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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】搬送式乾燥装置及び搬送式乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/08 20060101AFI20241028BHJP
   F26B 25/04 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
F26B17/08 Z
F26B25/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022532194
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020025085
(87)【国際公開番号】W WO2021260902
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390030661
【氏名又は名称】株式会社ハイテム
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】森 雄一郎
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0131169(US,A1)
【文献】国際公開第2016/046928(WO,A1)
【文献】米国特許第03570576(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130151(US,A1)
【文献】特開2002-039678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/08
F26B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物を搬送しながら乾燥させる搬送式乾燥装置であって、
一対の無端チェーンと、
一対の該無端チェーンそれぞれが巻き掛けられている複数対のスプロケットと、
一対の前記無端チェーンの間に位置し、それぞれ幅方向に平行な支軸周りに回転可能に前記無端チェーンの双方に取り付けられていることにより、前記無端チェーンの移動に伴い移動する複数のプレートと、を具備し、
前記複数対のスプロケットとして、一対の前記無端チェーンそれぞれが順に巻き掛けられ、連動して回転する、一対の第一スプロケット、一対の第二スプロケット、一対の第三スプロケット、及び、一対の第四スプロケットを有し、
前記第一スプロケットは前記第二スプロケットと同じ高さにあり、前記無端チェーンを上から下に回転させ、前記第二スプロケットに向けて前記無端チェーンを水平に移動させると共に、
前記第二スプロケットは前記第一スプロケットから送られた前記無端チェーンを下から上に回転させるものであり、
前記第三スプロケットは、その下端が前記第二スプロケットの上端と同じ高さにあり、前記第二スプロケットとの間で前記無端チェーンを水平に移動させると共に、前記無端チェーンを下から上に回転させるものであり、
前記第四スプロケットは、前記第一スプロケットの上方にあり、前記第三スプロケットから送り出された前記無端チェーンを上昇させてから、上から下に回転させて前記第一スプロケットに送るものであり、
前記プレートは、
前記第二スプロケットから前記第三スプロケットに向かって移動する間は、上レールに支持されることにより水平となった状態で被乾燥物を載置する上搬送面を形成し、
前記第三スプロケットから前記第四スプロケットに向けて送り出される際に、自重により前記支軸周りに下方向へ回転し、前記支軸から吊り下がった状態で上昇してから、前記第四スプロケットを周回して前記第一スプロケットに送られ、
前記第一スプロケットから前記第二スプロケットに向けて送り出される際に、下レールまで案内されつつ前記支軸周りに上方向に回転し、
前記第二スプロケットに向かって移動する間は、前記下レールに支持されることにより水平となった状態で被乾燥物を載置する下搬送面を形成し、
前記第二スプロケットによって前記無端チェーンが下から上に回転させられる際に、自重により前記支軸周りに下方向へ回転し、前記第二スプロケットを周回しながら前記上レールまで案内されつつ前記支軸周りに上方向に回転するものであり、
前記支軸から吊り下がった状態で前記第三スプロケットから前記第四スプロケットに向かって上昇している前記プレートに対面して回転する、長棒状の回転シャフト、及び、該回転シャフトから、その回転軸に直交する方向に延びている複数の掻き取りロッド、を有する掻き取り装置を更に具備し、
