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特許7577491デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインでアクセルペダルが解放された状態でのより高速のギアへのシフトの実行を制御する、制御方法
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  • 特許-デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインでアクセルペダルが解放された状態でのより高速のギアへのシフトの実行を制御する、制御方法 図1
  • 特許-デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインでアクセルペダルが解放された状態でのより高速のギアへのシフトの実行を制御する、制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインでアクセルペダルが解放された状態でのより高速のギアへのシフトの実行を制御する、制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20241028BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20241028BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241028BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20241028BHJP
   F16D 25/10 20060101ALI20241028BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20241028BHJP
   F16H 59/22 20060101ALI20241028BHJP
   F16H 61/04 20060101ALI20241028BHJP
   F16H 61/688 20060101ALI20241028BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
B60W10/00 102
B60W10/06
B60W10/02
F02D29/00 G
F16D25/10 A
F16D48/02 640A
F16D48/02 640K
F16H59/22
F16H61/04
F16H61/688
F16H63/50
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020158645
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2021054401
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】102019000017543
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ バローネ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ナンニーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャコモ センセリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ マルコーニ
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-079707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0266519(US,A1)
【文献】特開2007-162844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-60/00
F02D 29/00-29/06
F16D 25/00-39/00
F16D 48/02
F16H 59/00-61/24
F16H 61/66-61/70
F16H 63/40-63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在のギア(A)から前記現在のギア(A)よりも高速の後続のギア(B)へとシフトするために、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション(7)を備えるドライブトレイン(6)でアクセルペダル(22)が解放された状態でのより高速のギアへのシフトの実行を制御する、制御方法であって、
前記ドライブトレイン(6)は、2つの主シャフト(15)と、駆動輪(3)に接続される少なくとも1つの副シャフト(17)と、それぞれが内燃エンジン(4)のドライブシャフト(5)と対応する主シャフト(15)との間に介挿される2つのクラッチ(16A,16B)とを有するデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション(7)を備え、
