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特許7577354単層グラフェンオキシドを含む積層セルロースボードの製造用の水系接着剤、それを用いて得られる積層セルロースボード、及びその製造方法
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  • 特許-単層グラフェンオキシドを含む積層セルロースボードの製造用の水系接着剤、それを用いて得られる積層セルロースボード、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】単層グラフェンオキシドを含む積層セルロースボードの製造用の水系接着剤、それを用いて得られる積層セルロースボード、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 103/02 20060101AFI20241028BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241028BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241028BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20241028BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241028BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20241028BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20241028BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
C09J103/02
C09J11/04
C09J11/06
C09J11/08
B32B7/12
B32B29/00
B32B37/12
D21H27/30 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022515486
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2020075193
(87)【国際公開番号】W WO2021048203
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】19382779.7
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516077932
【氏名又は名称】グラフェネア エス.エー.
【氏名又は名称原語表記】Graphenea S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スルトゥサ エロルサ アマイア
(72)【発明者】
【氏名】オルテガ ムルギアルダイ アマージャ
(72)【発明者】
【氏名】アロンソ ロドリゲス ベアトリス
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106381104(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第02886621(EP,A1)
【文献】特開昭57-056242(JP,A)
【文献】特開2003-201454(JP,A)
【文献】特開平01-110579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
B32B1/00-43/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
B31F1/00-7/02
D21H1/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層セルロースボードの製造用の水系接着剤であって、
1)水と、
2)20.0重量%~40.0重量%のデンプンと、
3)任意で、10重量%までの、少なくとも1つのさらなるポリマーであって、天然ポリマー又は可溶性合成ポリマーから選択される、少なくとも1つのさらなるポリマーと、
4)糊増強剤であって、水中に単グラフェンオキシドを、前記水系接着剤が0.1重量%~10-7重量%の単グラフェンオキシドを含むような量で、含む糊増強剤と、
5)少なくとも1つのさらなる構成成分であって、前記ポリマーに応じて、防カビ剤及び殺生物剤、並びに/又は安定化剤、ゲル化剤、増粘剤、消泡剤、粘着付与剤、防湿樹脂、レオロジ剤から選択される、少なくとも1つのさらなる構成成分と、
を含むことを特徴とする、水系接着剤。
【請求項2】
前記少なくとも1つのさらなる構成成分5)は、ホウ砂及びNaOH又は水酸化カルシウムと炭酸ナトリウムとの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の水系接着剤。
【請求項3】
前記デンプンは、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、ジャガイモデンプン、エンドウ豆デンプン、タピオカデンプン、又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水系接着剤。
【請求項4】
