(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】鉄道車両用機器群の収納装置
(51)【国際特許分類】
B61D 27/00 20060101AFI20241028BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
B61D27/00 M
F16B5/02 E
(21)【出願番号】P 2021010131
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-05-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】村上 寛明
(72)【発明者】
【氏名】朝長 祐太
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-038766(JP,U)
【文献】特開2019-030191(JP,A)
【文献】特公昭47-017926(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0072184(US,A1)
【文献】特開2013-199270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 27/00
B61C 17/00-17/12
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の厚板部材と、各々前記厚板部材よりも薄い複数の薄板部材とを有し、鉄道車両に搭載される鉄道車両用機器群を収納する筐体、
を備え、
前記鉄道車両用機器群の一部を構成する第1機器群は、頭部と、ねじ溝が形成されたねじ部と、該頭部と該ねじ部との間に介在する円筒部と、該円筒部に嵌められる座金とを有する第1ねじによって、前記厚板部材に固定され、
前記鉄道車両用機器群のうち前記第1機器群に含まれない第2機器群は、頭部と、ねじ溝が形成されたねじ部と、該頭部と該ねじ部との間に介在する円筒部と、該円筒部に嵌められる座金とを有し、かつ該円筒部の長さが、前記第1ねじの前記円筒部よりも短い第2ねじによって、前記薄板部材に固定され、
前記第1ねじの前記座金の内径及び前記第1ねじの前記円筒部の外径は、前記第1ねじの前記ねじ部の外径よりも小さく、
前記第2ねじの前記座金の内径及び前記第2ねじの前記円筒部の外径は、前記第2ねじの前記ねじ部の外径よりも小さい、
鉄道車両用機器群の収納装置
であって、
前記鉄道車両用機器群は、前記鉄道車両の客室を空調するための空調機器群を有し、
前記空調機器群は、
外部から電力の供給を受けて振動を発生させる能動的振動発生機器であって、前記第1機器群に含まれる能動的振動発生機器と、
外部からの電力の供給を受けない非給電機器であって、前記第2機器群に含まれる非給電機器と、
を含み、
前記能動的振動発生機器は、前記第1ねじと前記第2ねじとのうち前記第1ねじのみを用いて前記厚板部材に固定され、
前記非給電機器は、前記第1ねじと前記第2ねじとのうち前記第2のねじのみを用いて前記薄板部材に固定される、
鉄道車両用機器群の収納装置。
【請求項2】
複数の厚板部材と、各々前記厚板部材よりも薄い複数の薄板部材とを有し、鉄道車両に搭載される鉄道車両用機器群を収納する筐体、
を備え、
前記鉄道車両用機器群の一部を構成する第1機器群は、頭部と、ねじ溝が形成されたねじ部と、該頭部と該ねじ部との間に介在する円筒部と、該円筒部に嵌められる座金とを有する第1ねじによって、前記厚板部材に固定され、
前記鉄道車両用機器群のうち前記第1機器群に含まれない第2機器群は、頭部と、ねじ溝が形成されたねじ部と、該頭部と該ねじ部との間に介在する円筒部と、該円筒部に嵌められる座金とを有し、かつ該円筒部の長さが、前記第1ねじの前記円筒部よりも短い第2ねじによって、前記薄板部材に固定され、
前記第1ねじの前記座金の内径及び前記第1ねじの前記円筒部の外径は、前記第1ねじの前記ねじ部の外径よりも小さく、
前記第2ねじの前記座金の内径及び前記第2ねじの前記円筒部の外径は、前記第2ねじの前記ねじ部の外径よりも小さい、
鉄道車両用機器群の収納装置
であって、
前記鉄道車両用機器群は、前記鉄道車両の客室を空調するための空調機器群を有し、
前記空調機器群は、
前記第1機器群に含まれる、圧縮機、室内送風機、及び室外送風機と、
前記第2機器群に含まれる、室内熱交換器、室外熱交換器、及びアキュムレータと、
を含み、
前記圧縮機、前記室内送風機、及び前記室外送風機は、前記第1ねじと前記第2ねじとのうち前記第1ねじのみを用いて前記厚板部材に固定され、
前記室内熱交換器、前記室外熱交換器、及び前記アキュムレータは、前記第1ねじと前記第2ねじとのうち前記第2ねじのみを用いて前記薄板部材に固定される、
