(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】眼鏡レンズをコーティングするためのシステム、方法および支持体
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20241028BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20241028BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20241028BHJP
G02B 1/113 20150101ALI20241028BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
C23C14/34 V
C23C14/50 K
C23C14/56 G
G02B1/113
G02C7/00
(21)【出願番号】P 2019532056
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2017079383
(87)【国際公開番号】W WO2018108426
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】102016014835.7
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016014982.5
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016125273.5
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517440265
【氏名又は名称】シュナイダー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コムパニー コマンデイトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】フュール マルクス
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】井上 猛
【審判官】池渕 立
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-171204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0053530(US,A1)
【文献】特開昭60-204882(JP,A)
【文献】特開2010-199517(JP,A)
【文献】国際公開第98/052075(WO,A1)
【文献】特開2015-045087(JP,A)
【文献】特開平10-317135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズ(2)をコーティングする設備(100)であって、
前記眼鏡レンズ(2)を真空中でコーティングする複数のコーティング装置(1)と、
眼鏡レンズ(2)または眼鏡レンズ(2)を備えたキャリヤ(10)を一コーティング装置(1)から別のコーティング装置(1)にまたは1又は2以上のコーティング装置(1)で形成される一コーティングライン(B)から別のコーティングライン(B)に直線状に運搬する運搬機器(20)とを含み、
前記設備(100)は、移送チャンバ(27,31)を含み、前記コーティング装置(1)は、別々のコーティングチャンバ(7)を有し、前記コーティングチャンバ(7)および前記移送チャンバ(27,31)は、連続型または相互連結型真空システムを形成している、設備において、
前記キャリヤ(10)は、前記眼鏡レンズ(2)をそれぞれ、該眼鏡レンズ(2)の回転中心を通る該眼鏡レンズ(2)自体の軸線(A)回りに回転可能に保持するよう設計され、
前記移送チャンバ(27,31)は、前記眼鏡レンズ(2)を選択的に別々のコーティング装置(1)または別々のコーティングライン(B)にさらに運搬するよう設計され、前記別々のコーティング装置(1)または別々のコーティングライン(B)は、前記移送チャンバ(27)に並列に連結されて
おり、
前記移送チャンバ(27,31)は、眼鏡レンズ(2)を真空下において一コーティング装置(1)又は一コーティングライン(B)から別々のコーティング装置(1)または別々のコーティングライン(B)に運搬するように構成されている、設備。
【請求項2】
前記コーティングチャンバ(7)は、ロック(26)によって互いにかつ/あるいは前記移送チャンバ(27,31)から分離されているまたは分離可能である、請求項1記載の設備。
【請求項3】
前記設備(100)および/または前記運搬機器(20)は、一コーティング装置(1)から別のコーティング装置(1)中への又は一コーティングライン(B)から別のコーティングライン(B)中への眼鏡レンズ(2)の不連続運搬を可能にするよう設計されている、請求項1または2記載の設備。
【請求項4】
各コーティング装置(1)は、前記眼鏡レンズ(2)を別のコーティング装置(1)または前記移送チャンバ(27,31)にさらに運搬するためのそれ自体の運搬駆動装置(21)を有し、および/または
前記複数のまたは全てのコーティング装置(1)は各々、コーティングされるべき前記眼鏡レンズ(2)の回転のためのそれ自体の回転駆動装置(11)を有する、請求項1~3のうちいずれか一に記載の設備。
【請求項5】
前記設備(100)は、別々のコーティング方法のために別々の仕方で動作する別々のコーティング装置(1)および/または表面仕上げのための少なくとも1つの装置(33)を含む、請求項1~4のうちいずれか一に記載の設備。
【請求項6】
前記設備(100)および/または前記キャリヤ(10)は、前記眼鏡レンズ(2)の両面コーティングを可能にするよう設計され、および/または
前記設備(100)は、前記眼鏡レンズ(2)をそれぞれ群の状態でコーティングするよう設計され、前記群は、別々のコーティング装置(1)で連続してコーティングされ、および/または
前記設備(100)は、複数の群をなした眼鏡レンズ(2)を受け入れるよう設計されている、請求項1~5のうちいずれか一に記載の設備。
【請求項7】
前記設備(100)は、前記眼鏡レンズ(2)が個別具体的にかつ/あるいはコーティングされるべき該眼鏡レンズの表面の凸状または凹状の曲率に応じてかつ/あるいはコーティングされるべき前記表面の曲率に応じて別々の仕方でコーティングされるとともに/あるいは別々のコーティング装置(1)に運搬されるとともに/あるいは前記コーティング装置(1)またはコーティングパラメータをそれに応じて適合させるような仕方で設計されている、請求項1~6のうちいずれか一に記載の設備。
【請求項8】
前記設備(100)および/または該設備の真空システムにコーティングされるべき眼鏡レンズ(2)および/またはコーティングされるべき眼鏡レンズ(2)を備えたキャリヤ(10)を自動化された仕方で装填するために、かつ/あるいはコーティング済みの眼鏡レンズ(2)および/またはコーティング済みの眼鏡レンズ(2)を備えたキャリア(10)を自動化された仕方で運び去るために、運搬システム(25)が前記設備(100)に割り当てられまたは前記設備(100)の一部をなしている、請求項1~7のうちいずれか一に記載の設備。
【請求項9】
前記眼鏡レンズ(2)のコーティングは、気相蒸着によって実施される、請求項1~8のうちいずれか一に記載の設備。
【請求項10】
前記キャリヤ(10)は、レール(22)上を案内されることができる、請求項1~9のうちいずれか一に記載の設備。
【請求項11】
眼鏡レンズ(2)を設備(100)内において真空中で、コーティングする方法であって、
前記眼鏡レンズ(2)はそれぞれ、キャリヤ(10)によって、該眼鏡レンズ(2)の回転中心を通る該眼鏡レンズ(2)自体の軸線(A)回りに回転可能に保持され、
前記眼鏡レンズ(2)に最初に、コーティング装置(1A,1B)または1又は2以上のコーティング装置(1)で形成されるコーティングライン(B1)で第1のコーティングまたは基本的コーティングを施し、次に別のコーティング装置(1C,1D)または別のコーティングライン(B2~B6)で少なくとも1つの別のコーティングを施し、
前記眼鏡レンズ(2)を前記第1のコーティングまたは基本コーティングのために前記コーティング装置(1A,1B)および/または前記コーティングライン(B1)から運搬し、次に真空下において移送チャンバ(27,31)を通って
別のコーティング装置(1C,1D)および/または
別のコーティングライン(B2~B6)に運搬する、方法において、
前記
別のコーティング装置(1C,1D)および/または前記
別のコーティングライン(B2~B6)は、前記移送チャンバ(27)に並列に連結されている複数のコーティング装置(1C,1D)および/または複数のコーティングライン(B2~B6)から選択され、
前記移送チャンバ(27)を通った前記運搬は、前記設備(100)内の他の主要な、直線状の運搬に対して横方向に実現される、方法。
【請求項12】
前記眼鏡レンズ(2)のコーティングは、気相蒸着によって実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記眼鏡レンズ(2)のコーティングは、スパッタリングによって実施され、それぞれ2つのスパッタリング源(3)またはターゲット(4)が前記眼鏡レンズ(2)の一方の面および他方の面をコーティングするために用いられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記眼鏡レンズ(2)のコーティングは、スパッタリングによって実施され、互いに隣接してかつ/あるいは平行に配置されたそれぞれ2つのスパッタリング源(3)またはターゲット(4)を前記第1のコーティングおよび別のコーティングの被着のために使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記眼鏡レンズ(2)を別々のコーティング方法でコーティングする、および/または、前記眼鏡レンズ(2)に最終的に表面仕上げを施すとともに/あるいはエンドコーティングを施す、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記眼鏡レンズ(2)を、個別的にかつ/あるいはコーティングされるべき該眼鏡レンズの表面の凸状または凹状の曲率に応じてかつ/あるいはコーティングされるべき前記表面の曲率に応じて、別々の仕方でコーティングするとともに/あるいは別々のコーティング装置(1)に運搬する、請求項11~15のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項17】
前記設備(100)および/または該設備の真空システムにコーティングされるべき眼鏡レンズ(2)および/またはコーティングされるべき眼鏡レンズ(2)を備えたキャリヤ(10)を自動化された仕方で装填するとともに/あるいは、
コーティング済みの眼鏡レンズ(2)および/またはコーティング済みの眼鏡レンズ(2)を備えたキャリア(10)を自動化された仕方で運び去る、請求項11~16のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項18】
