(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
H01P 5/02 20060101AFI20241028BHJP
H01P 3/02 20060101ALI20241028BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H01P5/02 603Z
H01P3/02 200
H05K9/00 F
(21)【出願番号】P 2020153789
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】江口 正
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-294481(JP,A)
【文献】特開2020-048068(JP,A)
【文献】特開平08-213787(JP,A)
【文献】特開平02-262727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/02
H01P 3/02
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に相対的に移動する装置と
通信する通信装置であって、
前記所定方向に延伸し、給電部と終端部を有する複数の伝送線路を有し、
前記複数の伝送線路のそれぞれの給電部は前記所定方向に隣接し、かつそれぞれの終端部は前記所定方向に隣接して配置され、
前記それぞれの終端部の間にシールド部が配置されることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記給電部は、前記伝送線路
の端部に位置し、
前記終端部は、前記給電部とは反対側に位置する
端部であることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記複数の伝送線路は、第1の伝送線路と第2の伝送線路とを有し、
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路は、それぞれ2つの導体部材が
前記所定方向において平行に配置された差動
信号用の伝送線路であることを特徴とする請求項1
または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記複数の伝送線路は、一つの基板または異なる基板に形成され、
前記シールド部は、
前記複数の伝送線路の
前記所定方向において隣接する
前記終端部の間であって、かつ前記一つの基板の孔または前記異なる基板の間に配置されることを特徴とする請求項1ないし
3の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記複数の伝送線路の
前記所定方向において隣接する
前記終端部は、
前記所定方向に対して垂直な方向に向かってそれぞれ延出する延出部を有し、
前記シールド部は、
前記複数の伝送線路の隣接する
前記終端部の間であって、かつ前記延出部の間に配置されることを特徴とする請求項1ないし
4の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記複数の伝送線路に対して、前記装置が配置される側とは反対側に配置される基台部を有し、
前記延出部は、
前記基台部に形成された孔に挿入されることを特徴とする請求項
5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記複数の伝送線路の
それぞれの終端部には、終端抵抗が接続されることを特徴とする請求項1ないし
6の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記複数の伝送線路は、円環状に配置され、
前記装置および前記通信装置の少なくとも何れか一方が回転軸の周りに回転することを特徴とする請求項1ないし
7の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記シールド部は板状の導体から構成されることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近接した機器間において電磁界結合を用いて無線通信を行う通信システムが知られている。特許文献1には回転フレームと不動フレームとの間で高データ速度の通信を行うための装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、信号が複数の伝送線路を介して伝送されるように構成されており、所望の伝送線路に伝送される信号に対し、他の伝送線路に伝送された信号の干渉により通信の精度が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、所定方向に相対的に移動する装置と通信する通信装置であって、前記所定方向に延伸し、給電部と終端部を有する複数の伝送線路を有し、前記複数の伝送線路のそれぞれの給電部は前記所定方向に隣接し、かつそれぞれの終端部は前記所定方向に隣接して配置され、前記それぞれの終端部の間にシールド部が配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、通信の精度が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】通信システムの無線通信の原理を説明するための図である。