鉄道車両用機器群の収納装置。
【請求項3】
前記第1ねじは、前記厚板部材を貫通しており、
前記第1ねじの前記ねじ部の、前記第1ねじの長さ方向に関して前記第1ねじの前記頭部から前記第1ねじの前記ねじ部に向かう向きに、前記厚板部材から突出している部分の長さは、前記第1ねじの前記ねじ部の、前記厚板部材と噛み合っている部分の長さよりも長く、
前記第2ねじは、前記薄板部材を貫通しており、
前記第2ねじの前記ねじ部の、前記第2ねじの長さ方向に関して前記第2ねじの前記頭部から前記第2ねじの前記ねじ部に向かう向きに、前記薄板部材から突出している部分の長さは、前記第2ねじの前記ねじ部の、前記薄板部材と噛み合っている部分の長さよりも長い、
請求項1
又は2に記載の鉄道車両用機器群の収納装置。
【請求項4】
前記第2ねじの前記座金は、前記第2ねじの前記円筒部に嵌められるばね座金及び平座金を有し、
前記ばね座金の厚さをTa、前記平座金の厚さをTb、前記薄板部材の厚さをTcとしたとき、前記第2ねじの前記円筒部の長さが、Ta+Tb+Tcよりも短い、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の鉄道車両用機器群の収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用機器群の収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、客室を空調する空調機器群をはじめとする鉄道車両用機器群を収納する収納装置が搭載されている。収納装置は、鉄道車両用機器群を収納する筐体を備える。なお、筐体は、鉄道車両の屋根部分、床下部分等に設置される。
【0003】
特許文献1に開示されているように、鉄道車両に設置される筐体として、複数の板部材が組み合わされて構成されたものが知られている。この筐体は、板部材どうしがねじによって締結された構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道車両の推進に必要なエネルギーを低減するために、筐体の軽量化が求められている。そして、筐体を軽量化するための方策として、筐体を構成する複数の板部材の一部を他の板部材よりも薄肉化する改良が考えられる。
【0006】
しかし、薄肉化された板部材に対しては、鉄道車両用機器群を公知のねじで適切に固定できない恐れがある。これは、ねじにおいて頭部とねじ部との間に円筒部が介在していることによる。具体的には、薄肉化された板部材に対して鉄道車両用機器群を公知のねじで固定する場合、ねじの円筒部がめねじに底当たりしてしまったり、円筒部がめねじに進入してしまったりする事態が生じうる。
【0007】
ここで、ねじの円筒部とは、そのねじにおいて頭部とねじ部との間に介在するねじ溝が形成されていない部分を指す。座金組み込みねじを製造する際には、加工上の問題から、頭部とねじ部との間に一定の長さの円筒部が発生する。
【0008】
なお、ねじの頭部と板部材との間に、座金とは別途にスペーサを介在させると、上述した事態を回避しうる。しかし、その場合、スペーサの重量が嵩み、軽量化の目的が達成され難い。
【0009】
本開示の目的は、軽量化が図られており、かつ鉄道車両用機器群を適切に固定することができる、鉄道車両用機器群の収納装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る、鉄道車両用機器群の収納装置は、
複数の厚板部材と、各々前記厚板部材よりも薄い複数の薄板部材とを有し、鉄道車両に搭載される鉄道車両用機器群を収納する筐体、
を備え、
前記鉄道車両用機器群の一部を構成する第1機器群は、頭部と、ねじ溝が形成されたねじ部と、該頭部と該ねじ部との間に介在する円筒部と、該円筒部に嵌められる座金とを有する第1ねじによって、前記厚板部材に固定され、
前記鉄道車両用機器群のうち前記第1機器群に含まれない第2機器群は、頭部と、ねじ溝が形成されたねじ部と、該頭部と該ねじ部との間に介在する円筒部と、該円筒部に嵌められる座金とを有し、かつ該円筒部の長さが、前記第1ねじの前記円筒部よりも短い第2ねじによって、前記薄板部材に固定され、
前記第1ねじの前記座金の内径及び前記第1ねじの前記円筒部の外径は、前記第1ねじの前記ねじ部の外径よりも小さく、
前記第2ねじの前記座金の内径及び前記第2ねじの前記円筒部の外径は、前記第2ねじの前記ねじ部の外径よりも小さい、
鉄道車両用機器群の収納装置であって、
前記鉄道車両用機器群は、前記鉄道車両の客室を空調するための空調機器群を有し、
前記空調機器群は、
外部から電力の供給を受けて振動を発生させる能動的振動発生機器であって、前記第1機器群に含まれる能動的振動発生機器と、
外部からの電力の供給を受けない非給電機器であって、前記第2機器群に含まれる非給電機器と、