前記眼鏡レンズ(2)を複数のコーティングおよび/または表面仕上げが被着されるまで、前記設備(100)および/または該設備の真空システム内への受け入れ後、もっぱら真空下に保持する、請求項11~17のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項19】
前記キャリヤ(10)は、レール(22)上を案内されることができる、請求項11~18のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項20】
前記眼鏡レンズ(2)を別々のコーティング装置(1)で互いに反対側から連続してコーティングする、請求項11~19のうちいずれか一に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1~5の前提部に記載された眼鏡レンズをコーティングする設備、請求項25または27の前提部に記載された眼鏡レンズをコーティングする方法、ならびに請求項42の前提部に記載された眼鏡レンズをコーティングするためのキャリヤに関する。
【0002】
本発明は、好ましくは気相蒸着、特にカソードスパッタリングとも呼ばれているスパッタリングによる眼鏡レンズのコーティングに関する。この関係で、原子が高エネルギーイオンの衝突によって、固体、いわゆるターゲットからはじき出され、そして気相になる。特に、本発明は、印加される電界に加えて、磁界もまた使用されるいわゆるマグネトロンスパッタリングに関する。
【背景技術】
【0003】
実際には、たとえ多くの種々の装置および方法が技術の現状から知られている場合であっても、コーティングされるべき眼鏡レンズの一様な、効率的なかつ/あるいは個々のかつ/あるいは適合されたコーティングを達成することは困難である。
【0004】
国際公開第2013/131656(A2)号パンフレットは、眼鏡レンズを処理してコーティングする設備および方法に関する。眼鏡レンズを種々の装置に選択的に運搬することができる。効率的なコーティングのための特定の要件については詳細には説明されていない。
【0005】
独国特許出願公開第19606463(A1)号明細書および欧州特許出願公開第0953657(A1)号明細書は、スパッタリングによって基材をコーティングする設備を開示しており、中央チャンバ内の中央取り扱い装置が複数のコーティング装置に連結され、基材は、取り扱い装置からコーティング装置中に運び込まれる。眼鏡レンズのコーティングの必要性については詳細には説明されていない。
【0006】
独国特許第4407909(C3)号明細書は、本発明の出発点をなしており、この独国特許明細書は、眼鏡レンズをコーティングする設備および方法を開示しており、眼鏡レンズは、回転可能なキャリヤ上に配置されて回転によって連続的に別々のコーティングステーションに運搬される。この場合、眼鏡レンズの最適なコーティングは可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/131656(A2)号パンフレット
【文献】独国特許出願公開第19606463(A1)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0953657(A1)号明細書
【文献】独国特許第4407909(C3)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、極めて効率的でありかつ/あるいは個々のかつ/あるいは適合したコーティングおよび/または単純な、コンパクトなかつ/あるいは費用効果の良い設計を可能にする眼鏡レンズのコーティング設備、コーティング方法、およびコーティングのためのキャリヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1~5に記載された設備、請求項25または27に記載された方法、または請求項42に記載されたキャリヤによって達成される。有利なさらなる改造例は、従属形式の請求項の内容である。
【0010】
本発明の一観点によれば、複数のコーティング装置および眼鏡レンズまたは眼鏡レンズを備えたキャリヤを一コーティング装置から別のコーティング装置に運搬する運搬機器を含む提案対象の設備は、特に、この設備が移送チャンバを有していること、コーティング装置が別々のコーティングチャンバを有していること、コーティングチャンバおよび移送チャンバが連続型または相互連結型真空システムを形成することを特徴としている。かくして、極めて一様な、効率的なかつ/あるいは個々のかつ/あるいは適合したコーティングおよび/または単純な、コンパクトなかつ/あるいは費用効果の良い設計が可能になる。
【0011】
好ましい真空システムおよび/または設備および/または真空システム内における眼鏡レンズコーティングに必要な全てのプロセスステップの好ましい連係の結果として、特に、大気中においては個々のステップまたは中間ステップが実施されない。このようにすると、特に効率的なプロセスが可能になり、しかしながら、特に、望ましくない汚れ(ソイリング)なども回避することができる。
【0012】
本発明のさらに別の別個独立に達成可能な観点は、眼鏡レンズをコーティングする設備であって、コーティングされるべき2つまたは3つ以上の眼鏡レンズを保持するキャリヤが連続的に別々の種々のコーティング装置中に運び込まれるとともに/あるいはコーティングのためにこれらコーティング装置によって受け入れられることを特徴とする設備に関する。この目的のため、運搬機器が設けられ、この運搬機器は、キャリヤを一コーティング装置から別のコーティング装置中に運び込む。コーティング装置は、別々のコーティングチャンバを有するとともに/あるいはロック(またはエアロックもしくはスルース(sluice))によって互いに分離されているまたは分離可能である。かくして、極めて一様な、効率的なかつ/あるいは個々のかつ/あるいは適合したコーティングが可能になる。
【0013】
本発明の別の別個独立に達成可能な観点は、眼鏡レンズが連続的に互いに反対側から別々のコーティング装置でコーティングされるということになる。この関係で、キャリヤをコーティングされるべき眼鏡レンズを対応した仕方でコーティング装置を通って動かされる。かくして、極めて一様な、効率的なかつ/あるいは個々のおよび/または適合したコーティングを可能にすることができる。
【0014】
本発明の別の別個独立に達成可能な観点によれば、キャリヤは、連続的に別々のコーティング装置に送られ、眼鏡レンズは、これらコーティング装置でコーティングされ、特に、コーティング中における眼鏡レンズは、これら自体の、かくして別々の軸線回りに回転する。また、このようにすると、極めて一様な、効率的なかつ/あるいは個々のかつ/あるいは適合したコーティングを達成することができる。
【0015】
本発明のさらに別の別個独立に達成可能な観点は、眼鏡レンズが連続的に別々のコーティング装置でコーティングされ、コーティングされるべき眼鏡レンズを備えたキャリヤが負圧下でかつ/あるいは排気または排気可能な移送チャンバを通って一コーティング装置から別のコーティング装置に運搬されることにある。このようにすると、別々のコーティング装置の望ましくないかつ/あるいは過剰のエアレーションが回避されまたは少なくとも最小限に抑えられ、かくして特に効率的なコーティングが達成される。
【0016】
本発明の別の別個独立に達成可能な観点によれば、眼鏡レンズに最初に、第1の―特に機能的な―コーティングまたは基本的コーティングを施し、次に特に反射防止層パッケージまたは反射防止膜(コーティング)を作るためかつ/あるいはミラーコーティングを―別のコーティング装置またはコーティングラインで作るために少なくとも1つの別のコーティング―好ましくは少なくとも1つの誘電体層または複数の互いに異なる層を被着させ、特に眼鏡レンズはそれぞれ、2つまたは4つの眼鏡レンズの群の状態でコーティングされるとともに/あるいは眼鏡レンズは、負圧下で第1のコーティング装置またはコーティングラインから他のコーティング装置またはコーティングラインに運搬される。かくして、極めて一様な、効率的なかつ/あるいは個々のかつ/あるいは適合したコーティングを作ることができる。
【0017】
提案対象の方法および提案対象の設備は、特に好ましくは、コーティング、特にさらなるコーティングのためのコーティング装置またはコーティングラインが特に利用可能性、技術的形態および/または既存のリソースに応じて、複数のコーティング装置および/またはコーティングラインから選択できまたは選択されことを特徴としている。
【0018】
特に、高いスループットを提供するとともに/あるいは相互連結型真空システム内における眼鏡レンズの個々のかつ/あるいは適合したコーティングが提案対象の方法および提案対象の設備によって可能になる。特に、すなわち眼鏡レンズの寸法および/または形状に応じて、特にコーティングされるべき表面の曲率の凸状または凹状曲がり具合に応じてかつ/あるいはコーティングされるべき表面に応じて、コーティングは、対応して選択されたコーティング装置および/またはコーティングラインでかつ/あるいはコーティングパラメータの対応の適合によって可能になる。かくして、眼鏡レンズの非常に固有のおよびかくして最適化されたコーティングが可能になる。
【0019】
本発明の別の別個独立に達成可能な観点によれば、眼鏡レンズの2つの反対側の面、特に眼鏡レンズの凸状および凹状の表面または側のコーティングおよび/またはスパッタリングが好ましくは同時にまたは1対のスパッタリング源および/またはターゲットとそれぞれ連続して実施される。このように、特に一様なコーティングの作製が可能になりまたは容易になる。
【0020】
本発明のさらに別の別個独立に達成可能な観点によれば、特に眼鏡レンズをコーティングするコーティング装置で用いられるスパッタリング源、特にターゲットおよび/またはカソードの相互離隔距離は、好ましくは特に一様なコーティングを達成するために調節パラメータとして用いられまたは変えられる。
【0021】
本発明の別の別個独立に達成可能な観点によれば、好ましくは気相蒸着、特にスパッタリングによって眼鏡レンズをコーティングするためのキャリヤが提案され、特に、眼鏡レンズは、両面コーティングのために互いに反対側から接近可能でありかつこれら自体の軸線回りに回転可能である。かくして、一様な、効率的なかつ/あるいは個々のかつ/あるいは適合したコーティングが可能になる。
【0022】
別の別個独立に達成可能な観点によれば、キャリヤは、コーティング装置に運び込むとともに/あるいはコーティング装置を通って運ぶ歯付きラックまたはキャリジもしくはフレームに結合される。これにより、特に、単純かつ/あるいは費用効果の良い設計の実現が可能である。
【0023】
好ましくは、以下の内容は、全体として上述の観点に当てはまる。
【0024】
好ましくは、コーティングは、少なくとも部分的に気相蒸着によって、かくして真空中で、かつ特にスパッタリング、特に好ましくはマグネトロンスパッタリングによって行われる。
【0025】
特に好ましくは、眼鏡レンズは、最高10個までの眼鏡レンズ、特に2つまたは4つの眼鏡レンズの群の状態でコーティングされる。
【0026】
特に好ましくは、眼鏡レンズは、別々のコーティング装置で連続して互いに反対側からコーティングされる。
【0027】
特に好ましくは、キャリヤは、コーティングされるべき眼鏡レンズと一緒に負圧下でかつ/あるいは大気移送チャンバによって一コーティングチャンバまたはコーティングラインから別のコーティング装置またはコーティングラインに運搬される。
【0028】
