(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】茶葉農地用遮光装置
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20241028BHJP
A01G 22/00 20180101ALI20241028BHJP
【FI】
A01G13/02 F
A01G22/00
(21)【出願番号】P 2023133626
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2023-12-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504126927
【氏名又は名称】株式会社 流通サービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 吉明
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-37146(JP,A)
【文献】特開2022-69022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/02
A01G 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摘採前の所定期間に遮光を必要とする茶葉の育成のための茶葉農地上に設置された架台
と、
前記架台によって支持される太陽光パネルであって、前記茶葉に対して太陽光を照射するための太陽光照射用隙間を空けて配置された太陽光パネルと、
前記太陽光パネルの下方で前記架台によって支持されると共に、太陽光を前記茶葉に照射する開放位置及び太陽光から茶葉を遮光する閉塞位置に位置するように動作する遮光カーテンと、
前記遮光カーテンが前記開放位置及び前記閉塞位置に位置するように前記遮光カーテンを駆動する駆動源と、
を備え、
前記遮光カーテンが開放位置に位置している状態
で、前記架台における前記太陽光照射用隙間の面積と前記架台に設置されている前記太陽光パネルの設置面積との合計面積に対する、前記太陽光パネルの設置面積の比率として表される遮光率が40%以上で60%以下となるように前記架台によって支持される前記太陽光パネルの設置面積及び/又は設置数が調整されており、
前記駆動源が正方向に駆動することにより前記遮光カーテンが前記閉塞位置に位置するように閉動作され、前記駆動源が逆方向に駆動することにより前記遮光カーテンが前記開放位置に位置するように開動作される、
茶葉農地用遮光装置。
【請求項2】
前記遮光カーテンは、上層の第1の遮光カーテンと、下層の第2の遮光カーテンとを含ん
でいる、
請求項1に記載の茶葉農地用遮光装置。
【請求項3】
茶葉摘採時期よりも前の所定の第1の時期に前記第1の遮光カーテン及び前記第2の遮光カーテンのうちのいずれか一方の遮光カーテンを閉塞位置に位置させて、前記太陽光パネルと前記一方の遮光カーテンによる太陽光の遮光率を70%以上で80%以下の範囲の遮光率に調整し、前記第1の時期から第1所定期間後の第2の時期に前記第1の遮光カーテン及び前記第2の遮光カーテンのうちの他方のカーテンを更に閉塞位置に位置させて前記茶葉摘採時期までの第2所定期間の間に前記太陽光パネル並びに前記第1及び第2の遮光カーテンによる太陽光の遮光率を90%又は略90%の遮光率に調整する、
請求項2に記載の茶葉農地用遮光装置。
【請求項4】
前記第1の時期は、前記茶葉摘採時期よりも1カ月前又は略1カ月前の日時であり、前記
第1所定期間は、2週間又は略2週間の期間である、
請求項3に記載の茶葉農地用遮光装置。
【請求項5】
前記太陽光パネルの設置高さは、2m以上で4m以下の範囲内に設定されている、
請求項1に記載の茶葉農地用遮光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉農地用遮光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
玉露は、摘採前の所定期間遮光(被覆)して育成された茶葉を蒸熱、揉捻、乾燥させて製造したお茶である。茶葉の新芽が出たときに、日光を遮ることで光合成が抑制され渋みや苦み成分が抑制され、うまみ成分が増大する。
【0003】
茶は、多年生植物であり、通年にわたり霜、干ばつ等の被害から守る必要がある。例えば春先に伸び始めた新芽が霜で凍り付いてしまうと芽が枯れてしまうことがある。また夏季の異常高温、少雨等の影響で、干ばつが発生すると枝枯れ等が発生することがある。
【0004】
このため従来より茶葉農地に防霜ファンを設けて地表面に高所から暖かい空気を吹き下ろしたり、育苗中の苗に、保温資材をかけるなどして霜の発生を抑制する対策がとられている(従来の凍霜害対策)。また茶葉農地にスプリンクラーを設けてかん水を行い土壌の乾燥を防止したり、農地上に敷わら、マルチ等を施し土壌表面からの蒸散や地温上昇を防止することで干ばつを抑制する対策がとられている(従来の干ばつ対策)。
