IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリエンタル白石株式会社の特許一覧

特許7577471間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法
<>
  • 特許-間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法 図1
  • 特許-間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法 図2
  • 特許-間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法 図3
  • 特許-間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法 図4
  • 特許-間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法 図5
  • 特許-間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法 図6
  • 特許-間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法 図7
  • 特許-間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法 図8
  • 特許-間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 23/04 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
B28B23/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020117291
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014761
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 勇
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-016105(JP,U)
【文献】実開昭61-011818(JP,U)
【文献】特開昭62-077906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 21/00-23/22
E04C 5/00- 5/20
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレテンション方式でコンクリート製品にプレストレスを付与する際にコンクリート製品の両脇に設置されてPC鋼材の間隔を保持する間隔保持具であって、
前記コンクリート製品の両脇に設置されてプレストレスを付与する前記PC鋼材の緊張ルートが固定された一対の固定式間隔保持具と、前記一対の固定式の間隔保持具の内側の前記コンクリート製品の両脇に設置されて前記PC鋼材の緊張ルートを引き下げて変更可能な一対の可変式間隔保持具と、を備え、
前記可変式間隔保持具は、前記PC鋼材を挿通して間隔を保持する間隔保持部と、この間隔保持部を支える一対の支柱と、前記一対の支柱の脚部同士を連結する連結部と、を有し、
前記間隔保持部は、前記支柱に対して上下移動自在に構成されており、
前記可変式間隔保持具は、前記間隔保持部と前記連結部とを繋いでPC鋼材の高さを前記PC鋼材に緊張力がかかった状態で変更する高さ変更手段をさらに有すること
を特徴とする間隔保持具。
【請求項2】
前記高さ変更手段は、手動で高さを変更可能な手動の高さ変更手段であること
を徴とする請求項1に記載の間隔保持具。
【請求項3】
凹凸を有するコンクリート製品にPC鋼材によりプレテンション方式でプレストレスを付与してプレテンションPC製品を製造するプレテンションPC製品の製造方法であって、
前記PC鋼材を緊張する緊張工程では、前記プレテンションPC製品の凹凸が、前記凹凸を有する前記プレテンションPC製品の型枠と干渉しない高さに固定式の間隔保持具を設置し、前記固定式の間隔保持具の内側に、請求項1又は2に記載の可動式間隔保持具を設置し、前記コンクリート製品の型枠付近で前記PC鋼材の張設ルートを下側に迂回して緊張するとともに、
前記プレテンションPC製品を上方に持ち上げて脱型する脱型工程では、前記可動式間隔保持具の前記高さ変更手段を用いて、前記PC鋼材の高さを前記プレテンションPC製品の凹凸が前記型枠と干渉しない高さに変更して脱型すること