【
図2】通信システムにおける各信号を説明するための図である。
【
図4】受信側の通信装置の出力周波数特性の一例を示す図である。
【
図5】受信側の通信装置の出力信号のEyeパターンの一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態の通信システムの構成の一例を示す図である。
【
図7】第1実施形態の受信側の通信装置の出力周波数特性の一例を示す図である。
【
図8】第2実施形態の通信システムの構成の一例を示す図である。
【
図9】第2実施形態の受信側の通信装置の出力周波数特性の一例を示す図である。
【
図10】給電部における反射の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本実施形態に適用される通信システムの無線通信の原理について説明する。
図1は、通信システムの構成を模式的に示す図である。
図2は、通信システムにおける各信号を説明するための図である。
【0009】
図1(a)に示すように、通信システムは、送信側の通信装置100、受信側の通信装置200を備える。
送信側の通信装置100は、一方向に沿って長く構成され、無線信号を送信する送信カプラとして機能する。2本並んだ線状の導体部材である差動伝送用の伝送線路101は、無線信号を送信する送信側の伝送線路である。伝送線路101は基板にパターンとして形成される。信号源102から出力されるデータは、伝送線路101の一端に接続された差動送信バッファ103を介して、差動信号として入力される。伝送線路101の他端は送信側の伝送線路101の特性インピーダンスと略等しい終端抵抗104で終端されている。グランド105は送信側の伝送線路101における基準電位となり、伝送線路101が形成された基板に接して配置される。
【0010】
受信側の通信装置200は、送信側の通信装置100に対して間隔を空けるように配置され、無線信号を受信する受信カプラとして機能する。受信側の通信装置200は、送信側の通信装置100と通信する装置の一例に対応する。2本並んだ線状の導体部材である差動カプラ202は、伝送線路101から無線信号を受信する受信側の伝送線路である。カプラ202は基板201にパターンとして形成される。伝送線路202は、伝送線路101の長手方向に沿って略平行に移動可能である。
図1(b)に示すように、カプラ202と伝送線路101とは、受信側の通信装置200の移動方向に対して直交する方向、かつ2本の導体部材が隣接する方向に対して直交する方向から見て、重なり合っている。カプラ202から出力された信号は、波形整形回路203で波形整形された後、受信信号として検出される。
【0011】
図2は、通信システムの各信号を説明するための図である。
図2の波形において横軸が時間を示し、縦軸が信号強度を示している。
図2(A)は信号源102から出力される信号である。
図2(B)は伝送線路101から出力される信号である。伝送線路101から出力される信号は、信号源102から出力される信号から、差動送信バッファ103における遅延と伝搬遅延とを加算してΔt
1時間だけ遅れた信号になる。
【0012】
図2(C)は、波形整形回路203の入力インピーダンスが低い場合にカプラ202から出力される信号である。
図2(C)に示すように、カプラ202の出力はエッジ信号になる。この場合、波形整形回路203に±Vthのヒステレシス電圧を有するコンパレータなどを用いて復調することにより、波形整形回路203は
図2(E)に示すように、
図2(A)と同様な波形の信号を出力する。
図2(D)は、波形整形回路203の入力インピーダンスが高い場合に伝送線路202から出力される信号であり、カプラ202の出力は入力信号とほぼ同様で振幅が小さい波形の信号になる。この場合、波形整形回路203に増幅器などを用いてディジタル信号処理が可能な大きさまで増幅して復調することにより、波形整形回路203は
図2(E)に示すように、
図2(A)と同様な波形の信号を出力する。
【0013】
次に、上述した原理を用いた通信システム10の構成について説明する。なお、
図1と同様な構成は、同一符号を付している。
図3(a)は、通信システム10の構成の一例を示す図である。ここでは、通信システム10は、回転軸Oを中心として回転する回転機構400を備える装置である。
通信システム10は、送信側の通信装置300、受信側の通信装置200、回転機構400を備える。
【0014】
送信側の通信装置300は、円環状に構成され、無線信号を送信する送信カプラとして機能する。送信側の通信装置300は、基板301と、伝送線路303a、303bと、金属部304と、入力側の基板305とを備える。ここで、伝送線路303aは第1の伝送線路の一例に対応し、伝送線路303bは第2の伝送線路の一例に対応する。
【0015】
