(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241028BHJP
【FI】
H02M7/48 P
H02M7/48 M
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2020177592
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 常仁
(72)【発明者】
【氏名】馬場 俊之
(72)【発明者】
【氏名】野崎 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広臣
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-019322(JP,A)
【文献】特開2017-060302(JP,A)
【文献】特開2003-079144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力を所望の電圧に調整する電圧調整回路と、
前記電圧調整回路が出力した電力を交流電力に変換するインバータと、
インダクタンス及びキャパシタンスを有
し、前記キャパシタンスとして共振コンデンサを備えた共振回路と、
前記インバータの交流電力を変換する高周波変圧器と、
前記高周波変圧器から出力された交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記共振
コンデンサの温度を検出する温度検出部と、
前記温度が所定の温度閾値以上である場合に、共振周波数の異常であると検出して、異常時の制御を行う制御部と、
を備えた電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記異常時の制御として、前記電力変換装置を停止させる制御を行う、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記異常時の制御として、通常時の制御による出力よりも出力を低減させる制御を行う、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記共振回路を冷却する冷却装置を備え、
前記制御部は、前記異常時の制御として、前記冷却装置による冷却を行わせる制御を行う、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記共振
コンデンサは、前記インバータの直流入力部に接続さ
れている、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記共振
コンデンサは、前記インバータの交流出力部と前記高周波変圧器の一次巻線との間に接続
されている、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記共振回路は、前記インダクタンス、前記インバータの交流出力部と前記高周波変圧器の一次巻線との間に接続されたインダクタンス素子を備えている、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記電圧調整回路は、チョッパ回路あるいはコンバータ回路として構成されている、
請求項1乃至請求項7のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記インバータは、ハーフブリッジインバータあるいはフルブリッジインバータとして構成されている、
請求項1乃至請求項8のいずれか一項記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換装置は小型・軽量化を行ってきたが、さらなる小型・軽量化が求められている。
これを実現するための手段の一つとして、回路の一部に共振回路を利用したソフトスイッチング機能を有するDC/DCコンバータ回路を採用し、高周波化することで、装置内のリアクトル、トランスの外形・質量を低減し、電力変換装置としても小型・軽量化を図るものが提案されている。
一般的にこの回路方式では、共振回路を利用したソフトスイッチング(電流を強制的に小さくしたタイミングでスイッチング素子をターンオン、ターンオフ)をするため、高周波スイッチングであるにも関わらずスイッチング素子の損失も低く抑えることができる回路構成となっていた。
【0003】
しかしながら、このような回路構成を採った場合、何らかの原因で共振回路部の共振周波数が低下した場合、スイッチング素子に電流が流れている状態でターンオフ(ハードスイッチング)することになるため、損失が増大する虞があった。また共振周波数が増加した場合には,電流振幅が増すことによって各構成部品の抵抗損失が増大する虞もある。 また、高周波スイッチングのため急激な温度上昇となり、冷却器上にサーミスタを備え過温度検知を有する装置であっても、過温度検出する前に半導体素子の破損が起こる虞もあった。
このような問題を解消するために、共振回路に電流検出器を設けて共振電流を検出し、共振周波数を監視して、あらかじめ定めた領域を逸脱した際に異常を検知し、装置を停止させるという方法が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6067136号公報
