(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】ポリペプチドバリアントおよびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20241028BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241028BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241028BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241028BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241028BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241028BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241028BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241028BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241028BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C07K16/46
C07K16/28
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P31/00
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2019543208
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2018053464
(87)【国際公開番号】W WO2018146317
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-10
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518192172
【氏名又は名称】ジェンマブ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ビュールスケンズ フランク
(72)【発明者】
【氏名】オーバーデイク マレイエ
(72)【発明者】
【氏名】ディクス アニーク エム.
(72)【発明者】
【氏名】デ ヨング ロブ
(72)【発明者】
【氏名】ストルマネ クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】シュールマン ジャニーヌ
(72)【発明者】
【氏名】パレン ポール
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509476(JP,A)
【文献】特表2015-524387(JP,A)
【文献】国際公開第2016/164480(WO,A1)
【文献】特開2016-145222(JP,A)
【文献】特表2008-502590(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006052(WO,A2)
【文献】J. Immunol.,2017年01月06日,Vol. 198,pp. 1585-1594
【文献】J. Immunol.,2001年,Vol. 166,pp. 2571-2575
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA/BIOTECHNO/CABA/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドであって、該Fc領域は、E430G、K326A、E333A、およびP396Lを含み、該位置はEUナンバリングによるヒトIgG1に対応し、
該ポリペプチドが、Fc領域における変異を有しない親ポリペプチドと比較して、増強されたFc-Fc相互作用および増強されたC1q結合特性を有
し、
該Fc領域が、多くて10個のさらなる置換を含む、
前記ポリペプチド。
【請求項2】
S440における変異がS440YまたはS440Wでないことを条件として、位置K439またはS440に対応するFc領域におけるさらなる置換を含む、請求項
1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
さらなる置換がK439EまたはS440Kより選択される、請求項
1または
2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
位置F405またはK409に対応するFc領域におけるさらなる置換を含む、請求項
1または
2に記載のポリペプチド。
【請求項5】
さらなる置換がF405LまたはK409Rより選択される、請求項
1~
4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である、請求項1~
5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
第1の重鎖および第1の抗原結合領域と第2の重鎖および第2の抗原結合領域とを含む、Fc領域を含む二重特異性抗体であり、
(a)第1の重鎖は、K409、F405、T366、L368、K370、D399、Y407からなる群より選択される位置におけるさらなる置換を含み、
(b)第2のFc重鎖は、K409、F405、T366、L368、K370、D399、Y407からなる群より選択される位置におけるさらなる置換を含み、
(c)第1の重鎖および第2の重鎖におけるさらなる置換は、同一の位置にない、
請求項
6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
第1の重鎖が、K409およびF405の群より選択される位置における置換を含み、第2の重鎖が、K409およびF405の群より選択される位置における置換を含み、第1の重鎖および第2の重鎖における置換が、同一の位置でない、請求項
7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
第1の重鎖がK409RまたはF405Lの置換を含み、第2の重鎖がK409RまたはF405Lの置換を含み、第1のFc領域および第2のFc領域における置換が同一でない、請求項
6~
8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
Fc領域が、ヒトのIgG1アイソタイプ、IgG2アイソタイプ、IgG3アイソタイプ、IgG4アイソタイプ、または混合アイソタイプである、請求項1~
9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
Fc領域がヒトIgG1アイソタイプである、請求項1~
10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項1~
11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
抗原結合領域が腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFR-SF)またはGタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーに結合する、請求項1~
12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
抗原結合領域が、FAS、DR4、DR5、TNFR1、DR6、DR3、EDAR、NGFR、OX40、CD40、CD30、CD27、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、RELT、およびGITRからなる群より選択されるTNFR-SFのメンバーに結合する、請求項1~
13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
E430G、K326A、E333A、およびP396Lの置換を導入する工程を含み、該位置はEUナンバリングによるヒトIgG1に対応する、
ヒトIgGのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドのアゴニスト活性を、Fc領域における変異を有しない親ポリペプチドと比較して増加させる方法
であって、Fc領域における多くて10個のさらなる置換を導入する工程を含む、前記方法。
【請求項16】
K439EまたはS440KであるFc領域におけるさらなる置換を導入する工程を含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
F405LまたはK409RであるFc領域におけるさらなる置換を導入する工程を含む、請求項
15または
16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~
14のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリペプチドを含む組成物。
【請求項19】
請求項
12~
14のいずれか一項に記載の1種または複数種の抗体を含む、請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1~
14のいずれか一項に記載の2種のポリペプチドである、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチド
を含む、請求項
18または
19に記載の組成物。
【請求項21】
前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドが異なるエピトープに結合する、請求項
20に記載の組成物。
【請求項22】
前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドが異なる抗原に結合する、請求項
20または
21に記載の組成物。
【請求項23】
前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチド
が、または
前記第1のポリペプチド、前記第2のポリペプチド、および付加的なポリペプチドが、
等モル比で前記組成物中に存在する、請求項
20~
22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
組成物が薬学的組成物であり、
抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、DR5である抗原に結合する、
請求項
18~
23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、DR5である抗原に結合する、
医薬として使用するための、請求項1~
14のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項
18~
24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、DR5である抗原に結合する、
がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染性疾患の処置において使用するための、請求項1~
14のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項
18~
24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、DR5である抗原に結合する、
がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、および感染性疾患からなる群より選択される疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1~
14のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項
18~
24のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項28】
抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、DR5である抗原に結合する、
請求項1~
14のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項
18~
24のいずれか一項に記載の組成物を含むパーツキット(kit of parts)であって、該ポリペプチドまたは組成物がバイアルなどの1個または複数個の容器中に存在する、前記パーツキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、親ポリペプチドまたは親抗体と比較して、Fc領域に少なくとも2個のアミノ酸置換を有する、抗体などの、結合領域を含むFc領域含有ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、および抗体依存性細胞貪食(ADCP)のような、モノクローナル抗体のFcによって媒介されるエフェクター機能は、効力および毒性によって定義される治療濃度域に寄与する。CDCは、C1qが抗体のFc領域に結合することによって開始される。C1qは、茎状部に接着した6個の結合性の球状ヘッドからなる多量体タンパク質である。
【0003】
細胞表面における標的結合時のIgG六量体化は、Fc領域における点変異によって増強されることが示されている。六量体化は、分子間非共有結合性Fc-Fc相互作用によって媒介され、Fc-Fc相互作用は、E345RおよびE430Gを含む、CH3ドメインにおける点変異によって増強され得る。
【0004】
WO2013/004842(特許文献1)は、補体依存性細胞傷害(CDC)などのエフェクター機能の修飾をもたらす1個または複数個のアミノ酸修飾を有するバリアントFc領域を含む抗体またはポリペプチドを開示している。
【0005】
WO2014/108198(特許文献2)は、補体依存性細胞傷害(CDC)の増加をもたらす1個または複数個のアミノ酸修飾を有するバリアントFc領域を含む、抗体などのポリペプチドを開示している。
【0006】
WO2016/164480(特許文献3)は、アゴニスト活性を有する抗原結合複合体を開示している。抗体間の増強されたFc-Fc相互作用は、細胞表面上の標的との抗体結合の効果を増幅するために使用され得る。しかしながら、Fc領域間のFc-Fc相互作用の増強のみが、例えば、受容体との結合によって、シグナリング経路を活性化するために十分に強力なシグナルを作り出すために十分であるとは限らない。
【0007】
従って、親ポリペプチドと比較した時に、結合時の標的受容体の増加した活性化などの、増加したFc-Fc相互作用およびアゴニスト活性を有する、ヒトIgGのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体を提供することが、本発明の目的であり、ここで、親ポリペプチドは、同一のアイソタイプのヒトIgGであり、同一の抗原結合領域を有し、Fc領域における変異を含まず、即ち、親ポリペプチドまたは親抗体である。
【0008】
ポリペプチド、例えば、抗体の抗原結合領域が対応する抗原に結合した時、Fc領域における変異を有しない親ポリペプチドと比較して、シグナリングを活性化し、任意で、増強されたシグナリングを誘導するポリペプチドを提供することが、本発明の別の目的である。
【0009】
増強されたFc-Fc相互作用特性および増強されたCDCなどのエフェクター機能を有するポリペプチドを提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0010】
Fc領域における変異を含まない親ポリペプチドと比較した時、増強されたFc-Fc相互作用および増強されたC1q結合特性を有するポリペプチドを提供することが、本発明のさらなる目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2013/004842
【文献】WO2014/108198
【文献】WO2016/164480
【発明の概要】
【0012】
本明細書中に記載されるように、本発明は、Fc領域と抗原結合領域とを有するポリペプチドまたは抗体に関し、ここで、Fc領域は、増加したCDC活性および/またはアゴニスト活性を有するポリペプチドまたは抗体を提供するFc-Fc増強変異およびC1q結合変異を有する。
【0013】
理論に限定されないが、本発明のポリペプチドまたは抗体は、細胞表面上の標的に結合した時に、2個のポリペプチドまたは抗体分子のFc領域の間で安定的に結合相互作用することができ、それが、増強された六量体形成のようなオリゴマー化をもたらし、それによって、高アビディティ表面が提供されると考えられる。本発明のポリペプチドまたは抗体はさらに、Fc領域における変異を含まない親ポリペプチドまたは親抗体、即ち、同一のアイソタイプの親ポリペプチドまたは親抗体と比較して、増加したFcエフェクター応答を有する。
【0014】
一つの局面において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体を提供し、ここで、Fc領域は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における少なくとも1個のFc-Fc増強置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、および(b)少なくとも1個のC1q結合置換を含み、位置は、EUナンバリング(Edelman et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.1969 May;63(1):78-85;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.1991 NIH Publication No.91-3242)によるヒトIgG1に対応する。
【0015】
一つの局面において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体を提供し、ここで、Fc領域は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0016】
E430、E345に対応する位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換は、本発明によるFc-Fc増強置換と見なされる。
【0017】
G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換は、本発明によるC1q結合置換と見なされる。
【0018】
即ち、本発明者らは、本発明の第1の局面において、Fc-Fc相互作用を増強する第1の変異を、C1q結合を増強する第2の変異と共に導入することによって、アゴニスト活性および/または増強されたCDCを有するポリペプチドまたは抗体が提供されることを見出した。
【0019】
一つの局面において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体を提供し、ここで、Fc領域は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0020】
即ち、本発明者らは、Fc-Fc増強変異が、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における1個または複数個のC1q結合置換と共に、アゴニスト活性を提供し得ることを見出した。
【0021】
本発明者らはさらに、Fc-Fc増強変異が、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における1個または複数個のC1q結合置換と共に、増強されたCDCのような増強されたFc媒介性エフェクター機能を提供し得ることを見出した。
【0022】
ポリペプチドまたは抗体におけるFc-Fc増強変異とC1q結合置換との組み合わせは、親ポリペプチドまたは親抗体と比較した時に、アゴニスト活性を有するポリペプチドまたは抗体を生成するという、驚くべき効果を有する。
【0023】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440W、およびS440Yからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含む。
【0024】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、E430S、E430F、およびE430Tからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含む。
【0025】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、E345Q、E345R、およびE345Yからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含む。
【0026】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換E430Gを少なくとも含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換E345Kを少なくとも含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換S440Yを少なくとも含む
【0027】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0028】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A、K326W、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個の位置、例えば、2個または3個の位置における置換を含む。
【0029】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A、K326W、E333S、E333A、E333T、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個の位置、例えば、2個または3個の位置における置換を含む。
【0030】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326WおよびE333Sを含む。
【0031】
さらなる局面において、本発明は、ヒトIgGのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を導入する工程、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を導入する工程を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0032】
さらなる局面において、本発明は、ヒトIgGのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を導入する工程、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を導入する工程を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0033】
別の局面において、本発明は、本明細書中に記載される少なくとも1種のポリペプチドまたは抗体を含む組成物に関する。
【0034】
別の局面において、本発明は、医薬として使用するための、本明細書中に記載されるポリペプチド、抗体、または組成物に関する。
【0035】
別の局面において、本発明は、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染性疾患の処置において使用するための、本明細書中に記載されるポリペプチド、抗体、または組成物に関する。
【0036】
別の局面において、本発明は、疾患を有する個体を処置する方法に関し、ここで、方法は、本明細書中に記載されるポリペプチド、抗体、または組成物の有効量を該個体へ投与する工程を含む。
【0037】
[本発明1001]
免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドであって、該Fc領域は、
(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、ならびに
(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換
を含み、該位置はEUナンバリングによるヒトIgG1に対応する、
前記ポリペプチド。
[本発明1002]
G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む、本発明1001のポリペプチド。
[本発明1003]
(i)K326、E333、およびP396からなる群より選択される2個または3個の位置における置換、または
(ii)3個の位置S267、H268、およびS324における置換
を含む、前記本発明のいずれかのポリペプチド。
[本発明1004]
位置G236における置換がG236F、G236R、G236Yではない、本発明1001~1002のいずれかのポリペプチド。
[本発明1005]
位置S267における置換がS267H、S267I、S267K、S267Gではない、本発明1001~1002のいずれかのポリペプチド。
[本発明1006]
位置H268における置換がH268K、H268D、H268Eではない、本発明1001~1002のいずれかのポリペプチド。
[本発明1007]
E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440Y、およびS440Wからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含む、本発明1001のポリペプチド。
[本発明1008]
E430G、E430S、E430F、E430Tからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含む、本発明1001および1007のいずれかのポリペプチド。
[本発明1009]
E345K、E345Q、E345R、E345Yからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含む、本発明1001および1007のいずれかのポリペプチド。
[本発明1010]
E430G置換を少なくとも含む、本発明1001、1007~1008のいずれかのポリペプチド。
[本発明1011]
E345K置換を少なくとも含む、本発明1001、1007、1009のいずれかのポリペプチド。
[本発明1012]
S440Y置換を少なくとも含む、本発明1001、1007のいずれかのポリペプチド。
[本発明1013]
少なくとも1個の置換が、E430G、E430S、E430F、E430Tからなる群より選択され、ポリペプチドが、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む、本発明1001~1007、1008、1010のいずれかのポリペプチド。
[本発明1014]
少なくとも1個の置換が、E345K、E345Q、E345R、E345Yからなる群より選択され、ポリペプチドが、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む、本発明1001~1007、1009、1011のいずれかのポリペプチド。
[本発明1015]
少なくとも1個の置換が、S440YまたはS440Wからなる群より選択され、ポリペプチドが、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む、本発明1001~1007、1012のいずれかのポリペプチド。
[本発明1016]
K326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む、本発明1001~1003、1013~1015のいずれかのポリペプチド。
[本発明1017]
K326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置、例えば、2個または3個の位置における置換を含む、本発明1001~1003、1013~1016のいずれかのポリペプチド。
[本発明1018]
位置K326およびE333における置換を含む、本発明1001~1003、1013~1017のいずれかのポリペプチド。
[本発明1019]
位置K326、E333、およびP396における置換を含む、本発明1001~1003、1013~1018のいずれかのポリペプチド。
[本発明1020]
K326W、K326A、E333S、E333T、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む、本発明1001~1003、1013~1019のいずれかのポリペプチド。
[本発明1021]
置換K326WおよびE333Sを含む、本発明1001~1003、1013~1020のいずれかのポリペプチド。
[本発明1022]
置換K326WおよびE333Tを含む、本発明1001~1003、1013~1020のいずれかのポリペプチド。
[本発明1023]
置換K326AおよびE333Aを含む、本発明1001~1003、1013~1020のいずれかのポリペプチド。
[本発明1024]
置換K326A、E333A、およびP396Lを含む、本発明1001~1003、1013~1020のいずれかのポリペプチド。
[本発明1025]
置換K326W、E333S、およびP396Lを含む、本発明1001~1003、1013~1020のいずれかのポリペプチド。
[本発明1026]
置換K326W、E333T、およびP396Lを含む、本発明1001~1003、1013~1020のいずれかのポリペプチド。
[本発明1027]
S267、H268、およびS324からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む、本発明1001~1003、1005~1006、1013~1015のいずれかのポリペプチド。
[本発明1028]
S267E、H268F、およびS324Tからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む、本発明1001~1003、1005~1006、1013~1015、1027のいずれかのポリペプチド。
[本発明1029]
S267E、H268F、およびS324Tの置換を含む、本発明1001~1003、1005~1006、1013~1001、1027~1028のいずれかのポリペプチド。
[本発明1030]
ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含み、該Fc領域は、
(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、および
(b)(i)K326W、
(ii)K326A、
(iii)E333S、
(iv)E333T、
(v)E333A、
(vi)P396L、
(vii)K326W、E333S
(viii)K326W、E333T
(ix)K326W、E333S、P396L、
(x)K326A、E333A、
(xi)K326A、K333A、P396L、
(xii)K326A、K333T、P396L
(xiii)S267E、H268F、
(xiv)S267E、S324T、
(xv)H268F、S324T、
(xvi)S267E、H268F、S324T、
(xvii)G236A、S267E、H268F、S324T、
(xviii)S324、I332
からなる群のうちの一つより選択される置換
を含む、
前記本発明のいずれかのポリペプチド。
[本発明1031]
G236A、S239D、およびI332Eからなる群より選択される1個または複数個の置換をさらに含む、本発明1030のポリペプチド。
[本発明1032]
(a)G236A、I332E、
(b)S239D、I332E
からなる群より選択される少なくとも2個の置換をさらに含む、本発明1030~1031のいずれかのポリペプチド。
[本発明1033]
Fc領域における1個または複数個のさらなる置換を含む、前記本発明のいずれかのポリペプチド。
[本発明1034]
S440における変異がS440YまたはS440Wでないことを条件として、位置K439またはS440に対応するFc領域におけるさらなる置換を含む、本発明1033のポリペプチド。
[本発明1035]
さらなる置換がK439EまたはS440Kより選択される、本発明1033~1034のいずれかのポリペプチド。
[本発明1036]
位置F405またはK409に対応するFc領域におけるさらなる置換を含む、本発明1033~1034のいずれかのポリペプチド。
[本発明1037]
さらなる置換がF405LまたはK409Rより選択される、本発明1033、103531~1034のいずれかのポリペプチド。
[本発明1038]
抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である、前記本発明のいずれかのポリペプチド。
[本発明1039]
第1の重鎖および第1の抗原結合領域と第2の重鎖および第2の抗原結合領域とを含むFc領域を含む二重特異性抗体であり、
(a)第1の重鎖は、K409、F405、T366、L368、K370、D399、Y407からなる群より選択される位置におけるさらなる置換を含み、
(b)第2のFc重鎖は、K409、F405、T366、L368、K370、D399、Y407からなる群より選択される位置におけるさらなる置換を含み、
(c)第1の重鎖および第2の重鎖におけるさらなる置換は、同一の位置にない、
本発明1038のポリペプチド。
[本発明1040]
第1の重鎖が、K409およびF405の群より選択される位置における置換を含み、第2の重鎖が、K409およびF405の群より選択される位置における置換を含み、第1の重鎖および第2の重鎖における置換が、同一の位置でない、本発明1039のポリペプチド。
[本発明1041]
第1の重鎖がK409RまたはF405Lの置換を含み、第2の重鎖がK409RまたはF405Lの置換を含み、第1のFc領域および第2のFc領域における置換が同一でない、本発明1038~1040のいずれかのポリペプチド。
[本発明1042]
Fc領域が、ヒトのIgG1アイソタイプ、IgG2アイソタイプ、IgG3アイソタイプ、IgG4アイソタイプ、IgEアイソタイプ、IgDアイソタイプ、IgMアイソタイプ、IgAアイソタイプ、または混合アイソタイプである、前記本発明のいずれかのポリペプチド。
[本発明1043]
Fc領域が、ヒトのIgG1アイソタイプ、IgG2アイソタイプ、IgG3アイソタイプ、IgG4アイソタイプ、または混合アイソタイプである、前記本発明のいずれかのポリペプチド。
[本発明1044]
Fc領域がヒトIgG1アイソタイプである、前記本発明のいずれかのポリペプチド。
[本発明1045]
ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、前記本発明のいずれかのポリペプチド。
[本発明1046]
抗原結合領域が腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFR-SF)またはGタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーに結合する、前記本発明のいずれかのポリペプチド。
[本発明1047]
抗原結合領域が、FAS、DR4、DR5、TNFR1、DR6、DR3、EDAR、NGFR、OX40、CD40、CD30、CD27、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、RELT、およびGITRからなる群より選択されるTNFR-SFのメンバーに結合する、前記本発明のいずれかのポリペプチド。
[本発明1048]
(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を導入する工程、ならびに
(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を導入する工程
を含み、該位置はEUナンバリングによるヒトIgG1に対応する、
ヒトIgGのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドのアゴニスト活性を増加させる方法。
[本発明1049]
(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を導入する工程、ならびに
(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を導入する工程
を含み、該位置はEUナンバリングによるヒトIgG1に対応する、
ヒトIgGのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドのCDC活性を増加させる方法。
[本発明1050]
位置G236における置換が、G236F、G236R、G236Yではない、本発明1048または1049のいずれかの方法。
[本発明1051]
位置S267における置換が、S267H、S267I、S267K、S267Gではない、本発明1048または1049のいずれかの方法。
[本発明1052]
位置H268における置換が、H268K、H268D、H268Eではない、本発明1048または1049のいずれかの方法。
[本発明1053]
E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440W、およびS440Yからなる群より選択される1個の置換を導入する工程を含む、本発明1048~1052のいずれかの方法。
[本発明1054]
E430G、E430S、E430F、E430Tからなる群より選択される1個の置換を導入する工程を含む、本発明1048~1053のいずれかの方法。
[本発明1055]
E345K、E345Q、E345R、E345Yからなる群より選択される1個の置換を導入する工程を含む、本発明1048~1053のいずれかの方法。
[本発明1056]
1つのE430G置換を含む、本発明1048~1054のいずれかの方法。
[本発明1057]
1つのE345K置換を導入する工程を含む、本発明1048~1053および1055のいずれかの方法。
[本発明1058]
1つのS440Y置換を含む、本発明1048~1052のいずれかの方法。
[本発明1059]
E430G、E430S、E430F、E430Tからなる群より選択される置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を導入する工程を含む、本発明1048~1054および1056のいずれかの方法。
[本発明1060]
E345K、E345Q、E345R、E345Yからなる群より選択される置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を導入する工程を含む、本発明1048~1053、1055、および1057のいずれかの方法。
[本発明1061]
S440Y、S440Wからなる群より選択される置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を導入する工程を含む、本発明1048~1052および1058のいずれかの方法。
[本発明1062]
K326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を導入する工程を含む、本発明1048~1061のいずれかの方法。
[本発明1063]
K326、E333、およびP396からなる群より選択される2個または3個の位置における置換を導入する工程を含む、本発明1048~1062のいずれかの方法。
[本発明1064]
位置K326およびE333における置換を導入する工程を含む、本発明1048~1063のいずれかの方法。
[本発明1065]
位置K326、E333、およびP396における置換を導入する工程を含む、本発明1048~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
K326A、K326W、E333S、E333T、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を導入する工程を含む、本発明1048~1065のいずれかの方法。
[本発明1067]
置換K326WおよびE333Sを導入する工程を含む、本発明1048~1066のいずれかの方法。
[本発明1068]
置換K326WおよびE333Tを導入する工程を含む、本発明1048~1066のいずれかの方法。
[本発明1069]
置換K326AおよびE333Aを導入する工程を含む、本発明1048~1066のいずれかの方法。
[本発明1070]
置換K326A、E333A、およびP396Lを導入する工程を含む、本発明1048~1066のいずれかの方法。
[本発明1071]
置換K326W、E333S、およびP396L、またはK326W、E333T、およびP39Lを導入する工程を含む、本発明1048~1066のいずれかの方法。
[本発明1072]
S267、H268、およびS324からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む、本発明1048~1061のいずれかの方法。
[本発明1073]
S267E、H268F、およびS324Tからなる群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む、本発明1048~1061および1072のいずれかの方法。
[本発明1074]
置換S267E、H268F、およびS324Tを導入する工程を含む、本発明1048~1061および1072~1073のいずれかの方法。
[本発明1075]
Fc領域における1個または複数個のさらなる置換を導入する工程を含む、本発明1048~1074のいずれかの方法。
[本発明1076]
K439EまたはS440KであるFc領域におけるさらなる置換を導入する工程を含む、本発明1048~1075のいずれかの方法。
[本発明1077]
位置F405またはK409に対応するFc領域におけるさらなる置換を導入する工程を含む、本発明1048~1076のいずれかの方法。
[本発明1078]
F405LまたはK409RであるFc領域におけるさらなる置換を導入する工程を含む、本発明1048~1077のいずれかの方法。
[本発明1079]
本発明1001~1078のいずれかの少なくとも1種のポリペプチドを含む組成物。
[本発明1080]
本発明1001~1045のいずれかの1種または複数種の抗体を含む、本発明1075の組成物。
[本発明1081]
本発明1001~1047のいずれかの第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む、本発明1079~1080のいずれかの組成物。
[本発明1082]
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが異なるエピトープに結合する、本発明1079~1081のいずれかの組成物。
[本発明1083]
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが異なる抗原に結合する、本発明1079~1082のいずれかの組成物。
[本発明1084]
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが、約1:50~50:1のモル比、例えば、約1:1のモル比、約1:2のモル比、約1:3のモル比、約1:4のモル比、約1:5のモル比、約1:6のモル比、約1:7のモル比、約1:8のモル比、約1:9のモル比、約1:10のモル比、約1:15のモル比、約1:20のモル比、約1:25のモル比、約1:30のモル比、約1:35のモル比、約1:40のモル比、約1:45のモル比、約1:50のモル比、約50:1のモル比、約45:1のモル比、約40:1のモル比、約35:1のモル比、約30:1のモル比、約25:1のモル比、約20:1のモル比、約15:1のモル比、約10:1のモル比、約9:1のモル比、約8:1のモル比、約7:1のモル比、約6:1のモル比、約5:1のモル比、約4:1のモル比、約3:1のモル比、約2:1のモル比で前記組成物中に存在する、本発明1079~1083のいずれかの組成物。
[本発明1085]
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドおよび/または付加的なポリペプチドが、等モル比で前記組成物中に存在する、本発明1079~1084のいずれかの組成物。
[本発明1086]
薬学的組成物である、本発明1079~1085のいずれかの組成物。
[本発明1087]
医薬として使用するための、本発明1001~1047のいずれかのポリペプチドまたは本発明1079~1086のいずれかの組成物。
[本発明1088]
がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染性疾患の処置において使用するための、本発明1001~1047のいずれかのポリペプチドまたは本発明1079~1086のいずれかの組成物。
[本発明1089]
前記本発明のいずれかのポリペプチドまたは組成物の有効量を個体へ投与する工程を含む、疾患を有する個体を処置する方法。
[本発明1090]
疾患が、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、および感染性疾患からなる群より選択される、本発明1048~1078のいずれかの方法。
[本発明1091]
付加的な治療剤をさらに投与する工程を含む、本発明1048~1078のいずれかの方法。
[本発明1092]
前記本発明のいずれかのポリペプチドまたは組成物を含むパーツキット(kit of parts)であって、該ポリペプチドまたは組成物がバイアルなどの1個または複数個の容器中に存在する、前記パーツキット。
[本発明1093]
前記本発明のいずれかのポリペプチドまたは組成物が、治療において同時に、別々に、または連続的に使用するためのものである、本発明1092のパーツキット。
[本発明1094]
疾患の処置のための医薬の製造のための、本発明1001~1047または1079~1086のいずれかのポリペプチドまたは組成物の使用。
[本発明1095]
疾患が、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、および感染性疾患である、本発明1094の使用。
本発明のこれらおよびその他の局面、具体的には、ポリペプチドまたは抗体の様々な使用および治療的適用は、以下にさらに詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定された、接着性ヒトBxPC-3膵臓がん細胞に対する抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56T(A)、IgG1-hDR-05(B)、および抗体の組み合わせ(C)の効力に対する、E430G、K326A/E333A/P396L、およびK326A/E333A/P396L/E430Gの効果を示す。2回の実験の代表例が示される。
【
図2】
図2は、3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定された、接着性のヒトBxPC-3膵臓がん細胞(A)およびCOLO 205結腸がん細胞(B)における、K326A/E333A/P396L/E430Gを含む1価抗DR5抗体の効力を示す。1価抗DR5抗体として、IgG1-hDR5-01-G56Tに由来する1本のDR5特異的アームと、IgG1-b12に由来するHIVタンパク質gp120に対する1本の非特異的アームとを有する二重特異性抗体を、調節されたFabアーム交換によって生成した。3回の実験の代表例が示される。
【
図3】
図3は、3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定された接着性のヒトBxPC-3膵臓がん細胞(A)およびCOLO 205結腸がん細胞(B)における抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56Tの効力、ならびにELISAアッセイにおいて決定されたC1q結合(C)に対する、K326A/E333A/P396L、またはこれらの置換のうちの2個、E333A/P396L、K326A/E333A、もしくはK326A/P396Lと組み合わせられたE430Gの効果を示す。3回の実験の代表例が示される。
【
図4】
図4は、ELISAアッセイにおいて決定された抗DR5抗体IgG1-CONA-C49WとのC1q結合(A)、ならびに3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定された接着性のヒトBxPC-3膵臓がん細胞(B)およびCOLO 205結腸がん細胞(C)における抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56Tの効力に対する、K326A/E333AまたはK326W/E333Sと組み合わせられたE430Gの効果を示す。3回の実験の代表例が示される。
