(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】気化器および気化供給装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241028BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H01L21/302 104H
H01L21/304 645B
(21)【出願番号】P 2023505206
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2022003750
(87)【国際公開番号】W WO2022190711
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2021038960
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】徳田 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】平尾 圭志
(72)【発明者】
【氏名】皆見 幸男
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-042697(JP,U)
【文献】実開昭53-012612(JP,U)
【文献】特開2001-308070(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070464(WO,A1)
【文献】特開2002-110611(JP,A)
【文献】特開2004-063715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水を気化させてアッシング装置に供給するために用いられる気化器であって、
超純水を貯留する気化室と、
前記気化室に設けられ、前記気化室に貯留された
超純水と接し、熱源として作用する巻回部及び巻回部から立設され端部にヒータ端子を備えた立設部を含む底部ヒータと、
前記気化室に接続されたリリーフ弁と
、
前記気化室における超純水の液面レベルを測定するためのフロートセンサと、
前記気化室を閉じる蓋部材であって、超純水を気化室に供給するための入口および前記気化室からの超純水ガスを排出するための出口が設けられた蓋部材と
を備え
、
前記底部ヒータの立設部は、前記ヒータ端子を露出させるようにして前記蓋部材に固定されており、前記底部ヒータの巻回部は、前記気化室において、前記フロートセンサの液面下限位置よりも低い位置に設けられている、気化器。
【請求項2】
前記気化室の側面を前記気化室の外側から加熱する側面ヒータをさらに備える、請求項1に記載の気化器。
【請求項3】
前記気化室に送られる
超純水を予め加熱しておくためのヒータを有するプレタンクをさらに備える、請求項1または2に記載の気化器。
【請求項4】
前記気化室内に貯留された
超純水の動きを促進させるための攪拌装置または揺動装置をさらに備える、請求項
1から3のいずれかに記載の気化器。
【請求項5】
請求項
1から4のいずれかに記載の気化器と、
前記気化器の下流側に設けられた圧力式流量制御装置であって、絞り部と、前記絞り部の上流側に設けられたコントロール弁と、前記絞り部と前記コントロール弁との間の圧力を測定する上流圧力センサとを備え、前記上流圧力センサの出力に基づいて前記コントロール弁の開度を調整することによって前記絞り部の下流に流れるガスの流量を制御するように構成されている圧力式流量制御装置と
を備える、気化供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化器および気化供給装置に関し、特に、半導体製造装置に設けられるアッシング装置等に気化させた超純水を供給するために適切に用いられる気化器およびこれを備える気化供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野において、基板上に形成されたフォトレジスト膜をパターニング後に除去するために、アッシング装置またはアッシャーが広く利用されている。近年では、超純水を原料として用いてプラズマを生成し、これをフォトレジスト膜と反応させることによってアッシングを行う装置の開発も進められている。このような超純水によるドライプロセスのアッシングを行うことによって、作製される半導体デバイスへの悪影響を低減できるとともに、環境負荷の低減を図ることができる。