前記第三スプロケットの回転が、該第三スプロケットに従動して回転する従動回転体の複数を介して前記回転シャフトに伝達されることによって、前記回転シャフトは前記第三スプロケットに従動して回転するが前記回転シャフトの回転方向は前記第三スプロケットの回転方向とは反対方向であることにより、前記第三スプロケットを経由して上昇する前記プレートに対して、前記掻き取りロッドが上から下に向かって回転する
ことを特徴とする搬送式乾燥装置。
【請求項2】
複数の前記従動回転体として、歯数の異なる複数の歯車を含み、複数の該歯車が噛み合っていることにより、前記掻き取り装置の前記回転シャフトは前記第三スプロケットの回転速度より大きな速度で回転する
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送式乾燥装置。
【請求項3】
前記第三スプロケットの回転が複数の前記従動回転体を介して前記掻き取り装置の前記回転シャフトに伝達されることにより、前記第三スプロケットの回転に従動する前記回転シャフトは前記第三スプロケットの回転軸より高い位置にある
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送式乾燥装置。
【請求項4】
請求項に記載の搬送式乾燥装置を使用して行う搬送式乾燥方法であり、
前記上搬送面を形成している複数の前記プレート上に被乾燥物を供給し、
前記プレートが前記第三スプロケットから前記第四スプロケットに向けて送り出される際に、前記支軸周りに下方向に回転する前記プレートから被乾燥物を落下させることにより、前記下搬送面を形成している複数の前記プレート上に被乾燥物を載置し、
前記プレートを、前記支軸から吊り下がった状態で前記第四スプロケットに向かって上昇させることにより、未だ落下していない被乾燥物を落下させると共に、
前記支軸から吊り下がった状態で前記第四スプロケットに向かって上昇している前記プレートに付着している被乾燥物を、前記回転シャフトの回転に伴い回転する前記掻き取りロッドで掻き落とす
ことを特徴とする搬送式乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被乾燥物を搬送しながら乾燥させる搬送式乾燥装置、及び、該搬送式乾燥装置を使用して行う搬送式乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、多数のプレートが搬送面を形成するコンベアで被乾燥物を搬送しながら乾燥させる装置を提案している(特許文献1参照)。この装置では、一対の無端チェーンのそれぞれが、水平方向に離隔している一対のスプロケットに巻き掛けられて周回している。多数のプレートは、一対の無端チェーンの間に位置し、幅方向に平行な支軸によって回転可能に無端チェーンの双方に支持されており、無端チェーンの移動に伴い移動する。無端チェーンを上から下に回転させるスプロケットを第一スプロケット、無端チェーンを下から上に回転させるスプロケットを第二スプロケットとすると、第二スプロケットから第一スプロケットに向かって無端チェーンが水平方向に移動する区間では、プレートは上レールによって水平に保持され、プレートの上面が上搬送面を構成する。この上搬送面に上方から被乾燥物が供給され、搬送されながら乾燥される。
【0003】
第一スプロケットに近づいたプレートが上レールから外れると、プレートは自重によって支軸周りに下方向に回転し、被乾燥物が落下する。支軸から吊り下がった状態で第一スプロケットを周回するプレートは、下レールまで案内されつつ支軸周りに上方向に回転する。第一スプロケットから第二スプロケットに向かって無端チェーンが水平方向に移動する区間では、プレートは下レールによって水平に保持され、プレートの上面が下搬送面を構成する。
【0004】
第一スプロケットに近づいたプレートの下方向への回転により落下した被乾燥物が、この下搬送面によって載置され、搬送されながら更に乾燥される。第二スプロケットに近づいたプレートが下レールから外れると、プレートは自重によって支軸周りに下方向に回転し、被乾燥物が装置外に落下する。支軸から吊り下がった状態で第二スプロケットを周回するプレートは、上レールまで案内されつつ支軸周りに上方向に回転する。
【0005】
