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特許7577389ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置と方法
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  • 特許-ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置と方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置と方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/02 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
G01N19/02 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023579626
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 CN2022135861
(87)【国際公開番号】W WO2023179084
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】202211508172.0
(32)【優先日】2022-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521174129
【氏名又は名称】河南科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】周延軍
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼江
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼少丹
(72)【発明者】
【氏名】宋克興
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲ラン▼
(72)【発明者】
【氏名】周菲
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼彦敏
(72)【発明者】
【氏名】李韶林
(72)【発明者】
【氏名】柳▲亜▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】国秀▲花▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼朝民
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼国▲賞▼
(72)【発明者】
【氏名】岳▲鵬▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼文豪
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110006818(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-0783967(KR,B1)
【文献】特開2010-256195(JP,A)
【文献】特開2011-196737(JP,A)
【文献】中国実用新案第204286967(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置であって、
前記ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置は、箱体と、箱体の内に位置される腐食性媒体とを含む腐食環境ユニットと、
電気化学ワークステーションと、箱体の内に位置される作用電極と、一端が箱体の内に挿入される補助電極及び参照電極と、を含む電気化学ユニットであって、前記作用電極、補助電極及び参照電極はいずれも腐食性媒体と接触され、且つ前記作用電極、補助電極及び参照電極はいずれも電気化学ワークステーションに接続されている電気化学ユニットと、