を含み、
前記能動的振動発生機器は、前記第1ねじと前記第2ねじとのうち前記第1ねじのみを用いて前記厚板部材に固定され、
前記非給電機器は、前記第1ねじと前記第2ねじとのうち前記第2のねじのみを用いて前記薄板部材に固定される。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、筐体が薄板部材を有するので、収納装置の軽量化が図られる。また、第2ねじの円筒部が、第1ねじの円筒部よりも短いので、第2機器群を第2ねじで薄板部材に固定するに際して、第2ねじの円筒部がめねじに底当たりしてしまったり、第2ねじの円頭部がめねじに進入してしまったりする事態を回避できる。このため、第2機器群を第2ねじで薄板部材に適切に固定できる。また、第1機器群は第1ねじで厚板部材に適切に固定できる。従って、鉄道車両用機器群を適切に固定することができる収納装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】(A):実施形態に係る厚板部材を示す断面図、(B):実施形態に係る薄板部材を示す断面図
【
図3】(A):比較形態1に係る薄板部材を示す断面図、(B):比較形態2に係る薄板部材を示す断面図
【
図5】実施形態に係る空調機器群の構成を示す断面図
【
図6】実施形態に係る筐体の圧縮機室の構成を示す概念図
【
図7】実施形態に係る筐体の圧縮機室の一部を示す斜視図
【
図8】実施形態に係る筐体の室内機室の構成を示す概念図
【
図9】実施形態に係る筐体の室外機室の構成を示す概念図
【
図10】実施形態に係る筐体の室外機室の一部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、実施形態に係る収納装置について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る収納装置500は、鉄道車両に搭載される鉄道車両用機器群としての空調機器群400を内部に収納する筐体100を備える。空調機器群400は、鉄道車両の客室を空調するものである。筐体100は、図示しない底板に、妻板110、側板120、カバー140等を組んで構成された箱形状を有する。また、筐体100は、内部に収納する空調機器群400が固定される固定部材150を含む。
【0015】
なお、
図1では、筐体100の内部を示すために、筐体100の外面のうちの上面を構成するカバー140については一部のみを示している。
【0016】
筐体100はステンレス、アルミニウム等の金属材料で構成されているが、マグネシウム、アルミニウム等からなるめっき鋼板等、適切な材料を適宜採用することができる。
【0017】
ところで、近年、収納装置500には、省エネを目的とした軽量化が求められている。そこで、本実施形態に係る筐体100の図示しない底板、妻板110、側板120、及びカバー140は、従来よりも薄肉化されている。また、筐体100を構成する固定部材150のうち、空調機器群400の中でも相対的に軽量な機器(以下、軽量機器という。)が固定される部分は、従来よりも薄肉化されている。ただし、固定部材150のうち、空調機器群400の中でも相対的に重量な機器(以下、重量機器という。)が固定される部分は、強度を維持するため、従来と同等の厚みを有する。
【0018】
以降では、固定部材150のうち重量機器が固定される部分を厚板部材150A、固定部材150のうち軽量機器が固定される部分を薄板部材150Bとして説明を続ける。厚板部材150Aの厚さは2.0mm以上が好ましく、薄板部材150Bの厚さは1.5mm以下が好ましい。
【0019】
以下、厚板部材150A、薄板部材150Bの具体的な態様を述べる。
【0020】
図2(A)に示すように、厚板部材150Aへの重量機器の固定には、第1ブラケット150A’が用いられる。第1ブラケット150A’は、図示しない重量機器に固定されている。
図2(A)は、第1ブラケット150A’が、第1ねじ200によって、厚板部材150Aに固定された状態を示す。
【0021】
第1ねじ200は、工具で回転される頭部210と、ねじ溝が形成された軸状のねじ部220と、頭部210とねじ部220との間に介在する軸状の円筒部230とを有する。円筒部230には、ねじ溝が形成されていない。
【0022】
また、第1ねじ200は、円筒部230に嵌められている座金240を有する。座金240は、ばね座金241と平座金242とで構成されている。第1ねじ200には、例えば、座金240の内径及び円筒部230の外径が、ねじ部220の外径よりも小さい、座金組み込みねじを採用することができる。
【0023】
平座金242は、第1ブラケット150A’に直接的に接しており、平座金242と第1ブラケット150A’との間にスペーサは介在していない。
