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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】無線受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/227 20060101AFI20241028BHJP
   H04L 27/38 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H04L27/227
H04L27/38
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023133613
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】山北 晃大
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-140682(JP,A)
【文献】特開平6-188929(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161801(WO,A1)
【文献】特開2015-154137(JP,A)
【文献】特開2001-257656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00-27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調されたデータ信号に既知のパイロット信号が所定間隔ごとに挿入されたデータフレームを受信し、受信信号を出力する受信手段と、
復調された前記受信信号に発生した残留周波数誤差および位相誤差を前記パイロット信号から求めた第1の補正値を用いて補正する第1の位相制御手段と、
前記第1の位相制御手段による補正処理の後に前記データ信号から求めた第2の補正値を用いて前記残留周波数誤差および前記位相誤差を補正する第2の位相制御手段と、を備え、
前記第1の位相制御手段は、前記第1の補正値と、直前の補正処理で求められた前記第2の補正値とを比較し、比較結果に応じて、前記第1の補正値または前記第2の補正値を用いて前記残留周波数誤差および前記位相誤差を補正する、
ことを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
前記第1の位相制御手段は、
前記第2の補正値から前記第1の補正値を減算した値の絶対値と、復調された前記受信信号の信号点の位相間隔の半分の値とを比較し、
前記第2の補正値から前記第1の補正値を減算した値の絶対値が、前記信号点の位相間隔の半分の値よりも大きい場合には、前記第1の補正値を利用し、
前記第2の補正値から前記第1の補正値を減算した値の絶対値が、前記信号点の位相間隔の半分の値以下の場合には、前記第2の補正値を利用する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信信号に発生した残留周波数誤差および位相誤差を補正する無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル通信おいて、周波数帯域の利用効率を向上させ、データ通信を高速化する方法の1つとして、直交振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation;QAM)や多相位相変調(Phase Shift Keying;PSK)など、位相情報をデータの識別に使用する変調方式を用いて、デジタル変復調を多値化する方法がある。このような変調方式を用いた無線通信システムでは、周波数シフトに使用するローカル信号に送受信間で周波数誤差が発生し、受信信号にローカル周波数誤差や位相誤差が付加される。ローカル周波数誤差は、AFC(Automatic Frequency Control)により補正されるが、その際の推定誤差により残留周波数誤差が発生することが多い。そのため、特許文献1に記載されている技術では、APC(Automatic Phase Control)を用いて、残留周波数誤差と位相誤差とを補正している。
【0003】
衛星放送の伝送路規格として知られるDVB-S2規格を用いた衛星通信システムでは、低CNR(Career-to-Noise Ratio)条件下での通信を想定し、通信データのパイロット信号に含まれる既知信号を利用して残留周波数誤差および位相誤差を補正する第1のAPCと、パイロット信号およびデータ部分を利用して残留周波数誤差および位相誤差を補正する第2のAPCとを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5730861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、低CNR条件下では、第1のAPCにおける推定誤差が大きくなり、等価CNRが劣化するという問題がある。