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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】インク収容容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/06 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
B65D43/06 100
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020122025
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018712
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 議靖
(72)【発明者】
【氏名】井上 良二
(72)【発明者】
【氏名】長岡 恭介
(72)【発明者】
【氏名】丹野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 健太
(72)【発明者】
【氏名】松村 英明
(72)【発明者】
【氏名】丸山 泰司
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-52764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0095045(US,A1)
【文献】特開2018-34877(JP,A)
【文献】特開2020-33090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0272722(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00 - 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するための収容部と、
前記収容部に収容されているインクを注出するための注出口を有する注出口部と、
前記注出口部への着脱により前記注出口を開閉可能に構成されており、かつ、前記注出口部との当接箇所において第一の密閉部を形成するように構成されている蓋部と、
を有するインク収容容器であって、
前記注出口部の内部には、
前記注出口と連通するオリフィス部と、
前記オリフィス部と当接することで第二の密閉部を形成するように構成された弁体と、
前記弁体を、前記オリフィス部に向かう付勢方向に付勢する付勢部と
を有する液止弁が設けられており、
前記蓋部の内部には、突起が設けられており、
前記インク収容容器は、
(1)前記蓋部が閉栓している状態において、前記第一の密閉部が密閉されており、かつ、前記突起の下端が、前記注出口の上端より下側、かつ、オリフィス部の下端より下側の位置において前記弁体と接し、前記弁体を前記付勢方向に逆らうように押し込み、前記オリフィス部の下端と前記弁体の上端との間にギャップを形成することで、前記第二の密閉部を開放状態にするように構成されており、かつ、
(2)前記蓋部の開栓に伴い前記第一の密閉部が開放される第一のタイミングにおいて、前記第二の密閉部が開放状態となっているように構成されていることを特徴とするインク収容容器。
【請求項2】
前記第一のタイミングから、さらに前記蓋部が開栓されることで、前記第二の密閉部が密閉状態になる、請求項1に記載のインク収容容器。
【請求項3】
前記オリフィス部は、可撓性部材で構成されている、請求項1または2に記載のインク収容容器。
【請求項4】
前記蓋部と、前記注出口部とは、それぞれ、ネジ構造を備え、
前記ネジ構造によって前記蓋部が前記注出口部に装着されるように構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインク収容容器。
【請求項5】
前記突起は、円筒形状である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインク収容容器。
【請求項6】
前記突起は、多角形状である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインク収容容器。
【請求項7】
前記第一の密閉部および前記第二の密閉部の少なくとも一方は、物性が異なる二部品が当接している、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインク収容容器。
【請求項8】
前記第一の密閉部および前記第二の密閉部の少なくとも一方は、同材質の二部品が当接している、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインク収容容器。
【請求項9】
前記蓋部の内部には、前記第一の密閉部の外側に位置するリブが設けられている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のインク収容容器。
