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特許7577485信号処理方法、信号処理装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】信号処理方法、信号処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/10 20060101AFI20241028BHJP
   G06F 17/18 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
G06F17/10 D
G06F17/18 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020149751
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044224
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】棗 祐有
(72)【発明者】
【氏名】林 達也
【審査官】田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-13348(JP,A)
【文献】特開2013-183845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0046064(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0183093(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0245883(US,A1)
【文献】特開2018-7821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/10
G06F 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューターが、
目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号と、前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する、信号処理方法であって、
前記コンピューターが、
特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、
前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、所定の閾値を超える特異値に対応する1個以上の成分または前記所定の閾値以上である特異値に対応する1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、
信号処理方法。
【請求項2】
コンピューターが、
目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号と、前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する、信号処理方法であって、
前記コンピューターが、
特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、
前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、ユーザーによって行われる操作の内容に基づいて前記ユーザーによって選択された1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、
信号処理方法。
【請求項3】
前記コンピューターが、
抽出した前記ノイズ成分と前記測定信号との相関を取り、その結果に基づいて、前記ノイズ成分の波形を維持したまま、前記ノイズ成分を前記測定信号に含まれるノイズ成分に近付ける値に相当する所定数倍を用いて、抽出した前記ノイズ成分の振幅または強度を前記所定数倍するように前記ノイズ成分を補正し、補正した前記ノイズ成分を前記測定信号から除去する、
請求項1または請求項2に記載の信号処理方法。
【請求項4】
前記測定信号と前記リファレンス信号とが共通の時間帯に測定されたものであり、
前記コンピューターが、
同じ時間に測定された信号部分を互いに対応させて信号処理を行うことで、前記共通成分を前記ノイズ成分として抽出する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の信号処理方法。
【請求項5】
前記測定信号と前記ノイズ信号は、同一の測定開始タイミングから同一の測定終了タイミングまでの同一の時間帯に測定された信号であり、
前記同一の時間帯が前記共通の時間帯に相当する、
請求項に記載の信号処理方法。
【請求項6】
前記コンピューターが、
複数の前記測定信号がある場合、前記測定信号ごとに処理を行う、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の信号処理方法。
【請求項7】
前記測定信号および前記リファレンス信号は、磁気信号である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の信号処理方法。
【請求項8】
目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号を取得する測定信号取得部と、
前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号を取得するリファレンス信号取得部と、
前記測定信号取得部によって取得された前記測定信号と、前記リファレンス信号取得部によって取得された前記リファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する信号処理部と、
を備え
前記信号処理部は、
特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、
前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、所定の閾値を超える特異値に対応する1個以上の成分または前記所定の閾値以上である特異値に対応する1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、
信号処理装置。
【請求項9】
目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号を取得する測定信号取得部と、
前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号を取得するリファレンス信号取得部と、
前記測定信号取得部によって取得された前記測定信号と、前記リファレンス信号取得部によって取得された前記リファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する信号処理部と、
を備え
前記信号処理部は、
特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、
前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、ユーザーによって行われる操作の内容に基づいて前記ユーザーによって選択された1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、
信号処理装置。
【請求項10】
コンピューターに、
目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号を取得する第1ステップと、
前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号を取得する第2ステップと、
取得された前記測定信号と、取得された前記リファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する第3ステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記第3ステップは、
