IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ YKK AP株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-建築板 図1
  • 特許-建築板 図2
  • 特許-建築板 図3
  • 特許-建築板 図4
  • 特許-建築板 図5
  • 特許-建築板 図6
  • 特許-建築板 図7
  • 特許-建築板 図8
  • 特許-建築板 図9
  • 特許-建築板 図10
  • 特許-建築板 図11
  • 特許-建築板 図12
  • 特許-建築板 図13
  • 特許-建築板 図14
  • 特許-建築板 図15
  • 特許-建築板 図16
  • 特許-建築板 図17
  • 特許-建築板 図18
  • 特許-建築板 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】建築板
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
E04F13/08 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020140185
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035691
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 達彦
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-321917(JP,A)
【文献】特開2015-010425(JP,A)
【文献】特開2003-013580(JP,A)
【文献】特開2017-031721(JP,A)
【文献】特開2004-019214(JP,A)
【文献】特開2015-124512(JP,A)
【文献】米国特許第09631372(US,B1)
【文献】特開2019-108743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロック部が表面に突出するように設けられ、これらのブロック部が縦横に配置された建築板であって、
前記複数のブロック部は、表面側から見た場合に互いに平行となるように延在した横方向の2つの横縁と、縦方向の2つの縦縁とによって囲まれる四角形状を成し、前記複数のブロック部の少なくとも一部は、前記縦縁が前記横縁に対して傾斜するように延在し、
前記ブロック部は、両横端部に前記縦縁を一辺とし、かつ直線状部分で囲まれた三角形状の端部領域を有するとともに、前記端部領域の頂点部分の間を結ぶ稜線状部分と前記横縁との間に2つの化粧部領域を有し、
前記端部領域は、左右で形状が異なるように構成されるとともに、前記横縁に直交する仮想の対称面に対して頂点部分が互いに非対称となる位置に設けられ、かつ手前側に向けて突出するに従って互いに漸次近接するように傾斜状に構成され、前記稜線状部分が前記横縁に対して傾斜するように延在していることを特徴とする建築板。
【請求項2】
前記横縁に対して前記2つの縦縁がいずれも傾斜したブロック部を備えることを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
前記複数のブロック部は、前記横縁に直交する仮想の傾斜基準線に対して前記2つの縦縁が互いに同一方向に向けて傾斜した菱形状を成す第1ブロック部群に含まれるものと、傾斜基準線に対して前記2つの縦縁が互いに逆方向に向けて傾斜した台形状を成す第2ブロック部群に含まれるものとを備えることを特徴とする請求項2に記載の建築板。
【請求項4】
横方向に延在する仮想の横方基準線に対して前記横縁が一致するように配置されたブロック部と、前記横方基準線に対して前記横縁が不一致となるように配置されたブロック部とを備えることを特徴とする請求項2に記載の建築板。
【請求項5】
外形が横辺と縦辺とを有した長方形状を成す表面部を有し、前記横辺に沿って前記横縁が延在するように前記複数のブロック部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項6】