【0024】
第1ブラケット150A’には、ねじ部220の外径よりも大きな内径を有する挿通孔TH1が形成されている。一方、厚板部材150Aには、ねじ部220がねじ込まれる、めねじFT1が形成されている。
【0025】
第1ねじ200のねじ部220を、第1ブラケット150A’の挿通孔TH1に通した後、厚板部材150AのめねじFT1にねじ込む。これにより、第1ブラケット150A’と厚板部材150Aとが第1ねじ200で締結される。
【0026】
第1ブラケット150A’と厚板部材150Aとが締結されており、両者が密接している状態では、第1ねじ200の円筒部230とねじ部220との境界部分は、厚板部材150Aの表面よりも外側、即ち挿通孔TH1内に配置されている。
【0027】
図2(B)を参照し、次に軽量機器が固定される薄板部材150Bについて説明する。薄板部材150Bには、第2ブラケット150B’を用いて軽量機器が固定される。薄板部材150Bは、厚板部材150Aより肉厚が薄い。また、第2ブラケット150B’は、第1ブラケット150A’よりも肉厚が薄い。本実施形態では、薄板部材150Bへの第2ブラケット150B’の固定に、円筒部330が第1ねじ200の円筒部230よりも短い第2ねじ300を用いる。
【0028】
ここで、本実施形態で解決しようとする課題を示すために、
図2(B)に示す薄板部材150Bの説明に先立ち、比較形態について説明する。
【0029】
図3(A)に、比較形態1に係る構成を示す。本比較形態1では、薄板部材150Bと、図示しない軽量機器に固定された第2ブラケット150B’との締結にも第1ねじ200を用いる。
【0030】
第2ブラケット150B’には、ねじ部220の外径よりも大きな内径を有する挿通孔TH2が形成されている。一方、薄板部材150Bには、ねじ部220がねじ込まれる、めねじFT2が形成されている。
【0031】
既述のように、薄板部材150Bは、
図2(A)に示した厚板部材150Aよりも薄い。このため、第1ねじ200を薄板部材150Bと第2ブラケット150B’の締結にも用いると、ねじ部220をめねじFT2にねじ込む際に、円筒部230がめねじFT2に進入してしまう。
【0032】
すると、ねじ部220とめねじFT2との間の充分な噛み合いが得られない。このため、ねじ部220とめねじFT2に材料強度を超える応力が発生した場合に、筐体100の一部に破損が発生する恐れがある。
【0033】
図3(B)は、比較形態2に係る構成を示す。
図3(B)に示すように、第1ねじ200の円筒部230の外径がめねじFT2の内径よりも大きい構成も考えられる。この場合は、めねじFT2への円筒部230の進入は回避される。しかし、円筒部230が薄板部材150Bの表面に底当たりしてしまうので、薄板部材150Bと第2ブラケット150B’との間に隙間GPが生じうる。この結果、薄板部材150Bと第2ブラケット150B’の間に締付不良が発生する。
【0034】
以下、以上説明した比較形態1及び2の課題を解決する本実施形態の説明に戻る。
【0035】
図2(B)は、本実施形態に係る構成を示す。上述したように、本実施形態では、薄板部材150Bへの第2ブラケット150B’の固定に、
図2(A)に示す第1ねじ200とは異なる、第2ねじ300を用いる。
【0036】
第2ねじ300も、第1ねじ200と同様に、工具で回転される頭部310と、ねじ溝が形成された軸状のねじ部320と、頭部310とねじ部320との間に介在する軸状の円筒部330とを有する。円筒部330には、ねじ溝が形成されていない。
【0037】
また、第2ねじ300は、円筒部330に嵌められている座金340を有する。座金340は、ばね座金341と平座金342とで構成されている。本実施形態では、第2ねじ300は、座金340の内径及び円筒部330の外径が、ねじ部320の外径よりも小さい、座金組み込みねじである。平座金342は、第2ブラケット150B’に直接的に接しており、平座金342と第2ブラケット150B’との間にスペーサは介在していない。
【0038】
第2ねじ300の、
図2(A)に示した第1ねじ200との違いは、第2ねじ300の円筒部330の長さが、第1ねじ200の円筒部230よりも短いことである。具体的には、第2ねじ300の円筒部330の長さは、第1ねじ200の円筒部230の長さの0.65倍以下、より具体的には、0.55倍以上0.65倍以下である。
【0039】
本実施形態によれば、第2ねじ300の円筒部330が、第1ねじ200の円筒部230よりも短いので、第2ねじ300のねじ部320をめねじFT2にねじ込む際に、円筒部330がめねじFT2に進入たり、薄板部材150Bの表面に底当たりする、といった問題が発生することを抑制することができる。
【0040】