前記少なくとも1つのさらなるポリマーは、天然ポリマーであって、植物源、タンパク質源、若しくは動物源から選択される、好ましくはデキストリン、デンプン、若しくはアルブミンから選択されるか、又はカゼイン、血液、魚、大豆、獣皮、若しくは骨から抽出されるいずれかのポリマーから選択される、天然ポリマーであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の水系接着剤。
【請求項5】
前記少なくとも1つのさらなるポリマーは、可溶性合成ポリマーであって、ポリビニルアルコール、セルロースエーテル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、尿素-ホルムアルデヒドブレンド、及びメラミン-ホルムアルデヒドブレンドから選択される可溶性合成ポリマーであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の水系接着剤。
【請求項6】
前記単グラフェンオキシドは、ISO/TR18401:2017に定義されるナノプレートの形態であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の水系接着剤。
【請求項7】
グラフェンオキシドの、積層セルロースボードの製造用の水系接着剤のための糊増強剤としての使用であって、前記水系接着剤は、デンプン及び任意で少なくとも1つのさらなるポリマーを含み、前記少なくとも1つのポリマーは、天然ポリマー又は可溶性合成ポリマーから選択され、前記水系接着剤は、請求項1~5のいずれか1項において規定される通りであることを特徴とする、単グラフェンオキシドの使用。
【請求項8】
前記単グラフェンオキシドは、ISO/TR18401:2017に定義されるナノプレートの形態であることを特徴とする、請求項7に記載の単グラフェンオキシドの使用。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水系接着剤を製造するための方法であって、デンプン、水、及び糊増強剤を混合するステップを含み、前記糊増強剤は、0.1重量%~0.001重量%の単グラフェンオキシドの水中懸濁物であることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
a)デンプンを、撹拌下及び20.0℃~30.0℃の温度で、水中に混合して、20.0重量%~40.0重量%のデンプンを含む第1の混合物を得るステップと、
b)前記第1の混合物に、撹拌下、糊増強剤を加えるステップであって、前記糊増強剤は、0.1重量%~0.001重量%の単グラフェンオキシドの水中懸濁物であり、それによって0.1重量%~10-7重量%の単グラフェンオキシドを含む第2の混合物を製造する、ステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
ステップa)において、前記第1の混合物は、少なくとも20分間撹拌され、及びステップb)において、前記第2の混合物は、少なくとも10分間撹拌されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
積層セルロースボードを製造するための方法であって、
i)少なくとも2枚のセルロースプライを提供するステップと、
ii)セルロースプライの表面の少なくとも一部に、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤を適用するステップと、
iii)さらなるセルロースプライの表面を、ステップii)の第1のセルロースプライに接触させるステップと、
iv)任意で、ステップii)及びiii)を1回以上繰り返して、積層セルロースボードを得るステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
ステップiii)は、前記さらなるセルロースプライの表面の少なくとも一部に、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤を適用することをさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記セルロースプライは、紙又はカードボードプライであることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
互いに付着された少なくとも2枚のセルロースプライを含む、積層セルロースボードであって、前記少なくとも2枚のセルロースプライは、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤により互いに付着されていることを特徴とする、積層セルロースボード。
【請求項16】
請求項15に記載の又は請求項12~14のいずれか1項に記載の方法によって得られる積層セルロースボードであって、前記セルロースプライの少なくとも1つは波状プライである、積層セルロースボード。
【請求項17】
請求項15及び16のいずれか1項に記載の又は請求項12~14のいずれか1項に記載の方法によって得られる積層セルロースボードであって、前記セルロースプライの少なくとも1つは積層紙である、積層セルロースボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系接着剤の分野に関し、詳細には、このような接着剤のための単グラフェンオキシドを主体とする糊増強剤に関する。本発明の水性接着剤は、カードボード又は紙積層体(例えばカードボードブランク)等の積層セルロースボードの製造に好適である。
【背景技術】
【0002】