を特徴とするプレテンションPC製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレテンション方式でコンクリート製品にプレストレスを付与する際にコンクリート製品の脇に設置されてPC鋼材の間隔を保持する可動式間隔保持具及びそれを用いたプレテンション製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレテンション方式でコンクリート製品にプレストレスを付与する際は、図8(a)に示すように、固定物12にPC鋼材11の一端を固定してコンクリート製品(10)に挿通するPC鋼材11の間隔に応じて固定物12から扇状に固定式の間隔保持具13でPC鋼材11を広げて挿通する。そして、PC鋼材11の他端側でも同様に固定式の間隔保持具13を介して固定物12において緊張ジャッキ(図示せず)で緊張することにより、プレストレスを導入していた。なお、以下、プレテンション方式でプレストレスが導入されたコンクリート製品は、プレテンションPC(Prestressed Concrete:プレストレスト コンクリート)製品10という。
【0003】
このとき、図9(a)に示すように、脱型してPC鋼材11の緊張力を緩める際に、図9(b)に示すように、固定側にプレテンションPC製品10が引っ張られて移動することになる。このため、図9に示すように、プレテンションPC製品10に凹凸がある場合は、図8(b)に示すように、PC鋼材11に緊張力が付与された緊張状態で脱型時の移動に凹凸が干渉しない高さまでプレテンションPC製品10を持ち上げる必要があった。しかし、緊張状態で上方に持ち上げるとPC鋼材11を介して緊張力に応じた下方へのベクトル成分が作用してしまい、プレテンションPC製品10に曲げ応力が伝達されてひび割れ等の悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0004】
プレテンション方式でコンクリート製品にプレストレスを付与するプレテンションPC製品の製造方法としては、例えば、特許文献1には、型枠にPC鋼材を配置して緊張力を加え、その後コンクリートを打設し硬化した後、脱型し、脱型状態でPC鋼材の緊張力を開放してプレストレスを導入するプレテンションPC製品の製造方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の第2頁左上欄第14行目~左下欄第16行目、図面の第1図~第3図等参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のプレテンションPC製品の製造方法は、緊張状態で上方に持ち上げるとPC鋼材を介して緊張力に応じた下方へのベクトル成分が作用してしまい、プレテンションPC製品に曲げ応力が伝達されて悪影響を及ぼすという問題について何ら考慮がなされていなかった。
【0006】
また、特許文献2には、面型枠3と、面型枠3に設置され、弾性を有し面型枠3とは別体である突起型枠5と、を有する型枠1を用い、面型枠3の突起型枠5側にコンクリート17を打設する工程と、コンクリート17の硬化後、面型枠3と突起型枠5を脱型する工程とを有するプレキャストコンクリート部材の製造方法が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0029]~[0048]、図面の図4参照)。
【0007】
特許文献2に記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法は、突起型枠5が面型枠3に固定されていないため、プレキャストコンクリート部材(プレテンションPC製品)に曲げ応力が伝達されて悪影響を及ぼすという問題は解消することができる。しかし、特許文献2に記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法は、空気圧調整手段が必要な他、突起型枠5を弾性材料からなる面型枠3とは別体とする必要があり、型枠の製造コストが嵩むという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭62-77906号公報
【文献】特開2016-14290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、凹凸を有するプレテンションPC製品の脱型時に曲げ応力が伝達されて悪影響を及ぼすおそれがなく、且つ、安価に製造可能とする可動式間隔保持具及びそれを用いたプレテンションPC製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る間隔保持具は、プレテンション方式でコンクリート製品にプレストレスを付与する際にコンクリート製品の両脇に設置されてPC鋼材の間隔を保持する間隔保持具であって、前記コンクリート製品の両脇に設置されてプレストレスを付与する前記PC鋼材の緊張ルートが固