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  • 特許-信号品質監視装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】信号品質監視装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/20 20060101AFI20241028BHJP
   H04H 20/06 20080101ALI20241028BHJP
   H04H 20/12 20080101ALI20241028BHJP
【FI】
H04L1/20
H04H20/06
H04H20/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019203889
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021078021
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 逸平
(72)【発明者】
【氏名】松下 賢一
(72)【発明者】
【氏名】祝田 幹彦
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】寺谷 大亮
【審判官】丸山 高政
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-143626(JP,A)
【文献】特開2011-109332(JP,A)
【文献】特開平8-125569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/20
H04H20/06
H04H20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送トランスポートストリーム信号に前方誤り訂正符号化処理を施してデジタル変調してデジタル放送信号を生成する変調部を備える送信機からアンテナ発射前の前記デジタル放送信号を取り込み、当該デジタル放送信号に基づく再生トランスポートストリーム信号を生成する復調部と、
前記変調部による前記前方誤り訂正符号化処理を経ていないSTL回線又はTTL回線を経由してマイクロ波受信部から供給される放送トランスポートストリーム信号と、前記変調部による前記前方誤り訂正符号化処理を経た再生トランスポートストリーム信号との同一性を1ビットレベルで比較する比較部と、
前記比較の結果に基づいて、前記デジタル放送信号の品質を判定する判定部とを具備する、信号品質監視装置。
【請求項2】
前記再生トランスポートストリーム信号の位相と前記放送トランスポートストリーム信号の位相とを揃えて前記比較部に入力する位相整合部をさらに具備する、請求項1に記載の信号品質監視装置。
【請求項3】
前記位相整合部は、前記放送トランスポートストリーム信号の位相を遅延させる遅延部である、請求項2に記載の信号品質監視装置。
【請求項4】
放送トランスポートストリーム信号に前方誤り訂正符号化処理を施してデジタル変調してデジタル放送信号を生成する変調部を備える送信機からアンテナ発射前の前記デジタル放送信号を取り込む信号品質監視装置に適用される方法であって、
前記信号品質監視装置が、前記デジタル放送信号に基づく再生トランスポートストリーム信号を生成する過程と、
前記信号品質監視装置が、前記変調部による前記前方誤り訂正符号化処理を経ていないSTL回線又はTTL回線を経由してマイクロ波受信部から供給される放送トランスポートストリーム信号と、前記変調部による前記前方誤り訂正符号化処理を経た再生トランスポートストリーム信号との同一性を1ビットレベルで比較する過程と、
前記信号品質監視装置が、前記比較の結果に基づいて、前記デジタル放送信号の品質を判定する過程とを具備する、信号品質監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、信号品質監視装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送システムにおいて、放送波の信号品質を監視することは重要である。信号品質を表す指標には、C/N(Carrier to Noise Ratio)、MER(Modulation Error Rate)、あるいはBER(Bit Error Rate)などがある。放送波が維持されていても信号品質が低下している場合があり、このような状態では受信者側で難視が生じる。難視をもたらす信号品質の低下の多くは、装置の誤設定や故障により引き起こされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-109332号公報
【文献】特開2007-221346号公報
【文献】特開2003-111105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
BER、C/N、周波数精度などを監視できたとしても、これらの指標によっては検知できない故障もある。すなわち、TS(Transport Stream)信号が受信されてから再送信される過程の中で、誤り訂正符号を付加される前の放送TS信号に誤りが生じると、BER、C/N、周波数精度が劣化しない場合がある。このような異常(サイレント故障と呼ばれる)を検知できる技術は知られていない。サイレント故障は、例えば、装置内の半導体メモリが微弱な宇宙線や放射線に当てられ、予期せぬビットエラーが生じることが原因ともいわれている。
【0005】