【
図5】
図5は、ELISAアッセイにおいて決定された抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56TとのC1q結合(A)、ならびに3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定された接着性のヒトBxPC-3膵臓がん細胞(B)およびCOLO 205結腸がん細胞(C)における抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56Tの効力に対する、C1q結合置換S267E/H268F/S324TまたはIgG1/IgG3キメラアイソタイプIgG1バリアント113Fと組み合わせられたE430Gの効果を示す。3回の実験の代表例が示される。
【
図6】
図6は、示された変異を含有している10μg/mL IgG1-hDR5-01-G56Tバリアントによる接着性ヒトBxPC-3膵臓がん細胞の3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)の概要を示す。効果は、100%に設定されたWT IgG1-hDR5-01-G56Tに対する生細胞の百分率によって表され順位付けされている。WTと比較された細胞生存度に対する有意な効果は、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001(一元配置のANOVAおよびダネットの多重比較検定)として示される。
【
図7】
図7は、24時間生存度アッセイにおいて決定された、2.5μg/mL精製ヒトC1qの存在下または非存在下での無血清培地中のWIL2-S SF懸濁細胞に対する抗DR5抗体IgG1-CONA-C49W-K326A/E333A/P396L/E430G(A)およびIgG1-hDR5-01-G56T-K326W/E333S/E430G(B)のアゴニスト効果を示す。生細胞の百分率が、TO-PRO-3陰性細胞の百分率によって表される。
【
図8】
図8は、24時間生存度アッセイにおいて決定された、精製ヒトC1qの濃度系列の存在下または非存在下での無血清培地中のWIL2-S SF懸濁細胞における、2.5μg/mLのC1q結合置換と組み合わせられたE430G Fc-Fc増強置換を有するIgG1-hDR5-01-G56Tの抗DR5抗体バリアント(A)および抗体の組み合わせIgG1-hDR5-01-G56T-E430G+IgG1-hDR5-05-E430G(B)のアゴニスト効果を示す。生細胞の百分率は、TO-PRO-3陰性細胞の百分率によって表される。4回の異なる実験のデータが、標準偏差を示すエラーバーと共に表される。
【
図9】
図9は、24時間生存度アッセイにおいて決定された、精製ヒトC1qおよび抗C1q中和抗体を含むかまたは含まない無血清培地中のWIL2-S SF懸濁細胞における、2.5μg/mLのアゴニスト抗DR5 IgG1-hDR5-01-G56T-K326W/E333S/E430G(A)および抗体の組み合わせIgG1-hDR5-01-G56T-E430G+IgG1-hDR5-05-E430G(B)の効力を示す。生細胞の百分率は、TO-PRO-3陰性細胞の百分率によって表される。
【
図10】
図10は、C1q結合置換K326W/E333S、K326A/E333A、またはK326A/E333A/P396Lと組み合わせられた430G Fc-Fc増強置換を含有しているIgG1-hDR5-01-G56T抗体バリアントについての、抗体試料がNHS中でインキュベートされた時のC4d沈着の定量化によって測定された液相補体活性化を示す。HAGG(熱凝集ガンマグロブリン)およびIgG1-CONA-RGYが、液相補体活性化についての陽性対照として試験された。
【
図11A】ELISAアッセイにおいて決定されたC1q結合に対する、IgG-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430GにおけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を示す。標準偏差は、2回の独立した実験から計算された。
【
図11B】ELISAアッセイにおいて決定されたC1q結合に対する、IgG-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430GにおけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を示す。標準偏差は、2回の独立した実験から計算された。
【
図11C】フローサイトメトリーによって決定されたDR5陽性WIL2-S SF細胞に結合した抗体とのC1q結合に対する、IgG-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430GにおけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を示す。標準偏差は、2回の独立した実験から計算された。
【
図11D】フローサイトメトリーによって決定されたDR5陽性WIL2-S SF細胞に結合した抗体とのC1q結合に対する、IgG-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430GにおけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を示す。標準偏差は、2回の独立した実験から計算された。
【
図11E】3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定されたWIL2-S SF懸濁細胞の細胞生存度の低下に対する、IgG-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430GにおけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を示す。標準偏差は、2回の独立した実験から計算された。
【
図11F】3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定されたWIL2-S SF懸濁細胞の細胞生存度の低下に対する、IgG-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430GにおけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を示す。標準偏差は、2回の独立した実験から計算された。
【
図11G】3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定されたWIL2-S SF懸濁細胞の細胞生存度の低下に対する、IgG-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430GにおけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を示す。標準偏差は、2回の独立した実験から計算された。
【
図12A】
図12は、24時間生存度アッセイにおいて決定された、精製ヒトC1qの濃度系列の存在下での無血清培地中のWIL2-S SF懸濁細胞の生存度に対する、IgG-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430G(2.5μg/mL)におけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を示す。生細胞の百分率は、CellTiter-Gloアッセイにおいて決定された。
【
図12B】
図12は、24時間生存度アッセイにおいて決定された、精製ヒトC1qの濃度系列の存在下での無血清培地中のWIL2-S SF懸濁細胞の生存度に対する、IgG-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430G(2.5μg/mL)におけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を示す。生細胞の百分率は、CellTiter-Gloアッセイにおいて決定された。
【
図12C】
図12は、24時間生存度アッセイにおいて決定された、精製ヒトC1qの濃度系列の存在下での無血清培地中のWIL2-S SF懸濁細胞の生存度に対する、IgG-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430G(2.5μg/mL)におけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を示す。生細胞の百分率は、CellTiter-Gloアッセイにおいて決定された。
【
図13】
図13は、精製ヒトC1qが補足された無血清培地中のWIL2-S SF懸濁細胞の24時間生存度アッセイにおけるC1q結合増強変異および/またはFc-Fc相互作用増強変異を有する抗DR5 IgG1-CONA-C49W抗体バリアントの効力に対する、抗C1q抗体の添加の効果を示す。生細胞の百分率は、CellTiter-Gloアッセイにおいて決定された。
【
図14】
図14は、24時間生存度アッセイにおける、精製ヒトC1qが補足された無血清培地においてインキュベートされたWIL2-S SF懸濁細胞に対してオプソニン化された抗DR5 IgG1-CONA-C49W抗体バリアントの間のFc-Fc相互作用を阻害するペプチドの添加の効果を示す。生細胞の百分率は、CellTiter-Gloアッセイにおいて決定された。スクランブルペプチドWCDLEGVTWHACLが、非特異的対照ペプチドとして使用された。
【
図15】
図15は、3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定された、接着性ヒトBxPC-3膵臓がん細胞における抗DR5抗体IgG1-CONA-C49Wのアゴニスト活性に対する、C1q結合置換K326W/E333SとFc-Fc増強変異E345K、E345R、またはS440Yとの組み合わせの効果を示す。
【
図16】
図16は、3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定された、接着性ヒトBxPC-3膵臓がん細胞の生存度に対する、抗DR5抗体IgG1-CONA-C49Wに導入されたC1q結合増強変異S267E/H268F/S324TまたはIgG1/IgG3キメラアイソタイプIgG1バリアント113Fと組み合わせられた変異E430Gの効果を示す。
【
図17】
図17は、1日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定された、WIL2-S SF懸濁細胞の生存度に対する、K326W/E333S/E430G変異を含む機能的に1価の抗DR5抗体の効果を示す。機能的に1価の抗DR5抗体は、IgG1-CONA-C49W-F405L-K326W/E333S/E430G(DR5特異的アーム)およびIgG1-b12-K409R-K326W/E333S/E430G(HIVタンパク質gp120に対する非特異的アーム)の調節されたFabアーム交換によって、二重特異性抗体として生成された。RLU:相対発光単位。
【
図18A】WIL2-S SF細胞の1日生存度アッセイにおいて決定された、抗DR5抗体のIgG1アイソタイプおよびIgG3アイソタイプのバリアント(IgG1-CONA-C49WおよびIgG3-CONA-C49W-R345H)のアゴニスト活性に対するK326W/E333S/E430G置換の導入の効果を示す。生存度は、CellTiter-Gloキットを使用して決定された。
【
図18B】BxPC-3細胞の3日生存度アッセイにおいて決定された、抗DR5抗体のIgG1アイソタイプおよびIgG3アイソタイプのバリアント(IgG1-CONA-C49WおよびIgG3-CONA-C49W-R345H)のアゴニスト活性に対するK326W/E333S/E430G置換の導入の効果を示す。生存度は、CellTiter-Gloキットを使用して決定された。
【
図18C】HPAF-II細胞の3日生存度アッセイにおいて決定された、抗DR5抗体のIgG1アイソタイプおよびIgG3アイソタイプのバリアント(IgG1-CONA-C49WおよびIgG3-CONA-C49W-R345H)のアゴニスト活性に対するK326W/E333S/E430G置換の導入の効果を示す。生存度は、CellTiter-Gloキットを使用して決定された。
【
図18D】HT-29細胞(D)の3日生存度アッセイにおいて決定された、抗DR5抗体のIgG1アイソタイプおよびIgG3アイソタイプのバリアント(IgG1-CONA-C49WおよびIgG3-CONA-C49W-R345H)のアゴニスト活性に対するK326W/E333S/E430G置換の導入の効果を示す。生存度は、CellTiter-Gloキットを使用して決定された。
【
図19】
図19は、24時間生存度アッセイ(CellTiterGlo)において決定された、WIL2-S懸濁細胞に対する、抗DR5抗体IgG1-CONA-C49WにおけるE430G六量体化増強変異およびC1q結合増強変異K326W/E333TまたはK326W/E333Sの両方の導入の効果を示す。
【
図20】
図20は、SCIDマウスにおける450μgのi.v.投与された抗体のクリアランス速度を示す。(A)血清試料中の全ヒトIgGが、ELISAによって決定され、濃度対時間曲線にプロットされた。各データ点は、3回反復試料の平均値+/-標準偏差を表す。(B)抗体の投与後21日目までクリアランスが、以下の式、D
*1.000/AUC(Dは注射された用量であり、AUCは濃度時間曲線の曲線下面積である)に従って決定された。2回の独立のELISA実験の代表例が示される。
【
図21】
図21は、pH 6.0および7.4において、コーティングされたFcRnECDHis-B2M-BIOによるELISAによって決定された、IgG1-7D8抗体バリアントのヒトFcRnとの結合に対する、C1q結合増強変異(K326A/E333AまたはK326W/E333S)と組み合わせられたE430G Fc-Fc増強変異の効果を示す。IgG1-7D8-I235A/H310A/H435Aが、pH 6.0におけるFcRn結合についての陰性対照として使用され(FcRnノックアウト);IgG1-7D8-M252Y/S254T/T256Eが、pH 7.4における増強されたFcRn結合についての対照として使用された。
【
図22】
図22は、精製ヒトC1qが添加された無血清培地および添加されていない無血清培地における、標的細胞としてのWIL2-S SFおよびエフェクター細胞としてのヒトPBMC(3人のドナー)(E:T比100:1)を使用したクロム放出ADCCアッセイを示す。C1qの非存在下および存在下で、IgG1-7D8-F405L-K326W/E333S/E430GのADCC活性を、IgG1-7D8-E430GおよびWT IgG1-7D8の活性と比較するため、クロム標識WIL2-S SF細胞が、抗体濃度系列と共にインキュベートされた。非特異的抗体IgG1-b12が、陰性対照として使用された。
【
図23】
図23は、24時間生存度アッセイ(CellTiterGlo)において決定された、WIL2-S SF懸濁細胞における抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56TおよびIgG1-hDR5-05のアゴニスト活性に対する、K326W/E333S/E430Gの効果を示す。
【
図24】
図24は、24時間生存度アッセイ(CellTiterGlo)において決定された、WIL2-S SF懸濁細胞における二重のエピトープを標的とする抗DR5抗体の組み合わせIgG1-hDR5-01-G56T-K326W/E333S/E430G+IgG1-hDR5-05-K326W/E333S/E430Gのアゴニスト活性に対する、相補的なFc変異対K439E;S440Kの効果を示す。
【
図25】
図25は、六量体化増強変異E430GまたはK248E/T437R、およびC1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせられた六量体化増強変異K248E/T437Rを有するIgG1-キャンパス抗体バリアントを試験したWien133細胞におけるCDCアッセイの結果を示す。Wien133細胞は、20%正常ヒト血清(NHS)プールの存在下で、抗体バリアントの濃度系列と共にインキュベートされた。
【
図26】
図26は、3日生存度アッセイ(CellTiter-Glo)において決定された、接着性ヒトBxPC-3膵臓がん細胞における抗DR4抗体IgG1-DR4-chCTB007の効力に対する、六量体化増強変異E430GとC1q結合増強変異K326W/E333Sとの組み合わせの効果を示す。
【
図27】
図27は、20%正常ヒト血清の存在下での、抗FAS抗体IgG1-FAS-E09(A)、IgG1-CD95-APO1(B)、およびIgG1-CD95-HFE7A(C)のバリアントと共にWIL2S SFヒトBリンパ球を使用したCDCアッセイを示す。WIL2-S SF細胞は、20%正常ヒト血清(NHS)プールの存在下で抗体バリアントの濃度系列と共に45分間インキュベートされた。IgG1-b12が、非結合性対照抗体として使用された。
【
図28】
図28は、C1qを含まない無血清培地における、抗FAS抗体IgG1-FAS-E09(A)、IgG1-CD95-APO1(B)、およびIgG1-CD95-HFE7A(C)のバリアントと共にインキュベートされたWIL2-S SF細胞を使用した45分生存度アッセイ(CellTiter-Glo)を示す。
【
図29】
図29は、架橋剤としてのC1qを含む無血清培地における、抗FAS抗体IgG1-FAS-E09(A)、IgG1-CD95-APO1(B)、およびIgG1-CD95-HFE7A(C)のバリアントと共にWIL2-S SF細胞を使用した24時間生存度アッセイ(CellTiter-Glo)を示す。
【
図30】
図30は、C1qを含まない無血清培地における、抗FAS抗体IgG1-FAS-E09(A)、IgG1-CD95-APO1(B)、およびIgG1-CD95-HFE7A(C)のバリアントと共にインキュベートされたWIL2-S SF細胞を使用した24時間生存度アッセイ(CellTiter-Glo)を示す。
【
図31】
図31は、OX40 JurkatレポーターアッセイにおけるIgG1-CD134-SF2(WT)抗体、IgG1-CD134-SF2-E345R抗体、IgG1-CD134-SF2-E430G抗体、およびIgG1-CD134-SF2-K326W/E333S/E430G抗体の活性を示す。Thaw-and-Use GloResponse NFκB-luc2/OX40 Jurkat細胞が、8%ウシ胎仔血清の存在下で、ある濃度範囲の抗体と共に5時間インキュベートされた。OX40アッセイ応答は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘導する抗OX40抗体によるOX40の刺激後に検出された発光によって記録された。RLU:相対発光単位。
【
図32】
図32は、IgG1-CD40-SGN40およびIgG1-CD40-CP870893のCD40応答に対する、C1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせられたFc-Fc増強変異E430Gの効果を示す。Thaw-and-Use GloResponse NFκB-luc2/CD40 Jurkat細胞が、8%ウシ胎仔血清の存在下で、ある濃度範囲の抗体と共に5時間インキュベートされた。CD40アッセイ応答は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘導する抗CD40抗体またはCD40リガンドによるCD40の刺激後に検出された発光によって記録された。RLU:相対発光単位。
【
図33】
図33は、IgG1-CD137-MOR7480およびIgG1-BMS-663513の4-1BB応答に対する、C1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせられたFc-Fc増強変異E430Gの効果を示す。Thaw-and-Use GloResponse(商標)NFκB-luc2/4-1BB Jurkat細胞が、1%ウシ胎仔血清の存在下で、ある濃度範囲の抗体と共に5時間インキュベートされた。4-1BBアッセイ応答は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘導する抗4-1BB抗体または4-1BBリガンドおよび抗His抗体による4-1BBの刺激後に検出された発光によって記録された。IgG-b12-K326W/E333S/E430Gが、陰性対照として使用された。RLU:相対発光単位。
【
図34】
図34は、IgG1-GITR-INCAGN01876のGITR応答に対する、C1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせられたFc-Fc増強変異E430Gの効果を示す。Thaw-and-Use GloResponse NFκB-luc2/GITR Jurkat細胞が、1%ウシ胎仔血清の存在下で、ある濃度範囲の抗体と共に6時間インキュベートされた。GITRアッセイ応答は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘導する抗GITR抗体によるGITRの刺激後に検出された発光によって記録された。RLU:相対発光単位。
【
図35】
図35は、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4の抗体GITR-36E5のGITR応答に対する、C1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせられたFc-Fc増強変異E430Gの効果を示す。Thaw-and-Use GloResponse NFκB-luc2/GITR Jurkat細胞が、1%ウシ胎仔血清の存在下で、最終濃度111ng/mLの抗体と共に6時間インキュベートされた。GITRアッセイ応答は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘導する抗GITR抗体によるGITRの刺激後に検出された発光によって記録された。抗体IgG1-b12が、非結合性対照として使用された。RLU:相対発光単位。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
本発明の態様の説明において、明瞭さのために特定の専門用語を使用する。しかしながら、本発明は、そのように選択した特定の用語に限定されることを意図せず、特定の各用語は、同様の目的を達成するために同様の様式で機能するあらゆる技術的等価物を包含することを理解されたい。
【0040】
定義
用語「親ポリペプチド」または「親抗体」は、本発明によるポリペプチドまたは抗体と同一であるが、本発明によるFc-Fc増強変異およびC1q結合変異を有しない、ポリペプチドまたは抗体であると理解される。
【0041】
用語「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」は、本発明との関連において、免疫グロブリンのFc領域と、例えば細胞、細菌、またはビリオン上に存在する任意の分子、例えばポリペプチドに対する結合能を有する結合領域とを含むポリペプチドをいう。免疫グロブリンのFc領域は、典型的にはパパイン(これは当業者に公知である)での抗体の消化後に生成し得る抗体断片であって、免疫グロブリンの2つのCH2-CH3領域と連結領域、例えばヒンジ領域とを含む抗体断片と定義される。抗体重鎖の定常ドメインによって抗体アイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、またはIgEが規定される。Fc領域は、Fc受容体と称される細胞表面受容体および補体系のタンパク質とともに、抗体のエフェクター機能を媒介する。結合領域は、ポリペプチド配列、例えばタンパク質、タンパク質リガンド、受容体、抗原結合領域、または細胞、細菌、もしくはビリオンに対する結合能を有するリガンド結合領域であり得る。結合領域が例えば受容体である場合、「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」は、免疫グロブリンのFc領域と結合領域との融合タンパク質として調製されたものであってもよい。結合領域が抗原結合領域である場合、「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」は、キメラ、ヒト化、もしくはヒト抗体などの抗体または重鎖のみの抗体またはScFv-Fc融合体であり得る。免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチドは典型的には、連結領域、例えばヒンジ領域と免疫グロブリンの重鎖の2つのCH2-CH3領域とを含むものであり得、したがって、「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」は、「少なくとも免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」であり得る。用語「免疫グロブリンのFc領域」は、本発明との関連において、免疫グロブリン、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA1、IgGA2、IgM、またはIgEの抗体のサブタイプに応じた連結領域、例えばヒンジとCH2およびCH3領域とが存在していることを意味する。ポリペプチドはヒト起源に限定されず、例えばマウスまたはカニクイザル起源などの任意の起源であり得る。用語「野生型Fc領域」は、本発明においては、天然に生じる通りのアミノ酸配列を有する免疫グロブリンFc領域を意味する。
【0042】
用語「ヒンジ領域」は、本明細書で用いる場合、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指すことを意図する。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、EUナンバリングによるアミノ酸216~230に対応する。
【0043】
用語「CH2領域」または「CH2ドメイン」は、本明細書で用いる場合、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指すことを意図する。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、EUナンバリングによるアミノ酸231~340に対応する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載のその他の任意のサブタイプのものであってもよい。
【0044】
用語「CH3領域」または「CH3ドメイン」は、本明細書で用いる場合、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指すことを意図する。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、EUナンバリングによるアミノ酸341~447に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載のその他の任意のサブタイプのものであってもよい。
【0045】
用語「免疫グロブリン」は、1対の低分子量の軽(L)鎖と1対の重(H)鎖の2対のポリペプチド鎖からなり、これらの4つすべてがジスルフィド結合によって強力に相互連結されている、構造的に関連している一類型の糖タンパク質を指す。免疫グロブリンの構造は充分に特徴づけられている。例えば、Fundamental Immunology Ch.7(Paul, W., ed., 2nd ed.Raven Press, N.Y.(1989))を参照のこと。簡単には、各重鎖は典型的には、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記)と重鎖定常領域とで構成されている。重鎖定常領域は典型的には、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3で構成されている。重鎖同士は、いわゆる「ヒンジ領域」でジスルフィド結合によって相互連結されている。各軽鎖は典型的には、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記)と軽鎖定常領域とで構成されている。軽鎖定常領域は典型的には、1つのドメインCLで構成されている。VH領域とVL領域は、超可変性の領域(または超可変領域、これは、配列および/または構造で規定されるループの形態が超可変的であり得る)であって相補性決定領域(CDR)とも称される領域と、散在する、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域とにさらに細分され得る。各VHおよびVLは典型的には、3つのCDRと4つのFRで構成されており、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順に配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196, 901 917(1987)も参照のこと)。特に記載のない限り、あるいは文脈と矛盾しない限り、本明細書におけるCDR配列は、DomainGapAlign (Lefranc MP., Nucleic Acids Research 1999;27:209-212 and Ehrenmann F., Kaas Q. and Lefranc M.-P. Nucleic Acids Res., 38, D301-307 (2010); インターネットhttpアドレスwww.imgt.org/も参照されたい)を用いたIMGT規則に従って同定される。特に記載のない限り、あるいは文脈と矛盾しない限り、本明細書におけるFc領域/Fcドメイン内のアミノ酸位置に対する言及はEUナンバリングに従う(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A.1969 May;63(1):78-85;Kabat et al., Sequences of proteins of immunological interest.5th Edition - 1991 NIH Publication No.91-3242)。
【0046】
用語「抗体」(Ab)は、本発明との関連において、抗原に対して特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはこれらのいずれかの誘導体をいう。本発明の抗体は、免疫グロブリンのFcドメインと抗原結合領域とを含む。抗体は一般的に、2つのCH2-CH3領域と連結領域、例えばヒンジ領域、例えば、少なくともFcドメインとを含む。したがって、本発明の抗体はFc領域と抗原結合領域とを含むものであり得る。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常または「Fc」領域は、宿主の組織または要素、例えば、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系の成分、例えば、補体活性化の古典的経路の第1成分であるC1qに対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。また、抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体または同様の分子であってもよい。用語「二重特異性抗体」は、少なくとも2種類の異なる、典型的には重複しないエピトープに対する特異性を有する抗体をいう。かかるエピトープは、同じ標的上に存在するものであっても異なる標的上に存在するものであってもよい。エピトープが異なる標的上に存在する場合、かかる標的は同じ細胞上に存在するものであってもよく、異なる細胞上または細胞型に存在するものであってもよい。上記のように、特に記載のない限り、あるいは文脈と明らかに矛盾しない限り、本明細書における抗体という用語は、Fc領域の少なくとも一部分を含んでおり、抗原に対して特異的に結合する能力を保持している抗体断片を包含する。かかる断片は、任意の公知の手法、例えば酵素的切断、ペプチド合成、および組換え発現手法によって得ることができる。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によっても発揮され得ることが示されている。用語「Ab」または「抗体」に包含される結合断片の例としては、非限定的に、一価抗体(GenmabによるWO2007059782に記載);2つの重鎖のみからなり、例えばラクダ科の動物に天然に存在する重鎖抗体(例えば、Hamers-Casterman(1993)Nature 363:446);ThioMabs(Roche, WO2011069104)、非対称である鎖交換改変操作ドメイン(SEEDまたはSeed-body)および二重特異性抗体様分子(Merck, WO2007110205);Triomab(Pharma/Fresenius Biotech, Lindhofer et al.1995 J Immunol 155:219;WO2002020039);FcΔAdp(Regeneron, WO2010151792)、Azymetric Scaffold(Zymeworks/Merck, WO2012/058768)、mAb-Fv(Xencor, WO2011/028952)、Xmab(Xencor)、二重可変ドメイン免疫グロブリン(Abbott, DVD-Ig,米国特許第7,612,181号);二重ドメインダブルヘッド抗体(Unilever;Sanofi Aventis, WO20100226923)、ジ-ダイアボディ(ImClone/Eli Lilly)、ノブ・イントゥ・ホール(Knobs-into-holes)による抗体フォーマット(Genentech, WO9850431 );DuoBody(Genmab, WO 2011/131746);二重特異性IgG1およびIgG2(Pfizer/ Rinat, WO11143545)、DuetMab(MedImmune, US2014/0348839)、静電的ステアリング(Electrostatic steering)抗体フォーマット(Amgen, EP1870459およびWO 2009089004;Chugai, US201000155133;Oncomed, WO2010129304A2);二重特異性IgG1およびIgG2(Rinat neurosciences Corporation, WO11143545)、CrossMAb(Roche, WO2011117329)、LUZ-Y(Genentech)、Biclonic(Merus, WO2013157953)、二重ターゲティングドメイン抗体(GSK/Domantis)、2つの標的を認識するTwo-in-one AntibodiesまたはDual action Fab(Genentech, NovImmune、Adimab)、架橋型Mab(Karmanos Cancer Center)、共有結合融合mAb(AIMM)、CovX-body(CovX/Pfizer)、FynomAb(Covagen/Janssen ilag)、DutaMab(Dutalys/Roche)、iMab(MedImmune)、IgG様二重特異性(ImClone/Eli Lilly, Shen, J., et al.J Immunol Methods, 2007.318(1-2):p.65-74)、TIG-body、DIG-bodyおよびPIG-body(Pharmabcine)、二重親和性再ターゲティング分子(Fc-DARTまたはIg-DART, Macrogenics, WO/2008/157379, WO/2010/080538)、BEAT(Glenmark)、Zybody(Zyngenia)、一般的な軽鎖を用いたアプローチ(Crucell/ Merus, US7262028)または一般的な重鎖を用いたアプローチ(NovImmuneによるκλBody, WO2012023053)、ならびにFc領域を含む抗体断片と融合させたポリペプチド配列を含む融合タンパク質、例えばscFv融合体、例えばZymoGenetics/BMSによるBsAb、Biogen IdecによるHERCULES(US007951918)、Emergent BioSolutions/TrubionおよびZymogenetics/BMSによるSCORPIONS、Ts2Ab(MedImmune/AZ(Dimasi, N., et al.J Mol Biol, 2009.393(3):p.672-92)、Genetech/RocheによるscFv融合体、NovartisによるscFv融合体、ImmunomedicsによるscFv融合体、Changzhou Adam Biotech IncによるscFv融合体(CN 102250246)、RocheによるTvAb(WO 2012025525, WO 2012025530)、f-StarによるmAb2(WO2008/003116)、ならびに二重scFv融合体が挙げられる。また、抗体という用語は、特に記載のない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体)、例えば、Symphogen and Merusが利用した技術によって得られる抗体混合物(組換えポリクローナル抗体)(Oligoclonics)、WO2015/158867に記載のような多量体型Fcタンパク質、WO2014/031646に記載のような融合タンパク質、ならびに抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体も包含することも理解されたい。作製される抗体は潜在的に任意のアイソタイプを有し得る。
【0047】
用語「完全長抗体」は、本明細書で用いる場合、そのアイソタイプの野生型抗体に通常みられるものに対応する重鎖と軽鎖の定常ドメインおよび可変ドメインのすべてを含む抗体(例えば親抗体)をいう。
【0048】
用語「ヒト抗体」は、本明細書で用いる場合、ヒト生殖細胞系列型免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域とを有する抗体を包含することを意図する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列型免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボで体細胞変異導入された変異、挿入、または欠失)を含んでもよい。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書で用いる場合、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖細胞系列型に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を包含することは意図しない。
【0049】
用語「キメラ抗体」は、本明細書で用いる場合、両方の鎖型(即ち重鎖および軽鎖)が抗体の改変操作の結果としてキメラである抗体をいう。キメラ鎖は、ヒト起源の定常領域に連結された外来可変ドメイン(起源が非ヒト種であるか、または合成もしくはヒトを含む任意の種から改変操作されたもの)を含む鎖である。
【0050】
用語「ヒト化抗体」は、本明細書で用いる場合、両方の鎖型が抗体の改変操作の結果としてヒト化されている抗体をいう。ヒト化鎖は典型的には、可変ドメインの相補性決定領域(CDR)は外来である(起源がヒト以外の種または合成である)が、鎖の残部はヒト起源のものである鎖である。ヒト化の評価は、方法論自体ではなく、得られるアミノ酸配列に基づくので、グラフト以外のプロトコルを使用することが可能である。
【0051】
用語「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などは、本明細書で用いる場合、単分子組成のAb分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、ある特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖細胞系列型免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域とを有する単一結合特異性を示すAbをいう。ヒトmAbはハイブリドーマによって生成させ得、ハイブリドーマは、ヒト重鎖導入遺伝子レパートリーと軽鎖導入遺伝子レパートリーとを含み、機能性ヒト抗体を産生するように再編成されたゲノムを有するトランスジェニックまたは染色体導入非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られ、不死化細胞と融合させたB細胞を含む。
【0052】
用語「アイソタイプ」は、本明細書で用いる場合、重鎖定常領域遺伝子にコードされている免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA1、IgGA2、IgE、もしくはIgM、またはその任意のアロタイプ、例えばIgG1m(za)およびIgG1m(f))をいう。さらに、各重鎖アイソタイプは、カッパ(κ)またはラムダ(λ)のいずれかの軽鎖と結合され得る。本明細書で用いる用語「混合アイソタイプ」は、あるアイソタイプの構造形体を別のアイソタイプに由来する類似領域と結合し、それによりハイブリッドアイソタイプを生じさせることにより得られる免疫グロブリンのFc領域をいう。混合アイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA1、IgGA2、IgE、またはIgMから選択される2種類以上のアイソタイプで構成された配列を有するFc領域を含むものであってもよく、それにより、例えば、IgG1/IgG3、IgG1/IgG4、IgG2/IgG3、IgG2/IgG4、またはIgG1/IgAなどの組合せが生成され得る。
【0053】
用語「抗原結合領域」、「抗原に結合する領域」、「結合領域」、または抗原結合ドメインは、本明細書で用いる場合、抗原に対する結合能を有する抗体領域をいう。この結合領域は典型的には抗体のVHおよびVLドメインによって規定される。VHおよびVLドメインは、超可変性の領域(または超可変領域、これは、配列および/または構造で規定されるループの形態が超可変的であり得る)であって相補性決定領域(CDR)とも称される領域と、散在する、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域とにさらに細分され得る。抗原は、例えば細胞、細菌、またはビリオン上に存在する任意の分子、例えばポリペプチドであり得る。
【0054】
用語「標的」は、本明細書で用いる場合、抗体の抗原結合領域が結合する分子をいう。標的としては、生成された抗体が向かう任意の抗原が挙げられる。用語「抗原」および「標的」は、抗体に関連して互換的に用いられ、本発明の任意の局面または態様に関して同じ意味および目的を構成し得る。
【0055】
用語「エピトープ」は、抗体可変ドメインに対する特異的結合能を有するタンパク質の決定基を意味する。エピトープは通常、表面分子群、例えばアミノ酸、糖側鎖、またはその組合せからなり、通常、特異的な三次元の構造的特徴ならびに特異的な荷電特徴を有する。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、前者に対する結合は変性溶媒の存在下で失われるが後者に対する結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも称される)および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含み得る。
【0056】
本発明の「抗体」または「抗体バリアント」または「親抗体のバリアント」とは、「親抗体」と比べて1つまたは複数の変異を含む抗体分子である。これらの異なる用語は互換的に用いられ、本発明の任意の局面または態様に関して同じ意味および目的を構成し得る。例示的な親抗体フォーマットとしては、野生型抗体、完全長抗体もしくはFc含有抗体断片、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、限定されない。同様に、本発明の「ポリペプチド」または「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチドのバリアント」または「親免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチドのバリアント」は、「親免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」と比べて1つまたは複数の変異を含む「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」である。これらの異なる用語は互換的に用いられ、本発明の任意の局面または態様に関して同じ意味および目的を構成し得る。アミノ酸置換は、天然アミノ酸が、天然に存在する別のアミノ酸または天然に存在しないアミノ酸誘導体に交換され得る。アミノ酸置換は保存的であっても非保存的であってもよい。本発明との関連において、保存的置換は、以下の3つの表のうちの1つまたは複数に示されるアミノ酸クラス内での置換によって規定され得る。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
本発明との関連において、バリアントにおける置換は、
本来のアミノ酸 - 位置 - 置換されたアミノ酸
として示し;
コードXaaおよびXを含む3文字コードまたは1文字コードを使用してアミノ酸残基を示す。したがって、表記「E345R」または「Glu345Arg」は、バリアントが、バリアントにおいて親抗体の345位のアミノ酸に対応するアミノ酸位置にグルタミン酸のアルギニンでの置換を含むことを意味する。
【0061】
位置そのものは抗体に存在しないが、バリアントがアミノ酸の挿入を含む場合、例えば、
位置 - 置換されたアミノ酸、例えば「448E」という表記を使用する。
【0062】
かかる表記は、一連の相同なポリペプチドまたは抗体における1つまたは複数の修飾との関連において特に関係がある。
【0063】
同様に、1つまたは複数の置換アミノ酸残基の実体が重要でない場合は、
本来のアミノ酸 - 位置、すなわち「E345」と表す。
【0064】
1つまたは複数の本来のアミノ酸および/あるいは1つまたは複数の置換されたアミノ酸が、1つより多いが全部ではないアミノ酸を含み得る修飾、345位におけるグルタミン酸が、アルギニン、リジン、またはトリプトファンになる場合、
「Glu345Arg,Lys,Trp」または「E345R,K,W」または「E345R/K/W」または「E345 to R, K or W」
が、本発明との関連において互換的に使用され得る。
【0065】
さらに、用語「置換」は、その他の19種類の天然アミノ酸のうちのいずれか1つ、または他のアミノ酸、例えば非天然アミノ酸への置換を包含する。例えば、345位のアミノ酸Eの置換には、置換345A、345C、345D、345G、345H、345F、345I、345K、345L、345M、345N、345P、345Q、345R、345S、345T、345V、345W、および345Yの各々が包含される。これは345Xという表示と等価であり、ここで、Xは任意のアミノ酸を示す。また、このような置換は、E345A,E345Cなど、またはE345A,Cなど、ならびにE345A/C/などとも表示され得る。同じことが、本明細書に記載のいずれの位置にも同様にあてはまり、かかる置換の任意の1つが本明細書において具体的に包含される。
【0066】
本明細書で用いる場合、用語「エフェクター細胞」は、免疫応答の認識相や活性化相に対して、免疫応答のエフェクター相に関与する免疫細胞をいう。例示的な免疫細胞としては、骨髄系統またはリンパ系統が起源の細胞、例えば、リンパ球(例えば、B細胞およびT細胞、例えば細胞傷害性T細胞(CTL))、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、多形核細胞、例えば好中球、顆粒球、肥満細胞、および好塩基球が挙げられる。一部のエフェクター細胞はFc受容体(FcR)または補体受容体を発現し、特異的免疫機能を発揮する。一部の態様では、例えばナチュラルキラー細胞などのエフェクター細胞はADCC誘導能を有する。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、およびクッパー細胞は、標的細胞の特異的死滅および免疫系の他の成分への抗原提示、または抗原を提示する細胞への結合に関与する。一部の態様では、ADCCは、抗体駆動型古典的補体活性化によってさらに増強され、標的細胞上への活性化C3断片の沈着をもたらし得る。C3切断産物は、骨髄系細胞上に発現される補体受容体(CR)、例えばCR3のリガンドである。エフェクター細胞上のCRによる補体断片の認識は、増強されたFc受容体媒介性ADCCを促進させ得る。一部の態様では、抗体駆動型古典的補体活性化により、標的細胞上にC3断片がもたらされる。このようなC3切断産物は、直接補体依存性細胞傷害(CDCC)を促進させ得る。一部の態様では、エフェクター細胞が標的抗原、標的粒子、または標的細胞を貪食し得る。エフェクター細胞上における特定のFcRまたは補体受容体の発現は、体液因子、例えばサイトカインによって調節され得る。例えば、FcγRIの発現は、インターフェロンγ(IFN γ)および/またはG-CSFによって上方調節されることがわかっている。この増強された発現により、標的に対するFcγRI担持細胞の細胞傷害活性が増大する。エフェクター細胞は標的抗原を貪食し得るか、または標的細胞を貪食して溶解させ得る。一部の態様では、抗体駆動型古典的補体活性化により、標的細胞上にC3断片がもたらされる。このようなC3切断産物は、エフェクター細胞による貪食を直接、または抗体媒介性貪食を増強させることにより間接的に促進させ得る。