【0003】
超純水を用いるアッシング装置としては、マイクロ波励起によって生成した水蒸気プラズマによってアッシングを行うものが知られている。原料ガスとなる水蒸気は、例えば、処理室内に導入した超純水を、減圧により気化させて発生させることができる。
【0004】
また、別の態様のアッシング装置では、予め加熱器や気化器を用いて超純水を気化させておき、これを原料ガスとして処理室に導入することによって水蒸気プラズマを発生させることができる(例えば、特許文献1)。
【0005】
気化器等を用いて超純水を予め気化させてから供給する方式では、所定温度の超純水ガスを制御された流量で処理室内に導入することができ、これによって、プラズマ放電に必要な電力を低減することができるという利点が得られる。また、特許文献2に記載されるように、適切な温度に制御された超純水ガスは、これを基板表面に直接吹き付けることによって、フォトレジスト等の有機物の除去を行うために使用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-308070号公報
【文献】特開2002-110611号公報
【文献】国際公開第2015/083343号
【文献】特開2001-99765号公報
【文献】特開2004-63715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、気化器を用いて超純水をガス化して供給する場合において、ガス供給系の構成によっては、供給開始時から停止時までの全体期間にわたって、所望流量で適切にガスを供給できない場合があることが、本発明者によってわかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、気化させた超純水をアッシング装置等に供給するために好適に用いられる気化器およびこれを備える気化供給装置を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による気化器は、液体を貯留する気化室と、前記気化室に設けられ、前記気化室に貯留された液体と接し、熱源として作用する巻回部及び巻回部から立設され端部にヒータ端子を備えた立設部を含む底部ヒータと、前記気化室に接続されたリリーフ弁とを備える。
【0010】
ある実施形態において、上記の気化器は、前記気化室の側面を前記気化室の外側から加熱する側面ヒータをさらに備える。
【0011】
ある実施形態において、上記の気化器は、前記気化室に送られる液体を予め加熱しておくためのヒータを有するプレタンクをさらに備える。
【0012】
ある実施形態において、上記の気化器は、前記液体の液面レベルを測定するためのフロートセンサをさらに備え、前記底部ヒータの巻回部は前記フロートセンサの液面下限位置よりも低い位置に設けられている。
【0013】
ある実施形態において、上記の気化器は、前記気化室内に貯留された液体の動きを促進させるための攪拌装置または揺動装置をさらに備える。
【0014】
ある実施形態において、前記液体は超純水であり、気化させた超純水をアッシング装置に供給するために用いられる。
【0015】
本発明の実施形態による気化供給装置は、上記いずれかの気化器と、前記気化器の下流側に設けられた圧力式流量制御装置であって、絞り部と、前記絞り部の上流側に設けられたコントロール弁と、前記絞り部と前記コントロール弁との間の圧力を測定する上流圧力センサとを備え、前記上流圧力センサの出力に基づいて前記コントロール弁の開度を調整することによって前記絞り部の下流に流れるガスの流量を制御するように構成されている圧力式流量制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態に係る気化器および気化供給装置を用いれば、超純水を気化させて、より大流量でガスとして適切に供給することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による気化器および気化供給装置を備える超純水ガス供給系を示す模式図である。
【
図2】
図1に示した気化器が備えるメインタンクの例示的な構成を示す模式図である。
【
図3】メインタンクに設けられる底部ヒータを示す斜視図である。
【
図4】メインタンクのより具体的な設計例を示す斜視図である。
【
