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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】車両用ドア及び車両用ドアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/10 20060101AFI20241028BHJP
   B60J 10/22 20160101ALI20241028BHJP
   B60J 10/23 20160101ALI20241028BHJP
【FI】
B60J5/10 R
B60J5/10 Z
B60J10/22
B60J10/23
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024526276
(86)(22)【出願日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2023015659
(87)【国際公開番号】W WO2023238522
(87)【国際公開日】2023-12-14
【審査請求日】2024-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2022093665
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】マザーサンヤチヨ・オートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野土谷 將
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-233984(JP,A)
【文献】特開2006-151194(JP,A)
【文献】特開2016-78566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0147899(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
B60J 10/22
B60J 10/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアであって、
車外側に配置されるアウタパネルと、
車内側に配置され、接着剤を介して前記アウタパネルに接合されるインナパネルと、を備え、
前記インナパネルの外面は、前記インナパネルと前記アウタパネルとの接合方向に第1交差角をもって交差する外面一般部と、前記外面一般部に稜線状の角部を介して連続し、前記接合方向に前記第1交差角よりも小さな第2交差角をもって交差する外面傾斜部とを有し、
前記アウタパネルの内面は、前記外面一般部に前記接着剤を介して対向する内面一般部と、前記外面傾斜部に前記接着剤を介して対向する内面傾斜部とを有し、
前記角部の前記接着剤が設けられる部分に凹部が形成され、
前記外面一般部の前記角部の近傍に、1対の第1リブが前記凹部を挟むように互いに離間して形成され、1対の前記第1リブが前記角部に近付くにつれて互いの間隔を狭める向きに傾斜している、車両用ドア。
【請求項2】
前記外面傾斜部の前記角部の近傍に、1対の第2リブが前記凹部を挟むように互いに離間して形成されている、請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項3】
1対の前記第2リブは、前記接合方向に沿って互いに平行に延在している、請求項2に記載の車両用ドア。
【請求項4】
1対の前記第1リブの前記角部の側の端部の間隔と、1対の前記第2リブの間隔とが互いに等しい、請求項3に記載の車両用ドア。
【請求項5】
1対の前記第1リブが前記内面一般部に当接し、1対の前記第2リブが前記内面傾斜部に当接している、請求項2~4のいずれか1項に記載の車両用ドア。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用ドアの製造方法であって、
前記インナパネルの前記外面に前記接着剤を塗布するステップと、
前記インナパネルの前記外面に対応する位置に前記アウタパネルを配置するステップと、