特に好ましくは、コーティングされるべき眼鏡レンズを備えたキャリヤは、特にさらにキャリジおよび/またはフレームおよび/または歯付きラックと一緒に、コーティングのためのそれぞれのコーティング装置によって完全に受け入れられる。
【0029】
好ましくは、キャリヤおよび/またはレンズの所定のかつ/あるいは定められた、特に少なくとも本質的に垂直の向きがコーティング装置および/または設備で、かつ/あるいはコーティング装置および/または設備を通る移動中に保たれる。これは、特に、所要の空間を少なくした状態でかつ/あるいは単純な取り扱いでコンパクトな設計にとって好都合である。
【0030】
好ましくは、連続型および/または相互連結型真空システムが形成され、この真空システムは、特に複数のコーティング装置および/またはコーティングチャンバ、ロック、および少なくとも1つの移送チャンバならびに所望ならば1つまたは2つ以上の受け入れステーションおよび/または排出ステーションを含む。
【0031】
特に、別々の処理チャンバおよび/またはコーティング装置は、単一の連係システム、特に相互連結型真空システムを形成するようオプションとして別々のコーティング技術と組み合わされる。
【0032】
特に好ましくは、本発明のさらに別の別個独立に達成可能な観点によれば、別々のコーティング技術が提案対象の設備および/または提案対象の方法、特に種々の気相蒸着法、例えばスパッタリング、マグネトロンスパッタリング、熱蒸発法、CVDコーティングおよび/またはPVDコーティングなどにおいて互いに組み合わせる。
【0033】
特に好ましくは、設備は、モジュラ設計のものであり、したがって、長時間および短時間のコーティングプロセスに応じて、それぞれのコーティングのための多いまたは少ないモジュールおよび/またはユニットまたは装置が互いに組み合わされるとともに/あるいは相互連結型の真空チャンバシステムを形成するよう組み合わされる。
【0034】
特に好ましくは、長時間のプロセスのため、個々のかつ/あるいは別々のコーティングチャンバが用いられ、これに対し、複数の連続して行われる短時間のプロセスについては同一のコーティングチャンバを用いることができ、その結果、全体として、最適スループットを達成することができる。
【0035】
特に好ましくは、提案対象の設備および提案対象の方法は、眼鏡レンズまたは眼鏡レンズ側の完全なコーティングを可能にし、その結果、全ての必要なコーティングおよび次の表面処理を好ましくは、一設備で特に一体方式で実施することができる。
【0036】
提案対象の解決策によれば、特に、反射防止膜および/またはミラーコーティングのためのコーティングを被着させることができる。
【0037】
提案対象の解決策によれば、表面仕上げまたはエンドコーティング(end coating )とも呼ばれている対応の処理またはコーティング、かくして特に好ましくは油分をはじく特性または表面、疎水性の特性または表面および/または生じるフォグアップ(fog-up)を少なくするいわゆる防曇性または曇り止め表面によって達成できる。この目的のため、特に少なくとも1つの追加のコーティング装置が表面仕上げおよび/またはエンドコーティングまたは処理のために用いられ、かつ特に真空システムおよび/または設備中に一体化される。
【0038】
提案対象の解決策によれば、特に眼鏡レンズの非連続処理またはコーティングが実施されるが、これとは異なり、別々のコーティングプロセスおよび/または別々のコーティング装置および/またはコーティングラインへの分割が実施され、これにより高いスループットを備えた高い融通性の実現が可能になる。
【0039】
提案対象の解決策によれば、特に、別々のコーティング装置での特に好ましくは連続的な眼鏡レンズの自動化コーティングが可能になり、特に、別々のコーティング装置の自動化および/または最適化作動ならびに別々のコーティング装置の通過が可能になる。
【0040】
特に、眼鏡レンズは、バッチ操作で、かくして連続的な方法ではない仕方でかつ/あるいは非連続的にコーティングされ、この場合、コーティングは、特に、小さな群をなす眼鏡レンズ、好ましくは個々の対をなすまたは複数の対をなす眼鏡レンズの群、必要ならば、しかしながら、それどころか個々の眼鏡レンズまたは任意の数の眼鏡レンズ、特に好ましくは最高10個までまたは9個以下の眼鏡レンズの群をなした状態でのみ実施される。
【0041】
上述したように、本発明は、特に、平坦ではないまたは湾曲したレンズまたはガラス、特に眼鏡レンズのコーティングに関する。しかしながら、オプションとして、本発明は、他のレンズおよび/または光学部品にも使用できる。
【0042】
上述の観点ならびに以下の説明から続く本発明の特徴および観点は、互いに別個独立に達成されるが、任意の組み合わせの状態でも達成できる。
【0043】
本発明の別の観点、利点、および特徴は、特許請求の範囲の記載および図面に基づく好ましい実施形態の以下の説明から続く。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】眼鏡レンズをコーティングするコーティング装置の概略断面図である。
【
図3】
図2に対応したコーティング装置の概略側面図であるが、眼鏡レンズが二者択一的に配置されている状態を示す図である。
【
図4】提案対象の設備およびコーティングされるべき眼鏡レンズを保持するための提案対象のキャリヤの細部の概略側面図である。
【
図6】第1の実施形態による複数のコーティング装置を含む提案対象の設備の概略平面図である。
【
図7】第2の実施形態による提案対象の設備の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図中、同一の参照符号は、説明の繰り返しが省かれている場合であっても、同一のコンポーネントおよび部品について用いられている。
【0046】
最初に、コーティング装置の特に好ましい設計および特に好ましい作動モードについて説明し、次にコーティングのための提案対象のキャリヤならびに提案対象の設備および提案対象の方法について詳細に説明する。
【0047】
極めて概略的な断面図である
図1は、眼鏡レンズ2をコーティングするコーティング装置1を示している。以下において、眼鏡レンズを単にレンズともいう。特に、コーティングは、すなわち、眼鏡フレームなどへの適合のためのエッジ加工作業の実施前に行われる。
【0048】
コーティング中、レンズまたは眼鏡レンズ2は、特に、依然として円板状でありかつ/あるいは好ましくは定められたまたは一様な直径を有する。しかしながら、レンズまたは眼鏡レンズ2は、コーティングのための別の形状を有しても良く、例えば、平面図では、レンズは、楕円の形状または該当する場合にはそれどころか眼鏡フレームにすでに適合された他の形状もしくは輪郭を有しても良い。
【0049】
レンズ2またはコーティングされていない眼鏡レンズ素材が好ましくはプラスチックまたはガラスから作られる。
【0050】
以下において、最初に、コーティング装置1の特に好ましい設計について詳細に説明する。しかしながら、原理的には、別々の仕方で設計されたコーティング装置1もまた、追加的にまたは代替的に本発明に従って使用することができ、これについては以下において説明する。
【0051】
コーティング装置1は、好ましくは、気相蒸着、特にカソードスパッタリングとも呼ばれているスパッタリングによって、かくして、特に真空中でレンズ2をコーティングするよう設計されている。特に好ましくは、いわゆるマグネトロンスパッタリングが行われる。電気的に印加されるフィールド(電界)に加えて、磁界もまた用いられるとともに/あるいは印加され、これについては以下に詳細に説明する。
【0052】
特に好ましくは、レンズ2の湾曲した、特に凹状の表面を本発明に従ってコーティングする。
図1では、かかる湾曲した表面の1つが右側に示されているレンズ2について概略的に示されている。しかしながら、原理的には、レンズ2の凸状表面または他の表面もまた、それに応じてコーティングすることができる。
【0053】
コーティング装置1は、好ましくは、少なくとも1つのスパッタリング源3、この場合好ましくは2つのスパッタリング源3を有する。
【0054】
コーティング装置1またはそれぞれのスパッタリング源3は、物質がコーティング中および/またはスパッタリング中に除去されるターゲット4を有し、このターゲット4は、特にガス雰囲気の他の成分と一緒になってコーティングされるべきそれぞれのレンズ2またはその表面上に所望のコーティングを形成する。
【0055】
図2は、コーティング装置1および/またはスパッタリング源3を概略平面図で示している。
【0056】
図示の実施例では、スパッタリング源3および/またはターゲット4は、好ましくは、少なくとも1つの本質的に細長くかつ/あるいは管状または円筒形に作られている。
【0057】
ターゲット4は、特に中空の筒体および/または管として作られている。
【0058】
スパッタリング源3および/またはターゲット4は、好ましくは、互いに平行に配置される。
【0059】
好ましくは、ターゲット4は、回転軸線D回りに旋回または回転可能である。回転軸線Dは、好ましくは一共通表面内にかつ/あるいは特に
図1および
図2に示されているように互いに平行に延びているが、変形例として、互いに対して傾けられても良い。回転軸線Dは、好ましくは、スパッタリング源3の長手方向軸線に一致する。
【0060】
各スパッタリング源3は、好ましくは、上述の磁界を発生させるためのそれぞれのターゲット4およびかくして
図1に概略的に示されているように有向性スパッタリングクラウドSに割り当てられた磁石構造体5を有する。特に、磁石構造体5は、それぞれのターゲット4の下にかつ/あるいはその中に配置される。
【0061】
コーティング装置1は、スパッタリング源3および/またはターゲット4を特に交互にカソードとして動作させるためにかつ/あるいはスパッタリングのために所要の電圧を特にパルスの形態でスパッタリング源3および/またはターゲット4に印加することができるようにするために
図1に示されているような電圧源6を有する。
【0062】
特に好ましくは、スパッタリング源3および/またはターゲット4を動作させるとともに/あるいはスパッタリング源3および/またはターゲット4に直流電流(パルス)を交互に加える。これは、「バイポーラ(双極性)DC」とも呼ばれる。変形例として、一方のスパッタリング源3および/または一方のターゲット4をカソードとして用い、他方のスパッタリング源3および/または他方のターゲット4をアノードとして用いる。
【0063】
変形例として、交流電流による動作または他の何らかの動作が可能である。
【0064】
代替的にまたは追加的に、1つまたは2つ以上の追加のまたは別個のアノードを用いても良く、ただしこれは、好ましくはない場合がある。
【0065】
コーティング装置1は、好ましくは1つのコーティングチャンバ7を有し、このコーティングチャンバ内で、コーティングが行われるとともに/あるいはスパッタリング源3がこのコーティングチャンバ内に配置される。
【0066】
コーティングチャンバ7を特に
図1に概略的にしか示されていない機器8、例えば連結具、真空ポンプなどによって所望の仕方で排気するのが良い。機器または真空ポンプ8は、特に好ましくは、レンズ2から遠ざかる方向に向いたスパッタリング源3および/またはターゲット4の側にかつ/あるいは特に好ましくは中央平面M内にかつ/あるいは中央に配置される。
【0067】
