IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テイト アンド ライル ソリューションズ ユー・エス・エー エル・エル・シーの特許一覧

特許7577445抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法
<>
  • 特許-抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法 図1
  • 特許-抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法 図2
  • 特許-抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法 図3
  • 特許-抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法 図4
  • 特許-抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法 図5
  • 特許-抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法 図6
  • 特許-抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法 図7
  • 特許-抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法 図8
  • 特許-抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】抑制されたモチ性澱粉およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 30/14 20060101AFI20241028BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20241028BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20241028BHJP
   A21D 13/16 20170101ALI20241028BHJP
   A21D 13/42 20170101ALI20241028BHJP
   A21D 13/60 20170101ALI20241028BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20241028BHJP
   A23B 7/02 20060101ALI20241028BHJP
   A23C 9/137 20060101ALI20241028BHJP
   A23C 9/154 20060101ALI20241028BHJP
   A23C 13/12 20060101ALI20241028BHJP
   A23C 13/16 20060101ALI20241028BHJP
   A23C 19/093 20060101ALI20241028BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20241028BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20241028BHJP
   A23G 1/32 20060101ALI20241028BHJP
   A23G 1/40 20060101ALI20241028BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20241028BHJP
   A23G 3/42 20060101ALI20241028BHJP
   A23G 9/34 20060101ALI20241028BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241028BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20241028BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 7/117 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 9/10 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 13/40 20230101ALI20241028BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 21/10 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 29/206 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20241028BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20241028BHJP
【FI】
C08B30/14
A21D2/18
A21D13/00
A21D13/16
A21D13/42
A21D13/60
A21D13/80
A23B7/02
A23C9/137
A23C9/154
A23C13/12
A23C13/16
A23C19/093
A23D7/00 500
A23D9/00 518
A23G1/32
A23G1/40
A23G3/00
A23G3/42
A23G9/34
A23K10/30
A23L2/52
A23L3/36 Z
A23L5/00 B
A23L5/00 F
A23L5/00 N
A23L5/10 E
A23L7/109 A
A23L7/117
A23L7/157
A23L9/10
A23L13/00 A
A23L13/40
A23L19/00 Z
A23L21/10
A23L23/00
A23L27/00 D
A23L27/60 A
A23L29/206
A23L29/212
A23L29/281
A23L29/30
A23L33/125
A23L35/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019532093
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2017066755
(87)【国際公開番号】W WO2018112383
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】62/434,921
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522149980
【氏名又は名称】テイト アンド ライル ソリューションズ ユー・エス・エー エル・エル・シー
【氏名又は名称原語表記】Tate & Lyle Solutions USA LLC
【住所又は居所原語表記】5450 Prairie Stone Parkway, Hoffman Estates, IL 60192, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジュディス ケイ. ホウェイリー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイチャン リウ
(72)【発明者】
【氏名】ユーチン ヂォウ
(72)【発明者】
【氏名】シアン チェン
(72)【発明者】
【氏名】レズリー ジョージ ハウォース
(72)【発明者】
【氏名】マーク ベルツ
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】阪野 誠司
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517595(JP,A)
【文献】特開2003-192702(JP,A)
【文献】特開平9-503549(JP,A)
【文献】特開2009-17880(JP,A)
【文献】特開2009-297026(JP,A)
【文献】特開2012-65645(JP,A)
【文献】特開2013-34414(JP,A)
【文献】特表2005-519170(JP,A)
【文献】Carbohydrate Polymers,2012年,Vol.87,pp.1275-1279
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉であって、95~100%の範囲のアミロペクチン含量と、18~35mL/g範囲の沈降体積とを有し、前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー方法で測定された鎖長13~24の中鎖分枝(重合度)48.0%以下を有し、かつバレーツーバレー方法で測定された鎖長6~12の短鎖分枝少なくとも28.5%を有し、(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比が、25.0%以下であり、ここで、DP13-24は、前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分中の鎖長13~24の中鎖分枝の量であり、DP6-12は、前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分中のバレーツーバレー方法で測定された鎖長6~12の短鎖分枝の量であり、前記抑制されたモチ性澱粉は、澱粉の水性スラリーを3.5~7.0範囲のpHに調整した後、前記澱粉を乾燥させ、かつ加熱することにより製造し、かつアルファ化されない、かつ前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、ヒドロキシプロピル化されない、アセチル化されない、カルボキシメチル化されない、ヒドロキシエチル化されない、リン酸化されない、コハク化されない、陽イオン性または両性イオン性ではない、リン酸塩と架橋結合されない、アジペートと架橋結合されない、エピクロロヒドリンと架橋結合されない、かつアクロレインと架橋結合されない、前記抑制されたモチ性澱粉。
【請求項2】
前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー方法で測定された鎖長13~24の中鎖分枝46.0%~48.0%を有する、請求項1に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉。
【請求項3】
前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー方法で測定された鎖長6~12の短鎖分枝28.5%~31.0%を有する、請求項1または2に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉。
【請求項4】
(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比が、22.0%~25.0%であり、ここで、DP13-24は、前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分中のバレーツーバレー方法で測定された鎖長13~24の中鎖分枝の量であり、DP6-12は、前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分中のバレーツーバレー方法で測定された鎖長6~12の短鎖分枝の量である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉。
【請求項5】
前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー方法で測定された鎖長13~24の中鎖分枝46.0%~48.0%を有し、前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー方法で測定された鎖長6~12の短鎖分枝28.5%~31.0%を有し、かつ(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比が、22.0%~25.0%である、請求項1に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉。
【請求項6】