一方、低CNR条件下で第2のAPCのみを利用した場合、多値変調のコンスタレーションにデッドロック(信号点が誤った位相で収束する現象)が発生するという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、コンスタレーションのデッドロックを抑制しつつ、残留周波数誤差と位相誤差とを補正することが可能な無線受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、位相変調されたデータ信号に既知のパイロット信号が所定間隔ごとに挿入されたデータフレームを受信し、受信信号を出力する受信手段と、復調された前記受信信号に発生した残留周波数誤差および位相誤差を前記パイロット信号から求めた第1の補正値を用いて補正する第1の位相制御手段と、前記第1の位相制御手段による補正処理の後に前記データ信号から求めた第2の補正値を用いて前記残留周波数誤差および前記位相誤差を補正する第2の位相制御手段と、を備え、前記第1の位相制御手段は、前記第1の補正値と、直前の補正処理で求められた前記第2の補正値とを比較し、比較結果に応じて、前記第1の補正値または前記第2の補正値を用いて前記残留周波数誤差および前記位相誤差を補正する、ことを特徴とする無線受信装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無線受信装置において、前記第1の位相制御手段は、前記第2の補正値から前記第1の補正値を減算した値の絶対値と、復調された前記受信信号の信号点の位相間隔の半分の値とを比較し、前記第2の補正値から前記第1の補正値を減算した値の絶対値が、前記信号点の位相間隔の半分の値よりも大きい場合には、前記第1の補正値を利用し、前記第2の補正値から前記第1の補正値を減算した値の絶対値が、前記信号点の位相間隔の半分の値以下の場合には、前記第2の補正値を利用する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、第1の位相制御手段において、第1の補正値または第2の補正値を利用するので、低CNR条件下での等価CNRの劣化を抑制するとともに、急激な位相変動に対する耐性を向上することが可能である。また、第2の位相制御手段のみを利用することはないので、コンスタレーションのデッドロック状態の発生を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
図2図1に示す無線通信装置の送信部の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3図1に示す無線通信装置の受信部の概略構成を示す機能ブロック図である。
図4図2に示す送信部から送信されるデータフレームのフレーム構成を示す図である。
図5】受信信号の信号点のコンスタレーションを示す図である。
図6図3に示す第1のAPCの概略構成を示す機能ブロック図である。
図7図3に示す第2のAPCの概略構成を示す機能ブロック図である。
図8】第1のAPCにて第1の補正値と第2の補正値とが選択的に利用される状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。なお、以下では、この発明の特徴的な構成について説明し、無線通信を行う際の従来と同様の仕組みについては説明を省略する。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態に係る無線通信装置(無線受信装置)2を用いた無線通信システム1の概略構成を示す図である。無線通信システム1を構成する無線通信の送受信局のそれぞれに、無線通信装置2およびアンテナ3が配置される。無線通信装置2同士は、アンテナ3を介して無線回線4によって相互に接続される。なお、無線回線4には、通信衛星などが中継局として用いられる場合がある。
【0013】
まず、この実施の形態において、本発明に係る無線受信装置に相当する無線通信装置2の概略構成を説明する。
【0014】
無線通信装置2は、インターフェース部5と、送信部6と、分波器7と、受信部8と、を備える(図1の下側参照)。
【0015】
ここで、無線通信装置2は、送信用の機序と受信用の機序とを備えて送受信を行う装置であるところ、以下の説明では、送信用の機序を用いて送信に纏わる処理を行う場合の無線通信装置2のことを「送信側」と称し、受信用の機序を用いて受信に纏わる処理を行う場合の無線通信装置2のことを「受信側」と称する。
【0016】
インターフェース部5は、主として、データ回線終端装置51(データ通信装置やデータ回線装置と呼ばれる機器を含む)を備える。インターフェース部5は、通信対象の伝送データの入力を受け、この伝送データを、データ回線終端装置51を介して、送信部6へと出力する。
【0017】
送信部6は、インターフェース部5から出力される伝送データの入力を受け、伝送データをマッピング処理したデータ信号と、データ信号の長さ、変調方式などの情報を含むパイロット信号とを結合してデータフレームを生成し、さらに、データフレームに所定の周波数の搬送波信号を重畳させてデジタル変調する。なお、無線通信システム1において用いられる変調方式は、特定の方式に限定されるものではないものの、例えば16APSK(Amplitude and phase-shift keying)などが用いられる。
【0018】
送信部6は、デジタル変調されたデータフレームをアナログ信号に変換した上で、所定周波数よりも高周波の高周波信号に周波数変換し、パワーアンプで増幅した上で送信信号として出力する。送信信号は、送信部6から分波器7を介してアンテナ3へと導かれ、アンテナ3から無線回線4を介して他方の(言い換えると、この通信では受信側になる)無線通信装置2のアンテナ3へと、電波として送信される。
