(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】両面型卓上フード
(51)【国際特許分類】
B01L 1/00 20060101AFI20241028BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20241028BHJP
F24F 13/18 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
B01L1/00 A
F24F7/06 C
F24F7/06 101B
F24F13/18
(21)【出願番号】P 2020179788
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】512284033
【氏名又は名称】株式会社ダルトン
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩平
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-087964(JP,A)
【文献】実開平01-069633(JP,U)
【文献】特開2008-296129(JP,A)
【文献】特公昭47-026136(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00-04
B25H 1/20
C12M 1/00
F24F 7/00-10
F24F 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験台の上に設置され、実験等により発生する有害雰囲気を封じ込めるための両面型の卓上フードであって、
前記卓上フードの
前側および後側から作業を行うことができるように、前記卓上フードの
前側および後側にそれぞれ前側開閉扉
および後側開閉扉が設けられ、
前記卓上フードの上面の略中央部に、前記卓上フードの内部の雰囲気を吸引排気するための排気口が設けられ、
前記卓上フード内の略中央部に、前記卓上フードの
前側の開口面に対向するように上下方向に延びる
前側バッフル板と、前記卓上フードの後側の開口面に対向するように上下方向に延びる後側バッフル板とが設けられ、
前記前側バッフル板および前記後側バッフル板により、前記卓上フードの内部空間は、前側の作業空間と後側の作業空間とに分割され、
前記前側バッフル板と前記後側バッフル板との間に、
前記前側の作業空間の排気および前記後側の作業空間の排気に共用される上下方向に延びる1つの空気流路が形成さ
れ、
前記排気口を介して前記卓上フードの内部の雰囲気を吸引すると、前記前側の作業空間内の空気は前記前側バッフル板に形成された開口および前側バッフル板の縁のところに形成された隙間を通って前記1つの空気流路内に流入し、また、前記後側の作業空間内の空気は、前記後側バッフル板に形成された開口および前記後側バッフル板の縁のところに形成された隙間を通って、前記前側の作業空間内の空気の流入先と同じ前記1つの空気流路内に流入し、その後前記1つの空気流路内を通って前記排気口に向けて流れるようになっている、卓上フード。
【請求項2】
前記卓上フードは、フレームと、外パネルを有するフード本体を有し、
前記前側バッフル板および前記後側バッフル板は、前記フード本体に対して着脱可能であり、
前記前側バッフル板および前記後側バッフル板を取り外すと、前記前側の作業空間と前記後側の作業空間とが連通して単一の作業空間が形成される、請求項1記載の卓上フード。
【請求項3】
前記各バッフル板は、取付部材を介して前記フード本体の側部に取り付けられている、請求項2記載の卓上フード。
【請求項4】
前記取付部材にスリットが形成されており、当該スリットを介して前記作業空間内の空気を前記空気流路内に流入させることが可能となっている、請求項3記載の卓上フード。
【請求項5】
前記各バッフル板が別々の部品として構成された上半部および下半部とを有している、請求項1記載の卓上フード。
【請求項6】
前記各バッフル板が透明である、請求項1記載の卓上フード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面型卓上フードに関する。
【背景技術】
【0002】