つまり、第2ブラケット150B’と薄板部材150Bとが第2ねじ300で締結されており、両者が密接している状態では、第2ねじ300の円筒部330とねじ部320との境界部分は、薄板部材150Bの表面よりも外側、即ち挿通孔TH2内に配置される。
【0041】
このため、ねじ部320とめねじFT2との間の充分な噛み合いが得られ、第2ブラケット150B’と薄板部材150Bとを第2ねじ300で適切に締結できる。従って、薄板部材150B及び第2ブラケット150B’のいずれも従来よりも薄くし、かつ加振や運転振動に充分耐えうる力で締め付けることができる。
【0042】
なお、
図2(B)は、第2ねじ300とめねじFT2との間の締め付けの力で、ばね座金341が弾性変形した状態を示している。ばね座金341の厚さをTa、平座金342の厚さをTb、薄板部材150Bの厚さをTcとしたとき、ばね座金341が弾性変形する前は、頭部310と第2ブラケット150B’の表面との間に、2×Ta+Tb+Tc程度の間隔が確保される。
【0043】
第2ねじ300とめねじFT2との間の締め付けの力によってばね座金341が弾性変形した場合でも、円筒部330がめねじFT2に進入することを回避するために、円筒部330の長さは、Ta+Tb+Tcよりも短く設計されている。
【0044】
図4は、本実施形態の変形例に係る構成を示す。
図4に示すように、第2ねじ300の円筒部330の外径は、めねじFT2の内径よりも大きくてもよい。この場合でも、
図2(B)に示す実施形態と同様に円筒部330が短尺化されているので、円筒部330が薄板部材150Bの表面に底当たりしてしまうことを回避できる。
【0045】
このため、
図3(B)に示した隙間GPが発生せず、薄板部材150Bとブラケット150B’とを第2ねじ300で適切に締結できる。この結果、
図1示す筐体100において充分な強度が得られる。
【0046】
以上、第1ねじ200及び第2ねじ300について説明した。以下、
図1に示した空調機器群400について具体的に説明する。
【0047】
図5を参照し、まず、空調機器群400の構成を述べる。
図5は、
図1に示した筐体100の内部を示した断面図である。空調機器群400は、第1冷凍サイクルを構成する第1冷凍サイクル装置410と、第1冷凍サイクルとは別の第2冷凍サイクルを構成する第2冷凍サイクル装置420とを有する。
【0048】
第1冷凍サイクル装置410は、冷媒を圧縮する圧縮機411と、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する室外熱交換器412と、室外熱交換器412で凝縮された冷媒を膨張させる膨張器413と、膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する室内熱交換器414と、蒸発された冷媒の圧縮機411への戻りを許容する一方、液状の冷媒を捕捉するアキュムレータ415とを有する。
【0049】
第2冷凍サイクル装置420も同様に、冷媒を圧縮する圧縮機421と、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する室外熱交換器422と、室外熱交換器422で凝縮された冷媒を膨張させる膨張器423と、膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する室内熱交換器424と、蒸発された冷媒の圧縮機421への戻りを許容する一方、液状の冷媒を捕捉するアキュムレータ425とを有する。
【0050】
また、空調機器群400は、室内熱交換器414及び424と、客室の空気との熱交換を促進する室内送風機430を有する。
【0051】
また、空調機器群400は、室外熱交換器412及び422と、車外の空気である外気との熱交換を促進する室外送風機440を有する。また、空調機器群400は、室外送風機440が形成する気流を整えるベルマウス450を有する。
【0052】
図1にも示した筐体100は、筐体100の内部に画定される空間を圧縮機室S1、室内機室S2、及び室外機室S3の3つに仕切る仕切り板130も有する。以下、圧縮機室S1、室内機室S2、及び室外機室S3の各々の構成を具体的に説明する。
【0053】
図6及び
図7を参照し、まず、圧縮機室S1の構成を説明する。
図6に示すように、圧縮機室S1には、圧縮機411及び421と、アキュムレータ415及び425とが収められている。
【0054】
筐体100は、圧縮機411が固定される圧縮機固定部材151と、圧縮機421が固定される圧縮機固定部材152とを有する。
【0055】
一方、圧縮機411は、圧縮機411を筐体100の圧縮機固定部材151に固定するための圧縮機用ブラケット411aを有する。同様に、圧縮機421は、圧縮機421を筐体100の圧縮機固定部材152に固定するための圧縮機用ブラケット421aを有する。