前記インナパネルと前記アウタパネルとを前記接合方向に相対移動させ、前記接着剤を前記アウタパネルの前記内面に付着させるステップとを含む、車両用ドアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用ドア及び車両用ドアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアとして、アウタパネルと、アウタパネルの車内側に配置される樹脂製のインナパネルとを備え、インナパネルとアウタパネルとが接着剤により接着された構造のものが公知である(特許文献1)。このドア構造では、インナパネルとアウタパネルとの接合部に、パネル面からクランク状に折れ曲がり、壁部と底部パネル面とを備える折曲げ部が設けられている。折り曲げ部が設けられると、インナパネルにアウタパネルを重ねるときに、壁部と底部パネル面とで構成される凹状面(角部)の底部の手前側にある接着剤が、凹状面の形状に合わせて形成された凸状面(角部)によってかきとられる。接着剤はシールとしての機能を要求される。角部によって接着剤がかきとられると、これがシール切れの原因になる。この発明では、シール切れの発生を抑制するために、凹状部の壁部から底部パネル面にわたってリブが設けられ、リブが接着剤に食い込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5867258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用ドアでは、リブが接着剤の幅方向の中央で接着剤に食い込んでいる。したがって、角部を含む、リブが形成された部分では、接着剤の厚みが他の部分よりも薄くなる。所定量の接着剤が塗布され、リブ以外の部分の接着剤が所定の幅にわたってインナパネル及びアウタパネルに接着されれば、シール性は確保される。しかしながら、接着剤は重力によって幅方向の一方に垂れる虞があり、インナパネル及びアウタパネルの両方に接着される接着剤の幅が不足することがあり得る。このように従来の車両用ドアでは、シール性確保の観点において改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、インナパネル及びアウタパネルの接合面に角部が設けられていても、車両用ドアのシール性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、車両用ドア(1)であって、車外側に配置されるアウタパネル(11)と、車内側に配置され、接着剤(13)を介して前記アウタパネルに接合されるインナパネル(12)と、を備え、前記インナパネルの外面(12a)は、前記インナパネルと前記アウタパネルとの接合方向(D)に第1交差角(θ1)をもって交差する外面一般部(31)と、前記外面一般部に稜線状の角部(34)を介して連続し、前記接合方向に前記第1交差角よりも小さな第2交差角(θ2)をもって交差する外面傾斜部(32)とを有し、前記アウタパネルの内面(11a)は、前記外面一般部に前記接着剤を介して対向する内面一般部(36)と、前記外面傾斜部に前記接着剤を介して対向する内面傾斜部(37)とを有し、前記角部の前記接着剤が設けられる部分に凹部(40)が形成され、前記外面一般部の前記角部の近傍に、1対の第1リブ(41)が前記凹部を挟むように互いに離間して形成され、1対の前記第1リブが前記角部に近付くにつれて互いの間隔を狭める向きに傾斜している。ここで、接合方向は、インナパネルとアウタパネルとを互いに接合させる際の相対移動方向である。
【0007】
この態様によれば、角部に凹部が形成されているため、角部において接着剤の厚さが確保される。インナパネルとアウタパネルとを接合方向に相対移動させたときには、接着剤がアウタパネルに付着し、アウタパネルによって接合方向に引っ張られる。この態様によれば、外面一般部に塗布された接着剤が1対の第1リブによって凹部に集められるため、角部における接着剤の厚さが確保される。
【0008】
上記の態様において、前記外面傾斜部の前記角部の近傍に、1対の第2リブ(42)が前記凹部を挟むように互いに離間して形成されていると良い。
【0009】
この態様によれば、外面傾斜部に塗布された接着剤が重力によって幅方向の一方に垂れることが抑制される。これにより、1対の第2リブ間に接着剤が充填され、外面傾斜部における接着剤によるシール性が確保される。
【0010】
上記の態様において、1対の前記第2リブは、前記接合方向に沿って互いに平行に延在していると良い。
【0011】
この態様によれば、インナパネルとアウタパネルとを接合方向に相対移動させたときに、接着剤が接合方向以外の方向に流動することが抑制されるため、1対の第2リブ間に接着剤が確実に充填される。