特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、
前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、所定の閾値を超える特異値に対応する1個以上の成分または前記所定の閾値以上である特異値に対応する1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、
プログラム。
【請求項11】
コンピューターに、
目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号を取得する第1ステップと、
前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号を取得する第2ステップと、
取得された前記測定信号と、取得された前記リファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する第3ステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記第3ステップは、
特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、
前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、ユーザーによって行われる操作の内容に基づいて前記ユーザーによって選択された1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理方法、信号処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
信号処理の分野では、測定センサによって測定された測定信号から、当該測定信号に含まれるノイズ成分を除去する処理が行われている。
【0003】
特許文献1に記載された信号処理方法では、情報信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された複数の測定信号からノイズ成分を除去して情報信号を抽出する処理が行われている(特許文献1参照。)。具体的には、当該信号処理方法では、測定場所の異なる複数の測定信号を取得し、複数の測定信号間の相関性を検出し、複数の測定信号間の位相同期性を検出し、複数の測定信号のそれぞれから相関性の低い無相関成分と位相同期性の低い非位相同期成分とを除去して情報信号と推定される複数の推定信号を出力することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された信号処理方法では、複数の測定信号間の相関性の低い無相関成分と位相同期性の低い非位相同期成分をノイズ成分として除去することはできるが、他の特徴を持つノイズ成分については除去することができなかった。
【0006】
例えば、当該信号処理方法では、複数の測定信号について、取得が希望される信号間の相関性が低い場合、あるいは、取得が希望される信号間の位相同期性が低い場合には、ノイズ成分を除去することが難しかった。
例えば、当該信号処理方法では、取得が希望される信号の周波数とノイズ成分の周波数とが近い場合には、ローパスフィルターあるいはハイパスフィルターのようなフィルターを用いた処理が行われても、取得が希望される信号に影響を及ぼさずにノイズ成分を除去することが難しかった。
例えば、当該信号処理方法では、測定信号が1つである場合には、ノイズ成分を除去することができなかった。
例えば、当該信号処理方法では、測定信号に重畳されるノイズ成分が、取得が希望される信号の成分と相関性および位相同期性を有する場合には、当該ノイズ成分を除去することが難しかった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、測定信号に重畳されるノイズ成分を効果的に抽出することができる信号処理方法、信号処理装置およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様は、コンピューターが、目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号と、前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する、信号処理方法であって、前記コンピューターが、特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、所定の閾値を超える特異値に対応する1個以上の成分または前記所定の閾値以上である特異値に対応する1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、信号処理方法である。
一態様は、コンピューターが、目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号と、前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する、信号処理方法であって、前記コンピューターが、特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、ユーザーによって行われる操作の内容に基づいて前記ユーザーによって選択された1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、信号処理方法である。
【0009】
態様は、目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号を取得する測定信号取得部と、前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号を取得するリファレンス信号取得部と、前記測定信号取得部によって取得された前記測定信号と、前記リファレンス信号取得部によって取得された前記リファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する信号処理部と、を備え、前記信号処理部は、特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、所定の閾値を超える特異値に対応する1個以上の成分または前記所定の閾値以上である特異値に対応する1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、信号処理装置である。
一態様は、目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号を取得する測定信号取得部と、前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号を取得するリファレンス信号取得部と、前記測定信号取得部によって取得された前記測定信号と、前記リファレンス信号取得部によって取得された前記リファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する信号処理部と、を備え、前記信号処理部は、特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、ユーザーによって行われる操作の内容に基づいて前記ユーザーによって選択された1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、信号処理装置である。
【0010】
態様は、コンピューターに、目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号を取得する第1ステップと、前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号を取得する第2ステップと、取得された前記測定信号と、取得された前記リファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する第3ステップと、を実行させるためのプログラムであって、前記第3ステップは、特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、所定の閾値を超える特異値に対応する1個以上の成分または前記所定の閾値以上である特異値に対応する1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、プログラムである。