【0056】
圧縮機411及び421は、空調機器群400の中でも相対的に質量の大きい重量機器の一例であり、かつ外部から電力の供給を受けて振動を発生させる能動的振動発生機器の一例でもある。そこで、圧縮機用ブラケット411a及び421aと圧縮機固定部材151及び152とには高い強度が求められるため、これらは比較的厚く形成されている。
【0057】
つまり、圧縮機固定部材151及び152は、既述の厚板部材150Aを車両用空調装置に適用した一例である。また、圧縮機用ブラケット411a及び421aは、既述の第1ブラケット150A’を車両用空調装置に適用した一例である。また、圧縮機411及び421は、既述の第1ねじ200で固定される第1機器群の一例である。
【0058】
具体的には、圧縮機411の圧縮機用ブラケット411aは、既述の第1ねじ200で圧縮機固定部材151に固定されている。同様に、圧縮機421の圧縮機用ブラケット421aも、第1ねじ200で圧縮機固定部材152に固定されている。なお、
図7には、圧縮機用ブラケット421a及び圧縮機固定部材152の斜視図を示している。
【0059】
また、
図6に示すように、筐体100は、アキュムレータ415及び425が固定されるアキュムレータ固定部材153を有する。
【0060】
一方、アキュムレータ415は、アキュムレータ415を筐体100のアキュムレータ固定部材153に固定するためのアキュムレータ用ブラケット415aを有する。同様に、アキュムレータ425は、アキュムレータ425を筐体100のアキュムレータ固定部材153に固定するためのアキュムレータ用ブラケット425aを有する。
【0061】
アキュムレータ415及び425は、上述した重量機器よりも軽量な軽量機器の一例であり、かつ外部から電力の供給を受けないため能動的には振動を発生させない非給電機器の一例でもある。そこで、アキュムレータ用ブラケット415a及び425aとアキュムレータ固定部材153とにはさほど高い強度が求められないため、これらは比較的薄く形成されている。
【0062】
つまり、アキュムレータ固定部材153は、既述の薄板部材150Bを車両用空調装置に適用した一例である。また、アキュムレータ用ブラケット415a及び425aは、既述の第2ブラケット150B’を車両用空調装置に適用した一例である。また、アキュムレータ415及び425は、既述の第2ねじ300で固定される第2機器群の一例である。
【0063】
具体的には、アキュムレータ415のアキュムレータ用ブラケット415a、及びアキュムレータ425のアキュムレータ用ブラケット425aは、それぞれ既述の第2ねじ300でアキュムレータ固定部材153に固定されている。なお、
図7には、アキュムレータ用ブラケット425a及びアキュムレータ固定部材153の斜視図を示している。
【0064】
図8を参照し、次に、室内機室S2の構成を説明する。室内機室S2には、室内熱交換器414及び424と、室内送風機430とが収められている。
【0065】
筐体100は、室内送風機430が固定される室内送風機固定部材154を有する。
【0066】
一方、室内送風機430は、室内送風機430を筐体100の室内送風機固定部材154に固定するための室内送風機用ブラケット430aを有する。
【0067】
室内送風機430は、空調機器群400の中でも相対的に質量の大きい重量機器の一例であり、かつ外部から電力の供給を受けて振動を発生させる能動的振動発生機器の一例でもある。そこで、室内送風機用ブラケット430aと室内送風機固定部材154とには高い強度が求められるため、これらは比較的厚く形成されている。
【0068】
つまり、室内送風機固定部材154は、既述の厚板部材150Aを車両用空調装置に適用した一例である。また、室内送風機用ブラケット430aは、既述の第1ブラケット150A’を車両用空調装置に適用した一例である。また、室内送風機430は、既述の第1ねじ200で固定される第1機器群の一例である。
【0069】
具体的には、室内送風機430の室内送風機用ブラケット430aは、既述の第1ねじ200で室内送風機固定部材154に固定されている。
【0070】
また、筐体100は、室内熱交換器414が固定される室内熱交換器固定部材155と、室内熱交換器424が固定される室内熱交換器固定部材156とを有する。
【0071】
一方、室内熱交換器414は、室内熱交換器414を筐体100の室内熱交換器固定部材155に固定するための室内熱交換器用ブラケット414aを有する。同様に、室内熱交換器424は、室内熱交換器424を筐体100の室内熱交換器固定部材156に固定するための室内熱交換器用ブラケット424aを有する。
【0072】