図5】下流側に接続される流量制御装置の近傍の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願人は、気化器を用いて、超純水をガスの状態にしてからアッシング装置に供給する装置の開発を進めている。気化器で生成したガスは、例えば、下流側に設けられた圧力式流量制御装置によって流量を制御したうえでアッシング装置に供給される。
【0019】
ここで、圧力式流量制御装置は、オリフィスプレートや臨界ノズルなどの絞り部を備えており、絞り部の上流側の圧力(以下、上流圧力P1と呼ぶことがある)を制御することによって、下流側の流量を制御する装置である(例えば特許文献3)。上流圧力P1は、圧力センサを用いて測定されており、絞り部上流側のコントロール弁の開度を、圧力センサの出力に基づいてフィードバック制御することによって制御される。
【0020】
圧力式流量制御装置は、コントロール弁と絞り部とを組み合せた比較的簡単な機構によって各種流体の質量流量を高精度に制御することができるので広く利用されている。また、圧力式流量制御装置は、コントロール弁の上流側の圧力(以下、供給圧力P0と呼ぶことがある)が変動しても、上流圧力P1を適切に制御できる限り流量の変動が生じにくく、流量制御の安定性に優れるという特長を有している。
【0021】
ところが、圧力式流量制御装置を下流に設ける場合において、特に大流量(例えば10g/min以上または8000sccm以上)の超純水ガスの供給を行うときには、気化器から比較的高圧力のガスを送出することが求められ、気化室内を例えば300kPa以上の圧力に維持する必要がある。そして、高圧下で超純水を気化させるためには、超純水は例えば130℃以上の温度にまで加熱することが必要となる。
【0022】
このため、本出願人が作製していた気化器では、メインタンクに設けられた気化室に送る前に、予めプレタンクにおいて超純水を予加熱し、比較的高温の超純水を気化室でヒータによって気化させていた。
【0023】
しかしながら、本発明者の実験によれば、より大流量での超純水ガスの供給を行う場合には、気化室の大容量化の影響もあり、メインタンクにおいて以前より高効率でのヒータ加熱を行わないと、ガス供給の開始時に、超純水の気化(潜熱)による水温の低下が生じるとともに、ガス圧力の低下も生じ得ることがわかった。そして、ガス圧力の低下によって、圧力式流量制御装置を用いた流量制御が機能しなくなるおそれがあることがわかった。
【0024】
なお、大流量化に対応するために、ガス供給前におけるヒータの加熱時間を増加させて、より高圧および高温の環境を構築しておくことが考えられる。しかし、気化室内が超純水の供給圧(例えば400kPa)以上の圧力になったときには逆流が生じるため、過剰な高圧に設定することは困難である。また、ガス消費中の水温低下は温度センサによって検知でき、温調器によるヒータ制御によって所定温度に戻すように動作制御することができるが、ヒータの加熱効率が低い場合にはすぐに温度を戻すことができず、その結果、ガス圧力の低下ひいては圧力式流量制御装置の動作不良を招くことになる。
【0025】
また、上記のガス供給開始時の問題に加えて、ガス供給の停止時には、圧力式流量制御装置のコントロール弁や下流の遮断弁が閉じられるため、気化室内部のガス圧力の上昇が生じる。そして、特に大流量ガスの供給に対応するためには、安全性を考慮して、大容量化した気化室が過剰な高圧にならないことが求められ、したがって、供給停止時のガス圧力の上昇を防止できる機能を備えることが好ましいこともわかった。
【0026】
以上の知見に基づいて、本発明者は、メインタンク内の気化室において、より高効率でヒータ加熱を行うようにするとともに、安全対策も施された気化器および気化供給装置について鋭意検討し、本発明を完成させるに至った。これにより、例えば10g/min以上、特には20g/min以上での超純水の気化供給を開始時から終了時まで安定して行うことができるようになった。
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明の実施形態による気化供給装置100が設けられた超純水ガスの供給系を示す。気化供給装置100の上流側は、超純水(H
2O)源2に接続され、下流側は遮断弁4を介してプロセスチャンバ6に接続されている。プロセスチャンバ6には真空ポンプ8が接続されており、チャンバ内およびガス流路を減圧することができる。
【0029】