【0067】
用語「Fcエフェクター機能」は、本明細書で用いる場合、ポリペプチドまたは抗体が細胞膜上のその標的、例えば抗原に結合することの結果である機能を指すことを意図し、ここで、Fcエフェクター機能は、ポリペプチドまたは抗体のFc領域によるものである。Fcエフェクター機能の例としては、(i)C1q結合、(ii)補体活性化、(iii)補体依存性細胞傷害(CDC)、(iv)抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、(v)Fcガンマ受容体結合、(vi)抗体依存性細胞貪食(ADCP)、(vii)補体依存性細胞傷害(CDCC)、(viii)補体増強型細胞傷害、(ix)オプソニン化抗体の、該抗体によって媒介される補体受容体に対する結合、(x)オプソニン化、および(xi)任意の(i)~(x)の組合せが挙げられる。
【0068】
用語「クラスタリング依存性機能」は、本明細書で用いる場合、任意で細胞上、細胞膜上、ビリオン上、または別の粒子上の抗原に結合したポリペプチドまたは抗体のオリゴマー化後の抗原複合体の形成の結果である機能を指すことを意図する。クラスタリング依存性エフェクター機能の例としては、(i)抗体オリゴマー形成、(ii)抗体オリゴマー安定性、(iii)抗原オリゴマー形成、(iv)抗原オリゴマー安定性、(v)アポトーシスの誘導、(vi)増殖のモジュレーション、例えば増殖の低減、阻害、または刺激、および(vii)任意の(i)~(vi)の組合せが挙げられる。
【0069】
「アゴニスト(agonistic)」という用語は、本明細書中で使用されるように、細胞内シグナリングなどの生物学的応答をもたらす細胞膜上の受容体の刺激または活性化として理解される。そのようなアゴニスト効果は、アポトーシス(プログラム細胞死)の誘導または免疫細胞の活性化または細胞内経路の活性化をもたらし得る。
【0070】
アゴニスト活性または増加したアゴニスト活性は、細胞内デスドメインを発現する標的に対する抗体について、以下の工程を使用して、実施例2に記載されるように、生存度アッセイにおいて決定され得る:
(i)抗体に対応する標的、例えばDR5を発現する細胞株を、96穴平底プレートに37℃で一晩播種する工程、
(ii)抗体、例えば抗DR5抗体のある範囲(0.0003~20,000ng/mL)の段階希釈物を添加し、37℃で3日間インキュベートする工程、
(iii)例えばCellTiler-Glo発光細胞生存度アッセイの使用によって、ATPの存在を定量することによって、細胞生存度を決定する工程、
(iv)式:生細胞%=[(抗体試料の発光 - スタウロスポリン試料の発光)/(抗体を含まない試料の発光 - スタウロスポリン試料の発光)]*100を使用して生細胞を計算する工程。
【0071】
アゴニスト活性または増加したアゴニスト活性は、細胞内シグナリング経路を活性化する標的に対する抗体について、以下の工程を使用して、実施例29、30、31、および32に記載されるように、レポーターアッセイにおいて決定されてもよい:
(i)NFAT応答要素の下流の標的、例えば、OX40、4-1BB、CD40、またはGITR、およびルシフェラーゼレポーター遺伝子によって安定的にトランスフェクトされたJurkat細胞を播種し、細胞を96穴平底プレートにおいて37℃で一晩インキュベートする工程、
(ii)抗体、例えば、抗OX49抗体、抗4-1BB抗体、抗CD40抗体、または抗GITR抗体のある範囲、例えば、19.5~5,000ng/mLの段階希釈物を添加し、5時間インキュベートする工程、
(iii)ホタルルシフェラーゼ基質(5'-フルオロルシフェリン)を細胞に添加し、5~10分間インキュベートする工程、
(iv)Envision MultiLable Plateリーダーを使用して、発光を決定する工程。
【0072】
用語「ベクター」は、本明細書で用いる場合、ベクター内にライゲーションされた核酸セグメントの転写の誘導能を有する核酸分子を指すことを意図する。ベクターの型の一例は「プラスミド」であり、これは、円環状の二本鎖DNAループの形態である。ベクターの別の型はウイルスベクターであり、この場合、核酸セグメントはウイルスゲノム内にライゲーションされ得る。一部の特定のベクターは、ベクターが導入された宿主細胞内での自己複製能を有する(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよび哺乳動物エピソームベクター)。他のベクター(例えば、哺乳動物の非エピソームベクター)を宿主細胞のゲノム内に、宿主細胞内への導入の際に組み込んでもよく、それにより宿主のゲノムとともに複製される。さらに、一部の特定のベクターは、これに作動可能に連結されている遺伝子の発現指令能を有する。かかるベクターを本明細書において「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称する。一般に、組換えDNA手法において有用な発現ベクターは多くの場合、プラスミドの形態である。プラスミドはベクターの最も一般的な使用形態であるため、本明細書では「プラスミド」および「ベクター」を互換的に用い得る。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすかかる他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を包含することを意図する。
【0073】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書で用いる場合、内部に発現ベクターが導入されている細胞を指すことを意図する。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫も指すことを意図していることを理解されたい。後続世代において変異または環境的影響のいずれかにより、なんらかの修飾が起こる可能性があるため、かかる子孫は、実際には親細胞と同一でない可能性があるが、それでもなお本明細書で用いる用語「宿主細胞」の範囲に包含される。組換え宿主細胞としては、例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma)、例えばCHO細胞、HEK-293細胞、PER.C6、NS0細胞、およびリンパ系細胞、ならびに原核生物細胞、例えば大腸菌(E.coli)、および他の真核生物宿主、例えば植物細胞および真菌が挙げられる。
【0074】
用語「トランスフェクトーマ」は、本明細書で用いる場合、Abまたは標的抗原を発現している組換え真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞、PER.C6、NS0細胞、HEK-293細胞、植物細胞、または真菌、例えば、酵母細胞を包含する。
【0075】
用語「調製物」は、細胞、細胞膜、ビリオン、または他の構造に関連する抗原(例えば、細胞表面上に発現された抗原)と相互作用した場合に増大されたオリゴマー形成能を有し得、抗原によって増強されたシグナル伝達および/または活性化がもたらされ得る、抗体バリアントおよび異なる抗体バリアントの混合物の調製物を指す。
【0076】
本明細書で用いる場合、用語「親和性」は、単一の部位において1つの分子、例えば抗体が、別の例えば標的または抗原に結合する強度、例えば、抗原に対する抗体の個々の抗原結合部位の一価結合の強度である。
【0077】
本明細書で用いる場合、用語「アビディティ」は、2つの構造間、例えば、標的と同時に相互作用する抗体の複数の抗原結合部位間または例えば抗体とC1qとの間の複数の結合部位の合計強度をいう。1つより多くの結合性相互作用が存在する場合、2つの構造は、すべての結合部位が解離した場合にのみ解離し、したがって、解離速度は個々の結合部位の場合より遅くなり、それにより、個々の結合部位が結合する強度(親和性)と比べてより大きな有効総結合強度(アビディティ)がもたらされる。
【0078】
本明細書で用いる場合、用語「オリゴマー」は、少なくとも原則的には無限の数の単量体からなるポリマーとは対照的に、1つより多いが限定数の単量体単位からなる分子(例えば、抗体)をいう。例示的なオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、および六量体である。多くの場合、オリゴマー内の単量体単位の数を表示するのにギリシャ語の接頭語が使用され、例えば、四量体(tetramer)は4つの単位、六量体(hexamer)は6つの単位で構成されている。
【0079】
用語「オリゴマー化」は、本明細書で用いる場合、単量体を有限の重合度まで変換させるプロセスを指すことを意図する。本明細書では、本発明による標的結合領域を含むポリペプチド、抗体、および/または他の二量体型タンパク質が、例えば細胞表面での標的結合後、Fc領域の非共有結合性会合によってオリゴマー、例えば六量体を形成し得ることが観察される。
【0080】
用語「クラスタリング」は、本明細書で用いる場合、非共有結合性相互作用による抗体、ポリペプチド、抗原、または他のタンパク質のオリゴマー化を指すことを意図する。
【0081】
用語「Fc-Fc増強」は、本明細書で用いる場合、2つのFc領域含有抗体またはポリペプチドが標的結合後にオリゴマーを形成するように、ポリペプチドのFc領域間の結合強度を増大させること、またはFc領域間の相互作用を安定化することを指すことを意図する。
【0082】
Fc-Fc増強置換とは、本明細書中で使用されるように、位置S440における置換がS440YまたはS440Wであることを条件として、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する位置E430、E345、またはS440における置換をさす。従って、Fc-Fc増強置換とは、本明細書中で使用されるように、アミノ酸置換E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440W、およびS440Yをさす。好ましい態様において、Fc-Fc増強置換は、E430GまたはE345Kである。
【0083】
「C1q結合」という用語は、本明細書中で使用されるように、C1qとポリペプチドまたは抗体との間の直接相互作用をさすものとする。直接C1q結合は、例えば、(実施例4、5、および6に記載されるように)人工表面上に固定化された抗体を使用することによって評価され得る。C1qの抗体オリゴマーとの高アビディティ結合をもたらす多価相互作用は、細胞表面上またはビリオン表面上の所定の抗原に結合している時に、評価され得る。
【0084】
C1qのポリペプチドまたは抗体との結合は、以下の工程を使用して、ELISAアッセイにおいて決定され得る。(i)96穴Microlon ELISAプレートを、100μl PBS中の1μg/mLのポリペプチドまたは抗体によって4℃で一晩コーティングする、(ii)プレートを、100μL/ウェルのC1qの段階希釈系列(3倍希釈で最終C1q濃度範囲30~0.01μg/mL)と共に37℃で1時間インキュベートする、(iii)プレートを100μL/ウェルのウサギ抗ヒトC1qと共にRTで1時間インキュベートする、(iv)プレートを100μL/ウェルのブタ抗ウサギIgG-HRPと共にRTで1時間インキュベートする、(v)プレートを100μL/ウェルの基質、1mg/ml 2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)と共にRTで15分間インキュベートする、(vi)100μLの2%シュウ酸/ウェルを添加することによって、反応を中止する。吸光度を、BioTek EL808 Microplateリーダーで405nmにおいて測定する。
【0085】
C1q結合置換という用語は、本明細書中で使用されるように、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドにおける、C1qとの直接相互作用を増強する置換をさすものとする。増強されたC1q結合は、例えば、前記のC1q結合を決定する方法によって測定される、C1qと、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドとの間の相互作用の減少したEC50をもたらす。
【0086】
本明細書で用いる場合、用語「補体活性化」は、表面上の抗体-抗原複合体に、C1と称される大きな巨大分子複合体が結合することによって開始される、古典的補体経路の活性化をいう。C1は、6つの認識タンパク質C1qとセリンプロテアーゼのヘテロ四量体C1r2C1s2とからなる複合体である。C1は、C4のC4aとC4bへの切断およびC2のC2aとC2bへの切断から開始する一連の切断反応を伴う古典的補体カスケードの初期事象における最初のタンパク質複合体である。C4bは沈着し、C2aと一緒にC3転換酵素と称される酵素活性転換酵素を形成し、これにより補体成分C3がC3bとC3aに切断され、C5転換酵素が形成される。このC5転換酵素はC5をC5aとC5bに分割し、最後の成分が膜上に沈着し、これによりさらに、終末補体成分C5b、C6、C7、C8、およびC9が膜侵襲複合体(MAC)へと構築される補体活性化の後期事象が誘発される。補体カスケードにより、補体依存性細胞傷害(CDC)としても知られる、細胞溶解を引き起こす、細胞膜における孔の発生がもたらされる。補体活性化は、C1q有効性、CDC動態CDCアッセイ(WO2013/004842、WO2014/108198に記載のような)を使用することにより、またはBeurskens et al April 1, 2012 vol.188 no.7 3532-3541に記載の方法であるC3bおよびC4bの細胞沈着により評価され得る。
【0087】
用語「補体依存性細胞傷害」(「CDC」)は、本明細書で用いる場合、抗体が細胞またはビリオン上の標的に結合しているときに、MAC構築体によって作られた膜における孔の結果として細胞またはビリオンの溶解をもたらす、抗体媒介性補体活性化のプロセスを指すことを意図する。
【0088】
用語「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」(「ADCC」)は、本明細書で用いる場合、結合抗体の定常領域を認識するFc受容体を発現している細胞による、抗体で被覆された標的細胞またはビリオンの死滅の機構を指すことを意図する。用語「抗体依存性細胞貪食」(「ADCP」)は、本明細書で用いる場合、食細胞による内部移行による、抗体で被覆された標的細胞またはビリオンの除去機構を指すことを意図する。内部移行を受けた、抗体で被覆された標的細胞またはビリオンは、ファゴソームと称される小胞内に内包され、次いでこれが1つまたは複数のリソソームと融合してファゴリソソームを形成する。ADCPは、エフェクター細胞としてマクロファージおよびビデオ顕微鏡法を用いるインビトロ細胞傷害アッセイを使用することにより、van Bij et al.in Journal of Hepatology Volume 53, Issue 4, October 2010, Pages 677-685に記載のようにして評価され得る。
【0089】
用語「補体依存性細胞傷害」(「CDCC」)は、本明細書で用いる場合、抗体媒介性補体活性化の結果として、標的細胞またはビリオンに共有結合している補体第3成分(C3)の切断産物を認識する補体受容体を発現している細胞による標的細胞またはビリオンの死滅の機構を指すことを意図する。CDCCは、ADCCについて記載のものと同様の様式で評価され得る。
【0090】
用語「血漿半減期」は、本明細書で用いる場合、血漿中のポリペプチド濃度が、除去中(分布相後)に、その初期濃度の半分まで低下するのにかかる時間を指す。抗体では、分布相は典型的には1~3日間であり、この相中に、血漿と組織との間での再分布のため血漿濃度の約50%の低減がみられる。血漿半減期は、当技術分野において周知の方法で測定され得る。
【0091】
用語「血漿クリアランス率」は、本明細書で用いる場合、ポリペプチドが、生きている生物に投与したときに血液から除去される速度の定量的測定値である。血漿クリアランス率は、用量/AUC(mL/日/kg)として計算され得、ここで、AUC値(曲線下面積)は濃度-時間曲線から求められる。
【0092】
用語「抗体-薬物コンジュゲート」は、本明細書で用いる場合、少なくとも1つの型の悪性細胞に対する特異性、薬物、および薬物を例えば抗体とカップリングさせるリンカーを有する抗体またはFc含有ポリペプチドを指す。リンカーは、悪性細胞の存在下で切断性または非切断性である;この場合、抗体-薬物コンジュゲートは悪性細胞を死滅させる。
【0093】
用語「抗体-薬物コンジュゲート取込み」は、本明細書で用いる場合、抗体-薬物コンジュゲートが細胞上の標的に結合された後、細胞膜によって取込み/封じ込みが行なわれ、それにより細胞内に引き込まれるプロセスをいう。抗体-薬物コンジュゲート取込みは、WO 2011/157741に記載の「インビトロ死滅アッセイにおける抗TF ADCによる抗体媒介性内部移行および細胞死滅(antibody-mediated internalization and cell killing by anti-TF ADC in an in vitro killing assay)」のようにして評価され得る。
【0094】
用語「アポトーシス」は、本明細書で用いる場合、細胞において起こり得るプログラム細胞死(PCD)のプロセスをいう。生化学的事象により特徴的な細胞の変化(形態構造)および死がもたらされ得る。このような変化としては、細胞質の水疱様突起(blebbing)、細胞の収縮、核の断片化、クロマチンの凝集、および染色体DNAの断片化が挙げられる。ある特定の受容体に抗体が結合することによって、アポトーシスが誘導され得る。
【0095】
用語「プログラム細胞死」または「PCD」は、本明細書で用いる場合、細胞内プログラムによって媒介される任意の形態の細胞の死をいう。異なる形態のPCDが存在し、種々の型のPCDは、細胞内シグナル伝達に干渉すると妨害され得る能動的細胞プロセスによって実行されることが共通している。特定の一態様において、細胞または組織における任意の形態のPCDの発生は、細胞または組織をコンジュゲート型アネキシンVで染色し、ホスファチジルセリン曝露と相関させることにより調べ得る。
【0096】
用語「アネキシンV」は、本明細書で用いる場合、細胞表面上のホスファチジルセリン(PS)に結合する一群のアネキシンのタンパク質をいう。
【0097】
用語「FcRn」は、本明細書で用いる場合、Fc受容体である新生児型Fc受容体を指すことを意図する。これは、最初、齧歯類において、母乳から齧歯類新生仔の腸の上皮を通して新生仔の血流へのIgG輸送能を有する特有の受容体として見出された。さらなる研究により、ヒトにおける同様の受容体が明らかになった。しかしながら、ヒトでは、これは、成長中の胎児への母体のIgGの輸送の助長を補助する胎盤中に見出され、また、IgG代謝回転の監視に役割を果たしていることが示されている。FcRnは、6.0~6.5の酸性pHでIgGに結合するが中性またはそれより高いpHでは結合しない。したがって、FcRnは、わずかに酸性pHの腸管腔(腸内部)からIgGに結合することができ、pHが中性から塩基性(pH 7.0~7.5)である基底外側(身体内部)への効率的な一方向性輸送を確実にすることができる。また、この受容体は、内皮細胞内でのエンドサイトーシスの経路内に存在することにより成人のIgG再利用においても役割を果たす。酸性のエンドソーム内のFcRn受容体は、飲作用によって内部移行を受けたIgGに結合し、これを細胞表面に再利用させ、塩基性pHの血液中に放出し、それによりリソソーム分解を受けることを抑制する。この機構は、血中のIgGの半減期が他のアイソタイプと比べて長いことの説明となり得る。
【0098】
用語「プロテインA」は、本明細書で用いる場合、最初に細菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁において見出された56 kDaのMSCRAMM表面タンパク質を指すことを意図する。これはspa遺伝子にコードされており、その調節は、DNAトポロジー、細胞オスモル濃度、およびArlS-ArlRと称される二成分系によって制御される。これは、その免疫グロブリンとの結合能のため、生化学の研究において有用性が見出されている。これは、3-ヘリックスバンドルにフォールディングされる5つの相同Ig結合ドメインで構成されている。各ドメインが、多くの哺乳動物種に由来するタンパク質、最も顕著にはIgGに対する結合能を有する。これは、ほとんどの免疫グロブリンの重鎖Fc領域(FcRn受容体の保存された結合部位と重複)に結合し、また、ヒトVH3ファミリーのFab領域とも相互作用する。血清中でのこのような相互作用により、IgG分子は、そのFab領域単独ではなくFc領域によって細菌に結合し、それにより、この細菌がオプソニン化、補体活性化、および貪食を攪乱する。
【0099】
用語「プロテインG」は、本明細書で用いる場合、C群およびG群の連鎖球菌によって発現される免疫グロブリン結合タンパク質を指すことを意図しており、プロテインAとよく似ているが特異性が異なる。これは、Fc領域に対するその結合による抗体精製において用途が見出されている65 kDa(G148プロテインG)および58 kDa(C40プロテインG)の細胞表面タンパク質である。
【0100】
本発明の具体的な態様
本明細書中に記載されるように、驚くべきことに、ポリペプチドまたは抗体のFc領域におけるアミノ酸の置換は、増強されたエフェクター機能、例えば、CDCおよび/またはアゴニスト活性を有するポリペプチドまたは抗体を提供する。本発明者らは、E430、E345、およびS440からなる群より選択される位置における置換などのFc-Fc相互作用を増強する変異を、C1q結合置換と共に導入することによって、ポリペプチドまたは抗体のFcエフェクター機能が増強され得ることを見出した。さらに、本発明者らは、Fc-Fc増強変異とC1q結合置換との組み合わせが、アゴニスト特性または増強されたアゴニスト特性を有する抗体などのポリペプチドをもたらし得ることも見出した。
【0101】
一つの局面において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体を提供し、ここで、Fc領域は、(a)S440における変異がS440YまたはS440Wであることを条件として、E430、E345、およびS440からなる群より選択される位置における少なくとも1個のFc-Fc増強置換、ならびに(b)少なくとも1個のC1q結合置換を含み、位置は、EUナンバリング(Edelman et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.1969 May;63(1):78-85;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.1991 NIH Publication No.91-3242)によるヒトIgG1に対応する。
【0102】
一つの局面において、本発明は、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体を提供し、ここで、Fc領域は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0103】
E430、E345に対応する位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換は、本発明によるFc-Fc増強置換と見なされる。
【0104】
G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換は、本発明によるC1q結合置換と見なされる。
【0105】
位置E430、E345、またはS440のうちの1個における変異は、S440における変異がS440YまたはS440Wであることを条件として、増強されたFc-Fc相互作用およびオリゴマー化という効果を、ポリペプチドまたは抗体に導入する。増強されたオリゴマー化は、ポリペプチドまたは抗体の抗原結合領域が、対応する標的抗原に結合している時に起こる。増強されたオリゴマー化は、例えば、六量体のようなオリゴマーを生成する。六量体のようなオリゴマー構造の生成は、ポリペプチドのC1q結合アビディティを増加させることによって、Fcエフェクター機能、例えば、CDCを増加させる効果を有する。Fc-Fc増強変異と、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換などのC1q結合置換との組み合わせは、増強されたエフェクター機能を有するポリペプチドまたは抗体を生じる。Fc-Fc増強置換とC1q結合置換との組み合わせはさらに、アゴニスト活性を有するポリペプチドまたは抗体の生成という効果を有する。一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、親ポリペプチドまたは親抗体と比較した時に、増加したアゴニスト活性を有し得る。
【0106】
本発明によるポリペプチドまたは抗体は、細胞表面受容体との結合を通して細胞内シグナリング経路を活性化する場合に、特に興味深い。
【0107】
本発明による一つの態様において、Fc-Fc増強置換およびC1q結合置換を有するポリペプチドまたは抗体の増加したまたは増強されたFcエフェクター機能または活性とは、ポリペプチドまたは抗体が、親ポリペプチドまたは親抗体、即ち、本発明による置換を含まないがその他は同一である親ポリペプチドまたは親抗体と比較される場合であるとして理解される。
【0108】
本発明は、増加したCDCおよびアゴニスト活性などの特性を有する、新規のポリペプチドまたは抗体に基づく治療薬を可能にする。即ち、本発明によるポリペプチドまたは抗体は、増加したCDCなどのFc領域に依る特性を有し、増加したアゴニスト活性などの抗原結合領域に依る特性も有する。
【0109】
一つの局面において、本発明は、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体を提供し、ここで、Fc領域は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。本発明の一つの局面において、ポリペプチドまたは抗体は、E430、E345からなる群より選択される位置における少なくとも1個の置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を含む。本発明の一つの局面において、ポリペプチドまたは抗体は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0110】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される2個または3個の位置における置換を含む。
【0111】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、
(i)位置K326、E333における2個のC1q結合置換、
(ii)位置K326、E333、およびP396における3個のC1q結合置換、ならびに
(iii)位置S267、H268、およびS324における3個のC1q結合置換
からなる群より選択されるC1q結合置換を含む。
【0112】
本発明の一つの態様において、1個または複数個のC1q結合置換は、位置G236における置換がG236F、G236R、G236Yでないことを条件として、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置にある。
【0113】
本発明の一つの態様において、1個または複数個のC1q結合置換は、位置S267における置換がS267H、S267I、S267K、S267Gでないことを条件として、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置にある。
【0114】
本発明の一つの態様において、1個または複数個のC1q結合置換は、位置H268における置換がH268K、H268D、H268Eでないことを条件として、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置にある。
【0115】
本発明の一つの態様において、少なくとも1個のFc-Fc増強置換は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440W、およびS440Yからなる群より選択される。
【0116】
本発明の一つの態様において、少なくとも1個のFc-Fc増強置換は、E430G、E430S、E430F、およびE430Tからなる群より選択される。
【0117】
本発明の一つの態様において、少なくとも1個のFc-Fc増強置換は、E345K、E345Q、E345R、およびE345Yからなる群より選択される。
【0118】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G置換を少なくとも有する。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K置換を少なくとも有する。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R置換を少なくとも有する。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y置換を少なくとも有する。
【0119】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、E430S、E430F、およびE430Tからなる群より選択される少なくとも1個の置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0120】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、E430S、E430F、およびE430Tからなる群より選択される少なくとも1個の置換、ならびにK326、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0121】
本発明の一つの態様において、Fc領域は、E430G置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0122】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、E345Q、E345R、およびE345Yからなる群より選択される少なくとも1個の置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0123】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、E345Q、E345R、およびE345Yからなる群より選択される少なくとも1個の置換、ならびにK326、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0124】
本発明の一つの態様において、Fc領域は、E345K置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0125】
本発明の一つの態様において、Fc領域は、E345R置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0126】
本発明の一つの態様において、Fc領域は、S440YまたはS440Wからなる群より選択される少なくとも1個の置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0127】
本発明の一つの態様において、Fc領域は、S440YまたはS440Wからなる群より選択される少なくとも1個の置換、ならびにK326、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0128】
本発明の一つの態様において、Fc領域は、S440Y置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。
【0129】
細胞表面抗原結合時のポリペプチドまたは抗体の増強されたC1q結合および/またはアゴニスト特性を可能にする態様が、本明細書中に提供される。一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、増強されたアゴニスト特性を含む。一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖を含むFc領域を含み、ここで、前記の置換のうちの1個が第1および/または第2の重鎖に存在してよい。
【0130】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における2個または3個の置換のような置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置K326およびE333における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置K326およびP396における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置P396およびE333における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置K326、E333、およびP396における置換を含む。
【0131】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびにK326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびにK326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置、例えば、2個または3個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびに位置K326およびE333における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびに位置K326およびP396における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびに位置E333およびP396における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびに位置K326、E333、およびP396における置換を含む。
【0132】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびにK326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびにK326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置、例えば、2個または3個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびに位置K326およびE333における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびに位置K326およびP396における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびに位置E333およびP396における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびに位置K326、E333、およびP396における置換を含む。
【0133】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440YまたはS440Wにおける置換、ならびにK326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440YまたはS440Wにおける置換、ならびにK326、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置、例えば、2個または3個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440YまたはS440Wにおける置換、ならびに位置K326およびE333における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440YまたはS440Wにおける置換、ならびに位置K326およびP396における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440YまたはS440Wにおける置換、ならびに位置E333およびP396における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440YまたはS440Wにおける置換、ならびに位置K326、E333、およびP396における置換を含む。
【0134】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W、K326A、K326D、K326N、K326G、K326F、K326E、K326F、K326Y、K326H、およびK326Mからなる群より選択される位置K326における置換を含む。
【0135】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333S、E333A、E333T、およびE333Gからなる群より選択される位置E333における置換を含む。
【0136】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E396L、E396I、E396V、E396Q、E396N、およびE396Aからなる群より選択される位置E396における置換を含む。
【0137】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W、E333S、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W、E333T、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A、E333S、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333S置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333A置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333T置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、P396L置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326WおよびE333Sを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326WおよびE333Tを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326WおよびE333Aを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326WおよびP396Lを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326AおよびE333Aを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326AおよびE333Sを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326AおよびE333Tを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326AおよびP396Lを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換E333AおよびP396Lを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換E333SおよびP396Lを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326A、E333A、およびP396Lを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326S、E333A、およびP396Lを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326W、E333A、およびP396Lを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326W、E333S、およびP396Lを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換K326W、E333T、およびP396Lを含む。
【0138】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267、H268、およびS324からなる群より選択される位置における1個または複数個のC1q結合置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267、H268、およびS324からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置S267およびH268における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置S267およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置H268およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置S267、H268、およびS324における置換を含む。
【0139】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびにS267、H268、およびS324からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびにS267、H268、およびS324からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびに位置S267およびH268における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびに位置S267およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびに位置H268およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびに位置S267、H268、およびS324における置換を含む。
【0140】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびにS267、H268、およびS324からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびにS267、H268、およびS324からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびに位置S267およびH268における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびに位置S267およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびに位置H268およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびに位置S267、H268、およびS324における置換を含む。
【0141】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換S440YまたはS440W、ならびにS267、H268、およびS324からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換S440YまたはS440W、ならびにS267、H268、およびS324からなる群より選択される1個または複数個の位置、例えば、2個または3個の位置における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換S440YまたはS440W、ならびに位置S267およびH268における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換S440YまたはS440W、ならびに位置S267およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換S440YまたはS440W、ならびに位置H268およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換S440YまたはS440W、ならびに位置S267、H268、およびS324における置換を含む。
【0142】
本発明の一つの態様において、S267E、H268F、およびS324Tからなる群より選択される1個または複数個の置換。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267E、H268F、およびS324Tからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267E置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、H268F置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S324T置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267EおよびH268Fの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換S267EおよびS324Tを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換H268FおよびS324Tを含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、置換S267E、H268F、およびS324Tを含む。
【0143】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、ならびに(b)
(i)K326A、
(ii)E333A、
(iii)E333T
(iv)P396L、
(v)E333S、
(vi)K326W、E333S
(vii)K326W、E333T
(viii)K326A、E333A、
(ix)K326A、K333A、P396L
(x)S267E、H268F、
(xi)S267E、S324T、
(xii)H268F、S324T、
(xiii)S267E、H268F、S324T、および
(xiv)S324、I332
からなる群のうちの1個より選択される少なくとも1個の置換を含む。
【0144】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびに
(i)K326A、
(ii)E333A、
(iii)E333T
(iv)P396L、
(v)E333S、
(vi)K326W、E333S
(vii)K326W、E333T
(viii)K326A、E333A、
(ix)K326A、K333A、P396L
(x)S267E、H268F、
(xi)S267E、S324T、
(xii)H268F、S324T
(xiii)S267E、H268F、S324T、および
(xiv)S324、I332
からなる群のうちの1個より選択される少なくとも1個の置換を含む。1個の置換が位置E430にある態様が、本明細書中に提供される。一つの態様において、位置E430における置換は、E430G、E430S、E430F、E430Tからなる群より選択される。
【0145】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G置換、ならびに
(i)K326A、