室内熱交換器414及び424は、上述した重量機器よりも軽量な軽量機器の一例であり、かつ外部から電力の供給を受けないため能動的には振動を発生させない非給電機器の一例でもある。そこで、室内熱交換器用ブラケット414a及び424aと室内熱交換器固定部材155及び156とにはさほど高い強度が求められないため、これらは比較的薄く形成されている。
【0073】
つまり、室内熱交換器固定部材155及び156は、既述の薄板部材150Bを車両用空調装置に適用した一例である。また、室内熱交換器用ブラケット414a及び424aは、既述の第2ブラケット150B’を車両用空調装置に適用した一例である。また、室内熱交換器414及び424は、既述の第2ねじ300で固定される第2機器群の一例である。
【0074】
具体的には、室内熱交換器414の室内熱交換器用ブラケット414aは、既述の第2ねじ300で室内熱交換器固定部材155に固定されている。同様に、室内熱交換器424の室内熱交換器用ブラケット424aも、既述の第2ねじ300で室内熱交換器固定部材156に固定されている。
【0075】
図9及び
図10を参照し、次に、室外機室S3の構成を説明する。
図9に示すように、室外機室S3には、室外熱交換器412及び422と、室外送風機440と、ベルマウス450とが収められている。
【0076】
筐体100は、室外送風機440が固定される室外送風機固定部材157を有する。
【0077】
一方、室外送風機440は、室外送風機440を筐体100の室外送風機固定部材157に固定するための室外送風機用ブラケット440aを有する。
【0078】
室外送風機440は、空調機器群400の中でも相対的に質量の大きい重量機器の一例であり、かつ外部から電力の供給を受けて振動を発生させる能動的振動発生機器の一例でもある。そこで、室外送風機用ブラケット440aと室外送風機固定部材157とには高い強度が求められるため、これらは比較的厚く形成されている。
【0079】
つまり、室外送風機固定部材157は、既述の厚板部材150Aを車両用空調装置に適用した一例である。また、室外送風機用ブラケット440aは、既述の第1ブラケット150A’を車両用空調装置に適用した一例である。また、室外送風機440は、既述の第1ねじ200で固定される第1機器群の一例である。
【0080】
具体的には、室外送風機440の室外送風機用ブラケット440aは、既述の第1ねじ200で室外送風機固定部材157に固定されている。なお、
図10には、室外送風機用ブラケット440a及び室外送風機固定部材157の斜視図を示している。
【0081】
また、
図9に示すように、筐体100は、室外熱交換器412が固定される室外熱交換器固定部材158と、室外熱交換器422が固定される室外熱交換器固定部材159とを有する。
【0082】
一方、室外熱交換器412は、室外熱交換器412を筐体100の室外熱交換器固定部材158に固定するための室外熱交換器用ブラケット412aを有する。同様に、室外熱交換器422は、室外熱交換器422を筐体100の室外熱交換器固定部材159に固定するための室外熱交換器用ブラケット422aを有する。
【0083】
室外熱交換器412及び422は、上述した重量機器よりも軽量な軽量機器の一例であり、かつ外部から電力の供給を受けないため能動的には振動を発生させない非給電機器の一例でもある。そこで、室外熱交換器用ブラケット412a及び422aと室外熱交換器固定部材158及び159とにはさほど高い強度が求められないため、これらは比較的薄く形成されている。
【0084】
つまり、室外熱交換器固定部材158及び159は、既述の薄板部材150Bを車両用空調装置に適用した一例である。また、室外熱交換器用ブラケット412a及び422aは、既述の第2ブラケット150B’を車両用空調装置に適用した一例である。また、室外熱交換器412及び422は、既述の第2ねじ300で固定される第2機器群の一例である。
【0085】
具体的には、室外熱交換器412の室外熱交換器用ブラケット412aは、既述の第2ねじ300で室外熱交換器固定部材158に固定されている。同様に、室外熱交換器422の室外熱交換器用ブラケット422aも、既述の第2ねじ300で室外熱交換器固定部材159に固定されている。
【0086】
また、ベルマウス450は、ベルマウス450を筐体100の室外熱交換器固定部材158及び159に固定するためのベルマウス用ブラケット450aを有する。ベルマウス450は、上述した重量機器よりも軽量な軽量機器の一例であり、かつ外部から電力の供給を受けないため能動的には振動を発生させない非給電機器の一例でもある。そこで、ベルマウス用ブラケット450aと室外熱交換器固定部材158及び159とにはさほど高い強度が求められないため、これらは比較的薄く形成されている。