回転ユニットと法線力荷重ユニットとを含む摩擦摩耗ユニットであって、前記回転ユニットの一端には試料が接続され、且つ前記回転ユニットの一端が前記箱体の内の一側に伸び、前記法線力荷重ユニットの一端には摩擦対が接続され、且つ前記法線力荷重ユニットの一端が前記箱体の内の他側に伸び、前記回転ユニットは回転運動を提供し、前記法線力荷重ユニットは法線荷重力を提供し、前記試料と前記摩擦対との間の接触運動によって摩擦摩耗プロセスを実現する摩擦摩耗ユニットと、
を含み、
前記回転ユニットは第1の駆動機構と摩擦ディスクとを含み、前記第1の駆動機構のプロペラシャフトは前記箱体の内に伸び、前記プロペラシャフトの一端には、順次に、作用電極、摩擦ディスク及び試料が接続され、前記作用電極及び前記試料はワイヤで接続され、
前記法線力荷重ユニットは、第2の駆動機構と、固定ディスクと、データ収集処理システムとを含み、前記第2の駆動機構のプロペラシャフトは前記箱体の内に伸び、且つ前記第2の駆動機構のプロペラシャフトには固定ディスクが接続され、前記摩擦対は前記固定ディスクの外側に可動自在に接続され、前記データ収集処理システムは前記第2の駆動機構に接続されており、摩擦摩耗プロセスにおける法線荷重力を収集し、且つデータ処理を
行って摩擦力データを得るために用いられ、
前記装置は温度制御システムをさらに含み、前記温度制御システムは、ヒータと、温度センサと、制御ユニットとを含み、前記ヒータ及び温度センサは制御ユニットに電気的に接続され、前記制御ユニットは、温度を設定してヒータの開閉を制御するために用いられ、前記ヒータは、箱体の内を加熱するために用いられ、前記温度センサの一端は箱体の内に延び、箱体の内の温度を測定するために用いられる、
ことを特徴とするピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置。
【請求項2】
前記データ収集処理システムは、応力センサと、プロセッサと、ディスプレイとを含み、前記応力センサは前記第2の駆動機構に内蔵され、前記プロセッサは、前記応力センサ及びディスプレイに電気的に接続され、前記応力センサが収集した法線荷重力データを処理し、且つ得られた摩擦力データをディスプレイに表示するために用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置。
【請求項3】
前記装置はセパレーターをさらに含み、前記セパレーターは、箱体の内の下部に設けられ、箱体を液体キャビン及び空きキャビンという2つの密閉キャビンに分離するために用いられ、前記液体キャビンは腐食状態での摩擦摩耗試験に用いられ、前記ヒータのヒータ端部は前記空きキャビンの内に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置。
【請求項4】
前記セパレーターはガラス材質である、
ことを特徴とする請求項3に記載のピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置。
【請求項5】
前記装置は、前記セパレーターを貫通して前記箱体の液体キャビンの内に延びる撹拌装置をさらに含み、
前記撹拌装置の前記セパレーターと接触する部位には可動シールが設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載のピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置。
【請求項6】
前記第1の駆動機構及び/又は前記第2の駆動機構が前記箱体の内に伸びるプロペラシャフトは高分子材質である、
ことを特徴とする請求項1に記載のピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置。
【請求項7】
試料を回転ユニットに固定し、摩擦対を法線力荷重ユニットに固定し、腐食性媒体を箱体の内に入れて、腐食性媒体の液面高さが試料及び摩擦対を覆うステップ1と、
温度制御システムを開いて加熱温度を設定し、温度が要求に達した後、第1の駆動機構を開いて試料を回転させ、第2の駆動機構を開いて摩擦対及び試料に対して摩擦摩耗試験をさせ、設定された法線力と荷重速度に基づいて荷重を行い、摩擦摩耗プロセスにおいてデータの収集と処理を行い、腐食プロセスにおける電気化学データ及び摩擦力データを得るステップ2と、
腐食性媒体、温度、法線荷重力及び荷重速度のうちのいずれか1つまたは複数を変更し、再び測定して異なる条件での電気化学データ及び摩擦力データを得るステップ3と、