【文献】米国特許第8614901号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の方法を採用するには電流検出器を設置する必要があるが、高周波の用途では電流検出器の発熱が大きいため温度環境の厳しい用途の装置では採用が困難であるという課題があった。
また、高周波用電流検出器は外形が大きくなるため、装置内のスペースとのアンマッチやコストも増大するという新たな課題が生じていた。
さらに、上述した問題を克服したとしても、検出回路として、高速なマイコンやFPGAが必要となるため、コストアップが生じるという課題があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、共振周波数の異常検出を容易かつ低コストで実現することが可能な高周波絶縁方式の電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電力変換装置は、電源からの電力を所望の電圧に調整する電圧調整回路と、電圧調整回路が出力した電力を交流電力に変換するインバータと、インダクタンス及びキャパシタンスを有し、前記キャパシタンスとして共振コンデンサを備えた共振回路と、インバータの交流電力を変換する高周波変圧器と、高周波変圧器から出力された交流電力を直流電力に変換する整流器と、共振コンデンサの温度を検出する温度検出部と、温度が所定の温度閾値以上である場合に、共振周波数の異常であると検出して、異常時の制御を行う制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
【
図2】
図2は、共振周波数の正常時におけるスイッチング素子のゲート電圧及び各部の電流との関係の説明図である。
【
図3】
図3は、共振周波数の異常時におけるスイッチング素子のゲート電圧及び各部の電流との関係の説明図である。
【
図4】
図4は、第1の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
【
図5】
図5は、第2の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
【
図6】
図6は、第3の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
【
図10】
図10は、第5実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
電力変換装置は、電源PWと、電圧調整回路11と、共振方式単相ハーフブリッジインバータとしての共振インバータを構成する共振コンデンサ12U、12L、スイッチング素子13U及びスイッチング素子13Lと、高周波変圧器14と、ダイオード整流器15と、フィルタコンデンサ16と、電流検出器17と、フィルタコンデンサ18と、制御部21と、電圧調整回路11の入力電圧を検出する電圧検出部22と、共振コンデンサ12U及び共振コンデンサ12Lの温度を代表する温度を検出する温度検出部23と、電力変換装置の出力電圧を検出する電圧検出部24と、電流検出器17の出力信号に基づいて電力変換装置の出力電流を検出する電流検出部25と、を備えている。
【0009】
上記構成において、共振コンデンサ12U、12L、スイッチング素子13U、スイッチング素子13L、高周波変圧器14、ダイオード整流器15、フィルタコンデンサ16及びフィルタコンデンサ18は、共振回路RESを構成している。
【0010】
また、
図1の例では、電圧調整回路11として、スイッチング素子11A、ダイオード11B及びコイル11Cを有する降圧チョッパ回路を構成している場合を示している。しかしながら、所望の電圧が得られるように調整を行えるのであれば、昇降圧チョッパ回路、昇圧チョッパ回路、コンバータ等様々な回路を適用することが可能である。
また、高周波変圧器14は、漏れインダクタンス成分14Xを含んでいるものとする。
【0011】
また、制御部21は、電圧検出部22、温度検出部23、電圧検出部24、電流検出部25と接続されている。電圧検出部24、電流検出部25にて出力を検出しながら、定められた制御特性に基づいてスイッチング素子11Aのゲート制御を行っている。
【0012】
また、
図1においては、スイッチング素子11A、スイッチング素子13U及びスイッチング素子13LをIGBTとしているが、IGBTに限定するものではない。例えば、SiC-MOSFETでも、パワートランジスタ、GTOサイリスタでも良い。
【0013】
図2は、共振周波数の正常時におけるスイッチング素子のゲート電圧及び各部の電流との関係の説明図である。
図2(A)及び
図2(B)に示すように、スイッチング素子13Uのゲート電圧G13U及びスイッチング素子13Lのゲート電圧G13Lは、所定のデッドタイムDTを介して排他的に“H”レベル(オン)/“L”レベル(オフ)が切り替わるようになっている。
そして、スイッチング素子13Uがオン状態である場合に、