化学実験等の作業を行う際に、作業に付随して生じる有毒ガス、臭気等の有害雰囲気が周囲環境に拡散することを防止するために、局所排気装置が用いられている。局所排気装置は、有害雰囲気を生じさせる実験機器等を収容する作業空間を内部に画定するフード(囲い)と、ダクト等を介して作業空間内の雰囲気を適当な場所に排出する排気設備とから構成される。
【0003】
局所排気装置は、「ドラフトチャンバー」および「卓上フード」に大別される。なお、名称については製造者/販売者により多少異なる場合がある。
【0004】
本明細書において、「ドラフトチャンバー」という用語は、一般的には、サッシ(開閉扉)を部分的に開放した状態での制御風速要求に対応でき、高度の封じ込め性能を有するものを意味する。本明細書において、ドラフトチャンバーとは、一般的に、脚(土台)の部分からフードの部分までを含む一つの装置として構成されるものを意味する。ドラフトチャンバーでは、一般的には、前面のみにサッシが設けられている。前後両面にサッシが設けられているドラフトチャンバーも存在するが、そのようなドラフトチャンバーは、一般的には、2つのドラフトチャンバーを結合した構成を有し、前側作業空間と後側作業空間とが実質的に恒久的にセパレートされている。
【0005】
本明細書において、「卓上フード」は、既存の実験台(作業台)上に設置することが可能であるように構成されたものを意味する。つまり、実験台の部分は「卓上フード」の構成要素ではない。また、一般的な卓上フードは、制御風速要求に対応していない。つまり、卓上フードは、原則的にサッシを閉じた状態で、所要の封じ込め性能が確保されれば十分であるとの前提で設計されている。
【0006】
卓上フードの一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された卓上フードは、前面および後面にそれぞれサッシ(開閉扉)が設けられ、卓上フードの両側から単一の作業空間にアクセスできるようになっており、「両面型卓上フード」とも呼ばれる。両面型卓上フードは、フードの両側から作業空間にアクセスできるため、実験作業を行う際に作業者の移動の煩わしさを大幅に低減することができる。なお、前面のみにサッシが設けられているものは片面型卓上フードとも呼ばれる。
【0007】
近年、本来なら制御風速要求に対応するように設計されてはいない卓上フードにおいても、制御風速要求への対応(すなわちドラフトチャンバーと同等の性能)が求められることがある。この場合、排気ファンの回転数を増大させることにより、制御風速要求を満足することは一応可能ではあるが、電気代増による運用コストの増大が懸念される。また、新規施設の計画段階では、ダクトサイズの増大やファン能力の向上も求められるため、設備投資額の増大も懸念される。
【0008】
上記の問題は、卓上フードが両面型である場合に、より顕著となる。両面型フードは片面型フードと比較して大きな作業空間を有することから、空気吸引効率が悪く、開口面における風速分布にばらつきが生じやすいからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、風量効率(風速効率)の良い制御風速対応の両面型卓上フードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、実験台の上に設置され、実験等により発生する有害雰囲気を封じ込めるための両面型の卓上フードであって、前記卓上フードの両側から作業を行うことができるように、前記卓上フードの両側に開閉扉が設けられ、前記卓上フードの上面の略中央部に、前記卓上フードの内部の雰囲気を吸引排気するための排気口が設けられ、 前記卓上フード内の略中央部に、前記卓上フードの両側の開口面にそれぞれ対向するように上下方向に延びる一対のバッフル板が設けられ、当該一対のバッフル板の間に、前記卓上フードの内部の作業空間内の空気を前記排気口に導く空気流路が形成されている卓上フードが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、風量効率(風速効率)の良い制御風速対応の両面型卓上フードを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る卓上フードの斜視図である。