コーティング装置1および/またはコーティングチャンバ7は、好ましくは、特にコーティング空間中に延びるガスランス(gas lance )の形態をした概略的に示されているガス供給源9を有する。
【0068】
コーティング装置1は、好ましくは、
図1に示されているようにレンズ2を保持するキャリヤ10を有する。
【0069】
図2および
図3には、キャリヤ10が説明上の理由で示されていない。
【0070】
コーティングされるべきレンズ2は、好ましくは各々、軸線A回りに旋回または回転可能である。コーティング装置1および/またはキャリヤ10は、レンズ2の対応した回転可能な保持および特に対応した駆動が可能であるように設計されている。特に、コーティング装置1は、好ましくはキャリヤ10のレンズ2を全て一緒に駆動するために
図1に概略的に示されているに過ぎない対応の回転駆動装置11を有する。
【0071】
キャリヤ10は、好ましくは、コーティング装置1および/またはコーティングチャンバ7内で同時にコーティングされる少なくとも2枚のレンズ2または全てのレンズ2もしくはこの場合4枚のレンズ2と一緒に交換可能である。
【0072】
特に、キャリヤ10は、レンズ2を特にこれら自体のかつ/あるいは別々の軸線A回りに回転させることができ、特に好ましくはレンズ2を回転可能に互いに結合された状態で保持する。特に好ましくは、キャリヤ10は、
図1に概略的に示されているように例えば対応の歯車を介する回転カップリング12を有する。
【0073】
好ましくは、キャリヤ10それ自体をコーティング中に動かさず、キャリヤ10上に保持されたレンズ2だけを回転させる。
【0074】
コーティング装置1および/またはコーティングチャンバ7中へのキャリヤ10の挿入または摺動時、キャリヤ10を好ましくは駆動装置または歯車によって、特にコーティング装置1の回転駆動装置11などに自動的に結合することができる。
【0075】
特に好ましくは、キャリヤは、レンズ2または少なくともこれらの重心を保持するとともに/あるいは少なくとも本質的に一平面内に心出し、この一平面は、特に好ましくは、ターゲット4の回転軸線Dの共通平面に平行に延びる。
【0076】
キャリヤ10は、コーティング装置1および/またはコーティングチャンバ7へのコーティングされるべきレンズ2の迅速な装填および/またはコーティング済みレンズ2の迅速な取り出しを可能にする。
【0077】
コーティングチャンバ7は、好ましくは、コーティングのためにガス密状態に密閉されるのが良い。
【0078】
コーティング装置1および/またはコーティングチャンバ7には、好ましくは、図示されていない接近開口部を経て、コーティングされるべきレンズ2および/またはキャリヤ10が装填されるのが良い。接近開口部は、好ましくは、キャリヤ10によってまたは図示されていないクロージャによって特にガス密状態で閉鎖できる。
【0079】
キャリヤ10は、好ましくは、一般にレンズ2をコーティングする装置内で、特にスパッタリング以外のコーティング方法の場合にも使用できる。
【0080】
ターゲット4の回転軸線Dおよび/または長手方向広がりLは、好ましくは、共通平面内で、特に好ましくは垂直または水平面内で延びる。
【0081】
レンズ2は、好ましくは、上述した平面の上方にかつ/あるいは一方の側に(のみ)配置される。
【0082】
好ましくは、各レンズ2は、割り当てられたターゲット4上に配置される。「~上」という用語は、割り当てられたターゲット4に対する垂直高さおよび/または距離に関する場合があるとともに/あるいはコーティングされるべきレンズ2の表面がターゲット4および特に好ましくはその回転軸線Dと交差する少なくとも1本の表面法線を有することを示す場合がある。
【0083】
好ましくは、レンズ2は、スパッタリング源3および/またはターゲット4に1対ずつ割り当てられる。
【0084】
特に、2枚のレンズ2が
図2に示されるとともに
図3の概略側面図に示されているようにそれぞれ共通ターゲット4の上方に配置される。
【0085】
特に好ましくは、コーティング装置1および/またはキャリヤ10は、2つの対をなすレンズ2、すなわち全部で4枚のレンズ2に対応するよう設計されており、2枚のレンズ2は、それぞれ共通のスパッタリング源3および/または共通のターゲット4に割り当てられる。
【0086】
コーティング中それぞれレンズ2の回転の中心となる軸線Aは、好ましくは、静止しておりまたはターゲット4および/またはスパッタリング源3または回転軸線Dに対して固定されている。
【0087】
特に、一方においてスパッタリング源3および/またはターゲット4および/または回転軸線D相互間および他方においてコーティングされるべき1枚のレンズ2または複数のレンズ2および/または軸線A相互間の直線運動および/または重心運動、例えば円形運動が回避されまたは不可能にされる。これは、特に簡単な設計にとって好都合である。
【0088】
割り当てられたターゲット4からのレンズ2の距離(垂直距離)Zが
図1に記載されており、これは好ましくは固定されている。オプションとして、割り当てられたターゲット4からのレンズ2の距離Zの適合または調節は、コーティングされるべきレンズ2または直径および/または曲率および/または形状に応じて実施される。
【0089】
共通ターゲット4に割り当てられた2枚のレンズ2の軸線Aは、好ましくは、共通平面内でかつ特に互いに平行に延びる。
【0090】
軸線Aは、好ましくは、ターゲット平面および/または割り当てられたターゲット4の回転軸線Dの共通平面および/または回転軸線Dに対してまたは横方向にまたは垂直に延びる。
【0091】
軸線Aは、これらの共通平面内において、特に互いに向かってまたは外方にもしくは互いに遠ざかって互いに対して傾けられていても良い。
【0092】
レンズ2の回転軸線Aもまた、水平方向において回転軸線Dおよび/またはターゲット4の2本の回転軸線D相互間の中心に対して横の方向にずらされても良く、特に、その結果、レンズ軸線Aと割り当てられたターゲット軸線Dとの間のオフセットまたは距離Vが
図1に示されているように、右側に配置されたレンズ2について形成されている(同じことは、好ましくは、当然のことながら、左側に位置されたレンズ2についても当てはまる)。
【0093】
距離Vは、好ましくは固定されている。オプションとして、レンズ軸線Aと割り当てられたターゲット軸線Dとの間の距離Vの適合または調節は、コーティングされるべきレンズ2または表面の直径および/または曲率および/または形状に応じて実施される。
【0094】
ガス供給源9は、好ましくは、スパッタリング源3および/またはターゲット4の下にかつ/あるいは装置1の中間平面Mおよび/またはコーティングチャンバ7相互間に、特に好ましくは装置1の中間平面Mおよび/またはコーティングチャンバ7内に配置される。
【0095】
ガス供給源9は、好ましくは、管状にかつ/あるいはロッド状に設計されるとともに/あるいは好ましくは一連の状態に配置されるとともに/あるいは上方を向いたガス出口を備えている。
【0096】
コーティング中に生じるスパッタリングクラウドS、すなわちスパッタリングされたターゲット材料は、それぞれ、上述の磁界および/または磁石構造体5によって少なくとも本質的に所望の方向に案内される。
図1に点線で示されているスパッタリングクラウドSの膨張のこの主要な方向Hに磁石構造体5の対応の配置または向きによって影響を及ぼすことができ、特に、かかる主要方向Hを磁石構造体5の対応の配置または向きによって定めることができる。
【0097】
図示の実施例では、回転軸線Dに垂直な断面および/または2つのターゲット4の平面内における主要な方向Hは、好ましくは、互いにかつ/あるいは角度W(平行な向きから始まる)だけ傾けられる。好ましくは、角度Wは、特に磁石構造体5の対応の調節またはトリガによって設定できまたはこの角度を適合させることができる。
【0098】
上述したように、2つのスパッタリングクラウドSの主要な方向Hはまた、互いに平行にかつ/あるいはターゲット4の延長平面および/または回転軸線Dを含む平面に垂直に延びるのが良い。
【0099】
好ましくは、主要方向Hは、垂直方向上方に延びまたはかかる一方向成分を含む。変形例として、変形例として、主要方向Hの水平方向づけが起こる。レンズ2およびスパッタリング源3および/またはターゲット4の配置は、この場合、当然のことながらそれに応じて選択されなければならない。
【0100】
特に好ましくは、レンズ2は、それぞれ、1対ずつコーティングされ、特に、2対のレンズ2がそれぞれ同時にコーティングされる。しかしながら、原理的には、提案対象の解決策としての装置1内で1対のレンズ2だけをコーティングすることもまた可能である。この目的のため、この場合、2枚のレンズを好ましくは共通のターゲット4上にかつ/あるいは一変形構成例において
図3に概略的に示されているように2つのターゲット4相互間に配置する。
【0101】
特に、レンズ2は、バッチ操作で、かくして連続方法によってではなくまたは非連続的にコーティングされる。コーティングは、特に小さな群をなすレンズ2、好ましくは個々の対をなすまたは複数の対をなすレンズ2の群、しかしながら、所望ならば、個々のレンズ2または任意の数のレンズ2の群をなした状態で実施される。
【0102】
レンズ2は、好ましくはそれぞれの軸線Aを中心として、特にレンズ2の幾何学的中心に関して回転する。
【0103】
図示されていない変形実施形態によれば、レンズ2は、オプションとして、回転軸線Aに対して偏心的に回転してもよくかつ/あるいは取り付けられても良い。この場合、偏心度は、好ましくは、レンズ2の半径よりも小さく、オプションとして、これより大きくても良い。
【0104】
特に、回転軸線Aは、かくして、それぞれのレンズ2と交差する。
【0105】
軸線Aは、好ましくは、それぞれのレンズ2の主平面に垂直に延びる。
【0106】
レンズ2の各々を好ましくはそれ自体の軸線A回りに回転させることができる。レンズ2は、かくして、別々の軸線A回りに回転可能である。
【0107】
軸線Aは、好ましくは、割り当てられたターゲット4の長手方向広がりまたは回転軸線Dに対して横方向に、オプションとしてこれに垂直に延びる。
【0108】
特に、それぞれのレンズ2の回転軸線Aは、
図1に示されているように割り当てられたターゲット4と交差しまたはオプションとして割り当てられたターゲット4の長手方向軸線または回転軸線Dと交差する。
【0109】
コーティング中および/または回転中、レンズ2は、好ましくは、割り当てられたターゲット4または側部がコーティングされるべき2つの割り当てられたターゲット4の方へ常時向く。
【0110】
それぞれのターゲット4の回転軸線Dは、好ましくは、コーティングされるべきレンズ2または表面の任意法線または少なくとも1つの表面法線に垂直に延びる。
【0111】
レンズ2の光学中心または幾何学的中心の表面法線を回転軸線Aまたは回転軸線Dに対して傾けることができる。
【0112】
レンズ中心は、好ましくは、それぞれのターゲット4の長手方向広がりで見てそれぞれのターゲット4に関して対称に配置される。
【0113】
コーティングされるべきレンズ2および/またはこれらの幾何学的中心または光学中心は、好ましくは、少なくとも本質的に共通平面内に配置され、この平面は、特に好ましくは、スパッタリング源3および/またはターゲット4の広がり平面および/または回転軸線Dに平行に延びる。
【0114】