一態様は、コンピューターに、目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号を取得する第1ステップと、前記ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号を取得する第2ステップと、取得された前記測定信号と、取得された前記リファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する第3ステップと、を実行させるためのプログラムであって、前記第3ステップは、特異値分解の手法を用いて、前記測定信号および前記リファレンス信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値である特異値を検出し、前記ノイズ成分の候補となる複数の成分のなかから、ユーザーによって行われる操作の内容に基づいて前記ユーザーによって選択された1個以上の成分を選択し、選択した成分を前記ノイズ成分とみなして抽出する、プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、信号処理方法、信号処理装置およびプログラムにおいて、測定信号に重畳されるノイズ成分を効果的に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態(第1実施形態)に係る信号処理システムの概略的な構成を示す図である。
図2】実施形態に係る信号処理装置において行われる処理の手順の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る信号処理装置において行われる目的信号抽出処理の手順の一例を示す図である。
図4】ANCの原理を説明するための図である。
図5】ANCの原理を説明するための図である。
図6】測定信号の一例を示す図である。
図7】リファレンス信号の一例を示す図である。
図8】目的信号の一例を示す図である。
図9】実施形態に係る信号処理装置において行われる特異値分解を用いるノイズ成分抽出処理の手順の一例を示す図である。
図10】特異値分解の原理を示す図である。
図11】(A)~(E)はリファレンス信号の例を示す図である。
図12】(A)~(F)はノイズ成分の候補となる成分の例を示す図である。
図13】特異値の一例を示す図である。
図14】実施形態に係る信号処理装置において行われる主成分分析を用いるノイズ成分抽出処理の手順の一例を示す図である。
図15】実施形態に係る信号処理装置において行われる因子分析を用いるノイズ成分抽出処理の手順の一例を示す図である。
図16】実施形態(第2実施形態)に係る信号処理システムの概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
(第1実施形態)
<信号処理システム>
図1は、実施形態(第1実施形態)に係る信号処理システム1の概略的な構成を示す図である。
本実施形態に係る信号処理システム1は、信号処理装置11と、1個の測定センサ21と、M個のリファレンスセンサ22-1~22-Mと、を備える。
信号処理装置11は、測定信号取得部31と、リファレンス信号取得部32と、信号処理部33と、出力部34と、を備える。
信号処理部33は、ノイズ成分抽出部41と、目的信号抽出部42と、を備える。
【0015】
信号処理装置11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサーと、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの記憶部と、を備えるコンピューターであってもよい。この場合、信号処理装置11は、プロセッサーによって、記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、各種の処理を実行してもよい。また、信号処理装置11は、プロセッサーによってプログラムを実行する際に、記憶部に記憶された各種のパラメーターを使用してもよい。
【0016】
本実施形態では、M個のリファレンスセンサ22-1~22-Mの数であるMは2以上の整数である場合を説明するが、Mは1であってもよく、つまり、信号処理システム1は1個のリファレンスセンサ22-1を備える構成であってもよい。
本実施形態では、説明の便宜上、信号処理システム1が1個のリファレンスセンサ22-1を備える場合についても、まとめて説明する。
なお、信号処理システム1が複数のリファレンスセンサ22-1~22-Mを備えるが、1個のリファレンスセンサ22-1だけが使用される場合には、信号処理システム1が1個のリファレンスセンサ22-1を備える場合と同様な処理が行われる。
【0017】
本実施形態では、測定センサ21が信号処理装置11とは別体である構成を示すが、他の構成例として、測定センサ21が信号処理装置11に一体で備えられてもよい。
本実施形態では、リファレンスセンサ22-1~22-Mが信号処理装置11とは別体である構成を示すが、他の構成例として、一部または全部のリファレンスセンサ22-1~22-Mが信号処理装置11に一体で備えられてもよい。
【0018】
測定センサ21は、目的信号を含む測定信号を測定するために、設置される。本実施形態では、取得が希望される信号を目的信号と呼んで説明する。本実施形態では、測定センサ21によって測定される信号を測定信号と呼んで説明する。
測定信号は、目的信号と、ノイズ成分と、を含む。本実施形態では、目的信号以外の信号を、ノイズ信号と呼んで説明する。また、本実施形態では、ノイズ信号の信号成分をノイズ成分と呼んで説明する。
【0019】
それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mは、ノイズ信号を含むリファレンス信号を測定するために、設置される。本実施形態では、それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mによって測定される信号をリファレンス信号と呼んで説明する。
本実施形態では、それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mによって測定されるリファレンス信号に含まれるノイズ信号は、測定信号に含まれるノイズ成分と同一のノイズ発生源に起因する。
【0020】
ノイズ発生源は、人工的な装置に起因する環境であってもよく、あるいは、装置以外の地球などの自然に起因する環境であってもよい。
ノイズ発生源の数は、1個であってもよく、あるいは、複数であってもよい。ここで、ノイズ発生源の数に対するリファレンスセンサ22-1~22-Mの数によってノイズ成分の除去の精度が影響を受ける場合には、必要な精度が確保されるように、リファレンスセンサ22-1~22-Mの数が設けられることが好ましい。一例として、ノイズ発生源の数と同じ数またはより多い数のリファレンスセンサ22-1~22-Mが設けられることが好ましい。
なお、同一のノイズ発生源が2種類以上の性質の異なるノイズ信号を発生する場合には、それぞれの種類のノイズ信号ごとに、異なるノイズ発生源が存在するとみなされてもよい。
当該性質としては、周波数であってもよい。この場合、同一のノイズ発生源が2種類以上の周波数の異なるノイズ信号を発生する場合には、それぞれの周波数のノイズ信号ごとに、異なるノイズ発生源が存在するとみなされてもよい。
【0021】
測定センサ21は、目的信号を測定することが可能な態様で配置される。ここで、測定結果には目的信号以外の信号(本実施形態においてノイズ信号と呼んでいる信号)が含まれないことが理想的であるが、実際には目的信号以外の信号が含まれることが多く、本実施形態では、測定信号には目的信号以外の信号の成分(本実施形態においてノイズ成分と呼んでいる成分)が含まれることを想定し、当該ノイズ成分を除去する処理を説明する。
それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mは、ノイズ信号を有意に測定することが可能な態様で配置される。ここで、本実施形態では、ノイズ信号を有意に測定するとは、測定結果に含まれるノイズ信号と他の信号(本実施形態において目的信号と呼んでいる信号)とのうちで、当該他の信号の成分が無いまたは誤差の程度であることを意味する。リファレンス信号は、ノイズ信号のみを含むことが好ましい一例であるが、ノイズ信号と目的信号の成分を含んでもよい。例えば、リファレンス信号は、誤差とみなされる程度に、目的信号の成分を含んでもよい。
【0022】
それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mによって測定されるリファレンス信号は、互いに、同一のノイズ発生源に起因するノイズ信号を含んでもよく、あるいは、含まなくてもよい。なお、当該ノイズ信号は、測定センサ21によって測定される測定信号に重畳されるノイズ信号である。
それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mによって測定されるリファレンス信号は、互いに、異なるノイズ発生源に起因するノイズ信号を含んでもよく、あるいは、含まなくてもよい。なお、当該ノイズ信号は、測定センサ21によって測定される測定信号に重畳されるノイズ信号である。
なお、同一のノイズ発生源から発生するノイズ信号の影響によって測定信号に含まれるノイズ成分とリファレンス信号に含まれるノイズ信号とは、振幅等が異なる場合と、振幅等が一致する場合があり得る。
【0023】
測定センサ21とそれぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mとは、例えば、互いに異なる態様で設置されることで、測定センサ21では目的信号を測定し、それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mではノイズ信号を有意に測定することが実現される。
測定センサ21の設置の態様と、それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mの設置の態様としては、例えば、設置の場所、あるいは、設置の姿勢などの態様が調整されてもよい。
例えば、測定センサ21が目的信号の発生源の付近に設置され、それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mが、当該目的信号が有意に測定されない程度に当該発生源から離隔した場所に設置されてもよい。ここで、本実施形態では、目的信号が有意に測定されないとは、ノイズ信号を有意に測定することを意味する。
【0024】
測定センサ21とそれぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mとしては、同一の性能あるいは特性を有するセンサが用いられてもよく、あるいは、異なる性能あるいは特性を有するセンサが用いられてもよい。当該性能等は、測定の感度(測定により得られる信号の強度の程度)であってもよい。
それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mとしては、同一の性能あるいは特性を有するセンサが用いられてもよく、あるいは、異なる性能あるいは特性を有するセンサが用いられてもよい。当該性能等は、測定の感度(測定により得られる信号の強度の程度)であってもよく、あるいは、測定対象として測定することが可能な周波数(測定される信号の周波数)であってもよい。
【0025】
信号処理システム1において行われる処理を説明する。
測定センサ21は、時間の進みに沿った測定信号を測定する。時間の進みに沿った測定信号は、時間的に連続した信号であってもよく、あるいは、一定周期などの所定の離散的なサンプリングタイミングで得られた信号であってもよい。
測定センサ21は、測定された測定信号を信号処理装置11に出力する。
【0026】
それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mは、時間の進みに沿ったリファレンス信号を測定する。時間の進みに沿ったリファレンス信号は、時間的に連続した信号であってもよく、あるいは、一定周期などの所定の離散的なサンプリングタイミングで得られた信号であってもよい。
それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mは、測定されたリファレンス信号を信号処理装置11に出力する。
【0027】
本実施形態では、測定センサ21によって測定信号を測定する処理と、それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mによってリファレンス信号を取得する処理とは、同一の時間帯に同時に並列して行われる。そして、当該測定信号と当該リファレンス信号とは、当該同一の時間帯において、時間軸がそろっている。本実施形態では、測定信号とリファレンス信号とが同一の時間帯において時間軸がそろっているとは、当該測定信号および当該リファレンス信号が当該同一の時間帯の開始時間から終了時間にわたって測定された信号であり、同じ時間に測定された信号部分を互いに対応させて処理(本実施形態では、ノイズ成分の抽出処理および除去処理など)が可能であることを意味する。
なお、他の構成例として、測定センサ21および複数のリファレンスセンサ22-1~22-Mに関し、それぞれの測定開始タイミングあるいは測定終了タイミングは必ずしも一致していなくてもよく、すべてのセンサによる測定が行われる共通の時間帯があればよい。この場合、当該共通の時間帯が上記した同一の時間帯として用いられて処理(本実施形態では、ノイズ成分の抽出処理および除去処理など)が行われ、当該共通の時間帯以外の時間の信号部分は処理に用いられなくてもよい。つまり、この場合、当該共通の時間帯が、測定信号および複数のリファレンス信号が上記した同一の時間帯に測定された場合の当該同一の時間帯として用いられてもよい。
【0028】
本実施形態では、測定センサ21およびそれぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mは、磁気信号を測定する磁気センサである。
なお、測定センサ21およびそれぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mは、任意のセンサであってもよく、例えば、電界信号を測定する電界センサ、電流を検出する電流センサ、電圧を測定する電圧センサ、音を測定する音センサ、温度を検出する温度センサ、圧力を測定する圧力センサ、光を測定する光センサ、電磁波を測定する電磁波センサなどであってもよい。電磁波センサは、例えば、赤外線を測定する赤外線センサ、あるいは、電波を測定する電波センサであってもよい。
【0029】
測定信号取得部31は、測定センサ21から出力される測定信号を入力して取得し、当該測定信号を信号処理部33に出力する。
リファレンス信号取得部32は、それぞれのリファレンスセンサ22-1~22-Mから出力されるリファレンス信号を入力して取得し、取得されたリファレンス信号を信号処理部33に出力する。
【0030】
ノイズ成分抽出部41は、測定信号取得部31によって取得された測定信号と、リファレンス信号取得部32によって取得されたリファレンス信号に基づいて、これらの信号の共通成分を、測定信号に含まれるノイズ成分として抽出する。当該ノイズ成分は、測定信号に含まれる目的信号以外の信号成分である。
当該共通成分は、例えば、当該測定信号と当該リファレンス信号とに含まれる互いに相似する波形の信号成分であってもよい。
【0031】
目的信号抽出部42は、測定信号取得部31によって取得された測定信号から、ノイズ成分抽出部41によって抽出されたノイズ成分を除去し、当該測定信号から当該ノイズ成分が除去された信号を目的信号として抽出する。