このような構成の特許文献1の装置によれば、上搬送面に被乾燥物を供給しつつ、上搬送面と下搬送面との双方で被乾燥物を搬送しながら被乾燥物を乾燥させ、第二スプロケットに近づいたプレートの回転により落下した乾燥済みの被乾燥物を回収すれば、乾燥処理を連続的に行うことができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置では、上搬送面で搬送されて第一スプロケットに近づいた被乾燥物は、未だ十分に乾燥していない。そのため、被乾燥物がプレートに付着してしまい、第一スプロケットに近づいたプレートが下方向へ回転したときに落下しないことがあった。被乾燥物が付着したままのプレートが第一スプロケットを周回し、その過程で被乾燥物が落下すると、被乾燥物を受け止めるべき水平なプレートが下方にないため、未乾燥の被乾燥物が装置の設置面に落下してしまう。そのため、乾燥処理が不十分となると共に、被乾燥物の全量を回収できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/046928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、被乾燥物を搬送しながら乾燥させる搬送式乾燥装置であって、乾燥処理を十分に行うことができると共に、回収できない被乾燥物を低減することができる搬送式乾燥装置、及び、該搬送式乾燥装置を使用して行う搬送式乾燥方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる搬送式乾燥装置は、
「被乾燥物を搬送しながら乾燥させる搬送式乾燥装置であって、
一対の無端チェーンと、
一対の該無端チェーンそれぞれが巻き掛けられている複数対のスプロケットと、
一対の前記無端チェーンの間に位置し、それぞれ幅方向に平行な支軸周りに回転可能に前記無端チェーンの双方に取り付けられていることにより、前記無端チェーンの移動に伴い移動する複数のプレートと、を具備し、
前記複数対のスプロケットとして、一対の前記無端チェーンそれぞれが順に巻き掛けられ、連動して回転する、一対の第一スプロケット、一対の第二スプロケット、一対の第三スプロケット、及び、一対の第四スプロケットを有し、
前記第一スプロケットは前記第二スプロケットと同じ高さにあり、前記無端チェーンを上から下に回転させ、前記第二スプロケットに向けて前記無端チェーンを水平に移動させると共に、
前記第二スプロケットは前記第一スプロケットから送られた前記無端チェーンを下から上に回転させるものであり、
前記第三スプロケットは、その下端が前記第二スプロケットの上端と同じ高さにあり、前記第二スプロケットとの間で前記無端チェーンを水平に移動させると共に、前記無端チェーンを下から上に回転させるものであり、
前記第四スプロケットは、前記第一スプロケットの上方にあり、前記第三スプロケットから送り出された前記無端チェーンを上昇させてから、上から下に回転させて前記第一スプロケットに送るものであり、
前記プレートは、
前記第二スプロケットから前記第三スプロケットに向かって移動する間は、上レールに支持されることにより水平となった状態で被乾燥物を載置する上搬送面を形成し、
前記第三スプロケットから前記第四スプロケットに向けて送り出される際に、自重により前記支軸周りに下方向へ回転し、前記支軸から吊り下がった状態で上昇してから、前記第四スプロケットを周回して前記第一スプロケットに送られ、
前記第一スプロケットから前記第二スプロケットに向けて送り出される際に、下レールまで案内されつつ前記支軸周りに上方向に回転し、
前記第二スプロケットに向かって移動する間は、前記下レールに支持されることにより水平となった状態で被乾燥物を載置する下搬送面を形成し、
前記第二スプロケットによって前記無端チェーンが下から上に回転させられる際に、自重により前記支軸周りに下方向へ回転し、前記第二スプロケットを周回しながら前記上レールまで案内されつつ前記支軸周りに上方向に回転する」ものである。
【0010】
「被乾燥物」は、乾燥させる過程で落下させることに問題がないものであり、畜糞、堆肥、汚泥、食品残渣を例示することができる。
【0011】
特許文献1の装置では、一対の無端チェーンそれぞれが巻き掛けられていたスプロケットが、第一スプロケットと第二スプロケットのみであったのに対し、本構成では更に第三スプロケットと第四スプロケットにも無端チェーンが巻き掛けられて周回する。第三スプロケットの下端は第二スプロケットの上端と高さが等しく、第四スプロケットは第一スプロケットの上方にある。そのため、第三スプロケットから第四スプロケットに向けて送り出される際に、支軸周りに下方向に回転したプレートは、支軸から吊り下がった状態で第四スプロケットに向かって上昇する。このように、プレートが第四スプロケットを周回する前に、吊り下がった状態のまま上昇させる段階があるため、その間にプレートに付着している被乾燥物が落下しやすいものとなる。