定された一対の固定式間隔保持具と、前記一対の固定式の間隔保持具の内側の前記コンクリート製品の両脇に設置されて前記PC鋼材の緊張ルートを引き下げて変更可能な一対の可変式間隔保持具と、を備え、前記可変式間隔保持具は、前記PC鋼材を挿通して間隔を保持する間隔保持部と、この間隔保持部を支える一対の支柱と、前記一対の支柱の脚部同士を連結する連結部と、を有し、前記間隔保持部は、前記支柱に対して上下移動自在に構成されており、前記可変式間隔保持具は、前記間隔保持部と前記連結部とを繋いでPC鋼材の高さを前記PC鋼材に緊張力がかかった状態で変更する高さ変更手段をさらに有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る間隔保持具は、請求項1に係る間隔保持具において、前記高さ変更手段は、手動で高さを変更可能な手動の高さ変更手段であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係るプレテンションPC製品の製造方法は、凹凸を有するコンクリート製品にPC鋼材によりプレテンション方式でプレストレスを付与してプレテンションPC製品を製造するプレテンションPC製品の製造方法であって、前記PC鋼材を緊張する緊張工程では、前記プレテンションPC製品の凹凸が、前記凹凸を有する前記プレテンションPC製品の型枠と干渉しない高さに固定式の間隔保持具を設置し、前記固定式の間隔保持具の内側に、請求項1又は2に記載の可動式間隔保持具を設置し、前記コンクリート製品の型枠付近で前記PC鋼材の張設ルートを下側に迂回して緊張するとともに、前記プレテンションPC製品を上方に持ち上げて脱型する脱型工程では、前記可動式間隔保持具の前記高さ変更手段を用いて、前記PC鋼材の高さを前記プレテンションPC製品の凹凸が前記型枠と干渉しない高さに変更して脱型することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1~3に係る発明によれば、プレテンションPC製品の脱型時にPC鋼材を介して曲げ応力など不必要な応力が作用することがなくプレテンションPC製品に悪影響がないだけでなく、型枠の制作費が嵩むことなく安価にプレテンションPC製品を製造することができる。
【0014】
特に、請求項2に係る発明によれば、間隔保持部と連結部との高さ変更を手動で行うことができ、油圧ジャッキなど特別な装置が必要なくなり、装置のメンテナンスやランニングコストが不要となり、さらに安価にプレテンションPC製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る可動式間隔保持具を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図である。
図2図2は、同上の可動式間隔保持具を示す右側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るプレテンションPC製品の製造方法の概要を示す模式図であり、(a)が脱型前、(b)が脱型時にプレテンションPC製品を吊り上げた状態を示す図である。
図4図4は、図3(a)のA部拡大図である。
図5図5は、同上の脱型前の可動式間隔保持具の状態を示す正面図である。
図6図6は、図3(b)のB部拡大図である。
図7図7は、同上の脱型時の可動式間隔保持具の状態を示す正面図である。
図8図8は、従来のプレテンションPC製品の製造方法の概要を示す模式図であり、(a)が脱型前、(b)が脱型時にプレテンションPC製品を吊り上げた状態を示す図である。
図9図9は、従来のプレテンションPC製品の製造方法の問題点を説明する図であり、(a)が脱型時にプレテンションPC製品を吊り上げた状態を示し、(b)がプレストレス導入時にプレテンションPC製品が固定側に移動すること示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る可動式間隔保持具及びプレテンションPC製品の製造方法の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
[可動式間隔保持具]
先ず、図1図2を用いて、本発明の実施形態に係る可動式間隔保持具1について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る可動式間隔保持具1を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図である。また、図2は、可動式間隔保持具1を示す右側面図である。
【0018】
可動式間隔保持具1は、プレテンション方式でコンクリート製品(プレテンションPC製品10)にプレストレスを付与する際にプレテンションPC製品10の両脇に設置されてPC鋼材11の間隔を保持する間隔保持具である(図3も参照)。この可動式間隔保持具1は、図1図2に示すように、左右一対のベースレール2,2と、これらのベースレール2,2上に立設され左右一対の支柱3,3と、を備えている。