前記制御方法が、
第1の時点(t)に、前記現在のギア(A)と関連付けられる出力クラッチ(16A)を開放するステップと、
前記第1の時点(t)に、前記後続のギア(B)と関連付けられる入力クラッチ(16B)を閉鎖するステップと、
前記第1の時点(t)の後である第2の時点(t)と前記第2の時点(t)の後である第3の時点(t)との間で、前記内燃エンジン(4)の回転速度(ω)を前記入力クラッチ(16B)の回転速度(ω)、すなわち、前記後続のギア(B)のギア比によって定められる回転速度(ω)と同期させるステップと、
前記第3の時点(t)に前記出力クラッチ(16A)の開放を完了するステップと、
前記第3の時点(t)に前記入力クラッチ(16B)の閉鎖を完了するステップと、
を含む、制御方法において、
前記第2の時点(t)と前記第2の時点(t)の後で且つ前記第3の時点(t)の前である第4の時点(t)との間で前記出力クラッチ(16A)により伝達されるトルク(T)を一定に保つステップと、
前記第2の時点(t)と前記第4の時点(t)との間で前記入力クラッチ(16B)により伝達されるトルク(T)を一定に保つステップと、
を更に含み、
前記第2の時点(t )と前記第4の時点(t )との間では、前記入力クラッチ(16B)により伝達される前記トルク(T )が前記出力クラッチ(16A)により伝達される前記トルク(T )よりも小さく、
前記第4の時点(t )と前記第3の時点(t )との間では、前記2つのクラッチ(16A,16B)の間でトルクの完全な伝達があることにより、すなわち、前記出力クラッチ(16A)により伝達される前記トルク(T )がゼロまで漸進的に減少すると同時に、前記入力クラッチ(16B)により伝達される前記トルク(T )が漸進的に増大することにより、前記2つのクラッチ(16A,16B)の間の交差が決定され、
前記第2の時点(t )と前記第3の時点(t )との間には同期時間があり、前記同期時間の間に、前記内燃エンジン(4)の回転速度(ω )は、前記現在のギア(A)のギア比によって定められる回転速度(ω )から、前記後続のギア(B)のギア比によって定められる回転速度(ω )に減少し、すなわち、前記内燃エンジン(4)の回転速度(ω )が前記後続のギア(B)のギア比によって定められる回転速度(ω )と同期されることを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記第4の時点(t)と前記第3の時点(t)との間では、前記入力クラッチ(16B)により伝達される前記トルク(T)が第1の直線ランプにより増大される、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記第4の時点(t)と前記第3の時点(t)との間では、前記出力クラッチ(16A)により伝達される前記トルク(T)が第2の直線ランプにより減少される、請求項に記載の制御方法。
【請求項4】
前記第1の時点(t)では、前記入力クラッチ(16B)により伝達される前記トルク(T)が段階的に増大される、請求項1からのいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記第1の時点(t)と前記第2の時点(t)との間では、前記出力クラッチ(16A)により伝達される前記トルク(T)が第3の直線ランプにより減少される、請求項1からのいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記内燃エンジン(4)は、より高速のギアへのシフト前にカットオフ状態にあり、より高速のギアへのシフト後もカットオフ状態にある、請求項1からのいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項7】
より高速のギアへのシフトの前、最中、及び、後に、ドライバーが前記アクセルペダル(22)を完全に解放したままにする、請求項に記載の制御方法。
【請求項8】
より高速のギアへのシフト中にドライバーにより及ぼされる前記アクセルペダル(22)の踏み込みを検出するステップと、
前記第1の時点(t)の後で且つ前記第3の時点(t)の前である第5の時点(t)におけるより高速のギアへのシフト中にドライバーによって前記アクセルペダル(22)が踏み込まれる場合には、前記第5の時点(t)が前記第4の時点(t)より前であれば前記第4の時点(t)を起点として或いは前記第5の時点(t)が前記第4の時点(t)の後であれば前記第5の時点(t)を起点として、前記内燃エンジン(4)によって生成されるトルク(T)を増大させるステップと、
を更に含む請求項1からのいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項9】
より高速のギアへのシフト中にドライバーにより及ぼされる前記アクセルペダル(22)の踏み込みを検出するステップと、
前記第1の時点(t)の後で且つ前記第3の時点(t)の前である第5の時点(t)におけるより高速のギアへのシフト中にドライバーによって前記アクセルペダル(22)が踏み込まれる場合には、前記第5の時点(t)が前記第4の時点(t)より前であれば前記第4の時点(t)を起点として或いは前記第5の時点(t)が前記第4の時点(t)の後であれば前記第5の時点(t)を起点として、前記入力クラッチ(16B)の閉鎖を加速させるステップと、