【0012】
本発明にかかる搬送式乾燥装置は、上記構成に加え、
「前記支軸から吊り下がった状態で前記第三スプロケットから前記第四スプロケットに向かって上昇している前記プレートに対面して回転する、長棒状の回転シャフト、及び、該回転シャフトから、その回転軸に直交する方向に延びている複数の掻き取りロッド、を有する掻き取り装置を更に具備する」ものである。
【0013】
本構成の搬送式乾燥装置は、回転シャフトと複数の掻き取りロッドを有する掻き取り装置を備えている。回転シャフトは、支軸から吊り下がった状態で第三スプロケットから第四スプロケットに向かって上昇しているプレート(以下、「上昇中のプレート」と称することがある)と対面して回転する。そして、回転シャフトからは、回転軸に直交する方向に複数の掻き取りロッドが延びている。従って、回転シャフトと共に複数の掻き取りロッドが回転することにより、上昇中のプレートに被乾燥物が付着していたとしても、掻き取りロッドによって被乾燥物を掻き落とすことができる。
【0014】
本発明にかかる搬送式乾燥装置は、上記構成に加え、
前記第三スプロケットの回転が、該第三スプロケットに従動して回転する従動回転体の複数を介して前記回転シャフトに伝達されることによって、前記回転シャフトは、前記第三スプロケットに従動して回転するが前記回転シャフトの回転方向は前記第三スプロケットの回転方向とは反対方向であることにより、前記第三スプロケットを経て上昇する前記プレートに対して、前記掻き取りロッドが上から下に向かって回転する」ものである。
【0015】
回転シャフトは、第三スプロケットに従動して回転するため、無端チェーンの回転を駆動する機構によって回転シャフトを回転させることができる。そのため、掻き取りロッドを回転させるための専用の動力を、付加的に必要としない利点を有している。
【0016】
ここで、回転シャフトを「第三スプロケットに従動して回転」させる構成としては、回転シャフトを、第三スプロケットの回転が伝達される従動回転体と一体回転させる構成を例示することができる。この場合の、従動回転体としては、第三スプロケットの回転がチェーンまたはベルトで伝達されるスプロケットまたはプーリや、第三スプロケットと一体回転する歯車と噛み合う歯車、を例示することができる。
【0017】
また、回転シャフトを「第三スプロケットに従動して回転」させる構成として、第三スプロケットの回転が、複数の従動回転体を介して回転シャフトに伝達される構成とすることもできる。この場合、複数の従動回転体は、複数の歯車の組み合わせ、複数のスプロケットまたはプーリの組み合わせ、或いは、歯車とスプロケットまたはプーリの組み合わせとすることができる。このように、複数の従動回転体を介して第三スプロケットの回転を回転シャフトに伝達することにより、第三スプロケットと回転シャフトとの位置関係、回転シャフトの回転方向、回転シャフトの回転速度を、変化させることができる。
【0018】
次に、本発明にかかる搬送式乾燥方法は、
「上記に記載の搬送式乾燥装置を使用して行う搬送式乾燥方法であり、
前記上搬送面を形成している複数の前記プレート上に被乾燥物を供給し、
前記プレートが前記第三スプロケットから前記第四スプロケットに向けて送り出される際に、前記支軸周りに下方向に回転する前記プレートから被乾燥物を落下させることにより、前記下搬送面を形成している複数の前記プレート上に被乾燥物を載置し、
前記プレートを、前記支軸から吊り下がった状態で前記第四スプロケットに向かって上昇させることにより、未だ落下していない被乾燥物を落下させると共に、
前記支軸から吊り下がった状態で前記第四スプロケットに向かって上昇している前記プレートに付着している被乾燥物を、前記回転シャフトの回転に伴い回転する前記掻き取りロッドで掻き落とす」ものである。
【0019】
これは、掻き取り装置を備える場合の搬送式乾燥装置を使用して行う搬送式乾燥方法である。プレートを吊り下げ状態で上昇させる段階を設けることにより、被乾燥物が付着していたとしてもプレートから落ちやすくしているのに加え、付着している被乾燥物を掻き取りロッドの回転により掻き落とすため、下搬送面を形成しているプレート上に、被乾燥物をより確実に落下させることができる。これにより、未乾燥のまま装置の設置面に落下してしまう被乾燥物を低減することができるため、上搬送面に供給された被乾燥物のほぼ全量に対して乾燥処理を行い、下搬送面から落下させて回収することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、被乾燥物を搬送しながら乾燥させる搬送式乾燥装置であって、乾燥処理を十分に行うことができると共に、回収できない被乾燥物を低減することができる搬送式乾燥装置、及び、該搬送式乾燥装置を使用して行う搬送式乾燥方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態である搬送式乾燥装置の構成図である。