そこで、目的は、誤り訂正符号化処理されていない信号の品質の劣化を検出することの可能な信号品質監視装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、信号品質監視装置は、復調部と、比較部と、判定部とを具備する。復調部は、放送トランスポートストリーム信号に前方誤り訂正符号化処理を施してデジタル変調してデジタル放送信号を生成する変調部を備える送信機からアンテナ発射前の前記デジタル放送信号を取り込み、当該デジタル放送信号に基づく再生トランスポートストリーム信号を生成する。比較部は、前記変調部による前記前方誤り訂正符号化処理を経ていないSTL回線又はTTL回線を経由してマイクロ波受信部から供給される放送トランスポートストリーム信号と、前記変調部による前記前方誤り訂正符号化処理を経た再生トランスポートストリーム信号との同一性を1ビットレベルで比較する。判定部は、前記比較の結果に基づいて、前記デジタル放送信号の品質を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る地上デジタル放送システムの一例を示す図である。
図2図2は、信号品質監視装置18に入力される信号について説明するためのブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る信号品質監視装置18の他の例を示す機能ブロック図である。
図4図4は、信号品質監視装置18の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、この発明の実施の形態について説明する。地上デジタル放送では、放送プログラムを伝送するために、マイクロ波回線などのSTL(Studio to Transmitter Link)/TTL(Transmitter to Transmitter Link)回線により演奏所(スタジオ)、放送送信所(親局)、各中継局間を接続し、このSTL/TTL回線を利用した多段中継が行われている。地上デジタル放送では、DQPSK、QPSK、16QAM、64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの変調方式が用いられる。例えば64QAM変調方式は、搬送波を振幅と位相が異なる64種類の状態(シンボル)に変化させて信号を伝送する方式であり、1つのシンボルあたり6ビットの情報を伝送することができる。
【0009】
図1は、実施形態に係る地上デジタル放送システムの一例を示す図である。このシステムは、送信所100と、中継所200とを具備する。送信所100は、放送局からマイクロ波帯域のSTL(Studio to Transmitter Link)回線経由で受信したTS信号を、地上波デジタルテレビジョン放送帯域の放送波(放送TS信号)に変換し、割り当て地域に向けて送信する。中継所200は、送信された放送波を中継送信する。
【0010】
送信所100において、アンテナ10で受信されたデジタルマイクロ波は、分配部11を介して、運用系統(例えば、1系)、および、冗長系統(例えば、2系)に分配入力される。
【0011】
1系において、デジタルマイクロ波はマイクロ波受信部12で受信復調され、トランスポートストリーム(TS)信号が生成される。このTS信号から、送信機13により送信レベルの放送波(出力信号)が生成され、系統切替部16に入力される。2系においても同様に、分配部11からのデジタルマイクロ波はマイクロ波受信部14で受信復調され、TS信号が生成される。このTS信号から、送信機15により、送信レベルの放送波(出力信号)が生成され、系統切替部16に入力される。
【0012】
送信機13、送信機15は互いに冗長化されていて、いずれも、共通のデジタルマイクロ波に基づく放送信号をそれぞれ再生する。系統切替部16は、送信機13または送信機15のいずれか一方からの放送波を放送アンテナ17に接続し、空間(エアー領域)に出力する。
【0013】
放送アンテナ17から出力された放送波は、中継所200の受信アンテナ20で受信され、分配部21により中継装置22、23に分配入力される。ここでも、中継装置22は1系として機能し、中継装置23は2系として機能して、互いに冗長系として動作する。
【0014】
中継装置22,23は、それぞれ放送波を再生し、中継装置の出力レベルにまで増幅して系統切替部24に出力する。系統切替部24は、中継装置22または中継装置23のいずれか一方からの放送波を中継装置用アンテナ25に接続する。これにより放送波は中継される。
【0015】
ところで、送信所100は、送信される放送波の品質を監視するための信号品質監視装置18を備える。信号品質監視装置18は、1系のマイクロ波受信部12からのトランスポートストリーム(TS)信号と、1系の送信機13から出力される放送波とを取り込み、互いに比較する。そして、この比較の結果に基づいて、放送波の品質監視する。
【0016】
図2は、信号品質監視装置18に入力される信号について説明するためのブロック図である。マイクロ波受信部12からの放送トランスポートストリーム信号は、送信機13と信号品質監視装置18との双方に入力される。
【0017】
ここで、送信機13は、変調部(MOD)131、エキサイタ(EX)132、および送信電力増幅器(PA)133を備える。変調部131は、放送トランスポートストリーム信号に前方誤り訂正(Forward Error Correction:FEC)符号化処理を施し、さらにデジタル変調してデジタル放送信号を生成する。エキサイタ132は、このデジタル放送信号を送信周波数帯域(RF)にまで周波数変換する。このRF帯域のデジタル放送信号は、信号品質監視装置18に入力され、また、送信電力増幅器133により送信レベルにまで増幅されて放送アンテナ17(図1)から放射される。
【0018】
図3は、実施形態に係る信号品質監視装置18の他の例を示す機能ブロック図である。信号品質監視装置18は、周波数変換部31、直交復調部32、FFT部33、等化処理部34、信号比較部51、品質判定部60、および、遅延調整部71を備える。このうち周波数変換部31、直交復調部32、FFT部33、および等化処理部34は、送信機13からのデジタル放送信号を取り込み、このデジタル放送信号に基づく再生トランスポートストリーム信号を生成する、復調部として機能する。