を更に含む請求項1からのいずれか一項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、その開示全体が参照により本願に組み入れられる2019年9月30日に出願されたイタリア特許出願第102019000017543号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインでアクセルペダルが解放された状態でのより高速のギアへのシフト(すなわち、後続のギア又は入力ギアが前回のギア又は出力ギアよりも高速であるギアシフト)の実行を制御する、制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインは、互いに同軸で互いに独立しているとともに互いに内側に挿入される一対の主シャフトと、それぞれがそれぞれの主シャフトを内燃エンジンのドライブシャフトに接続するようになっている2つの同軸クラッチと、動きを駆動輪に伝達するとともにそれぞれがギアを形成するそれぞれのギアトレインによって主シャフトに結合され得る少なくとも1つの副シャフトとを備える。
【0004】
ギアシフト中、現在のギアが副シャフトを主シャフトに結合し、一方で、追従するギアが副シャフトを他の主シャフトに結合し、結果として、ギアシフトは、2つのクラッチを交差させることによって、すなわち、現在のギアに関連付けられるクラッチを開放することによって及び同時に追従するギアと関連付けられるクラッチを閉じることによって行われる。
【0005】
現在、アクセルペダルが解放された状態でのより高速のギアへのシフトは、出力クラッチ(つまり、前のギアと関連付けられるクラッチ)を開放し、エンジンブレーキモードで動作する内燃エンジンにより生成されるブレーキトルクに起因して内燃エンジンの回転速度を低下させ、最終的に、入力クラッチ(つまり、後続のギアと関連付けられるクラッチ)を閉じることを伴う。このようにして、両方のクラッチが開放しているときに内燃エンジンの回転速度と後続のギアにより(つまり、入力クラッチにより)課せられる速度との同期(減少)が行なわれ、これにより、内燃エンジンがエンジンブレーキモードで動作する(すなわち、内燃エンジンは、カットオフ状態にあり、ブレーキトルクを生成するエンジンブレーキとして作用する)。
【0006】
両方のクラッチが開放状態に維持される際に、内燃エンジンの回転速度を調整するステップが完全に内燃エンジンのみに割り当てられるため、アクセルペダルが解放された状態でのより高速のギアへのシフトの実行のこの形態は、制御の観点から重要であり、内燃エンジンの回転速度が過度に低下して突然の増大と同期され、それにより、内燃エンジンの回転速度が入力クラッチの回転速度に達しようとして再び増大する瞬間に最初に前方の引っ張り及びその後に強い後方への引っ張りがもたらされる(その結果、ドライバーにより認識される全体的な感覚があまり快適でない)ことがしばしば起こる。
【0007】
米国特許第6881171号明細書は、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインにおいて、ギアシフトの実行を制御する方法について記載しており、ギアシフト中、トランスミッションの出力でのトルクが一定に維持され又は単調に変化し、或いは、車両の縦方向の加速度が単調に変化させられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインでアクセルペダルが解放された状態でのより高速のギアへのシフトの実行を制御する、制御方法を提供することであり、前記方法は、前述の欠点を被らないと同時に、実施が容易で経済的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に係る、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインでアクセルペダルが解放された状態でのより高速のギアへのシフトの実行を制御する、制御方法が提供される。
【0010】
添付の特許請求の範囲は、本発明の好ましい実施形態を記載し、明細書本文の一体部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
ここで、本発明の非限定的な実施形態を示す添付図面を参照して本発明を説明する。
図1】本発明の制御方法にしたがって制御される、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを伴うドライブトレインを備える後輪駆動の路上走行車両の概略平面図である。
図2図1のドライブトレインの概略図である。
図3】本発明に係る制御方法を用いて行なわれるより高速のギアへのそれぞれのシフト中における、デュアルクラッチトランスミッションの2つのクラッチによって伝達されるトルク、内燃エンジンのドライブシャフトの回転速度、路上走行車両の縦方向の減速度、及び、内燃エンジンにより生成されるトルクの時間変化を示す。