(ii)E333A、
(iii)E333T
(iv)P396L、
(v)E333S、
(vi)K326W、E333S
(vii)K326W、E333T
(viii)K326A、E333A、
(ix)K326A、K333A、P396L
(x)S267E、H268F、
(xi)S267E、S324T、
(xii)H268F、S324T、
(xiii)S267E、H268F、S324T、および
(xiv)S324、I332
からなる群のうちの1個より選択される置換を含む。
【0146】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K326W、およびE333S置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K326A、およびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。
【0147】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430S、K326W、およびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430S、K326A、およびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430S、K333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430S、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。
【0148】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430F、K326W、およびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430F、K326A、およびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430F、K333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430F、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。
【0149】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430T、K326W、およびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430T、K326A、およびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430T、K333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430T、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。
【0150】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびに
(i)K326A、
(ii)E333A、
(iii)E333T
(iv)P396L、
(v)E333S、
(vi)K326W、E333S
(vii)K326W、E333T
(viii)K326A、E333A、
(ix)K326A、K333A、P396L
(x)S267E、H268F、
(xi)S267E、S324T、
(xii)H268F、S324T、
(xiii)S267E、H268F、S324T、および
(xiv)S324、I332
からなる群のうちの1個より選択される少なくとも1個の置換を含む。1個の置換が位置E345にある態様が、本明細書中に提供される。一つの態様において、位置E345における置換は、E345K、E345Q、E345R、E345Yからなる群より選択される。
【0151】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K置換、ならびに
(i)K326A、
(ii)E333A、
(iii)E333T
(iv)P396L、
(v)E333S、
(vi)K326W、E333S
(vii)K326W、E333T
(viii)K326A、E333A、
(ix)K326A、K333A、P396L
(x)S267E、H268F、
(xi)S267E、S324T、
(xii)H268F、S324T、
(xiii)S267E、H268F、S324T、および
(xiv)S324、I332
からなる群のうちの1個より選択される少なくとも1個の置換を含む。
【0152】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K326W、およびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K326A、およびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。
【0153】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R置換、ならびに
(i)K326A、
(ii)E333A、
(iii)E333T
(iv)P396L、
(v)E333S、
(vi)K326W、E333S
(vii)K326W、E333T
(viii)K326A、E333A、
(ix)K326A、K333A、P396L
(x)S267E、H268F、
(xi)S267E、S324T、
(xii)H268F、S324T、
(xiii)S267E、H268F、S324T、および
(xiv)S324、I332
からなる群のうちの1個より選択される少なくとも1個の置換を含む。
【0154】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K326W、およびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K326A、およびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。
【0155】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345Q、K326W、およびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345Q、K326A、およびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345Q、K333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345Q、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。
【0156】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345Y、K326W、およびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345Y、K326A、およびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345Y、K333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345Y、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。
【0157】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440YまたはS440Wの置換、ならびに
(i)K326A、
(ii)E333A、
(iii)E333T
(iv)P396L、
(v)E333S、
(vi)K326W、E333S
(vii)K326W、E333T
(viii)K326A、E333A、
(ix)K326A、K333A、P396L
(x)S267E、H268F、
(xi)S267E、S324T、
(xii)H268F、S324T、
(xiii)S267E、H268F、S324T、および
(xiv)S324、I332
からなる群のうちの1個より選択される少なくとも1個の置換を含む。
【0158】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y置換、ならびに
(i)K326A、
(ii)E333A、
(iii)E333T
(iv)P396L、
(v)E333S、
(vi)K326W、E333S
(vii)K326W、E333T
(viii)K326A、E333A、
(ix)K326A、K333A、P396L
(x)S267E、H268F、
(xi)S267E、S324T、
(xii)H268F、S324T、
(xiii)S267E、H268F、S324T、および
(xiv)S324、I332
からなる群のうちの1個より選択される少なくとも1個の置換を含む。
【0159】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y、K326W、およびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y、K326A、およびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y、K333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。
【0160】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440W、K326W、およびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440W、K326A、およびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440W、K333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440W、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。
【0161】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、G236A、I332E、S239D、およびI332Eからなる群より選択される1個または複数個の置換をさらに含む。
【0162】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、
(i)G236A、I332E、および
(ii)S239D、I332E
からなる群より選択される少なくとも2個の置換をさらに含む。
【0163】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における少なくとも1個の置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、ならびに(b)
(i)H268F、S324T、G236A、I332E、
(ii)H268F、S324T、S239D、I332E
(iii)S267E、H268F、S324T、G236A、I332E、および
(iv)S267E、H268F、S324T、S239D、I332E
からなる群のうちの1個より選択される置換を含む。
【0164】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E430における置換、ならびに
(i)H268F、S324T、G236A、I332E、
(ii)H268F、S324T、S239D、I332E
(iii)S267E、H268F、S324T、G236A、I332E、および
(iv)S267E、H268F、S324T、S239D、I332E
からなる群のうちの1個より選択される置換を含む。
【0165】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G置換、ならびに
(i)H268F、S324T、G236A、I332E、
(ii)H268F、S324T、S239D、I332E
(iii)S267E、H268F、S324T、G236A、I332E、および
(iv)S267E、H268F、S324T、S239D、I332E
からなる群のうちの1個より選択される置換を含む。
【0166】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置E345における置換、ならびに
(i)H268F、S324T、G236A、I332E、
(ii)H268F、S324T、S239D、I332E
(iii)S267E、H268F、S324T、G236A、I332E、および
(iv)S267E、H268F、S324T、S239D、I332E
からなる群のうちの1個より選択される置換を含む。
【0167】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K置換、ならびに
(i)H268F、S324T、G236A、I332E、
(ii)H268F、S324T、S239D、I332E
(iii)S267E、H268F、S324T、G236A、I332E、および
(iv)S267E、H268F、S324T、S239D、I332E
からなる群のうちの1個より選択される置換を含む。
【0168】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R置換、ならびに
(i)H268F、S324T、G236A、I332E、
(ii)H268F、S324T、S239D、I332E
(iii)S267E、H268F、S324T、G236A、I332E、および
(iv)S267E、H268F、S324T、S239D、I332E
からなる群のうちの1個より選択される置換を含む。
【0169】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440YまたはS440Wの置換、ならびに
(i)H268F、S324T、G236A、I332E、
(ii)H268F、S324T、S239D、I332E
(iii)S267E、H268F、S324T、G236A、I332E、および
(iv)S267E、H268F、S324T、S239D、I332E
からなる群のうちの1個より選択される置換を含む。
【0170】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y置換、ならびに
(i)H268F、S324T、G236A、I332E、
(ii)H268F、S324T、S239D、I332E、
(iii)S267E、H268F、S324T、G236A、I332E、および
(iv)S267E、H268F、S324T、S239D、I332E
からなる群のうちの1個より選択される置換を含む。
【0171】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、1個または複数個のさらなる置換を含む。即ち、本発明の一つの態様において、本明細書中に記載されたいずれかの局面または態様によるポリペプチドまたは抗体は、Fc領域における1個または複数個のさらなる置換を含む。
【0172】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置K439に対応するさらなる置換を含むか、または、Fc領域が位置S440における置換を含まない場合、さらなる置換が位置S440に存在してもよい。
【0173】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440における置換がS440YまたはS440Wでないことを条件として、位置K439またはS440に対応するポリペプチドまたは抗体におけるさらなる置換を含む。本発明によるFc-Fc増強置換およびC1q結合置換、ならびにS440Kのような位置S440におけるさらなる置換を含むポリペプチドまたは抗体は、S440Kのような位置S440における置換を含むポリペプチドまたは抗体とオリゴマーを形成しない。本発明によるFc-Fc増強置換およびC1q結合置換、ならびにK439Eのような位置K439におけるさらなる置換を含むポリペプチドまたは抗体は、K439Eのような位置K439における変異を含むポリペプチドまたは抗体とオリゴマーを形成しない。本発明の一つの態様において、さらなる置換は、S440KまたはK439Eより選択される。
【0174】
本発明の一つの態様において、Fc領域は、ヒトIgG1 EUナンバリングにおけるK439EまたはS440Kに対応する六量体化阻害置換であるさらなる置換を含む。即ち、本発明の一つの態様において、Fc領域は、E430GのようなFc-Fc増強置換および六量体化阻害置換K439Eを含む。本発明の一つの態様において、Fc領域は、E345KのようなFc-Fc増強置換および六量体化阻害置換K439Eを含む。本発明の別の態様において、Fc領域は、E430GのようなFc-Fc増強置換および六量体化阻害置換S440Kを含む。本発明の一つの態様において、Fc領域は、E345KのようなFc-Fc増強置換および六量体化阻害置換S440Kを含む。K439E置換を含む抗体とS440K置換を含む抗体との組み合わせの排他的な六量体化を可能にする態様が、本明細書中に提供される。即ち、阻害置換K439EおよびS440Kは、相補的な置換と見なされ得る。2個の異なる相補的な六量体化阻害置換を含む抗体の組み合わせは、異なる特異性を有する少なくとも2種の抗体を有する組成物において特に重要であり得る。
【0175】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、(a)S440における置換がS440YまたはS440Wでないことを条件として、E430、E345、およびS440からなる群より選択される位置における置換、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換、ならびに(c)K439E置換を含む。
【0176】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、(a)E430およびE345からなる群より選択される位置における置換、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換、ならびに(c)S440K置換を含む。
【0177】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K326W、E333S、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K326A、E333A、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K333A、P396L、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K326A、E333A、P396L、およびK439Eの置換を含む。
【0178】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K326W、E333S、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K326A、E333A、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K333A、P396L、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K326A、E333A、P396L、およびK439Eの置換を含む。
【0179】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K326W、E333S、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K326A、E333A、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K333A、P396L、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K326A、E333A、P396L、およびK439Eの置換を含む。
【0180】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y、K326W、E333S、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y、K326A、E333A、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y、K333A、P396L、およびK439Eの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y、K326A、E333A、P396L、およびK439Eの置換を含む。
【0181】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、(a)E430およびE345からなる群より選択される位置における置換、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換、ならびに(c)S440K置換を含む。
【0182】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K326W、E333S、およびS440Kの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K326A、E333A、およびS440Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K333A、P396L、およびS440Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G、K326A、E333A、P396L、およびS440Kの置換を含む。
【0183】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K326W、E333S、およびS440Kの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K326A、E333A、およびS440Kの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K333A、P396L、およびS440Kの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K、K326A、E333A、P396L、およびS440Kの置換を含む。
【0184】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K326W、E333S、およびS440Kの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K326A、E333A、およびS440Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K333A、P396L、およびS440Kの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R、K326A、E333A、P396L、およびS440Kの置換を含む。
【0185】
本発明によるポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1個のFc-Fc増強置換および1個または複数個のC1q結合置換を有するが、前記のように、ポリペプチドまたは抗体に付加的な機能を導入するための付加的な置換を有していてもよい。一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、多くて10個の置換、例えば、9個の置換、例えば、8個の置換、例えば、7個の置換、例えば、6個の置換、例えば、5個の置換、例えば、4個の置換、例えば、3個の置換、または、例えば、2個の置換を含む。
【0186】
本発明のポリペプチドまたは抗体が、ポリペプチドまたは抗体に付加的な特色を導入する付加的な置換を有することを可能にする態様が、本明細書中に提供される。さらに、付加的な置換は、Fc-Fc相互作用に関与しない位置およびFcエフェクター機能に関与しない位置におけるFc領域内の変動を可能にする。さらに、付加的な置換は、対立遺伝子変動によるものであってもよい。
【0187】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、Fc領域にFc-Fc増強置換およびC1q結合置換を含まないことを除き、その抗体と同一である親ポリペプチドまたは親抗体と比較して、少なくとも20%だけ増加したFcエフェクター機能を有する。
【0188】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、Fc領域にFc-Fc増強置換およびC1q結合置換を含まないことを除き、その抗体と同一である親ポリペプチドまたは親抗体と比較して、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%だけ増加したFcエフェクター機能を有する。
【0189】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、増加したFcエフェクター機能を含む。
【0190】
本発明の一つの態様において、Fcエフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)、補体依存性細胞媒介細胞傷害、補体活性化、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食、C1q結合、およびFcγR結合からなる群より選択される。一つの態様において、Fcエフェクター機能は、FcγRIIIaシグナリングである。即ち、本発明による第2の変異は、少なくとも1種のFcエフェクター機能を減少させることができる。
【0191】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、アゴニスト活性を含む。即ち、ポリペプチドまたは抗体は、親ポリペプチドまたは親抗体と比較した場合に、アゴニスト活性を含む。
【0192】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、増強されたアゴニスト活性を含む。即ち、ポリペプチドまたは抗体は、親ポリペプチドまたは親抗体と比較した場合に、増強されたアゴニスト活性を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、同一のFc-Fc増強変異を含むがC1q結合変異は含まないポリペプチドまたは抗体と比較した場合に、増強されたアゴニスト活性を含む。
【0193】
TNFR-SFの受容体のアゴニスト活性は、アゴニスト活性を達成するために外因性の架橋を必要とする。これは、例えば、関心対象のTNFR-SF受容体によって安定的にトランスフェクトされた、NF-kBによって駆動される分泌型レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼを発現するpMetLuc-Reportor遺伝子、Clontech)を含有しているHEK293細胞を使用した、代理アッセイにおいて測定され得る。受容体の架橋は、プロモーターの活性化および培地中への、例えば、ルシフェラーゼタンパク質の分泌をもたらす。アッセイ中の所望の時点で、培地試料を移し、基質を添加することによって、ルシフェラーゼ活性を測定することができる。アゴニスト活性の尺度であるルシフェラーゼ活性は、ルミノメーターにおいて測定され得る。例えば、OX40について、Zhang et al.J Biol Chem.2016 Dec 30;291(53):27134-27146を参照されたい。
【0194】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、増加したアゴニスト活性を含む。即ち、ポリペプチドまたは抗体は、親ポリペプチドまたは親抗体と比較した場合に、増加したアゴニスト活性を含む。
【0195】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドは、抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である。一つの態様において、ポリペプチドは、単一特異性ポリペプチド、二重特異性ポリペプチド、または多重特異性ポリペプチドである。
【0196】
本発明のポリペプチドは、天然の、例えば、ヒトFcドメインを有する抗体に限定されず、例えば、グリコシル化に影響するかまたは抗体が二重特異性抗体であることを可能にする変異のような、本発明の変異以外の変異を有する抗体であってもよい。「天然抗体」という用語は、遺伝学的に導入された変異を含まない抗体を意味する。従って、天然に存在する修飾、例えば、異なるアロタイプを含む抗体は、本発明の意味において、「天然抗体」として理解されるべきであり、従って、親抗体として理解されてよい。そのような抗体は、本発明による少なくとも2個の置換の鋳型として役立ち、従って、本発明の抗体を提供することができる。本発明の変異以外の置換を含む親抗体の例は、IgG4様CH3領域を含む2種の抗体の分子の半分の交換を促進し、従って、凝集物が同時に形成されることなく二重特異性抗体が形成されるよう、還元条件を利用する、WO2011/131746(Genmab)に記載されたような二重特異性抗体である。親抗体の他の例には、異種二量体二重特異性抗体のような二重特異性抗体:トリオマブ(Triomab)(Fresenius);二重特異性のIgG1およびIgG2(Rinat neurosciences Corporation);FcΔAdp(Regeneron);ノブ・イントゥ・ホール(Knobs-into-holes)(Genentech);静電的ステアリング(Electrostatic steering)(Amgen、Chugai、Oncomed);SEEDボディ(SEEDbodies)(Merck);アジメトリック・スキャフォールド(Azymetric scaffold)(Zymeworks);mAb-Fv(Xencor);ならびにLUZ-Y(Genentech)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。他の例示的な親抗体フォーマットには、非限定的に、野生型抗体、完全長抗体、もしくはFc含有抗体断片、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはそれらのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0197】
一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、R435H置換を含むFc領域を含む。
【0198】
一つの態様において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体を提供し、ここで、Fc領域は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される1個または複数個の位置における置換、ならびに(c)R435H置換を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0199】
ポリペプチドまたは抗体は、任意のアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgD、IgM、またはIgAのヒト抗体であってよく、任意で、ヒト完全長IgG1抗体のようなヒト完全長抗体であってよい。
【0200】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、ヒトIgG1抗体、例えば、IgG1m(za)アロタイプまたはIgG1m(f)アロタイプである。
【0201】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、ヒトのIgG1アイソタイプ、IgG2アイソタイプ、IgG3アイソタイプ、IgG4アイソタイプ、IgEアイソタイプ、IgDアイソタイプ、IgMアイソタイプ、IgAアイソタイプ、または混合アイソタイプであるFc領域を有する。即ち、本発明によるポリペプチドまたは抗体のFc領域は、ヒトのIgG1アイソタイプ、IgG2アイソタイプ、IgG3アイソタイプ、IgG4アイソタイプ、IgEアイソタイプ、IgDアイソタイプ、IgMアイソタイプ、IgAアイソタイプ、または混合アイソタイプに対応するFc領域に導入された第1および第2の変異を少なくとも有する。本発明の一つの態様において、Fc領域は、以下の群:IgG1/IgG2、IgG1/IgG3、IgG1/IgG4、IgG2/IgG3、IgG2/IgG4、およびIgG3/IgG4より選択される混合アイソタイプである。混合アイソタイプにおいて、Fc領域は、複数のアイソタイプに由来するアミノ酸配列で構成される。
【0202】
本発明の一つの態様において、Fc領域は、ヒトのIgG1アイソタイプ、IgG2アイソタイプ、IgG3アイソタイプ、IgG4アイソタイプ、または混合アイソタイプである。
【0203】
本発明の一つの態様において、Fc領域は、ヒトIgGである。
【0204】
本発明の好ましい態様において、ポリペプチドまたは抗体は、ヒトIgG1アイソタイプであるFc領域を有する。
【0205】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、IgG1m(f)アロタイプ、IgG1m(a)アロタイプ、IgG1m(z)アロタイプ、IgG1m(x)アロタイプ、または混合アロタイプであるFc領域を有する。
【0206】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:73、74、75、76、89、168、169、または170に示されたFc領域を含み、ここで、Fc領域は、S440における置換がS440YまたはS440Wであることを条件として、E430、E345、およびS440に対応する群より選択される位置における置換、ならびにG236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0207】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:77、78、または90に示されるFc領域を含み、ここで、Fc領域は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0208】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:80、82、83、84、87、または88に示されるFc領域を含む。
【0209】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドは、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。
【0210】
多重特異性抗体
本発明のポリペプチドまたは抗体は、天然の、例えば、ヒトFcドメインを有する抗体に限定されず、例えば、グリコシル化に影響するかまたは抗体が多重特異性抗体もしくは二重特異性抗体であることを可能にする変異のような、本発明の変異以外の変異を有する抗体であってもよい。「天然抗体」という用語は、遺伝学的に導入された変異を含まない抗体を意味する。従って、天然に存在する修飾、例えば、異なるアロタイプを含む抗体は、本発明の意味において「天然抗体」として理解されるべきであり、従って、親抗体として理解されてよい。そのような抗体は、本発明による少なくとも2個の置換の鋳型として役立ち、従って、本発明の抗体を提供することができる。本発明の変異以外の置換を含む親抗体の例は、IgG4様CH3領域を含む2種の抗体の分子の半分の交換を促進し、従って、凝集物が同時に形成されることなく、二重特異性抗体が形成されるよう、還元条件を利用する、WO2011/131746(Genmab)に記載されたような二重特異性抗体である。親抗体の他の例には、異種二量体二重特異性抗体のような二重特異性抗体:トリオマブ(Fresenius);二重特異性のIgG1およびIgG2(Rinat neurosciences Corporation);FcΔAdp(Regeneron);ノブ・イントゥ・ホール(Genentech);静電的ステアリング(Amgen、Chugai、Oncomed);SEEDボディ(Merck);アジメトリック・スキャフォールド(Zymeworks);mAb-Fv(Xencor);およびLUZ-Y(Genentech)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。他の例示的な親抗体フォーマットには、非限定的に、野生型抗体、完全長抗体、もしくはFc含有抗体断片、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはそれらのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0211】
本明細書中に記載された本発明の任意の態様が、下記の多重特異性抗体の局面において使用され得ることが、理解されるべきである。従って、一つの態様において、本発明のバリアントは、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体より選択される抗体である。具体的な態様において、二重特異性抗体は、WO 2011/131746に記載されたフォーマットを有する。本発明の二重特異性抗体は、具体的なフォーマットに限定されず、本明細書中に記載されたもののいずれかであり得る。
【0212】
別の局面において、本発明は、免疫グロブリンの第1の重鎖および第1の抗原結合領域、ならびに免疫グロブリンの第2の重鎖および第2の抗原結合領域を含む第2のポリペプチドまたは抗体を含む、二重特異性のポリペプチドまたは抗体であるポリペプチドまたは抗体に関し、ここで、第1および第2の抗原結合領域は、同一のまたは異なる抗原の異なるエピトープに結合し、第1および/または第2の重鎖は、
(a)S440における置換がS440YまたはS440Wであることを条件として、E430、E345、およびS440に対応する群より選択される位置における置換、
(b)G236、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409、T366、L368、K370、D399、F405、およびY407からなる群より選択される位置におけるさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405、T366、L368、K370、D399、Y407、およびK409からなる群より選択される位置におけるさらなる置換を含み、第1のポリペプチドのさらなる変異は、第2のポリペプチドのさらなる変異と異なる。
【0213】
一つの局面において、本発明は、第1の重鎖および第1の抗原結合領域、第2の重鎖および第2の抗原結合領域を含む、ヒトIgGのFc領域を含むポリペプチドまたは抗体を提供し、ここで、第1および第2の重鎖は、(a)S440における置換がS440YまたはS440Wであることを条件として、E430、E345、およびS440からなる群より選択される位置における置換、ならびに(b)G236、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換、ならびに(c)位置F405またはK409におけるさらなる置換を含み;さらなる置換は、第1の重鎖と第2の重鎖とで異なり、従って、第1の重鎖が位置F405における置換を有する場合、第2の重鎖はK409における置換を有し、その逆も同様である。
【0214】
(c)さらなる変異が、第1および第2の重鎖において同一の位置に位置しないため、第1の重鎖および第2の重鎖が同一でない態様が、本明細書中に提供される。
【0215】
本明細書中に記載された本発明の任意の態様が、下記の多重特異性抗体の局面において使用され得ることが理解されるべきである。従って、一つの態様において、本発明のバリアントは、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体より選択される抗体である。具体的な態様において、二重特異性抗体は、WO 2011/131746に記載されたフォーマットを有する。
【0216】
本発明の一つの具体的な態様において、第1の重鎖は、K409RのようなK409に対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405LのようなF405に対応するさらなる置換を含む。
【0217】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)位置E430に対応する置換、
(b)G236、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0218】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)位置E345に対応する置換、
(b)G236、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0219】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2のFc重鎖は、
(a)S440YまたはS440Wに対応する置換、
(b)G236、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される1個または複数個の位置における置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0220】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2のFc重鎖は、
(a)E430Gに対応する置換、
(b)K326W、E333Sに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0221】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2のFc重鎖は、
(a)E430Gに対応する置換、
(b)K326W、E333Tに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0222】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2のFc領域は、
(a)E430Gに対応する置換、
(b)K326A、E333Aに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0223】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E430Gに対応する置換、
(b)K333A、P396Lに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0224】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E430Gに対応する置換、
(b)K326A、E333A、P396Lに対応する3個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0225】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E430Gに対応する置換、
(b)K326A、E333T、P396Lに対応する3個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0226】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Kに対応する置換、
(b)K326W、E333Sに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0227】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Kに対応する置換、
(b)K326W、E333Tに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0228】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Kに対応する置換、
(b)K326A、E333Aに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0229】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Kに対応する置換、
(b)K333A、P396Lに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0230】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Kに対応する置換、
(b)K326A、E333A、P396Lに対応する3個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0231】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Kに対応する置換、
(b)K326A、E333T、P396Lに対応する3個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0232】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Rに対応する置換、
(b)K326W、E333Sに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0233】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Rに対応する置換、
(b)K326W、E333Tに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0234】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Rに対応する置換、
(b)K326A、E333Aに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0235】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Rに対応する置換、
(b)K333A、P396Lに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0236】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)E345Rに対応する置換、
(b)K326A、E333A、P396Lに対応する3個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0237】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)S440Yに対応する置換、
(b)K326W、E333Sに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0238】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)S440Yに対応する置換、
(b)K326W、E333Tに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0239】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)S440Yに対応する置換、
(b)K326A、E333Aに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み、第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0240】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)S440Yに対応する置換、
(b)K333A、P396Lに対応する2個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0241】
本発明の一つの態様において、第1および/または第2の重鎖は、
(a)S440Yに対応する置換、
(b)K326A、E333A、P396Lに対応する3個の置換
を含み、
(c)第1の重鎖は、K409Rに対応するさらなる置換を含み;第2の重鎖は、F405Lに対応するさらなる置換を含む。
