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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】気化供給装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20241028BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H01L21/31 F
C23C16/448
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021546592
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2020033395
(87)【国際公開番号】W WO2021054135
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2019170271
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中谷 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】日高 敦志
(72)【発明者】
【氏名】徳田 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】中辻 景介
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122841(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021949(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/174832(WO,A1)
【文献】特開2012-142380(JP,A)
【文献】特開2003-031562(JP,A)
【文献】特開2006-124837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/448
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体原料を予加熱する予加熱部と、
前記予加熱部の上部に配置され、前記予加熱部から送出される予加熱された前記液体原料を加熱して気化させる気化部と、
前記気化部の上部に配置され、前記気化部から送出されたガスの流量を制御する流量制御装置と、
前記予加熱部、前記気化部及び前記流量制御装置を加熱するヒータと、
前記予加熱部と前記気化部との間及び前記気化部と前記流量制御装置との間にそれぞれ介設された断熱部材と、
を備える、気化供給装置。
【請求項2】
前記ヒータは、前記予加熱部を加熱する第1ヒータと、前記気化部を加熱する第2ヒータと、前記流量制御装置を加熱する第3ヒータとを備え、前記予加熱部、前記気化部及び前記流量制御装置をそれぞれ独立して加熱するように構成されている、請求項1に記載の気化供給装置。
【請求項3】
前記第1ヒータは、前記予加熱部の側面を加熱する第1側面ヒータを備え、前記第2ヒータは、前記気化部の側面を加熱する第2側面ヒータを備え、前記第3ヒータは、前記流量制御装置のガスが流れる部分の側面を加熱する第3側面ヒータを備える、請求項2に記載の気化供給装置。
【請求項4】
前記第2ヒータは、前記気化部の底面を加熱する第2底面ヒータを更に備え、前記第3ヒータは、前記流量制御装置のガスが流れる部分の底面を加熱する第3底面ヒータを更に備える、請求項3に記載の気化供給装置。
【請求項5】
前記断熱部材は、前記第2底面ヒータと前記予加熱部との間及び前記第3底面ヒータと前記気化部との間にそれぞれ設けられている、請求項4に記載の気化供給装置。
【請求項6】
前記予加熱部と前記気化部とが、液体充填用開閉弁及び三方弁を介して連通しており、前記液体充填用開閉弁及び前記三方弁は、前記予加熱部及び前記気化部の上部に配置されている、請求項1から5のいずれかに記載の気化供給装置。
【請求項7】
液体原料を予加熱する予加熱部と、
前記予加熱部の上部に配置され、前記予加熱部から送出される予加熱された前記液体原料を加熱して気化させる気化部と、
前記気化部の上部に配置され、前記気化部から送出されたガスの流量を制御する流量制御装置と、
前記予加熱部、前記気化部及び前記流量制御装置を加熱するヒータと、を備え、
前記予加熱部と前記気化部とが、液体充填用開閉弁及び三方弁を介して連通しており、前記液体充填用開閉弁及び前記三方弁は、前記予加熱部及び前記気化部の上部に配置されている、気化供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置や化学プラント、薬品産業設備等で用いられる気化供給装置に関し、特に、液体原料を予加熱する予加熱部及び予加熱部で加熱された液体原料を気化させる気化部を備えた気化供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD)により成膜を行う半導体製造装置において、プロセスチャンバに原料ガスを供給するための気化供給装置が用いられている(例えば特許文献1~3参照)。