基板301は、円環状に形成され、内側面(内周面)および外側面(外周面)が湾曲している。基板301は、例えばガラスエポキシ基板などのリジット基板である。基板301は内側面にグランド302を有する。なお、基板301は、一つの基板で円環状に形成してもよく、複数の基板を接続することで円環状に形成してもよい。
【0016】
伝送線路303a、303bは、基板301の外側面にパターンとして形成される。伝送線路303aと伝送線路303bとは、基板301の長手方向に沿って配置される。伝送線路303aと伝送線路303bとは、互いに重なり合わずに基板301の周方向に沿って略直線状になるように配置される。具体的には、伝送線路303aは基板301の全周のうち一方の略半周(略180°)に沿って配置され、伝送線路303bは基板301の全周のうち他方の略半周(略180°)に沿って配置される。また、伝送線路303a、303bの長手方向のうち一方側の端部は、信号が入力される給電部である。一方、伝送線路303a、303bの長手方向のうち一方側の端部とは反対側である他方側の端部は、終端部である。伝送線路303aの給電部と伝送線路303bの給電部とが、基板301の長手方向に隣接する。また、伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部とが、基板301の長手方向に隣接する。伝送線路303a、303bの始端部と終端部とは、回転機構400の回転軸Oを挟んで対向して配置される。このような伝送線路303a、303bによれば、伝送線路303aに沿って伝送される信号の方向と伝送線路303bに沿って伝送される信号の方向とが互いに逆方向になる。
なお、伝送線路303a、303bは、それぞれ2本の導体部材が長手方向に沿って並列に配置され、基板301の内側面をグランドとすることで差動伝送用の伝送線路、ここでは差動マイクロストリップラインを構成する。
【0017】
金属部304は、基板301と同様に円環状に形成され、内側面(内周面)および外側面(外周面)が湾曲している。金属部304は、外側面が基板301の内側面と接続されることで、基板301を支持する基台部として機能する。なお、グランド302は伝送線路303a、303bの基準電位となっているが、グランド302を省略し、金属部304を伝送線路303a、303bの基準電位の金属として使用してもよい。また、金属部304は、一体で円環状に形成してもよく、複数の金属部を接続することで円環状に形成してもよい。
【0018】
図3(b)は、入力側の基板305の構成の一例を示す拡大図である。
入力側の基板305は、伝送線路303a、303bの給電部に近接して配置される。入力側の基板305は、入力端子306、差動増幅器307、分波器308a、308bが実装される。入力端子306には、信号源からの信号が入力される。差動増幅器307は、入力端子306から入力された信号を差動信号に変換する。分波器308a、308bは、差動増幅器307から出力された2つの差動出力をそれぞれ分岐して、分岐した差動出力が伝送線路303a、303bの給電部にそれぞれ入力される。
なお、入力側の基板305は、入力端子306から入力された信号を、分波器で2つに分岐して、分岐した信号をそれぞれ差動増幅器で増幅するように構成してもよく、シングル-差動変換にバラン等を用いて構成してもよい。
【0019】
図3(c)は、伝送線路303a、303bの終端部の周辺の構成を、回転軸Oに沿って見た断面図である。伝送線路303a、303bは、それぞれビア309a、309bを介して基板301の内側面で伝送線路303a、303bの差動特性インピーダンスとの整合が取れるように、終端抵抗310a、310bによって終端される。なお、終端抵抗310a、310bの配置は、様々な形態が考えられるが、本図のように金属部304の一部が切り欠かれた空間に配置してもよい。
【0020】
受信側の通信装置200は、送信側の通信装置300の基板301の外側面から間隔を空けて配置され、無線信号を受信する受信カプラとして機能する。受信側の通信装置200は、基板201と、カプラ202と、波形整形回路203とを備える。受信側の通信装置200は、送信側の通信装置300の伝送線路303a、303bから一定の間隔を保ったまま、伝送線路303a、303bの長手方向に沿って相対的に移動する。
【0021】
回転機構400は、回転軸Oを中心として回転軸Oの周りを回転する回転部と、回転せずに固定される固定部を有する。本実施形態では、回転機構400の回転部が送信側の通信装置300に接続され、回転機構400の固定部が受信側の通信装置200に接続される。したがって、送信側の通信装置300が回転軸Oの周りに回転可能であることから、送信側の通信装置300と受信側の通信装置200とが相対的に回転移動しながら通信を行うことができる。
なお、回転機構400の回転部が受信側の通信装置200に接続され、回転機構400の固定部が送信側の通信装置300に接続されていてもよい。また、回転機構400の第1の回転部が受信側の通信装置200に接続され、回転機構400の第2の回転部が送信側の通信装置300に接続され、送信側の通信装置300と受信側の通信装置200との何れもが回転軸Oの周りに独立して回転可能であってもよい。