図4】本発明に係る制御方法を用いて行なわれるより高速のギアへのそれぞれのシフト中における、デュアルクラッチトランスミッションの2つのクラッチによって伝達されるトルク、内燃エンジンのドライブシャフトの回転速度、路上走行車両の縦方向の減速度、及び、内燃エンジンにより生成されるトルクの時間変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1において、数字1は、全体として、2つの前従動(すなわち、非駆動)輪2と2つの後駆動輪3とを備える路上走行車両(特に、自動車)を示す。前方位置には、ドライブトレイン6によって駆動輪3に伝達されるトルクTを生成するドライブシャフト5を備える内燃エンジン4がある。ドライブトレイン6は、後輪駆動アセンブリに配置されるデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7と、ドライブシャフト5をデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7の入力に接続するトランスミッションシャフト8とを備える。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、トレインのような態様でセルフロック差動装置9に接続され、セルフロック差動装置9からは一対のアクスルシャフト10が延び、各アクスルシャフト10は駆動輪3と一体である。
【0013】
路上走行車両1は、内燃エンジン4を制御する内燃エンジン4の制御ユニット11と、ドライブトレイン6を制御するドライブトレイン6の制御ユニット12と、バスライン13とを備え、バスライン13は、例えばCAN(カー・エリア・ネットワーク)プロトコルにしたがって製造され、路上走行車両1全体に延びるとともに、2つの制御ユニット11,12が互いに通信できるようにする。言い換えると、内燃エンジン4の制御ユニット11及びドライブトレイン6の制御ユニット12は、バスライン13に接続され、したがって、バスライン13を介して送信されるメッセージによって互いに通信できる。更に、内燃エンジン4の制御ユニット11及びドライブトレイン6の制御ユニット12は、専用の同期ケーブル14によって互いに直接に接続可能であり、専用の同期ケーブル14は、バスライン13によって引き起こされる遅延を伴うことなく、ドライブトレイン6の制御ユニット12から内燃エンジン4の制御ユニット11へ信号を直接に送信できる。或いは、同期ケーブル14がなくてもよく、また、2つの制御ユニット11,12間の全ての通信がバスライン13を使用してやりとりされてもよい。
【0014】
図2によれば、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、互いに同軸で互いに独立しているとともに互いに内側に挿入される一対の主シャフト15を備える。更に、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、それぞれがそれぞれの主シャフト15をトランスミッションシャフト8の介在により内燃エンジン4のドライブシャフト5に接続するようになっている2つの同軸クラッチ16を備え、各クラッチ16は、オイルバスクラッチであり、そのため、圧力制御され(すなわち、クラッチ16の開閉の程度は、クラッチ16内のオイルの圧力によって決定される)、別の実施形態によれば、各クラッチ16は、乾式クラッチであり、したがって、位置制御される(すなわち、クラッチ16の開閉の程度は、クラッチ16の可動要素の位置によって決定される)。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、駆動輪3に動きを伝達する差動装置9に接続される1つの単一の副シャフト17を備え、別の同等の実施形態によれば、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7が2つの副シャフト17を備え、これらの副シャフト17はいずれも差動装置9に接続される。
【0015】
デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、ローマ数字で示される7つの前進ギア(第1のギアI、第2のギアII、第3のギアIII、第4のギアIV、第5のギアV、第6のギアVI、及び、第7のギアVII)と後進ギア(Rで示される)とを有する。主シャフト15及び副シャフト17は複数のギアトレインによって互いに機械的に結合され、各ギアトレインは、それぞれのギアを形成するとともに、主シャフト15に取り付けられる主ギアホイール18と、副シャフト17に取り付けられる副ギアホイール19とを備える。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7の正確な動作を可能にするために、全ての奇数ギア(第1のギアI、第3のギアIII、第5のギアV、第7のギアVII)が同じ主シャフト15に結合され、一方、全ての偶数ギア(第2のギアII、第4のギアIV、及び、第6のギアVI)は他方の主シャフト15に結合される。
【0016】