少なくとも99%のアミロペクチン含量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉。
【請求項7】
3~10の黄色度指数を有する、請求項1~のいずれかに記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉。
【請求項8】
前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、過酸化水素または次亜塩素酸塩によって漂白または酸化されない、請求項1~のいずれか一項に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉
【請求項9】
前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、デキストリン化されず、実質的に1,2-および1,3-分岐がなく、かつ、10%未満である繊維を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉。
【請求項10】
前記タピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、RVA検査で50~1500cP範囲の粘度を有し、かつ、澱粉顆粒の20%以下が調理時に損傷される、請求項1~のいずれか一項に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉。
【請求項11】
1)3回の凍結融解サイクル後に4以下の粒状性、
2)3回の凍結融解サイクル後に5以下のシネレシス、および
3)3回の凍結融解サイクル後に2単位以下の硬度変化中の1つ以上を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉をゼラチン化する段階および乾燥する段階を含む方法によって製造されたアルファ化された澱粉。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉を水の存在下で調理するステップ、および前記澱粉を1つ以上の他の食品成分と組み合わせて提供するステップを含む、食品の製造方法。
【請求項14】
調理済みの形態である、請求項1~12のいずれか一項に記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉を含む食品。
【請求項15】
前記食品は、トマトベースの製品、グレービー、ホワイトソースまたはチーズソースのようなソース、スープ、プディング、サラダドレッシング(例えば、注ぐことができるまたはスプーンですくうことができる)、ヨーグルト、サワークリーム、プディング、カスタード、チーズ製品、フルーツフィリングまたはトッピング、クリームフィリングまたはトッピング、シロップ(例えば、ライトシロップ)、飲料(例えば、乳製品飲料)、グレーズ、調味料、菓子類、パスタ、冷凍食品、シリアル、スープ、または製菓製パン類(例えば、パン、ペストリー、パイクラスト、ドーナツ、ケーキ、ビスケット、クッキー、クラッカー、またはマフィン)であるか、および/または 前記食品は、熱加工食品、酸性食品、乾燥ミックス、冷蔵食品、冷凍食品、押出食品、オーブン調理食品、ストーブ調理食品、電子レンジ対応食品、全脂肪または低脂肪食品、および水分活性の低い食品および/またはフルーツベースのパイフィリング、離乳食などのような高酸性食品(pH<3.7);トマトベースの製品などの酸性食品(pH3.7~4.5);グレービー、ソースおよびスープなどの弱酸性食品(pH>4.5);ソース、グレービーおよびプディングなどのストーブ調理食品;プディングなどのインスタント食品;注入可能でスプーンを利用し得るサラダドレッシング;乳製品または類似乳製品(例えば、ヨーグルト、サワークリームおよびチーズ)などの冷蔵食品;冷凍デザートおよび冷凍ディナーなどの冷凍食品;冷凍ディナーなどの電子レンジ対応食品;ダイエット製品および病院食品などの液状製品、ベーキングされた食品、朝食用シリアル、無水コーティング(例えば、アイスクリーム配合コーティング、チョコレート)、乳製品、菓子、ジャムおよびゼリー、飲料、フィリング、押出型およびシート型スナック、ゼラチンデザート、スナックバー、チーズおよびチーズソース、食用および水溶性フィルム、スープ、シロップ、ソース、ドレッシング、クリーマー、アイシング、フロスティング、グレーズ、トルティーヤ、肉類および魚、ドライフルーツ、乳幼児食品および生地と衣、医療用食品、またはペットフードである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記食品は、トマトベースの製品、グレービー、ホワイトソースまたはチーズソースのようなソース、スープ、プディング、サラダドレッシング(例えば、注ぐことができるまたはスプーンですくうことができる)、ヨーグルト、サワークリーム、プディング、カスタード、チーズ製品、フルーツフィリングまたはトッピング、クリームフィリングまたはトッピング、シロップ(例えば、ライトシロップ)、飲料(例えば、乳製品飲料)、グレーズ、調味料、菓子類、パスタ、冷凍食品、シリアル、スープ、または製菓製パン類(例えば、パン、ペストリー、パイクラスト、ドーナツ、ケーキ、ビスケット、クッキー、クラッカー、またはマフィン)であるか、および/または 前記食品は、熱加工食品、酸性食品、乾燥ミックス、冷蔵食品、冷凍食品、押出食品、オーブン調理食品、ストーブ調理食品、電子レンジ対応食品、全脂肪または低脂肪食品、および水分活性の低い食品および/またはフルーツベースのパイフィリング、離乳食などのような高酸性食品(pH<3.7);トマトベースの製品などの酸性食品(pH3.7~4.5);グレービー、ソースおよびスープなどの弱酸性食品(pH>4.5);ソース、グレービーおよびプディングなどのストーブ調理食品;プディングなどのインスタント食品;注入可能でスプーンを利用し得るサラダドレッシング;乳製品または類似乳製品(例えば、ヨーグルト、サワークリームおよびチーズ)などの冷蔵食品;冷凍デザートおよび冷凍ディナーなどの冷凍食品;冷凍ディナーなどの電子レンジ対応食品;ダイエット製品および病院食品などの液状製品、ベーキングされた食品、朝食用シリアル、無水コーティング(例えば、アイスクリーム配合コーティング、チョコレート)、乳製品、菓子、ジャムおよびゼリー、飲料、フィリング、押出型およびシート型スナック、ゼラチンデザート、スナックバー、チーズおよびチーズソース、食用および水溶性フィルム、スープ、シロップ、ソース、ドレッシング、クリーマー、アイシング、フロスティング、グレーズ、トルティーヤ、肉類および魚、ドライフルーツ、乳幼児食品および生地と衣、医療用食品、またはペットフードである、請求項14に記載の食品。
【請求項17】
請求項1~12のいずれかに記載のタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉を1つ以上の追加の乾燥食品成分との混和物として含む、乾燥ミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月15日付で出願された米国仮特許出願第62/434921号に対する優先権の利益を主張し、同文献全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
本開示の分野
本開示は、一般的に澱粉製品に関する。より詳細には、本開示は、抑制されたモチ性澱粉および、それらを使用する方法を含む、それらに関連する方法に関する。
【0003】
技術背景
モチ性澱粉は、アミロペクチンの形態で、すなわち、非モチ性澱粉のようなアミロペクチンとアミロースとの混合物とは対照的に、高いパーセンテージの多糖類含量を有する澱粉である。モチ性澱粉は、様々な食品に多数の望ましい特性を提供することができる。例えば、モチ性コーン(corn)澱粉およびモチ性タピオカ澱粉のようなモチ性澱粉は、ベーカリーフィリング(例えば、パイ用のフルーツフィリング)、生地、衣、チーズソースのようなソース、およびグレービーのような食品に望ましい食感(texture)と厚さを提供することができる。モチ性澱粉は、通常、対応する非モチ性澱粉よりも高い粘度を提供する。
【0004】
しかしながら、天然澱粉は、通常、食品加工中に遭遇する極端な条件、例えば、高温およびその高剪断応力に耐性でない。さらに、天然モチ性澱粉は、通常、特に冷蔵および/または凍結融解条件下で、長い貯蔵寿命にわたって望ましいテクスチャーおよびレオロジー安全性を保持することができない。ヒドロキシプロピル化澱粉またはアセチル化澱粉を製造するための化学的改質が、しばしば澱粉に食品用途に望ましい安全性を与えるために必要である。しかし、化学的改質は、追加の工程段階とコストを必要とし、おそらくさらに重要なのは消費者にとって望ましくないと考えられることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、90~100%の範囲のアミロペクチン含量;および10~50mL/g範囲の沈降体積、を有するトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉であり;上記トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー(valley-to-valley)方法(すなわち、本明細書に記載されたものと同様)で測定される鎖長13~24の(すなわち、分枝鎖の重合度)中鎖分枝48.5%以下を有し、上記澱粉はアルファ化されない。例えば、特定の実施形態において、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー方法で測定される鎖長13~24の中鎖分枝48.0%以下を有する。特定の実施形態において、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー方法で測定される鎖長13~24の中鎖分枝46.0%~48.5%、46.5%~48.5%、47.0%~48.5%、46.0%~48.0%、46.5%~48.0%または47.0%~48.0%を有する。
【0006】
本開示のまた他の態様は、本明細書に特に記載される90~100%の範囲のアミロペクチン含量;および10~50mL/g範囲の沈降体積、を有する、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉であり;上記トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー方法(すなわち、本明細書に記載されたものと同様)で測定される鎖長6~12の短鎖分枝少なくとも28.0%を有し、上記澱粉はアルファ化されない。例えば、特定の実施形態においで、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー方法で測定される鎖長6~12の短鎖分枝少なくとも28.5%を有する。特定の実施形態において、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、バレーツーバレー方法で測定された鎖長6~12の短鎖分枝が28.0%~31.0%、28.0%~30.5%、28.0~30.0%、28.5%~31.0%、28.5%~30.5%または28.5%~30.0%である。
【0007】
本開示のまた他の態様は、本明細書に特に記載される90~100%の範囲のアミロペクチン含量;および10~50mL/g範囲の沈降体積、を有する、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉であり;(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比が、バレーツーバレー方法で測定された25.5%以下であり、ここで、DP13-24は、上記トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分中の鎖長13~24の中鎖分枝の量であり、DP6-12は、上記トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分中の鎖長6~12の短鎖分枝の量であり(いずれも本明細書に記載されるように測定される)、上記澱粉はアルファ化されない。例えば、特定の実施形態において、(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比は、バレーツーバレー方法で測定された25.0%以下、さらには24.5%以下である。特定の実施形態において、(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比は、バレーツーバレー方法で測定された22.0%~25.5%、22.0%~25.0%、22.0%~24.5%、22.5%~25.5%、22.5%~25.0%、22.5%~24.5%、23.0%~25.5%、23.0%~25.0%または23.0%~24.5%である。