【0012】
上記の態様において、1対の前記第1リブの前記角部の側の端部の間隔と、1対の前記第2リブの間隔とが互いに等しいと良い。
【0013】
この態様によれば、1対に第1リブによって凹部に集められた接着剤のうちの余剰分が、外面傾斜部において1対の第2リブ間に集められる。これにより、外面傾斜部における接着剤によるシール性が確保される。
【0014】
上記の態様において、1対の前記第1リブが前記内面一般部に当接し、1対の前記第2リブが前記内面傾斜部に当接していると良い。
【0015】
この態様によれば、未硬化の接着剤が硬化するまでの間に、1対の第1リブ間及び1対の第2リブ間から接着剤が流出することが抑制される。これにより、第1リブ及び第2リブが設けられた部分のシール性を確保することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するために本発明のある態様は、上記の態様の車両用ドアの製造方法であって、前記インナパネルの前記外面に前記接着剤を塗布するステップと、前記インナパネルの前記外面に対応する位置に前記アウタパネルを配置するステップと、前記インナパネルと前記アウタパネルとを前記接合方向に相対移動させ、前記接着剤を前記アウタパネルの前記内面に付着させるステップとを含む。
【0017】
この態様によれば、インナパネルとアウタパネルとを接合方向に相対移動させたときに、接着剤がアウタパネルに付着し、アウタパネルによって接合方向に引っ張られる。その際、外面一般部に塗布された接着剤が1対の第1リブによって凹部に集められるため、角部における接着剤の厚さが確保される。
【発明の効果】
【0018】
以上の態様によれば、インナパネル及びアウタパネルの接合面に角部が設けられていても、車両用ドアのシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係るテールゲートの斜視図
図2】インナパネルの斜視図
図3】支持凸部を含むインナパネルの要部を下方から見た斜視図
図4図3中のIV-IV線に沿う断面図
図5図4中のV-V線に沿う断面図
図6】実施形態に係るテールゲートの製造手順の説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、発明に係る車両用ドアが車両のテールゲート1に適用されている。
【0021】
図1は実施形態に係るテールゲート1の斜視図である。図1に示すように、テールゲート1は、上部に取り付けられる1対のヒンジ2によって左右方向の軸線周りに回動可能に車体に取り付けられる。テールゲート1の上部にはリヤウィンドウ開口3が形成されている。リヤウィンドウ開口3は、ガラスや樹脂等からなる透明又は半透明の板部材からなるリヤウィンドウパネルによって閉鎖される。
【0022】
テールゲート1は、車外側に配置されるアウタパネル11と、車内側に配置されるインナパネル12とを互いに接合させることによって形成された中空構造体である。図示の例では、アウタパネル11は、上下に分割された複数の部材によって構成されており、テールゲート1の下部に配置される部材のみが示されている。他の例では、アウタパネル11が一体物であっても良い。
【0023】
本実施形態のアウタパネル11及びインナパネル12はそれぞれ樹脂製である。ここで、樹脂製とは、樹脂を含む材料によって形成されていることを意味し、樹脂以外の材料を含んでいても良い。アウタパネル11及びインナパネル12は合成樹脂の射出成形品であり、外周部等において接着剤13(図4図5参照)により互いに接合される。具体的には、インナパネル12の外面12aに接着剤13が塗布された状態で、図1に矢印で示す接合方向Dにアウタパネル11を移動させることにより、接着剤13をアウタパネル11の内面11aに付着させる。この状態で接着剤13が硬化することにより、アウタパネル11及びインナパネル12が互いに接合される。なお、接合方向Dは、インナパネル12とアウタパネル11とを互いに接合させる際の相対移動方向であり、アウタパネル11の移動方向に限定されるものではない。
【0024】
アウタパネル11及びインナパネル12の接合態様はこれに限られず、接着剤13による接合に加え、摩擦接合や超音波接合、レーザー等による溶着、ホットメルトによる接着、機械的締結による接合が併用されても良い。テールゲート1は、互いに接合される樹脂製のアウタパネル11及びインナパネル12からなることにより、これらが鋼板製のプレス成形品である場合に比べて軽量化される。