【請求項10】
前記リブは、前記蓋部の内部において全周を囲うように形成されている、請求項9に記載のインク収容容器。
【請求項11】
前記リブの先端は、前記注出口よりも前記収容部側に位置する、請求項9または10に記載のインク収容容器。
【請求項12】
前記注出口部は、前記蓋部の前記リブを囲う壁を備える、請求項9乃至11のいずれか一項に記載のインク収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収容するインク収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置のような液体吐出装置で使用される液体タンクには、液体を補充できるものがある。例えば、液体を注入するための注出口を備えた液体収容容器を用いて、その注出口を介して液体収容容器から液体タンクに液体を補充することができる。この種の液体収容容器においては、利用者の手および周囲を汚すことを防ぐため、注出口先端にスリットの入ったバルブを設けることで、液体の漏れを強制的に止めることが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1においては、注出口本体と、注出口を覆い開閉可能な蓋とを備え、スリットを有するバルブを注出口本体の内部に設けた容器が記載されている。特許文献1には、蓋を完全に閉める手前の状態で蓋と注出口とを密閉させ、その後、さらに蓋を完全に閉めることで、蓋に付けた突起がバルブに挿入されてバルブのスリット部分を開ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-95277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、蓋を開け始めた直後には、突起がバルブから離れることでバルブが閉じるので、蓋を開けた時に、液体収容容器内部の密閉が維持される。このため、液体収容容器内部の気圧が外部の気圧よりも高い場合には、液体収容容器から液体タンクへ液体を補充する際に、バルブを開くと同時に液体が液体収容容器から噴き出す虞がある。また、液体収容容器の注出口を下向きに傾けると、液体収容容器内の液体の水頭差がバルブにかかることでバルブの耐圧を超えてバルブが開放し、液体が噴出する虞がある。噴出した液体は、液体収容容器の外部まで直接達することもあり得る。
【0006】
本発明は、インクが噴出することを抑制するインク収容容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るインク収容容器は、インクを収容するための収容部と、前記収容部に収容されているインクを注出するための注出口を有する注出口部と、前記注出口部への着脱により前記注出口を開閉可能に構成されており、かつ、前記注出口部との当接箇所において第一の密閉部を形成するように構成されている蓋部と、を有するインク収容容器であって、前記注出口部の内部には、前記注出口と連通するオリフィス部と、前記オリフィス部と当接することで第二の密閉部を形成するように構成された弁体と、前記弁体を、前記オリフィス部に向かう付勢方向に付勢する付勢部とを有する液止弁が設けられており、前記蓋部の内部には、突起が設けられており、前記インク収容容器は、(1)前記蓋部が閉栓している状態において、前記第一の密閉部が密閉されており、かつ、前記突起の下端が、前記注出口の上端より下側、かつ、オリフィス部の下端より下側の位置において前記弁体と接し、前記弁体を前記付勢方向に逆らうように押し込み、前記オリフィス部の下端と前記弁体の上端との間にギャップを形成することで、前記第二の密閉部を開放状態にするように構成されており、かつ、(2)前記蓋部の開栓に伴い前記第一の密閉部が開放される第一のタイミングにおいて、前記第二の密閉部が開放状態となっているように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インクが噴出することを抑制するインク収容容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】液体吐出装置の外観を示す斜視図である。
図2】液体吐出装置の内部構成を示す斜視図である。
図3】液体吐出装置における液体タンクが収納された部分の拡大斜視図と平面図である。
図4】液体収容容器の外観を示す図である。
図5】液体収容容器の部品構成図と断面図である。
図6】密閉部を説明する図である。
図7】密閉部を密閉する他の方式を示す図である。
図8】密閉部を密閉する他の方式を示す図である。
図9】バルブを押し込む突起の各種の例を示す図である。
図10】液体収容容器を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。尚、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状などは、あくまで例示である。
【0011】
<<第1実施形態>>