【0005】
特許文献1(実公平3-15006号公報)には、温室の天井面に多数の支持ワイヤを張設し、これら多数の支持ワイヤによって遮光カーテンを支持し、モータを駆動源としてラック・ピニオン機構で遮光カーテンを開閉するという発明が記載されている。
【0006】
特許文献2(特開2006-325401号公報)には、温室内の天井の上下それぞれに駆動ワイヤの第1走行部、第2走行部を設け、1つの駆動部で駆動ワイヤの第1走行部、第2走行部を駆動して上下2層のカーテン部材の開閉を制御するという発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公平3-15006号公報
【文献】特開2006-325401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の凍霜害対策、干ばつ対策と比較して、人手による手間をかけることなく確実に霜、干ばつの被害を抑制しつつ、抹茶用の碾茶、玉露等の遮光を必要とする茶葉を育成できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、摘採前の所定期間に遮光を必要とする茶葉の育成のための茶葉農地上に設置された架台と、前記架台によって支持される遮光部材であって、前記茶葉に対して太陽光を照射するための太陽光照射用隙間を空けて配置された遮光部材と、前記遮光部材の下方で前記架台によって支持されると共に、開指令に応じて太陽光を前記茶葉に照射する開放位置及び閉指令に応じて太陽光から茶葉を遮光する閉塞位置に位置するように動作する遮光カーテンと、を備え、前記遮光部材による太陽光の遮光率が40%以上で60%以下となるように前記遮光部材の設置面積及び/又は設置数が調整されている、茶葉農地用遮光装置である。
【0010】
第2の態様は、第1の態様において、前記遮光部材は、太陽光パネルである、茶葉農地用遮光装置である。
【0011】
第3の態様は、第1の態様において、前記遮光カーテンは、上層の第1の遮光カーテンと、下層の第2の遮光カーテンとを含んでいる、茶葉農地用遮光装置である。
【0012】
第4の態様は、第3の態様において、茶葉摘採時期よりも前の所定の第1の時期に前記第1の遮光カーテン及び前記第2の遮光カーテンのうちのいずれか一方の遮光カーテンを閉塞位置に位置させて、前記遮光部材と前記一方の遮光カーテンによる太陽光の遮光率を70%以上で80%以下の範囲の遮光率に調整し、前記第1の時期から第1所定期間後の第2の時期に前記第1の遮光カーテン及び前記第2の遮光カーテンのうちの他方のカーテンを更に閉塞位置に位置させて前記茶葉摘採時期までの第2所定期間の間に前記遮光部材並びに前記第1及び第2の遮光カーテンによる太陽光の遮光率を90%又は略90%の遮光率に調整する、茶葉農地用遮光装置である。
【0013】
第5の態様は、第4の態様において、前記第1の時期は、前記茶葉摘採時期よりも1カ月前又は略1カ月前の日時であり、前記第1所定期間は、2週間又は略2週間の期間である、茶葉農地用遮光装置である。
【0014】
第6の態様は、第2の態様において、前記太陽光パネルの設置高さは、2m以上で4m以下の範囲内に設定されている、茶葉農地用遮光装置である。
【発明の効果】
【0015】
第1から第6の態様によれば、従来の凍霜害対策、干ばつ対策と比較して、人手による手間をかけることなく確実に霜、干ばつの被害を抑制しつつ、抹茶用の碾茶、玉露等の遮光を必要とする茶葉を育成することができる。
【0016】
第1の態様によれば、遮光部材の設置面積及び/又は設置数を調整して、遮光部材による太陽光の遮光率を40%以上で60%以下の範囲としたので、光合成に必要な光を十分に確保しつつ、通年にわたり霜の発生が防止されると共に干ばつの発生が防止される。すなわち架台の太陽光照射用隙間を介して光合成に必要な光が十分に確保されるため、茶の育成不良や枝葉の枯れが発生することなく、茶葉を育成することができる。また架台の遮光部材によって放射冷却が抑制されるため霜の発生が防止される。また架台の遮光部材によって日射、地熱上昇、水分蒸散が抑制されるため干ばつの発生が防止される。また茶葉の摘採前の所定の時期から遮光カーテンを閉位置に動作させることで、摘採前の所定期間に遮光を必要とする茶葉を育成することができる。
【0017】
第2の態様によれば、架台の遮光部材を太陽光パネルとしたため、太陽光パネルを構成する発電体によって発電が行われ、茶葉農地に設けられた設備等に電力を供給することが可能となる。
【0018】
第3の態様によれば、架台により支持される遮光カーテンを、上層の第1の遮光カーテンと、下層の第2の遮光カーテンで構成したため、2段階の異なる遮光率で茶葉の被覆が行うことができ旨み成分が増加するなど茶の品質を向上させることができる。