図2(C)に示すように、スイッチング素子13Uを電流I13Uが流れる。同様にスイッチング素子13Lがオン状態である場合に、
図2(D)に示すように、スイッチング素子13Lを電流I13Lが流れる。
これらの結果、
図2(E)に示すように、高周波変圧器14の一次側を電流Iin14が流れることとなる。
【0014】
ところで、正常時には、制御部21は、スイッチング素子13U、13Lを設定したスイッチング周期で制御している。
【0015】
ここで、スイッチング素子13U、13L、高周波変圧器14、ダイオード整流器15及びフィルタコンデンサ16、18の閉回路を構成する導体によって構成された配線のインダクタンスと高周波変圧器14の漏れインダクタンス14Xの合計値と、共振コンデンサ12U、12Lによって共振回路RESを構成し、負荷に電力を供給する。
したがって、スイッチング周波数と共振周波数はソフトスイッチング(小さい電流でのターンオフ)を実現するタイミングとなっている。
【0016】
すなわち、
図2に示すように、スイッチング周期の前半では、スイッチング素子13Uのゲート電圧G13Uが“H”レベルとなっている期間の前半で電流I13Uが大きく流れ、スイッチング素子13U、13Lの切替を行うために設定されているデッドタイムDTの期間においては電流I13Uは小さくなっており、ソフトスイッチングが行えるようになっている。
【0017】
さらにスイッチング周期の後半では、スイッチング素子13Lのゲート電圧G13Lが“H”レベルとなっている期間の前半で電流I13Lが大きく流れ、スイッチング素子13U、13Lの切替を行うために設定されているデッドタイムDTの期間においては電流I13Lは小さくなっており、ソフトスイッチングが行えるようになっている。
【0018】
図3は、共振コンデンサの容量減少などによる共振周波数の異常時におけるスイッチング素子のゲート電圧及び各部の電流との関係の説明図である。
異常時においても、スイッチング周期Tの前半では、スイッチング素子13Uのゲート電圧G13Uが“H”レベルとなっている期間の前半で電流I13Uが大きく流れ、スイッチング素子13U、13Lの切替を行うために設定されているデッドタイムDTの期間においては電流I13Uは小さくなっている。
【0019】
しかしながら、スイッチング素子13Uのゲート電圧G13Uが“H”レベルとなっている期間の前半で流れる電流の値は、正常時の場合と比較して、大きくなっており、回路全体として発熱量が大きくなっている。
【0020】
同様に、スイッチング周期の後半では、スイッチング素子13Lのゲート電圧G13Lが“H”レベルとなっている期間の前半で電流I13Lが大きく流れ、スイッチング素子13U、13Lの切替を行うために設定されているデッドタイムDTの期間においては電流I13Lは小さくなっている。
【0021】
しかしながら、スイッチング素子13Lのゲート電圧G13Lが“H”レベルとなっている期間の前半で流れる電流の値は、正常時の場合と比較して、大きくなっており、消費電力が増大するとともに、回路全体として発熱量が大きくなることとなっていた。
【0022】
より詳細には、共振回路全体のインダクタンスをL、共振回路全体のキャパシタンスをCとした場合に、共振周波数fは、(1)式で表される。
f=1/2π・√(L・C) …(1)
従って、キャパシタンスCが小さくなると、共振周波数は高くなり、回路全体としては、所望の動作が行えなくなるのである。
【0023】
そこで、本実施形態においては、温度変化を検出することで、共振周波数の変化をとらえ、制御を行うようにしている。
すなわち、温度検出部23により、共振コンデンサ12U、12L、あるいは共振コンデンサ12U、12Lに接続している導体の温度監視を行っている。
そして温度検出部23において、正常時に検出されるはずの温度領域を逸脱した場合には、温度検出部23の出力に基づいて制御部21が共振周波数が異常であること検出して電力変換装置10を停止モードに移行する。
【0024】
以下、より詳細に制御部21の動作を説明する。
図4は、第1の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
共振周波数の定数が変化し共振周波数の異常状態において(ステップS01)、制御部21は、温度検出23を介して共振回路、すなわち、共振コンデンサ12U、12L、あるいは共振コンデンサ12U、12Lに接続している導体の温度を計測して温度計測値Aを取得する(ステップS02)。
【0025】
続いて制御部21は、予め設定した温度閾値に相とする温度セット値Bと比較を行い、温度計測値Aが温度セット値B以上(A-B≧0)であるか否かを判断する(ステップS03)。
【0026】
ステップS03の判断において、温度計測値Aが温度セット値B以上(A-B≧0)である場合には(ステップS03;Yes)、制御部21は、電力変換装置10の動作を停止シーケンスへ移行し(ステップS04)、電力変換装置10の保護を図る。
【0027】
ステップS03の判断において、温度計測値Aが温度セット値B未満(A-B<0)である場合には(ステップS03;No)、制御部21は、処理を再びステップS02に移行して同様の処理を繰り返すこととなる。