【0008】
本開示のまた他の態様は、90~100%の範囲のアミロペクチン含量;および10~50mL/g範囲の沈降体積、を有する、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉であり;上記トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、ドロップツーベースライン(drop-to-baseline)方法(すなわち、本明細書に記載されたものと同様)で測定される、鎖長13~24の(すなわち、分枝鎖の重合度)中鎖分枝54.5%以下を有し、上記澱粉はアルファ化されない。例えば、特定の実施形態において、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、ドロップツーベースライン方法で測定される鎖長13~24の中鎖分枝54.0%以下を有する。特定の実施形態において、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、ドロップツーベースライン方法で測定される鎖長13~24の中鎖分枝52.0~54.5%、52.5~54.5%、53.0~54.5%、52.0~54.0%、52.5~54.0%または53.0%~54.0%を有する。
【0009】
本開示のまた他の態様は、90~100%の範囲のアミロペクチン含量;および10~50mL/g範囲の沈降体積、を有する、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉であり;上記トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、ドロップツーベースライン方法(すなわち、本明細書に記載されたものと同様)で測定される鎖長6~12の短鎖分枝少なくとも30.5%を有し、上記澱粉はアルファ化されない。例えば、特定の実施形態において、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、ドロップツーベースライン方法で測定される鎖長6~12の短鎖分枝少なくとも31.0%を有する。特定の実施形態において、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分は、ドロップツーベースライン方法で測定される鎖長6~12の短鎖分枝30.5%~33.5%、30.5%~33.0%、30.5%~32.5%、31.0%~33.5%、31.0%~33.0%または31.0~32.5%を有する。
【0010】
本開示のまた他の態様は、90~100%の範囲のアミロペクチン含量;および10~50mL/g範囲の沈降体積、を有する、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉であり;(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比は、ドロップツーベースライン方法で測定された28.0%以下であり、ここで、DP13-24は、上記トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分中の鎖長13~24の中鎖分枝の量であり、DP6-12は、上記トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分中の鎖長6~12の短鎖分枝の量であり(いずれも本明細書に記載されるように測定される)、上記澱粉はアルファ化されない。例えば、特定の実施形態において、(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比は、ドロップツーベースライン方法で測定された27.5%以下、さらには 27.0%以下である。特定の実施形態において、(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比は、ドロップツーベースライン方法で測定された、24.5%~28.0%、24.5%~27.5%、24.5%~27.0%、25.0%~28.0%、25.0%~27.5%、25.0%~27.0%、25.5%~28.0%、25.5%~27.5%、25.5%~27.0%である。
【0011】
本開示のまた他の態様は、90~100%の範囲のアミロペクチン含量;および10~50mL/g範囲の沈降体積、を有する、抑制されたモチ性タピオカ澱粉であり;上記抑制されたモチ性タピオカ澱粉のアミロペクチン画分は、天然モチ性米澱粉よりも鎖長13~24の中鎖分枝を実質的に多く有するが、天然モチ性トウモロコシ澱粉よりも鎖長13~24の中鎖分枝を実質的に少なく有し、上記澱粉はアルファ化されない。例えば、特定の実施形態において、抑制されたモチ性タピオカ澱粉のアミロペクチン画分は、天然モチ性米澱粉に対するDP13-24値よりも少なくとも2パーセンテージ・ポイント高いか、少なくとも3パーセンテージ・ポイント高いか、またはなお少なくとも4パーセンテージ・ポイント高いDP13-24値を有する。そして、特定の実施形態において、抑制されたモチ性タピオカ澱粉のアミロペクチン画分は、天然モチ性トウモロコシ澱粉に対するDP13-24値よりも少なくとも2パーセンテージ・ポイント低いか、またはなお少なくとも3パーセンテージ・ポイント低いDP13-24値を有する。このような特定の実施形態において、分枝鎖長は、バレーツーバレー方法によって測定される。このような他の実施形態において、分枝鎖長は、ドロップツーベースライン方法によって測定される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】バレーツーバレー方法で測定された、従来の澱粉と比較して、本開示の実施例の澱粉のDP13-24画分を示したグラフである。
図2】バレーツーバレー方法で測定された、従来の澱粉と比較して、本開示の実施例の澱粉の(DP13-24- DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比を示したグラフである。
図3】実施例に記載された実験で使用された不透明度に対する標準の写真である。
図4】実施例で行われたシネレシス(syneresis)実験を説明するダイヤグラムである。
図5】実施例に記載された実験に使用された粒状性に対する標準に関する写真セットである。
図6】実施例に記載された凍結融解実験の時間経過による不透明度、シネレシス、および粒子性の平均値を示す棒グラフセットである。
図7】実施例に記載された凍結融解実験の時間経過による不透明度、シネレシス、および粒子性の平均値を示す棒グラフセットである。
図8】実施例に記載された凍結融解実験の時間経過による不透明度、シネレシス、および粒子性の平均値を示す棒グラフセットである。
図9】実施例に記載された実験において3回の凍結融解サイクル後の硬度(firmness)変化対バレーツーバレー方法で測定された(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者は、このような特性(およびいくつかの実施形態において、本明細書に記載の他の特性)を有する澱粉が抑制され、好ましい安定性特性を有するにもかかわらず「改質」澱粉として分類する必要がない点で特に有用であり得ると判断した。例えば、本開示の澱粉は、望ましい凍結融解安全性、望ましい冷蔵貯蔵安全性、および/または望ましい保管安全性を提供することができる。
【0014】
当業者は、様々な天然澱粉が澱粉多糖類の2つの主要成分である、アミロース(直鎖、アルファ-1,4-結合されたポリグルコシド)およびアミロペクチン(アルファ-1,6-結合された分枝点を有する分枝型アルファ-1,4-結合されたポリグルコシド)を異なる相対量で有することを理解している。いわゆる「モチ性(waxy)」澱粉は、少なくとも90%のアミロペクチン(すなわち、アミロースおよびアミロペクチンの総量)を有する。典型的な非モチ性澱粉は、70~85%の範囲の量でアミロペクチンを有する。特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、95~100%の範囲のアミロペクチン含量を有する。他の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、少なくとも99%、または少なくとも99.9%のアミロペクチン含量を有する。高度のアミロペクチンは、モチ性澱粉に非モチ性澱粉とは異なる特性、例えば、より高い粘度、より長くより凝集性のペーストの形成、老化(retrogradation)に対するより高い耐性を提供する。
【0015】
本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉の特定の実施形態において、上記抑制されたモチ性澱粉は、モチ性タピオカ澱粉(キャッサバモチ性澱粉でも知られる)である。本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉の他の実施形態において、上記抑制されたモチ性澱粉は、モチ性コーン(corn)澱粉(すなわち、モチ性トウモロコシ(maize)澱粉)である。本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉の他の実施形態において、上記抑制されたモチ性澱粉は、モチ性小麦澱粉(すなわち、モチ性小麦澱粉)である。当業者は、例えば、顕微鏡検査および標準との比較によって、異なる澱粉供給源を区別することができる。当業者は、例えば、任意にヨウ化物で染色して顕微鏡で澱粉材料を観察し、観察された顆粒の大きさおよび形状を使用して澱粉の類型を決定することができる。当業者は、異なる供給源からの異なる類型の澱粉は、異なるテクスチャーおよびレオロジー特性を有することができ、したがって、異なる食品用途での使用に望ましいことがあることを理解するであろう。
【0016】
本発明のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、10~50mL/g範囲の様々な沈降体積を有することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、15~40mL/g範囲の沈降体積を有する。他の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、18~35mL/g範囲の沈降体積を有する。様々な追加の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、10~40mL/g、または10~35mL/g、または15~50mL/g、または15~35mL/g、または18~50mL/g、または18~40mL/g範囲の沈降体積を有する。さらに他の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、10~45mL/g、または10~30mL/g、または10~25mL/g、または10~20mL/g、または15~45mL/g、または15~30mL/g、または15~25mL/g、または15~20mL/g、または20~50mL/g、または20~45mL/g、または20~40mL/g、または20~35mL/g、または20~30mL/g、または20~25mL/g、または25~50mL/g、または25~45mL/g、または25~40mL/g、または25~35mL/g、または25~30mL/g、または30~50mL/g、または30~45mL/g、または30~40mL/g、または30~35mL/g、または35~50mL/g、または35~45mL/g、または35~40mL/g、または40~50mL/g範囲の沈降体積を有する。当業者であれば、沈降体積は、澱粉の抑制程度の尺度であることを理解するであろうし、本明細書に記載のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉の特定の最終用途のための望ましい沈降体積の範囲を選択するであろう。
【0017】