【0019】
また、他方の(言い換えると、この通信では送信側になる)無線通信装置2のアンテナ3から無線回線4を介して送信信号が当該の(言い換えると、この通信では受信側になる)無線通信装置2のアンテナ3へと電波として送信されると、アンテナ3は、受信した電波を電気信号(受信信号)へと変換して出力する。
【0020】
アンテナ3から出力される受信信号は、分波器7を介して受信部8へと導かれる。受信部8は、受信信号の入力を受け、受信信号を、所定の周波数帯域の信号のみを通過させるチャンネルフィルタを通過させた上で、前記高周波よりも低い周波数の信号に変換する。受信部8は、さらに、周波数変換した受信信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0021】
受信部8は、デジタルの受信信号に対して直交検波処理(復調)を施して位相が相互に直交する同相成分(Ich)のベースバンド信号と直交成分(Qch)のベースバンド信号とを生成する。なお、以降の説明では同相成分と直交成分との各々別々に着目する必要がある場合を除いて同相成分と直交成分とを特に区別することなくどちらにも共通する内容として説明し、また、図面では同相成分の信号と直交成分の信号とを1つの信号線で表す。
【0022】
受信部8は、受信したデータフレームに周波数オフセット補正、クロック誤差の補正、位相補正などを施す。そして、受信部8は、各種補正が施されたデータフレームからパイロット信号を分離し、データ信号にデマッピング処理を施して伝送データを生成し、インターフェース部5へと出力する。
【0023】
図2は、送信部6の概略構成を示す機能ブロック図である。送信部6は、FIFOメモリ61と、マッピング部62と、パイロット信号生成部63と、結合部64と、送信ROF65と、直交変調部66と、DAC(Digital Analog Converter)67と、混合器68と、局部発振器69と、パワーアンプ610と、を備える。
【0024】
FIFOメモリ61は、インターフェース部5から出力された伝送データを一時的に記憶してマッピング部62へ出力するメモリであり、いわゆる、先入れ先出し法により伝送データをマッピング部62へ転送する。
【0025】
マッピング部62は、伝送データのバイナリデータ列に対し、所定の信号点配置になるようにマッピング処理を施してシンボル列からなるデータ信号を生成して結合部64へ出力する。パイロット信号生成部63は、クロック誤差の補正に用いられる交番信号などの既知信号や、データ信号の長さ、変調方式などを含むパイロット信号を生成して結合部64へ出力する。
【0026】
結合部64は、マッピング部62から入力されたデータ信号にパイロット信号生成部63から入力されたパイロット信号(第1パイロット、第2パイロットなど)を所定間隔で挿入・結合してデータフレームDF(図4参照)を生成し、送信ROF65へ出力する。送信ROF65は、ロールオフフィルタの機能を備え、結合部64から入力されたデータフレームDFに帯域制限処理を施して直交変調部66へ出力する。
【0027】
直交変調部66は、送信ROF65から入力されたデータフレームDFに所定の周波数の搬送波信号を重畳させてデジタル変調してDAC67へ出力する。なお、直交変調部66において用いられる変調方式は、特定の方式に限定されるものではないものの、例えば直交振幅変調が用いられる。
【0028】
DAC67は、直交変調部66から入力されたデータフレームDFをアナログ信号の送信信号に変換して混合器68へ出力する。局部発振器69は、所定の固定周波数を持つ局部発振信号を生成し、生成した局部発振信号を混合器68へ出力する。混合器68は、DAC67から入力された送信信号に局部発振信号を混合して所定の周波数よりも高周波の信号に変換する。
【0029】
パワーアンプ610は、混合器68にて周波数変換された送信信号を増幅してアンテナ3へ出力する。アンテナ3は、パワーアンプ610にて増幅された送信信号を他方の(言い換えると、この通信では受信側になる)無線通信装置2のアンテナ3へと、電波として送信する。なお、図示してはいないが、パワーアンプ610とアンテナ3との間には分波器7が接続されている。
【0030】
図3は、受信部8の概略構成を示す機能ブロック図である。受信部8は、チャンネルフィルタ81と、混合器82と、局部発振器83と、ADC(Analog Digital Converter)84と、直交検波部85と、AFC(Automatic frequency control)86と、受信ROF87と、シンボル再生部810と、第1のAPC(Automatic Phase Control)88と、パイロット復調部811と、第2のAPC89と、分離部812と、デマッピング部813と、フレーム検出部814と、タイミング制御部815と、を備える。
【0031】