接着剤は、物品及び/又は材料の製造のために多くの産業において広く使用されている物質である。多くの場合、接着剤は、物品及び/又は材料を正しく製造するために欠かすことができない。
【0003】
接着剤を必要とする産業の例として、製紙産業及び積層セルロースボードの製造がある。どちらの産業も紙に関係するが、それらは本質的に異なり、使用される接着剤に関して異なるニーズを持ち、前者においては、セルロース繊維が互いに付着されるのに対して、後者では、紙又はカードボードのシートが互いに付着される。製紙産業においては、原料としてセルロース系材料を使用して(木質繊維、但しぼろ布、亜麻、コットンリンター、バガス等)、パルプ、紙、板紙等のセルロース系製品を製造するが、その際、接着剤を使用してセルロース系繊維を接合する。積層セルロースボード、例えばカードボードの製造においては、通常カードボードのプライが、このような接着剤によって互いに付着されて多層を与える。しかしながら、プライは互いに付着されてカードボードブランクを与えるようにしなければならないばかりでなく、それらはまた、得られるカードボードブランクが、使用者による操作や、湿度、雨、低温、及び高温等の気象現象に耐えるような態様で付着されなければならない。すなわち、カードボードブランクは、信頼に足る必要があり、接着剤はこの観点から関連性が高い。
【0004】
多くの異なる物品及び材料においてグラフェンが使用されてきたが、それは多くの場合、グラフェンは前記物品又は材料の機能性又は特性を高めることを可能にするためである。先行技術において、グラフェンオキシドを紙パルプに組み込んで紙の特性の一部を改善しようとしたり、グラフェンをカードボードに組み込んでその製造に使用される接着剤の接着特性を改善しようとする、幾つかの試みが開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1は水系接着剤製品を開示しており、この水系接着剤製品は、種々の粉末、繊維、土等を接合するために使用することができ、すなわち、例えば製紙産業において使用され得る。解決すべきとされる課題は、リサイクル可能でありかつ環境に優しい接着剤であって、同時に良好な性能を維持する接着剤を提供することである。実施例の章に見られ得る通り、この接着剤材料は主に、アクリルアミド、アクリル酸メチル、アクリル酸カリウム、N,N’-ビス(アクリロイル)シスタミン、及びN,N-メチレンビスアクリルアミド等の合成接着剤であり、そこに多糖材料が補充されていてもよく、この多糖材料として水溶性デンプンが挙げられている。この水系接着剤はさらに黒鉛材料を含有し、この黒鉛材料は、単酸化黒鉛、多層グラフェンオキシド、又は薄片状黒鉛から選択されてよい。黒鉛材料に特定の特性が課されることはなく、例示された接着剤は、粉末状の土を接合するためにのみ使用され、実施例には紙もセルロース系繊維も開示されておらず、ましてやセルロースボードの接合も開示されていない。
【0006】
特許文献2は、耐候性、耐水性、かつ高品質の特殊印刷用紙を製造するための方法を開示しており、この方法は、パルプを調製し、それを用いて紙を製造し、そこに接着剤層を適用することを含む。パルプを調製するステップにおいて、可溶化剤組成物が加えられ、この可溶化剤組成物は、グラフェン量子ドット、ナノシリカ、及びナノ二酸化チタンの全てを含む。グラフェン量子ドットは、マイクロ波ストリッピング法によって調製された単グラフェンオキシド量子ドットである。この単グラフェンオキシド量子ドットが良好な表面修飾作用を提供する一方で、シリカは製紙繊維の密着性を効果的に改善することができ、及び紙の折り抵抗及び機械特性を改善することができる、ということが開示されている。
【0007】
特許文献3は変わって、セルロース製品の積層体の製造のための接着剤、すなわち積層セルロースボードの製造のための接着剤を開示している。水及びデンプンの混合物にグラフェンナノフィラメントを加えて接着剤を製造する。加えられたナノフィラメントは、1~100ナノメートルの範囲の直径を有し、30マイクロメートルを超える長さを有する。かかるナノフィラメントは、しかしながら、水又は水溶液とよく混ざらない。したがって、混合物は実際に安定というわけではなく、調製後、短時間の間に使用しなければならず、それらが加えられた接着剤の接着特性は、おそらく水との不十分な混合に起因して、大幅には改善されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許出願公開第106381104号明細書
【文献】中国特許出願公開第108914675号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2886621号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、先行技術の解決策の欠点を克服し得る接着剤であって、積層セルロースボードを製造するのに有用な接着剤を提供することに、依然として関心が持たれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、積層セルロースボードの製造用の水系接着剤であって、
1)水と、
2)20.0重量%~40.0重量%のデンプンと、
3)任意で、10重量%までの、少なくとも1つのさらなるポリマーであって、天然ポリマー又は可溶性合成ポリマーから選択される、少なくとも1つのさらなるポリマーと、
4)糊増強剤であって、水中に単グラフェンオキシドを、前記水系接着剤が0.1重量%~10-7重量%の単グラフェンオキシドを含むような量で、含む糊増強剤と、