【0242】
標的および使用の方法
本発明によるポリペプチドまたは抗体は、シグナル伝達経路を活性化する標的に結合することができる。一つの態様において、標的は、シグナル伝達経路を活性化し、阻害し、モジュレートし、かつ/または制御する標的である。本発明による標的として特に適当であり得る標的の例は、細胞表面受容体およびリガンドである。
【0243】
細胞表面受容体には、例えば、造血因子受容体ファミリー、サイトカイン受容体ファミリー、チロシンキナーゼ受容体ファミリー、セリン/トレオニンキナーゼ受容体ファミリー、TNF受容体ファミリー、Gタンパク質共役受容体ファミリー、GPIアンカー受容体ファミリー、チロシンホスファターゼ受容体ファミリー、接着因子ファミリー、およびホルモン受容体ファミリーのような受容体ファミリーに属する受容体が含まれる。これらの受容体ファミリーに属する受容体およびそれらの特徴に関する様々な参照は、入手可能であり、例えば、Cooke B A.,King R J B.,van der Molen H J.ed.New Comprehensive Biochemistry Vol.18B "Hormones and their Actions Part II"pp.1-46(1988)Elsevier Science Publishers BV.,New York,USA;Patthy L.(1990)Cell,61:13-14;Ullrich A.,et al.(1990)Cell,61:203-212;Massagul J.(1992)Cell,69:1067-1070;Miyajima A.,et al.(1992)Annu.Re(v)Immunol.,10:295-331;Taga T.and Kishimoto T.(1992)FASEB J.,7:3387-3396;Fantl W I.,et al.(1993)Annu.Rev.Biochem.,62:453-481;Smith C A.,et al.(1994)Cell,76:959-962;Flower D R.(1999)Biochim.Biophys.Acta,1422:207-234;およびM.Miyasaka ed.,Cell Technology,supplementary volume,Handbook series,"Handbook for Adhesion Factors"(1994)(Shujunsha,Tokyo,Japan)を含む。
【0244】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFR-SF)またはGタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーに結合する抗原結合領域を含む。
【0245】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、細胞表面受容体に結合し、細胞表面受容体には、例えば、ホルモン受容体およびサイトカイン受容体が含まれる。例示的なサイトカイン受容体には、例えば、造血因子受容体、リンホカイン受容体、増殖因子受容体、分化調節因子受容体等が含まれる。サイトカイン受容体の例は、エリスロポエチン(EPO)受容体、トロンボポエチン(TPO)受容体、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)受容体、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)受容体、腫瘍壊死因子(TNF)受容体、インターロイキン1(IL-1)受容体、インターロイキン2(IL-2)受容体、インターロイキン3(IL-3)受容体、インターロイキン4(IL-4)受容体、インターロイキン5(IL-5)受容体、インターロイキン6(IL-6)受容体、インターロイキン7(IL-7)受容体、インターロイキン9(IL-9)受容体、インターロイキン10(IL-10)受容体、インターロイキン11(IL-11)受容体、インターロイキン12(IL-12)受容体、インターロイキン13(IL-13)受容体、インターロイキン15(IL-15)受容体、インターフェロンα(IFNα)受容体、インターフェロンβ(IFNβ)受容体、インターフェロンγ(IFNγ)受容体、成長ホルモン(GH)受容体、インスリン受容体、血液幹細胞増殖因子(SCF)受容体、血管上皮増殖因子(VEGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、神経成長因子(NGF)受容体、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)受容体、白血球遊走阻止因子(LIF)受容体、毛様体神経栄養因子(CNTF)受容体、オンコスタチンM(OSM)受容体、およびノッチファミリー受容体である。
【0246】
腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)は、細胞外システインリッチドメインを介して腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNFSF)のリガンドに結合する能力を特徴とする受容体の群である。TNF受容体は、細胞膜において三量体の複合体を形成する。TNFRSFには、以下の29種のタンパク質のリストが含まれる;TNFR1(Uniprot P19438)、FAS(Uniprot P25445)、DR3(Uniprot Q93038)、DR4(Uniprot O00220)、DR5(Uniprot O14763)、DR6(Uniprot O75509)、NGFR(Uniprot P08138)、EDAR(Uniprot Q9UNE0)、DcR1(Uniprot O14798)、DcR2(Uniprot Q9UBN6)、DcR3(Uniprot O95407)、OPG(Uniprot O00300)、TROY(Uniprot Q9NS68)、XEDAR(Uniprot Q9HAV5)、LTbR(Uniprot P36941)、HVEM(Uniprot Q92956)、TWEAKR(Uniprot Q9NP84)、CD120b(Uniprot P20333)、OX40(Uniprot P43489)、CD40(Uniprot P25942)、CD27(Uniprot P26842)、CD30(Uniprot P28908)、4-1BB(Uniprot Q07011)、RANK(Uniprot Q9Y6Q6)、TACI(Uniprot O14836)、BLySR(Uniprot Q96RJ3)、BCMA(Uniprot Q02223)、GITR(Uniprot Q9Y5U5)、RELT(Uniprot Q969Z4)。
【0247】
FAS、DR4、DR5、TNFR1、DR6、DR3、EDAR、およびNGFRのようないくつかのTNFRSFは、アポトーシスに関与しており、細胞内デスドメインを含有している。DcR1、DcR2、DcR3、OPG、TROY、XEDAR、LTbR、HVEM、TWEAKR、CD120b、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、RELTのように、増殖、生存、および分化のような他のシグナル伝達経路に関与しているTNFRSFもある。TNF受容体は、哺乳動物の多様な組織、具体的には、白血球に発現している。
【0248】
本発明の一つの態様において、抗原結合領域は、FAS、DR4、DR5、TNFR1、DR6、DR3、EDAR、NGFR、OX40、CD40、CD30、CD27、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、RELT、およびGITRからなる群より選択されるTNFR-SFのメンバーに結合する。
【0249】
本発明の一つの態様において、抗原結合領域は、TNFR-SFのメンバーに結合する。本発明の一つの態様において、抗原結合領域は、細胞内デスドメインを含まないTNFR-SFのメンバーに結合する。本発明の一つの態様において、TNFR-SFは、OX40、CD40、CD30、CD27、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、RELT、およびGITRの群より選択される。本発明の一つの態様において、TNFR-SFは、FAS、DR4、DR4、TNFR1、DR6、DR3、EDAR、およびNGFRの群より選択される。
【0250】
本発明の一つの態様において、抗体は、OX40に結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326WおよびE333Sの置換
を含む。
【0251】
本発明の一つの態様において、抗体は、CD40に結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326WおよびE333Sの置換
を含む。
【0252】
本発明の一つの態様において、抗体は、CD137に結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326WおよびE333Sの置換
を含む。
【0253】
本発明の一つの態様において、抗体は、GITRに結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326WおよびE333Sの置換
を含む。
【0254】
本発明の一つの態様において、抗体は、GITRに結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326WおよびE333Sの置換
を含む。
【0255】
本発明の一つの態様において、抗体は、GITRに結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG2 Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326WおよびE333Sの置換
を含む。
【0256】
本発明によるポリペプチドまたは抗体は、任意の標的に結合してよく、本発明によるそのような標的または抗原の例は、以下の通りである:TNFR1、FAS、DR3、DR4、DR5、DR6、NGFR、EDAR、DcR1、DcR2、DcR3、OPG、TROY、XEDAR、LTbR、HVEM、TWEAKR、CD120b、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、RELT。
【0257】
本発明の一つの態様において、抗体は、FASに結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326WおよびE333Sの置換
を含む。
【0258】
本発明の一つの態様において、抗体は、DR5に結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326AおよびE333Aの置換
を含む。
【0259】
本発明の一つの態様において、抗体は、DR5に結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326AおよびE333Tの置換
を含む。
【0260】
本発明の一つの態様において、抗体は、DR5に結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、および
(b)K326A置換
を含む。
【0261】
本発明の一つの態様において、抗体は、DR5に結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、および
(b)E333A置換
を含む。
【0262】
本発明の一つの態様において、抗体は、DR5に結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326WおよびE333Sの置換
を含む。
【0263】
本発明の一つの態様において、抗体は、CD20に結合する抗原結合領域を含み、ここで、IgG1 Fc領域は、
(a)E430G置換、ならびに
(b)K326WおよびE333Sの置換
を含む。
【0264】
本発明の一つの態様において、抗原結合領域は、腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNF-SF)のメンバーに結合する。
【0265】
本発明の一つの態様において、抗原結合領域は、リンホトキシンβ(TNF-C)、OX40L、CD154、FasL、CD70、CD153、RANKL、APRIL、およびBAFFからなる群より選択されるTNF-SFのメンバーに結合する。
【0266】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、細胞表面受容体に結合し、細胞表面受容体には、例えば、ホルモン受容体およびサイトカイン受容体が含まれる。例示的なサイトカイン受容体には、例えば、造血因子受容体、リンホカイン受容体、増殖因子受容体、分化調節因子受容体等が含まれる。サイトカイン受容体の例は、エリスロポエチン(EPO)受容体、トロンボポエチン(TPO)受容体、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)受容体、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)受容体、腫瘍壊死因子(TNF)受容体、インターロイキン1(IL-1)受容体、インターロイキン2(IL-2)受容体、インターロイキン3(IL-3)受容体、インターロイキン4(IL-4)受容体、インターロイキン5(IL-5)受容体、インターロイキン6(IL-6)受容体、インターロイキン7(IL-7)受容体、インターロイキン9(IL-9)受容体、インターロイキン10(IL-10)受容体、インターロイキン11(IL-11)受容体、インターロイキン12(IL-12)受容体、インターロイキン13(IL-13)受容体、インターロイキン15(IL-15)受容体、インターフェロンα(IFNα)受容体、インターフェロンβ(IFNβ)受容体、インターフェロンγ(IFNγ)受容体、成長ホルモン(GH)受容体、インスリン受容体、血液幹細胞増殖因子(SCF)受容体、血管上皮増殖因子(VEGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、神経成長因子(NGF)受容体、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)受容体、白血球遊走阻止因子(LIF)受容体、毛様体神経栄養因子(CNTF)受容体、オンコスタチンM(OSM)受容体、およびノッチファミリー受容体である。
【0267】
本発明の一つの態様において、抗原結合領域は、CTLA-4、PD1、TIM-3、LAG-3、ICOS、CD28、およびPDL-1からなる群より選択される細胞表面受容体に結合する。
【0268】
本発明によるポリペプチドまたは抗体は、任意の標的に結合してよく、そのような標的または抗原の例は、前記の通りである。
【0269】
ポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法
ポリペプチドまたは抗体に関する下記の態様は、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体をさし、ポリペプチドまたは抗体は、免疫グロブリンの第1のFc領域および第1の抗原結合領域、ならびに免疫グロブリンの第2のFc領域および第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドを有する多重特異性のポリペプチドまたは抗体であってもよいことが理解されるべきである。
【0270】
一つの局面において、本発明は、Fc-Fc増強置換およびC1q結合置換を導入することによって、ポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関する。
【0271】
一つの局面において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における少なくとも1個の置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を導入する工程、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0272】
(a)位置E430、E345、またはS440のうちの1個における本発明による少なくとも1個の置換の導入は、ポリペプチドまたは抗体の増強されたFc-Fc相互作用の効果を導入する。(b)位置G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396のうちの1個における本発明による1個または複数個の置換の導入は、ポリペプチドまたは抗体に増加したアゴニスト活性の効果を導入する。
【0273】
別の局面において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、Fc領域は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における少なくとも1個の置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を含み、方法は、(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0274】
一つの態様において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、Fc領域は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における少なくとも1個の置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を含み、方法は、(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における少なくとも2個の置換を導入する工程を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0275】
本発明によるポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性の増加とは、親ポリペプチドまたは親抗体と比較した、ポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性の増加として理解されるべきであるが、あるいは、ポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性の増加とは、ポリペプチドまたは抗体が、Fc-Fc増強変異を含むがC1q結合変異を含まないポリペプチドまたは抗体と比較される時をさしてもよい。従って、ポリペプチドまたは抗体は、同一の抗原結合領域とFc-Fc増強置換を含まずC1q結合置換を含まないFc領域とを有する親ポリペプチドまたは親抗体と比較されてもよいし、あるいは、ポリペプチドまたは抗体は、同一の抗原結合領域とFc-Fc増強置換を含むがC1q結合置換は含まないFc領域とを有するポリペプチドまたは抗体と比較されてもよいことが、理解されるべきである。
【0276】
本発明の一つの態様において、位置G236における置換がG236F、G236R、G236Yでないことを条件として、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換。
【0277】
本発明の一つの態様において、位置S267における置換がS267H、S267I、S267K、S267Gでないことを条件として、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換。
【0278】
本発明の一つの態様において、位置H268における置換がH268K、H268D、H268Eでないことを条件として、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換。
【0279】
本発明の一つの態様において、少なくとも1個の置換は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440W、およびS440Yからなる群より選択される。置換がFc-Fc相互作用を増強する態様が、本明細書中に提供される。
【0280】
本発明の一つの態様において、少なくとも1個の置換は、E430G、E430S、E430F、E430Tからなる群より選択される。
【0281】
本発明の一つの態様において、少なくとも1個の置換は、E345K、E345Q、E345R、E345Yからなる群より選択される。
【0282】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G置換を少なくとも有する。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K置換を少なくとも有する。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R置換を少なくとも有する。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y置換を少なくとも有する。
【0283】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE430G、E430S、E430F、およびE430Tからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0284】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE430G、E430S、E430F、およびE430Tからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0285】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE430G置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0286】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE430G置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0287】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE430G置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、
(i)K326WおよびE333S、
(ii)K326WおよびE333T、
(iii)K326AおよびE333A、
(iv)K326A、E333A、およびP396L、
(v)K326W、
(vi)E333S、ならびに
(vii)E333T
からなる群のうちの1個からの置換を導入する工程を含む。
【0288】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345K、E345Q、E345R、およびE345Yからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0289】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345K、E345Q、E345R、およびE345Yからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0290】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345K置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0291】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345K置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0292】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345K置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、
(i)K326WおよびE333S、
(ii)K326WおよびE333T、
(iii)K326AおよびE333A、
(iv)K326A、E333A、およびP396L、
(v)K326W、
(vi)E333S、ならびに
(vii)E333T
からなる群のうちの1個からの置換を導入する工程を含む。
【0293】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345R置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0294】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345R置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0295】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345R置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、
(i)K326WおよびE333S、
(ii)K326WおよびE333T、
(iii)K326AおよびE333A、
(iv)K326A、E333A、およびP396L、
(v)K326W、
(vi)E333S、ならびに
(vii)E333T
からなる群のうちの1個からの置換を導入する工程を含む。
【0296】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がS440YおよびS440Wからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0297】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がS440WおよびS440Wからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0298】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がS440Y置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を含む。
【0299】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がS440Y置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0300】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がS440Y置換を含むポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、
(i)K326WおよびE333S、
(ii)K326WおよびE333T、
(iii)K326AおよびE333A、
(iv)K326A、E333A、およびP396L、
(v)K326W、
(vi)E333S、ならびに
(vii)E333T
からなる群のうちの1個からの置換を導入する工程を含む。
【0301】
細胞表面抗原結合時のポリペプチドまたは抗体の増加したアゴニスト特性を可能にする態様が、本明細書中に提供される。一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、増加したアゴニスト特性を含む。一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖を含むFc領域を含み、ここで、前掲の置換のうちの1個が、第1および/または第2の重鎖に存在してよい。
【0302】
本発明の一つの態様において、K326、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換。本発明の一つの態様において、K326、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換、例えば、2個または3個の置換。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置K326およびE333における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置K326およびP396における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置P396およびE333における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置K326、E333、およびP396における置換を含む。
【0303】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A、K326W、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333S置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333A置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、P396L置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326WおよびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326WおよびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326WおよびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326AおよびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326AおよびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326AおよびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333AおよびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333SおよびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326S、E333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W、E333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W、E333S、およびP396Lの置換を含む。
【0304】
本発明の一つの態様において、S267、H268、およびS324からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換。本発明の一つの態様において、S267、H268、およびS324からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換、例えば、2個または3個の置換。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置S267およびH268における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置S267およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置H268およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置S267、H268、およびS324における置換を含む。
【0305】
本発明の一つの態様において、S267E、H268F、およびS324Tからなる群より選択される位置における1個または複数個の置換。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267E、H268F、およびS324Tからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267E置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、H268F置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S324T置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267EおよびH268Fの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267EおよびS324Tの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、H268FおよびS324Tの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267E、H268F、およびS324Tの置換を含む。
【0306】
一つの態様において、本発明は、Fc領域が1個または複数個のさらなる置換を含む方法に関する。
【0307】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がEUナンバリングによるヒトIgG1の位置S440またはK439におけるさらなる置換を含む方法に関する。本発明の一つの態様において、Fc領域は、Fc-Fc増強置換がS440にある場合、さらなる置換が位置S440にないことを条件として、位置S440またはK439のうちの1個に対応するさらなる置換を含む。本発明によるFc-Fc増強置換およびC1q結合置換ならびにS440Kのような位置S440におけるさらなる置換を含むポリペプチドまたは抗体は、S440Kのような位置S440における変異を含むポリペプチドまたは抗体とオリゴマーを形成しない。本発明によるFc-Fc増強置換およびC1q結合置換ならびにK439Eのような位置K439におけるさらなる置換を含むポリペプチドまたは抗体は、K439Eのような位置K439における変異を含むポリペプチドまたは抗体とオリゴマーを形成しない。第1のポリペプチドまたは抗体がK439E置換を含み、第2のポリペプチドまたは抗体がS440K置換を含む、ポリペプチドまたは抗体の間のオリゴマーの形成を可能にする方法が、本明細書中に提供される。このようにして、例えば、六量体のようなオリゴマーが、第1および第2のポリペプチドのある種のパターンで形成されることを強制することができる。これは、ポリペプチドが異なる標的またはエピトープに結合し、これらの異なる標的またはエピトープの組み合わせにおいてオリゴマーが形成されるべきである方法において、重要であり得る。
【0308】
一つの態様において、本発明は、さらなる置換がS440KまたはK439Eより選択される方法に関する。
【0309】
一つの態様において、本発明は、ポリペプチドまたは抗体と同一である親ポリペプチドまたは親抗体、あるいは、同一のFc-Fc増強置換を含むがC1q結合置換は含まないポリペプチドまたは抗体と比較して、アゴニスト活性が少なくとも20%だけ増加する、アゴニスト活性を増加させる方法に関する。本発明の別の態様において、ポリペプチドまたは抗体は、親ポリペプチドまたは親抗体、あるいは同一のFc-Fc増強置換を含むがC1q結合置換は含まないポリペプチドまたは抗体と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%だけ増加したアゴニスト活性を有する。
【0310】
CDC活性を増加させる方法
一つの局面において、本発明は、Fc-Fc増強置換およびC1q結合置換を導入することによって、ポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関する。
【0311】
一つの局面において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における少なくとも1個の置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を導入する工程、ならびに(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0312】
(a)位置E430、E345、またはS440のうちの1個における本発明による少なくとも1個の置換の導入は、ポリペプチドまたは抗体の増強されたFc-Fc相互作用の効果を導入する。(b)位置G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396のうちの1個における本発明による1個または複数個の置換の導入は、ポリペプチドまたは抗体に増加したCDC活性の効果を導入する。
【0313】
別の局面において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、Fc領域は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における少なくとも1個の置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を含み、方法は、(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0314】
一つの態様において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、Fc領域は、(a)E430、E345からなる群より選択される位置における少なくとも1個の置換、またはS440YもしくはS440Wの置換を含み、方法は、(b)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における少なくとも2個の置換を導入する工程を含み、位置は、EUナンバリングによるヒトIgG1に対応する。
【0315】
本発明によるポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性の増加とは、親ポリペプチドまたは親抗体と比較した、ポリペプチドまたは抗体のCDC活性の増加として理解されるべきであるが、あるいは、ポリペプチドまたは抗体のアゴニスト活性の増加は、ポリペプチドまたは抗体が、Fc-Fc増強変異を含むがC1q結合変異は含まないポリペプチドまたは抗体と比較される時をさすこともできる。従って、ポリペプチドまたは抗体は、同一の抗原結合領域とFc-Fc増強置換を含まずC1q結合置換を含まないFc領域とを有する親ポリペプチドまたは親抗体と比較されてもよいし、あるいは、ポリペプチドまたは抗体は、同一の抗原結合領域とFc-Fc増強置換を含むがC1q結合置換は含まないFc領域とを有するポリペプチドまたは抗体と比較されてもよいことが理解されるべきである。
【0316】
本発明の一つの態様において、位置G236における置換がG236F、G236R、G236Yでないことを条件として、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換。
【0317】
本発明の一つの態様において、位置S267における置換がS267H、S267I、S267K、S267Gでないことを条件として、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換。
【0318】
本発明の一つの態様において、位置H268における置換がH268K、H268D、H268Eでないことを条件として、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換。
【0319】
本発明の一つの態様において、少なくとも1個の置換は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440W、およびS440Yからなる群より選択される。Fc-Fc相互作用を増強する置換の態様が、本明細書中に提供される。
【0320】
本発明の一つの態様において、少なくとも1個の置換は、E430G、E430S、E430F、E430Tからなる群より選択される。
【0321】
本発明の一つの態様において、少なくとも1個の置換は、E345K、E345Q、E345R、E345Yからなる群より選択される。
【0322】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E430G置換を少なくとも有する。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345K置換を少なくとも有する。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E345R置換を少なくとも有する。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S440Y置換を少なくとも有する。
【0323】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE430G、E430S、E430F、およびE430Tからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0324】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE430G、E430S、E430F、およびE430Tからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0325】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE430G置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0326】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE430G置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0327】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE430G置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、
(i)K326WおよびE333S、
(ii)K326WおよびE333T、
(iii)K326AおよびE333A、
(iv)K326A、E333A、およびP396L、
(v)K326W、
(vi)E333S、ならびに
(vii)E333T
からなる群のうちの1個からの置換を導入する工程を含む。
【0328】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345K、E345Q、E345R、およびE345Yからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0329】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345K、E345Q、E345R、およびE345Yからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0330】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345K置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0331】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345K置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0332】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345K置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、
(i)K326WおよびE333S、
(ii)K326WおよびE333T、
(iii)K326AおよびE333A、
(iv)K326A、E333A、およびP396L、
(v)K326W、
(vi)E333S、ならびに
(vii)E333T
からなる群のうちの1個からの置換を導入する工程を含む。
【0333】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345R置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0334】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345R置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0335】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がE345R置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、
(i)K326WおよびE333S、
(ii)K326WおよびE333T、
(iii)K326AおよびE333A、
(iv)K326A、E333A、およびP396L、
(v)K326W、
(vi)E333S、ならびに
(vii)E333T
からなる群のうちの1個からの置換を導入する工程を含む。
【0336】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がS440YおよびS440Wからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0337】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がS440WおよびS440Wからなる群より選択される少なくとも1個の置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0338】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がS440Y置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396の群より選択される位置における1個または複数個の置換を含む。
【0339】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がS440Y置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、K326A、K326W、E333A、E333S、E333T、およびP396Lの群より選択される1個または複数個の置換を導入する工程を含む。
【0340】
一つの態様において、本発明は、Fc領域がS440Y置換を含むポリペプチドまたは抗体のCDC活性を増加させる方法に関し、ここで、方法は、
(i)K326WおよびE333S、
(ii)K326WおよびE333T、
(iii)K326AおよびE333A、
(iv)K326A、E333A、およびP396L、
(v)K326W、
(vi)E333S、ならびに
(vii)E333T
からなる群のうちの1個からの置換を導入する工程を含む。
【0341】
細胞表面抗原結合時のポリペプチドまたは抗体の増加したCDC活性を可能にする態様が、本明細書中に提供される。一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、増加したCDC活性を含む。一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖を含むFc領域を含み、前掲の置換のうちの1個が第1および/または第2の重鎖に存在してよい。
【0342】
本発明の一つの態様において、K326、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換。本発明の一つの態様において、K326、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換、例えば、2個または3個の置換。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置K326およびE333における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置K326およびP396における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置P396およびE333における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置K326、E333、およびP396における置換を含む。
【0343】