【0025】
アウタパネル11の左右の側部には、リヤコンビネーションランプを取り付けるために凹陥した取付凹部14が形成されている。リヤウィンドウ開口3の下方のアウタパネル11の部分には、横長の凸形状をし、テールゲート用ハンドルレバー及びライセンスプレート用照明ランプを収容する収容凸部15が形成されている。収容凸部15は車幅方向に長い横長形状をしている。収容凸部15の下方の幅方向の中央部には、ライセンスプレートを取り付けるために、収容凸部15及び左右の側部に対して凹陥したプレート取付部16が形成されている。プレート取付部16の下方にはバンパフェース17が形成されている。
【0026】
図2はインナパネル12の斜視図である。図2に示すように、インナパネル12の上部には、ストップランプを取り付けるための第1開口21が形成されている。インナパネル12の高さ方向の中央の左右の側部には、リヤコンビネーションランプを取り付けるための第2開口22が形成されている。インナパネル12の第2開口22の下方且つ幅方向の中央には、第3開口23が形成されている。これらの開口は車室側から取り付けられる蓋部材によって塞がれる。
【0027】
インナパネル12の外面12aには、アウタパネル11を内側から支持するべく後方に突出する複数の支持凸部24が、適宜な位置に形成されている。1対の第2開口22の間の、収容凸部15に対応する部分の左右の側部には1対の支持凸部24が形成されている。この1対の支持凸部24は、アウタパネル11の収容凸部15を内側から支持する。
【0028】
上記のようにアウタパネル11の収容凸部15の内部にはテールゲート用ハンドルレバー及びライセンスプレート用照明ランプが収容されることから、収容凸部15の内部には走行中に跳ね上げられた水が浸入し得る。そのため、アウタパネル11の収容凸部15とインナパネル12との間に形成される内部空間は、環状に塗布された接着剤13によってシールされる。
【0029】
図3は支持凸部24を含むインナパネル12の要部を下方から見た斜視図である。図2及び図3に示すように、接着剤13は、鉛直方向に延在する部分が1対の支持凸部24を乗り越えるように塗布される。接着剤13は、支持凸部24の突端面(後ろ向きの面)及び下向き面を通過し、支持凸部24の下方にて屈曲し、インナパネル12の外面12a上を車幅方向に延在する。
【0030】
接着剤13が車幅方向に延在するインナパネル12の外面12aの部分は、概ね後方を向く一般的な面、即ちアウタパネル11の接合時に離間した位置に配置されたアウタパネル11の方(概ね図1中の接合方向Dと相反する方向)を向く一般的な面である。以下、インナパネル12の外面12aのうち、概ね後方を向く面を外面一般部31と称する。
【0031】
ここで、「概ね後方を向く」及び「概ね接合方向Dと相反する方向を向く」とは、接合方向D(図1図4参照)に対して所定角度(例えば20°)よりも大きな角度をもって交差する、面の延在方向を意味する。所定角度は、アウタパネル11の接合時に、アウタパネル11の移動に伴ってアウタパネル11に付着した接着剤13が引っ張られて引きちぎられる虞がない角度を意味する。所定角度は、接着剤13の種類や、接着剤13がアウタパネル11に付着した位置から接合完了位置までのアウタパネル11の移動距離等に応じて定まる値である。所定角度は、例えば、5°~30°であって良く、10°~20°であっても良い。
【0032】
所定角度以下の角度をもって接合方向Dに交差する面は、アウタパネル11の接合時に、塗布された接着剤13が引っ張られて引きちぎられる虞がある面である。以下、このような面を外面傾斜部32と称する。外面傾斜部32の接合方向Dに対する角度は、外面一般部31の接合方向Dに対する角度よりも小さい。
【0033】
外面一般部31の、接着剤13が塗布される部分の近傍には、所定高さを有し、スペーサとして機能する複数の突起33が形成されている。突起33は、アウタパネル11の接合時にアウタパネル11の内面11aに当接することで接着剤13の厚さを確保する。
【0034】
図4図3中のIV-IV線に沿う断面図である。図3及び図4に示すように、支持凸部24は、インナパネル12の外面12aを形成しており、突端をなす外面一般部31と、外面一般部31の下縁に連続する外面傾斜部32とを有する。外面傾斜部32は、車幅方向に延在する稜線状の凸角部34を介して外面一般部31に連続している。外面傾斜部32の前縁は、車幅方向に延在する谷筋状の凹角部35を介して、支持凸部24の下方に位置する外面一般部31に連続している。