【0003】
気化供給装置には、例えば、TEOS(Tetraethyl orthosilicate)、HCDS(Hexachlorodisilane)等の液体原料を貯液タンクに貯めておき、加圧した不活性ガスを貯液タンクに供給して液体原料を一定圧力で押し出して気化器に供給するものがある。供給された液体原料は、気化室の周囲に配置されたヒータによって気化され、気化したガスは流量制御装置により所定流量に制御して半導体製造装置に供給される。
【0004】
原料として用いられる有機金属材料には、沸点が150℃を超えるものもあり、例えば、上記のTEOSの沸点は約169℃である。このため、気化供給装置は、比較的高温、例えば、200℃以上の温度まで液体原料を加熱できるように構成されている。
【0005】
また、気化供給装置では、気化させた原料の凝縮(再液化)を防ぐために、高温に加熱された流路を通して、プロセスチャンバまでガスを供給することが求められている。更に、気化器に供給される液体原料による気化器の温度低下を防ぎ、有機金属材料等の気化を効率的に行うために、気化器に供給する前に液体原料を予め加熱しておく場合もある。このため、気化供給装置では、流路又は流体収容部が設けられた流体加熱部(気化器等)を高温にまで加熱するためのヒータが、必要な箇所に配置されている。
【0006】
液体原料を予め加熱する予加熱部を備えた気化供給装置としては、例えば、特許文献4及び特許文献5に記載された気化供給装置が知られている。
【0007】
前記気化供給装置は、原料液体を予加熱する予加熱部と、予加熱部で加熱された原料液体を気化させる気化器と、気化させたガスの流量を制御する高温対応型の圧力式流量制御装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-252760号公報
【文献】特開2010-180429号公報
【文献】特開2014-114463号公報
【文献】国際公開第2016/174832号
【文献】国際公開第2019/021949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した気化供給装置において、液体原料を予加熱するために設けられた予加熱部は、例えば、液体原料の沸点以下の温度に維持され、気化部は、例えば、液体原料の沸点以上の温度に維持される。但し、流体の沸点は、流体の圧力によって変動するので、予加熱部が液体原料の常圧(大気圧)における沸点以上の温度になったとしても、液体原料の圧力によっては、気化しないで液体の状態が維持されることがある。また、熱分解温度が沸点よりも低い原料を用いるときには、気化部は沸点以下の温度に設定されることもある。尚、気化部の設定温度は、通常は、予加熱部の設定温度よりも高く設定される。更に、気化した液体原料の流量制御を行う圧力式流量制御装置は、液体原料の沸点以上、典型的には気化部の温度よりも高温に維持される。
【0010】
ところで、予加熱部及び気化部を備えた気化供給装置は、予加熱部と気化部と圧力式流量制御装置とを直列状に配置しているため、どうしても設置面積が広くなるという問題が発生する。そのため、気化供給装置をプロセスチャンバの近傍位置に設置できないこともあった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、設置面積を狭くできるようにした気化供給装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の実施態様に係る気化供給装置は、液体原料を予加熱する予加熱部と、前記予加熱部の上部に配置され、前記予加熱部から送出される予加熱された前記液体原料を加熱して気化させる気化部と、前記気化部の上部に配置され、前記気化部から送出されたガスの流量を制御する流量制御装置と、前記予加熱部、前記気化部及び前記流量制御装置を加熱するヒータと、を備える。
【0013】
ある実施形態において、前記ヒータは、前記予加熱部を加熱する第1ヒータと、前記気化部を加熱する第2ヒータと、前記流量制御装置を加熱する第3ヒータとを備え、前記予加熱部、前記気化部及び前記流量制御装置をそれぞれ独立して加熱するように構成されている。
【0014】
ある実施形態において、前記第1ヒータは、前記予加熱部の側面を加熱する第1側面ヒータを備え、前記第2ヒータは、前記気化部の側面を加熱する第2側面ヒータを備え、前記第3ヒータは、前記流量制御装置のガスが流れる部分の側面を加熱する第3側面ヒータを備える。
【0015】
ある実施形態において、前記第2ヒータは、前記気化部の底面を加熱する第2底面ヒートを更に備え、前記第3ヒータは、前記流量制御装置のガスが流れる部分の底面を加熱する第3底面ヒータを更に備える。
【0016】
ある実施形態において、前記第2底面ヒータと前記予加熱部との間及び前記第3底面ヒータと前記気化部との間にそれぞれ断熱部材が介設される。
【0017】