特に好ましくは、カソード距離、すなわちターゲット4の相互離隔距離、および/またはターゲット4および/またはスパッタリング源3からのレンズ2の距離Z、および/または角度Wは、コーティングされるべきレンズ2、特にコーティングされるべきレンズ2の表面形状、かくして、例えば、平坦でありまたは大幅に湾曲した表面形状に応じてかつ/あるいは曲率の程度および/またはこの曲率が凹状の表面であるか凸状の表面であるかに応じて変えられる。
【0115】
以下において、最初に、提案対象のキャリヤ10の特に好ましい設計について詳細に説明する。特に
図1に関する上述の記載および説明は、好ましくは、たとえ明示の繰り返しがなくても対応のまたは相補した仕方で当てはまる。
【0116】
概略側面図では、
図4は、眼鏡レンズ2をコーティングする提案対象の設備100およびコーティングされるべきレンズまたは眼鏡レンズ2を保持するための提案対象のキャリヤ10の特に好ましい実施形態の細部を示している。
【0117】
図4では、特に、設備100のコーティング装置1がほぼ断面図としてかつ/あるいは開放状態で示されており、したがって、コーティング装置1内に配置された図示の状態にあるキャリヤ10をこの上に保持されたレンズ2と一緒に見ることができるようになっている。コーティング装置1は、好ましくは、上述したように構成されるとともに/あるいは好ましくは上述したように作動する。
【0118】
レンズ2、この場合特に、1つまたは2つの対をなすレンズ2は、特に好ましくは弾性および/または可撓性保持要素13によって縁側または周辺側が保持されるとともに/あるいは弾性的に保持される。
【0119】
保持要素13は、特に中心またはレンズ2に向かう半径方向にあらかじめ応力が加えられている。保持要素13は、対応のレンズ2を特にキャリヤ10のそれぞれの開口部16の中にまたはその下に中心を保持しており、その結果、レンズ2を所望の仕方でコーティングすることができるようになっている。
【0120】
特に好ましくは、設備100および/またはキャリヤ10は、キャリヤ10によって保持されたレンズ2を特にキャリヤ10から取り外すことなく、互いに反対側または両側からコーティングすることができるように設計されている。それゆえ、キャリヤ10は、好ましくは、両側、特に平坦な側部が開いておりかつ/あるいはレンズ2の両面コーティングを可能にするために開口部16を備えている。
【0121】
図示の実施例では、保持要素13は、好ましくは、ホルダおよび/または支承要素、この場合リング要素14に結合されている。好ましくは、支承要素および/またはリング要素14は、回転可能でありまたは回転するように駆動可能である。図示の実施例では、支承要素および/またはリング要素14は、特に歯車として具体化されておりまたは歯車に結合されており、その結果、特に好ましくは全て、この場合4つの支承要素および/またはリング要素14ならびに割り当てられたレンズ2は、個々の軸線A、かくして別々のA周りに回転することができるようになっている。
【0122】
図示の実施例では、回転カップリング12が特に歯車および/またはリング要素14のコーミング(combing )係合によって達成される。しかしながら、例えば歯車機構体、ベルトなどによる他の構造的解決策もまた可能である。
【0123】
キャリヤ10は、好ましくは、特に板状ベース要素15を有し、レンズ2および特にさらに支承要素および/またはリング要素14のためのホルダおよび/または保持要素13がこのベース要素15中に組み込まれている。
【0124】
ベース要素15は、好ましくは、両側が覆われるとともに/あるいは上述の開口部16を備えており、その結果、それに応じてレンズ2をコーティングすることができるようになっている。
【0125】
キャリヤ10は、好ましくは、
図4に示されているようにキャリッジまたはフレーム17に結合可能でありまたは結合されている。キャリッジまたはフレーム17は、特にコーティングされるべきレンズ2を備えたキャリヤ10を取り扱うとともに/あるいはこれを設備100内でかつ/あるいはコーティング装置1を通って運搬するために用いられる。
【0126】
図示の実施例では、フレーム17は、好ましくは、キャリヤ10のクランプおよび/または圧力嵌め受け入れのために設計されるとともに/あるいはフォーク状に作られている。
【0127】
キャリヤ10は、
図4に概略的に示されているように、好ましくは案内要素18および/または歯付きラック19により特にフレーム17を介して結合可能でありまたは結合されている。
【0128】
図示の実施例では、案内要素18は、好ましくは、関節連結方式でフレーム17に結合され、この場合、関節連結軸線は、特に運搬方向Fに延びている。しかしながら、他の構造上の解決策もまた可能である。
【0129】
案内要素18は、好ましくは、歯付きラック19を担持している。
【0130】
図示の実施例では、歯付きラック19の歯は、好ましくは、下方に向いている。しかしながら、この場合、他の向きもまた可能である。例えば、歯は、横に向いていても良く、または原理的に上に向いていても良い。
【0131】
設備100および/または図示のコーティング装置1または任意のコーティング装置1は、好ましくは、キャリヤ10を、設備100を通ってかつ/あるいは(それぞれの)コーティング装置1中に運び込むとともにかつ/あるいはこのコーティング装置1から運び出すための運搬機器20を有する。
【0132】
特に好ましくは、キャリヤ10は、コーティングのためにコーティングされるべきレンズ2と一緒におよび特にさらにキャリッジまたはフレーム17と一緒に、それぞれのコーティング装置1および/またはそのコーティングチャンバ7内に完全に受け入れられる。
【0133】
図示の実施例では、運搬機器20および/または好ましくは各コーティング装置1は、好ましくは、運搬駆動装置21を有し、この運搬駆動装置は、例えば概略的に示した運搬方向Fにおける必要に応じて特に直線状の運搬または運動を可能にするために特に対応のピニオン歯車などにより、キャリヤ10および/またはフレーム17、特に好ましくは歯付きラック19に係合しまたは係合することができる。特に、運搬駆動装置21は、ピニオン歯車付きのステッパモータを有する。
【0134】
キャリヤ10は、好ましくは、設備100および/またはコーティング装置1内で、レール22上で好ましくは互いに反対側の側部上でかつ/あるいは上からかつ/あるいは下に可動的にまたは摺動可能に案内される。
【0135】
図4には上側レール22だけが示されている。
図5は、運搬方向Fの方向に、すなわちレール22の長手方向広がりに対して横の方向に見た別の側面図において、キャリヤ10が特に結合状態のキャリッジまたはフレーム17と一緒に、特に好ましくは、図示の実施例ではレール22によって互いに反対側の側部上でかつ/あるいは上からかつ/あるいは下にどのように案内されるかを示している。
【0136】
好ましくは、キャリヤ10および/またはフレーム17または特に案内要素18は、
図5に概略的に示されているように1本または2本のレール22によって側方かつ/あるいは垂直に、この場合下から案内される。例えば、案内要素18の側方リブ、突出部またはアーム18Aが特に案内レール22の互いに向かい合った側部上に配置されている対応の溝に嵌まり込むことができる。特に好ましくは、このようにしてスリップイン(嵌め込み式)案内が実現される。しかしながら、他の構造的解決策もまた可能である。
【0137】
キャリヤ10または上方に突き出たキャリヤ部分10Aは、他方の側においてかつ/あるいは上方において、好ましくは、
図5に示されているように1本または2本のレール22によって側方にのみ案内される。またこの場合、好ましくはスリップイン案内が実現される。しかしながら、他の構造的解決策もまた可能である。
【0138】
キャリヤ10を特にフレーム17と一緒に運搬方向Fにまたは反対側の方向に、滑らせまたは動かすことができ、あるいはこの逆の関係が成り立つ。
【0139】
運搬機器20またはおよび/または運搬駆動装置21は、(それぞれの)コーティング装置1内でかつ/あるいは設備100内におけるキャリヤ10の所望の運動、運搬および/または位置決めを可能にする。
【0140】
図示の実施例では、設備100および/またはコーティング装置1を通る運搬の際におけるキャリヤ10および/またはレンズ2(これらの主広がり平面または平坦な側部に対する)の少なくとも本質的に垂直の向きが好ましく、その目的は、特に小さなベース領域でできるだけコンパクトな設計を可能にすることにある。しかしながら、他の向きもまた可能である。
【0141】
図4では、コーティング装置1のスパッタリング源3および/またはターゲット4は、コーティングチャンバ7内に模式的に配置されている。ターゲット4を回転させるターゲット駆動装置23がターゲット4に割り当てられている。ターゲット駆動装置23は、好ましくは、
図4に示されているようにコーティングチャンバ7の外側に配置されている。しかしながら、他の構造的解決策もまた可能である。
【0142】
ターゲット4の回転軸線Dおよび長手方向広がりLは、好ましくは、垂直に延びている。
【0143】
レンズ2の回転軸線Aは、好ましくは少なくとも本質的に水平に延びている。
【0144】
図4では、(それぞれの)コーティング装置1の回転駆動装置11は、キャリヤ10がコーティング装置1内のコーティング位置に配置されたとき、特に対応の歯車に好ましくは自動的にまたは不可避的にキャリヤ10および/または回転カップリング12または少なくとも1つのリング要素14に駆動装置経由で結合されまたは係合することもまた示されている。したがって、回転駆動装置11は次に、レンズ2をコーティング中、軸線A回りの所望の回転状態に設定することができる。
【0145】
上述の駆動係合を達成するため、キャリヤ10の歯車またはリング要素14が側方に、この場合、上方に突き出ており、キャリヤ10のシールドまたは挿入中、所望の駆動カップリングが必然的に達成されるようになっている。しかしながら、この場合、他の構造的解決策もまた可能である。
【0146】
以下において、
図6の概略的記載に基づいて、レンズ2をコーティングする提案対象の設備100の第1の好ましい実施形態について説明するが、この場合、上述の記載および説明は、たとえ明示の繰り返しが行われていない場合でも、特に対応関係をなしてまたは補完的に当てはまる。
【0147】
設備100は、好ましくは、コーティングされるべきレンズ2および/またはコーティングされるべきレンズ2を備えたキャリヤ10を受け入れる受け入れステーション24を含む。特に、受け入れステーション24は、割り当てられたキャリヤ10と割り当てられたキャリッジまたはフレーム17の結合のために用いられる。しかしながら、変形例として、これを前もってまたは別個に実施しても良く、ただし、とにかくキャリッジまたはフレーム17が用いられることを条件とする。
【0148】
受け入れステーション24に例えば手動でキャリヤ10およびレンズ2を装填することができる。別法として、キャリヤ10および/またはレンズ2の自動受け入れおよび/または装填もまた実施できる。例えば、既に受け入れられたレンズ2を備えたキャリヤ10またはレンズ2の入った他の容器は、オプションとしての運搬システム25、例えばコンベヤベルトなどによって受け入れステーション24に運搬されるのが良く、特に、受け入れステーション24によって自動化された仕方で受け入れられるのが良い。
【0149】
所望ならば、このようにしてレンズ2もまた受け入れステーション24内にまたは受け入れステーション24のところで手動でまたは自動化された仕方でキャリヤ10中に受け入れ可能でありまたは挿入可能である。