本実施形態の気化供給装置100は、気化器10と、その下流側に接続された圧力式流量制御装置20とによって構成されている。気化器10は、超純水源2から圧送された超純水を液体Lの状態で受け取り、これをヒータによって加熱して気化させる。そして気化器10において生成された超純水ガスGは、圧力式流量制御装置20によって流量が制御され、所望流量でプロセスチャンバ6に供給される。
【0030】
圧力式流量制御装置20は、コントロール弁22と、絞り部24と、これらの間に設けられた上流圧力センサ26とを備えており、上流圧力センサ26の出力に基づいてコントロール弁22をフィードバック制御することにより、上流圧力P1を所望流量に対応する圧力に維持することができる。コントロール弁22としては、例えば、ピエゾ素子駆動型バルブが用いられ、絞り部24としては、例えば、小孔を穿孔したオリフィスプレートが用いられる。
【0031】
圧力式流量制御装置20は、臨界膨張条件P1/P2≧約2(アルゴンガスの場合)を満たすとき、流量Qが、絞り部24の下流側の圧力である下流圧力P2によらず、上流圧力P1によって決まるという原理を利用して流量制御を行う。臨界膨張条件を満たすとき、絞り部24の下流側の流量Qは、Q=K1・P1(K1は流体の種類と流体温度に依存する定数)によって与えられ、流量Qは上流圧力P1に比例する。また、圧力式流量制御装置20は、下流圧力P2を測定する下流圧力センサ(図示せず)を備えていてもよく、この場合、臨界膨張条件を満足しない場合であっても流量を算出することができ、Q=K2・P2m(P1-P2)n(ここでK2は流体の種類と流体温度に依存する定数、m、nは実際の流量を元に導出される指数)から流量Qを算出することができる。
【0032】
圧力式流量制御装置20は、臨界膨張条件または非臨界膨張条件における流量計算式を用いてQ=K1・P1またはQ=K2・P2m(P1-P2)nから演算流量を随時算出し、絞り部24を通過するガスの流量が設定流量に近づくように(すなわち、演算流量と設定流量との差が0に近づくように)コントロール弁22をフィードバック制御する。これにより、絞り部24の下流側に所望の設定流量でガスを流すことができる。
【0033】
また、本実施形態における気化器10は、プレタンク10Pと、その下流側のメインタンク10Mとを備えている。プレタンク10Pには、液体供給弁11を介して超純水源2から超純水が供給され、ここで図示しないヒータおよび温度センサを用いて、気化しない程度の所定温度にまで予加熱される。プレタンク10Pを設けることによって、メインタンク10Mでの気化をより容易に行うことが可能になる。なお、プレタンク10Pへの超純水の供給量は、液体供給弁11の開閉タイミングおよび開時間を制御することによって、任意に調整することができる。
【0034】
以下、気化器10が備えるメインタンク10Mの詳細構成について説明する。
図2に示すように、メインタンク10Mは、予加熱された超純水を貯留して気化させるための気化室12と、気化室12の底部に設けられた底部ヒータ14Bと、気化室12の側面に設けられた側面ヒータ14Sとを備えている。気化室12は、例えば、1500cc~2000ccの比較的大容量のステンレス鋼製容器によって形成される。なお、本実施形態では、気化室12の容量は、プレタンク10Pの容量(例えば1000cc~1500cc)よりも大きく設定されている。
【0035】
また、気化室12には、リリーフ弁16が接続されている。リリーフ弁16は、過大圧力が発生したときに自動的に圧力を開放する弁であり、設定圧力以上になったときのみ開放される。これにより、ガス供給停止時などにおいて、気化室12内が過剰圧力になることを防止することができる。なお、気化室12の内部圧力は、ガス排出路に設けられた供給圧力センサ19によって測定するようにしてもよいが、供給圧力センサ19は必ずしも設けられていなくても良い。
【0036】
さらに、気化室12の内部には、レベルセンサ18が設けられており、液面レベルを測定することができる。本実施形態では、レベルセンサ18として、フロートセンサ(例えば、1フロート2接点警報型)が用いられている。フロートセンサには、液面下限位置が設定されており、フロートセンサは、フロートが下限位置まで低下したことを検知し、警報信号を出力することができる。
【0037】
レベルセンサ18から警報信号を受け取ったとき、気化器10は、液体供給弁11を開き、プレタンク10Pを介して、気化室12に超純水を補充することができる。これにより、気化室12に一定量以上の超純水を常に貯留させておくことができる。
【0038】