5)少なくとも1つのさらなる構成成分であって、前記ポリマーに応じて、防カビ剤及び殺生物剤、並びに/又は安定化剤、ゲル化剤、増粘剤、消泡剤、粘着付与剤、防湿樹脂、レオロジ剤から選択される、少なくとも1つのさらなる構成成分と、
を含む、水系接着剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書を完結させるため及び本発明のよりよい理解を与えるために、一連の図面が提供される。前記図面は、本明細書の一体的な部分を形成し、及び本発明の実施形態を例示するが、この実施形態が本発明の範囲を制限すると解釈すべきではなく、本発明がどのように実施可能であるかの例としてのみ解釈すべきである。図面は、以下の図を含む。
【0012】
図1】5つの層を含む積層セルロース段ボールを示す図である。
図2】3つの層を含む積層セルロース段ボールを示す図である。
図3】サンプルを用いて実施された乾燥引き剥がし試験の結果を示す図である。図3は、本発明による糊増強剤を有さない接着剤を用いて調製された段ボールを用いて行った乾燥引き剥がし試験に相当する。
図4図3とは異なるサンプルを用いて実施された乾燥引き剥がし試験の結果を示す図である。図4は、本発明による糊増強剤を含む接着剤を用いて調製された段ボールを用いて行った乾燥引き剥がし試験に相当する。
図5】上述の異なる調製方法の幾つかによって得られた接着剤の概略図である。
図6a】上述したシュタインホールプロセスのステップ示す模式図である。
図6b】上述したシュタインホールプロセスのステップ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の態様によると、本発明は、積層セルロースボードの製造用の水系接着剤であって、
1)水と、
2)20.0重量%~40.0重量%のデンプンと、
3)任意で、10重量%までの、少なくとも1つのさらなるポリマーであって、天然ポリマー又は可溶性合成ポリマーから選択される少なくとも1つのさらなるポリマーと、
4)糊増強剤であって、水中に単グラフェンオキシドを、前記水系接着剤が0.1重量%~10-7重量%の単グラフェンオキシドを含むような量で、含む糊増強剤と、
5)少なくとも1つの構成成分であって、前記ポリマーに応じて、防カビ剤及び殺生物剤、並びに/又は安定化剤、ゲル化剤、増粘剤、消泡剤、粘着付与剤、防湿樹脂、及びレオロジ剤から選択される少なくとも1つの構成成分と、
を含む、水系接着剤に関する。
【0014】
特定の実施形態によると、前記デンプンは、前記水系接着剤中に20~32重量%の量で、例えば25~30重量%の量で含有されてよい。
【0015】
前記デンプンは、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、ジャガイモデンプン、エンドウ豆デンプン、タピオカデンプン、又はそれらの混合物のうちの1つであってよい。
【0016】
前記デンプンは、化学的に修飾されて、デンプンが、高熱、高せん断、低pH、凍結/融解、及び冷却等の、加工又は貯蔵中に頻繁に遭遇する条件下で適切に機能するようになされてよい。
【0017】
上記の少なくとも1つの構成成分5)は、例えば、ホウ砂粉末、及び水酸化カルシウムと炭酸ナトリウムとの混合物であってよく、この混合物は、水中に溶解されると、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を与える。水酸化ナトリウムは、糊の紙への浸透を促進し及びゲル化時間を減少させる。ホウ砂粉末は、加熱処理された(cooked)デンプンと反応することによって糊を安定化し、及び糊の接着性及びその紙への浸透を改善する。ホウ砂粉末はさらに、最適なレオロジを与えることを助ける。接着剤中の水酸化ナトリウムの濃度は、1.5~3.0重量%であってよく、接着剤中のホウ砂の濃度は、1~2重量%であってよい。
【0018】
他の追加の構成成分5)は、例えば、耐湿性を改善する尿素-ホルムアルデヒド、耐冷水性を改善するポリビニルアルコール若しくはポリビニルアセテート、又はカビの生長を阻止する殺生物剤の少なくとも1つであってよい。
【0019】
上記で定義された水系接着剤において、前記天然ポリマーは、植物源、タンパク質源、若しくは動物源から選択され、特に、デキストリン、デンプン、若しくはアルブミンから、又はカゼイン、血液、魚、大豆、獣皮、若しくは骨から抽出されたいずれかのポリマーから、選択される。前記可溶性合成ポリマーは、ポリビニルアルコール、セルロースエーテル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、尿素-ホルムアルデヒドブレンド、及びメラミン-ホルムアルデヒドブレンドから選択される。
【0020】
前記水系接着剤は、1つだけのさらなるポリマー、又は2つ以上のポリマーの混合物を含んでよい。
【0021】
100重量%までの残部は水となる。
【0022】
前記単グラフェンオキシドは、EP15382123に開示されている方法に従い合成した。この特許文献はグラフェンオキシドの調製方法に関して参照により本明細書に援用される。概して言うと、その手順は改良ハマーズ法に基づき、酸化反応及びポスト剥脱プロセスを、高せん断ミキサーを用いて行う。この方法では、反応を行うと同時にグラフェンオキシドを剥脱するため、収率、酸素含有量、及び単含有量は、標準的な撹拌方法を用いるよりも高くなる。参照された方法により得られる単グラフェンオキシドは、ISO/TR18401:2017に定義されるナノプレートの形態である。したがって、本発明の接着剤を調製するのに使用される単グラフェンオキシドは、このようなナノプレートの形態である。参照されたISO基準は、それらのサイズ及び形状に基づきナノ物品の定義及び分類を提供する。ナノ物品は典型的に、ナノスケールに制約された寸法に関して記述され又は分類される。そのようなものとして、1つの寸法がナノスケールであるが、別の2つの寸法はナノスケールよりも大きい場合、その物品はナノプレートとして知られる。2つの寸法がナノスケールである場合、その物品はナノ繊維として知られ、ナノチューブを包含する。3つの寸法全てがナノスケールである場合、その物品は、ナノ粒子又は量子ドットとして知られる。