本明細書で使用される、沈降体積は、加塩緩衝溶液100g(すなわち、澱粉を含む、総量)中1gの調理された澱粉(乾燥基準)によって占められる体積である。この値は、当業者では、「膨潤体積」としても知られている。本明細書で使用される、「加塩緩衝溶液」は、以下の段階によって製造された溶液を指す:
a) トップローダー天秤を使用して、20グラムの塩化ナトリウムをスターラーバーが入っている2リットルのメスフラスコに入れて秤量する;
b) これに、RVApH6.5緩衝液(リッカ・ケミカル社から購入する)を添加してフラスコを少なくとも半分満たし;
c) 塩化ナトリウムが溶解するまで攪拌する;
d) 追加のRVApH6.5緩衝液を添加して最終体積を2リットルにする。
【0018】
本明細書に記載の沈降体積は、最初にスラリーを含有する容器を95℃の水浴内に浮遊させ、ガラス棒または金属へらで6分間攪拌した後、容器を覆い、ペーストを95℃で20分間維持させることによって、澱粉を加塩緩衝溶液中の5%固形分で調理して測定する。容器を浴槽から取り出し、ベンチで冷却させる。生成されたペーストは、水を添加し(すなわち、任意の蒸発された水を置換するために)よく混合して初期重量になるようにする。ペースト(澱粉1.0gを含む)20.0gを加塩緩衝溶液を含有する100mLメスシリンダー内に重み付けし、シリンダー内の混合物の総重量を緩衝液を用いて100gとする。シリンダーを24時間放置する。澱粉沈降物の占める体積(すなわち、シリンダーで読み取られる)は、澱粉1gに対する沈降体積、すなわち、mL/g単位である。
【0019】
本発明者らは、特定の分枝鎖長分布を有するトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉が特に望ましい特性を提供し得ることを確認した。したがって、本開示のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした特定の抑制されたモチ性澱粉において、アミロペクチン画分は、48.5%未満の鎖長13~24の中鎖分枝、および/または少なくとも28%の鎖長6~12の短鎖分枝、および/または25.5%未満の(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比を有し、これらはすべて本明細書に記載されたバレーツーバレー方法を使用して測定される。
【0020】
本発明者らはまた、特定の分枝鎖長分布を有するトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉が特に望ましい特性を提供し得ることを確認した。したがって、本開示のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした特定の抑制されたモチ性澱粉において、アミロペクチン画分は、54.5%未満の鎖長13~24の中鎖分枝、および/または少なくとも30.5%の鎖長6~12の短鎖分枝、および/または28.0%未満の(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比を有し、これらは、すべて本明細書に記載されたドロップツーベースライン方法を使用して測定される。
【0021】
本発明者らはまた、特定の分枝鎖長分布を有するタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉が特に望ましい特性を提供し得ることを確認した。したがって、本開示の特定の抑制されたモチ性タピオカ澱粉において、アミロペクチン画分は、天然モチ性米澱粉よりも鎖長13~24の中鎖分枝を実質的に多く有するが、天然モチ性トウモロコシ澱粉よりも鎖長13~24の中鎖分枝を実質的に少なく有する。本明細書中で使用される「天然モチ性トウモロコシ澱粉」は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5954883号に記載されたように、劣性糖味(sugary)-2(su)対立遺伝子を含まないモチ性トウモロコシ植物の胚乳に由来した澱粉である。本明細書で使用された、天然モチ性米澱粉は、タイチュンモチ性(Taichung Waxy)1、タイチュンモチ性70、タチメモチ性(Tachimemochi)およびタイヌンセンモチ性(Tainung Sen Waxy)2のような、モチ性米品種からの天然モチ性米澱粉である。特定の実施形態において、本発明の抑制されたモチ性タピオカ澱粉に対するDP13-24値は、天然モチ性米澱粉に対するDP13-24値よりも少なくとも2パーセンテージ・ポイント高いか、少なくとも3パーセンテージ・ポイント高いか、またはなお少なくとも4パーセンテージ・ポイント高い。特定の実施形態において、本発明の抑制されたモチ性タピオカ澱粉に対するDP13-24値は、天然モチ性トウモロコシ澱粉に対するDP13-24値よりも少なくとも2パーセンテージ・ポイント低いか、またはなお少なくとも3パーセンテージ・ポイント低い。比較モチ性米およびモチ性トウモロコシ澱粉についてのDP13-24値と、本開示の抑制されたモチ性タピオカ澱粉についてのD13-24値を比較することは、特定の望ましい澱粉を確認するための代替方法を提供する。特に、このような比較を行うときに、特定の測定アーティファクトは制御され得る。このような特定の実施形態において、鎖長は、本明細書に記載されたバレーツーバレー方法によって決定される。このような他の実施形態において、鎖長は、本明細書に記載されたドロップツーベースライン方法によって決定される。
【0022】
このような澱粉は、調理されるかまたはゼラチン化されるときに、非凝集性の、滑らかな食感を有することができ、加工条件(例えば、熱、剪断、および/または極端なpH)に対する耐性だけでなく、さらには冷凍および/または凍結/融解条件下で、所望の貯蔵寿命にわたってレオロジーおよびテクスチャー安全性を示すことができる。
【0023】
バレーツーバレー方法において、アミロペクチン画分の分枝鎖長は、先ず、イソアミラーゼ(EC3.2.1.68、240U/mgのカキグリコーゲンに対するイソアミラーゼ活性、0.001U/mg未満の還元されたマルトヘブトースに対するアルファアミラーゼ活性、0.001U/mg未満のマルトースに対するマルターゼ活性、および0.000001U/mg未満の直鎖α-1,4-マルトデキストリンに対するエキソ-α-グルカナーゼ活性を有するシュードモナス属(Pseudomonas sp.)からのもの)をpH4.0および45℃で16時間使用してアミロペクチンを徹底的に脱分岐化することによって測定される。pH4.0の新鮮な酢酸溶液(すなわち、4℃で5日以上貯蔵されない)100mMが脱分岐化に使用される。イソアミラーゼは、メガザイム(Megazyme)(アイルランド、ウイックローに所在)社から購入することができる。具体的には、脱分岐化は、以下のように行われる:
1. ガラス試験管(フィッシャー、#14-962-26G)の底に入られたモチ性澱粉10mgを秤量する。Milli-Q水3mlを添加して試験管にふたをする。重複サンプルを準備する。
2. 間隔をあけて渦を巻きながら1時間沸騰水でサンプルを入れた試験管を加熱する。
3. 試験管を室温に冷却する。pH4.0の酢酸緩衝溶液2mlを添加し、よく混ぜる。
4. イソアミラーゼ(5U)10ulを添加し、星形スターラーバーを各試験管に入れ、よく混ぜて、ふたをする。
5. 少なくとも16時間一定に攪拌しながら、45℃の加熱ブロックでサンプルをインキュベートする。
6. 100℃で30分間サンプルを加熱して酵素を失活させる。
7. サンプルを40℃に冷却させ、0.45μmのナイロン製シリンジフィルターを通して濾過して、オートサンプラーバイアルに入れる。
【0024】
脱分岐化されたモチ性澱粉の特徴付けは、Dionex ICS-3000(カリフォルニア(CA)、サニーベール所在、ダイオネクス社)上でHPAE-PAD(パルス電流測定検出を用いた高性能陰イオン交換クロマトグラフィー)によって行われる。Dionex CarboPac PA1分析カラム(4×250mm)は、CarboPac PA2ガードカラム(4×50mm)とともに使用する。分離に使用された溶離液は、150mMのNaOH(溶離液A)と、脱気された18MΩ・cmの水中で製造した後、0.2μmのメンブレンフィルターを通して濾過させた、500mMのNaOAcを含有する150mMのNaOH(溶離液B)である。分離のための勾配プログラムは、以下の通りである:60%Aで0~5分、60%~40%Aで5~20分、40%~20%Aで20~50分、20%Aで50分~55分。当業者が理解するように、「60%A」は、60%溶離液Aと40%溶離液Bの溶離液混合物を示す。サンプル溶液の注入体積は、10ulである。各実験は30℃で1.2ml/分(min)の流速で行われた。作動電極は金であり、基準電極は銀-塩化銀である。波形は、「ゴールドスタンダードPAD」である。カラムを平衡させ、次のように再生させる:システムを注入の前に30分間100%Aで、そして次に少なくとも30分間60%Aで平衡させる。5回のサンプル注入ごとに、カラムを100%Aで30分間再生した後、60%Aで30分間平衡させ、その後、5ppm DP1-7混合標準溶液で滞留時間を確認する。1~7の重合度を有する糖類スタンダードは、例えば、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)社から購入することができる。
【0025】
バレーツーバレー分析方法でデータを分析するために、バレーツーバレーでピークを積分することによってピーク面積を計算する。鎖長分布は、DP6からDP53までの総ピーク面積に対するパーセンテージとして表され、DPとともに変化する検出器応答は無視される。DP6とDP12との間の鎖長分布は、「DP6-12」として要約される。DP13とDP24との間の鎖長分布は、「DP13-24」として要約される。3つの繰り返し実験のDP6-12およびDP13-24は、2%より低い%RSDを有するべきである。
【0026】
ドロップツーベースライン分析方法でデータを分析するために、澱粉サンプル(20mg、乾燥基準)を酢酸緩衝液(0.01M、pH4)10mlと混合し、続いて1時間沸騰水浴槽で調理する。50℃に冷却させた後、ゼラチン化された澱粉を20ulのイソアミラーゼ(アイルランド、ウイックローに所在、メガザイム社)を添加して脱分岐化させる。澱粉脱分岐化を一晩(≧12時間)進行させた後、サンプルを沸騰水浴槽で30分間加熱することによって酵素を失活させる。室温に冷却させた後、パルス電流測定検出器およびCarboPacTMPA1分析用カラムが装着されたHPAEC(カリフォルニア(CA)、サニーベール所在、ダイオネクス社、Dionex ICS-3000)のAS-DVオートサンプラーに注入する前に1~1.5mlのサンプルを45μmフィルターに通過させた。サンプルを0分で40%、2分で50%、10分で60%、および40分で80%の溶離液Bの勾配プログラムで溶離させ、ここで、溶離液Aは100mM水酸化ナトリウム水溶液であり、溶離液Bは500mM酢酸ナトリウムを含有する150mM水酸化ナトリウム水溶液である。流速および分離温度は、測定中、それぞれ1ml/分(min)および25℃に維持される。ピークは、ChromeleonTM version6.8(マサチューセッツ(MA)、ウォルサム所在、サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)社)で自動に生成されたベースラインに従って統合される。クロマトグラムの各ピークの面積を全ピークの総面積に対するパーセンテージで表する、各々の検出可能なDPの相対面積%は、ChromeleonTMによって計算される。上述のように、鎖長分布は、DP6からDP53までの総ピーク面積のパーセンテージとして表され、DPとともに変化する検出器応答は無視される。DP6とDP12との間の鎖長分布は、「DP6-12」として要約される。DP13とDP24との間の鎖長分布は、「DP13-24」として要約される。ピークは、ミズーリ(MO)、セントルイス所在、シグマアルドリッチの標準を使用して確認される。
【0027】