図1は、本実施形態の液体吐出装置1の外観を示す斜視図である。図1に示す液体吐出装置1は、シリアル型のインクジェット記録装置である。図1に示す液体吐出装置1は、筐体11と、筐体11の内部に配置された液体タンク12とを備える。液体タンク12は、記録媒体(不図示)に吐出される液体であるインクを収容する。
【0012】
図2は、図1に示した液体吐出装置1の内部構成を示す斜視図である。図2において液体吐出装置1は、記録媒体(不図示)を搬送するための搬送ローラ13と、液体を吐出する記録ヘッド14が設けられたキャリッジ15と、キャリッジ15を駆動するためのキャリッジモータ16とを備える。記録媒体は、記録ヘッド14から吐出された液体によって画像が形成されるものであれば、特に限定されない。例えば、記録媒体としては、紙、布、光ディスクラベル面、プラスチックシート、またはOHPシートなどが挙げられる。
【0013】
液体は、液体タンク12に収容されており、液体流通路17を介して記録ヘッド14に供給され、記録ヘッド14から吐出される。本実施形態では、液体として、4色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラック)のインクが使用され、液体タンク12として、各色のインクを収容する4つの色別の液体タンク12a~12dが設けられている。以下、個々の液体タンクを識別して言及する場合、液体タンク12a~12dなどを末尾にアルファベットを付し、任意の液体タンクを言及する場合、液体タンク12と称するものとする。色別の液体タンク12a~12dのそれぞれは、筐体11の内部における液体吐出装置1の前面部に配置されている。
【0014】
図3(a)は、図1に示した液体吐出装置1の液体タンク12b~12dが収納された部分の拡大斜視図の一例であり、図3(b)は、図3(a)で示した斜視図の平面図である。液体タンク12は、液体を収容するための液体タンク本体121と、液体タンク本体121内の液体収容室に連通する連通流路122と、を有する。また、液体補充時以外に連通流路122を覆い、液体タンク本体121の収容室を密閉するために装着可能なタンクカバー123(図2参照)を有する。液体を液体タンク12に補充する場合には、液体収容容器2(図4参照)の注出口を連通流路122に挿入し、液体を注入する。液体補充時以外はタンクカバー123で液体収容室を密閉することで、液体タンク12内部の液体の蒸発を抑制することができる。連通流路122は、内部に鉛直方向に並列に延びる2つの流路を備えており、気液交換によって液体収容容器2内の液体が液体タンクに注入される仕組みとなっている。液体吐出装置1において、液体収容容器2の注出口を挿入する部分にはソケット18が設けられている。ソケット18には内周壁から内側に突出する凸部19が設けられている。ソケット18は、液体タンク12ごとに設けられており、凸部19の形状は、液体容器の入れ間違い抑制の為にソケット18ごとに異なっている。凸部19は、連通流路122の中心軸に対して、180°の回転対称に存在している。
【0015】
図4は、液体タンク12に液体を補充する液体容器である液体収容容器2の外観を示す立面図である。図4における液体収容容器2は、液体を収容する収容部(本体部)であるボトル21と、ボトル21と接続されたノズル22と、ノズル22に着脱可能なキャップ23とを有する。ノズル22は、ボトル21に収容された液体を注出する際の出口としての機能を有する注出口部材である。キャップ23は、ノズル22に装着されることで、液体収容容器2(具体的には、ボトル21)の内部を外気から遮蔽する蓋部である。ボトル21とノズル22とを接続する方法は、可撓性の部品を挟んでシールする方法、または、ボトル21とノズル22とを共に樹脂部品とし、二部品を溶着する方法などがある。ボトル21およびノズル22は、一体の部品であってもよい。
【0016】
図5(a)は、図4に示す液体収容容器2の部品構成図の例を示す図である。図5(b)は、図5(a)に示す液体収容容器2の部品構成図を結合した状態の断面図である。液体収容容器2のボトル21は、上部に形成されたボトル溶着部21aと、下部に形成された液体収容部21bとを含む。ノズル22は、液体を注出する注出口22aと、外側に雄ネジ構造が形成されたノズルネジ部22bと、内側または底面に溶着面が形成されたノズル溶着部22cとを含む。蓋部であるキャップ23は、注出口部材であるノズル22に着脱可能に構成されており、注出口22aを開閉可能としている。ボトル21を形成する材料としては、PE(ポリエチレン)またはPP(ポリプロピレン)等が挙げられる。ノズル22を形成する材料としては、PE(ポリエチレン)またはPP(ポリプロピレン)等が挙げられる。ノズル22は、ノズル溶着部22cがボトル溶着部21aと溶着することでボトル21と接合される。ボトル21とノズル22とを溶着により接合する場合は、ボトル21およびノズル22は同種の材料であることが好ましい。ノズル22内部には、開口を有するシール24と、シール24の開口を開閉するバルブ25と、バルブ25を付勢するバネ26と、バネ26を固定するホルダ27とが備えられている。