ある実施形態において、前記予加熱部と前記気化部が液体充填用開閉弁及び三方弁を介して連通しており、前記液体充填用開閉弁及び前記三方弁は、前記予加熱部及び前記気化部の上部に配置される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態に係る気化供給装置によれば、予加熱部と気化部と流量制御装置とを上下方向に積み重ねて3段構造にしているため、予加熱部と気化部と流量制御装置とを直列状に配置した従来の気化供給装置に比較して設置面積を狭くすることができる。その結果、設置スペースの少ないプロセスチャンバの近傍位置であっても、気化供給装置を確実且つ良好に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る気化供給装置の正面図である。
図2】気化供給装置の平面図である。
図3】気化供給装置の左側面図である。
図4】気化供給装置の縦断正面図である。
図5】気化供給装置に用いる流量制御装置の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1図4は本発明の実施態様に係る気化供給装置1を示し、当該気化供給装置1は、液体原料Lを予加熱する予加熱部2と、予加熱部2の上部に配置され、予加熱部2から送出される予加熱された液体原料Lを加熱して気化させる気化部3と、気化部3の上部に配置され、気化部3から送出されたガスGの流量を制御する流量制御装置4と、前記予加熱部2、気化部3及び流量制御装置4をそれぞれ異なる温度に加熱するヒータ5と、を備えており、液体原料Lを予加熱部2で予加熱し、予加熱した液体原料Lを気化部3で気化して半導体製造装置等で使用するガスGを生成し、生成したガスGを流量制御装置4で制御するようにしたものである。
【0022】
また、前記ヒータ5は、予加熱部2を側面から加熱する第1ヒータ6と、気化部3を側面及び底面から加熱する第2ヒータ7と、流量制御装置4を側面及び底面から加熱する第3ヒータ8とを備え、予加熱部2、気化部3及び流量制御装置4をそれぞれ独立して加熱するように構成されている。
【0023】
前記予加熱部2は、ステンレス鋼製の第1予加熱ブロック2Aと、同じくステンレス鋼製の第2予加熱ブロック2Bとを連結することにより構成されている。
【0024】
第1予加熱ブロック2Aは、横長の厚肉平板状の直方体に形成されており、第1予加熱ブロック2Aの内部には、一端から他端に至る直線状の流路2aと、直線状の流路2aの途中に形成されて液体原料Lを貯留する直方体状の液貯留室2bとが形成されている。この第1予加熱ブロック2Aは、中央部分で左右に分割された二つの部材を溶接Wにより継ぎ合わせることにより形成されており、第1予加熱ブロック2Aの一端(図4の右端)には、液体原料Lの流入口が形成されている。また、第1予加熱ブロック2Aは、貯液タンク(図示省略)から所定圧で圧送されて来る液体原料Lを液貯留室2bに貯留しておくと共に、気化部3に供給する前に第1ヒータ6を用いて予熱する。尚、第1予加熱ブロック2Aの液貯留室2bには、表面積を増やすために加熱促進体(図示省略)を配置しても良い。
【0025】
第2予加熱ブロック2Bは、縦長の直方体に形成されており、第2予加熱ブロック2Bの内部には、第1予加熱ブロック2Aの流路2aに連通するL字状の流路2aが形成されている。この第2予加熱ブロック2Bは、第1予加熱ブロック2Aの他端にボルト(図示省略)等により連結されており、第1予加熱ブロック2Aと第2予加熱ブロック2Bとの間の流路2a連通部には、通孔付きガスケット9が介設されている。また、第2予加熱ブロック2Bの上面には、液体原料Lの流出口が形成されている。
【0026】
そして、予加熱部2を形成する第1予加熱ブロック2A及び第2予加熱ブロック2Bは、連結された状態でベースフレーム10の上部に配置されており、第1予加熱ブロック2Aの下面とベースフレーム10の上面との間及び第2予加熱ブロック2Bの下面とベースフレーム10の上面との間には、板状の断熱部材11が介設されている。この断熱部材11は、予加熱部2(第1予加熱ブロック2A及び第2予加熱ブロック2B)とベースフレーム10とで挟持して固定するようにしても良いし、治具等を用いて固定しても良い。
【0027】
本実施形態では、断熱部材11として、樹脂(例えば、PEEK(Poly Ether Ether Ketone))製のパネル材が用いられている。断熱部材11の厚さは、要求される断熱性に応じて適宜選択されて良いが、例えば、5mm~10mm程度であっても良い。
【0028】
また、断熱部材11は、上記のPEEK製のものに限定されるものではなく、熱を遮断できる限り任意の材料から形成されていても良く、また、温度に合わせて材料等が適宜選択されていても良い。断熱部材11としては、公知の真空断熱パネルを利用することもできる。
【0029】
尚、上記の実施形態においては、予加熱部2を形成する第1予加熱ブロック2Aと第2予加熱ブロック2Bとを別体に形成したが、他の実施形態においては、第1予加熱ブロック2Aと第2予加熱ブロック2Bとを一体的に形成しても良い。
【0030】
前記気化部3は、ステンレス鋼製の気化ブロック3Aを備えており、予加熱部2の第2予加熱ブロック2Bに液体充填用開閉弁12、ステンレス鋼製の流路ブロック13及びパージ用三方弁14を介して接続されている。
【0031】