第1の駆動機構、第2の駆動機構及び温度制御システムを閉じ、得られた電気化学データ及び摩擦力データをデータ処理し、材料の耐摩耗性能及び耐腐食性能を評価するステップ4と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料性能試験技術分野に属し、具体的にはピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料はキー部材として電子情報、機械製造、軌道交通、海洋工事などの国民経済の方面に広く応用され、各種類の部材の応用シーンが異なるに伴い、材料の総合性能及び就役プロセスにおける就役効率に対する要求も異なる。銅系材料を例として、それは優れた伝導性能と力学性能、優れた冷間/熱間加工性能、及び耐摩耗性能と耐腐食性能を有するため、常に機能と構造の一体化材料として広く応用されている。科学技術の発展及び新しい応用シーンの出現に伴い、これまでの銅系材料の単一耐摩耗性能又は単一腐食性能に対する要求は実際の使用要求を満たさない。例えば、銅系材料の、石油掘削ガイドロッド、電気ポンプモジュール、掘削プローブ、深海防爆、分離可能な接続弁等の各種類の石油掘削器具への応用に対して、高温、高圧、高荷重、高腐食などの過酷な就役状況を受けることが必要であるため、銅合金材料は、基本的な力学的性能を満たす以外に、同時に高い耐摩耗性能と高い腐食性能を有する必要がある。
【0003】
しかし、長い間、銅系材料の耐摩耗性及び腐食性能に対する試験及び評価は異なる専門分野に属し、それぞれ、単独の実験装置を用いて単一の耐摩耗性又は単一の耐腐食性能の検出を行い、摩擦-腐食結合条件での耐摩耗性及び耐腐食性能の同期試験装置と方法に欠ける。例えば、耐摩耗性能の試験は、主に、線-スライダ型、ピン-ディスク型摩耗試験機により、一定の荷重、速度、電流条件での摩擦摩耗試験を行い、摩耗率などの定量評価指標を取得する。耐腐食性能に対する試験は、主に、各種類の腐食媒体の静的全浸漬実験、動的フラッシング実験及び電気化学実験により、分極曲線、交流インピーダンススペクトル曲線及び腐食速度などを取得する。そのため、上記単一の実験プラットフォームで得られた単一の耐摩耗性能又は単一の耐腐食性能は、摩擦と腐食の応用シーンにおける材料総合指標を正確に評価しにくい。現在、従来の摩擦と腐食を同時に行うことができる実験装置は、構造が複雑で、操作しにくい。
【0004】
したがって、上記従来技術の不足に対して改善した技術案を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、摩擦-腐食複数環境結合実験装置と方法を提供することであり、現在、材料に対して摩擦と腐食の同期検出を行う実験装置の構造が複雑で、操作しにくいという問題を少なくとも解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、以下のような技術的手段を提供する。
【0007】
箱体と、箱体の内に位置される腐食性媒体とを含む腐食環境ユニットと、
電気化学ワークステーションと、箱体の内に位置される作用電極と、一端が箱体の内に挿入される補助電極及び参照電極と、を含む電気化学ユニットであって、前記作用電極、補助電極及び参照電極はいずれも腐食性媒体と接触され、且つ前記作用電極、補助電極及び参照電極はいずれも電気化学ワークステーションに接続されている電気化学ユニットと、
回転ユニットと法線力荷重ユニットとを含む摩擦摩耗ユニットであって、前記回転ユニットの一端には試料が接続され、且つ前記回転ユニットの一端が前記箱体の内の一側に伸び、前記法線力荷重ユニットの一端には摩擦対が接続され、且つ前記法線力荷重ユニットの一端が前記箱体の内の他側に伸び、前記回転ユニットは回転運動を提供し、前記法線力荷重ユニットは法線荷重力を提供し、前記試料と前記摩擦対との間の接触運動によって摩擦摩耗プロセスを実現する摩擦摩耗ユニットと、
を含む、ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置。
【0008】
試料を回転ユニットに固定し、摩擦対を法線力荷重ユニットに固定し、腐食性媒体を箱体の内に入れて、腐食性媒体の液面高さが試料及び摩擦対を覆うステップ1と、
温度制御システムを開いて加熱温度を設定し、温度が要求に達した後、第1の駆動機構を開いて試料を回転させ、第2の駆動機構を開いて摩擦対及び試料に対して摩擦摩耗試験をさせ、設定された法線力と荷重速度に基づいて荷重を行い、摩擦摩耗プロセスにおいてデータの収集と処理を行い、腐食プロセスにおける電気化学データ及び摩擦力データを得るステップ2と、