【0023】
前記防湿樹脂は、例えば、ケトン-ホルムアルデヒド、尿素-ホルムアルデヒド、又はレゾルシノールであってよい。
【0024】
本発明による水系接着剤において、前記単グラフェンオキシドは、接着剤増強剤として使用される。したがって、本発明のさらなる態様は、単グラフェンオキシドの、積層セルロースボードの製造向けの水系接着剤用の接着剤増強剤としての使用である。かかる単グラフェンオキシドは、ISO/TR18401:2017に定義されるナノプレートの形態である。
【0025】
好ましい構成成分5)は、苛性ソーダ及び/又はホウ砂である。苛性ソーダの好ましい量は、デンプンの重量に対して1.5~3重量%であり、ホウ砂の好ましい量は、デンプンの重量に対して1~2重量%である。
【0026】
本発明の第3の態様は、上記に規定したような本発明の積層セルロースボードの製造用の水系接着剤を製造する方法であって、この方法は、デンプン、水、及び糊増強剤を混合するステップを含み、前記糊増強剤は0.1重量%~0.001重量%の単グラフェンオキシドの水中懸濁物である。かかる水中の単グラフェンオキシドは好ましくは、ISO/TR18401:2017に定義されるナノプレートの形態である。
【0027】
例えば、前記方法は、
a)デンプンを第1の水溶液中に、撹拌下及び20.0℃~30.0℃の温度で、混合して、20.0重量%~40.0重量%のデンプンを含む第1の混合物を得るステップと、
b)前記第1の混合物に、撹拌下、糊増強剤を加えるステップであって、前記糊増強剤は、0.1重量%~0.001重量%の単グラフェンオキシドを含む第2の水ベースであり、それによって0.1重量%~10-7重量%の単グラフェンオキシドを含む第2の混合物を製造する、ステップと、
を含む。
【0028】
前記第2の混合物は、水系接着剤として直接使用されてよい。
【0029】
前記第2の混合物中の単グラフェンオキシドの濃度は、混合物中の単グラフェンオキシドのコストを低減させるために、好ましくは0.001重量%~10-7重量%であってよく、さらにより好ましくは10-5重量%~10-7重量%であってよい。上記で示したように、前記単グラフェンオキシドは好ましくは、ISO/TR18401:2017に定義されるナノプレートの形態である。
【0030】
さらなる実施形態によれば、ステップa)の温度は、24.0℃~26.0℃、好ましくは24.5℃~25.5℃である。
【0031】
さらなる実施形態は、ステップa)における第1の混合物の、少なくとも20分間の撹拌、及び/又はステップb)における第2の混合物の、少なくとも10分間の撹拌を提供する。
【0032】
前記接着剤は、最新の技術において既知である異なる方法によって調製されてよい。
【0033】
例えば、それは、「シュタインホール(Steinhall)」として知られる方法によって調製されてよく、この方法は、デンプン溶液からなる2相接着剤を提供し、このデンプン溶液は、キャリアと呼ばれる第1デンプン中に、加熱処理されていない生デンプン、即ち第2デンプンが懸濁されてなる。前記キャリアは、デンプンスラリに対する熱と苛性ソーダとの複合作用によって調製される。これによって、必要粘度が提供されて第2デンプンのゼラチン化にとって必要な水が保持され、かつ紙への吸収並びに初期粘着強度が制御される。
【0034】
使用してよいさらなる調製方法は、「ノーキャリア」プロセスである。このプロセスは、単相接着剤を提供する。デンプン細粒の大部分が部分的に膨潤され、混合物は十分に粘性となって沈降が防止される。デンプンスラリは、精密な熱及びアルカリ条件に曝されると徐々に膨潤し、及び膨潤反応は必要粘度においてホウ酸を用いて停止される。
【0035】
ミノカー(Minocar)は、使用し得るさらなるプロセスである。ミノカープロセスは、ノーキャリアプロセスの発展であり、2相接着剤を提供し、細粒の大部分が部分的に膨潤している第1部分中に、加熱処理されていない生デンプンが懸濁されてなる。
【0036】
本発明による糊増強剤が添加されてよいさらなる接着剤は、「ワンバッグミックス」(OBM)デンプンであり、OBMデンプンは幾つかの構成成分のブレンドであり、これらの構成成分は水と混合されるとシュタインホール糊を形成する。主要な構成成分は、
予めゲル化された(加熱処理され及び乾燥された)デンプンであって、水に溶解して、前記糊の第1キャリア成分を形成するデンプンと、
加熱処理されていない天然デンプンであって、前記糊の第2デンプン部分であるデンプンと、
水酸化カルシウムと炭酸ナトリウムとの混合物であって、水に溶解すると水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を形成する混合物と、
ホウ砂粉末と、
である。
【0037】
OBMを使用する主な理由は、その使用し易さであり、特に、調製設備が限定された状況での使用し易さである。
【0038】