図2図1の搬送式乾燥装置の要部拡大図である。
図3図1の搬送式乾燥装置の要部斜視図である。
図4図3におけるA範囲の拡大図である。
図5】(a),(b)図1の搬送式乾燥装置における掻き取り装置の動作の説明図である。
図6】(a)図1の搬送式乾燥装置における掻き取り装置の斜視図であり、(b)変形例の掻き取り装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態である搬送式乾燥装置1について、図面を用いて説明する。ここでは、鶏舎から日々大量に排出される鶏糞を搬送しながら乾燥させる搬送式乾燥装置に、本発明を適用した場合を例示する。
【0023】
本実施形態の搬送式乾燥装置1は、水分を含有する鶏糞を被乾燥物として搬送する。搬送式乾燥装置1が設置されている空間には、通風装置によって空気が供給される。被乾燥物は搬送されながら、空気の流通によって乾燥される。例えば、搬送式乾燥装置1は、多段のケージで多数羽のトリを飼育する大型の鶏舎に隣接する建物内に配置される。鶏舎内でトリの体温で温められた空気が、排気ファンによって鶏舎から排出されると同時に、搬送式乾燥装置1が設置されている空間に供給される。
【0024】
搬送式乾燥装置1は、一対の無端チェーンと、一対の無端チェーンそれぞれが巻き掛けられている複数対のスプロケットと、一対の無端チェーンの周回に伴い移動する多数のプレート30とを備えている。
【0025】
搬送式乾燥装置1は、複数対のスプロケットとして、一対の第一スプロケット11と、一対の第二スプロケット12と、一対の第三スプロケット13と、一対の第四スプロケット14とを備えている。搬送式乾燥装置1のケーシングは、二対の側壁を有しており、そのうちの一対の対向する側壁90には、第一スプロケット11、第二スプロケット12、第三スプロケット13、及び、第四スプロケット14が、それぞれ対をなす相手と向かい合うように同一の高さで、回転自在に軸支されている。
【0026】
第一スプロケット11と第二スプロケット12は、同一径で歯ピッチが同一であり、同一の高さにある。第三スプロケット13は、第一スプロケット11及び第二スプロケット12と歯ピッチは同一であるが、小径である。第三スプロケット13は、第一スプロケット11と第二スプロケット12との間において、第一スプロケット11に近い位置に設置されている。第三スプロケット13の下端の高さは、第一スプロケット11及び第二スプロケット12の上端の高さと等しい。
【0027】
第四スプロケット14は、第一スプロケット11及び第二スプロケット12と同一径で歯ピッチが同一である。第四スプロケット14は、第一スプロケット11の上方にあるが、第一スプロケット11の真上よりは少し第三スプロケット13に近い。第四スプロケット14における第三スプロケット13側の端部を鉛直方向に延長した線は、第三スプロケット13において第四スプロケット14側の端部を鉛直方向に延長した線と略一致している。
【0028】
無端チェーンは、このように配置された複数種類のスプロケットに、第一スプロケット11、第二スプロケット12、第三スプロケット13、第四スプロケット14の順で巻き掛けられている。無端チェーンは、第一スプロケット11に沿って上から下に回転し、第二スプロケット12に沿って下から上に回転し、第三スプロケット13に沿って下から上に回転し、第四スプロケット14に沿って上から下に回転する。
【0029】
ケーシングの天面91には、一対の第四スプロケット14の回転軸14aを回転駆動するモータ95が設置されている。モータ95の出力軸と一体回転するスプロケット95pと、第四スプロケット14の回転軸14aと一体回転するスプロケット14pに、無端チェーン72が巻き掛けられている。これにより、モータ95の駆動により第四スプロケット14の回転軸14aが回転する。また、図示を省略しているが、第四スプロケット14の回転を駆動する上記の機構と同一の機構が第二スプロケット12にも設けられており、双方の回転が同期させてある。従って、双方の回転駆動機構を動作させると、第二スプロケット12と第四スプロケット14は同一方向に同速度で回転し、これに伴い、一対の無端チェーンは、第三スプロケット13及び第一スプロケット11を回転させながら周回する。