腐食性媒体、温度、法線荷重力及び荷重速度のうちのいずれか1つまたは複数を変更し、再び測定して異なる条件での電気化学データ及び摩擦力データを得るステップ3と、
第1の駆動機構、第2の駆動機構及び温度制御システムを閉じ、得られた電気化学データ及び摩擦力データをデータ処理し、材料の耐摩耗性能及び耐腐食性能を評価するステップ4と、
を含む、ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置の操作方法。
【有益な効果】
【0009】
本発明の実験装置は腐食環境ユニットと、電気化学ユニットと、摩擦摩耗ユニットとを含み、構造が簡単で、操作が便利で、荷重プロセスにおける荷重力及び荷重速度を調整し、摩擦プロセスにおける腐食性媒体の温度を調整して制御し、異なる腐食と摩擦条件での電気化学データ及び摩擦摩耗データを得ることができる。さらに、電気化学曲線、腐食速度、摩耗率などの実験パラメータを同期に取得し、材料の耐摩耗性能と耐腐食性能を同時に検出し、同時に摩擦摩耗と腐食結合の異なる条件での材料の複合損傷メカニズムを明らかにすることに役立ち、さらに高耐摩耗及び高耐腐食性材料の開発にガイドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、本発明の実施例によれば、ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置を提供し、この実験装置は、腐食性媒体、温度、法線荷重力、荷重速度、試料材料などのパラメータを変更した様々な状況で摩擦-腐食試験を行い、材料の電気化学曲線、腐食速度、摩耗率、摩擦係数などのデータを測定することができ、同時に試験プロセスにおいて自動荷重、オフロード、無段変速、及び荷重、回転速度、温度のオンライン収集を実現することができ、材料の耐摩耗性能と耐腐食性能を同期に評価する。同時に摩擦摩耗と腐食結合条件での材料の複合損傷メカニズムを明らかにすることに役立ち、さらに高耐摩耗及び高耐腐食性材料の開発にガイドを提供する。
【0012】
装置は腐食環境ユニットと、電気化学ユニットと、摩擦摩耗ユニットとを含む。
【0013】
腐食環境ユニットは、箱体11と、箱体11の内に位置される腐食性媒体とを含む。
【0014】
本発明の具体的な実施例において、箱体11の材質は高強度耐腐食性高分子材料またはその他の耐腐食性材料である。腐食性媒体は、実験条件の要求に従って、3.5wt.%のNaClを含む標準静的完全浸漬腐食水溶液であってもよく、0.1~5wt.%の硫化水素(HS)を含む酸性腐食水溶液であってもよく、1~10wt.%の土砂を含む腐食水溶液であってもよい。
【0015】
電気化学ユニットは、電気化学ワークステーションと、箱体11の内に位置される作用電極3と、一端が箱体11の内に挿入される補助電極8及び参照電極9と、を含み、作用電極3、補助電極8及び参照電極9はいずれも腐食性媒体と接触され、且つ作用電極3、補助電極8及び参照電極9はいずれも電気化学ワークステーションに接続されている。
【0016】
電気化学ユニットは電気化学ワークステーションと、箱体11内に位置される作用電極3と、箱体11内に一端が挿入された補助電極8と参照電極9とを含み、作用電極3、補助電極8と参照電極9はいずれも腐食性媒体に接触し、作用電極3、補助電極8と参照電極9はいずれも電気化学ワークステーションに接続されている。
【0017】
本発明の具体的な実施例において、電気化学ワークステーションはデータの収集及び処理作業を行い、主な機能として、試料5が腐食プロセスにおいて電気化学データを収集し、後続に材料の腐食性能を評価する重要な特徴曲線(例えば交流インピーダンススペクトルと分極曲線)を得ることである。
【0018】
摩擦摩耗ユニットは回転ユニットと法線力荷重ユニットとを含み、回転ユニットの一端には試料5が接続され、且つ回転ユニットの一端が箱体11の内の一側に伸び、法線力荷重ユニットの一端には摩擦対6が接続され、且つ法線力荷重ユニットの一端が箱体11の内の他側に伸び、回転ユニットは回転運動を提供し、法線力荷重ユニットは法線荷重力を提供し、試料5と摩擦対6との間の接触運動によって摩擦摩耗プロセスを実現する。
【0019】