本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A、K326W、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333S置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333A置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、P396L置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326WおよびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326WおよびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326WおよびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326AおよびE333Aの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326AおよびE333Sの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326AおよびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333AおよびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、E333SおよびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326A、E333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326S、E333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W、E333A、およびP396Lの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、K326W、E333S、およびP396Lの置換を含む。
【0344】
本発明の一つの態様において、S267、H268、およびS324からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換。本発明の一つの態様において、S267、H268、およびS324からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換、例えば、2個または3個の置換。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置S267およびH268における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置S267およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置H268およびS324における置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、位置S267、H268、およびS324における置換を含む。
【0345】
本発明の一つの態様において、S267E、H268F、およびS324Tからなる群より選択される位置における1個または複数個の置換。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267E、H268F、およびS324Tからなる群より選択される1個または複数個、例えば、2個または3個の置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267E置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、H268F置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S324T置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267EおよびH268Fの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267EおよびS324Tの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、H268FおよびS324Tの置換を含む。本発明の一つの態様において、ポリペプチドまたは抗体は、S267E、H268F、およびS324Tの置換を含む。
【0346】
組成物
ポリペプチドまたは抗体に関する下記の態様は、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体をさし、ポリペプチドまたは抗体は、免疫グロブリンの第1のFc領域および第1の抗原結合領域、ならびに免疫グロブリンの第2のFc領域および第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性のポリペプチドまたは抗体であってもよいことが理解されるべきである。
【0347】
本発明は、本明細書中に記載されたポリペプチドまたは抗体およびそれらの変動を含む組成物にも関する。具体的な局面および態様は、以下に記載されるであろう。さらに、そのようなポリペプチドまたは抗体は、本明細書中に記載された任意の方法によって入手され得る。
【0348】
一つの局面において、本発明は、本明細書中に記載された少なくとも1種のポリペプチドまたは抗体を含む組成物に関する。
【0349】
本発明の一つの態様において、組成物は、本明細書中に記載されたいずれかの局面または態様による1種または複数種のポリペプチドまたは抗体を含む。
【0350】
本発明の一つの態様において、組成物は、本明細書中の任意の局面または態様において記載された第1のポリペプチドまたは抗体および第2のポリペプチドまたは抗体を含む。
【0351】
本発明の一つの局面において、組成物は、第1および第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のポリペプチドまたは抗体は、
(i)Fc-Fc増強変異である少なくとも1個の置換;および
(ii)C1q結合置換である1個または複数個の置換;および
(iii)同一のさらなる変異を有するFc領域間のオリゴマー化を防止するさらなる変異
を含むFc領域を含み、第1および第2のポリペプチドまたは抗体は、同一のさらなる変異を含まない。
【0352】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1のポリペプチドまたは抗体および第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のポリペプチドまたは抗体は、(i)E430、E345、またはS440YもしくはS440Wの置換からなる群より選択される少なくとも1個または複数個の置換、ならびに(ii)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換、ならびに(iii)さらなる変異を含み、第1および第2のポリペプチドまたは抗体は、同一のさらなる変異を含まない。従って、組成物は、第1のFc領域を含む第1のポリペプチドまたは抗体、および第2のFc領域を含む第2のポリペプチドまたは抗体を含む。
【0353】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E430、E345、またはS440YもしくはS440Wの置換からなる群より選択される少なくとも1個または複数個の置換;ならびに
(ii)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換;ならびに
(iii)さらなる置換がS440にある場合、(i)による置換がS440になく、第1および第2のFc領域が(iii)によるさらなる置換を同一のアミノ酸位置に含まないことを条件として、位置K439またはS440におけるさらなる置換
を含み、
(iv)置換は、EUナンバリングによるヒトIgG1におけるアミノ酸位置に対応する。
【0354】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、(i)第1の変異、(ii)第2の変異、(iii)さらなる変異を含み、変異は、EUナンバリングによってヒトIgG1における以下のアミノ酸位置:
(i)E430、E345、またはS440YもしくはS440Wの置換からなる群より選択される少なくとも1個または複数個の置換;ならびに
(ii)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換;ならびに
(iii)さらなる置換が位置S440にある場合には、第1の置換がS440にないことを条件として、第1のFc領域における位置K439におけるさらなる置換および第2のFc領域における位置S440におけるさらなる置換、またはその逆
に対応し;
(iv)置換は、EUナンバリングによるヒトIgG1におけるアミノ酸位置に対応する。
【0355】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E430、E345、またはS440YもしくはS440Wの置換からなる群より選択される少なくとも1個または複数個の置換;ならびに
(ii)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換
を含み、
(iv)置換は、EUナンバリングによるヒトIgG1におけるアミノ酸位置に対応する。
【0356】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E430、E345、またはS440YもしくはS440Wの置換からなる群より選択される1個または複数個の置換;ならびに
(ii)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるS440K置換および第2のFc領域におけるさらなるK439E置換
を含み、
(iv)置換は、EUナンバリングによるヒトIgG1におけるアミノ酸位置に対応する。
【0357】
第1および第2のポリペプチドもしくは抗体の両方が、増加したアゴニスト活性および/もしくはCDC活性を有する態様、または第1のポリペプチドもしくは第2のポリペプチドのみが、増加したアゴニスト活性および/もしくはCDC活性を有する態様が、本明細書中に提供される。
【0358】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E430に対応するアミノ酸位置における置換、ならびに
(i)(ii)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換;ならびに
(ii)(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0359】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E345に対応するアミノ酸位置における置換、ならびに
(ii)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0360】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E430G、ならびに
(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、P396L、S267E、H268F、S324T、G263A、S324E、I332E、およびS239Dからなる群より選択される1個または複数個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0361】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E430G、ならびに
(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0362】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E430G、ならびに
(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される少なくとも2個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0363】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域および第1のFc領域を含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域および第2のFc領域を含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E430G置換、ならびに
(ii)K326WおよびE333Sの置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0364】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E345K、ならびに
(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、P396L、S267E、H268F、S324T、G263A、S324E、I332E、およびS239Dからなる群より選択される1個または複数個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0365】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E345K、ならびに
(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0366】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E345K、ならびに
(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される少なくとも2個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0367】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E345K置換、ならびに
(ii)K326WおよびE333Sの置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0368】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E345R、ならびに
(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、P396L、S267E、H268F、S324T、G263A、S324E、I332E、およびS239Dからなる群より選択される1個または複数個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0369】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E345R、ならびに
(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0370】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E345R、ならびに
(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される少なくとも2個の置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0371】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E345R置換、ならびに
(ii)K326WおよびE333Sの置換;ならびに
(iii)第1のFc領域におけるさらなるK439E置換および第2のFc領域におけるさらなるS440K置換、またはその逆
を含む。
【0372】
本発明の別の態様において、組成物は、第1および第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のポリペプチドまたは抗体は、
(i)Fc-Fc増強変異である少なくとも1個の置換;
(ii)同一のさらなる変異を有するFc領域の間のオリゴマー化を防止するさらなる変異
を含むFc領域を含み、第1および第2のポリペプチドまたは抗体は、同一のさらなる変異を含まず、
(iii)第1または第2のFc領域は、C1q結合置換である1個または複数個の置換を含む。従って、いくつかの態様において、第1または第2のポリペプチドまたは抗体のみが、Fcエフェクター機能を減少させる第2の変異を含む。
【0373】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1および第2のFc領域は、
(i)E430、E345からなる群より選択される位置における少なくとも1個または複数個の置換、またはS440YもしくはS440Wの置換、
(iii)さらなるK439EまたはS440Kの変異
を含み、第1および第2のFc領域は同一のさらなる変異を含まず、少なくとも1個の置換がS440YもしくはS440Wである場合には、さらなる変異はS440Kでなく;
(ii)第1または第2のFc領域のいずれかが、G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換を含む。
【0374】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1のFc領域は、(i)E430、E345、またはS440YもしくはS440Wの置換からなる群より選択される少なくとも1個または複数個の置換、ならびに(ii)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換、ならびに(iii)さらなるK439E変異を含み;第2のFc領域は、(i)E430、E345、またはS440YもしくはS440Wの置換からなる群より選択される少なくとも1個または複数個の置換、ならびにさらなるS440K変異を含む。第1のポリペプチドまたは抗体のみが、増加したアゴニスト活性および/または増加したCDC活性を有する態様が、本明細書中に提供される。
【0375】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1のFc領域は、(i)E430、E345からなる群より選択される1個または複数個の置換、ならびに(ii)G236、S239、S267、H268、S324、K326、I332、E333、およびP396からなる群より選択される位置における1個または複数個の置換、ならびに(iii)さらなるS440K変異を含み;第2のFc領域は、(i)E430、E345、またはS440YもしくはS440Wの置換からなる群より選択される少なくとも1個または複数個の置換、ならびにさらなるK439E変異を含む。第1のポリペプチドまたは抗体のみが、増加したアゴニスト活性および/または増加したCDC活性を有する態様が、本明細書中に提供される。
【0376】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1のFc領域は、(i)E430G置換、ならびに(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個の置換、ならびに(iii)さらなるK439E置換を含み;第2のFc領域は、(i)E430G置換およびさらなるS440K置換を含む。本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1のFc領域は、(i)E430G置換、ならびに(ii)K326W、K326A、E333S、E333A、およびP396Lからなる群より選択される1個または複数個の置換、ならびに(iii)さらなるS440K置換を含み;第2のFc領域は、(i)E430G置換およびさらなるK439E置換を含む。
【0377】
本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1のFc領域は、(i)E430G置換、ならびに(ii)K326WおよびE333Sの置換、ならびに(iii)さらなるS440K置換を含み;第2のFc領域は、(i)E430G置換およびさらなるK439E置換を含む。本発明の一つの態様において、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、ここで、第1のFc領域は、(i)E430G置換、ならびに(ii)K326WおよびE333Sの置換、ならびに(iii)さらなるK439E置換を含み;第2のFc領域は、(i)E430G置換およびさらなるS440K置換を含む。
【0378】
本発明の一つの態様において、組成物は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFR-SF)またはGタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーに結合することができるポリペプチドまたは抗体を含む。
【0379】
本発明の一つの態様において、組成物は、TNFR1、FAS、DR3、DR4、DR5、DR6、NGFR、EDAR、DcR1、DcR2、DcR3、OPG、TROY、XEDAR、LTbR、HVEM、TWEAKR、CD120b、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、およびRELTからなる群より選択されるTNFR-SFのメンバーに結合することができるポリペプチドまたは抗体を含む。
【0380】
本発明の一態様では、組成物は、TNFR1、FAS、DR3、DR4、DR5、DR6、NGFR、およびEDARからなる群より選択される細胞内デスドメインを有するTNFR-SFのメンバーに対する結合能を有するポリペプチドまたは抗体を含む。
【0381】
本発明の一態様では、組成物は、DcR1、DcR2、DcR3、OPG、TROY、XEDAR、LTbR、HVEM、TWEAKR、CD120b、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、RELTからなる群より選択される細胞内デスドメインを有しないTNFR-SFのメンバーに対する結合能を有するポリペプチドまたは抗体を含む。
【0382】
本発明の一態様では、組成物は、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、およびRELTからなる免疫活性化因子の群に属するTNFR-SFのメンバーに対する結合能を有するポリペプチドまたは抗体を含む。
【0383】
本発明の一態様では、組成物はポリペプチドまたは抗体を含み、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドが、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、およびRELTからなる群より選択される細胞内デスドメインを有しない1つまたは複数のTNFR-SFのメンバー上の異なるエピトープに結合する。
【0384】
本発明の一態様では、組成物はポリペプチドまたは抗体を含み、第1のポリペプチドの、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、およびRELTからなる群より選択される細胞内デスドメインを有しない1つのTNFR-SFのメンバーに対する結合は、第2の抗体の、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、およびRELTからなる群より選択される細胞内デスドメインを有しない1つのTNFR-SFのメンバーに対する結合である結合をブロックしない。
【0385】
本発明の一態様では、第1のポリペプチドまたは抗体と第2のポリペプチドまたは抗体を含む組成物は、組成物中で1:49~49:1のモル比、例えば1:1のモル比、1:2のモル比、1:3のモル比、1:4のモル比、1:5のモル比、1:6のモル比、1:7のモル比、1:8のモル比、1:9のモル比、1:10のモル比、1:15のモル比、1:20のモル比、1:25のモル比、1:30のモル比、1:35のモル比、1:40のモル比、1:45のモル比、1:50のモル比、50:1のモル比、45:1のモル比、40:1のモル比、35:1のモル比、30:1のモル比、25:1のモル比、20:1のモル比、15:1のモル比、10:1のモル比、9:1のモル比、8:1のモル比、7:1のモル比、6:1のモル比、5:1のモル比、4:1のモル比、3:1のモル比、2:1のモル比で存在している。
【0386】
本発明の一態様では、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドおよび/または任意のさらなるポリペプチドを含む組成物は、組成物中で等モル比で存在している。
【0387】
本発明の一態様では、任意の局面または態様による組成物は、薬学的組成物である。
【0388】
治療用途
本発明の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、二重特異性抗体、または組成物は、医薬として、すなわち治療用途のために使用され得る。
【0389】
一局面において、本発明により、医薬としての使用のための、本明細書に開示の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、または組成物を提供する。
【0390】
別の局面において、本発明により、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染性疾患の処置における使用のための、本明細書に開示の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、または組成物を提供する。
【0391】
別の局面において、本発明は、有効量の本明細書に開示の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、または組成物を個体に投与する工程を含む、疾患を有する個体を処置する方法に関する。
【0392】
本発明の一態様では、疾患は、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、および感染性疾患の群から選択される。
【0393】
本発明の一態様では、本明細書に開示の任意の局面または態様による方法は、さらなる治療剤をさらに投与することに関する。
【0394】
本発明の一態様では、上記さらなる治療剤は、化学療法薬(非限定的にパクリタキセル、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、ペメトレキセドを含む)、キナーゼ阻害薬(非限定的にソラフェニブ、スニチニブ、もしくはエベロリムスを含む)、アポトーシス調節剤(非限定的に組換えヒトTRAILもしくはビリナパントを含む)、RAS阻害薬、プロテアソーム阻害薬(非限定的にボルテゾミブを含む)、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬(非限定的にボリノスタットを含む)、栄養補助食品、サイトカイン(非限定的にIFN-γ)、抗体または抗体模倣物(非限定的に抗EGFR、抗IGF-1R、抗VEGF、抗CD20、抗CD38、抗HER2、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA4、抗CD40、抗CD137、抗GITR抗体および抗体模倣物を含む)、抗体-薬物コンジュゲートからなる群より選択される1種または複数種の抗がん剤である。
【0395】
パーツキット(kit-of-parts)
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、免疫グロブリンの第1のFc領域と第1の抗原結合領域および免疫グロブリンの第2のFc領域と第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
【0396】
本発明はまた、本明細書に記載のポリペプチドまたは抗体を含む、治療において同時、別々、または逐次の使用のためのパーツキットに関する。さらに、かかるバリアントは、本明細書に記載の任意の方法に従って得ることができる。
【0397】
一局面において、本発明は、本明細書に記載の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、または組成物を含むパーツキットであって、ポリペプチド、抗体、または組成物が、1つまたは複数の容器内、例えばバイアル内に存在しているパーツキットに関する。
【0398】
本発明の一態様では、パーツキットは、治療において同時、別々、または逐次の使用のための、本明細書に記載の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、または組成物を含む。
【0399】
別の局面において、本発明は、診断方法における使用のための、本明細書に記載の態様のいずれかによるポリペプチド、抗体、組成物、またはパーツキットの使用に関する。
【0400】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の任意の態様によるポリペプチド、抗体、組成物、またはパーツキットを、ヒトまたは他の哺乳動物の身体の少なくとも一部分に投与する工程を含む、診断方法に関する。
【0401】
別の局面において、本発明は、ヒトまたは他の哺乳動物の身体の少なくとも一部分のイメージングにおける、本明細書に記載の態様のいずれかによるポリペプチド、抗体、組成物、またはパーツキットの使用に関する。
【0402】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の任意の態様によるバリアント、組成物、またはパーツキットを投与する工程を含む、ヒトまたは他の哺乳動物の身体の少なくとも一部分のイメージングのための方法に関する。
【0403】
さらなる使用
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、免疫グロブリンの第1のFc領域と第1の抗原結合領域および免疫グロブリンの第2のFc領域と第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
【0404】
さらなる一局面において、本発明は、医薬としての使用のための、特に、疾患または障害の処置用の医薬としての使用のための、上記の通りの本発明のポリペプチド、抗体に関する。かかる疾患および障害の例としては、非限定的に、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、感染性疾患、細菌、ウイルス、または真菌による感染が挙げられる。
【0405】
別の局面において、本発明は、疾患、例えばがんの処置のための、本明細書に記載のポリペプチド、抗体、二重特異性抗体、組成物、およびパーツキットに関する。
【0406】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載のバリアント、組成物、またはパーツキットの投与を含む、ヒト疾患の処置のための方法に関する。
【0407】
別の局面において、本発明は、バリアント、組成物、またはパーツキットの投与を含む、ヒトのがんの処置のための方法に関する。
【0408】
「処置」は、症状または疾患状態を緩和する、軽快させる、停止させる、または根絶する(治癒する)目的を伴う有効量の本発明の治療活性化合物の投与をいう。
【0409】
「有効量」または「治療有効量」は、必要な投薬量および期間で所望の治療結果が得られるのに有効な量をいう。抗体の治療有効量は、疾患の状態、個体の年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘起する抗体の能力などの要因に応じて異なり得る。また、治療有効量は、抗体または抗体の一部分の任意の毒性効果または有害な効果より治療有益性効果の方が勝る量である。
【0410】
投薬量
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、免疫グロブリンの第1のFc領域と第1の抗原結合領域および免疫グロブリンの第2のFc領域と第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
【0411】
抗体の効率的な投薬量および投薬量レジメンは、処置対象の疾患または病状に依存し、当業者によって決定され得る。本発明の抗体の治療有効量の例示的で非限定的な範囲は約0.1~100 mg/kg、例えば約0.1~50 mg/kg、例えば約0.1~20 mg/kg、例えば約0.1~10 mg/kg、例えば約0.5、例えば、約0.3、約1、約3、約5または約8 mg/kgである。
【0412】
また、本発明のポリペプチドまたは抗体を、併用療法で投与してもよい、すなわち、処置対象の疾患または病状に関連する他の治療剤と組み合わせてもよい。したがって、一態様では、抗体含有医薬は、1種または複数種のさらなる治療剤、例えば細胞傷害剤、化学療法剤、または血管新生抑制剤との併用のためのものである。かかる併用投与は同時であっても、別々であっても、逐次であってもよい。
【0413】
さらなる一態様では、本発明により、疾患、例えばがんを処置または予防するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明のバリアントまたは薬学的組成物を放射線療法および/または手術との併用で投与する工程を含む方法を提供する。
【0414】
調製方法
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、免疫グロブリンの第1のFc領域と第1の抗原結合領域および免疫グロブリンの第2のFc領域と第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
【0415】
本発明によりまた、上記の局面のいずれか1つによるバリアントをコードする単離された核酸およびベクター、ならびにバリアントをコードするベクターおよび発現系も提供する。抗体およびそのバリアントに好適な核酸構築物、ベクター、および発現系は当技術分野において公知であり、本実施例に記載している。バリアントが重鎖(またはそのFc含有断片)だけでなく軽鎖も含む態様では、重鎖部分と軽鎖部分をコードするヌクレオチド配列を、同じ核酸またはベクターに存在させても、異なる核酸またはベクターに存在させてもよい。
【0416】
本発明によりまた、宿主細胞内で上記の局面のいずれか1つによるポリペプチドまたは抗体を産生させるための方法であって、ポリペプチドまたは抗体が重鎖の少なくともFc領域を含み、以下の工程:
a)バリアントのFc領域をコードするヌクレオチド構築物を準備する工程、
b)ヌクレオチド構築物を宿主細胞内で発現させる工程、および
c)抗体バリアントを宿主細胞の細胞培養物から回収する工程
を含む方法も提供する。
【0417】
一部の態様では、抗体は重鎖抗体である。しかしながら、ほとんどの態様では、抗体は軽鎖も含み、したがって、宿主細胞は、同じかまたは異なるかのいずれかであるベクター上の軽鎖コード構築物をさらに発現する。
【0418】
抗体の組換え発現に適した宿主細胞は当技術分野において周知であり、CHO、HEK-293、Expi293、PER-C6、NS/0、およびSp2/0細胞が挙げられる。一態様では、宿主細胞は、タンパク質のAsn結合グリコシル化が行なわれ得る細胞、例えば真核生物細胞、例えば哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。さらなる一態様では、宿主細胞は、ヒト様グリコシル化またはヒト型グリコシル化を有する糖タンパク質を産生するように遺伝子改変された非ヒト細胞である。かかる細胞の例は、遺伝子修飾されたメタノール資化性酵母(Pichia pastoris)(Hamilton et al., Science 301(2003)1244-1246;Potgieter et al., J.Biotechnology 139(2009)318-325)および遺伝子修飾されたコウキクサ(Lemna minor)(Cox et al., Nature Biotechnology 12(2006)1591-1597)である。
【0419】
一態様では、宿主細胞は、C末端リジンK447残基を抗体重鎖から効率的に除去することのできない宿主細胞である。例えば、Liu et al.(2008)J Pharm Sci 97:2426(参照により本明細書に組み入れられる)の表2には、いくつかのかかる抗体産生系、例えば、Sp2/0、NS/0、またはトランスジェニック動物の乳腺(ヤギ)が列記されており、これらの場合、部分的なC末端リジン除去のみが得られる。一態様では、宿主細胞は、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞である。かかる細胞は当技術分野において報告されており、本発明のバリアントを発現させ、それにより、改変されたグリコシル化を有する抗体を産生させるための宿主細胞として使用され得る。例えば、Shields, R.L.et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740;Umana et al.(1999)Nat.Biotech.17:176-1、ならびにEP1176195;WO03/035835;およびWO99/54342を参照のこと。改変されたグリコフォームを作製するためのさらなる方法は当技術分野において公知であり、非限定的に、Davies et al., 2001, Biotechnol Bioeng 74:288-294;Shields et al, 2002, J Biol Chem 277:26733-26740;Shinkawa et al., 2003, J Biol Chem 278:3466-3473)、US6602684、WO00/61739A1;WO01/292246A1;WO02/311140A1;WO 02/30954A1;Potelligent(商標)技術(Biowa, Inc.Princeton, N.J.);GlycoMAb(商標)グリコシル化改変技術(GLYCART biotechnology AG, Zurich, Switzerland);US 20030115614;Okazaki et al., 2004, JMB, 336:1239-49に記載のものが挙げられる。
【0420】
本発明はまた、上記の本発明の方法によって得られる、または得ることができる抗体に関する。
【0421】
さらなる一局面において、本発明は、本発明のポリペプチドまたは抗体の産生能を有する宿主細胞に関する。一態様では、宿主細胞は、本発明のヌクレオチド構築物で形質転換またはトランスフェクトされている。
【0422】
本発明を、さらなる限定と解釈されるべきでない以下の実施例によってさらに例示する。
【0423】
【実施例】
【0424】
実施例1:抗体の生成、作製、および精製
抗体の発現構築物
抗体発現のため、可変重(VH)鎖および可変軽(VL)鎖の配列を、遺伝子合成(GeneArt Gene Synthesis;ThermoFisher Scientific,Germany)によって調製し、IgG1の重鎖(HC)および軽鎖(LC)の定常領域を含有しているpcDNA3.3発現ベクター(ThermoFisher Scientific,US)にクローニングした。遺伝子合成または部位特異的変異誘発のいずれかによって、所望の変異を導入した。本願において言及された抗体は、以前に記載されたDR5抗体、hDR5-01、hDR5-05(WO2014/009358)、およびコナツムマブ(US7521048 B2およびWO2010/138725)、DR4抗体、chCTB007(US 2009/0136503)、FAS抗体、E09(Chodorge Cell Death Differ.2012 Jul;19(7):1187-1195)、APO1(WO 2014/076292)、およびHFE7A(US6972323)、OX40抗体、SF2(US2014/0377284)、CD40抗体、SGN 40(US6838261)およびCP870893(US7338660)、4-1BB抗体、MOR7480(WO 2012/032433)およびBMS-663513(US8475790)、CD20抗体、HuMab7D8および11B8(WO2004/035607)、CD52抗体、アレムツズマブ(Crowe et al.,Clin Exp Immunol.1992;87(1):105-10)、ならびにEGFR抗体、2F8(WO2002/100348)に由来するVH配列およびVL配列を有する。実施例のうちのいくつかにおいて、gp120特異的抗体であるヒトIgG1抗体b12を、陰性対照として使用した(Barbas et al.,J Mol Biol.1993 Apr 5;230(3):812-23)。
【0425】
一過性発現
抗体を、IgG1、κとして発現させた。抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードするプラスミドDNA混合物を、本質的に製造業者によって記載されたように、Expifectamine(Invitrogen,US)を使用して、Expi293細胞(Life/Thermo Scientific,USA)に一過性トランスフェクトした。
【0426】
タンパク質の精製および分析
抗体を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィによって精製した。培養上清を、0.20μMデッドエンドフィルターで濾過し、5mL MabSelect SuReカラム(GE Healthcare)に負荷し、洗浄し、0.02Mクエン酸ナトリウム-NaOH(pH3)によって溶出させた。溶出液を精製直後にHiPrep Desaltingカラム(GE Healthcare)に負荷し、抗体を、12.6mM NaH2PO4、140mM NaCl、pH7.4緩衝液(B.BraunまたはThermo Fisher)に緩衝液交換した。緩衝液交換の後、試料を、0.2μmデッドエンドフィルターで滅菌濾過した。精製されたタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲルでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)および高速サイズ排除クロマトグラフィ(HP-SEC)を含む、多数の生化学的アッセイによって分析した。濃度を、280nmにおける吸光度によって測定した。精製された抗体を、2~8℃で保管した。
【0427】
二重特異性抗体の生成
二重特異性IgG1抗体を、調節された還元条件下でのFabアーム交換によって生成した。この方法の基礎は、WO2011/131746に記載されるような、特定のアッセイ条件の下でヘテロ二量体の形成を促進する相補的なCH3ドメインの使用である。相補的なCH3ドメインを有する抗体対を作出するため、F405LおよびK409R(EUナンバリング)の変異を、抗DR5 IgG1抗体に導入した。F405L変異を、IgG1-b12-K326A/E333A/P396L/E430GおよびIgG1-CONA-C49W-K326W/E333S/E430Gに導入し;K409R変異を、IgG1-b12-K326W/E333S/E430GおよびIgG1-hDR5-01-G56T-K326A/E333A/P396L/E430Gに導入した。二重特異性抗体を生成するため、2個の相補的な親抗体を、各々0.5mg/mLの最終濃度で、100μL PBSの全体積で、75mM 2-メルカプトエチルアミンHCl(2-MEA)と共に、31℃で5時間インキュベートした。製造業者のプロトコルに従って、スピンカラム(Microcon遠心フィルター、30k、Millipore)を使用して、還元剤2-MEAを除去することによって、還元反応を中止した。抗体を、12.6mM NaH2PO4、140mM NaCl(pH7.4)緩衝液(B.BraunまたはThermo)に緩衝液交換した。このようにして、BsAb(hDR5-01-G56T-K409R×b12-F405L)-K326A/E333A/P396L/E430Gと呼ばれる二重特異性抗体IgG1-hDR5-01-G56T-K326A/E333A/P396L/K409R/E430G×IgG1-b12-K326A/E333A/P396L/F405L/E430G、およびBsAb(IgG1-CONA-C49W-F405L×IgG1-b12-K409R)-K326W/E333S/E430Gと呼ばれるIgG1-CONA-C49W-F405L-K326W/E333S/E430G×IgG1-b12-K409R-K326W/E333S/E430Gを生成した。
【0428】
実施例2:アゴニスト抗DR5抗体の効力に対するE430GとK326A/E333A/P396Lとの組み合わせの効果
DR5陽性BxPC-3細胞(ATCC、CRL-1687)における抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56TおよびIgG1-hDR-05のアゴニスト活性に対する、Fc-Fc増強置換E430G(WO2013/004842;WO2014/108198;WO2014/006217;de Jong et al.,2016)とK326A/E333A/P396L(WO2016/116635)との組み合わせの効果を評価するため、生存度アッセイを実施した。細胞を、トリプシン処理によって採集し、セルストレーナーに通した。細胞を、1,200rpmでの5分間の遠心分離によってペレット化し、0.5×10
5細胞/mLの濃度で、培養培地(25mMヘペスおよびL-グルタミン(Lonza、カタログ番号BE12-115F)+10%熱不活化Donor Bovine Serum with Iron(DBSI;Life Technologies、カタログ番号10371-029)+50U/mLペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep;Lonza;カタログ番号DE17-603E)を含むRPMI 1640)に再懸濁させた。100μLの単細胞懸濁物(1ウェル当たり5,000細胞)を、ポリスチレン96穴平底プレート(Greiner Bio-One、カタログ番号655182)に播種し、37℃で一晩接着させた。次に、抗体調製物の段階希釈系列(4倍希釈で0.0003~20,000ng/mLの最終濃度範囲)50μLを添加し、37℃で3日間インキュベートした。陰性対照および陽性対照として、細胞を抗体なしでインキュベートするか、または5μMスタウロスポリン(Sigma Aldrich、カタログ番号S6942)と共にインキュベートした。代謝活性細胞の指標である、存在するATPを定量するCellTiter-Glo発光細胞生存度アッセイ(Promega、カタログ番号G7571)において、細胞培養物の生存度を決定した。キットから、20μLのルシフェリン溶液試薬を各ウェルに添加し、500rpmで2分間、プレートを振とうすることによって混合した。次に、プレートを、37℃で1.5時間インキュベートした。100μLの上清を、白色OptiPlate-96(Perkin Elmer、カタログ番号6005299)に移し、発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して、データを分析し、プロットした。
図1は、以下の式を使用して計算された生細胞の百分率を示す:生細胞%=[(抗体試料の発光 - スタウロスポリン試料の発光)/(抗体を含まない試料の発光 - スタウロスポリン試料の発光)]
*100。
【0429】
図1は、Fc-Fc増強置換E430Gと3個の置換K326A/E333A/P396Lとの組み合わせが、接着性ヒトBxPC-3膵臓がん細胞のインビトロ生存度アッセイにおいて、単一の薬剤として試験された時、抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56T(
図1A)およびIgG1-hDR5-05(
図1B)の死滅効力の誘導をもたらしたことを示す。対照的に、E430GまたはK326A/E333A/P396Lのみが存在する時には、これらの抗体は、これらの予め接着したBxPC-3細胞の効率的な死滅を示さなかった。非クロスブロッキング抗体IgG1-hDR5-01-G56T+IgG1-hDR5-05の組み合わせについても、組み合わせられた置換K326A/E333A/P396L/E430Gの導入は、予め接着したBxPC-3細胞の最も有効な死滅をもたらした(
図1C)。
【0430】
これらのデータは、K326A/E333A/P396L/E430G置換が、接着性BxPC-3細胞における抗DR5抗体の強力なアゴニスト活性を誘導したことを示す。
【0431】
実施例3:K326A/E333A/P396L/E430Gを含有している1価抗DR5抗体の効力