【0019】
図3において、デジタル放送信号は、周波数変換部31により中間周波数(IF)帯域の信号にダウンコンバートされる。直交復調部32は、IF信号を直交復調(OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex )復調)し、復調信号を生成する。FFT部33は、復調信号に高速フーリエ変換(FFT)演算処理を施し、周波数軸信号を得る。等化処理部34は、この周波数軸信号に、例えばパイロット信号を利用した等化処理を施し、受信コンスタレーション信号を生成する。さらに等化処理部34は、受信コンスタレーション信号にFEC処理を施す。これにより、デジタル放送信号に基づく再生トランスポートストリーム信号が生成される。
【0020】
また、信号品質監視装置18は、STL回線経由で供給される放送トランスポートストリーム信号(放送TS)を、マイクロ波受信部12から取り込む。この放送トランスポートストリーム信号は、遅延調整部71により遅延量を調整され、再生トランスポートストリーム信号と位相を合わせて信号比較部51に入力される。信号比較部51は、再生トランスポートストリーム信号と、放送トランスポートストリーム信号とを比較する。
【0021】
変調部131によるFEC処理を経ていない放送トランスポートストリーム信号と、変調部131によるFEC処理を経た再生トランスポートストリーム信号との双方が、信号比較部51に入力されることになる。変調部131においてビットエラー等の故障(サイレント故障)が生じていなければ、信号比較部51に入力される信号は互いに同じになるはずである。よって、両者を比較した結果は同じになり、二つの信号同士の差分は0となる。一方、二つの信号を比較した結果が異なっていると、信号同士の差分は0ではない値になる。
【0022】
品質判定部60は、この比較結果を取得して、例えば既定のしきい値との大小関係に基づいて異常の有無を判定し、判定結果を出力する。すなわち品質判定部60は、二つの信号を比較した結果に基づいて、変調部131から出力されたデジタル放送信号の品質を判定する。つまり品質判定部60は、放送トランスポートストリーム信号と再生トランスポートストリーム信号とを比較し、両者が異なれば、品質判定部60はサイレント故障の発生を検出する。
【0023】
図4は、信号品質監視装置18の処理手順の一例を示すフローチャートである。信号品質監視装置18は、マイクロ波受信部12から放送トランスポートストリーム信号を取り込み(ステップS1)、デジタル放送信号を送信機13から取り込む(ステップS2)。次に信号品質監視装置18は、デジタル放送信号をIF信号に周波数変換する(ステップS3)。次に、信号品質監視装置18はIF信号を直交復調し(ステップS4)、その後、FFT処理(ステップS5)および等化処理(ステップS6)を施すことにより、デジタル放送信号の受信コンスタレーション信号が生成される。さらに、信号品質監視装置18は、受信コンスタレーション信号に前方誤り訂正符号化処理を施して(ステップS7)、再生トランスポートストリーム信号を生成する。ステップS3~ステップS7の過程が、デジタル放送信号に基づく再生トランスポートストリーム信号を生成する過程に相当する。
【0024】
次に信号品質監視装置18は、再生トランスポートストリーム信号と、送信トランスポートストリーム信号とを比較し(ステップS8)、その差異がしきい値以上であるか否かを判定する(ステップS9)。差異がしきい値未満であれば、処理手順は最初に戻る。差異がしきい値以上であれば、信号品質監視装置18はアラートを出力する(ステップS10)。
【0025】
以上のように実施形態では、放送トランスポートストリーム信号と、送信機13から出力されたデジタル放送信号を復調して再生された再生トランスポートストリーム信号とを比較し、信号の同一性を監視するようにしている。すなわち、送信所において、アンテナ発射前の送信機出力信号を復調して得られた再生トランスポートストリーム信号と、変調部131に入力される前の送信トランスポートストリーム信号とを比較することで、変調部131で生じる誤りを検出することができる。
【0026】
既存の技術では、1つの系統の信号品質を、BER、C/N、周波数精度のような指標でしか監視することができないため、これらの指標に現れる異常を検知できるに留まっていた。変調部131で誤り訂正符号化処理を行った後に生じた誤りであれば、誤り訂正能力の範囲の中であれば訂正可能である。しかし、誤り訂正符号を付加する前に信号に生じた誤りは、当然ながら訂正することができないし、外部で検出することもできない。
【0027】
これに対し実施形態では、送信機13の変調部131への入力信号(放送トランスポートストリーム信号)と、復調処理が全て行われたTS信号(再生トランスポートストリーム信号)とを互いに比較することで、トランスポートストリーム信号の同一性を1ビットレベルで監視することができる。
【0028】
従って実施形態によれば、誤り訂正符号化処理されていない信号の品質の劣化を検出することの可能な信号品質監視装置および方法を提供することが可能になる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
10…アンテナ、11…分配部、12…マイクロ波受信部、13,15…送信機、14…マイクロ波受信部、16…系統切替部、17…放送アンテナ、18…信号品質監視装置、20…受信アンテナ、21…分配部、22,23…中継装置、24…系統切替部、25…中継装置用アンテナ、31…周波数変換部、32…直交復調部、33…FFT部、34…等化処理部、51…信号比較部、60…品質判定部、71…遅延調整部、100…送信所、131…変調部、132…エキサイタ、133…送信電力増幅器、200…中継所。
図1
図2
図3
図4