【0019】
第4の態様によれば、最初の第1所定期間の遮光率を70%以上で80%以下の範囲とし次の第2所定期間の遮光率を90%又は略90%に調整するようにしたため、旨み成分が増加するなど茶の品質を向上させることができる。
【0020】
第5の態様によれば、茶葉摘採時期よりも1カ月前又は略1カ月前に70%以上で80%以下の範囲の遮光率で遮光を開始し、2週間又は略2週間の期間を経て、90%又は略90%の範囲の遮光率で摘採するまでの間遮光するようにしため、旨み成分が増加するなど茶の品質を向上させることができる。
【0021】
第6の態様によれば、架台の太陽光の設置高さを、2m以上で4m以下の範囲内に設定したため、太陽光パネルの設置限界高さ以下でありながら架台の太陽光照射用隙間を介して茶葉農地面に太陽光を均一に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】
図1Aは、実施形態の茶葉農地用遮光装置の上面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態の茶葉農地用遮光装置の正面図であって遮光カーテンが遮光位置に位置している状態を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、実施形態の茶葉農地用遮光装置の正面図であって遮光カーテンが開放位置に位置している状態を示す図である。
【
図1D】
図1Dは、実施形態の太陽光パネルを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、遮光カーテンの駆動機構の一例を示す図で、
図1Bを部分的に拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、第1の遮光カーテン及び第2の遮光カーテンの開閉制御のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明に係る茶葉農地用遮光装置の実施形態について説明する。
【0024】
図1Aは、実施形態の茶葉農地用遮光装置100の上面図である。
【0025】
図1B、
図1Cは、実施形態の茶葉農地用遮光装置100の正面図であり、
図1Aを矢視Aからみた図である。
図1Bは、遮光カーテンが閉塞位置に位置している状態を示す図である。
図1Cは、遮光カーテンが開放位置に位置している状態を示す図である。
【0026】
図1Dは、実施形態の太陽光パネルを示す斜視図である。
【0027】
図2は、遮光カーテンの駆動機構の一例を示す図で、
図1Bを部分的に拡大して示す図である。
【0028】
図1A、
図1B、
図1Cに示すように、茶葉農地用遮光装置100は、大きくは、架台110と、遮光部材120と、遮光カーテン130を備えている。
【0029】
架台110は、摘採前の所定期間に遮光を必要とする茶葉210の育成のための茶葉農地200上に設置されている。茶葉農地200では、茶葉210が育成される。茶葉210は、例えば抹茶用の碾茶、玉露である。
【0030】
遮光部材120は、架台110によって支持されている。遮光部材120は、茶葉農地200上の茶葉210に対して太陽光を照射するための太陽光照射用隙間130Aを空けて配置されている。
【0031】
遮光部材120は、例えば太陽光パネルである。
図1Dに示すように、太陽光パネル120は、アルミニウム等で構成された枠体120FLを備えている。枠体120FL内によって光電セル等で構成された発電体121が外側から支持されている。太陽光パネル120を構成する発電体121は、農地200に配置された図示しないセンサ又はモジュール又は設備に電気的に接続されている。これら農地200に配置されたセンサ又はモジュール又は設備は、太陽光パネル120を構成する発電体121によって発電される電力が供給されることによって電気的に作動される。
【0032】
個々の太陽光パネル120と個々の太陽光照射用隙間130Aは、同じ大きさ(同じ面積)で構成することができる。また個々の太陽光パネル120と個々の太陽光照射用隙間130Aは、異なる大きさ(異なる面積)で構成することもできる。
【0033】
図1A、
図1B、
図1Cに示すように、太陽光パネル120は、架台110によって支持されている。例えば一つの架台110に、例えば20個の太陽光パネル120を支持している。ここで太陽光パネル120の設置限界高さ以下でありながら架台110の太陽光照射用隙間130Aを介して茶葉農地面200Aに太陽光を均一に照射するために、太陽光パネル120の設置高さHは、2m以上で4m以下の範囲内に設定されている。
【0034】
図1Aにおいて紙面の左右方向を架台110の左右方向110Aとし、紙面の上下方向を架台110の前後方向110Bとする。