【0150】
受け入れステーション24は、キャリヤ10を好ましくは所望の仕方で、この場合必要ならば特に垂直に差し向ける。
【0151】
また、キャリヤ10をレンズ2を伴ってまたはレンズ2を伴わないで、既に所望の向きをなした状態でまたは所望の向きをなすように、この場合、特に垂直の向きで特に運搬システム25によって受け入れステーション24に送りまたは運搬することが可能である。例えば、この目的のため、キャリヤ10を一種のマガジンまたは輸送キャリッジに入れた状態でかつ/あるいは層状にかつ/あるいは直立して受け入れステーション24まで運搬しまたは送ることができる。かくして、必要とするスペースが少ない設備100の極めてコンパクトな設計が可能になる。
【0152】
好ましくは、キャリヤ10をコーティングされるべきレンズ2と一緒に、コーティング装置1および/または設備100全体を通ってもっぱら好ましい向きで運搬しまたは動かす。これは、特に、簡単な取り扱いおよび/またはコンパクトな設計にとって好都合である。
【0153】
1つの(第1の)コーティング装置1が受け入れステーション24に隣接して位置し、このコーティング装置については
図6において識別が容易であるように
図1Aとともに参照され、このコーティング装置は、第1のコーティングを被着させるために用いられる。
【0154】
別の(第1の)コーティング装置1Bが好ましくは続いて設けられており、この別のコーティング装置1Bは、レンズ2の互いに反対側の面に第1のコーティングを被着させるために用いられ、その結果、次にレンズ2の両面がコーティングされるようになっている。しかしながら、コーティング装置1Bはまた、別のコーティングを被着させるために用いられても良い。
【0155】
2つのコーティング装置1A,1Bは、好ましくは、識別を容易にするために以下において1Bと称する(第1の)コーティングラインBを形成する。
【0156】
図6では、一方において第1のコーティング装置1Aおよび他方において第2のコーティング装置1Bおよびかくしてさらにそれぞれのターゲット4のターゲット駆動装置23がキャリヤ10およびかくしてレンズ2の互いに反対側に配置されており、その目的は、レンズ2の互いに反対側の面または両面のコーティングを可能にすることにある。
【0157】
しかしながら、2つのコーティング装置1A,1Bを共通のハウジング内に組み合わせるとともに/あるいは共通のコーティングチャンバ7と組み合わせることもまた可能である(これは、一例として、
図7に示された第2の実施形態に示されている)。
【0158】
図6では、コーティング装置1のコーティングチャンバ7をコーティングのために排気するための別の模式的な機器または真空ポンプ8が示されている。
【0159】
好ましくは、レンズ2および/またはキャリヤ10は、特に直線をなしておよび/または不連続にまたは連続的に設備100の幾つかの、複数の、または全てのコーティング装置1を通って動くとともに/あるいはこれら装置に受け入れ開口部を経てレンズ2および/またはキャリヤ10が装填され、ここで、レンズ2および/またはキャリヤ10が受け入れ開口部とは別個の排出開口部を経て再び排出される。これは、特に、コーティング装置1および/またはコーティングチャンバ7の所望の連係および/または別々のコーティング装置1および/または設備100の連続的通り抜けまたは通過にとって好都合である。
【0160】
好ましくは、ロック(またはエアロックもしくはスルース)26が各コーティング装置1から見て上流側にかつ/あるいは下流側に位置し、その目的は、コーティングのためにできるだけガス密状態で一方において受け入れ開口部を閉鎖し、他方において排出開口部を閉鎖することができるようにし、特に、コーティングのために所望の真空、特に高真空を生じさせることができるようにすることにある。
【0161】
オプションとして、受け入れステーション24もまた、既に排気されても良く、または予備真空、特に低真空または中程度の真空下に配置されても良く、その目的は、第1のコーティング装置1Aのロック26が開かれたときにコーティング装置1Aを通常の圧力に直接的には抜気させないが、これとは異なり、コーティング装置1Aを可能な限り低いまたは相対的に低い圧力に保つに過ぎないようにすることにある。
【0162】
キャリヤ10は、好ましくは、運搬機器20により、特に対応のかつ/あるいは分散配置された運搬機器21により排出ステーション24から第1のコーティング装置1A中にまたは一般にコーティング装置1中にまたはこれを通ってかつ/あるいは設備100を通って直線状に運搬されまたは動かされるとともに/あるいはレール22上でまたはレール22によって案内される。
【0163】
第1のコーティング装置1Aでのコーティング後、キャリヤ10は、一方の側がコーティングされたレンズ2と一緒に、さらに、好ましくはこの場合もまた直線をなしてかつ/あるいは直線状にかつ/あるいは対応のレール22によってかつ/あるいは運搬機器20および/または運搬駆動装置21によって第2のコーティング装置1B中に運び込まれ、それによりそこに配置されたレンズ2の他方の面をコーティングする。
【0164】
コーティング装置1A,1B、かくして別々のコーティング装置1のコーティングチャンバ7は、好ましくは、互いに別々に設計されるとともに/あるいは特にガス密または真空密方式で、この場合ロック26を通って取り外し可能である。
【0165】
(第1の)コーティングラインB1は好ましくは、互いに反対側のコーティングのために2つのコーティング装置1A,1Bを含む。しかしながら、コーティングラインB1が特に一方の面または2つの面の選択的コーティングのためにコーティング装置1を1つだけ含むこともまた可能である。コーティングラインB1は、さらに好ましくは、特に開始時および終了時にかつ/あるいは個々のコーティング装置1相互間に対応のロック26をさらに含む。
【0166】
特に好ましくは、運搬は、コーティングされるべきレンズ2が割り当てられたキャリヤ10でコーティングラインB1の一方の端部のところで受け入れられ、そして別のまたは反対側の端部のところで再び排出されるように実施される。しかしながら、変形例としてレンズ2を一方の端部のところでコーティングのために受け入れ、コーティングラインB1の同一端部上のコーティング後にこれらレンズを再び排出することもまた可能である。
【0167】
好ましくは、設備100は、(第1の)コーティング装置1Aまたは第1のコーティング装置1A,1BまたはコーティングラインB1を含むだけでなく、さらに、レンズ2を特にそれぞれのキャリヤ10と一緒に好ましくは選択的に、運搬することができまたは運搬する別のコーティング装置1および/またはコーティングラインBを含む。
【0168】
第1のコーティング装置1A,1Bは、特に好ましくは、スパッタリング装置として、特により好ましくは
図1~
図3を参照して説明したマグネトロンスパッタリング向きにかつ/あるいはそれぞれコーティングの片面被着のために設計されている。
【0169】
2つの装置1A,1Bは、好ましくは、
図6に概略的に示されているように、コーティングを互いに反対側からレンズ2に被着するために備えられるとともに/あるいは互いに反対側に、特に運搬方向Fおよび/またはキャリヤ10の主要平面および/またはレンズ2に対して配置されたスパッタリング源3またはターゲット4を備えている。
【0170】
別のコーティング装置1C,1Dが好ましくは、上述したように設計され、かくして、特に2つのコーティング装置1A,1Bに対応してまたはこれらと類似して、さらに特にコーティングを互いに反対側の面に被着させるために設計されている。
【0171】
原理的には、一方において2つのコーティング装置1A,1Bおよび他方において2つのコーティング装置1C,1Dはまた、別々の仕方で設計されても良くかつ/あるいは別々のコーティング方法で作動しても良い。
【0172】
設備100および運搬機器20は、好ましくは、第1のコーティング、特に両面の基本的なコーティングを被着させた後にレンズ2および/またはレンズ2を備えたキャリヤ10を受け入れるために、そしてこれらを特に真空下において下流側の別のコーティング装置1C,1Dおよび/またはコーティングラインB2~B6にさらに運搬することができるようにするために移送チャンバ27を有する。
【0173】
特に、追加のコーティング装置1および/またはコーティングラインBは、移送チャンバ27に並列に連結されており、かくして、これらに互いに別個独立にレンズ2および/またはキャリヤ10を装填することができる。
【0174】
移送チャンバ27は、好ましくは、割り当てられた真空ポンプ28によって排気されるのが良くかつ/あるいは特に好ましくは、コーティング装置1Aおよび/または1Bおよび/またはコーティングラインB1におけるコーティング後にレンズ2をさらに真空下でまたは負圧下で下流側のまたは次のコーティング装置1および/またはコーティングラインB、この場合コーティング装置1CまたはコーティングラインB2~B6のうちの1つに運搬することができるようにする。
【0175】
運搬機器20および/または移送チャンバ27は、好ましくは、レンズ2を好ましくはそれぞれのキャリヤ10と一緒に対応して取り扱うとともに/あるいは運搬し、特に横方向に運搬するコンベヤ29を有する。特に、横方向Q、すなわち他の主要な、特に直線状のまたは直線をなした運搬方向Fに対して横のまたは垂直の方向における運搬が設備100内において可能でありまたは実現される。
【0176】
移送チャンバ27に連結された第1のコーティングラインB1および/またはコーティング装置1Bにおける(第1の)コーティングまたは基本的コーティングの被着または仕上げ後に、ロック26を移送チャンバ27に対して開き、レンズ2を好ましくはキャリヤ10と一緒にいそうチャンバ27中にさらに運搬しまたは移送チャンバ27に送り出す。
【0177】
すると、コンベヤ29は、特に、横方向Qにおける運搬またはずらしまたは運動および/または移送チャンバ27に連結されている別のコーティング装置1Cおよび/またはコーティングラインB2~B6のうちの1つへの選択的なさらなる運搬を可能にする。
【0178】
別のコーティング装置1Cおよび/またはコーティングラインB2~B6は、好ましくは、各々がロック(またはエアロックもしくはスルース)26を経てかつ/あるいは移送チャンバ27に平行に連結され、特に、その結果、この場合もまた、レンズ2および/またはキャリヤ10の運搬が運搬方向Fにおいて実施されるようになっており、この運搬方向Fは、好ましくは、受け入れステーション24と移送チャンバ27との間のかつ/あるいは第1のコーティングラインB1内の運搬方向Fに平行にまたはこれの延長部をなして延びている。しかしながら、他の構造的解決策もまた可能である。
【0179】
別のコーティング装置1Cおよび好ましくはそれぞれこのコーティング装置に連結されているコーティング装置1Dにおいて、別のコーティングまたは複数のコーティングが好ましくはこの場合もまた互いに反対側から交互にレンズ2に被着される。
【0180】
別のコーティング装置1C,1Dは、特に、レンズ2の交互の両面コーティングを可能にするとともに/あるいは好ましくは互いに連係される(結合される)とともに/あるいは(別の)コーティングラインBを形成する。
【0181】