【
図2】排気流路を構成する部材(バッフル板、チャネル材)の斜視図である。
【
図3】チャネル材を介してフレームにバッフル板を取り付ける方法を示す斜視図である。
【
図5】卓上フード内に形成される気流を示す概略縦断面図である。
【
図6】バッフル板が無い場合に卓上フード内に形成される気流を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して両面型卓上フード1(以下、簡便のため単に「フード1」と呼ぶ)の一実施形態について説明する。フード1は、実験台の上に設置され、実験台の上面に設置された実験機器等から実験等によって発生する有害雰囲気をフード1の内部に封じ込めるために用いられるものである。
【0015】
各添付図面には、向きを区別するために前(F)、後(B)、左(L)、右(R)、上(U)、下(D)を表示した。フード1は、概ね前後対称であり、かつ概ね左右対称である。説明の簡略化のため、以下においては、原則として、前側の構成要素および後側の構成要素が同一構成を有するなら、一方のみについて説明するものとする。前側の構成要素に付ける参照符号は「数字+F」で表示され、後側の構成要素に付ける参照符号は「数字+B」で表示され、数字の部分が同じであるなら、両者は同一構成を有する。また以下においては、原則として、左側の構成要素および右側の構成要素が同一構成を有するなら、一方のみについて説明するものとする。左側の構成要素に付ける参照符号は「数字+L」で表示され、右側の構成要素に付ける参照符号は「数字+R」で表示され、数字の部分が同じであるなら、両者は同一構成を有する。
【0016】
図1では、多くの部材を表示するため、透明ではない一部の部材(例えば天井パネル)が透明に表記されていることもあることに留意されたい。
図1に示すように、フード1は、箱形のフード本体10を有している。フード本体10は、フレーム12と、フレーム12に取り付けられた複数の外パネル14を有する。フレーム12は、金属例えばアルミニウムの型材からなる複数の柱材および梁材を、ネジ止めあるいは溶接等の公知の接合技術により全体として略直方体形状に組み立てることにより形成することができる。
【0017】
外パネル14は、用途に応じて選定された適当な透明材料、例えばガラスから形成することができる。透明材料として、透明PVC等の透明樹脂を用いることもできる。外パネル14のうちの天井パネル14Cは、例えばアルミニウム等の不透明な金属材料で形成してもよい。
【0018】
公知の方法で外パネル14をフレーム12に対して取り付けることにより、用途に適合する程度に十分な気密性を有するフード本体10が形成される。フード本体10の内側の空間は、フード本体10の外側の空間から実質的に隔離された作業空間として用いることができる。フード本体10の内側の空間は、後述する前側の鉛直バッフル板20Fおよび後側の鉛直バッフル板20Bにより、前側の作業空間11Fおよび後側の作業空間11Bに分割される(特に
図5を参照)。
【0019】
図1および
図5に示すように、複数の外パネル14には、フード本体10の前面に配置されたパネル14Fと、フード本体10の後面に配置されたパネル14Bとが含まれる。複数の外パネル14には、さらにフード本体10の天井面に配置された天井パネル14Cと、フード本体10の左面に配置された左パネル14Lと、フード本体10の右面に配置された右パネル14Rとが含まれる。
【0020】
天井パネル14C、左パネル14Lおよび右パネル14Rは、フード本体1の上面、左面および右面を、それぞれ、常時、完全に閉塞している。
【0021】
特に
図5に明瞭に示されるように、前側のパネル14Fは、フード本体10の前面の上部のみを閉塞する。具体的には、パネル14Fは、フード本体10の全高の概ね2/3程度の高さ位置からフード本体10の天井部まで延びている。つまりフード本体10の前面には、フード本体10の下端(作業面50(
図5を参照)の高さ)からフード本体10の全高の概ね2/3程度の高さ位置まで開口16Fが設けられている。後側のパネル14Bについても同様である。
【0022】
図1および