【0028】
図5は、第2の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
図4の処理においては、共振周波数が異常である場合には、電力変換装置10を停止シーケンスへ移行させていたが、
図5の処理では、出力を低減することにより電力変換装置10の保護を図っている。
【0029】
共振周波数の定数が変化し共振周波数の異常状態において(ステップS11)、制御部21は、温度検出23を介して共振回路、すなわち、共振コンデンサ12U、12L、あるいは共振コンデンサ12U、12Lに接続している導体の温度を計測して温度計測値Aを取得する(ステップS12)。
【0030】
続いて制御部21は、予め設定した温度閾値に相とする温度セット値Bと比較を行い、温度計測値Aが温度セット値B以上(A-B≧0)であるか否かを判断する(ステップS13)。
【0031】
ステップS13の判断において、温度計測値Aが温度セット値B以上(A-B≧0)である場合には(ステップS13;Yes)、制御部21は、電力変換装置10の出力制御を行い、出力を低減する出力低減モードに移行し(ステップS14)、電力変換装置10の保護を図る。さらにさらなる出力低減が必要か否かを判断するために、処理を再びステップS12処理を移行して同様の処理を繰り返すこととなる。
【0032】
一方、ステップS13の判断において、温度計測値Aが温度セット値B未満(A-B<0)である場合には(ステップS13;No)、制御部21は、出力制御を通常モードのままとして処理を終了する(ステップS14)。
【0033】
図6は、第3の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
本例においては、共振回路を構成している共振コンデンサ12U、12Lを冷却するための冷却装置として電力変換装置が冷却用ファンを備えている場合について説明する。
図4の処理においては、共振周波数が異常である場合には、電力変換装置10を停止シーケンスへ移行させていたが、
図6の処理では、共振コンデンサ12U、12L及び周囲回路を冷却して、電力変換装置10の保護を図っている。
【0034】
共振周波数の定数が変化し共振周波数の異常状態において(ステップS21)、制御部21は、温度検出23を介して共振回路、すなわち、共振コンデンサ12U、12L、あるいは共振コンデンサ12U、12Lに接続している導体の温度を計測して温度計測値Aを取得する(ステップS22)。
【0035】
続いて制御部21は、予め設定した温度閾値に相とする温度セット値Bと比較を行い、温度計測値Aが温度セット値B以上(A-B≧0)であるか否かを判断する(ステップS23)。
【0036】
ステップS23の判断において、温度計測値Aが温度セット値B以上(A-B≧0)である場合には(ステップS23;Yes)、制御部21は、冷却ファンの動作制御を行うためのファン動作指令を“H”レベルとして冷却ファンを動作させて(ステップS25)、共振コンデンサ12U、12L及び周囲回路を冷却して、電力変換装置10の保護を図る。
【0037】
一方、ステップS13の判断において、温度計測値Aが温度セット値B未満(A-B<0)である場合には(ステップS23;No)、制御部21は、冷却ファンの動作制御を行うためのファン動作指令を“L”レベルとして冷却ファンを停止し、あるいは、停止状態を維持して処理を終了する(ステップS14)。
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、共振周波数の異常検出を容易かつ低コストで実現でき、電力変換装置10の保護を図ることができる。
【0038】
[2]第2実施形態
図7は、第2実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
図7において、
図1の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
本第2実施形態が、第1実施形態と異なる点は、電圧調整回路11の入力電圧を検出する電圧検出部22を設けていない点である。
【0039】
この構成によれば、電圧調整回路11に代えて、最終的な調整対象である負荷LDへの出力電圧を検出して第1実施形態と同様の制御を行うので、回路構成を簡略化されている。
【0040】
したがって、本第2実施形態によれば、第1実施形態よりもより簡易な構成で、共振周波数の異常検出を容易かつ低コストで実現でき、電力変換装置10の保護を図ることができる。
【0041】
[3]第3実施形態
図8は、第3実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
図8において、
図1の第1実施形態と異なる点は、スイッチング素子13Uと、スイッチング素子13Lの接続点と、高周波変圧器14の一次巻線との間に共振コンデンサ12Cを設けた点と、共振コンデンサ12U及び共振コンデンサ12Lに代えて、共振コンデンサ12U及び共振コンデンサ12Lと比較して容量の大きな分圧用コンデンサ31U及び分圧用コンデンサ31Lを設けた点と、温度検出部23により共振コンデンサ12Cの近傍の温度を測定している点である。