アンテナ3は、受信した電波を電気信号(受信信号)へと変換してチャンネルフィルタ81へ出力する。アンテナ3とチャンネルフィルタ81との間には分波器7が接続されている。チャンネルフィルタ81は、アンテナ3から入力された受信信号のうち所定の周波数帯域を通過させて混合器82へ出力する。局部発振器83は、所定の固定周波数を持つ局部発振信号を生成し、生成した局部発振信号を混合器82へ出力する。混合器82は、チャンネルフィルタ81から入力された受信信号に局部発振信号を混合して所定の周波数よりも低い周波数の信号に変換し、ADC84へ出力する。
【0032】
ADC84は、混合器82から入力された受信信号をデジタル信号に変換する。直交検波部85は、受信信号に直交検波処理を施して位相が相互に直交する同相成分(Ich)のベースバンド信号と直交成分(Qch)のベースバンド信号とを生成する。
【0033】
図5(A)は、直交検波部85により生成された16APSKのベースバンド信号をI-Q平面(横軸にIchをとり、縦軸にQchをとった座標平面) 上に示したコンスタレーションを示す図である。16APSKのベースバンド信号は、IchとQchの交点を中心とする2重の円環上に16個の信号点(シンボル)が配置されており、外側の円環上の信号点の間隔が信号点の位相間隔となる。
【0034】
AFC86は、直交検波部85から入力されたベースバンド信号のデータフレームDFに周波数オフセット補正を行なって受信ROF87へ出力する。受信ROF87は、ロールオフフィルタの機能を備え、AFC86から入力されたベースバンド信号に帯域制限処理を施してシンボル再生部810へ出力する。シンボル再生部810は、受信ROF87から入力されたベースバンド信号のデータフレームDFに含まれる交番信号を用いてクロック誤差を補正し、第1のAPC(第1の位相制御手段)88へ出力する。
【0035】
シンボル再生部810から第1のAPC88に入力されるベースバンド信号には、位相誤差と、AFC86により周波数オフセット補正を行なう際に発生する残留周波数誤差とが含まれている。第1のAPC88は、シンボル再生部810から入力されたベースバンド信号のデータフレームDFの残留周波数誤差および位相誤差を、パイロット信号の既知信号に基づく第1の補正値を利用して補正を行い、パイロット復調部811へ出力する。
【0036】
パイロット復調部811は、パイロット信号からデータ信号の長さ、変調方式などに関する情報を抽出し、データフレームDFとともに第2のAPC(第2の位相制御手段)89へ出力する。第2のAPC89は、パイロット復調部811から入力されたデータ信号の長さ、変調方式などに関する情報に基づいて、第2の補正値を生成し、この第2の補正値を用いてベースバンド信号のデータフレームDFの残留周波数誤差および位相誤差を補正する。第2のAPC89は、補正後のベースバンド信号を分離部812へ出力する。
【0037】
分離部812は、データフレームDFからデータ信号を分離してデマッピング部813へ出力する。デマッピング部813は、分離部812から入力されたシンボル列データからなる信号(同相成分と直交成分とのそれぞれ)に対してデマッピング処理(復号処理)を施し、シンボル列データをバイナリデータ列の伝送データに変換してインターフェース部5へ出力する。
【0038】
フレーム検出部814は、シンボル再生部810から入力されたベースバンド信号からデータフレームDFを検出し、データフレームDFを検出した場合には、検出フラグをタイミング制御部815へ出力する。検出フラグが入力されたタイミング制御部815は、各モジュールに対しデータフレームDFに対する処理を行なわせるためのイネーブル信号を出力する。
【0039】
従来の受信部8では、低CNR条件下では、第1のAPC88における推定誤差が大きくなり、等価CNRが劣化するという問題がある。一方、低CNR条件下で第2のAPC89のみを利用した場合、多値変調のコンスタレーションにデッドロック(信号点が誤った位相で収束する現象)が発生するという問題がある。図5(B)は、内側の円環上の信号点がIchとQchの交点を中心に回転し、外側の信号点と近い位置で収束したデッドロック状態を示している。
【0040】
本実施の形態では、このようなコンスタレーションのデッドロックを抑制するために、第1のAPC88は、第1の補正値と、直前の補正処理で求められた第2の補正値とを比較し、比較結果に応じて、第1の補正値または第2の補正値を用いて残留周波数誤差および位相誤差を補正するようにしている。
【0041】
図6は、本実施の形態に係る第1のAPC88の概略構成を示す機能ブロック図である。第1のAPC88は、位相誤差算出部881と、アンラッピング部882と、閾値比較部883と、周波数変動推定部884と、平均化部885と、周波数補正部886と、位相・IQ変換部887と、位相補正部888と、を備える。
【0042】
位相誤差算出部881は、シンボル再生部810から入力されたデータフレームDFの位相誤差を算出し、位相誤差信号をアンラッピング部882へ出力する。アンラッピング部882は、位相誤差算出部881から入力された位相誤差信号の位相を再構成し、再構成した位相データを閾値比較部883へ出力する。
【0043】
閾値比較部883は、位相誤差算出部881から入力された位相データと、データフレームDFのパイロット信号の既知信号とに基づいて、第1の補正値を算出する。また、閾値比較部883には、直前の補正処理において第2のAPC89により求められた第2の補正値が入力される。閾値比較部883は、第2のAPC89から入力された第2の補正値と、第1の補正値とを比較し、補正に利用する補正値を決定する。