コーティング装置1C,1Dおよび特にさらにこれらに連結されている排出ステーション30は、好ましくは、移送チャンバ27からコーティング装置1C,1Dを通って連結状態の排出ステーション30へのキャリヤ10の少なくとも本質的に直線をなしたおよび/または直線状の運搬が可能であるように配置されている。しかしながら、他の構造的解決策または方式もまた可能である。
【0182】
好ましくは、いずれの場合においても、ロック26は、この場合もまた、コーティング装置1C,1Dの前および後および/またはこれらの間に配置される。
【0183】
特に、別のコーティングラインB2~B6は各々、コーティング装置1Cおよび次のコーティング装置1Dを含みまたはこれらから形成される。
【0184】
特に、ロック26は、処理ラインB2~B6相互間で、一方において移送チャンバ27よりに、他方においてそれぞれ割り当てられた排出ステーション30よりに配置されている。
【0185】
別のコーティング装置1C,1Dおよび/または別のまたは第2のコーティングラインB2~B6内における別のコーティング、特に単一層または多層反射防止膜層および/または1つまたは2つ以上のミラーコーティング層の被着後、レンズには、特に割り当てられたキャリヤ10と一緒に、さらにそれぞれそれぞれの排出ステーション30に運搬されまたは排出される。
【0186】
排出ステーション30では、コーティング済みのレンズ2を運搬機器25に、例えばコンベヤベルトなどに手動で取り出すかあるいは特に自動化方式で排出することができる。
【0187】
また、排出ステーション30へのレンズ2のハンドオフ(hand-off)前に、特にいわゆる表面仕上げのためのまたはエンドコーティング(end coating )を被着させることによるレンズ2の別のまたは最終のコーティングまたは処理を行うことが可能である。これは、例えば、別のまたは第2のまたは最後のコーティングラインB2~B6でおよび/または1つまたは2つ以上の追加のコーティング装置(
図7の第2の実施形態の場合においては1Eを参照されたい)で実施可能である。
【0188】
その結果、特に、仕上げコーティングされたレンズまたは眼鏡レンズ2を設備100によって提供することができるとともに/あるいは製作することができる。
【0189】
排出ステーション30は、好ましくは、ロック26を経て別のまたは最後のコーティング装置1Dおよび/または処理ラインB2~B6および/または好ましくは、設備100によって、かくして特に受け入れステーション24の連結と同等な仕方で形成された真空システムに連結される。好ましくは、排出ステーション30はまた、負圧下にまたは真空下に置かれ、その目的は、ロック26の開放中、コーティング装置1Dの少なくとも過度のエアレーションおよび/またはコーティング装置1D内におけるガス圧力の増加を阻止することにある。
【0190】
特に好ましくは、連係されまたは連結された真空システムが設備100によって形成され、この真空システムは、複数のまたは全てのコーティング装置1および/またはコーティングチャンバ7、必要ならば、ロック26、好ましくは少なくとも1つの移送チャンバ27およびオプションとして受け入れステーション24および/または排出ステーション30を含む。
【0191】
好ましくは、このようにして連続型真空システムが形成され、かかる真空システムを通って、コーティングされるべきレンズ2および/またはレンズ2を備えたキャリヤ10が運搬される。
【0192】
好ましくは、設備100またはその真空システムは、作動中、たとえ真空がオプションとしてばらつきを生じる場合であっても、一般に真空状態にまたは真空下に保たれる。例えば、コーティング装置1、少なくともスパッタリングのためのコーティング装置1は、コーティングのために高い真空下に、かくして特にロック26が閉鎖された状態で配置される。設備100および/または真空システムの他の部分、例えば移送チャンバ27、受け入れステーション24および/または排出ステーション30および/または他のコンポーネントまたは連結部は、好ましくは、低真空状態に、かくして例えば低真空または中程度の真空(だけ)に配置されまたは排気される。
【0193】
特に好ましくは、進行中の作動の間、および特にさらにレンズ2および/またはキャリヤ10を少なくとも真空システムの幾つかの、複数の、または特に全てのコーティング装置1内で交換する場合、かくして、特にさらにロック26が開かれているとき、特定の最小限の真空、特に低真空または中程度の真空が維持されまたは保たれる。これは、特に、効率的なコーティングおよび/またはプロセスシーケンスまたは作動にとって好都合である。
【0194】
好ましくは、設備100は、モジュール設計のものであり、その結果、別々のコーティング装置1を設備100内においてかつ/あるいは真空システム内において、特に真空下で働く別々のコーティング方法とも組み合わせることができるようになっている。
【0195】
特に好ましくは、コーティングは、気相蒸着、特に化学気相蒸着(CVDまたは蒸気相蒸着と呼ばれる)および/または物理的気相蒸着、すなわち物理的コーティング方法、例えばPVD、熱蒸発法、スパッタリングおよび/またはその他によって実施される。
【0196】
提案対象の設備100および/または提案対象の方法は、特にこの場合、コーティング装置1A,1Bおよび/または第1のコーティングラインB1による第1のコーティングとしてのレンズ2への基本的コーティングの被着を可能にする。このコーティングの被着は、比較的短い時間にわたって続く。
【0197】
後において、別のコーティング装置1C,1Dおよび/または別の/第2のコーティングラインB2~B6において、好ましくは別のコーティングを次に被着させる。この場合、レンズ2は必要ならばこれまた複数回にわたってそれぞれ2つのコーティング装置1C,1D相互間で交換することができるとともに/あるいは別々のガスおよび/またはターゲットをコーティング中に用いることができる。したがって、例えば反射防止膜のためおよび/または複数の反射防止層および/またはミラーコーティングを被着させるための層パッケージの構成中におけるこの第2のコーティングは、第1のコーティングまたは基本的コーティングの被着よりも著しく長時間にわたって続く。
【0198】
したがって、設備100の良好なスループットに関し、好ましくは本質的に、第1のコーティングラインB1よりも多くの、特に2倍を超えるほど多くの別のまたは第2のコーティングラインB2~B6が設けられる。
【0199】
特に、設備100および/または運搬機器20および/またはコンベヤ29は、それぞれ、特に好ましくは利用可能性、技術的形態、および/またはそれぞれの要件に応じて、(さらに)コーティングされるべきレンズ2を別のまたは第2のコーティングラインB2~B6のうちの1つに選択的に送りまたは運搬することができる。
【0200】
以下、
図7に基づき、提案対象の設備100および提案対象の方法の第2の実施形態について詳細に説明するが、この場合、特に、第1の実施形態と比較した場合の主要な差異が強調されており、特に、第1の実施形態およびさらにコーティング装置1の全体として好ましい設計に関する上述の記載および説明は、対応関係をなしてまたは補完的に当てはまる。
【0201】
第2の実施形態では、各々が互いに反対側からのレンズ2のコーティングを可能にするとともに/あるいはコーティングラインBを形成するコーティング装置1Aおよび1Bおよび/または1Cおよび1Dは、構造的ユニットとして1対ずつ具体化できるとともに/あるいは共通のハウジングを備えることができる。
【0202】
第2の実施形態では、設備100は、好ましくは、2つまたは3つ以上の第1の処理ラインB1を含み、これら第1の処理ラインB1には、好ましくは、互いに別個独立に、コーティングされるべきレンズ2を提供しまたは装填することができ、特に、対応の別々の受け入れステーション24を介してコーティングされるべきレンズ2およびそれぞれのキャリヤ10を提供しまたは装填することができる。
【0203】
コーティングラインB1は、好ましくは、特にコーティング済みのレンズ2を次に選択的に第2のまたは別のコーティングラインB2~B5のうちの1つにさらに選択的に運搬することができるようにするよう下流側の移送チャンバ27に並列に連結される。
【0204】
好ましくは、追加の移送チャンバ31が第2のコーティングラインB2~B5に連結され、この追加の移送チャンバは、好ましくは、移送チャンバ27として設計されるとともに/あるいは特に1つまたは2つ以上の追加の装置、特にコーティング装置1Eへのコーティング済みレンズ2の選択的なさらなる運搬の際に用いられる。
【0205】
好ましくは、コーティングラインB2~B5は各々、ロック(またはエアロックまたはスルース)26を介して上流側の移送チャンバ27および/または下流側の移送チャンバ31に連結される。
【0206】
一般に、注目できることとして、好ましくは全てのロック26が個々に閉じられるのが良く、その目的は、コーティング装置1の個々の空間および特にコーティングチャンバ7を必要に応じて分離するとともにさらにこれらをそれぞれのコーティングのために真空下に、好ましくは高真空下に配置することにあり、このコーティングは、特にいわゆる気相蒸着によって、特に好ましくはスパッタリングによって実施される。
【0207】
2つの移送チャンバ27,31は、オプションとして
図7に点線で示されているように1つまたは2つの運搬連結部32によって互いに連結され、それにより、特に、後方運搬および/または円形運搬および/または第2のコーティングラインB2~B5のバイパスを可能にする。運搬連結部32はまた、好ましくは、移送チャンバ27,31のように排気可能であり、特に、対応のガス密状態でこれら移送チャンバに連結され、そして設備100の提案対象の真空システムの一部をなしている。
【0208】
オプションとしての運搬連結部32は、好ましくは、レンズ2の通常の運搬方向Fに平行な、選択的にさらに逆方向への追加の運搬を可能にする。
【0209】
運搬連結部32は、好ましくは、対応のコンベヤ29(図示せず)を備える。
【0210】
特に、少なくとも1つの運搬連結部32によって、レンズ2および/またはレンズ2を備えたキャリヤ10を別のコーティングラインB2~B5のうちの1つの通過後、移送チャンバ31および運搬連結部32を介して移送チャンバ27に再び送り戻すことが可能であり、その目的は、レンズ2および/またはレンズ2が次に選択的に再び同一のコーティングラインB2~B5または別のコーティングラインB2~B5を通過するようにすることにある。
【0211】
代替的にまたは追加的に、レンズ2および/またはキャリヤ10はまた、原理的には、必要ならば、好ましくは直接的に交換可能であり、または個々のコーティング装置、この場合、特にコーティング装置1C,1D相互間で1つのまたは各コーティングラインB、特に好ましくは別のコーティングラインB2~B5で前後に移動可能であり、その目的は、複数の層を被着する際に特に最適なシーケンスを可能にすることにある。
【0212】
注目されるべきこととして、第2のまたは別のコーティングラインB2~B5における第2のコーティングは、多くの場合、約10またはそれ以上の層の被着を含み、その結果、このコーティングは多くの場合、第1のコーティングまたは基本的なコーティングの被着よりも2倍または3倍を超えて長く続くようになっている。したがって、この場合、第1のコーティングラインB1よりも好ましくはさらに対応してより多くの第2のコーティングラインB2~B5が提供される。