【0022】
ここで、上述したように構成される送信側の通信装置300において、終端抵抗310a、310bが接続される伝送線路303a、303bの終端部の近辺の信号について説明する。伝送線路303a、303bの終端部の近辺では、本来受信すべき伝送線路の信号とは逆側である伝送線路を伝送して終端抵抗では吸収されずに終端抵抗を越えてきた信号が干渉信号として存在する。
終端抵抗310a、310bの極近傍に、受信側の通信装置200が位置する場合には、本来受信すべき伝送線路の信号と干渉信号との到達時間差が小さい。受信側の通信装置200が終端部から徐々に離れていくと本来受信すべき信号と干渉信号との到達時間差が大きくなる。この到達時間差によって本来受信すべき信号と干渉信号との位相が合う周波数では合成された信号が大きく、位相が反転する周波数では信号が小さくなる。
【0023】
図4は、受信側の通信装置200の位置に応じた通信装置200の出力周波数特性の一例を示す図である。
図4(a)は、受信側の通信装置200が、伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部との中間点に位置する場合(
図3(c)に示す一点鎖線Cを参照)の周波数特性である。
図4(b)は、受信側の通信装置200が、伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部との中間点から40mm離れて位置する場合の周波数特性である。
図4(b)に示すように、受信側の通信装置200が伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部との中間点から離れた場合には周波数によってゲインの最大値、最小値の幅が大きくなってしまい、出力される信号の精度が低下してしまう。
【0024】
図5は、
図4と同じ条件での出力信号のEyeパターンの一例を示す図であり、横軸が時間を示し、縦軸が電圧を示している。ここでは、伝送線路303a、303bに入力される信号が10Gbspである。
図5(a)は、受信側の通信装置200が、伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部との中間点に位置する場合であり、伝送線路303a、303bから受信側の通信装置200に励起される信号の位相差がないためにEyeパターンは開いている。
図5(b)は、受信側の通信装置200が、伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部との中間点から40mm離れて位置する場合であり、Eyeが閉じており、受信側の通信装置200が正しく信号を復調していないことを示している。
【0025】
次に、上述したような終端部の近辺で信号の精度が低下してしまうのを抑制することができる通信システムの構成について説明する。なお、
図3と同様の構成は、同一符号を付して説明を適宜、省略する。
【0026】
[第1実施形態]
図6(a)は、第1実施形態に係る通信システム20の構成の一例を示す図である。
通信システム20は、送信側の通信装置600、受信側の通信装置200、回転機構400を備える。
【0027】
送信側の通信装置600は、基板601a、601bと、伝送線路303a、303bと、金属部304と、入力側の基板305と、シールド板620とを備える。
基板601a、601bは、
図3に示す基板301を複数に分割して構成したものである。基板601aには伝送線路303aが形成され、基板601bには伝送線路303bが形成される。
【0028】
図6(b)は、伝送線路303a、303bの終端部の周辺の構成を、回転軸Oに沿って見た断面図である。伝送線路303a、303bは、
図3と同様に、それぞれビア309a、309bを介して終端抵抗310a、310bによって終端される。
本実施形態では、伝送線路303a、303bの隣接する終端部の間に、干渉信号を遮断するためのシールド板620が配置される。シールド板620は、シールド部の一例に対応する。シールド板620は金属により構成される。
【0029】
具体的に、シールド板620は、伝送線路303aが形成される基板601aの端部と伝送線路303bが形成される基板601bの端部との間に位置する。また、シールド板620は、基板601aのビア309aと、基板601bのビア309bとの間に位置する。ここで、シールド板620の幅WS(回転軸Oに沿った長さ)は、伝送線路303a、303bの幅WL(2本の導体部材それぞれの幅と、2本の導体部材の間の幅とを加算した長さ)よりも広い(
図6(a)を参照)。また、シールド板620の幅WSは、基板601a、601bの幅と略同一である。また、シールド板620は、基板601a、601bの内側面のグランド302または金属部304と電気的に接続されている。
【0030】
図7は、シールド板620を有する送信側の通信装置600からの信号を受信する受信側の通信装置200の位置に応じた通信装置200の出力の周波数特性の一例を示す図である。