次に、底部ヒータ14Bおよび側面ヒータ14Sの詳細構成を説明する。底部ヒータ14Bおよび側面ヒータ14Sは、気化室12内の超純水を気化させるために用いられる。本実施形態において、側面ヒータ14Sとしては、気化室12の側面を気化室12の外側から加熱するように配置されたスペースヒータが用いられている。一方、底部ヒータ14Bとしては、気化室12の内部に設けられ、超純水と接するように配置されたシースヒータが用いられている。なお、液体貯留タンクの内部にヒータを有する気化器自体は、特許文献4または特許文献5において開示されている。
【0039】
ここで、スペースヒータは、平板状で金属面を加熱するように構成された面状ヒータである。また、シースヒータは、MgOなどの絶縁粉末で満たされたヒータパイプ(シース)内を延びるニクロム線を有しており、端子を介して電気を流すことでニクロム線が発熱するように構成されている。
【0040】
図3は、本実施形態の底部ヒータ14Bとして用いられるシースヒータを示す。図示するように、底部ヒータ14Bは、外部電源(図示省略)と接続されるヒータ端子143、143を両端に有する1本のシースパイプを、ヒータ端子143、143が隣り合うように立設部142、142を形成し、また、中央部が熱源として機能する巻回部141(すなわちニクロム線配置部)となるように折り曲げ加工を施して形成される。巻回部141は、図示する態様では2回半巻かれたものであるが、それ以上の回数巻かれたものであってもよいことは言うまでもない。また、蛇行して面内接触面積を増加させる形状を有していても良い。そして、底部ヒータ14Bは、ヒータ端子143、143がタンクの天面から外部に突出するように、また、巻回部141がタンク内の底面近傍に位置するように配設される。なお、ヒータ端子143、143は一つにまとめた形状であっても良い。
【0041】
このような構成を有する底部ヒータ14Bを用いれば、特に気化室12の下部において超純水を直接的により効率的に加熱することができる。このため、大流量の超純水ガスを流すときにも、気化室内での超純水の温度低下を防止することができ、したがって、ガス圧力の低下による圧力式流量制御装置20の動作不良の発生を防止することができる。なお、気化室内での超純水の温度の低下は、図示しない温度センサによって測定されており、温調器を用いて底部ヒータ14Bおよび側面ヒータ14Sを作動させることによって、温度維持を図ることができる。
【0042】
底部ヒータ14Bは、その熱源部(ここではシースヒータの巻回部141)が、気化室12の底部近傍に配置されている限り、任意の構成を有していてよい。ここで、気化室12の底部近傍とは、気化室12の高さ方向において、典型的には気化室12の全高の半分以下の高さ位置を意味し、より具体的には、全高の1/3以下の高さ位置を意味するものとする。このような位置に熱源部を配置するために、上記シースヒータの立設部142の長さは、典型的には気化室12の全高の半分以上の長さに設計され、より具体的には、全高の2/3以上の長さに設定される。
【0043】
また、底部ヒータ14Bの熱源部(ここではシースヒータの巻回部141)は、フロートセンサの液面下限位置よりも低い位置に設けられている。このため、超純水の補給により常に熱源部が液中に浸されるようになっており、空焚きによる機器の損傷も防止される。
【0044】
側面ヒータ14Sを構成するスペースヒータは、メインタンク10Mの外側に設けられるため、タンク組み立て後にも設置可能であるが、底部ヒータ14Bは気化室12の内部に配置されるため、タンク組み立ての際に内部に組み入れることが必要である。底部ヒータ14Bは、例えば、気化室上面を構成する蓋部材に、その端子部を溶接することによって固定することができる。このように、常に超純水と接する底部ヒータ14Bのみを気化室12の内部に配置することによって、構成や組み立て工程の複雑化をなるべく抑制しながら、超純水を効率的に加熱することが可能である。
【0045】
以上に説明した気化器10では、底部ヒータ14Bによって、より高効率に加熱を行うことができ、圧力式流量制御装置20を用いる場合においても、供給開始時から大流量で継続的に超純水ガスを所望流量で供給しつづけることができる。また、リリーフ弁16が設けられているので、ガス供給停止時等に気化室内部の圧力が過剰になることが防止でき、内部のフロートセンサやバルブの破損を防止して、安全対策も図ることができる。
【0046】
図4は、メインタンク10Mのより具体的な構成例を示し、