当業者は、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉を製造するために使用されたモチ性澱粉供給原料のアミロペクチン画分の分枝鎖長分布がトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉のアミロペクチン画分の分枝鎖長分布に実質的に反映され得ることを理解するであろう。本明細書に記載されたトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉を製造するための様々な方法において、工程条件は、アミロペクチン画分の分枝鎖長分布を実質的に変化させないであろう。特定の実施形態において、例えば、特定のモチ性タピオカ澱粉を供給原料として使用する場合、モチ性澱粉供給原料は、上述のように、中鎖分枝の所望の分布を有するであろう。しかしながら、他の実施形態において、例えば、特定のモチ性トウモロコシ澱粉またはモチ性小麦澱粉を供給原料として使用する場合、モチ性澱粉供給原料を処理して鎖長13~24の中鎖分枝の相対量を減少させるように、および/または鎖長6~12の短鎖分枝の相対的量を増加させるように処理することができる。このような処理は、例えば、酵素的方法を用いて実施することができる。
【0028】
本明細書に記載のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、比較的に少なめの発色をもつように製造され得る。例えば、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉の特定の実施形態は、発色は少ない。すなわち、10以下、例えば3~10または5~10範囲の黄色度指数を有する。特定の望ましい実施形態において、本明細書に記載の澱粉は発色が特に少ない。すなわち、黄色度指数が8未満(例えば、3~8または5~8)である。黄色度指数は、ASTM E313によって測定される。
【0029】
特に、本明細書に記載のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、従来の改質澱粉および/または抑制澱粉を製造するのに使用される多くの従来の化学的改質剤なしで製造することができる。したがって、特定の好ましい実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、いわゆる、「クリーンラベル」澱粉として表示することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、ヒドロキシプロピル化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、アセチル化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、カルボキシメチル化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、ヒドロキシエチル化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、リン酸化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、コハク化されない(例えば、オクテニルコハク化されない)。特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、陽イオン性または両性イオン性ではない。
【0030】
同様に、特定の実施形態において、本明細書に記載のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、澱粉の抑制で一般に使用される架橋結合剤を使用せずに製造することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、リン酸塩(例えば、オキシ塩化リンまたはメタリン酸塩を用いて)と架橋結合されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、アジペートと架橋結合されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、エピクロロヒドリンと架橋結合されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、アクロレインと架橋結合されない。
【0031】
そして、本発明のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉(例えば、上述黄色指数を有する)は、特定の実施形態において、当業界で一般的な他の過酷な化学的処理を使用せずに製造することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、過酸化水素または次亜塩素酸塩によって漂白または酸化されない。当然ながら、他の実施形態において、過酸化水素または次亜塩素酸塩は、本明細書に記載のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉にさらに良好な発色を提供するために用いることができる。
【0032】
特定の実施形態において、本発明のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、デキストリン化せずに製造することができ、このようにデキストリンの典型的な相当な量の再重合された分岐鎖を含有しない。したがって、このような実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、実質的に1,2-および1,3-分岐化(例えば、それぞれ1%未満)がない。このような分岐化は、当業者に知られている核磁気共鳴技術を用いて判定することができる。
【0033】
本発明のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、ラピッドビスコ分析器(RVA)によって測定されるように様々な粘度を有することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、RVAによって測定される粘度が50~1500cP範囲内にあり得る。このような特定の実施形態において、RVAによって測定される粘度は、50~1000cP、50~850cP、50~700cP、50~500cP、50~400cP、50~300cP、50~200cP、100~1100cP、100~1000cP、100~850cP、100~700cP、100~500cP、100~400cP、100~300cP、200~1100cP、200~1000cP、200~850cP、200~700cP、200~500cP、400~1100cP、400~1000cP、400~850cP、400~700cP、600~1100cPまたは600~850cP、700~1500CPまたは700~1300cP範囲内にある。粘度は、1%NaClにおけるpH6.5リン酸塩緩衝液中で5%固形分で160rpmの攪拌速度でRVAによって測定する。分析の初期温度は、50℃である;温度を3分にわたって90℃まで直線的に上昇させた後、95℃で20分間維持させ、次いで3分間にわたって50℃まで直線的に低下させ、次いで50℃で9分間維持させ、以後粘度を測定する。特に、ペースト化(pasting)ピークが、約2~5分の時間で表示される場合、測定された最終粘度は、ペースト化ピーク粘度よりも高い。ペースト化ピークが存在しない場合、95℃維持中の粘度は、平坦であるか、増加する。
【0034】
上で言及したように、本発明のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、前ゼラチン化されない。
【0035】
特定の実施形態において、本発明のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、調理時に完全な顆粒を実質的に維持する。本明細書で使用される粒度は、スラリーを含有する容器を95℃水浴内に浮遊させ、ガラス棒または金属へらで6分間攪拌した後、容器を覆い、ペーストを95℃でさらに20分間維持させ、次いでペーストを室温まで冷却させることによって、澱粉を加塩緩衝溶液中の5%固形分で調理して測定する。このように調理した後、膨潤されているが、完全な顆粒を顕微鏡で観察することができる。当業者は、粒度からの僅かな逸脱が許容されることを理解するであろう。例えば、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉の特定の実施形態において、澱粉顆粒の30%以下が、調理時に(すなわち、粒度に対して上で説明したように)損傷される。このような特定の実施形態において、澱粉顆粒の20%以下、さらには10%以下が、調理時に(すなわち、粒度に対して上で説明したように)損傷される。当業者は、当業界において通常的であるように、澱粉顆粒を顕微鏡(例えば、染色された)下で観察し、澱粉顆粒が完全な状態を維持しているか否かを判定することができる。
【0036】
本明細書に記載のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉の特定の望ましい実施形態は、実質的に消化可能である。例えば、本明細書に特に記載されるトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉の特定の実施形態において、繊維の量は、AOAC 2001.03によって決定されるところにしたがえば、10%未満である。このような特定の実施形態において、繊維の量は、5%未満、さらには2%未満である。
【0037】
上で言及したように、本発明の澱粉は、抑制される。本明細書で使用された、用語「抑制された澱粉」は、「工程耐性」を示す澱粉を意味する。本明細書で使用された、用語「工程耐性」は、澱粉粒子が調理時に水中で膨潤するが、工程全体を通してこれらの微粒子特性を実質的に保持することを意味する。工程耐性澱粉は、破片への分解に抵抗し、加工時の溶解に抵抗する。抑制された澱粉は、これらの観察された顕微鏡検査および膨潤体積によって特徴付けられる、これらの抑制度によって変化し得る。抑制度は、水中で澱粉を調理(一般的に、最初の6分間は手で攪拌しながら30分間95℃で調理)し、次いで顕微鏡で調理物を観察することによって評価され得る。抑制されなかった澱粉は、調理途中に水に溶ける傾向があるので、顆粒と破片を珍しく有するであろう。抑制された澱粉は顕微鏡下で膨潤された無傷の粒子を示し、高度に抑制された澱粉は小さくて暗い粒子を示し、わずかに抑制された澱粉は大きくて明るい粒子を示す。代替的に、抑制度は、上述のように澱粉の沈降体積を測定することによって評価され得る。
【0038】
本発明のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、様々な方法論を用いて製造することができる。様々なモチ性澱粉供給原料(例えば、モチ性タピオカ澱粉、モチ性コーン澱粉、または本明細書に記載の任意のほかのモチ性澱粉のような天然澱粉)を使用することができる。モチ性澱粉供給原料は、例えば、当業界において通常的であるように、澱粉中に存在する脂質および/またはタンパク質の量を減少させるために前処理することができる。
【0039】
特定の実施形態において、本発明のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、その全文が本明細書で参照に引用される国際特許出願公開第2013/173161号に記載の方法を使用して製造する。したがって、本明細書に記載の澱粉の製造方法は、
a)非-前ゼラチン化顆粒モチ性澱粉をアルコール媒体中で塩基の存在下で少なくとも35℃の温度で加熱するステップ;
b)上記塩基を酸を用いて中和するステップ;
c)顆粒モチ性澱粉をアルコール媒体から分離するステップ;および
d)例えば、加熱または蒸気によって、モチ性顆粒澱粉からアルコール溶媒を除去するステップを含む。
アルコール媒体は、一般に少なくとも1種のアルコール、特にメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブチルアルコールなどのC1-C4モノアルコールを含む。1つ以上の他の物質が非アルコール性有機溶媒(特に、アルコールと混和性であるもの)などのアルコール媒体および/または水中に存在することもあり得る。しかしながら、上記方法の一実施形態において、アルコール媒体は、アルコール以外の任意の溶媒および水を含有しない。例えば、有利にするために水性アルコールを使用することができる。アルコール媒体は、例えば、30重量%~100重量%のアルコール(例えば、エタノール)および0重量%~70重量%の水を含むことができる。一実施形態において、アルコール媒体は、80重量%~96重量%のアルコール(例えば、エタノール)および4重量%~20重量%の水を含み、アルコールと水の総量は、100%と同一である。別の実施形態において、アルコール媒体は、90重量%~100重量%のアルコール(例えば、エタノール)および0重量%~10重量%の水を含み、アルコールおよび水の総量は、100%と同一である。他の実施形態において、10重量%以下または15重量%以下の水がアルコール媒体中に存在する。澱粉に相対的なアルコール媒体の量は、極めて重要なものと見なされないが、一般に便宜および加工の容易さのために、攪拌可能なおよび/またはポンピング可能なスラリーを提供するに十分なアルコール媒体が存在する。例えば、澱粉:アルコール媒体の重量比は、約1:2~約1:6であり得る。