気化ブロック3Aは、横長の厚肉平板状の直方体に形成されており、気化ブロック3Aの内部には、直方体状の気化室3aが形成されている。この気化ブロック3Aは、中央部分で上下に分割された二つの部材を溶接Wにより継ぎ合わせることにより形成されており、気化ブロック3Aの一端部(図4の左側端部)の上面には、パージ用三方弁14に連通状に接続されて気化室3aに連通する液体原料Lの流入口3bと、流量制御装置4に連通状に接続されて気化室3aに連通するガスGの流出口3cとがそれぞれ形成されている。気化ブロック3Aの長さ(図4の左右方向の長さ)は、第1予加熱ブロック2Aの長さよりも短く設定され、また、気化ブロック3Aの幅(図4の前後方向の長さ)は、第1予加熱ブロック2Aの幅と同じに設定されている。
【0032】
そして、気化部3を形成する気化ブロック3Aは、予加熱部2の第1予加熱ブロック2Aの上部に配置されており、第1予加熱ブロック2Aの上面と気化ブロック3Aの下面との間には、板状の断熱部材11′及び後述する第2ヒータ7の第2底面ヒータ7Bが介設されている。断熱部材11′は、第1予加熱ブロック2Aの上面に接触し、また、第2底面ヒータ7Bは、断熱部材11′の上面及び気化ブロック3Aの下面に接触するように、第1予加熱ブロック2Aと気化ブロック3Aとの間に介設されている。断熱部材11′及び第2底面ヒータ7Bは、第1予加熱ブロック2Aと気化ブロック3Aとで挟持して固定するようにしても良いし、治具等を用いて固定しても良い。
【0033】
本実施形態では、断熱部材11′として、PEEK製のパネル材が用いられている。断熱部材11′の厚さは、第1予加熱ブロック2Aとベースフレーム10との間に介設した断熱部材11と同じに設定されている。
【0034】
尚、気化部3には、気化室3a内に所定量を超える液体原料Lが供給されたことを検知する液体検知部(図示せず)を設け、液体検知部が液体を検知したときには液体充填用開閉弁12を閉じるようにすることで、気化部3への液体原料の過剰供給を防止するようにしても良い。この液体検知部としては、特許文献4(国際公開第2016/174832号)に記載されているように、気化室3aに配置された温度計(白金測温抵抗体、熱電対、サーミスタなど)、液面計、ロードセル等を用いることができる。
【0035】
前記液体充填用開閉弁12は、気化ブロック3Aの気化室3a内の圧力に応じて気化部3への液体原料Lの供給量を制御するものであり、液体充填用開閉弁12としては、空気圧を利用して弁体の開閉を制御するエア駆動弁が用いられている。この液体充填用開閉弁12は、その入口が第2予加熱ブロック2Bの液体原料Lの流出口に連通状に接続されるように、第2予加熱ブロック2Bの上面に固定用ボルト15により固定されており、液体充填用開閉弁12の入口と第2予加熱ブロック2Bの流出口との間には、通孔付きガスケット(図示省略)がそれぞれ介設され、通孔付きガスケットは固定用ボルト15の締結力により流路間のシールを形成している。
【0036】
前記流路ブロック13は、液体充填用開閉弁12の出口とパージ用三方弁14の入口とを連通状に接続するものであり、流路ブロック13の内部には、液体原料Lの流路13aが形成されている。流路ブロック13は、その流路13aが液体充填用開閉弁12の出口とパージ用三方弁14の入口にそれぞれ連通する状態で液体充填用開閉弁12及びパージ用三方弁14の下面に固定用ボルト15により固定されており、液体充填用開閉弁12の出口と流路ブロック13の流路13aの入口との間及びパージ用三方弁14の入口と流路ブロック13の流路13aの出口との間には、通孔付きガスケット(図示省略)がそれぞれ介設され、通孔付きガスケットは固定用ボルト15の締結力により流路間のシールを形成している。
【0037】
前記パージ用三方弁14は、流量制御装置4側へパージガスを流すためのものであり、液体原料Lの入口、液体原料Lの出口及びパージガスの入口14aを備えている。パージ用三方弁14としては、空気圧を利用して弁体の開閉を制御するエア駆動弁が用いられており、弁体を閉じると、パージガスの入口14aが閉じられて液体原料Lの入口と液体原料Lの出口とが連通し、また、弁体を開くと、パージガスの入口14aと液体原料Lの出口とが連通するようになっている。このパージ用三方弁14は、その出口が気化ブロック3Aの液体原料Lの流入口3bに連通する状態で気化ブロック3Aの一端部上面に固定用ボルト15により固定されており、パージ用三方弁14の出口と気化ブロック3Aの液体原料Lの流入口3bと間には、通孔付きガスケット(図示省略)が介設され、通孔付きガスケットは固定用ボルト15の締結力により流路間のシールを形成している。
【0038】
前記流量制御装置4は、本実施形態では、従来公知の高温対応型の圧力式流量制御装置4であり、後述するように、オリフィス部材20を流れるガスGの流量を、コントロール弁22を用いてオリフィス部材20の上流圧力P1を調整することによって制御することができる。
【0039】
即ち、圧力式流量制御装置4は、ガス流路16aを形成した上流側弁ブロック16と、上流側弁ブロック16に連結されて上流側弁ブロック16のガス流路16aに連通するガス流路16a及び弁室16bを形成した中間弁ブロック16′と、中間弁ブロック16′に連結されて中間弁ブロック16′のガス流路16aに連通するガス流路16aを形成した下流側弁ブロック16″と、上流側弁ブロック16のガス流路16aと中間弁ブロック16′のガス流路16aとの間に介設した通孔付きガスケット17と、弁室16bに設けた金属製ダイヤフラム弁体18と、金属製ダイヤフラム弁体18を駆動する圧電駆動素子(図示省略)と、金属製ダイヤフラム弁体18の上流側のガス流路16a内の圧力を検出する圧力検出器19と、金属製ダイヤフラム弁体18の下流側のガス流路16aに設けられて微細孔が形成されたオリフィス部材20と、金属製ダイヤフラム弁体18とオリフィス部材20との間のガス流路16a内の圧力を検出する流量制御用圧力検出器21とを備えている。