【0030】
無端チェーンは、平行な二枚のリンクプレート22からなるリンク対が、連結ピン23によって回転可能に多数連結されたものである。連結ピン23は、二枚のリンクプレート22間でフリーローラ25を挿通しており、フリーローラ25は連結ピン23周りに自由回転する。また、一対の無端チェーンのそれぞれにおいて、一定の間隔で連結ピン23は内側のリンクプレート22を超えて延出している。複数のプレート30は、一対の無端チェーンの間に位置した状態で、無端チェーンのそれぞれから内側に向かって延出している連結ピン23によって、両側から回転自在に連結されている。従って、連結ピン23のうち、一定間隔でプレート30を連結している連結ピン23の軸心が、本発明の支軸21に相当する。
【0031】
各プレート30は、長方形の平板で多数の小孔部(図示を省略)が穿設されているプレート本体31と、プレート本体31における幅方向の一対の辺から一方向に直角に延出した側面部32とを有している。支軸21を軸心とする上述の連結ピン23は、この側面部32を挿通した上で留め付けられている。側面部32には、支軸21と離れた位置で、ガイドローラ40が回転軸42によって回転自在に取り付けられている。プレート30に取り付けられたガイドローラ40と、無端チェーンに組み込まれたフリーローラ25は、共にレール上を転動する。
【0032】
レールには、第二スプロケット12から第三スプロケット13に向かってプレート30が移動する際に、ガイドローラ40及びフリーローラ25の転動を案内する一対の上レール81と、第一スプロケット11から第二スプロケット12に向かってプレート30が移動する際に、ガイドローラ40及びフリーローラ25の転動を案内する一対の下レール82とがある。上レール81及び下レール82は、ケーシングの一対の側壁90に、それぞれ水平方向に延びるように取り付けられている。
【0033】
上レール81は、第二スプロケット12の上端及び第三スプロケット13の下端よりやや低い高さで、第二スプロケット12の上端近傍から、第三スプロケット13の下端の近傍まで延びている。下レール82は、第一スプロケット11及び第二スプロケット12の下端よりやや低い高さで、第一スプロケット11の下端近傍から第二スプロケット12に向かって延びている。下レール82の端部と第二スプロケット12との間には、一枚のプレート30の進行方向の長さ以上の空隙が設けられている。
【0034】
なお、第一スプロケット11の径方向における外方には、第一スプロケット11から僅かに離隔して、第一スプロケット11の外周に沿って円弧状に湾曲している案内面83が設けられており、案内面83の下端は下レール82に達している。案内面83は、円弧の径が第一スプロケット11の径よりやや大きく設定されている。また、第二スプロケット12の径方向における内方には、第二スプロケット12から僅かに離隔して、円弧状の案内面84が設けられている。案内面84は、円弧の径が第二スプロケット12の径よりやや小さく設定されている。そして、案内面84の上端は、上レール81に達している。
【0035】
更に、第三スプロケット13における第四スプロケット14側の端部より少し下方から、第四スプロケット14における第三スプロケット13側の端部より少し下方まで、案内面85が鉛直に設けられている。これは、第三スプロケット13から送り出され、第四スプロケット14に向かって吊り下げ状態で上昇するプレート30のローラ40を沿わせる面である。
【0036】
本実施形態の搬送式乾燥装置1は、上記の構成に加え、掻き取り装置50を備えている。掻き取り装置50は、第三スプロケット13に従動して回転する回転シャフト50aと、複数の掻き取りロッド51を有している。回転シャフト50aは長棒状で、その両端は一対の側壁90それぞれに回転自在に取り付けられている。回転シャフト50aの両端は側壁90をそれぞれ貫通しており、それぞれの端部に同軸で一体回転する第一従動回転体が設けられている。一方、第三スプロケット13の回転軸13aの両端も、それぞれ側壁90を貫通しており、それぞれの端部に同軸で一体回転するスプロケット13pが設けられている。側壁90のそれぞれにおいて、スプロケット13pと第一従動回転体との間には、第二従動回転体が回転自在に側壁90に取り付けられている。そして、回転軸13aの回転が第二従動回転体を介して第一従動回転体に伝達される。ここでは、第二従動回転体が、同軸で一体回転するスプロケット60pと平歯車60gとからなり、平歯車60gと噛み合う平歯車50gが第一従動回転体である場合を例示している。そして、スプロケット60pとスプロケット13pとに無端チェーン71が巻き掛けられている。