【0087】
つまり、ベルマウス用ブラケット450aは、既述の第2ブラケット150B’を車両用空調装置に適用した一例である。また、ベルマウス450は、既述の第2ねじ300で固定される第2機器群の一例である。
【0088】
具体的には、ベルマウス450のベルマウス用ブラケット450aは、既述の第2ねじ300で室外熱交換器固定部材158及び159に固定されている。
【0089】
以上説明したように、本実施形態に係る筐体100によれば、軽量機器及び非給電機器が固定される薄板部材150Bとしてのアキュムレータ固定部材153、室内熱交換器固定部材155及び156、並びに室外熱交換器固定部材158及び159が、重量機器及び振動発生機器が固定される厚板部材150Aとしての圧縮機固定部材151及び152、室内送風機固定部材154、並びに室外送風機固定部材157よりも薄肉化されているので、収納装置500の軽量化が図られる。
【0090】
また、薄板部材150Bとしてのアキュムレータ固定部材153、室内熱交換器固定部材155及び156、並びに室外熱交換器固定部材158及び159に対しては、軽量機器及び非給電機器を第2ねじ300で適切に固定することができる。また、厚板部材150Aとしての圧縮機固定部材151及び152、室内送風機固定部材154、並びに室外送風機固定部材157に対しては、重量機器及び振動発生機器を第1ねじ300で適切に固定することができる。従って、空調機器群400を適切に固定することができる収納装置500が提供される。
【0091】
以上、実施形態及び変形例について説明した。以下に述べる変形も可能である。
【0092】
第1ねじ200の頭部210の形状、及び第2ねじ300の頭部310の形状は、
図2(A)及び(B)に示したものに限られない。第1ねじ200及び第2ねじ300は、例えば、六角ボルト、六角穴付きボルト等のボルトであってもよい。
【0093】
筐体100は、鉄道車両の屋根部分から突出した態様で設置されてもよいし、鉄道車両の屋根部分に埋め込まれた態様で設置されてもよい。また、筐体100は、鉄道車両の床下部分に設置されてもよい。
【0094】
上記実施形態では、鉄道車両に搭載される鉄道車両用機器群が、客室を空調するための空調機器群400である場合における収納装置500の構成を例示した。収納装置500に収納される鉄道車両用機器群は空調機器群400に限られない。鉄道車両用機器群は、鉄道車両を制動させるためのブレーキユニットを構成するものであってもよい。鉄道車両用機器群がブレーキユニットを構成するものである場合、第1ねじ200で厚板部材150Aに固定される重量機器及び振動発生機器として、空気を圧縮する空気圧縮機、冷却用の送風機等が例示され、第2ねじ200で薄板部材150Bに固定される軽量機器及び非給電機器としては、オイルフィルター、除湿フィルター等が例示される。
【符号の説明】
【0095】
100…筐体、110…妻板、120…側板、130…仕切り板、140…カバー、150…固定部材、150A…厚板部材、150A’…第1ブラケット、150B…薄板部材、150B’…第2ブラケット、151…圧縮機固定部材(厚板部材)、152…圧縮機固定部材(厚板部材)、153…アキュムレータ固定部材(薄板部材)、154…室内送風機固定部材(厚板部材)、155…室内熱交換器固定部材(薄板部材)、156…室内熱交換器固定部材(薄板部材)、157…室外送風機固定部材(厚板部材)、158…室外熱交換器固定部材(薄板部材)、159…室外熱交換器固定部材(薄板部材)、200…第1ねじ、210…頭部、220…ねじ部、230…円筒部、240…座金、241…ばね座金、242…平座金、300…第2ねじ、310…頭部、320…ねじ部、330…円筒部、340…座金、341…ばね座金、342…平座金、400…空調機器群(鉄道車両用機器群)、410…第1冷凍サイクル装置、411…圧縮機、411a…圧縮機用ブラケット、412…室外熱交換器、412a…室外熱交換器用ブラケット、413…膨張器、414…室内熱交換器、414a…室内熱交換器用ブラケット、415…アキュムレータ、415a…アキュムレータ用ブラケット、420…第2冷凍サイクル装置、421…圧縮機、421a…圧縮機用ブラケット、422…室外熱交換器、422a…室外熱交換器用ブラケット、423…膨張器、424…室内熱交換器、424a…室内熱交換器用ブラケット、425…アキュムレータ、425a…アキュムレータ用ブラケット、430…室内送風機、430a…室内送風機用ブラケット、440…室外送風機、440a…室外送風機用ブラケット、450…ベルマウス、450a…ベルマウス用ブラケット、500…収納装置、FT1…めねじ、FT2…めねじ、TH1…挿通孔、TH2…挿通孔、GP…隙間、S1…圧縮機室、S2…室内機室、S3…室外機室。