に再収納が可能であるので、採取した子宮内組織が汚染されること、また、採取具の外面が汚染されることを防止し、検査用検体として良好な子宮内組織を容易に採取することができる。
【0041】
また、上記の子宮内組織採取具の実施態様は、以下のものであってもよい。
(2) 前記子宮内組織採取具は、前記シャフト部材が位置する部分において、外力を付加することにより、湾曲形状付け可能である上記(1)に記載の子宮内組織採取具。
(3) 前記可撓性内管は、前記外管先端部より前記内管先端部が突出した状態にて、前記可撓性外管内での回転が可能である上記(1)または(2)に記載の子宮内組織採取具。
(4) 前記可撓性内管は、基端部に設けられ、前記可撓性外管の基端部に当接可能な内管ハブもしくは当接部を備え、前記可撓性内管は、前記外管先端部からの前記内管先端部の突出可能長が規制されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
(5) 前記可撓性外管は、基端部に設けられた外管ハブを備える上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
(6) 前記シャフト部材は、シャフトチューブと、前記シャフトチューブ内に収納されかつ固定された前記芯(内芯)を備え、前記ラッパ状拡径部内には樹脂が充填されており、かつ、前記芯(内芯)の先端は、前記ラッパ状拡径部内の充填樹脂の後端と離間している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
(7) 前記可撓性内管は、前記可撓性外管より抜去可能である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
(8) 前記可撓性外管は、側面に目盛りが付されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の子宮内組織採取具。
(9) 前記可撓性外管は、前記スリットを前記可撓性外管の中心軸に対してほぼ等角度となるように4つ備えている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の子宮内組織採取具。