【0213】
運搬機器20および/または移送チャンバ27はまた、オプションとして、第1のコーティングまたは基本的コーティングが被着された後かつ/あるいは第1のコーティングラインB1を出た後にレンズ2および/またはレンズ2を備えたキャリヤ10の中間貯蔵を可能にするよう設計されている。この目的のため、特に、移送チャンバ27またはそのコンベヤ29は、例えば追加の運搬要素を利用可能にすることによってかつ/あるいは次に好ましくは真空システム中に一体化される貯蔵空間、貯蔵領域、および/またはマガジンを利用可能にすることによって、複数のレンズ2またはキャリヤ10を受け入れるためにそれに応じて設計されるのが良い。
【0214】
上述の中間貯蔵に関し、変形例としてまたは補完的な仕方で、追加の移送チャンバ31が運搬連結部32を介して使用できるとともに/あるいは特に好ましくはレンズ2および/またはレンズ2を備えたキャリヤ10の上述のリング状運搬または円形運搬を移送チャンバ27,31または類似の形態と組み合わせて追加の運搬連結部32によって使用できる。
【0215】
設備100は、好ましくは、レンズ2の次のおよび/または下流側の表面処理および/または表面コーティングのための1つまたは2つ以上の追加のコーティング装置1Eを含む。
【0216】
特に2つまたは3つ以上の追加のコーティング装置1Eが
図7に示されているように、特に好ましくはいずれの場合においてもロック26を経て追加の移送チャンバ31に並列に連結されまたは変形例として移送チャンバ27に連結されている。かくして、追加のコーティング装置1Eによって、レンズ2の追加の表面処理および/またはコーティング、特に上述の表面処理および/または保護層の被着が可能である。
【0217】
移送チャンバ31は、オプションとして1つまたは2つ以上の追加のコーティング装置1Eへのさらなる運搬のためにレンズ2および/またはレンズ2を備えたキャリヤ10の中間貯蔵部として使用されるのが良い。代替例としてまたは追加例として、対応の中間貯蔵もまた、2つの運搬連結部32を介する2つの移送チャンバ27,31の結合の際に上述の円形運搬またはリング状運搬によって実施できる。
【0218】
一般的に言って、注目されるべきこととして、中間貯蔵はまた既に、特に運搬連結部32が移送チャンバ27から移送チャンバ31中へのレンズ2および/またはキャリヤ10の任意所望の交換ならびにこの逆の関係を可能にする場合、単一の運搬連結部32を介する2つの移送チャンバ27,31の結合により既に達成可能でありまたは改良可能である。
【0219】
最後に、この場合に好ましくは追加の装置1Eから直接到来した仕上げコーティング済みまたは処理済みのレンズ2は、特にそれぞれ別個の排出ステーション30にハンドオフされる。
【0220】
第2の実施形態では、運搬システム25およびコンベヤベルトなどもまた、受け入れステーション24および/または排出ステーション30を通って案内できることが模式的に示されている。
【0221】
一般に、注目されるべきこととして、コーティング装置1は、原理的には、少なくとも本質的に同一に、しかしながら、必要ならば、互いに異なって構造化できるとともに/あるいは装備できる。例えば、特に異なって構造化されまたは異なる仕方で作動するコーティング装置1もまた別々のコーティングラインBのために使用できる。
【0222】
特に好ましくは、コーティング装置1A~1Dおよび/またはコーティングラインBでのレンズ2のコーティングは、一例としてコーティング装置1に関して特に
図1~
図3に基づいて上述したスパッタリング、特にマグネトロンスパッタリングによって実施される。設備100のコーティング装置1A~1Dは、特にこの好ましい仕方で構造化されている。しかしながら、互いに異なって構造化されたコーティング装置もまた使用できるとともに/あるいは組み合わせることができる。
【0223】
追加のコーティング装置1Eは、レンズ2を好ましくはスパッタリングまたはカソードスパッタリングによってではなく、これとは異なり、特に熱蒸発法、CVD、PVDなどでコーティングする。
【0224】
オプションとして、追加のコーティング装置1Eはまた、別のコーティングラインB2~B5中にかつ/あるいは別のコーティング装置1C,1Dのうちの一方に組み込むことができる。この場合、必要ならば、追加の移送チャンバ31を省くことができる。このことは、もしそうではない場合に必要な数の排出ステーション30の考えられる減少に対して追加の移送チャンバ31が有用である場合であってもあるいはこれにもかかわらず追加の移送チャンバ31が用いられる場合であってもそうである。
【0225】
本発明、提案対象の設備100および提案対象の方法は、特に好ましくは、気相蒸着、特にスパッタリング、特に好ましくはマグネトロンスパッタリングによる真空中でのレンズ2のコーティングに関する。好ましくは、少なくとも2,3の層、特に第1の層および/または第2の層は、提案対象の設備100および/または提案対象の方法によりレンズ2上に気相蒸着、特にスパッタリング、特に好ましくはマグネトロンスパッタリングによって被着される。
【0226】
レンズまたは眼鏡レンズ2は、好ましくは、被覆される湾曲したまたはドーム状の、特に凹状または凸状の表面または平坦な面を有する。本発明および/または提案対象の設備100および提案対象の方法は、特に、レンズまたは眼鏡レンズ2のかかる湾曲したまたはドーム状の表面のコーティングのみに関する。この場合、特に、それぞれの層の最も高い精度および特に一様な形成が重要である。
【0227】
特に好ましくは、受け入れステーション24で始まって排出ステーション30へのコーティング済みレンズ2のハンドオフまで、レンズ2は、たとえ真空が特に作動中、ロック26の開閉によってかつ/あるいは設備100のそれぞれの領域に応じて空間的に変化する場合があっても、例えば、真空がコーティング装置1および/またはロック26および/または移送チャンバ27,31および/または追加の装置1E内で互いに異なっている場合があり、かつ/あるいは別々のガスを追加しまたは局所的に用いることができる場合であっても、真空または真空システム内に連続的に保持される。
【0228】
コーティング中またはコーティングのため、単一のまたは複数のコーティング装置1、特に少なくともコーティング装置1A,1Bおよび/または第1のコーティングラインB1および/またはコーティング装置1C,1Dおよび/または第2のコーティングラインB2~B5および/またはこれらのコーティングチャンバ7は、好ましくは、0.1Pa未満の圧力まで排気されまたは高い真空をこの中に加えまたはこの中に生じさせる。同じことは、好ましくは、追加のコーティング装置1Eにも当てはまる。しかしながら、要件に応じて、追加のコーティング装置1Eは、該当する場合には、幾分高い圧力で、あるいは「低い」真空中で、かくして例えば中程度の真空内でも作動することができる。
【0229】
設備100の残部内のかつ/あるいは移送チャンバ27および/または31内のかつ/あるいは追加の運搬連結部32内のかつ/あるいは受け入れステーション24および/または排出ステーション30内の圧力は、好ましくは、コーティング装置1内の圧力よりも幾分高くかつ/あるいは特に1,000Pa未満かつ/あるいは0.1Paを超える。特に、かくして、真空もまた、特に低真空または中程度の真空がこれらの中に加えまたは生じる。
【0230】
提案対象の設備100および提案対象の方法ならびに提案対象のキャリヤ10は特に、小さな群をなすレンズ2、特にそれぞれ2つまたは4つのレンズ2の個々のまたは適合したコーティングを可能にし、この場合、良好な高いスループットが別々のコーティングラインBおよび/またはコーティング装置1への選択的な分配によって可能になる。
【0231】
特に、レンズ2は、バッチ操作で、かくして連続方法によってではない仕方でまたは非連続的にコーティングされ、この場合、コーティングは、特にレンズ2の小さな群で、好ましくは個々の対をなしまたは複数の対をなすレンズ2の群の状態でのみ実施され、しかしながら、必要ならば個々のレンズの群または任意の数のレンズ2、特に好ましくは10個未満のレンズ2の群の状態でも実施される。
【0232】
提案対象の設備100および/または提案対象の方法は、好ましくは、1つまたは2つ以上の反射防止層の被着のために用いられる。
【0233】
提案対象の解決策によれば、特に反応性コーティングもまた実施され、この場合、作業ガス(貴ガス)、特にアルゴンへの反応性ガス、例えば、窒素、水素、および/または酸素の対応の供給によって、ターゲット材料は、これと反応することができ、そしてレンズ2上に所望のコーティングを形成することができる。
【0234】
設備100の運搬機器20は好ましくは、分散されたかつ/あるいは分布された運搬駆動装置21、移送チャンバ27,31、および/またはコンベヤ29を有する。
【0235】
運搬駆動装置21は、キャリヤ10の所望の運搬を可能にするために、特にコーティング装置1、コーティングチャンバ7、コーティングラインB、ロック26、移送チャンバ27,31、コンベヤ29、受け入れステーション24、および/または排出ステーション30内にまたはこれらのところに配置される。
【0236】
一般に、注目されるべきこととして、第2のコーティングまたは反射防止膜が好ましくは誘電体の単一の層または多層スタックで作られまたは構成される。特に、高い屈折率を有する層および低い屈折率を有する層から成る多層コーティングが提供される。層スタックの個々の層の材料は、少なくとも可視スペクトル範囲では透明である通常は、セラミック材料である。特に、この目的のため、種々の酸化物または混合酸化物が用いられる。これらの層の厚さは、一般に、10~100nmである。反射防止層スタックの全厚は、一般に、100~1,000nmである。
【0237】
一設備および/または一真空システム内の眼鏡レンズコーティングに必要な好ましい真空システムおよび/または全てのプロセスステップの好ましい連係の結果として、特に、大気中における個々のステップまたは中間ステップが実施されることはない。このように、特に効率的なプロセスの実施が可能であり、しかしながら、特に、望ましくない汚れなどもまた回避できる。
【0238】
互いに異なる実施形態および変形例の個々の観点および特徴はまた、所望ならば互いに組み合わせることができるが、互いに別個独立に実施することも可能である。
【符号の説明】
【0239】
1 コーティング装置
2 眼鏡レンズ/レンズ
3 スパッタリング源
4 ターゲット
5 磁石構造体
6 電圧源
7 コーティングチャンバ
8 機器/真空ポンプ
9 ガス供給源
10 キャリヤ
10A キャリヤの部分
11 回転駆動装置
12 回転カップリング
13 保持要素
14 リング要素
15 ベース要素
16 開口部
17 フレーム
18 案内要素
18A アーム
19 歯付きラック
20 運搬機器
21 運搬駆動装置
22 レール
23 ターゲット駆動装置
24 受け入れステーション
25 運搬システム
26 ロック
27 移送チャンバ
28 真空ポンプ
29 コンベヤ
30 排出ステーション
31 追加の移送チャンバ
32 運搬連結部
100 設備
A レンズの回転軸線
B コーティングライン
D ターゲットの回転軸線
F 運搬方向
H 主要方向
L ターゲットの長手方向広がり
M 中央平面
Q 横方向
S スパッタリングクラウド
V レンズ軸線とターゲット軸線との間の距離
W 角度
Z レンズとターゲットとの間の距離