図7(a)は、受信側の通信装置200が伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部との中間点に位置する場合(
図6(b)に示す一点鎖線Cを参照)、すなわちシールド板620の直上に位置する場合の周波数特性である。
図7(b)は、受信側の通信装置200が伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部との中間点から40mm離れて位置する場合の周波数特性である。
図7(b)に示すように、シールド板620を有することで干渉信号が遮断されることで、特に12GHz以下の周波数におけるゲインの最大値、最小値の幅が大幅に緩和される。
【0031】
図8は、
図7と同じ条件での出力信号のEyeパターンの一例を示す図であり、横軸が時間を示し、縦軸が電圧を示している。ここでは、伝送線路303a、303bに入力される信号が10Gbspである。
図8(a)は、受信側の通信装置200が伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部との中間点に位置する場合であり、Eyeパターンは開いている。
図8(b)は、受信側の通信装置200が伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部との中間点から40mm離れて位置する場合であり、
図8(a)と同様にEyeパターンが開いており、受信側の通信装置200が信号を復調できることを示している。
【0032】
このように本実施形態によれば、受信側の通信装置200が相対的に移動する方向に隣接する伝送線路303aの端部と伝送線路303bの端部との間にシールド板620を配置することで、シールド板620が本来受信すべきではない干渉信号を遮断する。したがって、受信側の通信装置200は、伝送線路303aの終端部と伝送線路303bの終端部との中間点から離れて位置する場合であっても、通信装置300が出力する信号の精度が低下するのを抑制することができる。
【0033】
なお、上述した実施形態では、伝送線路303a、303bの終端部が異なる基板601a、601bに形成される場合について説明したが、伝送線路303a、303bの終端部が一つの基板に形成されていてもよい。この場合、基板に形成された孔にシールド板620を挿入することで、伝送線路303a、303bの隣接する終端部の間にシールド板620が配置することができる。
ここで本実施形態では、
図3、
図6において伝送線路303a、303bが円周上の外向きに配置され、受信側の通信装置200がさらにその外側に配置されている場合について説明した。しかしながら、伝送線路303a、303bが円周上の内向きに配置され、受信側の通信装置200がさらにその内側に配置されていてもよい。
【0034】
[第2実施形態]
図9(a)は、第2実施形態に係る通信システム30の構成の一例を示す図である。
図9(a)では、円環状に構成される送信側の通信装置900の一部(後述する伝送線路903a、903bの終端部の周辺)を分解して示している。なお、第1実施形態と同様な構成は、同一符号を付している。
通信システム30は、送信側の通信装置900、受信側の通信装置200、図示しない回転機構400を備える。
【0035】
送信側の通信装置900は、基板901a、901bと、伝送線路903a、903bと、金属部904と、シールド板920とを備える。
基板901a、901bは、円環状に形成され、内側面(内周面)および外側面(外周面)が湾曲している。基板901a、901bは、可撓性を有するフレキシブルプリント基板である。基板901aには伝送線路903aのパターンが形成され、基板901bには伝送線路903bのパターンが形成される。
【0036】
金属部904は、基板901a、901bと同様に円環状に形成される。金属部904は、一対の側壁部904aと、底部904bとを有する断面略U字状である。金属部904は、一対の側壁部904aと底部904とにより囲まれる空間が形成される。また、底部904の一部には、空間と外部とを連通する孔904cが底部904の幅方向に沿って形成される。金属部904は、一対の側壁部904aが基板901a、901bの内側面と接続されることで、基板901a、901bを支持する基台部として機能する。
なお、伝送線路903a、903bは、それぞれ2本の導体部材が長手方向に沿って並列に配置され、基板901a、901bの内側面を金属部904と接続してグランドとすることで差動伝送用の伝送線路、ここでは差動マイクロストリップラインを構成する。
【0037】
図9(b)は、伝送線路903a、903bの終端部の周辺の構成を、図示しない回転軸Oに沿って見た断面図である。