【0017】
液体収容容器2から液体タンク12へ液体を供給する際には、液体収容容器2のノズル22の開口に、液体タンク12の連通流路122を挿入させる。液体収容容器2のノズル22には、液体吐出装置1のソケット18の凸部19に係合する凹部が設けられており、ノズル22の開口に連通流路122を挿入する際に液体収容容器2が位置決めされる。そして、液体収容容器2内の液体は、水頭差によって連通流路122を介して液体タンク本体121の収容室に供給される。
【0018】
液体収容容器2は、密閉可能な箇所(以下、密閉部という)を二つ有している。図6は、密閉部を説明する図である。第一の密閉部では、図6(a)に示すように、キャップ23とノズル22との嵌合によって密閉が行われる。第二の密閉部では、図6(b)に示すように、ノズル22内の弁構造によって密閉が行われる。以下、各密閉部を説明する。
【0019】
図6(a)を用いて第一の密閉部を説明する。図6(a)は、キャップ23をノズル22に装着した状態の液体収容容器2の上部の断面図であり、その拡大図も併せて示している。第一の密閉部は、キャップ23をノズル22に装着することにより、キャップ23のキャップシール部23bと、ノズル22の注出口22aの一部であるノズルシール部22dとを嵌合させる箇所である。キャップ23をノズル22に装着する方法の例として、ノズル22とキャップ23とを螺合する方法が挙げられる。具体的には、図5(a)、図5(b)、図6(a)に示すように、ノズル22の外側に雄ネジ構造が形成されたノズルネジ部22bと、キャップ23の下部の内側に雌ネジ構造が形成されたキャップネジ部23aとを用いて螺合する方法が挙げられる。尚、逆に、雄ネジ部が形成されたキャップ23と、雌ネジ部が形成されたノズル22とを用いてもよい。
【0020】
また、キャップ23をノズル22に装着する方法として、螺合せず、密閉部以外に嵌合する箇所を設けてもよい。例えば、キャップ23がノズル22の外側で勘合する外嵌合蓋、または、内側で勘合する内嵌合蓋などの構成としてもよい。
【0021】
図6(b)を用いて第二の密閉部を説明する。図6(b)は、キャップ23が装着されていない状態の液体収容容器2の上部の断面図であり、その拡大図も併せて示している。第二の密閉部は、液体収容容器2のノズル22内部に配した液止弁構造(バルブ構造)の箇所である。図6(b)に示すように、ノズル22には、先端(上端)に連通流路122が挿入される開口を有するオリフィス部であるシール24が配されている。そして、液止弁の弁体であるバルブ25をバネ26で開口側に付勢することでシール24とバルブ25とのギャップが閉塞され、液体収容容器2が密閉される。本実施形態では、付勢機構としてバネ26を用い、ノズル22の内空間に固定したホルダ27にバネ26を保持させている。シール24は、ゴムまたはエラストマー等の可撓性部材で構成されている。
【0022】
この液止弁構造により、バルブ25がシール24の開口にバネ26によって付勢されているので、キャップ23をノズル22から外した状態でも液体収容容器2の内部の密閉状態を保つことができる。液体収容容器2から液体タンク12へ液体を供給する際には、シール24の開口より連通流路122がノズル22内に挿入されることで、バルブ25が開放される。そして、前述したように、液体収容容器2内の液体は水頭差によって連通流路122を介して液体タンク本体121の収容室に供給される。
【0023】
本実施形態では、これら二箇所の密閉部が、キャップ23をノズル22から開栓する際、および、キャップ23をノズルに閉栓する際に、一時的に同時に開く状態になるように構成されている。これにより、液体収容容器2の内部を大気連通し、液体収容容器2内の圧力と外気圧とを等しくできる。以下、詳細に説明する。
【0024】
まず、キャップ23が閉栓状態では、図6(a)に示すように、第一の密閉部は密閉された状態になっている。一方、第二の密閉部では、キャップ23に配されている突起23fが、キャップ23の閉栓に伴ってバルブ25を付勢する向きと逆方向に押し込まれていることで、シール24とバルブ25との間にギャップが形成されている。このように、図6(a)では、第二の密閉部は、開放された状態になっている。即ち、キャップ23の閉栓状態において、第一の密閉部は密閉され、第二の密閉部は開放されている。
【0025】