【0044】
具体的には、閾値比較部883は、下記式(1)、(2)に基づいて第1の補正値と第2の補正値とを比較して補正に利用する補正値を決定し、決定した補正値を周波数補正部886へ出力する。
|第2の補正値-第1の補正値|>信号点の位相間隔/2=第1の補正値・・(1)
|第2の補正値-第1の補正値|≦信号点の位相間隔/2=第2の補正値・・(2)
【0045】
なお、第1のAPC88にて生成される第1の補正値は、既知信号に基づいて生成されるため、0~360度の位相誤差を補正することが可能である。これに対し、第2のAPC89にて生成される第2の補正値は、デマッピング(硬判定ともいう)後のデータ信号に基づいて生成されるため、硬判定誤りが生じない範囲、すなわち、図5(A)に示すように、信号点の位相間隔の1/2の範囲で位相誤差を補正することが可能である。
【0046】
周波数変動推定部884は、位相誤差算出部881から入力された位相再構成後のデータフレームDFに基づいてローカル周波数の変動値を推定し、推定値を平均化部885へ出力する。平均化部885は、周波数変動推定部884から入力されたローカル周波数の変動値の推定値を平均化して周波数補正部886へ出力する。
【0047】
周波数補正部886は、閾値比較部883により決定された補正値と、平均化部885から入力されたローカル周波数の変動値の推定値の平均値とに基づいて、閾値比較部883にて決定された補正値の周波数を補正し、位相・IQ変換部887へ出力する。
【0048】
位相・IQ変換部887は、周波数補正部886から入力された補正値の位相をIchおよびQchの信号に変換し、位相補正部888へ出力する。位相補正部888は、シンボル再生部810から入力された補正値のIchおよびQchの信号をデータフレームDFに乗算して位相誤差を補正する。
【0049】
図7は、本実施の形態に係る第2のAPC89の概略構成を示す機能ブロック図である。第2のAPC89は、位相補正部891と、補正後信号出力部892と、デマッピング部893と、位相誤差算出部894と、ループフィルタ895と、第2補正値出力部896と、位相・IQ変換部897と、を備える。
【0050】
位相補正部891は、パイロット復調部811から入力されたデータフレームDFと、位相・IQ変換部897から入力された第2の補正値のIchおよびQchの信号とを乗算してデータフレームDFの位相誤差を補正する。補正後のデータフレームDFは、補正後信号出力部892から分離部812へ出力されるとともに、デマッピング部893と、位相誤差算出部894とに出力される。
【0051】
デマッピング部893は、位相補正部891から入力されたデータフレームDFにデマッピング処理(復号処理)を施して、シンボル列データをバイナリデータ列の伝送データに変換して位相誤差算出部894へ出力する。位相誤差算出部894は、位相補正部891から入力されたデータフレームDFと、デマッピング部893から入力された伝送データとに基づいて位相誤差を算出し、位相誤差信号をループフィルタ895へ出力する。
【0052】
ループフィルタ895は、位相誤差算出部894から入力される位相誤差信号のうちの所定の周波数成分を、所定のループ帯域幅に応じて除去して第2の補正値を生成する。第2補正値出力部896は、生成された第2の補正値を第1のAPC88へ出力するとともに、位相・IQ変換部897へ出力する。位相・IQ変換部897は、ループフィルタ895から入力された第2の補正値の位相をIchおよびQchの信号に変換し、位相補正部891へ出力する。
【0053】
図8は、第1のAPC88の閾値比較部883にて生成される第1の補正値と、第2のAPC89にて生成される第2の補正値とが、第1のAPC88にて比較されて選択される状態を示す模式図である。このように、本実施の形態に係る無線通信装置2によれば、第1の補正値と第2の補正値とを効果的に利用して残留周波数誤差および位相誤差を補正することができる。
【0054】
以上で説明したように、本実施の形態に係る無線通信装置2によれば、第1のAPC88において、第1の補正値または第2の補正値を利用するので、低CNR条件下での等価CNRの劣化を抑制するとともに、急激な位相変動に対する耐性を向上することが可能である。また、第2のAPC89のみを利用することがないので、コンスタレーションのデッドロック状態の発生を抑制することが可能である。
【0055】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 無線通信システム
2 無線通信装置
3 アンテナ(受信部)
5 送信部
8 受信部
88 第1のAPC(第1の位相制御手段)
89 第2のAPC(第2の位相制御手段)
DF データフレーム
【要約】
【課題】コンスタレーションのデッドロックを抑制しつつ、残留周波数誤差と位相誤差とを補正することが可能な無線受信装置を提供する。
【解決手段】無線通信装置の第1のAPC88は、閾値比較部883にてパイロット信号から求めた第1の補正値と、第2のAPCによりデータ信号から求めた第2の補正値とを比較し、受信信号の残留周波数誤差と位相誤差との補正に用いる補正値を選択する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8