図5は、メインタンク10Mの下流側に接続される圧力式流量制御装置20の近傍の構成例を示す。
【0047】
図4に示すように、メインタンク10Mは、略立方体状の外観を有する気化室12を備えており、気化室12の上面には、プレタンク10Pに接続される超純水入口12Lと、圧力式流量制御装置20に接続される超純水ガス出口12Gとが設けられている。
【0048】
側面ヒータ14Sを構成するスペースヒータは、気化室12を囲むように周囲4側面に設けられている。一方、底部ヒータ14Bの端子部は、気化室12の上面に配置される蓋部材12Tに溶接により固定されており、底部ヒータ14Bの発熱部は気化室12の内部において底の方に配置される。メインタンク10Mの組み立て工程においては、底部ヒータ14Bを固定しておいた蓋部材12Tを、気化室12の上部開口を閉じるように固定することによって、底部ヒータ14Bを内蔵しながら封止空間をなす気化室12が形成される。
【0049】
また、蓋部材12Tには、上述したリリーフ弁16、レベルセンサ18の端子部、供給圧力センサ19も固定されている。また、図示する本実施形態では、下流側のガス遮断弁として用いられる空気駆動弁(AOV)21も固定され、さらに、出口ヒータ14Eを構成するカートリッジヒータが超純水ガス出口12Gの近傍において固定されている。このカートリッジヒータは熱伝導性の良い金属部材に埋設されており、超純水ガス出口12Gに至るガス流路を加熱して超純水ガスの再液化を防止するために用いられる。
【0050】
また、
図5に示すように、下流側の圧力式流量制御装置20にも、ジャケットヒータなどの保温用ヒータ28が設けられていてもよい。圧力式流量制御装置20の温度は、温度センサ27(ここでは熱電対)を用いて測定され、圧力式流量制御装置20の近傍でのガスの再液化を防止できる温度(例えば150℃程度)に調節される。これによって、ガス出口29からは、高温に保たれ、流量制御されたガスがプロセスチャンバに供給される。なお、メインタンク10Mと圧力式流量制御装置20とを接続する配管および圧力式流量制御装置20の下流側の配管も、ヒータなどを用いて再液化が防止される温度に維持することが好適である。ただし、プレタンク10Pとメインタンク10Mとの間の配管は小容量(例えば5cc以下)のため、断熱材で覆うなどして保温性が確保されていれば十分であり、例えば約20~30秒ごとに温水の供給を行うことによって気化室12での温度低下は問題とならないことが確認されている。
【0051】
以上のようにして、メインタンク10Mでの気化のための加熱効率を高めるとともに、圧力式流量制御装置20を含むガス流路も加熱することによって、高温、高圧の超純水ガスをプロセスチャンバまで制御された大流量で供給することができる。
【0052】
以上、本発明の一態様について説明したが、他の態様において、気化器10のメインタンク10Mには、気化室内に貯留された超純水の動きや流れを促進させるための攪拌装置または揺動装置が付加的に設けられていても良い。
【0053】
攪拌装置は、例えば、底部ヒータ14Bを上下動、左右動あるいは振動させる機械的機構によって構成することができる。もちろん、底部ヒータ14Bとは別個に水中に沈めた羽部材を回転させるようなものであっても良い。また、揺動装置を用いてメインタンク10Mそのものを揺動させることによっても気化室12内の超純水を動かすことができる。このようにして超純水を積極的に動かすようにすれば、さらに加熱効率、加熱速度を向上させることができ、所望温度までの昇温時間を短縮し得る。
【0054】
また、以上には、気化器の下流側に接続された圧力式流量制御装置を用いて流量を制御した超純水ガスを供給する態様を説明したが、他の態様の流量制御装置を用いて流量制御を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の実施形態にかかる気化器および気化供給装置は、半導体製造設備のアッシング装置に超純水を気化してから供給するために好適に利用される。
【符号の説明】
【0056】
2 超純水源
4 遮断弁
6 プロセスチャンバ
8 真空ポンプ
10 気化器
10M メインタンク
10P プレタンク
12 気化室
14B 底部ヒータ
14S 側面ヒータ
141 巻回部
142 立設部
143 ヒータ端子
16 リリーフ弁
18 レベルセンサ
19 供給圧力センサ
20 圧力式流量制御装置
22 コントロール弁
24 絞り部
26 上流圧力センサ
100 気化供給装置