本発明の具体的な実施例において、回転ユニットは第1の駆動機構と摩擦ディスク4とを含み、第1の駆動機構のプロペラシャフト101は箱体11の内に伸び、プロペラシャフト101の一端には、順次に、作用電極3、摩擦ディスク4及び試料5が接続され、作用電極3及び試料5はワイヤで接続されている。第1の駆動モータのプロペラシャフト101と箱体11との接続箇所には、箱体11の内外をシール処理し、腐食性媒体のオーバーフローを防止するために用いられる可動シール2が設けられている。作用電極3と摩擦ディスク4との間にはピンまたはネジで取り外し可能に接続され、摩擦ディスク4と試料5との間にもピンまたはネジで取り外し可能に接続され、作用電極3は摩擦ディスク4に設けられる貫通孔によって試料5とワイヤで接続され、ワイヤと試料5との接続箇所には絶縁シール処理が採用されている。具体的には、第1の駆動機構は回転電機1であり、プロペラシャフト101の回転により作用電極3及び摩擦ディスク4を回転させ、ひいては試料5を回転させる。回転電機1の回転速度は5~1000回転/分である。もちろん、他の実施例では、作用電極3と、摩擦ディスク4と、試料5との間にはカシメ、溶接などの他の方法で固定することもでき、本発明はこれに限定されない。
【0020】
本発明の具体的な実施例において、法線力荷重ユニットは、第2の駆動機構と、固定ディスク7と、データ収集処理システムとを含み、第2の駆動機構のプロペラシャフトは箱体11の内に伸び、且つ第2の駆動機構のプロペラシャフトには固定ディスク7が接続され、摩擦対6は固定ディスク7の外側に可動自在に接続される。具体的には、第2の駆動機構は法線力荷重サーボモータ12であり、プロペラシャフトと箱体11との接触箇所には、箱体11の内の腐食性媒体がオーバーフローすることを防止するために用いられる可動シール2が設けられている。好ましくは、摩擦対6はピンシャフトであり、ピンシャフトは、2つ以上であり、固定ディスク7の壁面に周方向に沿って均一に配置され、ピンシャフトの自由端部位は半球状または平面構造であり、摩擦対6と試料5との間の摩擦接触方式が球-面または面-面接触であるように、異なるタイプのピンシャフトを交換することによって異なる摩擦方式を実現する。
【0021】
データ収集処理システムは第2の駆動機構に接続されており、摩擦摩耗プロセスにおける法線荷重力を収集し、且つデータ処理を行って摩擦力データを得るために用いられる。
【0022】
本発明の具体的な実施例において、試料5の材質はアルミニウム合金、銅合金、チタン合金などのすべての耐腐食性の金属材料であってもよく、摩擦対6の材質は耐摩耗材料のセラミックスであってもよい。
【0023】
本発明の具体的な実施例において、第2の駆動機構は法線力荷重サーボモータ12であり、法線荷重力を提供して回転せず、荷重速度の調整可能、無極変速、高い法線荷重力制御精度を実現することができ、具体的には、法線荷重力は0~150Nであり、法線力荷重精度は0.2%FS(FULL SCALE、フルレンジ、つまり法線力荷重の繰り返し誤差はフルレンジの0.2%を超えない)である。
【0024】
本発明の具体的な実施例において、データ収集処理システムは、応力センサと、プロセッサと、ディスプレイとを含み、応力センサは第2の駆動機構に内蔵され、プロセッサは、応力センサ及びディスプレイに電気的に接続され、応力センサが収集した法線荷重力データを処理し、且つ得られた摩擦力データをディスプレイに表示するために用いられる。
【0025】
本発明の具体的な実施例において、装置は温度制御システムをさらに含み、温度制御システムは、ヒータ14と、温度センサ10と、制御ユニットとを含み、ヒータ14及び温度センサ10は制御ユニットに電気的に接続され、制御ユニットは、温度を設定してヒータ14の開閉を制御するために用いられる。
【0026】
ヒータ14は、箱体11の内を加熱するために用いられ、温度センサ10の一端は箱体11の内に延び、箱体11の内の温度を測定するために用いられる。温度制御システムを設けることにより、摩擦摩耗の環境を変化させ、本発明の摩擦-腐食結合試験装置の機能をより全面的かつ豊富にするために、腐食性媒体温度の調整を実現することができる。具体的には、動作温度は0~80℃に設定し、腐食時間は24~720hとすることができる。
【0027】