【0040】
高温対応型の圧力式流量制御装置4は、圧電駆動素子の非通電時には、金属製ダイヤフラム弁体18が弁座に当接してガス流路16aを閉じる一方で、圧電駆動素子に通電することにより圧電駆動素子が伸張し、金属製ダイヤフラム弁体18が自己弾性力により元の逆皿形状に復帰してガス流路16aが開通するように構成されている。
【0041】
図5は、圧力式流量制御装置4の構成例を模式的に示す図である。圧力式流量制御装置4では、圧力検出器19と、オリフィス部材20と、金属製ダイヤフラム弁体18及び圧電駆動素子で構成されるコントロール弁22と、オリフィス部材20とコントロール弁22との間に設けられた流量制御用圧力検出器21及び温度検出器23とを備えている。オリフィス部材20は、絞り部として設けられたものであり、これに代えて臨界ノズル又は音速ノズルを用いることもできる。オリフィス又はノズルの口径は、例えば10μm~500μmに設定される。
【0042】
圧力検出器19及び温度検出器23は、ADコンバータを介して制御回路24に接続されている。ADコンバータは、制御回路24に内蔵されていても良い。制御回路24は、コントロール弁22にも接続されており、流量制御用圧力検出器21及び温度検出器23の出力などに基づいて制御信号を生成し、この制御信号によってコントロール弁22の動作を制御する。
【0043】
圧力式流量制御装置4は、従来と同様の流量制御動作を行うことができ、流量制御用圧力検出器21を用いて上流圧力P1(オリフィス部材20の上流側の圧力)に基づいて流量を制御することができる。圧力式流量制御装置4は、他の実施態様において、オリフィス部材20の下流側にも圧力検出器(図示省略)を備えていても良く、上流圧力P1及び下流圧力P2に基づいて流量を検出するように構成されていても良い。
【0044】
圧力式流量制御装置4では、臨界膨張条件P1/P2≧約2(ただし、P1:絞り部上流側のガス圧力(上流圧力)、P2:絞り部下流側のガス圧力(下流圧力)であり、約2は窒素ガスの場合)を満たすとき、絞り部を通過するガスGの流速は音速に固定され、流量は下流圧力P2によらず上流圧力P1によって決まるという原理を利用して流量制御が行われる。臨界膨張条件を満たすとき、絞り部下流側の流量Qは、Q=K1・P1(K1は流体の種類と流体温度に依存する定数)によって与えられ、流量Qは上流圧力P1に比例する。また、下流圧力センサを備える場合、上流圧力P1と下流圧力P2との差が小さく、臨界膨張条件を満足しない場合であっても流量を算出することができ、各圧力センサによって測定された上流圧力P1および下流圧力P2に基づいて、所定の計算式Q=K2・P2m(P1-P2)n(ここでK2は流体の種類と流体温度に依存する定数、m、nは実際の流量を元に導出される指数)から流量Qを算出することができる。
【0045】
制御回路24は、流量制御用圧力検出器21の出力(上流圧力P1)等に基づいて、上記のQ=K1・P1又はQ=K2・P2m(P1-P2)nから流量を演算により求め、この流量がユーザにより入力された設定流量に近づくように、コントロール弁22をフィードバック制御する。演算により求められた流量は、流量出力値として表示しても良い。
【0046】
また、圧力式流量制御装置4の金属製ダイヤフラム弁体18の上流側位置に設けた圧力検出器19は、気化部3で気化されて圧力式流量制御装置4に送られるガスGの圧力を検出するものである。
【0047】
前記圧力検出器19の検出した圧力値の信号は、常に制御回路24に送られてモニターされている。気化部3の気化室3a内の液体原料Lが気化によって少なくなると、気化室3aの内部圧力が減少する。気化室3a内の液体原料Lが減少して気化室3a内の内部圧力が減少し、圧力検出器19の検出圧力が予め設定された設定値に達すると、制御回路24は、液体充填用開閉弁12を所定時間だけ開いた後に閉じることにより所定量の液体原料Lを気化室3aに供給する。気化室3a内に所定量の液体原料Lが供給されると、液体原料Lが気化することにより気化室3a内のガス圧力が再び上昇し、その後、液体原料Lが少なくなることにより再び気化室3a内の内部圧力が減少する。そして、気化室3a内の内部圧力が設定値に達すると、前記したように再び液体充填用開閉弁12を所定時間だけ開いた後に閉じる。このようなシーケンス制御により気化室3aに所定量の液体原料Lが逐次補充される。
【0048】
更に、圧力式流量制御装置4の下流側弁ブロック16″には、パージガス供給用三方弁25、第2流路ブロック26、ストップバルブ27、第3流路ブロック28が順次接続されている。尚、パージガス供給用三方弁25、第2流路ブロック26、ストップバルブ27、第3流路ブロック28は、これらの下方位置に配置したステンレス鋼製の直方体状のベース体29に支持されている。また、第2流路ブロック26及び第3流路ブロック28は、ステンレス鋼により形成されており、上述した流路ブロック13と同様構造に構成されている。