【0035】
支持凸部24の外面一般部31は、上記の通り概ね後方を向いており、接合方向Dに第1交差角θ1をもって交差している。第1交差角θ1は上記所定角度よりも大きい。外面傾斜部32は概ね下方を向いており、接合方向Dに第1交差角θ1よりも小さな第2交差角θ2をもって交差している。第2交差角θ2は上記所定角度以下である。
【0036】
図4に示すように、アウタパネル11は、接着剤13によって接合される部位において、インナパネル12に対応する形状を有している。よって、アウタパネル11の内面11aは、外面一般部31に接着剤13を介して対向する内面一般部36と、外面傾斜部32に接着剤13を介して対向する内面傾斜部37とを有する。内面傾斜部37の後縁(上縁)は、車幅方向に延在する谷筋状の凹角部38を介して外面一般部31に連続している。内面傾斜部37の前縁(下縁)は、車幅方向に延在する稜線状の凸角部39を介して外面一般部31に連続している。
【0037】
図3に併せて示すように、支持凸部24の凸角部34には凹部40が形成されている。凹部40は、凸角部34の延在方向(車幅方向)の中央であって、接着剤13が塗布される部分に設けられている。凹部40は、凸角部34の延在方向(車幅方向)に所定の長さを有している。所定の長さは、アウタパネル11及びインナパネル12に付着すべき接着剤13の幅(シールの幅)として設定される値である。
【0038】
支持凸部24の外面一般部31における凸角部34の近傍には、1対の第1リブ41が突出形成されている。第1リブ41は、支持凸部24の外面一般部31の高さ(上下寸法)よりも小さい長さを有し、凸角部34の近傍のみに形成されている。第1リブ41の高さ(突出寸法)は突起33の高さと同程度であり、好ましく同一である。第1リブ41は、接合状態において実質的にアウタパネル11に当接している。実質的にとは、膜状の接着剤13が介在している場合を含むことを意味する。第1リブ41は、凹部40を挟むように車幅方向に互いに離間しており、凸角部34に近付くにつれて互いの間隔を狭める向きに傾斜している。第1リブ41の凸角部34側の端部の間隔は、凹部40の車幅方向の長さと一致する。
【0039】
支持凸部24の外面傾斜部32には1対の第2リブ42が突出形成されている。第2リブ42は、第2リブ42は、外面傾斜部32の前後寸法よりも若干小さい長さを有し、凸角部34から凹角部35の近傍に至っている。第2リブ42の高さ(突出寸法)は第1リブ41の高さと同程度であり、好ましく同一である。第2リブ42は、接合状態において実質的にアウタパネル11に当接している。第2リブ42は、凹部40を挟むように車幅方向に互いに離間しており、接合方向Dに沿って互いに平行に延在している。1対の第2リブ42の間隔は凹部40の車幅方向の長さと一致する。即ち、1対の第2リブ42の間隔は、1対の第1リブ41の凸角部34の側の端部の間隔に等しい。
【0040】
図5図4中のV-V線に沿う断面図である。図5に示すように、接着剤13は、1対の第2リブ42間に充填されてアウタパネル11とインナパネル12とを互いに接合している。また、接着剤13は1対の第2リブ42の外側においてもアウタパネル11及びインナパネル12に付着しており、両者を互いに接合している。
【0041】
図6は実施形態に係るテールゲート1の製造手順の説明図である。アウタパネル11をインナパネル12に接合する際、作業員により以下の手順で作業が行われる。なお、図6は、図4と同じ姿勢、即ち、車体に取り付けられたテールゲート1がテールゲート開口を閉じる閉位置にあるときの姿勢でテールゲート1を示しているが、接合作業時のテールゲート1の姿勢はこれに限定されない。例えば、インナパネル12の外面12a(外面一般部31)が上を向く姿勢でテールゲート1が組み立てられると良い。
【0042】
図6(A)に示すように、接合作業においては、最初にインナパネル12の外面12aの所定の位置に接着剤13が塗布される。接着剤13は、接合後の厚さ、即ち第1リブ41の高さや第2リブ42の高さよりも厚く塗布される。その後、図6(B)に示すように、アウタパネル11がインナパネル12に対向する所定の位置に配置され、接合方向Dに移動される。その際、接着剤13はアウタパネル11の内面11aに付着する。アウタパネル11は、内面11aが突起33や第1リブ41に当接する位置まで移動される。この状態で接着剤13が硬化することにより、アウタパネル11及びインナパネル12が互いに接合され、テールゲート1が図4に示される構成になる。