K326A/E333A/P396L/E430Gを含有している1価抗DR5抗体の効力を研究するため、ヒトBxPC-3膵臓がん細胞およびCOLO 205結腸がん細胞の生存度アッセイを実施した。1価DR5抗体を、実施例1に記載されたように、IgG1-hDR5-01-G56T-K326A/E333A/P396L/K409R/E430GとIgG1-b12-K326A/E333A/P396L/F405L/E430Gとの間の調節されたFabアーム交換によって生成した。BsAb(hDR5-01-G56T-K409R×b12-F405L)-K326A/E333A/P396L/E430Gと呼ばれる生成された二重特異性抗体は、DR5に特異的な1本のアームと、HIV糖タンパク質gp120に対する1本の非特異的アームを含有しており、DR5陽性ヒトがん細胞における1価DR5結合をもたらす。BxPC-3細胞を実施例2に記載されたように採集した。COLO 205細胞(ATCC、CCL-222)を、非接着性細胞およびトリプシン処理された接着性COLO 205細胞を含有している培養上清をプールすることによって採集した。細胞を、1,200rpmでの5分間の遠心分離によってペレット化し、0.5×105細胞/mLの濃度で、培養培地(25mMヘペスおよびL-グルタミン+10%熱不活化DBSI+50U/mL Pen/Strepを含むRPMI 1640)に再懸濁させた。単細胞懸濁物(1ウェル当たり5,000細胞)100μLをポリスチレン96穴平底プレートに播種し、37℃で一晩接着させた。次に、抗体調製物の段階希釈系列(4倍希釈で0.0024~10,000ng/mLの最終濃度範囲)50μLを添加し、37℃で3日間インキュベートした。陰性対照および陽性対照として、細胞を、抗体なしでインキュベートするか、または5μMスタウロスポリンと共にインキュベートした。実施例2に記載されたようなCellTiter-Glo発光細胞生存度アッセイにおいて、培養細胞の生存度を決定した。
【0432】
図2は、K326A/E333A/P396L/E430G変異の存在下で、IgG1-hDR5-01-G56Tの1価バリアントが、ヒトBxPC-3膵臓がん細胞およびCOLO 205結腸がん細胞の死滅を未だ誘導し得ることを示している。
【0433】
実施例4:アゴニスト抗DR5抗体のC1q結合および効力に対するE430GとK326A/E333A、K326A/P396L、またはE333A/P396Lとの組み合わせの効果
DR5陽性のBxPC-3細胞およびCOLO 205細胞における抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56Tのアゴニスト活性に対する、Fc-Fc増強置換E430Gと3個の置換K326A/E333A/P396Lのうちの2個との組み合わせの効果を研究するため、生存度アッセイを実施した。実施例2に記載されたような、E430Gと3個全ての置換K326A/E333A/P396Lとの組み合わせを、参照として実験に含めた。実施例3に記載されたように、生存度アッセイを実施した。実施例2に記載されたようなCellTiter-Glo発光細胞生存度アッセイにおいて、培養細胞の生存度を決定した。
【0434】
図3は、Fc-Fc増強置換E430GとK326A/E333A/P396Lのうちの2個の置換(E333A/P396L、K326A/E333A、またはK326A/P396L)との組み合わせが、接着性のヒトBxPC-3膵臓がん細胞(
図3A)およびCOLO 205結腸がん細胞(
図3B)のインビトロ生存度アッセイにおいて、単一薬剤として試験された時、抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56Tの死滅効力の誘導をもたらしたことを示す。対照的に、E430Gのみが存在する時には、これらの予め接着したがん細胞の死滅は観察されなかった。E430Gが、3個全ての変異K326A/E333A/P396Lと組み合わせられた時、最も効率的な死滅が観察された。
【0435】
C1q結合に対する異なる置換の効果を評価するため、結合ELISAを実施した。K326A/E333A、K326A/P396L、E333A/P396L、またはK326A/E333A/P396Lの置換と組み合わせられたE430G置換を含有しているIgG-hDR5-01-G56Tバリアントの精製された抗体試料を試験し、WT IgG-hDR5-01-G56TおよびIgG-hDR5-01-G56T-E430Gと比較した。IgG-2F8-I253D/K322Aを、C1q結合についての陰性対照として使用した。96穴Microlon ELISAプレート(Greiner、カタログ番号655092)のコーティングを、100μL PBS中の1μg/mL抗体試料との4℃での終夜のインキュベーションによって実施した。プレートを洗浄し、振とうしながら、0.025%トゥイーン20および0.1%ゼラチンが補足された200μL/ウェルの0.5×PBSによってRTで1時間ブロッキングした。インキュベーション間に洗浄しながら、1ウェル当たり100μLの精製C1qの段階希釈系列(Quidelカタログ番号A400;3倍希釈で最終C1q濃度範囲30~0.010μg/mL)と共に37℃で1時間、1ウェル当たり100μLのウサギ抗ヒトC1q(DAKO、製品番号A0136、1/4.000)と共にRTで1時間、100μL/ウェルの検出抗体としてのブタ抗ウサギIgG-HRP(DAKO、P0399、1:10.000)と共にRTで1時間、最後に、100μL/ウェルの基質、1mg/mL 2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS;Roche、カタログ番号11112 597001)と共にRTで約15分間、連続的にプレートをインキュベートした。100μLの2%シュウ酸の添加によって、反応を中止した。吸光度を、BioTek EL808 Microplate Reader(BioSPX)で405nmにおいて測定した。対数変換されたデータを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、可変性の傾きを有するシグモイド用量応答曲線の適合によって分析した。
【0436】
図3Cは、E430G Fc-Fc増強置換の導入は、1μg/mLのコーティングされたIgG1-hDR5-01-G56T抗体に対する見かけのC1q結合親和性に影響しなかったが、E430G置換とK326A/E333A、K326A/P396L、E333A/P396L、またはK326A/E333A/P396Lの置換との組み合わせを含有している抗体バリアントは、IgG1-hDR5-01-G56TおよびIgG1-hDR5-01-G56T-E430Gと比較して増強されたC1q結合を示したことを示している(表2)。
【0437】
(表2)IgG1-hDR5-01-G56T抗体バリアントとのC1q結合のEC50値(ELISA)
1 一元配置のANOVA p値=0.0022;ボンフェローニのポストホック検定、Ab対WT:示されるように、p<0.05
【0438】
総合すると、これらのデータは、E430G Fc-Fc増強置換とK326A/E333A、K326A/P396L、E333A/P396L、またはK326A/E333A/P396Lの置換との組み合わせが、E430G Fc-Fc増強変異のみを含む抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56T-E430Gの増加したC1q結合および増加したアゴニスト活性をもたらすことを示した。
【0439】
実施例5:アゴニスト抗DR5抗体のC1q結合および効力に対するE430GとK326W/E333Sとの組み合わせの効果
E430G Fc-Fc増強変異を含有している抗体とのC1q結合に対するK326A/E333AおよびK326W/E333Sの効果を評価するため、結合ELISAを実施した。K326A/E333AまたはK326W/E333S変異と組み合わせられたE430G置換を含有しているIgG1-CONA-C49Wバリアントの精製された抗体試料を試験し、WT IgG1-CONA-C49WおよびIgG1-CONA-C49W-E430Gと比較した。E430G置換を含まないIgG1-CONA-C49W-K326W/E333Sも試験した。IgG1-2F8-I253D/K322Aを、C1q結合についての陰性対照として使用した。実施例4に記載されたように、1μg/mL抗体でコーティングされたELISAプレートにおいて、C1q結合ELISAを実施した。
【0440】
WT抗体と比較した時、K326W/E333S置換の導入によって、C1q結合の強力な増強が確認された(
図4A)。対照的に、E430G Fc-Fc増強変異の導入は、1μg/mLのコーティングされたIgG1-CONA-C49W抗体との見かけのC1q結合親和性に影響しなかった。E430G置換とK326A/E333AまたはK326W/E333Sの置換との組み合わせを含有している抗体バリアントは、IgG1-hDR5-01-G56TおよびIgG1-hDR5-01-G56T-E430Gと比較して、強く増強されたC1q結合を示した(表3)。
【0441】
(表3)IgG1-CONA-C49W抗体バリアントとのC1q結合のEC50値(ELISA)
1 一元配置のANOVA p値=0.0013;ボンフェローニのポストホック検定、Ab対WT:示されるように、p<0.05。
【0442】
DR5陽性のBxPC-3細胞およびCOLO 205細胞における抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56Tのアゴニスト活性に対するFc-Fc増強変異E430GとC1q結合置換K326A/E333AまたはK326W/E333Sとの組み合わせの効果を研究するため、生存度アッセイを実施した。実施例3に記載されたように、生存度アッセイを実施した。培養細胞の生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiter-Glo発光細胞生存度アッセイにおいて決定した。
【0443】
図4B/Cは、接着性のヒトBxPC-3膵臓がん細胞(
図4B)およびCOLO 205結腸がん細胞(
図4C)のインビトロ生存度アッセイにおいて、単一薬剤として試験された時、Fc-Fc増強置換E430Gと2個の変異K326W/E333Sとの組み合わせが、抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56Tの強力な死滅効力の誘導をもたらしたことを示している。対照的に、WT抗体およびIgG1-hDR5-01-G56T-E430Gは、効力を示さなかった。BxPC-3がん細胞およびCOLO 205がん細胞の両方において、IgG1-hDR5-01-G56T-K326W/E333S/E430Gの死滅効力は、IgG1-hDR5-01-G56T-K326A/E333A/E430Gより優れていた。
【0444】
総合すると、これらのデータは、E430G Fc-Fc増強置換とK326A/E333AまたはK326W/E333Sの置換との組み合わせが、E430G六量体化増強変異のみを含む抗DR5抗体IgG1-CONA-C49W-E430Gの増加したC1q結合および増加したアゴニスト活性をもたらすことを示した。
【0445】
実施例6:アゴニスト抗DR5抗体のC1q結合および効力に対するE430Gと他のFcバリアントとの組み合わせの効果
E430G Fc-Fc増強置換を含有している抗体とのC1q結合に対するC1q結合置換S267E/H268F/S324TまたはIgG1/IgG3キメラアイソタイプIgG1バリアント113Fの効果を研究するため、C1q結合ELISAを実施した(Tammen et al.,J Immunol.2017)。これらの置換を含むIgG1-hDR5-01-G56Tバリアントおよび含まないIgG1-hDR5-01-G56Tバリアントの精製された抗体試料を試験し、WT IgG1-hDR5-01-G56TおよびIgG1-hDR5-01-G56T-E430Gと比較した。IgG1-2F8-I253D/K322Aを、C1q結合についての陰性対照として使用した。C1q結合ELISAを、実施例4に記載されたように、1μg/mL抗体によってコーティングされたELISAプレートにおいて実施した。
【0446】
図5Aは、E430G Fc-Fc増強置換の導入が、1μg/mLのコーティングされたIgG1-hDR5-01-G56T抗体との見かけのC1q結合親和性に影響しなかったことを示している。E430G置換とS267E/H268F/S324T置換との組み合わせを含有しているバリアント抗体は、IgG1-hDR5-01-G56TおよびIgG1-hDR5-01-G56T-E430Gと比較して、強く増強されたC1q結合を示し、IgG113F-hDR5-01-G56TフォーマットバリアントにおけるE430G置換の導入は、IgG1-hDR5-01-G56TおよびIgG1-hDR5-01-G56T-E430Gと比較してわずかに増強されたC1q結合をもたらした(表4)。
【0447】
(表4)IgG1-hDR5-01-G56T抗体バリアントとのC1q結合のEC50値(ELISA)
1 一元配置のANOVA p値=0.0013;ボンフェローニのポストホック検定、Ab対WT:示されるように、p<0.05。
【0448】
DR5陽性のBxPC-3細胞およびCOLO 205細胞における抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56Tのアゴニスト活性に対するFc-Fc増強置換E430GとC1q結合置換S267E/H268F/S324T(Moore et al.,MAbs 2010)またはIgG1/IgG3キメラアイソタイプバリアント113F(Natsume et al.,Cancer Res.2008)との組み合わせの効果を研究するため、生存度アッセイを実施した。実施例3に記載されたように、生存度アッセイを実施した。培養細胞の生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiter-Glo発光細胞生存度アッセイにおいて決定した。
【0449】
図5B/Cは、Fc-Fc増強置換E430GとC1q結合置換S267E/H268F/S324Tとの組み合わせが、接着性のヒトBxPC-3膵臓がん細胞(
図5B)およびCOLO 205結腸がん細胞(
図5C)のインビトロ生存度アッセイにおいて、単一薬剤として試験された時、抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56Tの死滅効力の誘導をもたらしたことを示す。E430Gが、IgG1-hDR5-01-G56TのIgG1/IgG3キメラアイソタイプIgG1バリアント113Fに組み入れられた時、死滅効力の誘導が、COLO 205において観察され(
図5C)、BxPC-3においても、わずかに観察され、試験された最も高い抗体濃度でのみアゴニスト活性が観察された(
図5B)。しかしながら、両方の細胞株において、これらのバリアントIgG1-hDR5-01-G56T-S267E/H268F/S324T/E430GおよびIgG113F-hDR5-01-G56T-E430Gの効力は、IgG1-hDR5-01-G56T-K326W/E333S/E430GおよびIgG1-hDR5-01-G56T-K326A/E333A/P396L/E430Gより有意に低かった。以前の実施例と同様に、WT抗体およびIgG1-hDR5-01-G56T-E430Gは、効力を示さなかった。
【0450】
総合すると、これらのデータは、E430G Fc-Fc増強置換とS267E/H268F/S324T置換との組み合わせが、E430G Fc-Fc増強置換のみを含む抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56T-E430Gの強く増加したC1q結合およびアゴニスト活性をもたらすことを示した。IgG113F-hDR5-01-G56TフォーマットバリアントにおけるE430G置換の導入は、抗体のわずかに増強されたC1q結合およびアゴニスト活性をもたらした。
【0451】
実施例7:アゴニスト抗DR5抗体の効力に対するE430Gと他のFc変異およびバリアントとの組み合わせの効果の概要
上記の実施例において、DR5アゴニズムまたはC1q結合のいずれかに影響することが記載されている他のFc領域置換またはバリアントと、Fc-Fc増強置換E430Gが組み合わせられた時の、抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56Tのアゴニスト活性に対する効果を試験する生存度アッセイが記載された。この実施例においては、実施例2、4、5、および6において効果がないことが示されたWT IgG1-hDR5-01-G56Tと比べた、10μg/mLの示された抗体との3日間のインキュベーションの後の生細胞の百分率の表示およびランキングによって、接着性ヒト膵臓BxPC-3がん細胞の全ての生存度アッセイの概要が提示される。接着性BxPC-3細胞の生存度アッセイおよびCellTiter-Glo発光アッセイの詳細は、実施例2に記載されている。
【0452】
図6は、Fc-Fc増強置換E430GとC1q結合二重置換K326W/E333Sとの組み合わせが、熱不活化ウシ胎仔血清を含有している完全培養培地における接着性ヒトBxPC-3膵臓がん細胞の10μg/mL抗体との3日間のインキュベーション期間の後、WT IgG1-hDR5-01-G56T抗体と比較した時、最も有意な効果を示したことを示す。E430GとK326A/E333A/P396L、E333A/P396L、およびK326A/E333Aとの組み合わせも、WT抗体より有意に低い生細胞の百分率をもたらした。S267E/H268F/S324TおよびIgG1/IgG3キメラIgG-113Fのような、C1q結合を増強することが示されている他のFcバリアントは、IgG1-hDR5-01-G56TにおいてE430Gと組み合わせられた時、10μg/mL抗体による当実験セットアップにおいて、接着性BxPC-3細胞に対する死滅効力の有意な誘導を示さず、IgG1-hDR5-01-G56T-E430Gも、単一薬剤として試験された時、死滅効力の誘導をもたらさなかった。
【0453】
実施例8:C1q結合置換と組み合わせられたFc-Fc増強置換を含むアゴニスト抗DR5抗体のインビトロ活性に対するC1qの効果
上記の実施例は、増強されたC1q結合が、E430G Fc-Fc増強変異を含有している試験された抗DR5抗体のより優れたアゴニスト活性に寄与することを示唆した。C1qの効果を試験するため、精製ヒトC1qの存在下または非存在下で、無血清培地において、IgG1-CONA-K326A/E333A/P396L/E430GおよびIgG1-hDR5-01-G56T-K326W/E333S/E430Gによって、WIL2-S SF細胞の生存度アッセイを実施した。WIL2-S SF細胞は、WIL2-S(ATCC、CRL-8885)Bリンパ芽球に由来し、50U/mL Pen/Strepおよび1mMピルビン酸ナトリウムを含有しているHyQ-ADCF-Mab(Perbio、カタログ番号SH30349)によって製剤化された培養培地において無血清条件下で成長するよう順応していた。WIL2-S SF懸濁細胞をセルストレーナーに通し、300×gでの5分間の遠心分離によってペレット化し、0.5×106細胞/mLの濃度で無血清培養培地に再懸濁させた。100μLの単細胞懸濁物(1ウェル当たり50,000細胞)をポリスチレン96穴平底プレート(Greiner Bio-One、カタログ番号655182)に播種した。抗体調製物の段階希釈系列(4倍希釈で0.0003~20,000ng/mLの最終濃度範囲)25μLおよび精製C1q(Quidel、カタログ番号A400;2.5μg/mLの最終濃度)25μLを添加し、37℃で1日インキュベートした。陰性対照および陽性対照として、それぞれ、抗体を含まないかまたは5μMスタウロスポリン(Sigma Aldrich、カタログ番号S6942)を含む培地において、細胞をインキュベートした。細胞生存度をTO-PRO-3染色によって決定した。TO-PRO-3は、二本鎖DNAに結合する細胞不透過性カルボシアニンモノマー染料である。従って、TO-PRO-3は、死細胞の指標として使用され得る。全ての試料をポリスチレン96穴U底プレート(Greiner Bio-One、カタログ番号650261)に移し、300×gで3分間遠心分離した後、70μLの上清を除去した。10μLのTO-PRO-3混合物(Invitrogen、カタログ番号T3605、20μL TO-PRO-3+1980μL PBS)を添加した後、ピペッティングによって細胞を再懸濁させた。TO-PRO-3陽性細胞の量を、BD LSRFortessa X-20細胞分析機(BD Biosciences)におけるフローサイトメトリーによって決定した。
【0454】
図7は、無血清培地への精製C1qの添加が、WIL2-S SF細胞に対するIgG1-CONA-K326A/E333A/P396L/E430G(
図7A)およびIgG1-hDR5-01-G56T-K326W/E333S/E430G(
図7B)の両方の効力を、大きく増強したことを示す。これらのデータは、C1q結合が、K326A/E333A/P396LまたはC1q結合K326W/E333S置換と組み合わせられたE430G Fc-Fc増強置換を含有しているアゴニスト抗DR5抗体のより優れたアゴニスト活性に寄与することを示す。
【0455】
実施例9:C1q結合置換と組み合わせられたFc-Fc増強置換を含むアゴニスト抗DR5抗体のインビトロアゴニスト活性に対するC1qの効果
実施例8においては、アゴニスト抗DR5抗体の効力に対するC1qの効果を、抗体濃度系列および固定されたC1q濃度で、無血清培地中のWIL2-S SF細胞の生存度アッセイにおいて試験した。この実施例においては、無血清培地中のWIL2-S SF細胞の生存度アッセイにおいて、C1q結合置換(K326A/E333S/P396L、K326W/E333S、またはK326A/E333A)と組み合わせられたFc-Fc増強置換(E430G)を含むアゴニストIgG1-hDR5-01-G56T抗体バリアントの効力に対する、C1qの濃度系列の効果を試験した。2.5μg/mLの固定された抗体濃度、および4倍希釈の0.0002~2.5μg/mLの最終濃度範囲の精製C1qの濃度系列で、本質的に実施例8に記載されたように、生存度を実施した。
【0456】
図8は、無血清培地への精製C1qの添加が、E430G Fc-Fc増強置換を含有している抗DR5抗体の効力を増強したことを示している。C1q結合増強置換(K326A/E333S/P396L、K326W/E333S、またはK326A/E333A)を含有している試験されたIgG1-hDR5-01-G56T-E430G抗体バリアントは、全て、C1q用量依存的にWIL2-S SF細胞に対する効力を示した(
図8A)。IgG1-hDR5-01-G56T-K326W/E333S/E430Gは、全ての試験された抗体の中で最も高い効力を示し、0.16μg/mLから出発するC1q濃度範囲において最大死滅に到達した。これらのデータは、C1q結合が、K326A/E333A/P396L、K326W/E333S、またはK326A/E333A C1q結合置換と組み合わせられたE430G Fc-Fc増強置換を含有しているアゴニスト抗DR5抗体のより優れた活性に寄与することを示している。二重のエピトープを標的とする抗体の組み合わせIgG1-hDR5-01-G56T-E430G+IgG1-hDR5-05-E430Gも、無血清培地においてWIL2S-SF細胞を死滅させる効力のC1q用量依存性の増加を示し、およそ0.16μg/mL C1qで最大死滅に到達した(
図8B)。
【0457】
実施例10:C1q結合置換と組み合わせられたFc-Fc増強置換を含むアゴニスト抗DR5抗体のインビトロアゴニスト活性に対するC1q中和の効果
C1q結合のためのK326W/E333S置換と組み合わせられたE430G Fc-Fc増強置換を含有しているアゴニスト抗DR5 IgG1-hDR5-01-G56T-K326W/E333S/E430Gの効力のための、C1qの必要性を、精製C1qを含有している無血清培地中のWIL2-S SF細胞の生存度アッセイにおいて、C1q球状ヘッド領域に対する抗C1q中和抗体を使用することによって試験した。同様に、C1qの中和の効果を、二重のエピトープを標的とする抗体の組み合わせIgG1-hDR5-01-G56T-E430G+IgG1-hDR5-05-E430Gについても、同一の設定で試験した。生存度アッセイを、本質的に実施例8に記載されたように実施した。簡単に説明すると、WIL2-S SF細胞を、0.67×106細胞/mLの濃度で無血清培養培地に再懸濁させた。75μLの単細胞懸濁物(1ウェル当たり50,000細胞)を、無血清培養培地で、ポリスチレン96穴平底プレートに播種した。次に、抗DR5抗体試料(2.5μg/mLの最終濃度)25μL、精製C1q(0.01μg/mLの最終濃度)25μL、および抗C1q抗体試料(Sanquin、CLB/C1q-85、カタログ番号MW1828;10μg/mLの最終濃度)25μLを添加し、37℃で1日インキュベートした。細胞生存度を、実施例8に記載されたように、TO-PRO-3染色によって決定した。
【0458】
実施例9において記載されたような、抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56T-K326W/E333S/E430Gの効力を増強する、無血清培地への精製C1qの添加の効果が、この実験において確認された(
図9A)。さらに、補足されたC1qの抗DR5抗体との結合が、過剰の抗C1q抗体の存在によって中和された時、この効力は弱まった(
図9A)。これらのデータは、K326W/E333S C1q結合置換と組み合わせられたE430G Fc-Fc増強置換を含有しているアゴニスト抗DR5抗体の最適な活性には、C1q結合が必要であることを例証している。無血清培地へのC1qの添加時に増強された効力を示し、過剰の抗C1q抗体の存在によるこの効果の中和を示した、二重のエピトープを標的とする抗体の組み合わせIgG1-hDR5-01-G56T-E430G+IgG1-hDR5-05-E430Gについても、WIL2S-SF細胞を死滅させるC1q依存性の効力が確認された(
図9B)。
【0459】
実施例11:C1q結合置換と組み合わせられたFc-Fc増強置換を含む抗体についての液相補体活性化アッセイ
抗体を正常ヒト血清(NHS)中でインキュベートした後の、古典的補体経路活性化のマーカーC4dの定量化によって、抗体バリアントによる標的結合非依存性の補体活性化を決定した。(1)ヒトC4のC4d含有活性化断片に特異的に結合するマウスモノクローナル抗体によってコーティングされたマイクロアッセイプレート、(2)HRPとコンジュゲートしたヤギ抗ヒトC4d抗体、および(3)発色性基質を含有しているMicroVue C4d Enzyme Immuno Assay(Quidel、カタログ番号A0008)を使用して、3段階ELISA手法を実施した。内部対照および標準を、キットと共に補足し、製造業者の説明書に記載されたように使用した。陽性対照として、熱凝集ガンマグロブリンを、以下のように調製した。IVIG溶液(60mg/mL;Sanquin、カタログ番号04H04H443A)の1.5mlバイアル中の1mLアリコートを、63℃で20分間加熱した。バイアルをプールし、PBSで20mg/mLに希釈し、孔径0.22μmの界面活性剤フリー酢酸セルロース(SFCA)メンブレンシリンジフィルター(Corning、カタログ番号431219)で濾過した。およそ0.2mLのアリコートを、4℃で保管した。抗体試料については、90%正常ヒト血清(NHS、Sanquin M0008AC)中の100μg/mLの抗体調製物の試料50μLを、37℃で1時間、ポリプロピレン96穴U底プレート(Greiner Bio-One;カタログ番号650261)においてインキュベートした。次に、これらの試料5μLを、Specimen Diluentで90倍希釈し、1ウェル当たり100μLの希釈された試料を、250μLのWash Solutionで3回予め洗浄されたCoated Stripにおいて、振とうしながら室温で30分間インキュベートした。次に、ウェルを、250μLのWash Solutionで5回洗浄した後、1ウェル当たり50μLのC4dコンジュゲートを、振とうしながらRTで30分間インキュベートした。ウェルを250μLのWash Solutionで5回洗浄した後、1ウェル当たり100μLの基質を、振とうしながらRTで30分間インキュベートした。1ウェル当たり50μLのStop Solutionを添加することによって、反応を中止し、BioTek EL808 Microplate Reader(BioSPX)で405nmにおいて分光光度的に色強度を測定した。
【0460】
陽性対照試料は、陰性対照試料と比較して、明白に増強されたC4dレベルを示した(
図10)。対照的に、標的細胞の非存在下でNHS中でインキュベートされた時には、C1q結合置換K326W/E333S、K326A/E333A、またはK326A/E333A/P396Lと組み合わせられたE430G Fc-Fc増強置換を含有している全ての試験されたIgG1-hDR5-01-G56T抗体バリアントについて、C4dレベルの明白な増強は観察されず(
図10)、ランダム免疫複合体を表す陽性対照HAGGおよび液相IgG1六量体を表すIgG1-CONA-RGYをNHS中でインキュベートした時には、C4dが産生された。これらのデータは、C1q結合置換K326W/E333S、K326A/E333A、またはK326A/E333A/P396Lと組み合わせられたE430G Fc-Fc増強置換を含有しているIgG1-hDR5-01-G56T抗体バリアントが、液相において標的非依存性の六量体化および補体活性化を示さないことを示す。
【0461】
実施例12:アゴニスト抗DR5抗体のC1q結合および効力に対するE430GとK326W、E333S、またはK326W/E333Sとの組み合わせの効果
E430G置換を含むかまたは含まないIgG-CONA-C49WバリアントとのC1q結合に対するK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を評価するため、C1q結合ELISAを実施した。IgG-2F8-I253D/K322Aを、C1q結合についての陰性対照として使用した。実施例4に記載されたように、異なる濃度の精製C1q(3倍希釈で0.010~30μg/mLの範囲)の結合について試験された、1μg/mL抗体によってコーティングされた96穴プレートにおいて、ELISA実験を実施した。吸光度を405nmにおいて測定し、対数変換されたデータを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、可変性の傾きを有するシグモイド用量応答曲線の適合によって分析した。
図11A、Bは、E430G Fc-Fc相互作用増強変異および六量体化増強変異を含む抗DR5抗体IgG1-CONA-C49WおよびそのバリアントIgG1-CONA-C49W-E430Gの両方について、K326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入が、全て、ランダムに固定化された抗体との増加したC1q結合をもたらしたことを示している。IgG1-CONA-C49W-K326W/E333S/E430Gは、全ての試験された抗体バリアントの中で最も高い見かけのC1q結合親和性を示した。精製された抗体バリアントのWIL2-S SF懸濁細胞との結合を、フローサイトメトリーによって分析した。細胞を採集し、計数し、PBSで洗浄し、培養培地に3.33×10
6細胞/mLで再懸濁させた。30μLの細胞(1ウェル当たり1×10
5細胞)を、96穴プレートにピペットで移した。抗体滴定系列(3倍希釈で0.001~2.5μg/mLの最終抗体濃度範囲)の試料50μLを添加し、37℃で15分間インキュベートした。その後、20μLの精製C1q(2.5μg/mLの最終濃度)を添加し、4℃で45分間インキュベートした。次に、100μLのFACS緩衝液(PBS+0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)+0.02%(w/v)アジ化ナトリウム)を添加した後、150μLのFACS緩衝液で2回細胞を洗浄した。洗浄された細胞を、50μLのFITC標識ウサギ抗ヒトC1q抗体(20μg/mLの最終濃度;DAKO、カタログ番号F0254)と共に4℃で30分間インキュベートした。100μLのFACS緩衝液を添加し、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を30μLのFACS緩衝液に再懸濁させ、蛍光を、iQue Screener(IntelliCyt)を使用して、フローサイトメトリーによって測定した。対数変換されたC1q濃度軸による結合曲線を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰分析(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して分析した。
図11C、Dは、抗DR5抗体IgG1-CONA-C49WにおけるE333SまたはE430Gの置換のみの導入が、DR5陽性WIL2-S SF細胞に結合した抗体とのC1q結合に対して効果を有しなかったことを示している(
図11C)。抗DR5抗体IgG1-CONA-C49WまたはIgG1-CONA-C49W-E430GにおけるK326W変異の導入は、IgG1-CONA-C49W-K326W/E333S/E430Gによってオプソニン化された細胞について観察された増加したC1q結合と一致して、抗DR5抗体によってオプソニンされたWIL2-S SF細胞との増加したC1q結合をもたらした(
図11C、D)。抗DR5抗体IgG1-CONA-C49W-E430GにおけるE333Sの導入は、抗体によってオプソニン化されたWIL2-S SF細胞とのC1q結合の中程度の増加をもたらした(
図11D)。これらのフローサイトメトリーデータは、細胞に結合したIgG1-CONA-C49W-K326W/E333S/E430Gが、最も高アビディティのC1q結合を示したことを示している。
【0462】
WIL2-S SF細胞におけるDR5アゴニスト活性に対する、E430G置換を含むかまたは含まない抗DR5 IgG1-CONA-C49WバリアントにおけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの導入の効果を評価するため、生存度アッセイを実施した。本質的に実施例8に記載されたように、1日生存度アッセイを実施した。簡単に説明すると、無血清培地中の100μLの細胞(50.000細胞/ウェル)を、96穴プレートにピペットで移した。精製C1q(最終濃度2.5μg/mL)25μLおよび濃度希釈系列(5倍希釈で0.0003~20μg/mLの最終濃度範囲)の抗体試料25μLを添加し、37℃で1日インキュベートした。細胞生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiterGloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。対数変換されたC1q濃度データを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して、分析し、プロットした。
図11E~Gは、抗DR5抗体IgG1-CONA-C49WにおけるK326W、E333S、またはE430Gの変異のみの導入は、WIL2-S SF細胞におけるDR5アゴニスト活性の誘導をもたらさなかったが、IgG1-CONA-C49WにおけるK326W/E333S二重変異は、DR5アゴニスト活性およびWIL2-S SF細胞の部分的な死滅の誘導をもたらしたことを示している(
図11E)。抗DR5抗体IgG1-CONA-C49Wにおける変異K326W、E333S変異、または二重変異K362W/E333SとFc-Fc増強変異E430Gとの組み合わせは、DR5アゴニスト活性の誘導をもたらし、K362W/E333S/E430Gが、WIL2-S SF細胞の最も高い最大死滅をもたらした(
図11F)。
【0463】
実施例13:アゴニスト抗DR5抗体のC1q依存性効力に対するE430GとK326W、E333S、またはK326W/E333Sとの組み合わせの効果
C1q依存性アゴニスト活性に対する、変異E430Gを含むかまたは含まない抗DR5 IgG-CONA-C49W抗体バリアントにおけるK326W、E333S、またはK326W/E333Sの置換の導入の効果を試験した。本質的に実施例8に記載されたように、C1q濃度希釈系列を含む無血清培地中のWIL2-S SF細胞を使用して、1日生存度アッセイをインビトロで実施した。簡単に説明すると、無血清培地(50.000細胞/ウェル)中の100μLの細胞を、96穴プレートにピペットで移した。抗体試料(2.5μg/mLの最終濃度)25μLおよび精製C1qの濃度希釈系列(3倍希釈で42pg/mL~2.5μg/mLの最終濃度範囲)25μLを添加し、37℃で1日インキュベートした。細胞生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiter-Gloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。C1q濃度の対数変換されたデータを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して、分析し、プロットした。
図12は、抗DR5抗体IgG1-CONA-C49Wにおける単一の変異としてのFc-Fc増強置換E430GまたはC1q結合増強置換K326WもしくはE333Sの導入が、WIL2-S SF細胞のC1q用量依存性の死滅の誘導をもたらし、これと比較して、K326W/E333S二重変異の導入が、WIL2-S SF細胞のC1q用量依存性の死滅のより効率的な誘導をもたらしたことを示している。E430G Fc-Fc増強置換と試験されたC1q結合置換との組み合わせは、より効率的な死滅をもたらし、IgG-CONA-C49W-K326W/E333S/E430Gが、WIL2-S SF細胞の最も効率的なC1q用量依存性の死滅を誘導した(
図12)。
【0464】
実施例14:K326W、E333S、またはK326W/E333Sの変異と組み合わせられたE430G変異を含む抗DR5抗体のインビトロアゴニスト活性に対するC1q中和の効果
E430G Fc-Fc増強変異を含有しているアゴニスト抗DR5抗体の効力へのC1qの寄与を試験するため、精製ヒトC1qを含有している無血清培地中の、IgG1-CONA-C49Wバリアントによってオプソニン化されたWIL2-S SF細胞の生存度アッセイにおいて、C1q中和抗体を添加した。本質的に実施例8に記載されたように、実験を実施した。簡単に説明すると、75μLの細胞懸濁物をポリスチレン96穴平底プレートに無血清培地で播種した(1ウェル当たり50,000細胞)。IgG1-CONA-C49W抗体バリアント(2.5μg/mLの最終濃度)25μL、精製C1q(表5による異なる各抗体についてのEC90濃度に近い最終C1q濃度)25μL、およびC1q中和抗体(CLB-C1q-85;Sanquin、製品番号MW1828)またはアイソタイプ対照抗体(精製マウスIgG1、κクローンMOPC-21;BD Biosciences、カタログ番号555746)(10μg/mLの最終濃度)25μLを、WIL2-S SF細胞に添加し、37℃で1日インキュベートした。細胞生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiter-Gloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。データを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、分析し、プロットした。
図13は、C1q中和抗体の存在下で、K326W/E430G、E333S/E430G、またはK326W/E333Sの置換を含むIgG1-CONA-C49WバリアントのDR5アゴニスト活性が完全に阻害されたことを示している。IgG1-CONA-C49W-K326W/E333S/E430Gについて、C1q中和は、DR5アゴニスト活性の部分的な阻害をもたらした。
【0465】
(表5)実施例13に記載のとおりに精製C1q濃度系列が補足された無血清培地中のWIL2-S SF細胞の生存度アッセイ(データ示さず)における2.5μg/mLの示された抗体についてのC1q EC90値
【0466】
実施例15:K326W、E333S、またはK326W/E333Sと組み合わせられたE430G変異を含む抗DR5抗体のインビトロアゴニスト活性に対するFc-Fc相互作用阻害の効果
IgG1-CONA抗体バリアントによる細胞死の誘導における、Fc-Fcによって媒介される抗体六量体化の関与を試験するため、本発明者らは、Fc-Fc相互作用に関与する疎水性ノブ区域内のコアアミノ酸を含有している領域においてFcに結合する13残基ペプチドDCAWHLGELVWCT(DeLano et al.,Science 2000 Feb 18;287(5456):1279-83)を使用した(Diebolder et al.,Science.2014 Mar 14;343(6176):1260-3)。本質的に実施例14に記載されたように、WIL2-S SF細胞の生存度を、DCAWHLGELVWCTペプチドの存在下または非存在下で決定した。簡単に説明すると、75μLのWIL2-S SF細胞懸濁物を、ポリスチレン96穴平底プレートに無血清培地で播種した(1ウェル当たり50,000細胞)。25μLの抗体(2.5μg/mLの最終濃度)を添加し、室温で10分間インキュベートした。次に、25μLのFc-Fc阻害ペプチドDCAWHLGELVWCTまたはスクランブル対照ペプチドWCDLEGVTWHACL(80μg/mL)を添加し、室温で10分間インキュベートした。次いで、25μLの精製C1q(実施例14、表1においてリストされるような、異なる各抗体についてのEC90に近い最終C1q濃度)を添加し、反応混合物を37℃で1日インキュベートした。細胞生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiter-Gloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。データを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、分析し、プロットした。
図14は、Fc-Fc阻害ペプチドDCAWHLGELVWCTの存在下で、K326W/E430G、E333S/E430G、K326W/E333S、またはK326W/E333S/E430Gの置換を含むIgG1-CONA-C49WバリアントのDR5アゴニスト活性が、部分的に阻害されたことを示す。Fc-Fc阻害ペプチドは、変異E430Gを含まないIgG1-CONA-C49W-K326W/E333Sより強く、Fc-Fc増強変異E430Gを含むIgG1-CONA-C49W-K326W/E333S/E430Gのアゴニスト活性を阻害した。
【0467】
実施例16:抗DR5抗体のアゴニスト活性に対するK326W/E333SとFc-Fc増強変異E345K、E345R、またはS440Yとの組み合わせの効果
BxPC-3細胞に対してオプソニン化された抗DR5抗体IgG1-CONA-C49Wのアゴニスト活性に対する、C1q結合置換K326W/E333SとFc-Fc増強変異E345K、E345R、またはS440Yとの組み合わせの効果を研究するため、生存度アッセイを実施した。本質的に実施例2に記載されたような生存度アッセイを実施した。簡単に説明すると、100μLのBxPC-3単細胞懸濁物を、ポリスチレン96穴平底プレートに完全培養培地(10%DBSIを含有しているRPMI)で播種し(1ウェル当たり5,000細胞)、37℃で一晩接着させた。次に、50μLの抗体調製物の段階希釈系列(5倍希釈で0.0003~20μg/mLの最終濃度範囲)を添加し、37℃で3日間インキュベートした。細胞生存度を、CellTiter-Gloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。対数変換された濃度軸を有するデータを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して、分析し、プロットした。
図15Aは、IgG1-CONA-C49WによるBxPC-3細胞の死滅が、E345R変異の導入によって強く誘導され、E430GまたはE345Kの変異によっても、わずかに誘導されたが、S440Yは効果を有しなかったことを示している。
図15Bは、IgG1-CONA-C49W-K326W/E333SバリアントによるBxPC-3細胞の死滅が、E430G、E345K、またはE345Rの変異の導入によって増加したが、S440Y変異の導入によって、さらに増強されることはなかったことを示す。総合すると、これらのデータは、C1q結合増強K326W/E333S変異が、E430G、E345K、またはE345Rのような異なるFc-Fc増強変異を有する抗DR5アゴニストIgG1抗体の効力を増強し得ることを示している。
【0468】
実施例17:アゴニスト抗DR5抗体の効力に対するE430Gと他のFc修飾との組み合わせの効果
DR5陽性BxPC-3細胞に対してオプソニン化された抗DR5抗体IgG1-CONA-C49Wのアゴニスト活性に対する、Fc-Fc増強置換E430GとC1q結合置換S267E/H268F/S324TまたはIgG1/IgG3キメラアイソタイプバリアント113Fとの組み合わせの効果を研究するため、生存度アッセイを実施した。本質的に実施例3に記載されたように、生存度アッセイを実施した。簡単に説明すると、100μLのBxPC-3単細胞懸濁物を、ポリスチレン96穴平底プレートに培養培地(10%熱不活化DBSIを含有しているRPMI)で播種し(1ウェル当たり5,000細胞)、37℃で一晩接着させた。精製C1q(2.5μg/mLの最終濃度)25μLおよび濃度希釈系列(5倍希釈で0.0003~20μg/mLの最終濃度範囲)の抗体試料25μLを添加し、37℃で3日間インキュベートした。培養細胞の生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiter-Gloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。対数変換された濃度軸を有するデータを、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して分析し、GraphPad Prismソフトウェアを使用してプロットした。
図16は、E430G Fc-Fc増強置換とC1q結合増強フォーマットS267E/H268F/S324T(
図16A)またはIgG113F(
図16B)との組み合わせが、接着性ヒトBxPC-3膵臓がん細胞に対する抗DR5抗体IgG1-CONA-C49Wのアゴニスト活性の誘導をもたらしたことを示している。E430G置換とK326W/E333S C1q結合増強変異との組み合わせは、IgG1-CONA-C49W-S267E/H268F/S324T/E430GおよびIgG113F-CONA-C49W-E430Gと比較して、より強力なIgG1-CONA-C49W-K326W/E333S/E430GによるDR5アゴニスト活性をもたらした。
【0469】
実施例18:K326W/E333S/E430G置換を含有している1価抗DR5抗体の効力
BxPC-3膵臓がん細胞に対してオプソニン化されたK326W/E333S/E430G置換を含有している1価抗DR5抗体のアゴニスト活性に対する効果を研究するため、生存度アッセイを実施した。実施例1に記載されたように、IgG1-CONA-C49W-F405L-K326W/E333S/E430GとIgG1-b12-K409R-K326W/E333S/E430Gとの間の調節されたFabアーム交換によって、1価DR5抗体を生成した。BsAb(IgG1-CONA-C49W-F405L×IgG1-b12-K409R)-K326W/E333S/E430Gと呼ばれる生成された二重特異性抗体は、DR5に特異的な1本のアームおよびHIV糖タンパク質gp120に対する1本の非特異的アームを含有しており、DR5陽性ヒト細胞における1価DR5結合をもたらす。本質的に実施例8に記載されたように、1日生存度アッセイをWIL2-S SF細胞において実施した。簡単に説明すると、無血清培地中の100μLのWIL2-S SF細胞を、96穴プレートにピペットで移した(50.000細胞/ウェル)。精製C1q(2.5μg/mLの最終濃度)25μLおよび濃度希釈系列(5倍希釈で0.0003~20μg/mLの最終濃度範囲)の抗体試料25μLを細胞に添加し、37℃で1日インキュベートした。細胞生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiter-Gloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。対数変換された濃度軸を有するデータを、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して分析し、GraphPad Prismソフトウェアを使用してプロットした。