図5に示すように、前側のサッシ(開閉扉)18Fが、前側の開口16Fを開閉するために、フレーム12に昇降可能に取り付けられている。サッシ18Fは、開口16Fが完全に開放される上限位置および開口16Fが概ね閉鎖される下限位置だけでなく、開口16Fを任意の開度で部分的に開放する任意の上下方向位置に静止させることができる。サッシ18Fが下限位置にあるとき、排気ファンを常時稼働させてもフード本体10内の陰圧が過剰に高くなることを防止するため、開口16Fの下端から30mm程度の領域は閉塞されずに開放されるようになっている(
図5を参照)。サッシ18Fを下限位置から適当な距離だけ上昇させることにより、作業者は前側の作業空間11Fにアクセスすることができる。後側のサッシ(開閉扉)18Bと後側の開口16Bとの関係も同様である。
【0023】
フード本体10の前後方向に関して略中央の位置に、前側の鉛直バッフル板20Fおよび後側の鉛直バッフル板20Bが、前側のサッシ18Fおよび後側のサッシ18Rとそれぞれ平行に設けられている。鉛直バッフル板20Fおよび鉛直バッフル板20Bは、前後方向に間隔を空けて、互いに平行に鉛直方向に延びている。鉛直バッフル板20F,20Bの各々は、特に
図3に明瞭に示されるように2枚の板材から構成されていてもよいし、これに代えて単一の板材から構成されていてもよい。
【0024】
フード本体10の右側面および左側面の前後方向中央部には、それぞれ、右側の中央柱12Rおよび左側の中央柱12Lが上下方向に延びている。中央柱12R、12Lは、フレーム12を構成する柱の一部をなす。
【0025】
中央柱12Rには、カタカナの「コ」の字型、別の言い方をすれば角括弧(])型の右側のチャネル材24Rがそれぞれ設けられている。チャネル材24Rの上端面は、天板246Rにより上下方向に関して閉塞されている。チャネル材24Rの下端面は上下方向に関して開放されている。チャネル材24Rは、中央支柱12Rに当接するベース壁241Rと、ベース壁241Rの前端および後端から左方に向けて立ち上がる側壁242R,243Rとを有している。チャネル材24Rは、ベース壁241Rに形成された貫通穴を通過するとともに中央柱12Rに形成されたネジ穴に右向きにねじ込まれる複数のネジSCWにより、中央柱12Rにネジ止めされている。チャネル材24Rの単独の形状は
図4を参照されたい。左側のチャネル材24Lおよび左側の中央柱12Lとの関係についても同様である。
【0026】
前側の鉛直バッフル板20Fの右端部は、鉛直バッフル板20Fの右端部に形成された貫通穴を通過するととともに右側のチャネル材24Rの側壁242Rに形成されたネジ穴に後向きにねじ込まれる複数のネジSCWにより、側壁242Rにネジ止めされている。鉛直バッフル板20Fの左端部は、鉛直バッフル板20Fの左端部と同様の構成を有し、鉛直バッフル板20Fの右端部と同様の態様で、左側のチャネル材24Lの側壁242Lにネジ止めされている。後側の鉛直バッフル板20Bは、右側のチャネル材24Rに対して、上記と同様に取り付けられている。
【0027】
上記のように鉛直バッフル板20F,20Bがフード本体10のフレーム12に対して所定位置に位置決めされた状態で固定されると、鉛直バッフル板20F,20B、チャネル材24R,24Lに囲まれた薄い直方体形状の空気流路41が形成される(
図5を参照)。
【0028】
鉛直バッフル板20F,20Bの各々の上方には、鉛直バッフル板20F,20Bの各々の上端部に接するように、前側のスラントバッフル板22Fおよび後側のスラントバッフル板22Bが天井部に向かって傾斜して配置されている。スラントバッフル板22F,22Bは、例えば、アルミニウム板等の金属板をプレス成形により成形することにより形成することができる。スラントバッフル板22Fおよびスラントバッフル板22Bは概ね前後対称(互いに鏡面対称)の形状を有する。
【0029】
図2に示すように、スラントバッフル板22F、22Bは、これらスラントバッフル板22F,22Bに形成された貫通穴を通過してフード本体10の天井部にある梁12C(梁は
図1を参照)に形成されたネジ穴に上向きにねじ込まれる複数のネジSCWにより、梁12Cにネジ止めされている。スラントバッフル板22F,22Bがフード本体10のフレーム12に対して所定位置に位置決めされた状態で固定されると、スラントバッフル板22F,22Bおよび天井パネル(上面パネル)14Cに囲まれた略二等辺三角形の断面を有する空気流路42が形成される(