【0049】
パージガス供給用三方弁25は、圧力式流量制御装置4の下流側へパージガスを流すためのものであり、ガスGの入口、ガスGの出口及びパージガスの入口25aを備えている。パージガス供給用三方弁25としては、空気圧を利用して弁体の開閉を制御するエア駆動弁が用いられており、弁体を閉じると、パージガスの入口25aが閉じられてガスGの入口とガスGの出口とが連通し、また、弁体を開くと、パージガスの入口25aとガスGの出口とが連通するようになっている。このパージガス供給用三方弁25は、そのガスGの入口が下流側弁ブロック16″のガス流路16aに、また、そのガスGの出口が第2流路ブロック26のガス流路26aにそれぞれ連通する状態で下流側弁ブロック16″及び第2流路ブロック26の上面に固定用ボルト15により固定されており、パージガス供給用三方弁25のガスGの入口と下流側弁ブロック16″のガス流路16aとの間及びパージガス供給用三方弁25のガスGの出口と第2流路ブロック26のガス流路26aとの間には、通孔付きガスケット(図示省略)がそれぞれ介設され、通孔付きガスケットは固定用ボルト15の締結力により流路間のシールを形成している。
【0050】
ストップバルブ27は、必要に応じてガスGの流れを遮断するものであり、ストップバルブ27としては、例えば、公知の空気駆動弁や電磁弁を用いることができる。ストップバルブ27は、そのガスGの入口が第2流路ブロック26のガス流路26aに、また、そのガスGの出口が第3流路ブロック28のガス流路28aにそれぞれ連通する状態で第2流路ブロック26及び第3流路ブロック28の上面に固定用ボルト15により固定されており、ストップバルブ27のガスGの入口と第2流路ブロック26のガス流路26aとの間及びストップバルブ27のガスGの出口と第3流路ブロック28のガス流路28aとの間には、通孔付きガスケット(図示省略)がそれぞれ介設され、通孔付きガスケットは固定用ボルト15の締結力により流路間のシールを形成している。このストップバルブ27の下流側は、例えば、半導体製造装置のプロセスチャンバ(図示省略)に接続されており、ガス供給時にはプロセスチャンバの内部が真空ポンプ(図示省略)によって減圧され、所定流量の原料ガスGがプロセスチャンバに供給される。
【0051】
そして、前記流量制御装置4は、上流側弁ブロック16のガス流路16aと気化ブロック3AのガスGの流出口3cとが連通するように気化ブロック3Aの上部に配置されており、上流側弁ブロック16のガス流路16aの入口と気化ブロック3AのガスGの流出口3cとの間には、通孔付きガスケット30が介設され、通孔付きガスケット30は固定用ボルト(図示略)の締結力により流路間のシールを形成している。
【0052】
また、流量制御装置4と気化部3を形成する気化ブロック3Aとの間及びベース体29と気化ブロック3Aとの間には、板状の断熱部材11″及び後述する第3ヒータ8の第3底面ヒータ8Bが介設されている。断熱部材11″は、気化ブロック3Aの上面に接触し、また、第3底面ヒータ8Bは、断熱部材11″の上面、中間弁ブロック16′の下面、下流側弁ブロック16″の下面及びベース体29の下面に接触するように、気化ブロック3Aと流量制御装置4との間及び気化ブロック3Aとベース体29の間に介設されている。断熱部材11″及び第3底面ヒータ8Bは、気化ブロック3Aと流量制御装置4等とで挟持して固定するようにしても良いし、治具等を用いて固定しても良い。
【0053】
本実施形態では、断熱部材11″として、PEEK製のパネル材が用いられている。断熱部材11″の厚さは、第1予加熱ブロック2Aとベースフレーム10との間に介設した断熱部材11と同じに設定されている。
【0054】
尚、流量制御装置4は、圧力式の流量制御装置に限らず、種々の態様の流量制御装置4であって良い。
【0055】
前記予加熱部2、気化部3及び流量制御装置4をそれぞれ異なる温度に加熱するヒータ5は、予加熱部2を側面から加熱する第1ヒータ6と、気化部3を側面及び底面から加熱する第2ヒータ7と、流量制御装置4のガスGが流れる部分側面及び底面から加熱する第3ヒータ8とを備えている。
【0056】
前記第1ヒータ6は、予加熱部2を形成する第1予加熱ブロック2Aと第2予加熱ブロック2Bの両側面と、液体充填用開閉弁12の液体原料Lが流れる部分と、流路ブロック13の入口側部分の両側面とを加熱する一対の第1側面ヒータ6Aを備えている。
【0057】
一対の第1側面ヒータ6Aは、発熱体6aと、発熱体6aに熱的に接続された金属製の伝熱部材6bとをそれぞれ備えており、発熱体6aで発熱した熱が伝熱部材6bの全体に伝導し、発熱体6aによって伝熱部材6bが全体的に加熱されるようになっている。均一に加熱された伝熱部材6bは、予加熱部2、液体充填用開閉弁12の一部及び流路ブロック13の一部を外側から均一に加熱することができる。
【0058】
発熱体6aは、棒状のカートリッジヒータから成り、伝熱部材6bに形成した細穴に挿入固定されている。
【0059】