図17は、K326W/E333S/E430G変異の存在下で、IgG1-CONA-C49Wの1価バリアントが、未だWIL2-S SF細胞の死滅を誘導することができたことを示している。
【0470】
実施例19:抗DR5抗体の異なるアイソタイプバリアントのアゴニスト活性に対するE430GとK326W/E333Sとの組み合わせの効果
K326W/E333S/E430G置換の導入が、非IgG1抗体骨格における抗DR5抗体のアゴニスト活性を誘導することができるか否かを試験するため、ヒトIgG3の定常ドメインを有するIgG1-CONA-C49WのIgG3アイソタイプバリアントを、当技術分野において公知の方法によって生成し、IgG3-CONA-C49Wを得た。IgG3骨格は、増強されたFcRn結合のためのR345H変異も含有していた(Stapleton et al.,2011 Nat Commun)。K326W/E333S/E430G置換を、IgG1アイソタイプバリアントおよびIgG3アイソタイプバリアントの両方に導入し、異なる細胞株:ヒトWIL2-S SF Bリンパ芽球、BxPC-3膵臓がん細胞およびHPAF-II(ATCC、CRL-1997)膵臓がん細胞、ならびにHT-29(ATCC、HTB-38)結腸がん細胞を使用したインビトロ生存度アッセイにおいて、異なる抗体のアゴニスト活性を試験した。本質的に実施例8に記載されたように、WIL2-S SF懸濁細胞を使用した生存度アッセイを実施した。簡単に説明すると、100μLのWIL2-S SF細胞を、96穴プレートに無血清培地でピペットで移した(50.000細胞/ウェル)。次に、精製C1q試料(2.5μg/mLの最終濃度)25μLおよび濃度希釈系列(5倍希釈で0.0003~20μg/mLの最終濃度範囲)の抗体試料25μLを細胞に添加し、37℃で1日インキュベートした。接着性細胞BxPC-3、HPAF-II、およびHT-29については、本質的に実施例3に記載されたように、3日生存度アッセイを実施した。簡単に説明すると、100μLの培養培地(25mMヘペスおよびL-グルタミン+10%熱不活化DBSI+50U/mL Pen/Strepを有するRPMI 1640)中の細胞を、96穴プレートにピペットで移し(5.000細胞/ウェル)、37℃での一晩のインキュベーションによって接着させた。次に、精製C1q試料(2.5μg/mLの最終濃度)25μLおよび濃度希釈系列(5倍希釈で0.0003~20μg/mLの最終濃度範囲)の抗体試料25μLを細胞に添加し、37℃で3日間インキュベートした。細胞生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiter-Gloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。対数変換された濃度軸を有するデータを、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して分析し、GraphPad Prismソフトウェアを使用してプロットした。
図18は、抗DR5抗体のIgG3バリアント(IgG3-DR5-CONA-C49W-R435H-K326W/E333S/E430G)におけるK326W/E333S/E430G置換の導入が、全ての試験された細胞株:WIL2S-SF(
図18A)、BxPC-3(
図18B)、HPAF-II(
図18C)、およびHT29(
図18D)において、アゴニスト活性の誘導をもたらしたことを示している。IgG1バリアントIgG1-DR5-CONA-C49W-K326W/E333S/E430Gは、全ての試験された細胞株において、IgG3バリアントIgG3-DR5-CONA-C49W-R435H-K326W/E333S/E430Gより強力であった。
【0471】
実施例20:抗DR5抗体のアゴニスト活性に対するE430GとK326W/E333Tとの組み合わせの効果
DR5陽性WIL2-S細胞における抗DR5抗体IgG1-CONA-C49Wのアゴニスト活性に対する、Fc-Fc増強置換E430GとK326W/E333Tとの組み合わせの効果を、K326W/E333Sと比較して評価するため、生存度アッセイを実施した。本質的に実施例8に記載されたように、インビトロ生存度アッセイを実施した。簡単に説明すると、100μLのWIL2-S細胞を、培養培地(25mMヘペスおよびL-グルタミン(Lonza、カタログ番号BE12-115F)+10%熱不活化DBSI+1mMピルビン酸ナトリウム(Lonza、カタログ番号BE13-115E)+50U/mL Pen/Strepを有するRPMI 1640)で、96穴プレートにピペットで移した(50.000細胞/ウェル)。次に、濃度希釈系列(5倍希釈で0.001~20μg/mLの最終濃度範囲)の抗体試料50μLおよび精製C1q試料(2.5μg/mLの最終濃度)10μLを細胞に添加し、37℃で1日インキュベートした。細胞生存度を、実施例2に記載されたようなcellTiterGloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。データを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して、分析し、プロットした。
図19は、IgG1-CONA-C49WにおけるK326W/E333T/E430Gの導入が、WIL2-S細胞のインビトロ生存度アッセイにおいて、K326W/E333S/E430Gの導入の場合と類似した死滅効力で、単一薬剤のDR5アゴニスト活性の誘導をもたらしたことを示している。
【0472】
実施例21:Fc-Fc増強変異および/またはC1q結合に影響するFc変異を含有しているIgG1-CONA-C49W抗体バリアントの薬物動態学的(PK)分析
IgG1-CONA-C49Wのクリアランス速度に対するE430G Fc-Fc増強変異およびC1q結合増強変異の効果を、SCIDマウスにおけるPK実験において研究した。全ての試験された抗体バリアントは、表6にリストされる。動物実験は、ディレクティブ(2010/63/EU)より翻訳されたDutch animal protection law(WoD)に従って、適用可能な場合には、Code of Practice "animal experiments for cancer research"(Inspection V&W,Zutphen,The Netherlands,1999)に従って実施され、Ethical committee of Utrechtによって承認された。動物は、AAALACおよびISO 9001:2000によって認定された動物施設(GDL)において、FELASAによって定義されるグッドアニマルプラクティス(good animal practice)に従って収容され、扱われた。11~12週齢の雌SCIDマウス(C.B-17/IcrHan(登録商標)Hsd-Prkdc
scid;Envigo SCIDマウス)に、200μLの注射体積で、450μgの抗体(22.5mg/kg)を静脈内注射した(各群3匹)。抗体投与後10分目、4時間目、1日目、2日目、7日目、14日目、および20日目に、50μLの血液試料を伏在静脈より収集した。ヘパリンを含有しているバイアルに血液を収集し、14,000gで10分間遠心分離した。20μLの血漿試料を、380μLのPBSで希釈し(1:20)、抗体濃度の決定まで、-20℃で保管した。全ヒトIgG濃度を、サンドイッチELISAを使用して決定した。マウス抗ヒトIgGκmAbクローンMH16(CLB Sanquin、カタログ番号M1268)を、捕獲抗体として使用し、PBS中2μg/mLの濃度で、100μLで、4℃で一晩、96穴Microlon ELISAプレート(Greiner、Germany)にコーティングした。プレートを、0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)が補足されたPBSと共に、RTで1時間、プレートシェーカー上でインキュベートすることによって、ブロッキングした。洗浄後、100μLの希釈された血漿試料を添加し、RTで1時間、プレートシェーカー上でインキュベートした。プレートを300μLのPBST(0.05%トゥイーン20が補足されたPBS)で3回洗浄し、その後、100μLのペルオキシダーゼによって標識されたヤギ抗ヒトIgG免疫グロブリン(#109-035-098、Jackson、West Grace,PA;0.2%BSAが補足されたPBSTで1:10.000)と共に、RTで1時間、プレートシェーカー上でインキュベートした。プレートを、300μLのPBSTで3回、再び洗浄した後、光から保護された100μLの基質2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)[ABTS;Roche、カタログ番号11112 422001;50mL ABTS緩衝液中の1錠(Roche、カタログ番号11112 597001)]と共に、RTで15分間、インキュベートした。100μLの2%シュウ酸を添加し、RTで10分間インキュベートすることによって、反応を中止した。吸光度を、405nmにおいてマイクロプレートリーダー(Biotek,Winooski,VT)で測定した。注射された材料を参照曲線として使用することによって、濃度を計算した。プレート対照として、IgG(結合部位、カタログ番号BP078)を含有しているヒト骨髄腫タンパク質を含めた。Graphpad prismを使用して、ヒトIgG濃度(μg/mL)をプロットし(
図20A)、濃度曲線下面積(AUC)を計算した。クリアランス速度を、血液試料採取の最終日(21日目)まで、式D
*1.000/AUC(Dは22.5mg/kgの注射用量である)によって決定した(
図20B)。E430G Fc-Fc増強変異および/またはC1q結合増強変異を含有している全ての試験されたIgG1-CONA-C-49Wバリアントが、WT IgG1と比較可能なクリアランス速度を示した(
図20A、B)。結論として、K326W/E333SまたはK326A/E333AのようなC1q結合増強変異の導入は、IgG1-CONA-C49W-K326W/E333S/E430GおよびIgG1-CONA-C49W-K326A/E333A/E430GのようなE430G Fc-Fc増強変異を含有しているIgG1抗体のクリアランス速度に有意に影響しない。
【0473】
(表6)scidマウスにおけるPK分析において試験されたIgG1-CONA-C49W抗体バリアント
【0474】
実施例22:IgG1抗体のFcRn結合に対するE430G Fc-Fc増強変異とC1q結合増強変異K326A/E333AまたはK326W/E333Sとの組み合わせの効果
新生児型Fc受容体(FcRn)は、IgGを分解から保護することによって、IgGの長い血漿中半減期を担っている。抗体の内部移行後、温和に酸性の環境(pH6.0)で相互作用が安定しているエンドソームにおいて、FcRnが抗体Fc領域に結合する。環境が中性(pH7.4)である細胞膜への再利用時に、相互作用が失われ、抗体が循環血中に戻し放出される。これは、IgGの血漿中半減期に影響を及ぼす。IgG1-7D8抗体バリアントへのヒトFcRnの結合に対するFc-Fc増強変異とC1q結合増強変異K326A/E333AまたはK326W/E333Sとの組み合わせの導入の効果を評価するため、FcRn結合ELISAを実施した。IgG1-7D8-I235A/H310A/H435Aを、FcRn結合についての陰性対照として使用し(FcRnノックアウト;Shields et al.,J.Biol.Chem.2001;276:6591);IgG1-7D8-M252Y/S254T/T256Eを、増強されたFcRn結合についての対照として使用した(Dall'Acqua et al.,J Biol Chem.2006 Aug 18;281(33):23514-24)。全てのインキュベーションを室温で行った。96 streptawellプレート(Roche、カタログ番号1734776001)を、PBST+0.2%BSAで希釈された5μg/mL(100μL/ウェル)の組換え作製されたヒトFcRnのビオチン化細胞外ドメイン(FcRnECDHis-B2M-BIO、即ち、β2ミクログロブリンとの二量体としてのC末端のHisタグおよびBAPタグを有するヒトFcRnの細胞外ドメイン)によって1時間コーティングした。プレートをPBSTで3回洗浄した。段階希釈された抗体試料(PBST/0.2%BSA(pH6.0)による3倍希釈で0.003~10μg/mLの最終濃度範囲)を添加し、1時間インキュベートした。プレートを、PBST/0.2%BSA(pH6.0)で洗浄した。PBST/0.2%BSA(pH6.0または7.4)で希釈された西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたポリクローナルヤギ抗ヒトIgG(1:10,000;Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-035-097)を添加し、プレートを1時間インキュベートした。洗浄後、100μL ABTS(1mg/mL)を基質として添加し、プレートを光から保護して30分間インキュベートした。100μLの2%シュウ酸を使用して反応を中止し、吸光度を、ELx808 Absorbance Microplate Reader(BioTek)を使用して、405nmにおいて測定した。対数変換されたデータを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、可変性の傾きを有するシグモイド用量応答曲線の適合によって分析した。陰性対照(IgG1-7D8-I235A/H310A/H435A)は、pH6.0で、ヒトFcRn結合の完全な喪失を示し(
図21A)、陽性対照(IgG1-7D8-M252Y/S254T/T256E)は、pH6.0で、WT IgG1-7D8と比較して増強されたヒトFcRnとの結合を示し、pH7.4で、結合の喪失を示した(
図21B)。C1q結合増強変異を含むかまたは含まない、Fc-Fc増強変異を有する全ての試験されたIgG1-7D8バリアントが、pH6.0で、ヒトFcRnとの効率的な結合を示し、pH7.4で、結合の喪失を示した。しかしながら、WT IgG1-7D8と比較して、Fc-Fc増強変異E430G単独の導入は、pH6.0で、ヒトFcRnとのわずかに減少した結合をもたらし、それは、C1q結合増強変異K326A/E333AまたはK326W/E333S変異と組み合わせられた時、わずかに、さらに減少した。
【0475】
実施例23:K326W/E333S/E430G置換を含有している抗CD20 IgG1-7D8抗体バリアントによるADCC活性に対するC1qの効果
E430G Fc-Fc増強変異およびC1q結合増強置換K326W/E333Sの両方を含有している抗CD20 IgG1-7D8抗体バリアントのADCC活性に対するC1qの効果を、無血清培地においてWIL2-S SF細胞を使用したクロム放出アッセイにおいて試験した。WIL2-S SF細胞を採集し(5×10
6細胞/mL)、洗浄し(PBSで2回、1,200rpm、5分)、1mLの無血清培地(10%ピルビン酸ナトリウムが補足されたHyQ ADCF-Mab培地)に収集した。200μCi
51Cr(クロム51;Amersham Biosciences Europe GmbH)を添加し、37℃で1時間、水浴中で振とうしながらインキュベートした。細胞の洗浄(PBSで2回、1,200rpm、5分)の後、細胞を無血清培地に再懸濁させた。クロム標識細胞を、トリパンブルー排除によって計数し、1×10
5細胞/mLの濃度に希釈した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、製造業者の説明書(リンパ球分離培地;Lonza)に従って、標準的なフィコール密度遠心分離を使用して、健常ドナー由来の新鮮なバフィーコート(Sanquin)から単離した。PBMCの無血清培地への再懸濁の後、PBMCを、トリパンブルー排除によって計数し、1×10
7細胞/mLに濃縮した。ADCC実験のため、50μLのクロム標識WIL2-S SF細胞を、96穴プレートにピペットで移した(5,000細胞/ウェル)。希釈系列(3倍希釈で0.003~10μg/mLの最終濃度範囲)からの抗体試料25μLおよび精製ヒトC1q(2.5μg/mLの最終濃度)または培地25μLを添加し、RTで10分間プレインキュベートした。次に、50μLのPBMC(500.000細胞/ウェル)を添加し、100:1のエフェクター標的比をもたらし、37℃で4時間インキュベートした。50μLのクロム標識WIL2-S SF細胞(5,000細胞/ウェル)を100μLの5%トリトンX100(Sigma Aldrich)と共にインキュベートすることによって、最大細胞溶解を決定した。抗体およびエフェクター細胞を含まない150μLの培地において、クロム標識WIL2-S SF細胞(5,000細胞/ウェル)をインキュベートすることによって、自発的溶解を決定した。抗体の非存在下で、150μLの全体積で、クロム標識WIL2-S SF細胞(5,000細胞/ウェル)をPBMC(500.000細胞/ウェル)と共にインキュベートすることによって、抗体非依存性の細胞溶解を決定した。細胞溶解の量を、シンチレーションカウンターを使用して決定した。細胞を遠心分離し(1,200rpm;3分)、25μLの上清を、100μLのmicroscint-40溶液が充填された96穴白色optiplateに移した。上清中に放出された
51Crを、シンチレーションカウンターを使用して計数した。以下の式に従って、抗体によって媒介される溶解の百分率を計算するため、測定されたカウント毎分(cpm)を使用した:(試料のcpm - 抗体非依存性溶解のcpm)/(最大溶解のcpm - 自発的溶解のcpm)×100%。陰性対照として、非特異的なIgG1-b12抗体、ならびに補体の結合および活性化ならびにFcγR結合およびADCCの誘導を排除することが公知であるL234A/L235A/P329G置換(Lo et al.JBC 2017)を含むIgG1-7D8バリアントを試験した。予想通り、非特異的抗体IgG1-b12について、ADCC活性は、C1qの非存在下でも存在下でも観察されなかった(
図22)。IgG1-7D8-F405L-K326W/E333S/E430G抗体については、2.5μg/mL精製ヒトC1qの添加が、無血清培地中のWIL2-S SF細胞に対するADCC活性の阻害をもたらした。対照的に、C1qは、WT IgG1-7D8およびIgG1-7D8-E430GのADCC活性に影響しなかった。
【0476】
実施例24:抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56TおよびIgG1-hDR5-05のアゴニスト活性に対するK326W/E333S/E430Gの効果
抗DR5抗体IgG1-hDR5-01-G56TおよびIgG1-hDR5-05のアゴニスト活性に対するFc-Fc増強変異E430GとC1q結合増強変異K326W/E333Sとの組み合わせの導入の効果を、WIL2-S SF細胞を使用したインビトロ生存度アッセイにおいて試験した。本質的に実施例8に記載されたように、1日生存度アッセイを実施した。簡単に説明すると、100μLの無血清培地中の細胞を、96穴プレートにピペットで移した(50.000細胞/ウェル)。濃度希釈系列(5倍希釈で0.0003~20μg/mLの最終濃度範囲)の抗体試料25μLおよび精製C1q(2.5μg/mLの最終濃度)25μLを添加し、37℃で1日インキュベートした。細胞生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiterGloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。データを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して、分析し、プロットした。
【0477】
E430G Fc-Fc増強変異およびK326W/E333S C1q結合増強変異の両方の導入は、試験された抗体IgG1-hDR5-01-G56TおよびIgG1-hDR5-05の両方についてDR5アゴニスト活性の誘導をもたらしたが、E430G Fc-Fc増強変異のみが導入された時、これらの抗体は、細胞死滅を誘導しなかった(
図23)。
【0478】
実施例25:アゴニスト抗DR5抗体の組み合わせにおけるK326W/E333S/E430Gと相補的Fc変異対K439E;S440Kとの適合性
異なる細胞表面標的に結合した抗体の間の分子間Fc-Fc相互作用を調節することができる相補的Fc変異対K439E;S440Kのような他のFc改変変異との、K326W/E333S/E430G変異の適合性を、WIL2-S SF細胞のインビトロ生存度アッセイにおいて、抗DR5アゴニスト抗体の組み合わせIgG1-hDR5-01-K326W/E333S/E430G+IgG1-hDR5-05-K326W/E333S/E430Gを使用して試験した。本質的に実施例8に記載されたように、1日生存度アッセイを実施した。簡単に説明すると、100μLの無血清培地中の細胞を、96穴プレートにピペットで移した(50.000細胞/ウェル)。濃度希釈系列(5倍希釈で0.0003~20μg/mLの最終濃度範囲)の抗体試料25μLおよび精製C1q(2.5μg/mLの最終濃度)25μLを添加し、37℃で1日インキュベートした。細胞生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiterGloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。データを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して、分析し、プロットした。
図24は、Fc-Fc阻害変異K439Eを含有している単一の抗体IgG1-hDR5-01-K326W/E333S/E430G-K439Eが、細胞死滅をほとんど誘導しなかったことを示している。Fc-Fc阻害変異S440Kを含有しているIgG1-hDR5-05-K326W/E333S/E430G-S440Kは、いくらかの細胞死滅を誘導したが、最大死滅は100%ではなかった。対照的に、2個の相補的なFc-Fc調節変異K439EおよびS440Kを組み合わせた、IgG1-hDR5-01-K326W/E333S/E430G-K439E+IgG1-hDR5-05-K326W/E333S/E430G-S440Kの両方の組み合わせは、効率的な細胞死滅を示し、それは、相補的なFc-Fc調節変異K439EおよびS440Kを含まない組み合わせと類似していた。K326W/E333S/E430G変異を含有している抗体の組み合わせ(相補的な変異K439E;S440Kを含むものおよび含まないもの)による細胞死滅は、E430G Fc-Fc増強変異のみを含有している抗体の組み合わせよりはるかに効率的であった(IgG1-hDR5-01-K326W/E333S/E430G-K439E+IgG1-hDR5-05-K326W/E333S/E430G-S440K)。
【0479】
実施例26:抗CD52抗体のCDC効力に対するC1q結合増強置換K326W/E333SとK248E/T437Rとの組み合わせの効果
K326W/E333S C1q結合増強変異と細胞表面における抗体多量体形成化を容易にするK248E/T437R置換(Zhang et al.,2017 MAbs(9)7:1129-42)との組み合わせのCDC効力に対する効果を、CD52陽性Wien133 B細胞リンパ腫細胞において、(アレムツズマブに基づく)抗CD52 IgG1-キャンパスバリアントを使用して試験した。(Dr.Geoff Hale,BioAnaLab Limited,Oxford,UKに提供いただいた)Wien133細胞を採集し、培地[0.2%ウシ血清アルブミン(BSA;Roche、カタログ番号10735086001)を含むRPMI(Lonza、カタログ番号BE12-115F)]に再懸濁させた。40μLの細胞を、丸底96穴プレートにピペットで移した(0.1×10
6細胞/ウェル)。40μLの段階希釈された抗体試料(4倍希釈で0.002~40μg/mLの最終濃度範囲)を添加し、振とうしながらRTで15分間インキュベートした。次に、20μLのNHS(20%の最終濃度)をヒト補体の起源として添加し、37℃で45分間インキュベートした。試料を氷上に置くことによって反応を中止した。冷却された細胞をペレット化し、30μLの2μg/mLヨウ化プロピジウム(PI;Sigma Aldrich)に再懸濁させた。試料を、Intellicyt iQue Screener PLUSでのフローサイトメトリーによって分析し、溶解百分率を、以下の式によって決定した:溶解%=(PI陽性細胞数/全細胞数)×100%。
図25は、WT IgG1-キャンパスにおける六量体化増強単一変異E430Gまたは多量体化増強二重変異K248E/T437Rの導入が、Wien133細胞における増加したCDC効力をもたらしたことを示している。IgG1-キャンパス-K248E/K326W/E333S/T437Rにおいて、細胞表面における多量体化を容易にするK248E/T437R変異と、C1q結合を増強するK326W/E333S変異とを組み合わせることによって、CDC効力はさらに増強された。
【0480】
実施例27:C1qの存在下でのアゴニスト抗DR4抗体の効力に対するE430GとK326W/E333Sとの組み合わせの効果
DR4陽性BxPC-3細胞における抗DR4抗体chCTB007のアゴニスト活性に対する六量体化増強変異E430GとK326W/E333Sとの組み合わせの効果を研究するため、生存度アッセイを実施した。本質的に実施例2に記載されたように、生存度を実施した。簡単に説明すると、100μLのBxPC-3単細胞懸濁物をポリスチレン96穴平底プレートに培養培地(10%熱不活化DBSIを含有しているRPMI)で播種し(1ウェル当たり5,000細胞)、37℃で一晩接着させた。精製C1q試料(2.5μg/mLの最終濃度)25μLおよび濃度希釈系列(5倍希釈で0.00001~20μg/mLの最終濃度範囲)の抗体試料25μLを添加し、37℃で3日間インキュベートした。培養細胞の生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiter-Glo発光細胞生存度アッセイにおいて決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定し、データを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して、分析し、プロットした。
図26は、六量体化増強変異E430Gと2個の変異K326W/E333Sとの組み合わせが、2.5μg/mL精製C1qが補足された熱不活化ウシ胎仔血清の存在下で、接着性ヒトBxPC-3膵臓がん細胞のインビトロ生存度アッセイにおいて、単一薬剤として試験された時、三重変異体E345R/E430G/S440Yと類似した強力な死滅効力の誘導を、抗DR4抗体IgG1-DR4-chCTB007についてもたらしたことを示している。対照的に、これらの抗体は、野生型抗体IgG1-DR4-chCTB007として試験された時、または、変異E430Gのみが存在する時、これらの予め接着したBxPC-3細胞において効率的な死滅を示さなかった。これらのデータは、K326W/E333S/E430G変異が、C1qが補足された接着性BxPC-3細胞において抗DR4抗体の強力なアゴニスト活性を誘導したことを示している。
【0481】
実施例28:C1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせられた六量体化増強E430G変異の導入はFAS抗体による補体依存性細胞傷害(CDC)および細胞死誘導の効力を改善する
FAS受容体は、Fasリガンドによる受容体の架橋によってプログラム細胞死(アポトーシス)をもたらす細胞表面上のデスレセプターである(Wajant et al.,2002 Science 296(5573):1635-6)。FASは、アポトーシス抗原1(APO-1もしくはAPT)、表面抗原分類95(CD95)、または腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6(TNFRSF6)としても公知である。K326W/E333S/E430G三重変異を含有している抗FAS抗体によるCDCを、FAS陽性WIL2-S Bリンパ球におけるインビトロCDCアッセイにおいて分析した。異なるFAS抗体IgG1-FAS-E09、IgG1-CD95-APO1、およびIgG1-CD95-HFE7AにおけるC1q結合増強変異K326W E333Sと組み合わせられた六量体化増強変異E430Gの導入を、本質的に実施例26に記載されたように、WIL2-S SF細胞を使用したCDCアッセイにおいて研究した。簡単に説明すると、30μLのRPMI-1640培地中のWIL2-S SF細胞(3.33×10
6細胞/mL)を、丸底96穴プレートにおいて、50μLの抗体濃度系列(3倍希釈で0.003~10.0μg/mLの最終濃度)と共に、RTでシェーカー上で15分間プレインキュベートした(0.1×10
6細胞/ウェル)。次に、20μLの正常ヒト血清を、補体の起源として添加し(20%の最終濃度)、37℃のインキュベーターにおいて45分間インキュベートした。プレートを氷上に置くことによって反応を中止した。細胞溶解を、ヨウ化プロピジウム染色によって決定した。試料を、iQue Screenerを使用したフローサイトメトリーによって分析した。対数変換された濃度軸を有するデータを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して、分析し、プロットした。3種の野生型抗FAS抗体IgG1-FAS-E09(
図27A)、IgG1-CD95-APO1(
図27B)、およびIgG1-CD95-HFE7A(
図27C)は、全て、陰性対照抗体IgG1-b12と同様に、CDCを誘導しなかった。Fc-Fc増強変異(E430G)またはC1q結合増強変異(K326W/E333S)を含むIgG1-FAS-E09は、CDCを誘導する。IgG1-FAS-E09におけるE430GとK326W/E333Sとの組み合わせは、IgG1-FAS-E09-E345R/E430G/S440Yと類似した最大CDCをもたらした。類似したパターンが、IgG1-CD95-APO1で見られ、IgG1-CD95-APO1-E430Gが、CDCを誘導し、IgG1-FAS-E09-K326W/E333S/E430Gは、CDCをさらに強化することができる。抗体IgG1-CD95-HFE7Aについては、変異E430Gの付加は、CDCに対する効果を有しなかったが、三重変異K326W/E333S/E430Gを含むIgG1-CD95-HFE7Aは、CDCを最大溶解にまで完全に救済した。
【0482】
前記のCDCアッセイにおいて観察された細胞死滅が、補体によって媒介される溶解によるものであったことを確認するため、精製C1q(Quidel)が架橋剤として添加された無血清培地において、WIL2-S SFを使用して、生存度アッセイを実施した。本質的に実施例8に記載されたように、生存度アッセイを実施した。簡単に説明すると、100μLのWIL2-S SF細胞を、96穴プレートに無血清培地でピペットで移した(50.000細胞/ウェル)。次に、濃度希釈系列(5倍希釈で0.0003~20μg/mLの最終濃度範囲)の抗体試料50μLおよび精製C1q(2.5μg/mLの最終濃度)10μLを細胞に添加し、37℃で45分間または24時間インキュベートした。培養細胞の生存度を、実施例2に記載されたようなCellTiterGloアッセイを使用して決定した。発光を、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。対数変換された濃度軸を有するデータを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、非線形回帰(可変性の傾きを有するシグモイド用量応答)を使用して、分析し、プロットした。
図28は、2.5μg/mL C1qの存在下での抗体との45分間のインキュベーションの後の細胞のRLU(生データ)を示す。いずれの抗体も、この短いインキュベーション期間の後に細胞の生存度に影響しなかった。
【0483】
図29Aは、24時間生存度アッセイにおいて、単一の六量体化増強変異E430GおよびC1q結合増強変異K326W/E333Sの導入によって、FAS抗体IgG1-FAS-E09は、C1qの存在下で、WIL2-S SF細胞の用量依存性の死滅を誘導することができたが、野生型抗体は、試験された抗体濃度で死滅を誘導することができなかったことを示している。IgG1-FAS-E09においてFc-Fc増強変異E430GをC1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせた時、抗体は、C1qの存在下で、24時間生存度アッセイにおいて、E345R/E430G/S440Yと同等の効力を有するようになった。
図29Bは、IgG1-CD95-APO1抗体でも、E430GまたはK326W/E333S/E430Gの導入が、C1qの存在下で、WIL2-S SFの用量依存性の死滅をもたらし、K326W/E333S/E430G三重変異体が最も高い効力を有していたことを示している。
図29Cは、IgG1-CD95-HFA7Eについて、C1q結合増強とFc-Fc増強との組み合わせ(K326W/E333S/E430G)が、C1qの存在下で、増殖阻害を誘導するために必要とされることを示している。
【0484】
対照実験として、C1qなしでWIL2-S SF細胞を使用した24時間生存度アッセイも実施した。
図30Aは、六量体化増強変異E345R/E430G/S440Yの導入によって、FAS抗体IgG1-FAS-E09は、C1qと無関係にWIL2-S SF細胞の用量依存性の死滅を誘導することができたが、野生型抗体およびFc-Fc増強変異E430GまたはC1q結合増強変異K326W/E333Sのみを有する抗体バリアントは、C1qの非存在下で、試験された抗体濃度で、死滅を誘導することができなかったことを示している。しかしながら、Fc-Fc増強変異およびC1q結合増強変異の両方の導入(IgG1-FAS-E09-K326W/E333S/E430G)は、C1qの非存在下で、細胞生存度の25%もの喪失をもたらした。C1qの非存在下で、K326W/E333S/E430Gの導入は、IgG1-CD95-APO1については類似した効果を有していたが(
図30B)、IgG1-CD95-HFA7Eに対しては効果を有していなかった(
図30C)。
【0485】
結論として、抗FAS抗体におけるFc-Fc増強変異E430GとC1q結合増強変異K326W/E333Sとの組み合わせは、45分後にWIL2-S SF細胞のCDCを誘導することができた。C1qは単独では45分後に細胞の死滅を誘導しなかったため、この過程は完全に血清依存性であった。しかしながら、24時間のインキュベーションの後、変異K326W/E333S/E430Gを含む抗FAS抗体は、C1qの存在下で、死滅を誘導し、E430G変異体およびK326W/E333S変異体の死滅効力を上回っていた。
【0486】
実施例29:抗OX40抗体によるJurkat細胞上のOX40の活性化に対するE430G Fc-FC増強変異とK326W/E333S変異との組み合わせの効果
OX40リガンド(OX40L)によるOX40リガンド受容体(CD134)の架橋は、OX40を発現するT細胞の増殖を誘導することができる(Gramaglia et al.,1998 J.Immunol.161,6510-6517)。OX40シグナリングに対する変異K326W/E333Sの効果を、本質的に製造業者によって供給された説明書に従って、OX40 Bioassay Kit(Promega、カタログ番号CS197704)を使用して、抗OX40抗体IgG1-SF2の異なるバリアントを使用して試験した。NFAT応答要素の下流にヒトOX40およびルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に発現するThaw-and-Use GloResponse NFκB-luc2/OX40 Jurkat細胞(Promega、カタログ番号CS197704)は、OX40活性化時にルシフェラーゼを発現する。25μLの新鮮に解凍された細胞を、8%ウシ胎仔血清(FBS,Promega Ref.J121A)の存在下で、25μLのRPMI 1640培地(Promega、カタログ番号G708A)で、96穴白色F底Optiplate(Perkin Elmer、カタログ番号6005299)において一晩インキュベートした。翌日、抗体の段階希釈物(4倍希釈で19.5~5,000ng/mLの最終濃度)を、80μLの最終体積で培地中の細胞に添加した。細胞を、さらに5時間インキュベートした後、Bio-Glo Reagent(Promega、カタログ番号CS197704)を添加した。環境温度における5~10分間のインキュベーションの後、発光を、Envision MultiLabel Plateリーダーを使用して記録した。
図31は、野生型抗OX40抗体IgG1-CD134-SF2がOX40応答を誘導しなかったことを示している。Fc-Fc増強変異の導入は、E345Rと共に、OX40応答の強力な誘導をもたらし、E430Gと共に、軽度の誘導をもたらした。E430G Fc-Fc増強変異とC1q結合増強変異K326W/E333Sとの組み合わせは、IgG1-SF2の強力なアゴニスト活性をもたらした。
【0487】
実施例30:ウシ胎仔血清の存在下での抗CD40抗体によるU20S細胞上のCD40の活性化に対するK326W/E333S/E430G変異の効果
TH細胞上のCD40リガンドによる、抗原提示細胞上に見出されるCD40受容体の架橋は、多様な下流効果を誘導することができる(Chatzigeorgiou et al.,2009 BioFactors(Oxford,England)35(6):474-83)。CD40シグナリングに対する変異K326W/E333S/E430Gの効果を、本質的に製造業者によって供給された説明書に従って、CD40 Bioassay Kit(Promega、カタログ番号CS1979A06)を使用して、抗CD40抗体の異なるバリアント、SGN40およびCP870893を使用して試験した。NFAT応答要素の下流にヒトCD40およびルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に発現するThaw-and-Use GloResponse NFκB-luc2P/U20S細胞は、CD40活性化時にルシフェラーゼを発現する。25μLの新鮮に解凍された細胞を、8%ウシ胎仔血清(J1211)の存在下で、25μLのRPMI 1640培地(Promega、カタログ番号G708A)で、96穴白色F底Optiplate(Perkin Elmer、カタログ番号6005299)において一晩インキュベートした。翌日、抗体または精製された組換えCD40リガンド(R&D systems、カタログ番号6420-CL-025/CF)の段階希釈物を、80μLの最終体積で培地中の細胞に添加した。細胞をさらに5時間インキュベートした後、Bio-Glo Reagent(Promega、カタログ番号CS197704)を添加した。環境温度における5~10分のインキュベーションの後、発光を、Envision MultiLabel Plateリーダーを使用して記録した。ウシ胎仔血清(FBS、Promega Ref.J121A)を血清源として使用した。抗体を、0.1~25,000ng/mLの範囲の段階希釈で試験した。CD40応答アッセイにおける陽性対照として使用された組換えCD40リガンド(0.04~10,000ng/mLの範囲の段階希釈)は、非結合性陰性対照抗体IgG1-b12と比べて明白な応答シグナルを誘導した(
図32)。野生型抗CD40抗体IgG1-SGN40は、陰性対照抗体IgG1-b12に本質的に類似しているCD40応答レベルを誘導した。対照的に、細胞表面結合後に抗体間のFc-Fc相互作用を誘導するE430G変異のみを含有しているIgG1-CD40-SGN40バリアントは、CD40応答を誘導した(EC50 336.4±15.3 SD ng/mL)。C1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせられたE430G Fc-Fc増強変異を含むバリアントIgG1-CD40-SGN40は、IgG1-SGN40の効力をさらに増強した(EC50 18.0±1.1 SD ng/mL)。野生型抗体IgG1-CD40-CP870893は、CD40応答を既に誘導することができ(EC50 187.4±9.2 SD ng/mL)、それは、K326W/E333S/E430Gによって、CD40リガンドと類似したレベルにまでさらに強化され得る(EC50 45.9±3.3 SD ng/mL)。
【0488】
結論として、K326W/E333S/E430G変異は、ウシ胎仔血清の存在下で抗CD40抗体によるU20S細胞上のCD40の活性化を強化した。
【0489】
(表7)CD40リガンドならびにIgG1-CD40抗体およびバリアントのEC50およびSD
【0490】
実施例31:ウシ胎仔血清の存在下での抗4-1BB抗体によるJurkat細胞上の4-1BB(CD137)の活性化に対するK326W/E333S/E430G変異の効果
4-1BBまたはCD137または腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9)は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーであり、リンパ球活性化によって誘導される(ILA)(Schwarz et al.,1993,Gene.134(2):295-8)。4-1BBの架橋は、T細胞の増殖、IL-2分泌、生存、および細胞溶解活性を増強する(Sica et al.,2000 Arch.Immunol.Ther.Exp.(Warsz.).47(5):275-9)。4-1BBシグナリングに対する変異K326W/E333S/E430Gの効果を、本質的に製造業者によって供給された説明書に従って、4-1BB Bioassay Kit(Promega、カタログ番号CS196005)を使用して、抗4-1BB抗体の異なるバリアント、MOR7480およびBMS-663513を使用して試験した。NFAT応答要素の下流にヒト4-1BBおよびルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に発現するThaw-and-Use GloResponse(商標)NFκB-luc2P/4-1BB Jurkat細胞は、CD40活性化時にルシフェラーゼを発現する。25μLの新鮮に解凍された細胞を、1%ウシ胎仔血清(J121A)の存在下で、25μLのRPMI 1640培地(Promega、カタログ番号G708A)で、96穴白色F底Optiplate(Perkin Elmer、カタログ番号6005299)において一晩インキュベートした。翌日、抗体の段階希釈物またはHisタグを有する精製された組換え4-1BBリガンド(R&D systems、2295-4L-025/CF)および抗Hisタグ抗体(クローンJ099B12)を、80μLの最終体積で培地中の細胞に添加した。細胞をさらに5時間インキュベートした後、Bio-Glo Reagent(Promega、カタログ番号CS197704)を添加した。環境温度における5~10分間のインキュベーションの後、発光をEnvision MultiLabel Plateリーダーを使用して記録した。ウシ胎仔血清(FBS、Promega Ref.J121A)を血清源として使用した。4-1BB応答アッセイにおける陽性対照として使用された組換え4-1BBリガンドと抗His Abとの混合物は、非結合性陰性対照抗体IgG1-b12-WSGと比べて明白な応答シグナルを誘導した(
図33)。C1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせられたFc-Fc増強変異E430Gを含有している試験された抗体は、ウシ胎仔血清の存在下で、Jurkat細胞における4-1BBシグナリングの用量依存性の活性化を誘導した(IgG1-CD137-MOR7480-K326W/E333S/E430GについてはEC50 16.9ng/mL、IgG1-BMS-663513-K326W/E333S/E430GについてはEC50 32.9ng/mL)。
【0491】
実施例32:ウシ胎仔血清の存在下での抗GITR抗体によるJurkat細胞上のGITRの活性化に対するK326W/E333S/E430G変異の効果
GITR(グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質)または腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18(TNFRSF18)は、TNFRスーパーファミリーのメンバーである。GITRは、APC上に主として発現しているGITRリガンド(GITRL)によって活性化される。最適以下のTCR刺激後の、アゴニスト抗体、組換えGITRL、またはGITRLトランスフェクタントによるT細胞上のGITRの会合は、CD25をアップレギュレートし、IL-2およびIFNγの発現を誘導し、増殖を強化することによって、T細胞活性化を増強する(Knee et al.,in Eur J Canccer.2016 Nov;67:1-10)。
【0492】
GITRシグナリングに対する変異K326W/E333S/E430Gの効果を、本質的に製造業者によって供給された説明書に従って、GITR Bioassay Kit(Promega、カタログ番号CS184006)を使用して、抗GITR抗体の異なるバリアント、INCAGN01876を使用して試験した。NFAT応答要素の下流にヒトGITRおよびルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に発現するThaw-and-Use GloResponse NFκB-luc2P/GITR Jurkat細胞は、GITR活性化時にルシフェラーゼを発現する。25μLの新鮮に解凍された細胞を、8%ウシ胎仔血清(J1211)の存在下で、25μLのRPMI 1640培地(Promega、カタログ番号G708A)で、96穴白色F底Optiplate(Perkin Elmer、カタログ番号6005299)において一晩インキュベートした。翌日、抗体の段階希釈物を、80μLの最終体積で培地中の細胞に添加した。細胞をさらに5時間インキュベートした後、Bio-Glo Reagent(Promega、カタログ番号CS197704)を添加した。環境温度における5~10分間のインキュベーションの後、発光をEnvision MultiLabel Plateリーダーを使用して記録した。ウシ胎仔血清(FBS、Promega Ref.J121A)を血清源として使用した。非結合性陰性対照抗体IgG1-b12は、バックグラウンドシグナルを定義する。野生型抗GITR抗体IgG1-GITR-INCAGN01876は、陰性対照抗体IgG1-b12をかろうじて超えるGITR応答レベルを誘導した(
図34)。対照的に、E430G Fc-Fc増強変異のみを含有しているIgG1-GITR-INCAGN01876バリアントは、より強力なGITR応答を誘導した。C1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせられたE430G Fc-Fc増強変異を有するIgG1-GITR-INCAGN01876は、IgG1-GITR-INCAGN01876の効力をさらに増強した。
【0493】
結論として、K326W/E333S/E430G変異は、ウシ胎仔血清の存在下で、抗GITR抗体によるJurkat細胞上のGITRの活性化を強化する。
【0494】
実施例33:ウシ胎仔血清の存在下での異なるIgGサブクラスの抗GITR抗体によるJurkat細胞上のGITRの活性化に対するK326W/E333S/E430G変異の効果
GITRシグナリングに対する変異K326W/E333S/E430Gの効果を、ウシ胎仔血清の存在下で、実施例32に記載されたようなGITR Bioassay Kitを使用して、抗GITR抗体36E5のIgG1サブクラス、IgG2サブクラス、IgG3サブクラス、およびIgG4サブクラスのバリアントを使用して試験した。抗体を111ng/mLの最終濃度で試験した。野生型IgG1抗GITR抗体IgG1-GITR-36E5は、非結合性対照IgG1-b12と比較して低いGITRアゴニスト応答を誘導した(
図35)。E430G Fc-Fc増強変異の導入は、GITRアゴニスト応答の中程度の増加をもたらした。C1q結合増強変異K326W/E333Sと組み合わせられたE430G Fc-Fc増強変異を含むIgG1-GITR-36E5バリアントは、抗体の効力を最大応答にまでさらに増強した。IgG2サブクラスIgG2-GITR-36E5におけるK326W/E333S/E430Gの導入は、中程度のGITRアゴニスト応答をもたらした。IgG3-GITR-36E5およびIgG4-GITR-36E5において、K326W/E333S/E430G変異の導入は、WT IgG1抗体のレベルに類似した低いGITRアゴニスト応答をもたらした。
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