前記ブロック部には、凹凸状の不規則な模様が施されていることを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋等の建築物の外壁として用いられるサイディングボード等の建築板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁として用いられるサイディングボード等の建築板には、複数のブロック部が表面に突出するように設けられたものがある。ブロック部は、横方向に沿う2つの横縁と、縦方向に沿う2つの縦縁とを備えた長方形状を成すものであり、目地部を介して縦横に配置されている。一般的な建築板のブロック部は、縦縁が同一の長さとなるように形成され、横縁が同一の直線上となるように設けられている。この種の建築板では、単調な印象とならないように、ブロック部の表面に種々の模様や凹凸を設けるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-108743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の建築板は、表面に正対した場合、長方形状のブロック部が縦横に配置されている点では共通となる。このため、ブロック部の模様や凹凸を変更したとしても、他の建築板との間に大きな差別化を図るには限界があるのが実情である。特に、金属サイディングボード等のように、金属製の薄板にブロック部が設けられた建築板では、凹凸の寸法も著しく制限されるため、差別化を図ることがより一層難しくなる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、差別化をより顕著とすることで販売の促進を図ることのできる建築板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建築板は、複数のブロック部が表面に突出するように設けられ、これらのブロック部が縦横に配置された建築板であって、前記複数のブロック部は、表面側から見た場合に互いに平行となるように延在した横方向の2つの横縁と、縦方向の2つの縦縁とによって囲まれる四角形状を成し、前記複数のブロック部の少なくとも一部は、前記縦縁が前記横縁に対して傾斜するように延在し、前記ブロック部は、両横端部に前記縦縁を一辺とし、かつ直線状部分で囲まれた三角形状の端部領域を有するとともに、前記端部領域の頂点部分の間を結ぶ稜線状部分と前記横縁との間に2つの化粧部領域を有し、前記端部領域は、左右で形状が異なるように構成されるとともに、前記横縁に直交する仮想の対称面に対して頂点部分が互いに非対称となる位置に設けられ、かつ手前側に向けて突出するに従って互いに漸次近接するように傾斜状に構成され、前記稜線状部分が前記横縁に対して傾斜するように延在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブロック部の相互間に配置される横縁及び縦縁の延在方向をランダムとすることで、表面に正対した場合にも、横縁及び縦縁が縦横方向にのみ延在する一般的な建築板との間に明確な相違点を認識させることが可能となる。従って差別化が顕著となり、販売促進に寄与することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態である建築板を表面側から見た図である。
図2図1に示した建築板の一部斜視図である。
図3図1に示した建築板の一部を示すもので、(a)は図において右側から光を照射した場合の図、(b)は図において左側から光を照射した場合の図である。
図4図1に示した表面材の拡大縦断面図である。
図5図1に示した建築板の表面に設けられるブロック部において縦縁が同一の方向に傾斜した第1ブロック部群に含まれるものの代表例を示すもので、(a)は両横の端部領域が三角形状を成すものの模式図、(b)は両横の端部領域が四角形状を成すものの模式図、(c)は両横の端部領域が五角形状を成すものの模式図、(d)は一方の端部領域が三角形状で、他方の端部領域が五角形状を成すものの模式図、(e)は一方の端部領域が四角形状で、他方の端部領域が五角形状を成すものの模式図である。
図6図1に示した建築板の表面に設けられるブロック部において縦縁が互いに逆方向に傾斜した第2ブロック部群に含まれるものの代表例を示すもので、(a)は両横の端部領域が三角形状を成すものの模式図、(b)は両横の端部領域が四角形状を成すものの模式図、(c)は両横の端部領域が五角形状を成すものの模式図、(d)は一方の端部領域が三角形状で、他方の端部領域が五角形状を成すものの模式図、(e)は一方の端部領域が四角形状で、他方の端部領域が五角形状を成すものの模式図である。