【0037】
このような構成により、第三スプロケット13の回転軸13aが回転すると、回転軸13aと一体回転するスプロケット13pの回転が無端チェーン71を介してスプロケット60pに伝達される。これにより、スプロケット60pと一体回転する平歯車60gが、回転軸13aと同一方向に回転し、平歯車60gと噛み合う平歯車50gが反対方向に回転する。その結果、平歯車50gと一体回転する回転シャフト50aが回転軸13aと反対方向に回転する。また、スプロケット60pの径がスプロケット13pの径より小さく、平歯車50gの歯数が平歯車60gの歯数より少なく設定されていることにより、回転シャフト50aの回転速度が第三スプロケット13の回転速度より増速されている。このように、回転軸13aの回転を複数の従動回転体を介して回転シャフト50aに伝達することにより、回転軸13aと回転シャフト50aとの位置関係、回転シャフト50aの回転方向、及び、回転シャフト50aの回転速度を、調整することができる。回転シャフト50aの位置は、第三スプロケット13の上方で、案内面85と対面するように設定される。
【0038】
回転シャフト50aには、その回転軸に直交する方向に、複数の掻き取りロッド51が取り付けられている。掻き取りロッド51の長さは、回転シャフト50aの回転によって掻き取りロッド51の先端が最も案内面85に近づいたときに、案内面85との間の距離がプレート30の厚さより僅かに大きくなるように設定されている。
【0039】
なお、第三スプロケット13の下方の空間には、ケーシングの側壁90に取り付けられた支持バー(図示しない)によって衝突板88が支持されている。衝突板88の位置は、第三スプロケット13から第四スプロケット14に向かって送り出されるプレート30のガイドローラ40が、上レール81の端部から外れた時点における支軸21の真下に設定されている。
【0040】
上記構成により、本実施形態の搬送式乾燥装置1では、複数のプレート30によって搬送面が形成される。それぞれのプレート30は、支軸21によって無端チェーンに連結されているため、第一スプロケット11~第四スプロケット14に巻き掛けられて周回する無端チェーンの移動に伴い移動する。第一スプロケット11及び第二スプロケット12の下端は同じ高さであり、第三スプロケット13の下端は第二スプロケット12の上端と同じ高さである。そのため、第一スプロケット11において上から下に回転した無端チェーンは、第二スプロケット12の下端に向かって水平方向に移動(「下移動」と称する)し、第二スプロケット12において下から上に回転してから第三スプロケット13に向かって水平に移動する(「上移動」と称する)。
【0041】
各プレート30の両側面部32に、回転軸42周りに回転自在に取り付けられているガイドローラ40は、プレート30の上移動に伴い上レール81の上を転動し、プレート30の下移動に伴い下レール82の上を転動する。上レール81及び下レール82の高さは、無端チェーンに連結された支軸21の高さとの関係で、レール上をガイドローラ40が転動している間はプレート30が水平となるように設定される。本実施形態では、無端チェーンのフリーローラ25も上レール81及び下レール82上を転動する。
【0042】
また、上移動する無端チェーンにプレート30を連結している支軸21は、ガイドローラ40の回転軸42より前方にある。これにより、上移動する無端チェーンに牽引されてプレート30は移動する。そして、上レール81に沿って水平に移動している複数のプレート30によって上搬送面S1が形成される。上搬送面S1に、コンベアベルトやホッパーのような供給装置で被乾燥物を供給することにより、上搬送面S1上に被乾燥物を載置し搬送させることができる。
【0043】
上移動しているプレート30が第三スプロケット13に達すると、下から上に無端チェーンを回転させる第三スプロケット13によって、プレートの進行方向が上方向に変更され、第四スプロケット14に向かって送り出される。ガイドローラ40が上レール81の端部から外れると、プレート30は自重によって支軸21周りに下方向に回転する。プレート30の回転により、それまで載置されていた被乾燥物は落下する。プレート30が下方向に回転する際に、衝突板88に衝突するため、プレート30に付着していた被乾燥物を衝撃によって払い落とすことができる。
【0044】
支軸21から吊り下がった状態で無端チェーンに支持されたプレート30は、第四スプロケット14に向かって上昇する。その際、ローラ40が案内面85に当接することにより、プレート30の鉛直方向への上昇が案内される。このように、プレート30が吊り下がった状態で鉛直方向に上昇する段階があることにより、被乾燥物がプレート30に付着していたとしても、この段階で落下しやすい。