目的信号抽出部42は、測定信号からノイズ成分を除去することを、例えば、当該測定信号と当該ノイズ成分とで時間軸をそろえて、当該測定信号から当該ノイズ成分を減算することによって行う。
【0032】
本実施形態では、目的信号抽出部42は、ノイズ成分抽出部41によって抽出されたノイズ成分について、当該測定信号と当該ノイズ成分との相関性に基づいて、当該ノイズ成分を補正し、補正後のノイズ成分を当該測定信号から除去する。当該補正は、補正前のノイズ成分の振幅を当該測定信号に応じて調整することで、ノイズ除去をより効果的に行える。ノイズ成分の振幅を調整する処理は、当該ノイズ成分の波形を維持したまま、振幅を所定数倍する処理であってもよい。ここで、振幅の補正の代わりに、強度の補正が行われてもよい。
なお、このような補正が必要とされない場合には、当該補正は行われなくてもよい。
【0033】
ここで、目的信号抽出部42によって抽出される目的信号は、理想的には目的信号以外の信号成分を含まないが、実際には、ノイズ除去の精度に応じて、目的信号以外の信号成分(本実施形態では、除去しきれなかったノイズ成分)を含んでもよい。
【0034】
信号処理部33は、目的信号抽出部42によって抽出された目的信号を出力部34に出力する。
出力部34は、信号処理部33から出力された目的信号などに関する出力を行う。例えば、出力部34は、当該目的信号を外部の装置に出力してもよく、あるいは、当該目的信号に関する情報を画面に表示出力してもよい。
【0035】
ここで、ノイズ成分抽出部41および目的信号抽出部42は、測定信号とリファレンス信号との時間軸がそろえられた状態で、互いの位相同期性を確保して、処理を行う。
【0036】
図2は、実施形態に係る信号処理装置11において行われる処理の手順の一例を示す図である。
信号処理装置11において行われる処理の手順を、ステップS1~ステップS4として説明する。
【0037】
(ステップS1)
測定信号取得部31およびリファレンス信号取得部32によって、測定信号およびリファレンス信号を取得する。
【0038】
(ステップS2)
ノイズ成分抽出部41によって、測定信号およびリファレンス信号に基づいて、ノイズ成分を抽出する。
【0039】
(ステップS3)
目的信号抽出部42によって、測定信号からノイズ成分を除去して、目的信号を抽出する。
【0040】
(ステップS4)
出力部34によって、抽出された目的信号を出力する。
なお、出力部34は、他の情報を出力してもよい。
【0041】
図3は、実施形態に係る信号処理装置11において行われる目的信号抽出処理の手順の一例を示す図である。
図2に示されるステップS3の処理の手順の一例を、ステップS21~ステップS22として説明する。
【0042】
(ステップS21)
目的信号抽出部42によって、測定信号とノイズ成分抽出部41によって抽出されたノイズ成分との相関性に基づいて、補正後のノイズ成分を決定する。
【0043】
(ステップS22)
目的信号抽出部42によって、測定信号から補正後のノイズ成分を除去することで、目的信号を抽出する。
なお、ノイズ成分抽出部41によって抽出されたノイズ成分の補正が不要な場合には、当該補正は行われなくてもよく、例えば、補正前のノイズ成分と補正後のノイズ成分とが一致するとみなされてもよい。
【0044】
<ANC>
信号処理装置11では、ANC(Adaptive Noise Cancelling)を用いて、測定信号からノイズ成分を除去してもよい。
図4および図5は、ANCの原理を説明するための図である。
図4および図5に示されるグラフにおいて、横軸は時間を表しており、縦軸は振幅を表している。当該振幅は、電圧などの形式で取得されてもよい。なお、横軸と縦軸の目盛りは省略してある。
図4および図5のグラフでは、横軸の時間帯がそろっている場合を示してある。
図4には、測定信号1011の波形の概略を示してある。測定信号1011は、目的信号1021と、ノイズ信号によるノイズ成分1022とを含む。
図5には、リファレンス信号1031の波形の概略を示してある。
【0045】
説明を簡易化するために、リファレンス信号1031はノイズ信号のみであり、測定信号1011に含まれるノイズ成分はリファレンス信号1031と相関性のある信号成分である場合を想定する。
この場合、目的信号1021は、測定信号1011から、リファレンス信号1031の所定数倍の信号を減算した結果に相当する。当該所定数倍の値は、任意の解析手法によって求められてもよい。
この場合、測定信号1011に含まれるノイズ成分の波形と、リファレンス信号1031の波形とは、相似形になる。
ここで、測定信号1011とリファレンス信号1031との位相同期性が確保されているとする。
【0046】
図6は、測定信号1211の一例を示す図である。
図7は、リファレンス信号1221の一例を示す図である。本例では、リファレンス信号1221はノイズ信号のみである。
図8は、目的信号1231の一例を示す図である。
図6図8に示されるグラフにおいて、横軸は時間を表しており、縦軸は振幅を表している。当該振幅は、電圧などの形式で取得されてもよい。なお、横軸と縦軸の目盛りは省略してある。
図6図8のグラフでは、横軸の時間帯がそろっている場合を示してある。
【0047】
<信号処理のタイミング>
本実施形態では、信号処理装置11は、測定信号取得部31によって取得された測定信号およびリファレンス信号取得部32によって取得されたリファレンス信号をいったん記憶部に記憶し、記憶された当該測定信号および当該リファレンス信号を用いて、信号処理部33によって、ノイズ成分の抽出処理およびノイズ成分の除去処理を行う。
このように、本実施形態では、信号処理部33によって行われる処理は、リアルタイムの処理ではないが、他の構成例として、信号処理装置11は、信号処理部33によって、リアルタイムの信号処理を行ってもよい。
【0048】
<ノイズ成分の抽出処理の具体例>
ノイズ成分抽出部41によって行われるノイズ成分の抽出処理の具体例として、特異値分解を用いる例と、主成分分析を用いる例と、因子分析を用いる例を示す。
【0049】
[特異値分解を用いる例]
図9は、実施形態に係る信号処理装置11において行われる特異値分解を用いるノイズ成分抽出処理の手順の一例を示す図である。
図2に示されるステップS2の処理の手順の一例を、ステップS31~ステップS32として説明する。
【0050】
(ステップS31)
ノイズ成分抽出部41によって、特異値分解の手法を用いて、測定信号およびリファレンス信号に基づいて、信号を構成するベクトルを抽出し、そのベクトルが信号を構成するのに与える影響の大きさを表す値を検出する。当該値は、特異値に相当する。
【0051】
(ステップS32)
ノイズ成分抽出部41によって、信号を構成するのに大きな影響を与えるベクトル、すなわち特異値が高いベクトルをノイズ成分として抽出する。
【0052】
図10図13を参照して、特異値分解を用いるノイズ成分抽出処理を、より具体的に説明する。
図10は、特異値分解の原理を示す図である。
【0053】
[数1]
A=UΣV ・・(式1)
【0054】
(式1)は、特異値分解で用いられる式の一例である。
A、U、Σ、Vは、それぞれ、行列を表す。
図10には、A、U、Σ、Vの概略を示してある。
例えば、Uは左特異ベクトルであり、Σは特異値行列であり、Vは右特異ベクトルである。
【0055】
行列Aでは、複数であるp個の行のそれぞれに信号1~信号pが対応しており、複数であるq個の列のそれぞれに次元1~次元qが対応している。
本実施形態では、信号1として測定信号を用いて、信号2~信号pとして(p-1)個のリファレンス信号を用いる。リファレンス信号の数である(p-1)は、2以上であってもよく、あるいは、1であってもよい。
なお、信号1~信号pの並び順は、任意であってもよい。
次元1~次元qは、時間成分を表す。つまり、信号1の次元1~次元qは信号1のq個の異なる時間成分であり、信号2~信号pについても同様である。本実施形態では、次元1~次元qは、時間の進みに沿って並んでいる。
【0056】
特異値分解では、行列Aが決まると、行列U、行列Σ、行列Vが決まる。
例えば、行列Aは(p×q)の行列であり、行列Uは(p×n)の行列であり、行列Σは(n×n)の行列であり、行列Vは(n×q)の行列である。nは整数である。