図1Aに示すように、架台110の左右方向110Aに沿って、太陽光パネル120が、太陽光照射用隙間130Aを空けて、等間隔に配列されている。また架台110の前後方向110Bに沿って、太陽光パネル120が、太陽光照射用隙間130Aを空けて、等間隔に配列されている。
【0035】
架台110には、同面積の太陽光パネル120が、20個配置され、太陽光パネル120と同面積の太陽光照射用隙間130Aが20箇所空けられている。このため遮光部材としての太陽光パネル120によって農地200上の茶葉210に照射されるべき太陽光が50%だけ遮光される。すなわち遮光部材としての太陽光パネル120によって遮光率50%となるように、太陽光パネル120の設置面積及び設置数が調整されている。
【0036】
ここで遮光率50%は一例であり、光合成に必要な光を十分に確保しつつ、通年にわたり霜の発生を防止すると共に干ばつの発生を防止するためには、遮光部材としての太陽光パネル120による太陽光の遮光率は、40%以上で60%以下の範囲になるように、その設置面積及び/又は設置数が調整されていればよい。
【0037】
図1B、
図1Cに示すように遮光カーテン130は、遮光部材としての太陽光パネル120の下方で架台110によって支持されている。
【0038】
遮光カーテン130は、上層の第1の遮光カーテン131と、下層の第2の遮光カーテン132を含んでいる。
【0039】
架台110の太陽光パネル120の下方には、第1の遮光カーテン131が設置されている。第1の遮光カーテン131は、あおり止め線133と棚線134の間に設置されている。第1の遮光カーテン131は、架台110の左支柱111と中央支柱112の間に配置されていると共に、中央支柱112と右支柱113の間に配置されている。
【0040】
架台110の太陽光パネル120の下方にあって、第1の遮光カーテン131の下方には、第2の遮光カーテン132が設置されている。第2の遮光カーテン132は、農地200上の茶葉210の上方に配置されている。第2の遮光カーテン132は、第1の遮光カーテン131と同様にあおり止め線133と棚線134の間に設置されている。第2の遮光カーテン132は、架台110の左支柱111と中央支柱112の間に配置されていると共に、中央支柱112と右支柱113の間に配置されている。
【0041】
以下
図2を参照して第1の遮光カーテン131及び第2の遮光カーテン132の駆動機構の構成について第1の遮光カーテン131を代表させて説明する。なお第2の遮光カーテン132も
図2と同様の駆動機構によって駆動される。
【0042】
図2に示すように第1の遮光カーテン131は、モータ140を駆動源としてラック・ピニオン機構150により開閉動作する。
【0043】
モータ140の出力軸141は、図示しない減速機構を介して架台110の前後方向110Bに掛け渡された駆動軸151に連結されている。ピニオンギヤ152は、駆動軸151が回転中心となるように駆動軸151に固定されている。ラック153は、架台110の左右方向110Aに移動可能に、ピニオンギヤ152に歯合している。
【0044】
ラック153は、第1の遮光カーテン131の端部131Aに連結している。
【0045】
このため閉指令に応じてモータ140を対応する正方向に駆動させてピニオンギヤ152を図中の右方向に回転させると、ラック153は図中の右方向に移動する。このため第1の遮光カーテン131の端部131Aは開放位置P0から閉塞位置P1に移動する。
【0046】
また閉指令に応じてモータ140を対応する逆方向に駆動させてピニオンギヤ152を図中の左方向に回転させると、ラック153は図中の左方向に移動する。このため第1の遮光カーテン131の端部131Aは閉塞位置P1から開放位置P0に移動する。
【0047】
第2の遮光カーテン132についても同様である。
【0048】
図1Bに示すように、第1の遮光カーテン131及び第2の遮光カーテン132はそれぞれ、閉指令に応じて太陽光から茶葉210を遮光する閉塞置P1に位置するように動作する。
【0049】
また
図1Cに示すように、第1の遮光カーテン131及び第2の遮光カーテン132はそれぞれ、開指令に応じて太陽光を茶葉210に照射する開放位置P0に位置するように動作する。
【0050】
以下第1の遮光カーテン131及び第2の遮光カーテン132の開閉制御について説明する。
【0051】
図3は、第1の遮光カーテン131及び第2の遮光カーテン132の開閉制御のタイミングチャートである。
【0052】
(第1工程)
【0053】
茶葉摘採時期T3よりも前の所定の第1の時期T1に達するまでの期間(~T1)は、第1の遮光カーテン131及び第2の遮光カーテン132はいずれも開放位置P0に位置している。すなわち、遮光部材としての太陽光パネル120によって農地200上の茶葉210に照射されるべき太陽光が50%だけ遮光された状態で、茶葉210が育成される。