伝熱部材6bは、アルミニウム又はアルミニウム合金によりL字型の板状に形成されており、第1予加熱ブロック2A及び第2予加熱ブロック2Bの側面に固定用ボルト(図示省略)等により密接状態で固定されている。この伝熱部材6bは、第1予加熱ブロック2A及び第2予加熱ブロック2Bの側面、液体充填用開閉弁12の液体原料Lが流れる部分の側面、流路ブロック13の入口側部分の側面をそれぞれ覆う大きさに形成されている。伝熱部材6bは、伝熱効率が良い部材であれば良いが、プロセスへの汚染の懸念が少なく、比較的安価であるアルミニウム又はアルミニウム合金が望ましい。
【0060】
前記第2ヒータ7は、気化部3を形成する気化ブロック3Aの両側面と、パージ用三方弁14の液体原料Lが流れる部分と、流路ブロック13の出口側部分の両側面とを加熱する一対の第2側面ヒータ7Aと、気化部3を形成する気化ブロック3Aの底面を加熱する第2底面ヒータ7Bとを備えている。
【0061】
一対の第2側面ヒータ7A及び第2底面ヒータ7Bは、発熱体7aと、発熱体7aに熱的に接続された金属製の伝熱部材7bとをそれぞれ備えており、発熱体7aで発熱した熱が伝熱部材7bの全体に伝導し、発熱体7aによって伝熱部材7bが全体的に加熱されるようになっている。均一に加熱された伝熱部材7bは、気化部3、パージ用三方弁14の一部及び流路ブロック13の一部を外側から均一に加熱することができる。
【0062】
第2側面ヒータ7A及び第2底面ヒータ7Bの発熱体7aは、それぞれ棒状のカートリッジヒータから成り、伝熱部材7bに形成した細穴に挿入固定されている。
【0063】
第2側面ヒータ7Aの伝熱部材7bは、アルミニウム又はアルミニウム合金によりL字型の板状に形成されており、気化ブロック3Aの側面に固定用ボルト(図示省略)等により密接状態で固定されている。この第2側面ヒータ7Aの伝熱部材7bは、気化ブロック3Aの側面、パージ用三方弁14の液体原料Lが流れる部分の側面、流路ブロック13の流路13aの出口側部分の側面をそれぞれ覆う大きさに形成されている。
【0064】
第2底面ヒータ7Bの伝熱部材7bは、アルミニウム又はアルミニウム合金により長尺板状に形成されており、気化ブロック3Aと第1予加熱ブロック2A上の断熱部材11′との間に、気化ブロック3Aの底面及び断熱部材11′の上面にそれぞれ密接する状態で配置されている。
【0065】
前記第3ヒータ8は、上流側弁ブロック16の両側面と、中間弁ブロック16′の両側面と、下流側弁ブロック16″の両側面と、パージガス供給用三方弁25のガスGが流れる部分と、第2流路ブロック26の両側面と、ストップバルブ27のガスGが流れる部分と、第3流路ブロック28の両側面とを加熱する一対の第3側面ヒータ8Aと、中間弁ブロック16′の底面と、下流側弁ブロック16″の底面と、パージガス供給用三方弁25の底面と、第2流路ブロック26の底面と、第3流路ブロック28の底面とを加熱する第3底面ヒータ8Bとを備えている。
【0066】
一対の第3側面ヒータ8A及び第3底面ヒータ8Bは、発熱体8aと、発熱体8aに熱的に接続された金属製の伝熱部材8bとをそれぞれ備えており、発熱体8aで発熱した熱が伝熱部材8bの全体に伝導し、発熱体8aによって伝熱部材8bが全体的に加熱されるようになっている。均一に加熱された伝熱部材8bは、流量制御装置4のガスGが流れる部分、パージガス供給用三方弁25の一部、第2流路ブロック26、ストップバルブ27の一部及び第3流路ブロック28を外側から均一に加熱することができる。
【0067】
第3側面ヒータ8A及び第3底面ヒータ8Bの発熱体8aは、それぞれ棒状のカートリッジヒータから成り、伝熱部材8bに形成した細穴に挿入固定されている。
【0068】
第3側面ヒータ8Aの伝熱部材8bは、アルミニウム又はアルミニウム合金により板状に形成されており、流量制御装置4の側面等に固定用ボルト(図示省略)等により密接状態で固定されている。この第3側面ヒータ8Aの伝熱部材8bは、上流側弁ブロック16の側面、中間弁ブロック16′の側面、下流側弁ブロック16″の側面、パージガス供給用三方弁25のガスGが流れる部分の側面、第2流路ブロック26の側面、ストップバルブ27のガスGが流れる部分の側面及び第3流路ブロック28の側面をそれぞれ覆う大きさに形成されている。
【0069】
第3底面ヒータ8Bの伝熱部材8bは、アルミニウム又はアルミニウム合金により長尺板状に形成されており、中間弁ブロック16′、下流側弁ブロック16″及びベース体29と気化ブロック3A上の断熱部材11″との間に、中間弁ブロック16′の底面、下流側弁ブロック16″の底面、ベース体29の底面及び断熱部材11″の上面にそれぞれ密接する状態で配置されている。
【0070】
上述した第1ヒータ6、第2ヒータ7及び第3ヒータ8においては、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の伝熱部材6b,7b,8bの内側面、即ち、予加熱部2、気化部3及び流量制御装置4と対向する面は、放熱性を向上させるための表面処理としてアルマイト処理(陽極酸化処理)が施されており、また、伝熱部材6b,7b,8bの外側面は、研磨面又は鏡面加工面となっている。伝熱部材6b,7b,8b外側の鏡面加工面は、典型的には研磨処理によって形成されるが、削り出しのみによって形成されていても良い。
【0071】