さらなるプロセスは、シュタインホールプロセスであって、シュタインホールプロセスは2相接着剤を与え、この2相接着剤は、キャリアと呼ばれる第1デンプン(デンプンの総量のほぼ10~20重量%)中に、加熱処理されていない生デンプンである第2デンプン(デンプンの総量のほぼ80~90重量%)が懸濁されてなるデンプン溶液からなる。前記キャリアは、デンプンスラリに対する熱及び苛性ソーダ(約1.4~3重量%)の複合作用により調製される。約1~2重量%のホウ砂が一般に添加される。
【0039】
上記で定義され又は得られるような本発明の接着剤は、例えば、積層セルロースボードの製造において、使用されてよい。
【0040】
前記添加された単グラフェンオキシドは驚くべきことに及び意外なことに、ポリマー、例えばデンプンから得られる接着特性を増強し、及びしたがって、製造される接着剤の接着特性を増強する。さらに、グラフェンオキシド中の酸素基の存在が、接着剤内にグラフェンオキシドを分散させて、その接着特性を改善することを可能にしていると思われる。
【0041】
得られた接着剤は、グラフェンオキシドなしの接着剤の乾燥時間と比べて低減された乾燥時間を示す。このことは、ひいては、生産性の増大をもたらすが、それは、かかる接着剤による物品の製造に要する時間がより短くなるためである。
【0042】
また、前記接着剤が適用される製品、例えば一重壁カードボード、簡易壁カードボード、二重壁カードボード等の機械特性もまた、接着剤に起因して改善される。幾つかの機械特性は、FEFCO試験法no9(https://find-k.ru/images/FEFCO%209.pdf)、すなわち浸漬により積層セルロース段ボールの糊ボンドの耐水性を判定する方法によって、判定されてきた。乾燥引き剥がし、すなわち、セルロース層の脱離に対する耐性も、動力計を用いて試験された。詳細は実施例及び図面において示す。
【0043】
標準的な積層セルロースボード以外にも、本発明による接着剤を用いて、他の製品、例えば、半化学紙及びプラスチック紙も製造され得る。
【0044】
段ボールの製造のための主な成分は紙である。用途の種類及びそれらの特性に応じて、段ボール製造に使用される紙は、以下の2つの群、
平坦層用の紙、すなわちライナ、及び
波状層用の紙、すなわちフルーティング、
に分けられ得る。
ライナは、その製造プロセス及び成分組成に応じて、以下の2つの主要な群、
クラフトライナ、及び
テストライナ、
の1つに属する。
クラフトライナは、全てのライナの中で最も良好な強度パラメータを有する。それらは、リサイクル繊維をわずかに添加したセルロースパルプで構成される。通常、オーバーコートは、より良好に糊付けされ、かつより高い平滑性を有する。
【0045】
トップライナ(白色クラフトライナ)は、クラフトライナの等級である。その上膜(オーバーコート:overcoat)は多くの場合、漂白されたクラフトパルプで作られ、一方、底層は、非漂白原料(ストック:stock)で作られる。より高度な印影(インプリンツ:imprints)のために、白色コーティングされたクラフトライナが使用され、上膜は大抵、顔料塗工剤でコーティングされている。
【0046】
テストライナは、2層紙であり、最も頻繁には、100%の古紙から作られる。テストライナは、2つの層の組み合わせである。こうした構成により、上膜のためのクラフトパルプの使用及び底層のためのリサイクル繊維の使用が可能となる。高価なセルロース塊(マス:mass)と安価な製紙原料(ストック:stock)との価格の関係に起因して、テストライナの処方において後者の継続的な増大が見られる。それらはますます、完全にリサイクル繊維で作られるようになっている。このような場合、クラフトパルプの色を限定するために上膜(トップ層)は染色される。クラフトライナと同様に、テストライナは同様な白さの白色上膜を用いて製造される。より高度な印影のために、コーティングされたテストライナが製造され、その際、上膜は最も頻繁には、顔料塗工剤でコーティングされる。
【0047】
上述した普通紙に加え、特殊な特性を有する特殊紙もまた適用される。特殊紙としては、特に、
湿潤強力祇(湿潤後に変性されて確実に強度特性を維持する(PN-P-50000:1992))、
ファットタイト紙(脂や油の浸透に対する高い耐性を有し、これらの紙の一部は特に、上述の物質の浸透に対する耐性が高い(PN-P-50000:1992))、
バリアコート紙(紙の一面又は両面を覆う、例えばポリエチレン(PE)の、保護層を有する(PN-EN26590-1:1993))、
耐火性紙(耐炎性及び/又は耐点火性を有する(PN-P-500000:1992))
が挙げられる。
段ボールにおけるフルーティング(波状プライ)用の紙は、以下の2つの群、
廃棄物系フルーティング(WBF)、及び
半化学フルーティング(SC)
に分けられる。
WBFは、リサイクル繊維のみから製造される。そのようなフルーティングの機械特性を改善するために、その構造体にデンプンが添加される。このプロセスは一般にボンディングと記述される。それは「原料(ストック:stock)中で」行われてよく(すなわちサイジング(廃棄物紙パルプにデンプンが導入される))、又はデンプンは追加的に紙表面上に適用されてもよい(表面サイジング)。
【0048】
前記半化学フルーティングは、約70%の半化学パルプを含有し、半化学パルプはパルプ化プロセスにおいて硬材(ほとんどがカバノキ)から製造される。このパルプの残りの部分は、ほとんどが古紙からなる。
【0049】
本発明による接着剤はまた、上述した紙のいずれに適用されてもよい。
【0050】
本発明のさらなる態様は、積層セルロースボードを製造するための方法であって、
i)少なくとも2枚のセルロースプライを提供するステップと、