【0045】
案内面85には回転シャフト50aが対面しているため、上昇中のプレート30において上搬送面S1を形成していた面が回転シャフト50aと対面する。そのため、被乾燥物がプレート30に付着していたとしても、回転シャフト50aの回転に伴って回転する掻き取りロッド51によって、被乾燥物が掻き落とされる。特に、回転シャフト50aの回転方向は、第三スプロケット13の回転方向と反対であるため、上昇するプレート30に対して掻き取りロッド51が下方向に回転する。これにより、プレート30に付着していた被乾燥物を、掻き取りロッド51との干渉によって、より確実に落下させることができる。
【0046】
その後、プレート30は第四スプロケット14を周回し、更に第一スプロケット11に向かって送られる。そして、第一スプロケット11において上から下に回転する無端チェーンと共に移動し、第一スプロケット11から第二スプロケット12に向かって送り出される。その際、円弧状に湾曲している案内面83にガイドローラ40が案内されることにより、プレート30は徐々に支軸21周りに上方向に回転する。ガイドローラ40が下レール82に達すると、ガイドローラ40を下レール82上で転動させながら、プレート30は水平な状態で移動する。このとき、上搬送面S1を形成していた面と同一の面が、上方を向いて下搬送面S2を形成する。上述したように、プレート30が第三スプロケット13に達し第四スプロケット14に送られる段階で落下した被乾燥物は、下搬送面S2に載置され搬送される。なお、無端チェーンが下移動する際、支軸21は回転軸42より後方あるため、プレート30は無端チェーンによって押されるように移動する。
【0047】
プレート30が第二スプロケット12に近づき、ガイドローラ40が下レール82の端部から外れると、プレート30は自重によって支軸21周りに回転する。このプレート30の回転により、被乾燥物は落下する。支軸21から吊り下がった状態のプレート30は、第二スプロケット12において下から上に回転する無端チェーンと共に上方に移動する。その際、ガイドローラ40は、円弧状の案内面84に案内され、プレート30は徐々に支軸21周りに上方向に回転する。ガイドローラ40が上レール81に達し、ガイドローラ40を上レール81上で転動させながらプレート30が第三スプロケット13に向かって移動すると、プレート30は再び水平となって上搬送面S1が形成される。上搬送面S1には被乾燥物が供給され、以降は上記の動作が繰り返される。
【0048】
このように、搬送式乾燥装置1では、無端チェーンの周回に伴い移動する複数のプレート30によって形成される上搬送面S1と下搬送面S2で、被乾燥物を搬送しながら乾燥する。プレート本体31には多数の小孔部が穿設されているため、プレート30、及びプレート30に載置された被乾燥物を通過するように空気が流通する。これにより、搬送される被乾燥物を効率良く乾燥することができる。
【0049】
そして、無端チェーンの上移動の初期段階で上搬送面S1に供給された被乾燥物を、上移動の終期で下搬送面S2に落下させ、更に下移動の終期で装置外に落下させることにより、被乾燥物の供給、搬送と乾燥、排出を、連続的に行うことができる。
【0050】
なお、下移動の終期でプレート30から落下した乾燥済みの被乾燥物は、スクリューコンベアや移動式スクレーパのような搬出装置により、系外に排出される。或いは、同一構成の搬送式乾燥装置1の複数を積層し、上段の搬送式乾燥装置1から排出された被乾燥物を下段の搬送式乾燥装置1に供給し、更に搬送しながら乾燥させることもできる。
【0051】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、掻き取りロッド51がニードル状である掻き取り装置50を例示したが、図6(b)に示すように、先端がブレードとなった掻き取りロッド55を混在させた掻き取り装置50Bとすることができる。また、掻き取りロッド55のみを有する掻き取り装置とすることもできる。
【0053】
また、上記の実施形態では、回転シャフト50aが第三スプロケット13に従動して回転する場合を例示したが、回転シャフト50aの回転を駆動する専用の回転駆動機構を設けてもよい。この場合、回転シャフト50aの回転は、第一スプロケット11~第四スプロケット14の回転と同期させることを要しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6