各主ギアホイール18は、常に主シャフト15と一体に回転するようにそれぞれの主シャフト15にスプライン結合されるとともに、それぞれの副ギアホイール19と恒久的に噛み合い、一方、各副ギアホイール19は、副シャフト17に遊動態様で装着される。更に、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は4つの同期装置20を備え、各同期装置は、副シャフト17と同軸に装着され、2つの副ギアホイール19間に配置されるとともに、2つのそれぞれの副ギアホイール19を副シャフト17に対して二者択一的に取り付けるべく(すなわち、2つのそれぞれの副ギアホイール19が副シャフト17と角度的に一体になるようにするべく)動作されるように設計される。言い換えると、各同期装置20は、副ギアホイール19を副シャフト17に取り付けるべく一方向に移動され得る、或いは、他の副ギアホイール19を副シャフト17に取り付けるべく他方向に移動され得る。
【0017】
デュアルクラッチトランスミッション7は、駆動輪3に動きを伝達する差動装置9に接続される1つの単一の副シャフト17を備え、別の同等の実施形態によれば、デュアルクラッチトランスミッション7が2つの副シャフト17を備え、これらの副シャフト17はいずれも差動装置9に接続される。
【0018】
図1によれば、路上走行車両1は、ドライバーのための運転位置を確保する乗員室を備え、運転位置は、シート(図示せず)と、ステアリングホイール21と、アクセルペダル22と、ブレーキペダル23と、2つのパドルシフタ24,25とを備え、2つのパドルシフタ24,25はデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7を制御してステアリングホイール21の両側に接続される。アップシフトパドルシフタ24は、アップシフト(すなわち、現在のギアよりも高く且つ現在のギアと隣接する新しいギアの噛み合い)を要求するためにドライバーによって(短い圧力により)操作され、一方、ダウンシフトパドルシフタ25は、ダウンシフト(すなわち、現在のギアよりも低く且つ現在のギアと隣接する新しいギアの噛み合い)を要求するためにドライバーによって(短い圧力により)操作される。
【0019】
以下、アクセルペダル22が解放された状態における、現在のより低速のギアAから後続のより高速のギアBへのアップシフトの実行の形態(アクセルペダル22が解放されるとき、内燃エンジン4は、カットオフ状態で動作してエンジンブレーキとして作用する)について説明し、すなわち、現在のギアAは後続のギアBよりも小さいギア比を有する(そのため、路上走行車両1が同じ速度であるとすると、現在のギアAにより内燃エンジン4が後続のギアBよりも急速に作動する)。
【0020】
最初の状況(すなわち、ギアシフトの前)において、出力クラッチ16Bは、主シャフト15Aに動きを伝達するために閉じられ、主シャフト15Aは、噛み合わされる現在のギアAを介して動きを副シャフト17に伝達し、一方、入力クラッチ16Bは、開放しており、したがって、主シャフト15Bをトランスミッションシャフト8から分離する。アップシフトを開始する前に、ギアBを介して主シャフト15Bを副シャフト17に接続するために後続のギアBが噛み合わされる。ドライバーがギアシフトコマンドを送ると、ギアシフトは、主シャフト15A(したがってギアA)をトランスミッションシャフト8から(すなわち、内燃エンジン4のドライブシャフト5から)切り離すべく出力クラッチ16Aを開放することにより、また、(多かれ少なかれ)同時に、主シャフト15B(したがって、ギアB)をトランスミッションシャフト8に(すなわち、内燃エンジン4のドライブシャフト5に)接続するべく入力クラッチ16Bを閉じることにより実行される。
【0021】
図3は、より高速のギアへのシフトが実行される方法を示し、ドライバーは、アクセルペダル22が解放される間、アップシフトパドルシフタ24に作用することによってアップシフトコマンドを送信する。図3は、上から順に、
内燃エンジン4の回転速度ω、出力クラッチ16Aの回転速度ω、及び、入力クラッチ16Bの回転速度ωの時間変化を示す第1の線図、
2つのクラッチ16A,16Bによって伝達されるトルクT,Tの時間変化を示す第2の線図、
内燃エンジン4によって生成されるトルクT(アップシフトの前後において、内燃エンジン4は、カットオフ状態にあり、したがって、負のトルクTを生成するエンジンブレーキモードで動作する)の時間変化を示す第3の線図、
車両1の縦方向の加速度αの時間変化を示す第4の線図(車両1の縦方向の加速度αが常に負であり、すなわち、内燃エンジン4が負のトルクTを生成している、つまり、ブレーキをかけている、したがって、エンジンブレーキモードで動作しているために車両1が減速していることに留意すべきである)、
を示す。
【0022】