【0019】
また、左右一対の支柱3,3は、両者の下端部同士を連結する鋼材からなる下部連結部4と、上部同士を連結する鋼材からなる上部連結部5と、で連結され、正面視矩形枠状に組み合わされている。
【0020】
そして、左右一対の支柱3,3間には、支柱3に対して上下移動自在に構成された間隔保持部6が設けられており、間隔保持部6と下部連結部4とは、高さ変更手段であるレバーブロック(登録商標)7で高さ変更自在に連結されている。
【0021】
(ベースレール)
ベースレール2は、H形鋼などの鋼材からなるベースレール本体20を主体とする部材であり、ホールインアンカーなどのあと施工アンカーで製造ヤードの床に止め付けられている。PC鋼材11を介して伝達される緊張力で可動式間隔保持具1が転倒することを防止するためである。
【0022】
また、図2に示すように、ベースレール本体20の長手方向の中央には、支柱3が立設されているとともに、ベースレール本体20の長手方向の両端には、斜材21が取り付けられて補強されている。
【0023】
(支柱)
支柱3は、二本の支柱鋼材30,30間に、スリット31が形成され、そのスリット31に間隔保持部6が介装されていることで、間隔保持部6が上下にスライド自在に構成されている。
【0024】
なお、図2に示すように、前述の斜材21が支柱鋼材30の上部にボルト接合されることで支柱3がPC鋼材11に沿って引き倒されるのを防止している。
【0025】
(下部連結部)
下部連結部4は、鋼材からなる下部連結部本体40を備え、この下部連結部本体40が、ベースレール本体20の長手方向の中央に、ベースレール本体20と直交する方向に敷設されている。
【0026】
また、下部連結部本体40の軸線上には、レバーブロック(登録商標)7の一端を掛け止める一対のブラケット41,41が取り付けられている。このブラケット41は、ベースレール2と同様に、ホールインアンカーなどのあと施工アンカーで製造ヤードの床に止め付けられている。PC鋼材11の張設ルートを引き下げる際の反力に対抗するためである。
【0027】
(上部連結部)
上部連結部5は、図1に示すように、鋼材からなる上部連結部本体50から主に構成され、上部連結部本体50の長手方向の両端部が支柱3の支柱鋼材30に接合されている。この上部連結部本体50と支柱鋼材30との接合部の入隅は、剛性を高めるため補強プレート51で補強されている。支柱3,3、下部連結部4、上部連結部5とからなる矩形の枠体が平行四辺形状に変形するのを防止するためである。
【0028】
(間隔保持部)
間隔保持部6は、図1に示すように、溝形鋼がウェブ部で接合された間隔保持部本体60に、PC鋼材11を挿通する複数の鋼材挿通孔61が穿設された部位であり、鋼材挿通孔61の間隔でPC鋼材11の間隔を保持する機能を有している。
【0029】
また、間隔保持部本体60の下端には、下方に向け一対の突出ブラケット62が形成されており、この突出ブラケット62にレバーブロック(登録商標)7の一端が掛け止められている。
【0030】
(高さ変更手段)
図1図2に示すように、間隔保持部6と下部連結部4とを繋いでPC鋼材11の高さを変更する高さ変更手段としてレバーブロック(登録商標)7が設けられている。但し、本発明に係る高さ変更手段は、油圧ジャッキなど間隔保持部6と下部連結部4とを繋いで緊張力がかかった状態のPC鋼材11の張設ルートを引き下げられる手段であれば、採用することが可能である。
【0031】
しかし、本実施形態に係る高さ変更手段として例示したレバーブロック(登録商標)7やチェーンブロックのように、滑車の原理を応用し、手動で緊張力がかかった状態のPC鋼材11の張設ルートを引き下げられる手動高さ変更手段であることが好ましい。手動の装置であれば、装置のメンテナンスやランニングコストが不要となり、安価にプレテンションPC製品10を製造することができるからである。
【0032】
[プレテンションPC製品の製造方法]
次に、図3図7を用いて、本発明の実施形態に係るプレテンションPC製品の製造方法について説明する。図3は、本発明の実施形態に係るプレテンションPC製品の製造方法の概要を示す模式図であり、(a)が脱型前、(b)が脱型時にプレテンションPC製品を吊り上げた状態を示す図である。また、図4は、図3(a)のA部拡大図であり、図5は、図4の脱型前の可動式間隔保持具の状態を示す正面図である。そして、図6は、図3(b)のB部拡大図であり、図7は、図6の脱型時の可動式間隔保持具の状態を示す正面図である。
【0033】
(緊張工程)
先ず、本実施形態に係るプレテンションPC製品の製造方法では、緊張ジャッキ等を用いて固定物12に一端が固定された状態でPC鋼材11を緊張する緊張工程を行う。