図7図5(a)に示したブロック部の具体例を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図8図6(a)に示したブロック部の具体例を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図9図5(b)に示したブロック部の具体例を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図10図6(b)に示したブロック部の具体例を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図11図5(c)に示したブロック部の具体例を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図12図6(c)に示したブロック部の具体例を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図13図5(d)に示したブロック部の具体例を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図14図6(d)に示したブロック部の具体例を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図15図5(e)に示したブロック部の具体例を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図16図6(e)に示したブロック部の具体例を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図17】横縁が横方基準線に対して不一致となるブロック部を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁及び縦縁に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図18】曲線状の稜線状部分を有したブロック部を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
図19】化粧部領域の数を増やしたブロック部を示すもので、(a)は表面側から見た図、(b)は(a)に対して横縁、縦縁及び稜線状部分に対応する部分に仮想線を追記した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建築板の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1図3は、本発明の実施の形態である建築板を示したものである。ここで例示する建築板は、家屋等の建築物の外壁として用いられる金属サイディングボードと称されるものである。図4に示すように、本実施の形態の建築板は、金属製の薄板から成る表面材1と裏面材2との間に断熱性を有した樹脂材3を充填することによって構成し、表面材1が外部に露出する状態で建築物の外表面を覆うように設けるものである。建築板の上下両縁部には、互いにはめ合うことのできる係合部4,5が設けてある。係合部4,5は、表面材1の縁部を折り曲げ成形することによって表面材1と一体に構成したものである。
【0010】
表面材1は、係合部4,5の相互間となる部分に表面部6を有している。表面部6は、建築物に対して水平方向に配置される横辺6aと、鉛直方向に配置される縦辺6bとを有した横に長い長方形状の外形を有したもので、その表面に複数のブロック部10を有している。ブロック部10は、横辺6aに沿って平行となるように延在した2つの横縁11と、横縁11の端部間を結ぶように延在する2つの縦縁12とによって囲まれる四角形状を成すもので、それぞれ表面部6の表面から突出するように構成してある。ブロック部10の横縁11及び縦縁12は、それぞれ表面部6の表面において互いにほぼ同一の平面上に位置している。図示の例では、縦方向の寸法、つまり横縁11の相互間隔が互いにほぼ同じ寸法となる一方、横方向の寸法が種々の長さとなるように表面部6に複数のブロック部10が縦横に配列してある。ブロック部10の大半は、少なくとも一方の縦縁12が横縁11に対して任意の方向に任意の角度で傾斜しており、外形としては不定形の四角形状となっている。また、ブロック部10の突出形態も様々であり、かつそれぞれの表面に石肌を模した凹凸状の不規則な模様が施してある。これにより、表面部6には、互いに外形形状や突出形態が異なる複数種類のブロック部10が設けられていることになる。図には明示していないが、表面材1は、外周面に凹凸が形成された2つの成形ロールの間に平板を通過させることで、それぞれのブロック部10をエンボス状に成形したものである。成形ロールの表面に凹凸を形成する方法としては、表面部6の表面に対して傾斜する部分や上述の石肌を模した凹凸状の不規則な模様に対応するため、CNC(Computerized Numerical Control)切削加工を適用している。