【0042】
本第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、共振周波数の異常検出を容易かつ低コストで実現でき、電力変換装置10の保護を図ることができる。
【0043】
[4]第4実施形態
図9は、第4実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
ところで、上述した(1)に示すように、共振周波数を決める要因としては、キャパシタンスCのみならず、インダクタンスLがある。
そこで、本第4実施形態は、共振回路RESにおけるインダクタンスLを大きくする場合の実施形態である。
【0044】
図9において、
図1の第1実施形態と異なる点は、スイッチング素子13Uと、スイッチング素子13Lの接続点と、高周波変圧器14の一次巻線との間にインダクタンス素子としてのコイルL1を設けた点である。
本第4実施形態によれば、第1実施形態と同様に、共振周波数の異常検出を温度により行うことで、異常検出を容易かつ低コストで実現でき、電力変換装置10の保護を図ることができる。
【0045】
[5]第5実施形態
図10は、第5実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
図10において、
図8の第2実施形態と異なる点は、共振方式単相ハーフブリッジインバータに代えて共振方式単相フルブリッジインバータを用いている点である。
【0046】
より詳細には、スイッチング素子13U及びスイッチング素子13Lに代えて、スイッチング素子13U1及びスイッチング素子13L1を直列接続し、当該接続点を高周波変圧器14の一方の一次巻線に接続している。さらに、スイッチング素子13U2及びスイッチング素子13L2を直列接続し、当該接続点を高周波変圧器14の他方の一次巻線に接続している。
【0047】
これらの結果、スイッチング素子13U1、13U2、13L1、13L2は、フルブリッジインバータを構成することとなる。
これらの結果、本第5実施形態によれば、第1実施形態と同様に、共振周波数の異常検出を容易かつ低コストで実現でき、電力変換装置10の保護を図ることができる。
また、フルブリッジインバータを備えていることにより、一次側の電圧を電源電圧と等しくすることが可能となり、電流が少ない、すなわち、消費電力の少ない電源を供給することが可能となる。
【0048】
以上の説明では、スイッチング素子13U1と、スイッチング素子13L1の接続点と、高周波変圧器14の一次巻線との間に共振コンデンサ12Cを設けていたが、さらに必要に応じて共振コンデンサ12Cと直列にコイルを設けるようにしてもよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0050】
例えば、電源からの電力を直流電力に変換して出力するチョッパと、チョッパが出力した直流電力を交流電力に変換するインバータと、共振回路を構成し、インバータの直流入力部に二直列に接続される共振コンデンサと、インバータの交流電力を変換する高周波変圧器と、を備えた電力変換装置で実行される方法であって、共振回路の温度を検出する過程と、温度が所定の温度閾値以上である場合に、共振周波数の異常であると検出して、異常時の制御を行う過程と、を備えるようにしてもよい。
【0051】
また、電源からの電力を直流電力に変換して出力するチョッパと、チョッパが出力した直流電力を交流電力に変換するインバータと、共振回路を構成し、インバータの直流入力部に二直列に接続される共振コンデンサと、インバータの交流電力を変換する高周波変圧器と、を備えた電力変換装置をコンピュータにより制御するためのプログラムであって、コンピュータを、共振回路の温度を検出する手段と、温度が所定の温度閾値以上である場合に、共振周波数の異常であると検出して、異常時の制御を行う手段と、して機能させるようにしても良い。
【0052】
以上の説明においては、温度検出部23を共振コンデンサ近傍に配置する構成としていたが、共振周波数の異常に応じた温度変化を検出できる箇所であれば、これに限られず、
高周波変圧器近傍など共振回路RESの様々な部位に配置することも可能である。
以上の説明においては、インダクタンス素子として、コイルの場合について説明したが、フェライトコア、トロイダルコア等の素子を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…電力変換装置
11…電圧調整回路
12U、12L、12C…共振コンデンサ(キャパシタンス)
13U、13U1、13U2、…スイッチング素子(上アーム:スイッチングトランジスタ)
13L、13L1、13L2…スイッチング素子(下アーム:スイッチングトランジスタ)
14…高周波変圧器
14X…漏れインダクタンス
15…ダイオード整流器
16、18…フィルタコンデンサ
17…電流検出器
21…制御部
22…電圧検出部
23…温度検出部
24…電圧検出部
25…電流検出部
L1…コイル(インダクタンス素子)