【0034】
このとき、本実施形態に係るプレテンションPC製品の製造方法では、従来と相違して図3(a),図4図5に示すように、凹凸を有するプレテンションPC製品10の凹凸が型枠10’と干渉しない高さに固定式の間隔保持具13を設置してPC鋼材11の張設ルートを持ち上げる(図9も参照)。そして、その内側(プレテンションPC製品10に近い側)に前述の可動式間隔保持具1を設置してPC鋼材11の張設ルートを型枠10’付近で迂回して引き下げた状態で張設して緊張する(図3(a),図4参照)。
【0035】
具体的には、前述の間隔保持部6の鋼材挿通孔61にPC鋼材11を挿通し、レバーブロック(登録商標)7を手動で縮めて間隔保持部6を下部連結部4側に引き寄せ、レバーブロック(登録商標)7でPC鋼材11の張力に対抗して下側に迂回させた状態で緊張する。
【0036】
(打設工程)
次に、本実施形態に係るプレテンションPC製品の製造方法では、プレテンションPC製品10の型枠10’内にコンクリートを打設する打設工程を行う。
【0037】
但し、本工程では、前述のように、固定式の間隔保持具13の内側に前述の可動式間隔保持具1を設置して可動式間隔保持具1を用いてPC鋼材11の高さを型枠10’付近で引き下げた状態で型枠10’内にコンクリートを打設する。
【0038】
(脱型工程)
次に、本実施形態に係るプレテンションPC製品の製造方法では、打設したコンクリートの強度が発現した後に、門型クレーンなどの揚重機等を用いてプレテンションPC製品10を上方に持ち上げて脱型する脱型工程を行う。
【0039】
本工程では、図3(b),図6図7に示すように、可動式間隔保持具1のレバーブロック(登録商標)7を用いて、PC鋼材11をプレテンションPC製品10の凹凸が型枠10’と干渉しない固定式の間隔保持具13の高さに変更して脱型する。
【0040】
具体的には、PC鋼材11に緊張力がかかった緊張状態のままレバーブロック(登録商標)7を手動で緩めて間隔保持部6をフリーにした状態で揚重機等を用いてプレテンションPC製品10を上方に持ち上げる。
【0041】
このとき、元々、固定式の間隔保持具13でプレテンションPC製品10の凹凸が型枠10’と干渉しない高さにPC鋼材11の張設ルートを持ち上げた状態で張設して緊張しているので、PC鋼材11を引き下げていた可動式間隔保持具1の間隔保持部6をフリーとすることで、プレテンションPC製品10の上昇に従ってPC鋼材11の緊張力も緩むことになる。このため、プレテンションPC製品10を持ち上げる際にPC鋼材11を介して曲げ応力がプレテンションPC製品10に伝達されてひび割れ等の悪影響を及ぼすという問題を解消することができる。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る可動式間隔保持具1及びそれを用いたプレテンションPC製品の製造方法によれば、プレテンションPC製品10の脱型時にPC鋼材11を介して曲げ応力など不必要な応力が作用することがなくプレテンションPC製品10に悪影響がない。
【0043】
その上、可動式間隔保持具1を用いたプレテンションPC製品の製造方法によれば、特許文献2のような型枠の一部を弾性体とするような製作費の高価な型枠とする必要がないため、安価にプレテンションPC製品10を製造することができる。
【0044】
また、可動式間隔保持具1の高さ変更手段は、手動で高さ変更が可能なレバーブロック(登録商標)7のような手動の高さ変更手段である。このため、可動式間隔保持具1によれば、油圧ジャッキなど特別な装置が必要なく、装置のメンテナンスやランニングコストが不要となり、さらに安価にプレテンションPC製品を製造することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態に係る可動式間隔保持具1及び本発明の実施形態に係る可動式間隔保持具1を用いたプレテンションPC製品の製造方法について詳細に説明した。しかし、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0046】
10:プレテンションPC製品
10’:型枠
11:PC鋼材
12:固定物
13:(固定式の)間隔保持具
1:可動式間隔保持具
2:ベースレール
20:ベースレール本体
21:斜材
3:支柱
30:支柱鋼材
31:スリット
4:下部連結部(連結部)
40:下部連結部本体
41:ブラケット
5:上部連結部
50:上部連結部本体
51:補強プレート
6:間隔保持部
60:間隔保持部本体
61:鋼材挿通孔
62:突出ブラケット
7:レバーブロック(登録商標)(高さ変更手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9