図6(c)は、図6(a)に示したキャップ23がノズル22に装着された状態から、キャップ23が開栓し始めた状態の液体収容容器2の上部の断面図であり、その拡大図も併せて示している。キャップ23が、図6(a)に示す閉栓状態から、図6(c)に示すように開栓に伴って上方に移動する。このキャップ23の移動とともに、キャップシール部23bとノズルシール部22dとが分離し、第一の密閉部が開放される。第一の密閉部が開放される際、キャップ23に配した突起23fは、図6(c)に示すように、依然としてバルブ25を押し込む位置にある。つまり、第二の密閉部は、開放状態を維持している。従って、図6(c)に示すように、第一の密閉部を開放する際に、第二の密閉部も同時に開放することができる。その後、更にキャップ23を上方に移動させると、キャップ23の移動に伴い突起23fがバルブ25から完全に離間し、図6(b)に示すように、第二の密閉部が密閉される。尚、キャップ23を開栓状態から閉栓する場合にも、キャップ23の移動に伴い、キャップ23の突起23fによってバルブ25が押し込まれることで、第二の密閉部が開放される。このとき、第一の密閉部は密閉前の状態であるので、開放状態を維持している。その後、キャップ23を閉栓状態にすることで、第一の密閉部は、密閉状態になる。尚、第一の密閉部と第二の密閉部が同時に開放されるとは、実質的に同時に開放されるという意味である。第一の密閉部を開放したことにより、これに連動して第二の密閉部が開放される場合には、両者は同時に開放されている。
【0026】
以上説明した構成により、キャップ23を開栓する際に、第一の密閉部および第二の密閉部が一時的に同時に開放状態となるので、液体収容容器2の内部が大気連通し、液体収容容器2内の圧力と外気圧とを等しくすることができる。このため、キャップ23を開栓して、液体収容容器2から液体タンク本体121へ液体を補充する際に、液体収容容器2の内部圧力の上昇による、液体噴き出しを抑制できる。また、液体タンク本体121からの液体の溢れを抑制することができる。また、キャップ23を開栓した場合においても、第二の密閉部により、液体収容容器2の内部は密閉状態が維持されるので、液体収容容器2を倒立させても液体の漏出を抑制できる。
【0027】
以上で示した二箇所の密閉部の密閉方法としては、ゴムまたはエラストマー等の可撓性の材料と剛性のある材料とを押し当ててシールする方法、または、剛性のある材料同士を嵌合させてシールする方法等がある。
【0028】
本実施形態では、第一の密閉部におけるノズル22およびキャップ23には、PE(ポリエチレン)またはPP(ポリプロピレン)等の剛性のある材料を用い、これらを嵌合させる方法を採用している。第一の密閉部は、同じ材質の二部品が嵌合して当接されていてもよいし、物性が異なる二部品を当接させてもよい。第二の密閉部におけるシール24を形成する材料としては、ゴムまたはエラストマー等の可撓性の材料を用いる。第二の密閉部におけるバルブ25を形成する材料としては、PE(ポリエチレン)またはPP(ポリプロピレン)等の剛性のある材料を用いる。そしてこれらを、押し当ててシールする方式を採用する。
【0029】
図7は、第一の密閉部を密閉する他の方式を示す図である。第一の密閉部は、図7に示すように、ノズル22またはキャップ23のいずれか一方に可撓性の材料23eを用い、押し当てて密閉する方式としてもよい。図8は、第二の密閉部を密閉する他の方式を示す図である。第二の密閉部は、図8に示すように、バルブ25に可撓性の材料24cを用い、剛性のある材料を用いたノズル22に押し当てて密閉する方式としてもよい。
【0030】
図9は、バルブ25を押し込む突起23fの各種の例を示す図である。キャップ23に配されている、バルブ25を押し込む突起23fの形状は、突起先端がバルブ25の移動方向と垂直方向に面を形成し、バルブ25が傾くことなく押し込める形状が好ましい。例えば、図9(a)に示すような円柱形状または円錐形状などの円筒形状でもよいし、図9(b)に示すような多角形柱または多角錐などの多角形状でもよい。
【0031】
また、突起23fの先端には、図9(c)に示すように、可撓性の材料23gを使用してもよい。可撓性の材料23gを用いることで、バルブ25と当接する際のバルブ25の変形を抑制できる。
【0032】
バネ26を形成する材料としては、SUS(ステンレス)等が挙げられる。ホルダ27を形成する材料としては、PE(ポリエチレン)またはPP(ポリプロピレン)等が挙げられる。ホルダ27をノズル22に固定する方法としては、ホルダ27とノズル22とを同材料とし、溶着することが好ましい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、キャップ23の開閉時に、キャップ23とノズル22とが密閉されていない状態において、キャップ23の突起23fがバルブ25を開放している状態が発生する。即ち、第一の密閉部および第二の密閉部が一時的に同時に開放される状態が発生する。このため、液体収容容器2の内部と外気とが大気連通され、液体収容容器2の内部の圧力を外部の気圧と同等にすることができる。これにより、液体収容容器2から液体タンク12に液体を補充する際に、噴き出す液体によって液体タンク12が溢れることを抑制することができる。また、液体収容容器2を傾けた際に発生する液体の噴き出しを抑制することができる。
【0034】
<<第2実施形態>>
第1実施形態では、キャップ23の開閉時に二箇所の密閉部を一時的に同時に開放する構成とすることで液体収容容器2の内部の圧力を開放する例を説明した。二箇所の密閉部を同時に開放することで液体収容容器2の液体の噴き出しを抑制できる一方で、二箇所の密閉部を同時に開放することで、液体収容容器2の内部の液体の飛沫が外部に出る場合がある。本実施形態では、液体収容容器2の内部の液体が飛沫となって容器外に飛散することを抑制する例を説明する。尚、液体収容容器2の基本的な構成は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0035】