【0043】
以下、実施形態に係るテールゲート1の作用効果を説明する。上記のように、凸角部34の接着剤13が設けられる部分に凹部40が形成されている。そのため、凸角部34において接着剤13の厚さが確保される。アウタパネル11をインナパネル12に向けて接合方向Dに移動させたときには、接着剤13がアウタパネル11に付着し、アウタパネル11によって接合方向Dに引っ張られる。本実施形態では、外面一般部31に塗布された接着剤13が1対の第1リブ41によって凹部40に集められるため、凸角部34における接着剤13の厚さが確実に確保される。
【0044】
図3に示すように、1対の第2リブ42は外面傾斜部32の凸角部34の近傍に凹部40を挟むように互いに離間して形成されている。そのため、外面傾斜部32に塗布された接着剤13が重力によって幅方向の一方に垂れることが抑制される。これにより、1対の第2リブ42間に接着剤13が充填され、外面傾斜部32における接着剤13によるシール性が確保される。
【0045】
図6に併せて示すように、1対の第2リブ42は、接合方向Dに沿って互いに平行に延在している。そのため、インナパネル12とアウタパネル11とを接合方向Dに相対移動させたときに、接着剤13が接合方向D以外の方向に流動することが抑制される。これにより、1対の第2リブ42間に接着剤13が確実に充填される。
【0046】
図3に示すように、1対の第1リブ41の凸角部34の側の端部の間隔と、1対の第2リブ42の間隔とは互いに等しい。そのため、1対に第1リブ41によって凹部40に集められた接着剤13のうちの余剰分は、外面傾斜部32において1対の第2リブ42間に集められる。これにより、外面傾斜部32における接着剤13によるシール性が確保される。
【0047】
図4に示すように、1対の第1リブ41は内面一般部36に当接し、1対の第2リブ42は内面傾斜部37に当接している。そのため、未硬化の接着剤13が硬化するまでの間に、1対の第1リブ41間及び1対の第2リブ42間から接着剤13が流出することが抑制される。これにより、第1リブ41及び第2リブ42が設けられた部分のシール性が確保される。
【0048】
また、実施形態に係るテールゲート1の製造方法では、次のステップが行われることにより以下の作用効果が奏される。即ち、図6に示すように、インナパネル12の外面12aに接着剤13を塗布するステップが実施される。また、インナパネル12の外面12aに対応する位置にアウタパネル11をするステップが実施される。その後、インナパネル12とアウタパネル11とを接合方向Dに相対移動させ、接着剤13をアウタパネル11の内面11aに付着させるステップが行われる。アウタパネル11に付着した接着剤13は、アウタパネル11によって接合方向Dに引っ張られる。その際、外面一般部31に塗布された接着剤13が1対の第1リブ41によって凹部40に集められるため、凸角部34における接着剤13の厚さが確保される。
【0049】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、本発明が車両のテールゲート1に適用されているが、運転席ドアや助手席ドア、後部座席ドア等の車両用ドアに本発明が適用されても良い。また、実施形態のテールゲート1では、アウタパネル11とインナパネル12が共に樹脂製であるが、どちらか一方又は両方が鋼板製であっても良い。この場合、インナパネル12のリブは、例えばプレス成形によって形成されて良い。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材、組付け手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 :テールゲート(車両用ドア)
2 :ヒンジ
3 :リヤウィンドウ開口
11 :アウタパネル
11a :内面
12 :インナパネル
12a :外面
13 :接着剤
14 :取付凹部
15 :収容凸部
16 :プレート取付部
17 :バンパフェース
21 :第1開口
22 :第2開口
23 :第3開口
24 :支持凸部
31 :外面一般部
32 :外面傾斜部
34 :凸角部
D :接合方向
θ1 :第1交差角
θ2 :第2交差角
図1
図2
図3
図4
図5
図6