なお、これらの行列の行数および列数は一例であり、これらに限られない。
【0057】
行列Σでは、対角成分として行列Aの特異値σ1~特異値σnが並ぶ。特異値σ1から特異値σnへの順で、大きい値から小さい値になる。
特異値が大きいほど、信号1~信号pのすべてにおいて相関している度合いが高いこと、つまり、信号を構成するのに大きな影響を与える成分であることを示す。本実施形態では、このように信号を構成するのに大きな影響を与える成分を、ノイズ成分である可能性が高いとみなす。
特異値σ1~特異値σnのうちで、大きい値の方から1個以上の一部の特異値を選択すると、行列Uに関して次元削減したベクトル表現が得られる。これを利用して、本実施形態では、ノイズ成分である可能性がある複数の成分(ノイズ成分の候補)のなかから、大きい値の特異値に対応する1個以上の成分を選択し、選択された成分をノイズ成分とみなして測定信号から除去する。
ここで、p個の信号1~信号pが用いられる場合には、p個以下のノイズ成分の候補が得られる。
【0058】
図11図13を参照して、測定信号と、5個のリファレンス信号が用いられる場合について説明する。
図11(A)~(E)は、5個のリファレンス信号2011~2015の例を示す図である。
図11(A)~(E)に示されるグラフにおいて、横軸は時間を表しており、縦軸は振幅を表している。当該振幅は、電圧などの形式で取得されてもよい。なお、横軸と縦軸の目盛りは省略してある。
図11(A)~(E)のグラフでは、横軸の時間帯がそろっている場合を示してある。
図11(A)~(E)には、それぞれ、5個のリファレンスセンサ22-1~22-5のそれぞれによって測定されたリファレンス信号2011~2015を示してある。
【0059】
図12(A)~(F)は、ノイズ成分の候補となる成分の例を示す図である。当該成分をノイズ候補成分と呼んで説明する。
図12(A)~(F)に示されるグラフにおいて、横軸は時間を表しており、縦軸は振幅を表している。当該振幅は、電圧などの形式で取得されてもよい。なお、横軸と縦軸の目盛りは省略してある。
図12(A)~(F)のグラフでは、横軸の時間帯がそろっている場合を示してある。
図12(A)~(F)には、測定信号とリファレンス信号2011~2015を用いて特異値分解によって抽出された6個のノイズ候補成分2021~2026を示してある。
【0060】
図13は、特異値の特性2031の一例を示す図である。
図13に示されるグラフにおいて、横軸は成分番号を表しており、縦軸は特異値を表している。当該成分番号は、6個のノイズ候補成分2021~2026の番号であり、順に、1~6が割り当てられている。
【0061】
特異値σ1から特異値σ6への順に、値が大きい方から小さくなる。
例えば、2個の特異値に対応するノイズ成分を抽出する場合には、特異値σ1に対応するノイズ候補成分2021と、特異値σ2に対応するノイズ候補成分2022と、をノイズ成分として選択して抽出する。
また、1個の特異値に対応するノイズ成分を抽出する場合、あるいは、3個以上の特異値に対応するノイズ成分を抽出する場合についても、複数の特異値のなかの上位から個数分のノイズ候補成分をノイズ成分として選択して抽出する。
【0062】
ここで、複数のノイズ候補成分のなかから1個以上のノイズ候補成分をノイズ成分として選択する手法としては、任意の手法が用いられてもよい。
例えば、信号処理装置11において、特異値に関する閾値が記憶部に記憶されており、ノイズ成分抽出部41が、当該閾値を超える(または、当該閾値以上である)特異値に対応するノイズ候補成分をノイズ成分として選択する手法が用いられてもよい。
例えば、信号処理装置11において、特異値に関する所定数が記憶部に記憶されており、ノイズ成分抽出部41が、特異値が大きい方から当該所定数の特異値を選択し、選択した当該特異値に対応するノイズ候補成分をノイズ成分として選択する手法が用いられてもよい。この場合、測定信号に含まれることが予測されるノイズ成分の数があらかじめ把握あるいは推測される場合には、当該数が当該所定数として設定されてもよい。
【0063】
例えば、信号処理装置11において、ユーザー(人)によって行われる操作の内容を受け付け、当該操作の内容に基づいて、複数のノイズ候補成分のなかから1個以上のノイズ候補成分をノイズ成分として選択してもよい。つまり、ユーザーによって、ノイズ成分とする成分が選択されてもよい。
【0064】
なお、特異値分解のアルゴリズムとしては、既知のアルゴリズムが用いられてもよい。この場合、信号処理装置11は、特異値分解のアルゴリズムを記憶し、当該アルゴリズムに、測定信号およびリファレンス信号に関するパラメーターの値を代入することで、特異値などを演算して取得する。
【0065】
[主成分分析を用いる例]
図14は、実施形態に係る信号処理装置11において行われる主成分分析を用いるノイズ成分抽出処理の手順の一例を示す図である。
図2に示されるステップS2の処理の手順の一例を、ステップS41~ステップS42として説明する。
【0066】
(ステップS41)
ノイズ成分抽出部41によって、主成分分析の手法を用いて、測定信号およびリファレンス信号に基づいて、次元の縮約を行う。
【0067】
(ステップS42)
ノイズ成分抽出部41によって、主成分をノイズ成分として抽出する。
【0068】
本実施形態では、主成分分析において、1個の測定信号および1個以上のリファレンス信号のすべてに含まれている成分を主成分として特定する。
一般に、主成分分析では、個々の評価を合成して、主成分に要約することが行われ、変数から各主成分を説明することが行われる。
【0069】
なお、主成分分析のアルゴリズムとしては、既知のアルゴリズムが用いられてもよい。この場合、信号処理装置11は、主成分分析のアルゴリズムを記憶し、当該アルゴリズムに、測定信号およびリファレンス信号に関するパラメーターの値を代入することで、主成分などを演算して取得する。
また、信号処理装置11では、主成分分析の結果に基づいてノイズ成分として測定信号から除去する成分を決定する条件が、あらかじめ設定されてもよい。当該条件は、信号処理装置11の記憶部に記憶されてもよい。
【0070】
[因子分析を用いる例]
図15は、実施形態に係る信号処理装置11において行われる因子分析を用いるノイズ成分抽出処理の手順の一例を示す図である。
図2に示されるステップS2の処理の手順の一例を、ステップS51~ステップS52として説明する。
【0071】
(ステップS51)
ノイズ成分抽出部41によって、因子分析の手法を用いて、測定信号およびリファレンス信号に基づいて、変動を検出する。
【0072】
(ステップS52)
ノイズ成分抽出部41によって、共通の変動をする成分をノイズ成分として抽出する。
【0073】
本実施形態では、因子分析において、1個の測定信号および1個以上のリファレンス信号のすべてに共通する変動をノイズ成分として特定する。
一般に、因子分析では、個々の評価を分解して、因子に要約することが行われ、因子から各変数に分解することが行われる。
【0074】
なお、因子分析のアルゴリズムとしては、既知のアルゴリズムが用いられてもよい。この場合、信号処理装置11は、因子分析のアルゴリズムを記憶し、当該アルゴリズムに、測定信号およびリファレンス信号に関するパラメーターの値を代入することで、因子などを演算して取得する。
また、信号処理装置11では、因子分析の結果に基づいてノイズ成分として測定信号から除去する成分を決定する条件が、あらかじめ設定されてもよい。当該条件は、信号処理装置11の記憶部に記憶されてもよい。
【0075】
<第1実施形態について>
以上のように、本実施形態に係る信号処理システム1では、信号処理装置11は、次のような信号処理方法を実行する。
信号処理装置11は、目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された1個の測定信号と、目的信号を主としては取得しない1個以上のリファレンス信号とを用いて、目的信号を抽出する。この場合、信号処理装置11は、測定信号とリファレンス信号とから、共通成分をノイズ成分として抽出する。