【0011】
以下、表面部6に設けたブロック部10の具体的な構成について詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。図5及び図6に示すように、表面部6には、横縁11に直交する仮想の傾斜基準線Lに対して2つの縦縁12が同一方向に向けて傾斜した菱形状を成す第1ブロック部群に含まれるブロック部10と、傾斜基準線Lに対して2つの縦縁12が互いに逆方向に向けて傾斜した台形状を成す第2ブロック部群に含まれるブロック部10とが混在している。第1ブロック部群に含まれるブロック部10としては、2つの縦縁12がそれぞれ図5に示したものと逆方向(上方に向けて右側となる方向)に傾斜しているものも含まれる。第2ブロック部群に含まれるブロック部10としては、2つの縦縁12がそれぞれ図6に示したものと逆方向に傾斜した逆ハの字となるように傾斜しているものもと、一方の縦縁12のみが傾斜し、他方の縦縁12が横縁11に直交する方向に延在するものとが含まれる。
【0012】
それぞれのブロック部群に含まれるブロック部10は、両横端部に端部領域13を有するとともに、端部領域13の間に複数の化粧部領域14を有している。端部領域13及び複数の化粧部領域14は、それぞれ近似平面状を成すものである。すなわち、上述したように、ブロック部10の表面には、石肌に模した凹凸状の不規則な模様が施してある。このため、ブロック部10は、単純な平面の組み合せによって構成されたものとはいえないが、便宜上、模様の凹凸を均して単純化した場合に1つの平面として見なすことのできる領域をそれぞれ近似平面状の端部領域13及び近似平面状の化粧部領域14として取り扱うこととする。同様に、これら端部領域13と化粧部領域14との相互隣接部や化粧部領域14と化粧部領域14との相互隣接部に明確な稜線や頂点が現れることはないが、近似平面と近似平面との境界となる部分に線状の稜線状部分15が存在し、稜線状部分15と稜線状部分15との交わる部分に点状の頂点部分16が存在することとする。従って、直線状を成す複数の稜線状部分15によって囲まれる領域については、外形が三角形状や四角形状等のように多角形状であるとして取り扱うこととする。なお、稜線状部分15については、化粧部領域14と化粧部領域14との間に現れるものと、端部領域13と化粧部領域14との間に現れるものとを区別するため、前者を稜線状部分15Aと称して区別する場合がある。また、横縁11と縦縁12との交点についても頂点部分16′として取り扱う場合がある。
【0013】
図からも明らかなように、ブロック部10の端部領域13としては、外形が三角形状、四角形状、五角形状となるものが設けてある。それぞれの端部領域13は、一辺が縦縁12に一致し、かつ突出するに従って互いに漸次近接するように傾斜状に設けてある。個々のブロック部10において両横端部の端部領域13は、図5(a)~図5(c)、図6(a)~図6(c)、図7図12に示すように、頂点部分16の数が同じとなる外形であっても良いし、図5(d)、図5(e)、図6(d)、図6(e)、図13図16に示すように、頂点部分16の数が互いに異なる外形であっても構わない。但し、2つ化粧部領域14の間に現れる稜線状部分15Aの少なくとも1つが横縁11に対して傾斜するように、両横の端部領域13は、横縁11に直交する仮想の対称面Pに対して稜線状部分15Aの両端に位置する頂点部分16の少なくとも1組が非対称の位置となるように構成することが好ましい。端部領域13の傾斜角度(表面部6からの突出角度)については、両横で対称となっていても構わない。
【0014】
ブロック部10の化粧部領域14は、端部領域13の相互間において頂点部分16を結ぶ稜線状部分15A及び横縁11によって区画されるもので、2つの端部領域13の表面積の和よりも大きな表面積を有するように構成してある。より具体的に説明すると、図5(a)、図6(a)、図7図8に示すように、両横の端部領域13がそれぞれ三角形状の場合には、ブロック部10に1つの稜線状部分15Aと、2つの四角形状を成す化粧部領域14とが設けられることになる。図5(b)、図6(b)、図9図10に示すように、両横の端部領域13がそれぞれ四角形状の場合には、ブロック部10に2つの稜線状部分15Aと3つの四角形状を成す化粧部領域14とが設けられることになる。