本発明の具体的な実施例において、装置はセパレーター15をさらに含み、セパレーター15は、箱体11の内の下部に設けられ、箱体11を液体キャビン及び空きキャビンという2つの密閉キャビンに分離するために用いられ、液体キャビンは腐食状態での摩擦摩耗試験に用いられ、ヒータ14のヒータ端部は空きキャビンの内に設けられる。セパレーター15はガラス材質であることが好ましい。
【0028】
本発明の具体的な実施例において、箱体11における液体キャビンの内のすべての部品は高分子プラスチックやセラミックスなどの高強度絶縁材料である。第1の駆動機構と第2の駆動機構が箱体11の内に伸びるプロペラシャフト101も高分子材質である。これにより、腐食状態において金属材料の干渉がないことを確保し、電気化学試験の精度と精度を高めることができる。
【0029】
本発明の具体的な実施例において、装置は、セパレーター15を貫通して箱体11の液体キャビンの内に延びる撹拌装置13をさらに含み、撹拌装置13のセパレーター15と接触する部位には可動シール2が設けられている。撹拌装置13は液体キャビンにおける腐食性媒体の加熱の均一性を高め、媒体環境の均一性を実現することができ、また、腐食性媒体が土砂を含む溶液である場合、腐食性媒体を撹拌することでより均一になり、土砂の沈降を回避することができ、実際の応用状況により適合する。
【0030】
本発明にはピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置の操作方法をさらに提供し、操作方法は、
試料5を回転ユニットに固定し、試料5がネジで摩擦ディスク4に固定し、ピンが挿着または螺着で固定ディスク7に固定し、腐食性媒体を箱体11の内に入れて、腐食性媒体の液面高さが試料5及び摩擦対6を覆うステップ1と、
温度制御システムにおけるヒータ14を開いて加熱温度を設定し、温度が要求に達した後、回転電機1を開いて試料5を回転させ、法線力荷重サーボモータ12を開いてピンシャフト及び試料5に対して摩擦摩耗試験をさせ、設定された法線力と荷重速度に基づいて荷重を行い、摩擦摩耗プロセスにおいてデータの収集と処理を行い、腐食プロセスにおける電気化学データ及び摩擦力データを得るステップ2と、
腐食性媒体、温度、法線荷重力及び荷重速度のうちのいずれか1つまたは複数を変更し、再び測定して異なる条件での電気化学データ及び摩擦力データを得るステップ3と、
第1の駆動機構、第2の駆動機構及び温度制御システムを閉じ、得られた電気化学データ及び摩擦力データをデータ処理し、材料の耐摩耗性能及び耐腐食性能を評価するステップ4と、
を含む。
【0031】
実施例1
本実施例は、摩擦-腐食複数環境結合実験装置の、材料の耐摩耗性能と耐腐食性能を同期に測定する実験方法を採用して、具体的なステップは以下の通りである。
【0032】
(1)ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置の腐食環境ユニットと、箱体11との材料はガラスであり、腐食性媒体は3.5wt.%のNaClを含む標準静的完全浸漬腐食水溶液である。
【0033】
(2)ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置の摩擦対6はセラミック材料であり、試料5の材質は純銅である。試料の外径寸法はφ130mmであり、摩擦対6の端面は、直径がφ5mmである半球であり、試料5と摩擦対6との接触方式は球-面である。作用電極3はネジとピンで摩擦ディスク4に固定され、且つ回転電機1のプロペラシャフト101に一緒に固定され、それと一緒に移動する。
【0034】
(3)法線力荷重サーボモータ12は、リアルタイムで荷重力を測定するための、垂直力の荷重を実現する力学センサを内蔵している。腐食性媒体において摩擦摩耗実験を開始する前に、後続の腐食摩耗後の腐食速度と摩耗率の計算根拠として、試料5の元の質量を測定する。設定された法線荷重力は10Nであり、荷重方式は定力の荷重であり、回転数は10rpmであり、回転半径は20mmである。
【0035】
(4)腐食性媒体における摩擦摩耗実験プロセスにおいて、回転電機1によって試料5の運動を駆動させ、同時に作用電極4は補助電極8及び参照電極9に協力して電気化学試験データを収集する。720hの腐食時間の後、試料5を取り出し、その質量を測定し、腐食前の質量と比較することにより、腐食速度と摩耗率を算出し、且つ分極曲線と交流インピーダンススペクトル曲線を描画する。
【0036】
実施例2