したがって、信号処理装置11は、測定信号に重畳されるノイズ成分を効果的に抽出することができる。そして、信号処理装置11は、このようなノイズ成分を用いて、測定信号に重畳されるノイズ成分を効果的に除去することが可能である。
【0076】
信号処理装置11は、測定信号とリファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出することで、当該測定信号に重畳する、相関性および位相同期性のあるノイズ成分を抽出することができる。
例えば、測定信号とリファレンス信号とが異なる態様で測定されている場合には、当該測定信号と当該リファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出することで、当該リファレンス信号をそのままノイズ信号とする場合と比べて、当該測定信号に適合したノイズ成分を抽出することができる。
【0077】
信号処理装置11は、ローパスフィルターあるいはハイパスフィルターなどのフィルターを用いずに、測定信号に重畳されるノイズ成分を抽出することが可能である。
例えば、信号処理装置11は、目的信号の周波数とノイズ成分の周波数とが近い場合においても、フィルターを用いずに、目的信号に与える歪みなどの影響を抑制して、当該ノイズ成分を抽出することが可能である。これにより、信号処理装置11は、抽出される目的信号に与える歪みなどの影響を抑制して、測定信号から当該ノイズ成分を抽出することが可能である。
なお、信号処理装置11は、測定信号に重畳されるノイズ成分を抽出する処理において、フィルターを利用してもよい。
【0078】
信号処理装置11は、測定信号が1個である場合においても、当該測定信号からノイズ成分を抽出することができる。これにより、信号処理装置11は、測定信号が1個である場合においても、当該測定信号からノイズ成分を除去することができる。
信号処理装置11は、測定信号に重畳されるノイズ成分が、目的信号の成分と相関性および位相同期性を有する場合においても、当該ノイズ成分を抽出することができる。
【0079】
本実施形態に係る信号処理システム1では、測定信号とリファレンス信号とは時間軸がそろった信号である。
したがって、信号処理装置11は、測定信号とリファレンス信号との共通部分をノイズ成分として精度良く抽出し易い。
【0080】
本実施形態に係る信号処理システム1では、測定信号とリファレンス信号とは同一の時間帯に測定された信号である。これにより、測定信号とリファレンス信号には、同一の発生源によって同一の時間に発生したノイズ成分が含まれる可能性が高い。
したがって、信号処理装置11は、測定信号とリファレンス信号との共通部分をノイズ成分として精度良く抽出することができる。
【0081】
本実施形態に係る信号処理システム1では、信号処理装置11は、抽出したノイズ成分と測定信号との相関を取り、その結果に基づいて当該ノイズ成分を補正し、当該測定信号から補正後のノイズ成分を除去することで、目的信号を抽出する。
したがって、信号処理装置11は、抽出したノイズ成分と、測定信号に含まれるノイズ成分とで、振幅のバラツキがある場合においても、これらの相関を取ることで、抽出したノイズ成分を、測定信号に含まれるノイズ成分に近付けるように補正することができる。
【0082】
本実施形態に係る信号処理システム1では、信号処理装置11は、ノイズ成分を抽出する手法として、特異値分解を使用する。
したがって、信号処理装置11は、特異値分解を使用して、信号を構成するベクトルを抽出することで、信号を構成するのに大きな影響を与えるベクトルをノイズ成分として抽出することができる。
【0083】
本実施形態に係る信号処理システム1では、信号処理装置11は、ノイズ成分を抽出する手法として、主成分分析を使用する。
したがって、信号処理装置11は、主成分分析を使用して、多くの量的な説明変数をより少ない指標あるいは合成変数に要約すること(次元の縮約を行うこと)で、主成分をノイズ成分として抽出することができる。
【0084】
本実施形態に係る信号処理システム1では、信号処理装置11は、ノイズ成分を抽出する手法として、因子分析を使用する。
したがって、信号処理装置11は、因子分析を使用して、測定信号のすべての変動を全データに共通の変動(ノイズ成分)と当該測定信号に固有の変動に分離することで、ノイズ成分を推定して抽出することができる。
【0085】
本実施形態に係る信号処理システム1では、例えば、測定信号およびリファレンス信号は磁気信号であり、測定信号に含まれるノイズ成分は環境磁場によって目的信号に重畳されるノイズ成分である。
信号処理装置11は、例えば、目的信号が微弱な磁気信号である場合においても、測定信号から環境磁場による影響を除去して、当該目的信号を抽出することができる。
【0086】
なお、測定という語の代わりに、計測、あるいは、検出などと呼ばれてもよく、このような場合も本実施形態に含まれる。
【0087】
(第2実施形態)
図16は、実施形態(第2実施形態)に係る信号処理システム101の概略的な構成を示す図である。
信号処理システム101の構成および動作は、複数であるN個の測定センサ21-1~21-Nを備える点、および、信号処理装置11が複数の測定信号の処理を行う点を除いて、第1実施形態に係る図1に示される信号処理システム1の構成および動作と同様である。
【0088】
本実施形態では、説明の便宜上、信号処理装置11および信号処理装置11の各部と、リファレンスセンサ22-1~22-Mについては、図1に示される符号と同一の符号を付して説明する。
本実施形態では、主に第1実施形態とは異なる点について説明し、第1実施形態と同様な点については説明を省略する。
【0089】
それぞれの測定センサ21-1~21-Nは、測定信号を測定し、当該測定信号を信号処理装置11に出力する。
信号処理装置11は、測定信号取得部31によって、それぞれの測定センサ21-1~21-Nから出力される測定信号を取得する。
信号処理装置11は、ノイズ成分抽出部41および目的信号抽出部42によって、それぞれの測定信号ごとに、ノイズ成分の抽出処理および目的信号の抽出処理(ノイズ成分の除去処理)を行う。
信号処理装置11は、出力部34によって、複数の測定信号から抽出された複数の目的信号のうちの1以上の目的信号などに関する出力を行う。
【0090】
本実施形態とは異なる構成例として、複数の測定センサ21-1~21-Nの代わりに、1個の測定センサを備えて、当該1個の測定センサの設置の態様を複数(例えば、N種類)に変更することが行われてもよい。具体的には、当該1個の測定センサの設置の態様を所望の態様として測定信号を取得して当該測定信号からノイズ成分を除去する処理を、当該態様を変更して繰り返して行うことで、全体として、複数の異なる設置の態様について、測定信号を取得して当該測定信号からノイズ成分を除去する処理を実現することができる。
【0091】
信号処理部33は、複数の測定信号の処理を行う場合に、複数の測定信号の処理を並列的に行ってもよく、あるいは、複数の測定信号の処理を、1個の測定信号ごとに順番に時分割で、行ってもよい。
【0092】
<第2実施形態について>
以上のように、本実施形態に係る信号処理システム1では、信号処理装置11は、次のような信号処理方法を実行する。
信号処理装置11は、複数の測定信号がある場合、それぞれの測定信号ごとに、1個の測定信号と1個以上のリファレンス信号との組み合わせに基づいて、第1実施形態と同様なノイズ除去処理を行う。例えば、信号処理装置11は、それぞれの測定信号ごとの処理を、複数の測定信号について、並列的に実行すること、あるいは、時分割で繰り返して実行することを行う。
したがって、信号処理装置11は、複数の測定信号がある場合においても、測定信号に重畳されるノイズ成分を効果的に除去することができる。
【0093】
信号処理装置11は、複数の測定信号において取得が希望される信号間の相関性が低い場合あるいは位相同期性がない場合においても、それぞれの測定信号からノイズ成分を除去することができる。
なお、信号処理装置11は、複数の測定信号において取得が希望される信号間の相関性および位相同期性がある場合においても、それぞれの測定信号からノイズ成分を除去することができる。
【0094】