図5(c)、図6(c)、図11図12に示すように、両横の端部領域13がそれぞれ五角形状の場合には、ブロック部10に3つの稜線状部分15Aと、4つの四角形状を成す化粧部領域14とが設けられることになる。図5(d)、図6(d)、図13図14に示すように、端部領域13の一方が三角形状で他方が五角形状の場合には、3つの稜線状部分15Aと、4つの化粧部領域14が設けられるが、化粧部領域14は四角形状を成すものが2つと、三角形状を成すものが2つとなる。図5(d)、図6(d)、図14の場合には、三角形状を成す端部領域13において横縁11と縦縁12との交点を頂点部分16′として、五角形状を成す端部領域13の頂点部分16との間にも2つの稜線状部分15Aが設けてある。図13の場合には、三角形状を成す端部領域13において横縁11と縦縁12との交点を頂点部分16′として、五角形状を成す端部領域13の頂点部分16との間に1つの稜線状部分15Aが設けてあり、さらに五角形状を成す端部領域13の2つの頂点部分16から三角形状を成す端部領域13の1つの頂点部分16に対して2本の稜線状部分15Aを設けたものが含まれている。図5(e)、図6(e)、図15図16に示すように、端部領域13の一方が四角形状で他方が五角形状の場合には、3つの稜線状部分15Aと、4つの化粧部領域14が設けられるが、化粧部領域14は四角形状を成すものが3つと、三角形状を成すものが1つとなる。この例の場合には、五角形状を成す端部領域13の2つの頂点部分16から四角形状を成す端部領域13の1つの頂点部分16に対して2本の稜線状部分15Aを設けたものが含まれている。
【0015】
上述したように、両横の端部領域13は、仮想の対称面Pに対して非対称となる位置に少なくとも1組の頂点部分16を有したものである。このため、両横の頂点部分16(16′を含む)を結ぶ稜線状部分15Aは、少なくとも1つが横縁11に対して傾斜するように延在することになり、化粧部領域14の少なくとも1つが表面部6の表面に対して傾斜することになる。しかも、稜線状部分15Aの傾斜角度が様々となるため、各ブロック部10に設けた化粧部領域14の傾斜状態も互いに異なる。さらに、端部領域13についても、互いに近接するように傾斜しているため、表面材1に正対した場合に、端部領域13からの反射光も認識できるようになる。これらの結果、表面部6に光が照射された場合には、それぞれのブロック部10からの反射光がランダムとなるとともに、陰となる部分の位置も異なることになり、表面部6に凹凸形状の異なる多数種類のブロック部10が設けられていることを認識することができる。
【0016】
図1図3に示すように、表面部6には、上述した種類の異なるブロック部10がランダムに配置してある。ブロック部10の配列は、基本的には、表面部6の横辺6aに平行で、互いに等間隔となる仮想の横方基準線Hに対してブロック部10の横縁11を一致させてある。但し、ブロック部10の一部については、図17に示すように、縦方向に沿って平行移動し、横方基準線Hに対して横縁11が不一致となるように配置してある。
【0017】
縦方向及び横方向に隣接するブロック部10としては、化粧部領域14の数や形状が互いに相違することが好ましい。こうした化粧部領域14の数や形状が互いに相違するブロック部10の対を設けることで、互いの相違がより顕著となって現れることになる。従って、実際には、金属の薄板という限られた寸法の中で大きな凹凸を設けることができないものの、隣接する化粧部領域14の形状や傾斜角度が大きく変化することで凹凸の状態を強調することができ、単調な印象を与えるおそれがない。
【0018】
上記のように構成した表面材1を備える建築板によれば、ブロック部10の相互間に配置される縦縁12の延在方向をランダムとすることで、外形の異なる複数のブロック部10が存在することを認識することができる。特に、第1ブロック部群に含まれる菱形状のブロック部10と、第2ブロック部群に含まれる台形状のブロック部10とが存在することにより、ブロック部10の種類をより多く認識することができるようになる。従って、仮に表面に施した石肌状の模様が無い場合であっても、縦縁12が鉛直方向に沿ってのみ延在する一般的な建築板との間に明確な相違点を認識させることが可能となり、差別化が顕著となって販売促進に寄与することができるようになる。
【0019】