ii)セルロースプライの表面の少なくとも一部に、単グラフェンオキシドを含む本発明の接着剤を適用するステップと、
iii)さらなるセルロースプライの表面を、ステップii)の第1のセルロースプライの表面に接触させるステップと、
iv)任意で、ステップii)及びiii)を1回以上繰り返して、積層セルロースボードを得るステップと、
を含む、方法である。
【0051】
上記の方法において、ステップiii)はさらに、前記さらなるセルロースプライの表面の少なくとも一部に、請求項1~4のいずれか1項に記載の接着剤を適用することを含んでもよい。すなわち、互いに接合すべき両面の少なくとも一部に、接着剤が適用されている。セルロースプライに接着剤を適用する方法は、当該技術分野で既知であり、好ましい方法はロールコーティングである。
【0052】
前記セルロースプライは、一実施形態によると、紙又はカードボードプライであってよい。
【0053】
本発明はまた、上述の方法によって得られる積層セルロースボードに関する。
【0054】
本発明はさらに、積層セルロースボードであって、互いに付着された少なくとも2枚のセルロースプライを含み、前記少なくとも2枚のセルロースプライが、本発明による接着剤、すなわち、単グラフェンオキシドを含む接着剤により互いに付着されていることを特徴とする、積層セルロースボードに関する。
【0055】
上記の積層セルロースボードにおいて、前記セルロースプライの少なくとも1つは、波状プライであって、そのため積層セルロース段ボールを提供してもよい。
【0056】
上記の積層セルロースボードにおいて、前記セルロースプライ少なくとも1つは、積層紙であってもよい。
【0057】
図1は、複数のプライ、特に5層のプライ、番号25~29を有する積層セルロース段ボールを示し、これらのプライは接着剤、例えば本発明による接着剤、すなわち、糊増強剤として単グラフェンオキシドを含む接着剤により互いに付着されている。
【0058】
前記積層セルロース段ボールは、第1の平面状プライ25と、第1の平面状プライ25の下に付着された第1の波状プライ26と、第1の波状プライ26の下に付着された第2の平面状プライ27と、第2の平面状プライ27の下に付着された第2の波状プライ28と、第2の波状プライ28の下に付着された第3の平面状プライ29とを含む。この特定の実施例において、第1の波状プライ26は、第2の波状プライ28のフルーティングよりも小さなフルーティングを有する。このことは、いずれの場合も、本発明の限定とみなされるべきではなく、それは、異なる波状プライのフルーティングは同じであっても異なっていてもよいためである。
【0059】
第1の及び第3の平面状プライ25及び29(すなわち、外側ライナ)の2つの主表面のうちの一方は、それぞれ、第1の及び第2の波状プライ26及び28の主表面に、接着剤により付着されている。第2の平面状プライ27、第1の波状プライ26、及び第2の波状プライ28の各々は、それらの2つの主表面が、接着剤により別のプライの主表面に付着されている。接着剤の特性に応じて、それらのプライは、多少の接着性を持って互いに糊付けされている。前記接着剤及び接着性は、積層セルロース段ボール20の機械特性に影響を与え、それはプライの抵抗が別のプライ(複数)の抵抗により増強され得るためであり、別のプライ(複数)の抵抗は、幾つかの特徴の中でも特に、それらのプライがいかに強く共に糊付けされているかに依存する。
【0060】
他の積層セルロースボード(段ボール若しくは段ボール以外の両方)が、本発明の範囲内で可能であるということは容易に明らかであり、例えば、第1の平面状プライ及び第1の波状プライを有する、又は第1の平面状プライ、第1の波状プライ、及び第2の平面状プライを有する、又は追加の平面状及び/若しくは波状プライ等を有する、積層セルロース段ボールが可能である。さらに、波状プライのフルーティングは、同じであっても異なっていてもよい。例えば半化学紙、クラフト紙、又はプラスチック紙等の、異なる種類の紙又はカードボードを使用して、積層セルロースボードを調製してもよいことも容易に明らかである。
【0061】
図2には、3層のプライ、特に第1の平面状プライと、その第1の平面状プライの下に付着された波状プライと、その波状プライの下に付着された第2の平面状プライとを含む、積層セルロース段ボールが示されている。
【0062】
図3には、図2を参照して記載したような3層のプライを有する積層セルロース段ボールが示されており、それらのプライは、本発明による糊増強剤を含まない接着剤により糊付けされている。観察され得るように、第1の平面状プライは、波状プライから、プライの層剥離を伴わずにごく簡単に分離し、それはそれらのプライの互いに対する弱い接着性に起因する。
【0063】
図4には、図2を参照して記載したような3層のプライを有する積層セルロース段ボールが示されており、それらのプライは、本発明による糊増強剤を含む接着剤により糊付けされている。観察され得るように、第1の平面状プライはこの場合、層剥離し(すなわち平面状及び波状層の双方が壊れる)、それはそれらのプライを互いに付着するのに使用される接着剤中に含まれる、本発明による糊増強剤に起因する強い接着性に起因する。
【実施例
【0064】
以下において、本発明を実施例及び比較例によってさらに例示する。いずれの場合も、実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではなく、単に本発明の例示として解釈されるべきである。
【0065】
<実施例1:本発明による接着剤の調製>