信号処理装置11は、複数の測定信号間で相関性の低い無相関成分あるいは位相同期性の低い非位相同期成分ではないノイズ成分についても、当該ノイズ成分を除去することができる。
例えば、信号処理装置11は、複数の測定信号間で相関性および位相同期性のあるノイズ成分についても、当該ノイズ成分を除去することができる。
【0095】
信号処理装置11は、測定信号ごとにノイズ成分を抽出するため、それぞれの測定信号から効果的にノイズ成分を除去することができる。
本実施形態では、測定信号が多い場合においても、リファレンス信号を増やさなくても、それぞれの測定信号から効果的にノイズ成分を除去することができる。
【0096】
<以上の実施形態に関する構成例>
一構成例として、信号処理方法(以上の実施形態では、信号処理装置11によって実行される信号処理方法)では、目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号と、当該ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する。
一構成例として、信号処理方法では、抽出したノイズ成分と測定信号との相関性に基づいて当該ノイズ成分を補正し、補正したノイズ成分を測定信号から除去する。
【0097】
一構成例として、信号処理方法では、測定信号とノイズ信号とで時間軸がそろった共通の時間帯について信号処理を行うことで、共通成分をノイズ成分として抽出する。
一構成例として、信号処理方法では、測定信号とノイズ信号は、同一の測定開始タイミングから同一の測定終了タイミングまでの同一の時間帯に測定された信号であり、当該同一の時間帯が共通の時間帯に相当する。
【0098】
一構成例として、信号処理方法では、特異値分解を用いて、共通成分をノイズ成分として抽出する。
一構成例として、信号処理方法では、主成分分析を用いて、共通成分をノイズ成分として抽出する。
一構成例として、信号処理方法では、因子分析を用いて、共通成分をノイズ成分として抽出する。
【0099】
一構成例として、信号処理方法では、複数の測定信号がある場合、測定信号ごとに処理を行う。
一構成例として、信号処理方法では、測定信号およびリファレンス信号は、磁気信号である。
【0100】
以上のような信号処理方法を実行する信号処理装置が実施されてもよい。
一構成例として、信号処理装置11は、目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号を取得する測定信号取得部31と、ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号を取得するリファレンス信号取得部32と、測定信号取得部31によって取得された測定信号と、リファレンス信号取得部32によって取得されたリファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出する信号処理部33と、を備える。
【0101】
ここで、図1の例では、測定センサ21およびリファレンスセンサ22-1~22-Mを信号処理装置11とは別体で構成した場合を示したが、他の構成例として、測定センサ21およびリファレンスセンサ22-1~22-Mのうちの1個以上が信号処理装置11に備えられる構成が用いられてもよい。
また、図16の例では、測定センサ21-1~21-Nおよびリファレンスセンサ22-1~22-Mを信号処理装置11とは別体で構成した場合を示したが、他の構成例として、測定センサ21-1~21-Nおよびリファレンスセンサ22-1~22-Mのうちの1個以上が信号処理装置11に備えられる構成が用いられてもよい。
【0102】
以上のような信号処理方法を実行するためのプログラムが実施されてもよい。
一構成例として、コンピューター(例えば、信号処理装置11を構成するコンピューター)に、目的信号とノイズ信号とが混在した状態で測定された測定信号を取得するステップと、ノイズ信号が存在する状態で測定されたリファレンス信号を取得するステップと、取得された測定信号と、取得されたリファレンス信号との共通成分をノイズ成分として抽出するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【0103】
なお、以上に説明した信号処理装置11などの任意の装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、オペレーティングシステムあるいは周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーあるいはクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。当該揮発性メモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)であってもよい。記録媒体は、例えば、非一時的記録媒体であってもよい。
【0104】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイルであってもよい。差分ファイルは、差分プログラムと呼ばれてもよい。
【0105】
また、以上に説明した信号処理装置11などの任意の装置における任意の構成部の機能は、プロセッサーにより実現されてもよい。例えば、実施形態における各処理は、プログラム等の情報に基づき動作するプロセッサーと、プログラム等の情報を記憶するコンピューター読み取り可能な記録媒体により実現されてもよい。ここで、プロセッサーは、例えば、各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよく、あるいは、各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサーはハードウェアを含み、当該ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路およびアナログ信号を処理する回路のうちの少なくとも一方を含んでもよい。例えば、プロセッサーは、回路基板に実装された1または複数の回路装置、あるいは、1または複数の回路素子のうちの一方または両方を用いて、構成されてもよい。回路装置としてはIC(Integrated Circuit)などが用いられてもよく、回路素子としては抵抗あるいはキャパシターなどが用いられてもよい。
【0106】
ここで、プロセッサーは、例えば、CPUであってもよい。ただし、プロセッサーは、CPUに限定されるものではなく、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)等のような、各種のプロセッサーが用いられてもよい。また、プロセッサーは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によるハードウェア回路であってもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUにより構成されていてもよく、あるいは、複数のASICによるハードウェア回路により構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUと、複数のASICによるハードウェア回路と、の組み合わせにより構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、アナログ信号を処理するアンプ回路あるいはフィルター回路等のうちの1以上を含んでもよい。
【0107】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1…信号処理システム、11…信号処理装置、21、21-1~21-N…測定センサ、22-1~22-M…リファレンスセンサ、31…測定信号取得部、32…リファレンス信号取得部、33…信号処理部、34…出力部、41…ノイズ成分抽出部、42…目的信号抽出部、1011、1211…測定信号、1021、1231…目的信号、1022…ノイズ成分、1031、1221、2011~2015…リファレンス信号、2021~2026…ノイズ候補成分、2031…特性
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