さらに、ブロック部10には、表面部6の表面に対して傾斜する化粧部領域14が設けられているとともに、化粧部領域14の両横に表面部6の表面に対して傾斜する2つの端部領域13が設けられている。化粧部領域14と2つの端部領域13とは傾斜方向が異なり、またブロック部10ごとに化粧部領域14の傾斜方向も異なっている。従って、表面部6に光が照射された場合には、それぞれのブロック部10からの反射光がランダムとなるとともに、陰となる部分の位置も異なることになり、表面部6に多数種類のブロック部10が設けられていることを認識することができる。特に、化粧部領域14の形状や傾斜角度が大きく異なるブロック部10を対として隣接させた部分については、その差が顕著となるため、凹凸の状態が強調されることになり、実際よりも大きな寸法で凹凸が形成されているような印象を与えることができる。また、同じブロック部10であっても、図3に示すように、光源の位置が異なると光を反射する部分と影となる部分とが入れ替わるため、異なる印象を与えることになる。これらの結果、仮にブロック部10の外形が同一であっても光の反射方向や影となる部分が相違するため、異なるブロック部10として認識されるようになり、表面材1により多くの種類のブロック部10が設けられた建築板として差別化することが可能となる。
【0020】
なお、上述した実施の形態では、表面部6の横辺6aに沿って横縁11が延在し、縦辺6bに対して縦縁12が傾斜するようにブロック部10を配列しているが、本発明はこれに限定されず、表面部6の縦辺6bに沿って縦縁12が延在し、横辺6aに対して横縁11が傾斜するようにブロック部10を配列しても良いし、縦縁12及び横縁11がいずれも横辺6a及び縦辺6bに対して傾斜するようにブロック部10を配列することも可能である。また、2つの横縁11が互いに平行である必要もない。さらに、横縁11が表面部6の横辺6aに沿って延在するものにおいて、横方向に延在する仮想の横方基準線Hに対して横縁11が一致するように配置されたブロック部10と、横方基準線Hに対して横縁11が不一致となるように配置されたブロック部10とを備えるようにしているため、例えば建築物のリフォーム等において横方向に隣接する建築板の位置がずれてしまったとしても、この位置ずれが認識し難くなるという利点がある。しかしながら、本発明は必ずしもこれに限定されず、例えば、すべてのブロック部10の横縁11が横方基準線Hに一致するように配列しても良い。
【0022】
さらに、上述した実施の形態では、複数の化粧部領域14の相互隣接部に現れる稜線状部分15Aとして直線状となるものを例示しているが、例えば、図18に示すブロック部10のように、複数の化粧部領域14の相互に曲線状を成す稜線状部分15A′が現れるように構成することも可能である。図示の例ではさらに、直線状を成す稜線状部分15Aから湾曲状を成す稜線状部分15A′を分岐して設けるようにしているため、ブロック部10に設けられる化粧部領域14の数を増やすことが可能となる。すなわち、四角形状を成す端部領域13にはそれぞれ3つの稜線状部分15が設けられるため、単純に頂点部分16の間に稜線状部分15Aを設ければ、3つの化粧部領域14が設けられることになる。これに対して図18のように、稜線状部分15Aを途中で分岐させ、そのうちの1つが横縁11と縦縁12との交点である頂点部分16′との間に設けられるようにしているため、4つの化粧部領域14を構成することが可能となる。同様に、例えば、図19に示すブロック部10のように、一方の端部領域13の頂点部分16から他方の端部領域13において横縁11と縦縁12との交点である頂点部分16′に稜線状部分15Aを追加すれば、化粧部領域14の数を増やすことも可能となる。
【0023】
以上のように、本発明に係る建築板は、複数のブロック部が表面に突出するように設けられ、これらのブロック部が縦横に配置された建築板であって、前記複数のブロック部は、横方向の2つの横縁と、縦方向の2つの縦縁とによって囲まれる四角形状を成すものであり、前記複数のブロック部の少なくとも一部は、前記横縁と前記縦縁とが互いに傾斜するように延在していることを特徴としている。
この発明によれば、ブロック部の相互間に配置される横縁及び縦縁の延在方向をランダムとすることで、表面に正対した場合にも、横縁及び縦縁が縦横方向にのみ延在する一般的な建築板との間に明確な相違点を認識させることが可能となる。従って差別化が顕著となり、販売促進に寄与することができるようになる。
【0024】
また本発明は、上述した建築板において、前記複数のブロック部は、前記2つの横縁が互いに平行となるように延在していることを特徴としている。
この発明によれば、建築物の外壁に設置した場合に横縁が水平面に一致することになるため、建築物に安定した印象を与えることができる。
【0025】
また本発明は、上述した建築板において、前記横縁に対して前記2つの縦縁がいずれも傾斜したブロック部を備えることを特徴としている。