【0040】
特定の方法において、モチ性澱粉供給原料がアルコール媒体中で加熱されるときに、少なくともある程度の量の処理剤(塩基および/または塩)が存在する。しかしながら、以前から知られている澱粉改質工程とは対照的に、澱粉の効果的な抑制を達成するために多量の処理剤(澱粉に対して)を使用する必要がないことが有利である。これは、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉の後続加工を単純化し、潜在的な生産コストを減少させる。一般に、(使用される澱粉の乾燥重量を基準で)少なくとも0.5重量%の処理剤が使用されるが、他の実施形態においては、少なくとも1重量%以上2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、または少なくとも5重量%の処理剤が存在する。経済的な理由から、一般に10重量%または15重量%以下の処理剤が存在する。
【0041】
一般に、澱粉、アルコール媒体および処理剤の混合物は、スラリーの形態である。特定の実施形態において、スラリーのpHを特定の値に調整することが望まれ得る。このようなスラリーのpHを測定することは、アルコールの存在のため、困難であり得る。塩基を添加してスラリーを塩基性にする一実施形態において、スラリーが単独の脱イオン水中の澱粉スラリーであるかのように適切な量の塩基を決定し、次いで塩基と澱粉の同一の比率を維持しながら実際量でスケールアップ(scale up)することができる。
【0042】
スラリーは、例えば、中性(pH6~8)または塩基性(pH8超過)であり得る。一実施形態において、スラリーのpHは、少なくとも6である。別の実施形態において、スラリーのpHは、少なくとも7である。別の実施形態において、スラリーのpHは、12以下である。他の実施形態において、スラリーのpHは、6~10、7.5~10.5または8~10である。さらに他の実施形態において、スラリーのpHは、5~8または6~7である。
【0043】
澱粉のアルコール処理剤による処理は、最初に澱粉をアルコール媒体に入れ、次いで処理剤(例えば、塩基および/または塩)を添加して行うことができる。代替的に、処理剤を最初にアルコール媒体と混合し、次いで澱粉と接触させることができる。処理剤は、反応して処理剤として機能する塩を形成する塩基と酸を別々に添加するなどによって、元の位置(in situ)で形成させることができる。
【0044】
上記工程で使用するのに適した塩基は、これらに限定されないが、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物を含む。
【0045】
これらの方法で使用するのに適した塩は、水溶液でイオン化し、実質的に中性溶液(すなわち、pHが6~8である溶液)を提供する水溶性物質を含む。有機酸、例えば、イタコン酸、マロン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、アコニット酸、コハク酸、オキサロコハク酸、グルタル酸、ケトグルタル酸、リンゴ酸、脂肪酸およびこれらの組み合わせの塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩)と同様にアルカリ金属含有塩が特に有用である。
【0046】
異なる処理剤の混合物を使用することができる。例えば、澱粉は、少なくとも1つの塩基と少なくとも1つの塩の両方の存在下でアルコール媒体中で加熱することができる。
【0047】
澱粉、アルコール媒体および処理剤は、澱粉を所望の程度まで抑制するのに效果的な時間および温度で加熱される。一般に、室温以上の温度(すなわち、35℃以上)が必要であろう。同時に、極めて高い温度は、避けるべきである。加熱温度は、例えば、35℃~200℃であり得る。一般に、100℃~190℃、120℃~180℃、または130℃~160℃、または140℃~150℃の温度が十分であろう。加熱時間は、一般に少なくとも5分であるが、20時間以下であり、通常40分~2時間である。一般に所望のレベルの澱粉抑制は、加熱温度が上昇すると、より迅速に達成することができる。
【0048】
処理時間、処理温度、および澱粉、アルコール媒体と処理剤の混合物の成分比率の具体的条件は、一般に澱粉が相当な程度までゼラチン化しないように選択される。すなわち、澱粉は、上で説明したように、非-前ゼラチン化された状態を維持する。
【0049】
加熱段階のために選択された温度がアルコール媒体の1つ以上の成分の沸騰点を超過する場合、加圧され得る容器または他の装置で加熱段階を行うことが有利であろう。アルコール媒体を液体状態に維持するために、処理を制限された領域で実施することができる。追加の陽圧を用いることもできるが、一般的には必要ではない。澱粉は、高温高圧の条件下で処理剤とともにアルコール媒体中でスラリー化し、澱粉の粘度特性を変化させるのに十分な時間処理することができる。他の適切な加工技術が当業者に明らかであり得るが、このような処理は、バッチ(batch)式攪拌タンク反応器または連続式管状反応器で行うことができる。別の実施形態において、澱粉は、管状反応器内の床(bed)の形態であってもよく、アルコール媒体と処理剤の混合物は、このような床を通過し(任意に連続的に)、床は、所望の温度で維持され、澱粉の抑制をもたらす。
【0050】
塩基が処理剤として用いられる実施形態において、澱粉、アルコール媒体および塩基の混合物は、一旦加熱段階が完了されると、塩基を中和させる目的で1つ以上の酸と混合することができる。このような中和段階で使用するのに適した酸には、有機カルボン酸、例えばイタコン酸、マロン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、アコニット酸、コハク酸、オキサロコハク酸、グルタル酸、ケトグルタル酸、リンゴ酸、クエン酸、脂肪酸およびこれらの組み合わせの塩および尿酸などの他の類型の酸が含まれるが、これらに限定されない。抑制された澱粉が食品成分としての使用が意図される場合、酸は一般に、適用される規定下でこのような使用が許容されるものになるように選択されるべきである。一般に、混合物のpHをほぼ中性から弱酸性、例えば、約5~約7または約6~約6.5のpHに低下させるのに十分な酸を添加する。
【0051】
酸による中和は、任意の適切な温度で実施することができる。一実施形態において、澱粉、塩基およびアルコール媒体のスラリーは、中和に使用される酸と混合する前に、使用される加熱温度からほぼ室温(例えば、約15℃~30℃)まで冷却させる。以後、中和された混合物を以下に記載されるように、さらに加工して抑制された澱粉をアルコール媒体から分離することができる。しかしながら、別の実施形態において、塩基の中和に続いて澱粉スラリーをさらに加熱する。このようなさらなる加熱は、塩基の中和後に加熱されていない類似に製造された澱粉の粘度特性と比較し、獲得された抑制澱粉のレオロジー特性を変形させ得ることが見出された。
【0052】
一般に、このようなさらなる加熱段階は、常温以上の温度(すなわち、35℃以上)で実施することが有利である。同時に、極めて高い温度は、避けるべきである。加熱温度は、例えば、35℃~200℃であり得る。一般に、100℃~190℃、120℃~180℃、または130℃~160℃、または140℃~150℃の温度が十分であろう。加熱時間は、一般に少なくとも5分であるが、20時間以下であり、通常40分~2時間である。
【0053】
澱粉とアルコール媒体の混合物は、澱粉をアルコール媒体から分離するように加工することができる。濾過、傾斜分離、沈降または遠心分離などの液体から微粒子固体を回収するための従来の方法がこのような目的に適合することができる。任意の望ましくない水溶性不純物を除去するために分離された澱粉を追加のアルコール媒体および/またはアルコールおよび/または水で洗浄することができる。一実施形態において、残留塩基の中和は、回収された澱粉を酸性化した液体媒体で洗浄することによって達成される。分離された澱粉の乾燥は、本発明による抑制された非-前ゼラチン化顆粒澱粉を提供するであろう。例えば、オーブンまたは流動床反応器または乾燥機またはミキサなどの適切な装置内で比較的高い温度(例えば、30℃~60℃)で行うことができる。澱粉から揮発性物質(例えば、水、アルコール)の除去を容易にするため、真空および/またはガスパージ(例えば、窒素スイープ(nitrogen sweep))を適用することができる。得られた乾燥された抑制非-前ゼラチン化顆粒澱粉は、破砕、粉砕、ミリング、スクリーニングまたは篩掛けすることができるか、特定の所望の粒径を達成する任意のこのような他の技術に適用することができる。一実施形態において、抑制澱粉は、自由流動性の顆粒物質の形態である。
【0054】
しかしながら、一実施形態において、澱粉は、著しく高い温度(例えば、80℃超過または100℃超過または120℃超過)で脱溶媒化段階に適用される。しかしながら、過度に高い温度は、澱粉の変性または変色を引き起こし得るため、避けるべきである。このような段階は、生成物中の残留溶媒(アルコール)の量を減少させるのみならず、澱粉によって示される抑制程度を増進させるという予想外のさらなる利点を提供する。脱溶媒化温度は、例えば、約100℃~約200℃であり得る。一般に、温度は、120℃~180℃または150℃~170℃である。脱溶媒化は、蒸気の存在または不在下で実施することができる。蒸気処理は、このような高温で起こり得る澱粉の変色程度を最小化するのに役立つという点で有利であることが明らかになった。一実施形態において、蒸気は、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉の床またはケーキを通過する。あらゆる目的上、その全文が本明細書で参照に引用される米国特許第3,578,498号の澱粉脱溶媒化方法が使用に適合することができる。蒸気処理後、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉を(例えば、約30℃~70℃の温度のオーブンでまたは流動床反応器で加熱して)乾燥させて残留水分含量を減少させることができる。
【0055】
一実施形態において、アルコール媒体から回収された処理澱粉は、最初に約35重量%以下または約15重量%以下の総揮発性物質含量となるようにする。これは、例えば、回収された澱粉を最初に適度な温度(例えば、20℃~70℃)で所望の初期揮発性物質含量まで空気乾燥またはオーブン乾燥させることによって達成することができる。次いで、生蒸気を乾燥された澱粉に通過させ、システムを蒸気の凝縮点より高い温度で維持させる。このような蒸気脱溶媒化の段階を実施するために流動床装置を使用することができる。
【0056】
一般に、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉中の残留アルコール含量が1重量%未満または0.5重量%未満または0.1重量%未満となるのに効果的な条件下で脱溶媒化を行うことが望ましいであろう。
【0057】
脱溶媒化された後、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉を水で洗浄した後に再乾燥して色相および/または香味をさらに向上させおよび/または、水分含量を減少させることができる。
【0058】
当然、当業者であれば、本明細書に記載の澱粉に到達するために他の方法論を使うことができる。モチ性澱粉供給原料は、例えば、pH調整されて加熱され得る。pH調整は、pH調整剤を澱粉と接触させて行うことができる;pH調整制の例には、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、マロン酸、酒石酸、イタコン酸、アコニット酸、オキサロコハク酸、ケトグルタル酸、脂肪酸および炭酸のみならず、これらの塩(例えば、酸性の中和により元の位置で生成され得るカリウムおよび/ナトリウム塩)が含まれる。pH調整剤は、任意の便利な方式で、例えば、液体(例えば、水、水性エタノールなどの水性アルコールを含むアルコール(例えば、エタノールまたはイソプロパノールを含む上で説明したような)または別の溶媒)中のスラリーであって;乾燥形態;湿った形態(例えば、溶媒(例えば、水、水性エタノールまたは別の溶媒)の中のミスト);または澱粉の湿ったドウ形態(例えば、水、水性エタノールまたは別の溶媒によって)の澱粉供給原料と接触することができる。また、酸のアルカリ金属塩を使用する場合、例えば、酸およびアルカリ金属水酸化物または炭酸塩を別途の段階で添加し、それを元の位置で形成させることができる。