図5を参照)。天井パネル14Cの略中央部には排気口44が設けられており、空気流路42は排気口44に連通している。
【0030】
図2に示すように、前スラントバッフル板22Fの後端縁には2つの切り欠き32Fが形成されている。後スラントバッフル板22Bの前端縁には2つの切り欠き32Bが形成されている。2つのスラントバッフル板22F,22Bを組み合わせると、切り欠き32Fと切り欠き32Bとが合わさって矩形の穴34が形成される。穴34を介して、空気流路41と空気流路42とが連通する。空気流路41および空気流路42をまとめて排気流路40とも呼ぶ。
【0031】
フード本体10の天井部に設けられた排気口44には、排気ファン等の適当な排気機器(図示せず)が介設された排気ダクト(図示せず)が接続されている。排気機器を動作させることにより、排気流路40内の空気を吸引することができる。
【0032】
上述した矩形の穴34の前後方向幅は、鉛直バッフル板20Fの前側表面と鉛直バッフル板20Bの後側表面との間の距離よりも大きい。このため、スラントバッフル板22F,22Bが鉛直バッフル板20F,20Bと組み合わせられたとき、矩形の穴34の前端部分および後端部分によりスリット状の開口35F,35Bが形成される。これらのスリット状の開口35F,35Bをそれぞれ介して、前側の作業空間11Fおよび後側の作業空間11Bから排気流路40(空気流路42)内に空気が流入する。
【0033】
前側のスラントバッフル板22Fの前端縁には2つの切り欠き36Fが形成されている。後スラントバッフル板22Bの後端縁には2つの切り欠き36Bが形成されている。前スラントバッフル板22Fおよび後スラントバッフル板22Bがフレーム12の天井部の梁12Cにネジ止めされたときに、切り欠き36F,36Bと天井パネル14Cとの間にスリット状の開口38F,38Bが形成される。これらのスリット状の開口38F,38Bをそれぞれ介して、作業空間11Fおよび作業空間11Bから排気流路40(空気流路42)内に空気が流入する。
【0034】
前側の鉛直バッフル板20Fの下半部には、水平方向に延びる複数のスリット状の開口28が形成されている。スリット状の開口28は、鉛直バッフル板20Fの下半部の全域にわたって概ね均等に分布している。スリット状の開口28を介して、前側の作業空間11Fから排気流路40(空気流路41)内に空気が流入する。鉛直バッフル板20Fの上半部には下半部のような複数のスリット状の開口は形成されていない。鉛直バッフル板20Fの下端縁と、作業面50(作業台の上面)との間には、隙間30Fが設けられている。隙間30Fを介して、前側の作業空間11Fから排気流路40(空気流路41)内に空気が流入する。上記の点において、後側の鉛直バッフル板20Bも同様である。
【0035】
特に
図4に明瞭に示されるように。右側のチャネル材24Rのベース壁24R1と側壁242R,243Rとが接続される前側および後側のコーナー部にそれぞれ、垂直方向に延びる複数のスリット状の開口33が形成されている。スリット状の開口33は、チャネル材24Rの下半部に設けられており、上半部には設けられていない。チャネル材24Rの前側のコーナー部にあるスリット状の開口33を介して、前側の作業空間11Fから排気流路40(空気流路41)内に空気が流入する。チャネル材24Rの後側のコーナー部にあるスリット状の開口33を介して、後側の作業空間11Bから排気流路40(空気流路41)内に空気が流入する。なお、鉛直バッフル板20F,20Bによりスリット状の開口33F,33Bが塞がれないように、側壁242R,243Rと鉛直バッフル板20F,20Bとの重なり代が設定されている。上記の点において、チャネル材24Lも同様に構成されている。
【0036】
特に