また本発明は、上述した建築板において、前記複数のブロック部は、前記横縁に直交する仮想の傾斜基準線に対して前記2つの縦縁が互いに同一方向に向けて傾斜した菱形状を成す第1ブロック部群に含まれるものと、傾斜基準線に対して前記2つの縦縁が互いに逆方向に向けて傾斜した台形状を成す第2ブロック部群に含まれるものとを備えることを特徴としている。
これらの発明によれば、外形形状が異なるブロック部の種類を増やすことができるため、差別化がより容易となる。
【0026】
また本発明は、上述した建築板において、横方向に延在する仮想の横方基準線に対して前記横縁が一致するように配置されたブロック部と、前記横方基準線に対して前記横縁が不一致となるように配置されたブロック部とを備えることを特徴としている。
この発明によれば、横方向に並んだ複数のブロック部の横縁が同一の水平線上に存在しないため、仮に建築物のリフォーム等において隣接する建築板の位置がずれてしまったとしても、この位置ずれが認識し難くなり、外観品質が損なわれる事態を防止することも可能となる。
【0027】
また本発明は、上述した建築板において、両横端部に端部領域を有するとともに、前記端部領域の間に複数の化粧部領域を有し、前記複数の化粧部領域の相互隣接部に現れる稜線状部分が前記横縁に対して傾斜もしくは湾曲するように延在したブロック部を備えることを特徴としている。
この発明によれば、光の反射方向が異なる化粧部領域が横縁に対して傾斜もしくは湾曲するように隣接しているため、ブロック部が複雑な立体形状を有するものとして認識できるようになり、差別化がより容易となる。
【0028】
また本発明は、上述した建築板において、前記端部領域は、それぞれ3以上の直線状部分で囲まれた外形形状となるように構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、ブロック部の表面に多数の稜線状部分が現れることになり、ブロック部がより複雑な立体形状として認識されるようになる。
【0029】
また本発明は、上述した建築板において、前記複数のブロック部は、前記2つの横縁が互いに平行となるように延在し、前記端部領域は、前記横縁に直交する仮想の対称面に対して頂点部分の少なくとも1組が互いに非対称となる位置に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、端部領域の頂点部分を結ぶ稜線状部分が横縁に対して傾斜するため、化粧部領域も傾斜することになり、光の反射方向がランダムとなって差別化がより容易となる。
【0030】
また本発明は、上述した建築板において、前記端部領域は、突出するに従って互いに漸次近接するように傾斜状に構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、表面に正対した場合に、端部領域の形状も認識することができるようになり、差別化がより容易となる。
【0031】
また本発明は、上述した建築板において、外形が横辺と縦辺とを有した長方形状を成す表面部を有し、前記横辺に沿って前記横縁が延在するように前記複数のブロック部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、外形の横辺に沿ってブロック部の横縁が設けられるため、建築物の外壁に対して上下に並べて設置した場合にも、上下のブロック部の位置合わせを行う必要がなく、設置作業を容易化することが可能となる。
【0032】
また本発明は、上述した建築板において、前記化粧部領域の表面には、凹凸状の不規則な模様が施されていることを特徴としている。
この発明によれば、ブロック部において同じ方向に配置された化粧部領域においても凹凸状の模様によって反射方向が相違することになり、差別化がより容易となる。
【0033】
また本発明は、上述した建築板において、前記稜線状部分の数が互いに異なり、かつ相互に隣接して配置されたブロック部の対を備えることを特徴としている。
この発明によれば、化粧部領域の数や形状が相違するブロック部を対として隣接させるようにしているため、2つのブロック部の相違がより際立って認識されるようになり、差別化が容易となる。
【符号の説明】
【0034】
1 表面材、6 表面部、6a 横辺、6b 縦辺、10 ブロック部、11 横縁、12 縦縁、13 端部領域、14 化粧部領域、15 稜線状部分、15A 稜線状部分、16 頂点部分、H 横方基準線、L 傾斜基準線、P 対称面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19