【0059】
pH調整を実施し、様々なpH値を算出することができる。例えば、特定の実施形態において、そして国際公開第2013/173161号に記載されているように、pH調整を実施し、7~10範囲のpHを算出することができる。他の代替的な実施形態において、pH調整を実施し、3~7範囲、例えば、3~6、または3~5、または3~4、または4~7、または4~6、または4.5~7、または4.5~6、または5~7、または5~6、または約3、または約3.5、または約4、または約4.5、または約5、または約5.5、または約6、または約6.5、または約7の範囲のpHを算出することができる。pH調整がスラリーで行われる場合、スラリーのpHは、関連pHである。pH調整が実質的に非-液体形態(例えば、ドウまたは湿った固体)で行われる場合、水中の38%の固体物質のpHは、関連pHである。澱粉に相対的なpH調整剤の量は、例えば、乾燥固体を基準で0.05~30重量、例えば、0.05~20重量%、0.05~10重量%、0.05~5重量%、0.05~2重量%、0.05~1重量%、0.05~0.5重量%、2~30重量%、0.2~20重量%、0.2~10重量%、0.2~5重量%、0.2~2重量%、0.2~1重量%、1~30重量%、1~20重量%、1~10重量%、1~5重量%、5~30重量%、または5~20重量%に変えることができる。望ましくは、pH調整剤は、澱粉供給原料と完全に混合される。これは、pH調整が行われる形態に応じて異なる工程条件を必要とするであろう。pH調整がスラリーで行われる場合、単にスラリーを数分間攪拌するだけで十分である。pH調整がより乾燥した形態(例えば、湿った固体またはドウ)で行われる場合、より実質的な接触手順が望まれ得る。例えば、pH調整剤溶液を乾燥澱粉供給原料に噴霧する場合、約30分間混合した後、少なくとも数時間貯蔵することが望まれ得る。均一な抑制を提供するために、澱粉全体にわたって、すなわち顆粒レベルで、均一なpH調整剤分布を提供することが望ましい。
【0060】
pH調節剤を澱粉と接触させた後、澱粉を加熱させることができる(すなわち、依然としてpH調整剤と接触させた状態で)。澱粉は、様々な形態で加熱することができる。例えば、澱粉は、アルコールまたは非水性溶媒スラリー中で(例えば、溶媒の沸騰点が加熱温度より十分に高くない場合には加圧下で);(例えば、国際公開第2013/173161号に開示されているように)顆粒膨潤を抑制するための澱粉、水および非水溶媒のドウとして,または乾燥状態で(溶媒は、例えば、WO2013/173161に対して上で説明したような濾過、遠心分離および/または熱-乾燥などの従来の技術を用いて除去することができる)加熱することができる。澱粉は、例えば、さらなる加熱前に5%未満の水分レベルまで乾燥することができる。このような乾燥のために、相対的に低温、例えば、40~80℃、または40~60℃、または約50℃が使用され得る。真空が、また乾燥工程において使用され得る。澱粉は、加熱工程(下記参照)の結果として乾燥され得る;別途の乾燥段階は必要ではない。
【0061】
乾燥澱粉は、100~200℃の範囲の温度で加熱され得る。例えば、特定の方法において、加熱温度は120~160℃である。他の様々な方法において、加熱温度は、120~180℃、または120~160℃、または120~140℃、または140~200℃、または140~180℃、または140~160℃、または160~200℃、または160~180℃、または180~200℃である。澱粉は、数回加熱することができる。澱粉は、例えば、20秒~20時間の範囲で所定時間加熱され得る。一般的な加熱時間は、10分~2時間の範囲である。より長い加熱時間および/またはより高い熱処理温度を使用してより多い抑制を提供することができる。材料は、望ましくは均一に加熱される。澱粉は、所望の水分含量を維持するために、加圧下で加熱され得るか、マスフロービン(mass flow bin)または同様の装置で加熱され得る。
【0062】
本明細書に記載された特定の方法は、例えば、pH調整との上記接触のために液体媒体中にアルコールを使用しないで実施され得る。特に望ましい特定の方法において、水がpH調整のための媒体として使用される。したがって、特定の望ましい実施形態において、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、500ppm未満のアルコール溶媒、例えば、500ppm未満のエタノールを含む。例えば、様々な実施形態において、トウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉は、100ppm未満、50ppm未満、10ppm未満、5ppm未満、または1ppm未満のアルコール溶媒、例えば、100ppm未満、50ppm未満、10ppm未満、5ppm未満、または1ppm未満のエタノールを含む。
【0063】
加熱された澱粉を冷却させた後、そのまま使用するか、当技術分野において慣用的な方法でさらに処理することができる。例えば、澱粉を洗浄してさらに白い色およびより心地良い香味を提供することができる。非水性溶媒が使用される場合、できるだけ多くの溶媒を除去することが望ましい。しかし、相対的に低いレベルのpH調整剤が使用されると、最終生成物はさらなる洗浄なしに、妥当なpHおよび灰分目標を満たすことができる。
【0064】
当業者が理解できるように、澱粉供給原料は、例えば、澱粉固有のものであるか、他に存在する望ましくない香味、匂いおよび色相を減少させるために、例えば、従来の方法によって精製することができる。例えば、洗浄(例えば、アルカリ洗浄)、蒸気ストリッピング、イオン交換工程、透析、濾過、例えば、亜塩素酸塩などによる漂白、酵素改質(例えば、タンパク質を除去するために)および/または遠心分離などの方法を用いて不純物を減少させることができる。当業者は、このような精製作業が工程中の様々な適切な時点で実施され得ることを理解できるであろう。
【0065】
本開示のまた他の態様は、本明細書に記載されたトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉を(すなわち、アルファ化された澱粉が乾燥固体を基準で少なくとも95重量%、さらには少なくとも99重量%である材料を提供するために、他の食品成分が実質的に存在しない状態で)ゼラチン化する段階および乾燥する段階を含む方法によって製造されたアルファ化された澱粉である。当業者は、慣用的なアルファ化方法を使用するであろう。
【0066】
本明細書に記載された澱粉は、例えば、流体または半固体組成物の粘度を増加させるための増粘剤または粘性剤(viscosifiers)として使用され得る。従来の澱粉において1つの問題は、貯蔵時、例えば、長期間貯蔵時、低温で貯蔵時、または凍結/融解サイクルを経りながら貯蔵時、澱粉は分子間会合の結果として脱水されることができ、シネレシスで知られた過程を介して水を不可逆的に失うことができる。これは、食品の食感および鮮明度を著しく低下させることができる。有利には、本開示の澱粉を含有する食品が調理され、所望の貯蔵温度まで冷却する場合、貯蔵寿命全体にわたって長期間そのテクスチャー属性を維持することができ、貯蔵中の温度変動(例えば、凍結融解サイクル)を耐えることができる。したがって、本明細書に記載された澱粉を含む食品は、実質的に凍結融解に安定、冷蔵に実質的に安定、および/または貯蔵に実質的に安定することができる。本明細書で特に記載される特定の実施形態において、抑制されたモチ性澱粉は、1)3回の凍結融解サイクル後に4以下の粒状性、2)3回の凍結融解サイクル後5以下、さらには3以下のシネレシス、3)3回の凍結融解サイクル後に2以下の硬度変化中の1つ以上を有する。このようなすべての特性は、以下の実施例に記載されたように測定される。
【0067】
したがって、本発明の別の態様は、食品の製造方法である。該方法は、本明細書に記載の澱粉を、水の存在下で調理するステップ、および調理された澱粉を1つ以上の他の食成分と組み合わせて提供するステップを含む。例えば、本明細書に記載の澱粉を水を含む1つ以上の他の食品成分と組み合わせて上記の澱粉と食品成分の組み合わせを調理することができる。特定の実施形態において、本方法は、低温殺菌、レトルト処理、ケトル調理(kettle cooking)またはバッチ調理(batch cooking)、または超高温加工を含む。澱粉は、代替的に別に調理されることができ、後で1つ以上の食品成分と組み合わせることができる。
【0068】
上記食品は、例えば、トマトベースの製品、グレービー、ホワイトソースまたはチーズソースのようなソース、スープ、プディング、サラダドレッシング(例えば、注ぐことができるまたはスプーンですくうことができる)、ヨーグルト、サワークリーム、プディング、カスタード、チーズ製品、フルーツフィリングまたはトッピング、クリームフィリングまたはトッピング、シロップ(例えば、ライトシロップ)、飲料(例えば、乳製品飲料)、グレーズ、調味料、菓子類、パスタ、冷凍食品、シリアル、またはスープを含むことができる。様々な調理法、例えば、低温殺菌、レトルト処理、ケトル調理、バッチ調理および超高温加工を使用することができる。
【0069】
本明細書に記載された澱粉はまた、例えば、貯蔵後より新鮮な食感を保持するより柔らかい製品を提供するために防止剤(anti-scalant)として作用して、固形食品、例えば、製菓製パン類の特性を改質するために使用され得る。したがって、他の実施形態において、食品は、製菓製パン類、例えば、パン、ペストリー、パイクラスト、ドーナツ、ケーキ、ビスケット、クッキー、クラッカーまたはマフィンである。このような実施形態において、調理は、ベーキングを含むことができる。いくつかの実施形態において、製菓製パン類(すなわち、そのドウまたは生地)における本明細書に記載の澱粉の使用は、老化(staling)を減少させるのに役立つことができる。他の実施形態において、澱粉は、例えば、製菓製パン類内部のフィリングに含むことができる。
【0070】
本発明の澱粉を使用し、様々な他の食品を有利に製造することができる。例えば、本発明の澱粉が有用である食品には、熱加工食品、酸性食品、乾燥ミックス、冷蔵食品、冷凍食品、押出食品、オーブン調理食品、ストーブ調理食品、電子レンジ対応食品、全脂肪または低脂肪食品および水分活性の低い食品が含まれる。本発明の澱粉が特に有用である食品は、低温殺菌、レトルト処理、高温短時間処理、または超高温(UHT)加工などの熱加工段階を必要とする食品である。本発明の澱粉は、冷却、冷凍および加熱を含むすべての加工温度にわたって安定性が要求される食品用途において特に有用である。
【0071】
加工された食品調剤物に基づき、実施者は、完成食品で必須的な濃厚さおよびゲル化粘度のみならず、所望の食感を提供するのに必要な本発明の澱粉の量および種類を容易に選択することができる。一般に、澱粉は、食品の0.1~35重量、例えば、0.5~6.0重量%の量で使用される。
【0072】
本発明の澱粉の使用によって向上され得る食品中には、フルーツベースのパイフィリング、離乳食などの高酸性食品(pH<3.7);トマトベースの製品などの酸性食品(pH3.7~4.5);グレービー、ソースおよびスープなどの弱酸性食品(pH>4.5);ソース、グレービーおよびプディングなどのストーブ調理食品;プディングなどのインスタント食品;注入可能でスプーンを利用し得るサラダドレッシング;乳製品または類似乳製品(例えば、ヨーグルト、サワークリームおよびチーズ)などの冷蔵食品;冷凍デザートおよび冷凍ディナーなどの冷凍食品;冷凍ディナーなどの電子レンジ対応食品;ダイエット製品および病院食品などの液状製品;製菓製パン類、グレービー、ソース、プディング、離乳食、ホットシリアルなどの製造用乾燥ミックス;および生地調理および揚げ物の前に食品をプレダスティング(predusting)するための乾燥ミックスがある。
【0073】
他の実施形態において、食品は、菓子である。
【0074】