以下のように接着剤を製造する。1800Lの容積の水を提供し、前記容積の水を25.0℃に加熱し、550kgの量の修飾デンプンを添加し、得られた混合物を20分間撹拌し、1.5Lの容積の糊増強剤を前記混合物に添加し、溶媒は水及び0.01重量%の単グラフェンオキシドを含み、及び得られた混合物を10分間撹拌する。得られた例示接着剤は故に、およそ0.0000064重量%の単グラフェンオキシドを有する。
【0066】
<実施例2:乾燥引き剥がし試験>
本発明による接着剤を有する及び有さない、すなわち、単グラフェンオキシドを含む及び含まない、積層セルロース段ボールの幾つかのサンプルで、乾燥引き剥がし試験を行った。この乾燥引き剥がし試験では、互いに糊付けされた2枚のプライを引き剥がす。試験片の長さに渡る、前記2枚を分離するのに要する平均負荷を記録し、Nで表す。
【0067】
特に、図2に示されたような3層を含むボードで、前記乾燥引き剥がし試験を行った。前記3層は、以下である。
上位プライ:平面状プライ:T14;紙タイプ:テスト、坪量140g
中間プライ:波状プライ、フルーティングSQ15;紙タイプ:半化学、坪量150g
下位プライ:T14;紙タイプ:テスト、坪量140g。
【0068】
サンプル1は、本発明による糊増強剤を含まない糊又は接着剤を用いて調製された、上記に従う積層セルロース段ボールである。
【0069】
サンプル2は、本発明による糊増強剤を含む糊又は接着剤を用いて調製された、上記に従う積層セルロース段ボールである。
【0070】
試験の結果を表1に示す。ここで、2行の値が示され、第1行は、上位平面状プライと中間波状プライとの間の乾燥引き剥がしに対応し、第2行は、前記波状プライと下位平面状プライとの間の乾燥引き剥がしに対応する。
【0071】
【表1】
【0072】
サンプル2、すなわち本発明による糊増強剤を有するサンプルにおいて、上位平面状プライと波状プライとの間の乾燥引き剥がしは、層剥離(図4参照)をもたらす。層剥離は、接着剤の高い強度の結果であり、平面状及び波状層の両方が壊れる。
【0073】
それに対して、サンプル1、すなわち本発明による糊増強剤なしのサンプルについては、上位平面状プライと波状プライとの間の乾燥引き剥がしの、測定された力は7.93Nであった。
【0074】
波状プライと下位平面状プライとの間の乾燥引き剥がし試験において、サンプル2は乾燥引き剥がしのために4.74Nの力を必要としたが、この力はサンプル1の乾燥引き剥がしのための力(2.13N)よりも大きい。
【0075】
したがって、両方の場合において、サンプル2(糊増強剤を含む)の乾燥引き剥がしに対する抵抗は、サンプル1(糊増強剤なし)の抵抗よりも大きい(図4図3、層剥離対層剥離なしの引き剥がし参照)。
【0076】
<実施例3:糊ボンドの耐水性の判定:FEFCO試験法#9>
また、本発明による糊増強剤を含む接着剤あり及びなしで製造された積層セルロース段ボールの浸漬による、糊ボンドの耐水性を、FEFCO試験法#9に従い試験する。段ボールの糊の耐水性は、水中に浸漬された糊ラインの所定の組み合わせが、それらの糊ラインに対して直角の、セルロースボードの軸に垂直な平面における、懸下された重り(250グラムの質量を有する)の引張りに耐える時間の長さによって表す。
【0077】
特に、図1に従う、5層を含むボードにおいて前記乾燥引き剥がし試験を行った。前記5層は、上から下に列挙すると、以下であった。
上位の外側平面状プライ:T200;紙タイプ:テスト、坪量200g
第1の波状プライ:小さなフルーティング、SQ150;紙タイプ:半化学、坪量150g
中間プライ(中間ライナ):T140;紙タイプ:テスト、坪量140g
第2の波状プライ:大きなフルーティング、SQ150;紙タイプ:半化学、坪量150g
下位の外側平面状プライ:T200;紙タイプ:テスト、坪量200g。
【0078】
サンプル3は、本発明による糊増強剤を含まない糊又は接着剤を用いて調製された、上記に従う積層セルロース段ボールである。
【0079】
サンプル4は、本発明による糊増強剤を含む糊又は接着剤を用いて調製された、上記に従う積層セルロース段ボールである。
【0080】
サンプル4(本発明による糊増強剤を含む接着剤を有する)は、サンプル3(糊増強剤を含まない接着剤を有する)と比較して、それが壊れるまでのより長い時間を特徴とすることを、表2に見ることができる。この表2において、プライの各対の間の耐水性が測定され、また、異なる試験における測定された時間の標準偏差が示されている。
【0081】
【表2】
【0082】
この文脈において、第1の、第2の等の用語を、本明細書において、幾つかの物質又は要素を記述するために使用したが、それらの用語は1つの物質又は要素を別の物質又は要素から区別するためにのみ用いられるため、それらの物質又は要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。
【0083】
この文脈において、用語「含む(comprise)」及びその派生語(「含む(comprising)」等)は、排他的な意味において理解されるべきではなく、すなわち、これらの用語は、記載され及び規定されるものがさらなる要素、ステップ等を含み得るという可能性を排除するとして解釈されるべきではない。
【0084】
一方、本発明は明らかに、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に規定される本発明の一般的な範囲内で、当業者により考えられ得る任意の変形形態(例えば、材料、寸法、構成成分、構成等の選択に関する)をも包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b