伝送線路903a、903bは、終端部において伝送線路903a、903bの長手方向と異なる方向に向かってそれぞれ延出する延出部910a、910bを有する。具体的には、基板901a、901bがそれぞれ屈曲部911を介して金属部904の底部904bに向かって屈曲されることによって、基板901a、901bに形成された伝送線路903a、903bも底部904bに向かって延出する。伝送線路903aの延出部910aはリジット基板912aが接続され、伝送線路903bの延出部910bはリジット基板912bが接続される。リジット基板912a、912bは、それぞれ送信回路または終端抵抗が実装される。伝送線路903a、903bは、リジット基板912a、912bに実装された終端抵抗によって終端される。基板901a、901bが金属部904に接続された状態では、リジット基板912a、912bおよび延出部910a、910bが金属部904の孔904cに挿入される。
【0038】
本実施形態では、伝送線路903a、903bの隣接する終端部の間に、干渉信号を遮断するためのシールド板920が配置される。
具体的に、シールド板920は、伝送線路903aが接続されるリジット基板912aと、伝送線路903bが接続されるリジット基板912bとの間に挟まれている。したがって、シールド板920は、伝送線路903aの延出部910aと伝送線路903bの延出部910bとの間に位置する。また、シールド板920は、伝送線路903aの終端抵抗と伝送線路903bの終端抵抗との間に位置する。
【0039】
なお、シールド板920は、伝送線路903a、903bの隣接する給電部の間にも配置してもよい。
図10は、シールド板920を伝送線路903a、903bの隣接する終端部の間および伝送線路903a、903bの隣接する給電部の間に配置した場合の給電部における反射の周波数特性を示す図である。
図10の破線が給電部の間にシールド板920を配置した場合の特性線を示しており、
図10の実線が給電部の間にシールド板を配置しない場合の特性線を示している。
図10に示すように、終端部ではシールド板920を考慮して終端部の反射特性が最適化されるように設計しているため、給電部においてシールド板920を挟んだことにより反射特性が向上している。
【0040】
シールド板920を配置することで反射特性が向上することは給電部および終端部で同様であるため、給電部と終端部とが同様な構造である場合には反射特性向上のため、給電部でもシールド板920を配置することによって信号品質を向上させることができる。とくに終端部においては反射特性の向上のみでなく、第一実施形態で説明したように対抗する伝送線路を伝搬してきた信号を抑制し、干渉による信号の歪を減少させることができる。
【0041】
このように、本実施形態によれば、受信側の通信装置200が相対的に移動する方向に隣接する伝送線路903aの端部と伝送線路903bの端部との間にシールド板920を配置することで、シールド板920が本来受信すべきではない干渉信号を遮断する。
また、通信装置600、900と通信装置200との間で画像データを無線通信する場合には、画像データを無線通信するときの信号の品質が向上するためにエラー等を削減することができ、信頼性の高いデータを送信することができる。
【0042】
なお、上述した各実施形態の伝送線路は、差動マイクロストリップラインである場合について説明したが、この場合に限られず、差動コプレーナライン、グランド付き差動コプレーナライン等、他の方式の差動伝送線路であってもよい。
また、上述した各実施形態の伝送線路は、差動伝送線路である場合について説明したが、この場合に限られず、外来ノイズや不要輻射が問題にならなければ差動でなくてもよい。
【0043】
また、上述した各実施形態では、シールド部がシールド板である場合について説明したが、この場合に限られない。シールド部は、伝送線路間の電界を抑制できる構造であればよく、例えば、網目構造の金属体、導電性樹脂等で生成された構造体等、他の構造や材料であってもよい。また、伝送線路が基板上に形成されている場合、シールド部は、基板の内側面のグランドと接続された複数のビアで構成されていてもよい。
【0044】
また、上述した各実施形態では、通信装置600、900が送信側であり、通信装置200が受信側である場合について説明したが、この場合に限られず、通信装置600、900が受信側であり、通信装置200が送信側であってもよい。また、通信装置200、600、900が信号を送受信できるようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明は、特許請求の範囲によって確定され、上述した実施形態によって限定されるものではない。また、上述した実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明に必須とは限らない。また、明細書および図面に記載の内容は例示であって、本発明を制限するものと見なすべきではない。また、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。すなわち、上述した各実施形態及びその変形例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
600、900:送信側の通信装置 200:受信側の通信装置 601a、601b、901a、901b:基板 303a、303b、903a、903b:伝送線路 620、920:シールド板