図10は、本実施形態の液体収容容器2を説明する図である。図10(a)は、キャップ23をノズル22に装着した状態の液体収容容器2の上部の断面図である。第1実施形態で説明したように、キャップ23のキャップシール部23bと、ノズル22のノズルシール部22dとを嵌合させることで液体収容容器2内部が密閉される。キャップシール部23bは、リブ形状となっており、ノズルシール部22dと、リブであるキャップシール部23bとの当接によって液体収容容器2内部の密閉状態を保っている。キャップシール部23bを構成するリブは、キャップ23の全周を当接していればよく、形状は任意の形状としてよい。キャップ23とノズル22とを装着する方法として、ねじ形状を採用している場合は、リブの形状は円形が好ましい。なお、キャップシール部23bのノズルシール部22dに対する当接箇所は、ノズルシール部22dの内側でも、外側でも、天面でもよい。これらの複数箇所に同時に当接してもよい。
【0036】
本実施形態のキャップ23およびノズル22の材料は、PP(ポリプロピレン)またはPE(ポリエチレン)を用いるものとする。材料の組み合わせとしては、同種でも異種でもよい。即ち、当接箇所は、物性が異なる二部品が当接してもよいし、同材質の二部品が当接してもよい。キャップ23とノズル22とを高速で組付けする場合は、異種材料が好ましい。
【0037】
液体収容容器2の密閉空間内の圧力より外気圧が低い状態で密閉状態を開放すると、液体収容容器2の内部に含まれている気体および液体が外部に導出する。本実施形態では、図10(a)にように、キャップ23は、リブ23cを有している。リブ23cは、キャップ23を平面視した場合、図10(a)に示すようにキャップシール部23bおよびノズルシール部22dで構成される密閉部(第一の密閉部)の外側に設けられている。リブ23cは、キャップ23内部において全周を囲うように設けられている。本実施形態では、キャップ23を開放する際に、キャップ23のリブ23cの先端位置が、キャップ23のキャップシール部23bと、ノズル22のノズルシール部22dとの嵌合位置よりも下方に位置している。このため、リブ23cは、キャップ23の開放の瞬間に発生する液体の飛沫に対し、壁となり、飛沫がキャップ外部に導出することを抑制することができる。
【0038】
図10(b)は、図10(a)の拡大図である。ノズル22は、キャップ23側に突出する壁22eを有する。壁22eは、キャップ23のリブ23cの全周を囲うようにリブ23cの外側に設けられている。また、ノズル22には、壁22eの下端に溝22fが設けられている。このような構成にすることで、リブ23cを越えて飛散した飛沫は、壁22eに衝突し、溝22fに貯留される。このため、液体収容容器2の外部に飛沫が飛散することを抑制することができる。
【0039】
図10(c)は、キャップ23の他の例を示す図である。キャップ23のリブ23cは、図10(c)に示すように、ノズル22に接触してもよい。リブ23cの先端が図10(a)、(b)よりも収容部側(ボトル21側)に延在することで、リブ23cで飛沫を受け止める範囲を拡大させることができる。また、キャップ23のリブ23cの先端が、キャップ23のノズル22に対する基準位置として機能する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、ノズル22からキャップ23を開栓する際に、液体収容容器2内部の液体の飛沫が外部に飛散することを抑制することができる。
【0041】
<<その他の実施形態>>
第1実施形態では、第一の密閉部および第二の密閉部の二つの密閉部を備えている例を説明したが、三つ以上の密閉部が備えられていてもよい。例えば、キャップ23がノズル22の外側で勘合する外嵌合蓋、および、内側で勘合する内嵌合蓋であってもよい。いずれにせよ、キャップ23の開閉時に各密閉部が同時に開放される構成であればよい。
【0042】
第2実施形態では、第1実施形態で説明した液体収容容器2を基本とした例を説明した。即ち、第一の密閉部および第二の密閉部を有する液体収容容器2を例として説明した。しかしながら、第二の密閉部を有していない液体収容容器としてもよい。
【0043】
上記の実施形態において、液体収容容器は、液体吐出装置の液体タンクに液体を補充するために用いられる例を説明したが、任意の装置の液体タンクに液体を補充するために用いるものであってもよい。また、液体収容容器に収容される液体としてインクを用いる例を説明したが、任意の液体を収容してよい。
【符号の説明】
【0044】
2 液体収容容器
22 ノズル
22d ノズルシール部
23 キャップ
23b キャップシール部
23c リブ
23f 突起
図1
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