ドライブトレイン6の制御ユニット12がドライバーからギアシフトコマンドを受信する(時点t)と直ぐに、ドライブトレインの制御ユニット12が直ちに入力クラッチ16Bを充填し初め、すなわち、制御ユニットは、直ちに加圧オイルを入力クラッチ16Bへ供給し始め、実際に、後続のギアBと関連付けられる入力クラッチ16Bは、加圧オイルの充填が完了したときにのみ後駆動輪3に大きなトルクを伝達でき、したがって、加圧オイルは、それが入力クラッチ16Bの内側の更なる容積を占めることができないため、入力クラッチ16Bのディスクを圧縮する推力を及ぼす。結果として、後続のギアBと関連付けられる入力クラッチ16Bが実際に大きなトルクを後駆動輪3に伝達し始めることができる前に、所定の遅延時間間隔(一般に80~220千分の1秒)にわたって待つ必要があり、その間に、オイルによる入力クラッチ16Bの充填が完了する。入力クラッチ16Bの充填の完了は、通常、入力クラッチ16B内のオイルの圧力を検出する圧力センサによって監視され、入力クラッチ16B内のオイルの圧力が所定の閾値を超えると、これにより、入力クラッチ16Bの内容積が完全に満たされ、したがって、クラッチ16B内のオイルが圧縮し始める。結果として、(遅延時間が経過した後に)入力クラッチ16Bがオイルで充填されて大きなトルクをいつでも伝達できる時点tは、入力クラッチ16B内のオイルの圧力が所定の閾値を超えるときに定められる。
【0023】
ドライブトレインの制御ユニット12が直ちに入力クラッチ16Bを閉じ始める時点tから、遅延時間が経過した後に入力クラッチ16Bがオイルで充填されて大きなトルクをいつでも伝達できる時点tまで、路上走行車両1の動態には何も起こらず、つまり、内燃エンジン4により生成される全トルクT(内燃エンジン4がカットオフ状態にあり、したがってエンジンブレーキとして作用するため、負のトルクT、つまり、ブレーキトルクTである)は、ギアシフトの開始前と同様に、完全に出力クラッチ16Aによって伝達される。時点tにおいて、入力クラッチ16BはトルクTを伝達し始め(すなわち、トルクTが増大し始める)、同時に、出力クラッチ16Aは開放するように命じられ(すなわち、トルクTが減少し始める)、出力クラッチ16Aが既に加圧オイルで満たされているため、現在のギアAと関連付けられる出力クラッチ16Aの開放が遅延を伴うことなく行われ、この段階では、ソレノイドバルブを開くことによりオイルの一部を抜いてクラッチ16Aを空にするだけで済む(したがって、その動作は瞬時的である)ことに留意すべきである。
【0024】
時点tと時点tとの間には、クラッチ16A,16B間に部分的なトルク伝達があり、すなわち、出力クラッチ16Aによって伝達されるトルクTは、時点tと時点tとの間の直線ランプにより減少し、時点tでは、入力クラッチ16Bにより伝達されるトルクが(出力クラッチ16Aによって伝達されるトルクTの全体的な減少よりも小さい量だけ)段階的に増大する。その後、時点tと時点tとの間では、2つのクラッチ16A,16Bにより伝達されるトルクT,Tは一定のままであり、この時間において、出力クラッチ16Aにより伝達されるトルクTは、入力クラッチ16Bにより伝達されるトルクTよりも大きい。
【0025】
その後、時点tと時点tとの間では、2つのクラッチ16A,16B間でトルクの完全な伝達があり、すなわち、出力クラッチ16Aにより伝達されるトルクがゼロまで漸進的に減少する(出力クラッチ16Aが直線ランプによって開放される)と同時に、入力クラッチ16Bにより伝達されるトルクが漸進的に増大し(入力クラッチ16Bが直線ランプによって閉じられる)、したがって、2つのクラッチ16A,16B間の交差が決定される。クラッチ16A,16Bは直線ランプによって開閉され、すなわち、それぞれのトルクTA,TBは、線形変化法則により経時的に(減少及び増大)変化する。
【0026】
出力クラッチ16Aは、入力クラッチ16Bを完全に閉じるのに必要な時間と同じ時間で完全に開放され、したがって、時点tにおいて、出力クラッチ16Aは完全に開放しており(すなわち、もはやトルクを伝達しない)、一方、入力クラッチ16Bは完全に閉じられる(すなわち、内燃エンジン4の全トルクTを伝達する)。時点tと時点tとの間にはシフト時間があり、その間に、出力クラッチ16Aにより伝達されるトルクはそれがゼロになるまで減少し、同時に、入力クラッチ16Bにより伝達されるトルクは、それが内燃エンジン4により生成されるトルクTに達するまで増大し(既に前述したように、内燃エンジン4は、カットオフ状態にあり、そのため、エンジンブレーキとして作用し、したがって負のトルクTを生成する)、すなわち、その間に、出力クラッチ16Aが駆動輪3からそれ自体を切り離し、入力クラッチ16Bが駆動輪3に接続されるようになる。
【0027】
内燃エンジン4の回転速度ωは、時点tまでのギアシフト前に現在のギアAのギア比によって課される回転速度ωに等しく、ギアシフト中に後続のギアのギア比によって課される回転速度ωに向かって漸進的に減少するとともに、ギアシフト後の回転速度ωに等しい。
【0028】
時点tと時点tとの間には同期時間があり、その間に、内燃エンジン4の回転速度ωは、現在のギアAのギア比によって課される回転速度ωから、後続のギアBのギア比によって課される回転速度ωまで減少し、すなわち、回転速度ωEが回転速度ωと同期される。内燃エンジン4の回転速度ωを減少させるために、内燃エンジン4によって生成される負の(すなわち、ブレーキ)トルクTが時点tと時点tとの間で使用される。
【0029】
車両1の縦方向の加速度αは、ほぼ一定であり、ギアシフトの直前の値α(車両が減速しているため、負である)に等しく、また、ほぼ一定であり、ギアシフト直後の値α(車両が減速しているため、負であり、また、絶対値で値αよりも小さい)に等しい。ギアシフト中、車両1の縦方向の加速度は、初期値αから最終値αまで漸進的に増大する。
【0030】