本実施例は、摩擦-腐食複数環境結合実験装置の、材料の耐摩耗性能と耐腐食性能を同期に測定する実験方法を採用して、具体的なステップは以下の通りである。
【0037】
(1)ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置の腐食環境ユニットと、箱体11との材料はガラスであり、腐食性媒体は0.5wt.%硫化水素(HS)を含む酸性腐食水溶液である。ヒータ14を開き、温度は30℃に設定する。
【0038】
(2)ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置の摩擦対はセラミック材料であり、試料5の材質はCu-15Ni-8Sn合金である。試料5の外径寸法はφ130mmであり、摩擦対6の端面は、直径がφ6mmである半球であり、試料5と摩擦対6との接触方式は球-面である。作用電極3はネジとピンで摩擦ディスク4に固定され、且つ回転電機1のプロペラシャフト101に一緒に固定され、それと一緒に移動する。
【0039】
(3)法線力荷重サーボモータ12は、リアルタイムで荷重力を測定するための、垂直力の荷重を実現する力学センサを内蔵している。腐食性媒体において摩擦摩耗実験を開始する前に、後続の腐食摩耗後の腐食速度と摩耗率の計算根拠として、試料5の元の質量を測定する。設定された法線荷重力は130Nであり、荷重方式は階段の荷重であり、初期荷重力は10Nであり、30回転した後に50Nに荷重し、さらに30回転した後に100Nに荷重し、さらに30回転した後に130Nに荷重し、実験が終わるまで一定に維持し、回転速度は20rpmであり、回転半径は15mmである。
【0040】
( 4)腐食性媒体における摩擦摩耗実験プロセスにおいて、回転電機1によって試料5の運動を駆動させ、同時に作用電極4は補助電極8及び参照電極9に協力して電気化学試験データを収集する。240hの腐食時間の後、試料5を取り出し、その質量を測定し、腐食前の質量と比較することにより、腐食速度と摩耗率を算出し、且つ分極曲線と交流インピーダンススペクトル曲線を描画する。
【0041】
実施例3
本実施例は、摩擦-腐食複数環境結合実験装置の、材料の耐摩耗性能と耐腐食性能を同期に測定する実験方法を採用して、具体的なステップは以下の通りである。
【0042】
(1)ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置の腐食環境ユニットと、箱体11との材料はガラスであり、腐食性媒体は5wt.%の土砂+3.5wt.%のNaClを含む腐食水溶液である。ヒータを開き、加熱温度を40℃に設定し、撹拌装置13を開くことにより腐食性媒体の撹拌を行う。
【0043】
(2)ピン-ディスク型摩擦-腐食複数環境結合実験装置の摩擦対はセラミック材料であり、試料5の材質は耐摩耗クロム青銅合金である。試料5の外径寸法はφ130mmであり、摩擦対6の端面は、直径がφ5mmである平面であり、試料5と摩擦対6との接触方式は面-面である。作用電極3はネジとピンで摩擦ディスク4に固定され、且つ回転電機1のプロペラシャフト101に一緒に固定され、それと一緒に移動する。
【0044】
(3)法線力荷重サーボモータ12は、リアルタイムで荷重力を測定するための、垂直力の荷重を実現する力学センサを内蔵している。腐食性媒体において摩擦摩耗実験を開始する前に、後続の腐食摩耗後の腐食速度と摩耗率の計算根拠として、試料5の元の質量を測定する。設定された法線荷重力は100Nであり、荷重方式はリニアの荷重であり、100の回転ごとに荷重力が10N増加してリニアの荷重を行い、回転速度は20rpmであり、回転半径は20mmである。
【0045】
(4)腐食性媒体における摩擦摩耗実験プロセスにおいて、回転電機1によって試料5の運動を駆動させ、同時に作用電極4は補助電極8及び参照電極9に協力して電気化学試験データを収集する。300hの腐食時間の後、試料5を取り出し、その質量を測定し、腐食前の質量と比較することにより、腐食速度と摩耗率を算出し、且つ分極曲線と交流インピーダンススペクトル曲線を描画する。
【符号の説明】
【0046】
1 回転電機
101 プロペラシャフト
2 可動シール
3 作用電極
4 摩擦ディスク
5 試料
6 摩擦対
7 固定ディスク
8 補助電極
9 参照電極
10 温度センサ
11 箱体
12 法線力荷重サーボモータ
13 撹拌装置
14 ヒータ
15 セパレーター
図1