【0054】
(第2工程)
【0055】
茶葉摘採時期T3よりも前の所定の第1の時期T1に、第1の遮光カーテン131が開放位置P0に位置されたままで第2の遮光カーテン132が閉塞位置P1に位置される。ここで、遮光部材としての太陽光パネル120と第2の遮光カーテン132による太陽光の遮光率は、70%以上で80%以下の範囲の遮光率に調整されている。第1の遮光カーテン131が開放位置P0に位置されたままで第2の遮光カーテン132が閉塞位置P1に位置された状態は、第1の時期T1から第1所定期間LT1後の第2の時期T2まで維持される。すなわち、遮光部材としての太陽光パネル120と第2の遮光カーテン132によって農地200上の茶葉210に照射されるべき太陽光が70%~80%だけ遮光された状態で、第1の時期T1から第1所定期間LT1後の第2の時期T2まで茶葉210が育成される。第1の時期T1は、茶葉摘採時期T3から1カ月前又は略1カ月前の日時であることが望ましい。第1所定期間LT1は、2週間又は略2週間の期間であることが望ましい。
【0056】
(第3工程)
【0057】
第1の時期T1から第1所定期間LT1後の第2の時期T2に、第2の遮光カーテン132が閉塞位置P1に位置されたままで更に第1の遮光カーテン131が開放位置P0から閉塞位置P1に位置される。ここで、遮光部材としての太陽光パネル120と第1の遮光カーテン131及び第2の遮光カーテン132による太陽光の遮光率は、90%又は略90%の遮光率に調整されている。第1の遮光カーテン131及び第2の遮光カーテン132がそれぞれ遮光位置131B、132Bに位置された状態は、第2の時期T2から第2所定期間LT2後の茶葉摘採時期T3まで維持される。すなわち、遮光部材としての太陽光パネル120と第1の遮光カーテン131及び第2の遮光カーテン132によって農地200上の茶葉210に照射されるべき太陽光が90%又は略90%だけ遮光された状態で、第2の時期T2から第2所定期間LT2後の茶葉摘採時期T3まで茶葉210が育成される。
【0058】
(第4工程)
【0059】
茶葉摘採時期T3に達すると、農地200上の茶葉210が摘採される。第1の遮光カーテン131及び第2の遮光カーテン132それぞれが閉塞位置P1から開放位置P0に位置される。
【0060】
以上のように、架台110により支持される遮光カーテン130を、上層の第1の遮光カーテン131と、下層の第2の遮光カーテン132で構成しているため、2段階の異なる遮光率で茶葉210を被覆することができ旨み成分が増加するなど茶の品質を向上させることができる。
【0061】
更に最初の第1所定期間LT1の遮光率を70%以上で80%以下の範囲とし次の第2所定期間LT2の遮光率を90%又は略90%に調整するようにしたため、旨み成分が一層増加するなど茶の品質を向上させることができる。
【0062】
また更に茶葉摘採時期T3よりも1カ月前又は略1カ月前に70%以上で80%以下の範囲の遮光率で遮光を開始し、2週間又は略2週間の期間を経て、90%又は略90%の遮光率で摘採するまでの間遮光するようにしため、更に一層旨み成分が増加するなど茶の品質を向上させることができる。
【0063】
なお、最初に第2の遮光カーテン132を閉塞位置P1に位置させ、つぎに第1の遮光カーテン131を閉塞位置P1に位置させているが、最初に第1の遮光カーテン131を閉塞位置P1に位置させ、つぎに第2の遮光カーテン132を閉塞位置P1に位置させてもよい。
【0064】
遮光部材120は、太陽光パネルに限定されることなく、太陽光を遮光できる部材であれば任意に適用することができる。
【0065】
実施形態の茶葉農地用遮光装置100は、特許請求の範囲に記載された範囲内で、構成要素の省略、追加、変更、置換等の変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 茶葉農地用遮光装置
110 架台
120 太陽光パネル
130 遮光カーテン
131 第1の遮光カーテン
132 第2の遮光カーテン
200 農地
210 茶葉
【要約】
【課題】従来の凍霜害対策、干ばつ対策と比較して、人手による手間をかけることなく確実に霜、干ばつの被害を抑制しつつ、抹茶用の碾茶、玉露等の遮光を必要とする茶葉を育成できるようにすることを課題とする。
【解決手段】摘採前の所定期間に遮光を必要とする茶葉の育成のための茶葉農地上に架台が設置される。架台によって支持され、茶葉に対して太陽光を照射するための太陽光照射用隙間を空けて遮光部材が配置される。遮光部材の下方で前記架台によって支持され、開指令に応じて太陽光を茶葉に照射する開放位置及び閉指令に応じて太陽光から茶葉を遮光する閉塞位置に位置するように動作する遮光カーテンが備えられる。遮光部材による太陽光の遮光率が40%以上で60%以下となるように遮光部材の設置面積及び/又は設置数が調整される。
【選択図】
図1B