本明細書に記載の澱粉は、極めて様々な他の食品に使用することができる。例えば、本発明の澱粉および方法の特定の実施形態において、澱粉は、ベーキングされた食品、朝食用シリアル、無水コーティング(例えば、アイスクリーム配合コーティング、チョコレート)、乳製品、菓子、ジャムおよびゼリー、飲料、フィリング、押出型およびシート型スナック、ゼラチンデザート、スナックバー、チーズおよびチーズソース、食用および水溶性フィルム、スープ、シロップ、ソース、ドレッシング、クリーマー、アイシング、フロスティング、グレーズ、トルティーヤ、肉類および魚、ドライフルーツ、乳幼児食品および生地と衣から選択される食品で使用される。本明細書に記載の澱粉は、様々な医療用食品にも使用することができる。本明細書に記載の澱粉は、ペットフードにも使用することができる。
【0075】
本発明の澱粉はまた、化粧品およびパーソナルケア製品、紙、包装、医薬製剤、接着剤などの化学的に改質された(架橋結合された)抑制澱粉が従来から利用されている様々な非食品最終用途でも使用することができる。
【0076】
望ましくは、本開示の澱粉は、良好な消化耐性と組み合わせて、凍結融解安全性のような、優れた特性を提供することができる。本発明者らは、多くの高度に改質された澱粉と異なり、本明細書に記載された澱粉は、難消化性にならずに、または他に消化不耐症(digestive intolerance)を引き起こすことなく、さらには要求される貯蔵条件において、望ましい粘度特性および望ましい凍結融解耐性のような、望ましい特性を提供するのに十分に抑制され得ることを確認した。
【0077】
例えば、本明細書に特に記載された望ましい特定の実施形態において、本開示の澱粉は、以下のものを1つ以上(例えば、2つ以上、または3つすべて)有する:
【0078】
a)望ましい粘度、例えば、RVAによって測定された50~1500cPの範囲の粘度。このような特定の実施形態において、RVAによって測定される粘度は、50~1000cP、50~850cP、50~700cP、50~500cP、50~400cP、50~300cP、50~200cP、100~1100cP、100~1000cP、100~850cP、100~700cP、100~500cP、100~400cP、100~300cP、200~1100cP、200~1000cP、200~850cP、200~700cP、200~500cP、400~1100cP、400~1000cP、400~850cP、400~700cP、600~1100cPまたは600~850cP、700~1500CPまたは700~1300cP範囲内にあり;
【0079】
b)望ましい凍結融解挙動、例えば、1)3回の凍結融解サイクル後に4以下の粒状性、2)3回の凍結融解サイクル後に5以下、さらには3以下のシネレシス、3)3回の凍結融解サイクル後に2単位以下の硬度変化中の1つ以上;および
【0080】
c)良好な消化耐性。
【0081】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の澱粉を1つ以上の食品成分との混和物として含む乾燥ミックスである。乾燥ミックスが調理されるとき(すなわち、水の存在下で)、ゲル化により長い時間がかかる可能性があり、したがって、調理された製品を維持し、調理された製品を(例えば、ポンピングによって)運送し、調理された製品がゲル化を始める前に、調理された製品を容器に充填させるのにより長い時間が許容され得る。乾燥ミックスは、例えば、製菓製パン類、例えば、パン、ペストリー、パイクラスト、ドーナツ、ケーキ、ビスケット、クッキー、クラッカーまたはマフィン用乾燥ミックスであり得る。
【0082】
以下、さらなる説明は、実施例に関して提供される。
【0083】
実施例1-抑制されたモチ性澱粉の粘度および沈降体積
モチ性澱粉供給原料は、次のpH調整剤のいずれかを用いてpH調整される:ギ酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、マロン酸、酒石酸、イタコン酸、アコニット酸、オキサロコハク酸、ケトグルタル酸、および炭酸のみならず、これらの塩(例えば、酸性の中和により元の位置で生成され得るカリウムおよび/ナトリウム塩)が含まれる。pH調整剤は、数分間攪拌下で液体(例えば、水)中のスラリー中で澱粉供給原料と接触される。pH調整は、3.5~7.0の間のpH範囲で行われることができる。澱粉に対するpH調整剤の量は、例えば、澱粉の乾燥固体重量を基準で0.01~30重量%の間で変わることができる。pH調整剤を澱粉と接触させた後、澱粉(すなわち、pH調整剤との接触を維持したままで)をさらに加熱する前に1%未満の水分レベルまで乾燥させ、乾燥した澱粉を、例えば、20秒~20時間の範囲で所定時間100~200℃の範囲の温度で加熱する。
【0084】
天然モチ性トウモロコシ澱粉と天然モチ性タピオカ澱粉は、供給者が提供した情報によって90%以上のアミロペクチン含量を有する。天然および抑制されたモチ性澱粉の両方の沈降体積およびRVA粘度データは、以下の表1に提供される。サンプル1~4を出発物質として天然モチ性タピオカ澱粉を使用して製造し、サンプル5~7を出発物質として天然モチ性トウモロコシ澱粉を使用して製造した。食品用途で最も大きな関心対象になる沈降体積の範囲は、一般に20~35mL/gであるものと考えられる。
【表1】
【0085】
粘度は、加塩緩衝溶液中で5%固形分で160rpmの攪拌速度でRVAによって測定する。分析の初期温度は、50℃である;温度を3分にわたって90℃まで直線的に上昇させた後、95℃で20分間維持させ、次いで3分間にわたって50℃まで直線的に低下させ、次いで50℃で9分間維持させた。粘度を加熱および冷却サイクル全体にわたって測定し、サイクル終了時の粘度をRVA粘度として報告した。天然モチ性澱粉とは対照的に、サンプル1~7はRVA曲線の始め部分に大きなピークを有さず、高温で安定な粘度を保持する。
【0086】
実施例2 分枝鎖長分布分析-バレーツーバレー方法
分枝鎖長分布は、バレーツーバレー方法を使用して、本明細書に記載された天然または抑制されたモチ性澱粉について上述のように決定した。その結果は、図1および図2に示されており、これは、本開示の抑制されたモチ性タピオカ澱粉は、DP13-24が48.0%以下のアミロペクチン画分を有する一方、他の抑制された澱粉は、DP13-24が48.5%超過であるアミロペクチン画分を有し;本開示の抑制されたモチ性タピオカ澱粉は、25.0%未満の(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比を有する一方、他の抑制された澱粉は、25.5%超過の(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比を有することを示す。詳細なデータは、以下の表に提供されており、各材料に対する再現が提供される。
【表2】
【0087】
実施例3-抑制されたモチ性澱粉の凍結融解安全性
本開示の澱粉の凍結融解安全性に関する様々なテクスチャー属性を調査するために一連の実験を行った。食感特性を評価するために、スラリーを含有する容器(すなわち、ガラス瓶)を95℃の水浴内に懸濁させ、ガラス棒または金属へらで8分間攪拌した後、容器を覆い、ペーストを95℃で20分間維持させることによって、本発明の様々な澱粉および市販のトウモロコシ、小麦、またはタピオカをもとにした抑制されたモチ性澱粉を脱イオン水の5%固形分で調理した。容器を浴槽から取り出し、ベンチで冷却させた。生成されたペーストは、水を添加し(すなわち、任意の蒸発された水を置換するために)よく混合して初期重量になるようにした。1回目、2回目および3回目の凍結融解サイクルに使用されるガラス瓶(glass jars)を、この瓶に触れないように、またこの瓶がコンテナまたはボックス内にあるか、または特に断熱されていないようにフリーザー(-18℃)に入れた。ガラス瓶を一晩(16~18時間)休止させた。サンプルをフリーザーから取り出し、ガラス瓶に触れないように実験室のカウンタートップ(countertop)に置いた。ガラス瓶を少なくとも6時間室温に加温させた。これで1回目の凍結融解サイクルが完了した。2回目次および3回目の冷凍サイクルを受けたサンプルを凍結および解凍段階を繰り返すためにフリーザーに戻した。サンプルは、調理当日および3回の凍結/融解サイクルのそれぞれを経った後、パネリストによって評価された。調査した澱粉は、サンプル6;比較澱粉A;および表2に記載されたサンプル2であった。比較澱粉Aは、改質されたモチ性トウモロコシ澱粉であり、無水酢酸と無水アジピン酸とのエステル化で製造され、アセチル基は、澱粉の1.2~1.5重量%であり、アジピン酸基は、澱粉の0.1重量%である。
【0088】
パネリストは、以下に記載されたように、不透明度、硬度、シネレシスおよび粒状性を評価した。各属性は、15ポイント線スケールで等級化した。異なる等級に対する参照物が各グループに提供された。
【0089】
硬度は、市販中の製品との比較によって決定された:
● 硬度3-スアーブクリーミアーモンド&ヴァーベナボディウォッシュ(Suave Creamy almond & verbena Body Wash)
● 硬度7-シアモイスチャーココナッツ&ハイビスカスカーリングジェルスフレw(Shea Moisture Coconum & Hibiscus Curling Gel Souffle w)/アガベネクター&フラックスシードオイル(Agave Nectar & Flax Seed Oil)
● 硬度11-ガルニエパワーパテサーファーヘア(Garnier Power Putty Surfer Hair)
【0090】
硬度を決定するために、スプーンの裏側を使用して、試験澱粉および参照製品を2~3回プロッドし;参照製品を基準で試験澱粉のスプーンに対して抵抗する力を評価した。数字が高いほどより高い硬度を示す。
【0091】
不透明度は、黒い背景の約1インチの前で、250mlのビーカー中の試験澱粉と図3の写真を比較することによって決定した。数字が高いほどより高い不透明度を示す。
【0092】
シネレシスは、試験サンプル表面に対して45度の角度でプラスチックスプーンを保持し、試験サンプルを約半分ほど軽く押し下げ、3秒間でどれだけ多くの清水が絞り出されたかを側面から観察することによって決定した。シネレシスのレベルは、図4の写真と比較することによって決定した。
【0093】
粒状性(すなわち、表面粒状性)は、試験澱粉の上面を観察し、これを図5の写真と比較することによって決定した。
【0094】
図6図8は、凍結/融解サイクルの進行の間に各製品(それぞれサンプル6、比較澱粉A;およびサンプル2)の3つの試験済み属性に対する平均値を示す棒グラフを提供する。サンプル6および比較澱粉Aとは異なり、本開示の抑制されたモチ性タピオカ澱粉(サンプル2)は、良好な凍結/融解安全性を示した。
【0095】
図9は、上述の比率と澱粉の凍結融解安全性との間に相関関係があることを立証する。3回の凍結融解サイクル後の硬度の変化は、澱粉安全性の測定値であり、票の総目盛りで割った、3回の凍結融解サイクル後の硬度と新鮮なサンプルの硬度との間の差で計算される。ここでの票の総目盛りは、上述のように15であった。比率が25.5%以下である場合、硬度変化はごくわずかであり;比率が25.5%超過の場合、硬度変化は顕著であり、凍結融解安全性が劣っていることを示す。
【0096】
実施例4 分枝鎖長分布分析-ドロップツーベースライン方法
分枝鎖長分布を本明細書に記載された抑制されたモチ性タピオカ澱粉および市販の抑制された澱粉について上述したように、ドロップツーベースライン方法を使用して測定し;データは2回繰り返し実験の平均である。結果は、以下の表に示されているが、これは、本開示の抑制されたモチ性タピオカ澱粉は、DP13-24が54.5%以下のアミロペクチン画分を有する一方、他の市販の抑制された澱粉は、DP13-24が54.5%超過であるアミロペクチン画分を有し;本開示の抑制されたモチ性タピオカ澱粉は、DP6-12が少なくとも30.5%であるアミロペクチン画分を有する一方、他の市販の抑制された澱粉は、DP6-12が30.5%未満のアミロペクチン画分を有し;本開示の抑制されたモチ性タピオカ澱粉は、28.0%以下の(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比を有する一方、他の市販の抑制された澱粉は、28.0%超過である(DP13-24 - DP6-12)/(DP13-24 + DP6-12)比を有することを示す。
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9