図3に示される実施形態において、内燃エンジン4は、アップシフト前にカットオフ状態にあり(したがって、内燃エンジンは、ブレーキトルクTを生成するエンジンブレーキとして作用する)、アップシフト後であってもカットオフ状態であり続け、すなわち、アップシフトの前、最中、及び、後に、ドライバーはアクセルペダル22を完全に解放したままにする。しかしながら、ドライバーが、アップシフトを要求した後(すなわち、時点tの後)、アクセルペダル22を踏み込むことを決定し、それにより、内燃エンジン4がプラスのトルクT(すなわち、駆動トルク)を生成することを要求することが起こる可能性があり、この状況は図4に示される実施形態に存在し、この場合、時点t(例えば時点tと時点tとの間にある)に、ドライバーは、アップシフトを要求した後(つまり、時点tの後)、アクセルペダル22を踏み込む。明らかに、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、既に開始されたアップシフトをとにかく完了しなければならないが、ドライバーの新たな(及び予測できない)要求への即座の応答を試みて与えることにより極端な応答性の感覚をドライバーに与えることができ、結果として、時点t(時点tの後)を起点として、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、(アクセルペダル22を踏み込んだドライバーの要求にしたがって)内燃エンジン4の制御ユニット11が内燃エンジン4により生成されるトルクTを増大させることを要求すると同時に、入力クラッチ16Bの閉鎖を加速させ(つまり、入力クラッチ16Bの閉鎖を速くし)、それにより、入力クラッチ16Bは、明らかに、この時点で、全体として、内燃エンジン4がオンにされたという事実に起因して、より大きなトルクTを伝達しなければならない。
【0031】
言い換えると、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、時点t(時点tの後で且つ時点tの前)におけるアップシフト中にドライバーによってアクセルペダル22が踏み込まれる場合には、(図4にしたがって)時点tが時点tより前であれば時点tを起点として或いは時点tが時点tの後であれば時点tを起点として、内燃エンジン4によって生成されるトルクTを増大し、更に、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、時点t(時点tの後で且つ時点tの前)におけるアップシフト中にドライバーによってアクセルペダル22が踏み込まれる場合には、(図4にしたがって)時点tが時点tより前であれば時点tを起点として或いは時点tが時点tの後であれば時点tを起点として、入力クラッチ16Bの閉鎖を加速させる。
【0032】
前述の制御方法は様々な利点を有する。
【0033】
まず第一に、前述のより高速のギアへのシフトの実行を制御する方法は、駆動輪3へのトルクの伝達が決して中断されないことから、路上走行車両の快適な縦方向の加速度プロファイルを決定するため、非常に快適であり、実際に、路面走行車両の縦方向の加速度は、勾配が反転することなく、最初の減速から前の減速よりも大きい最後の減速へと徐々にシフトし(アップシフトではギア比が長くなり、したがって、エンジンブレーキは、路上走行車両1の動態により痛烈な影響を殆ど与えない)、このようにして、ドライバーは減速し続けているという感覚を常に有する。
【0034】
更に、前述のより高速のギアへのシフトの実行を制御する方法は、2つのクラッチ16A,16Bが決して両方同時に開放していないため、知覚できる金属ノイズを何ら生成せず、そのため、ドライブトレイン6は常に「応力下」にあり、つまり、ドライブトレイン6のギアトレインが常に「応力下」にあるため、バックラッシュが大幅に減少され、結果としてノイズも減少する。
【0035】
また、前述のより高速のギアへのシフトの実行を制御する方法は、新しい戦略(「チェンジ・オブ・マインド」とも呼ばれる)の実施も可能にし、これにより、アップシフト中にドライバーがアクセルペダル22を踏み込む場合に入力クラッチ16BのトルクTを調整でき、したがって、ドライバーのコマンドに対する路上走行車両1のより迅速で素早い応答を可能にする。
【0036】
最後に、前述の制御方法は、追加の計算機能が必要ないことから、追加の物理的構成要素の設置を必要とせず、ドライブトレイン6の制御ユニット12の拡張を求めないため、実施が容易で経済的である。
【符号の説明】
【0037】
1 路上走行車両
2 前輪
3 後輪
4 エンジン
5 ドライブシャフト
6 ドライブトレイン
7 トランスミッション
8 トランスミッションシャフト
9 差動装置
10 アクスルシャフト
11 エンジン制御ユニット
12 ドライブトレイン制御ユニット
13 バスライン
14 同期ケーブル
15 主シャフト
16 クラッチ
17 副シャフト
18 主ギアホイール
19 副ギアホイール
20 同期装置
21 ステアリングホイール
22 アクセルペダル
23 ブレーキペダル
24 アップシフトパドルシフタ
25 ダウンシフトパドルシフタ
ω 回転速度
ω 回転速度
ω 回転速度
トルク
トルク
トルク
α 加速度
時点
時点
時点
時点
時点
時点
図1
図2
図3
図4