伝熱部材6b,7b,8bの内側面をアルマイト処理(例えば硬質アルマイト処理)することによって、放熱性を向上させることができ、発熱体6a,7a,8aからの熱を、接触している場合は伝熱部材6b,7b,8bから直接予加熱部2や気化部3等へ熱を伝導でき、伝熱部材6b,7b,8bと気化部3等とに距離がある場合であっても、高い放射性(高い輻射熱)によって、気化部3等に均一且つ向上した効率で伝えることができる。また、伝熱部材6b,7b,8bに予加熱部2や気化部3が接触している場合において、熱は接触部分から伝導するが、伝熱部材6b,7b,8bから予加熱部2や気化部3に熱が移動するとき、伝熱部材6b,7b,8bの内側表面がアルマイト処理されていないと、輻射率の関係から、伝熱部材6b,7b,8bの内側表面で熱が反射し、予加熱部2や気化部3に移動しない熱が存在する。これに対して、本実施形態のように伝熱部材6b,7b,8bの内側表面がアルマイト処理されていると、輻射率が高いため、予加熱部2や気化部3と接触する面で反射する熱は殆どなく、伝熱部材6b,7b,8bからの熱のほぼ全てが予加熱部2や気化部3へと伝導される。
【0072】
更に、伝熱部材6b,7b,8bの外側面を鏡面加工することによって各ヒータ6,7,8の外側への放熱作用を抑えることができる。これにより、省エネルギー化が図れるという利点が得られる。尚、硬質アルマイト処理に限らず、通常のアルマイト処理であっても同様の効果が発揮される。アルマイト層の厚さも、通常のアルマイト処理で形成される厚さ(例えば1μm以上)であれば、同様の効果を発揮する。但し、硬質アルマイト処理は、運用の際に傷が付き難く、通常のアルマイト処理よりも膜が剥がれる懸念を小さくできるというメリットがある。
【0073】
また、予加熱部2、気化部3、流量制御装置4にそれぞれ温度センサ(図示せず)が設けられており、制御装置(図示せず)を用いて各ヒータ6,7,8を個別に制御することが可能であるので、予加熱部2、気化部3、流量制御装置4の温度をそれぞれ個別に制御できる。通常、予加熱部2、気化部3及び流量制御装置4の温度が、予加熱部2<気化部3<流量制御装置4となるよう制御される。
【0074】
第1ヒータ6の温度は、例えば、約180℃に設定され、第2ヒータ7の温度は、例えば、約200℃に設定され、第3ヒータ8の温度は、例えば、約210℃に設定されている。通常、予加熱部2を加熱する第1ヒータ6は、気化部3を加熱する第2ヒータ7よりも低い温度に設定され、流量制御装置4を加熱する第3ヒータ8は、第2ヒータ7よりも高い温度に設定されている。従って、予加熱部2、気化部3及び流量制御装置4の温度は、予加熱部2<気化部3<流量制御装置4となっている。
【0075】
尚、上記の実施形態においては、各ヒータ6,7,8の発熱体6a,7a,8aとして、棒状のカートリッジヒータを使用したが、発熱体6a,7a,8aとしては、公知の種々の発熱装置を用いることができ、例えば、伝熱部材6b,7b,8bに固定された面状ヒータ(図示省略)を用いても良い。
【0076】
また、上記の実施形態においては、発熱体6a,7a,8aを伝熱部材6b,7b,8bに横方向から挿着するようにしたが、他の実施形態においては、発熱体6a,7a,8aを伝熱部材6b,7b,8bに縦方向から挿着するようにしても良い。
【0077】
更に、上記の実施形態においては、各ヒータ6,7,8の伝熱部材6b,7b,8bとして、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材を使用したが、伝熱部材6b,7b,8bには、アルミニウム又はアルミニウム合金の他に、他の高熱伝導性の金属材料を用いても良い。
【0078】
このように、上述した気化供給装置1は、予加熱部2と気化部3と流量制御装置4とを上下方向に積み重ねて3段構造にしているので、予加熱部2と気化部3と圧力式流量制御装置4とを直列状に配置した従来の気化供給装置に比較して設置面積を狭くすることができる。
【0079】
また、気化供給装置1は、図示しない制御装置を用いて各ヒータ6,7,8を個別に制御することが可能であるので、予加熱部2、気化部3、流量制御装置4をそれぞれ個別に温度制御でき、液体原料Lの予加熱、液体原料Lの気化、気化原料の再液化の防止をそれぞれ適切な温度で行うことができる。
【0080】
更に、気化供給装置1は、予加熱部2と気化部3との間、気化部3と流量制御装置4との間にそれぞれ断熱部材11′,11″を介設しているので、流量制御装置4から気化部3への熱伝導、気化部3から予加熱部2への熱伝導がそれぞれ抑制され、気化部3及び予加熱部2を設定温度に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の実施形態による流体制御装置は、例えば、MOCVD用の半導体製造装置において原料ガスをプロセスチャンバに供給するために用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 気化供給装置
2 予加熱部
3 気化部
4 流量制御装置
5 ヒータ
6 第1ヒータ
6A 第1側面ヒータ
7 第2ヒータ
7A 第2側面ヒータ
7B 第2底面ヒータ
8 第3ヒータ
8A 第3側面ヒータ
8B 第3底面ヒータ
11,11′,11″ 断熱部材
G ガス
L 液体原料
図1
図2
図3
図4
図5