図3に示すように、前側の鉛直バッフル板20Fは、当該鉛直バッフル板20Fの上半部を構成する上側部材20FUと、下半部を構成する下側部材20FDとから構成することができる。一構成例において、上側部材20FUは、透明材料、具体的には例えば透明樹脂材料、より具体的には例えば透明PVC板により形成することができる。これにより、フード1の前面(後面)の前に立った作業者から、フード1の後面(前面)側の作業空間を容易に視認することができる。下側部材20FDは、メラミン樹脂を表面材とした樹脂製化粧板から形成することができる。下側部材20FDは、適当な塗装、例えばメラミン塗装が施された金属板例えばアルミニウム板から形成してもよい。下側部材20FDの表面をメラミン樹脂で形成することにより、所望の耐薬品性を持たせることができる。表面材をメラミン樹脂等の不透明材から形成することは、目隠し(前側から後側を見えなくすること)が求められる場合にも有益である。表面材は、要求される性能(耐熱性、耐薬品性等)に応じて適当なものを選択することができる。上記の点において、後側の鉛直バッフル板20Bも同様に構成することができる。
【0037】
上記に代えて、上側部材20FUおよび下側部材20FDの両方を透明材料により形成することができる。鉛直バッフル板20Fの全体を一体部品(単一部材)として構成してもよい。この場合、鉛直バッフル板20Fの全体を単一の透明材料、具体的には例えば透明樹脂材料、より具体的には例えば透明PVC板により形成することができる。この場合、鉛直バッフル板20Fの下半部のみに塗装を施してもよい。上記の点において、後側の鉛直バッフル板20Bも同様に構成することができる。
【0038】
次に、作業空間内の気流を、前側の作業空間11F内の気流を例にとって説明する。
図5に示すように、前側のサッシ18Fを上昇させ、前側の開口16Fの下側の概ね1/2程度が開放されるようにする。後側の開口16Bは、下限位置にある後側のサッシ18Bにより概ね(前述したように30mm程度の隙間有り)閉塞する。ここで、図示しない排気ダクトに介設された排気ファンを動作させると、排気口44に吸引力が作用し、鉛直バッフル板20Fの下半部に設けられたスリット状の開口28およびチャネル材24R,24Lの前側のコーナー部に設けられたスリット状の開口33、鉛直バッフル板20Fの下端縁と作業面50(作業台の上面)との間の隙間30Fを介して排気流路40(空気流路41)内に空気が引き込まれる。上記の開口28,32および隙間30Fが、開口面52(開口16Fのうちのサッシ18Fにより塞がれていない領域を意味する。以下同じ。)に対向する領域に概ね均等に分布しているため、フード本体10の外部の空気が、開口面52の全域にわたって概ね均一な風速(空気の流速)で、開口面を通過して、前側作業空間11F内に引き込まれる。このときの気流が、
図5中に矢印で示されている。
【0039】
また、前側のスラントバッフル板22Fのスリット状の開口38F、および前側のスラントバッフル板22Fと前側の鉛直バッフル板20Fとの間に形成されるスリット状の開口35Fからも排気流路40(空気流路42)内に空気が引き込まれる。この空気の流れにより作業空間11Fの上部領域に空気およびガスが滞留することを防止することができる。また、スラントバッフル板22Fの下面は前側にゆくに従って高くなるように傾斜しているため、開口38Fと開口35Fとの間で空気が滞留することをより一層防止することができる。
【0040】
なおこのとき、後側の作業空間11Bからも排気流路40内に空気が引き込まれるが、後側のサッシ18Bが開口16Bの全体を閉塞しているため、流量はわずかである。
【0041】
比較例として、鉛直バッフル板20F,20B、スラントバッフル板22F,22Bを取り除いた場合におけるフード本体10内の空気の流れを
図6中において矢印で示した。なお、
図6に示された構成は、従来の両面型卓上フードの構成と実質的に同じである。この場合、空気は開口面52を通過した後に直ちに排気口44に向けて流れるため、開口面52の上部の風速が高くなり、開口面の下部の風速が低くなる傾向にある。
図6の場合、開口面52の下部においても十分な風速を実現するためには、
図5の場合と比較して排気ファンの回転数を増大させる必要がある。サッシ18Fの位置をいくらか下げることによっても開口面52の下部において十分な風速を実現することが可能となるが、作業性が低下する。
【0042】
上記実施形態によれば、開口面の風速分布を均一化することができ、制御風速対応を容易に行うことができる。このため、制御風速要求を満足するために排気ファンを回転数をいたずらに増大させる必要がなくなり、ランニングコストを低減することができる。また、実験室内の空調効率の劣化を防止することができる。
【0043】
また、上記実施形態によれば、少なくとも前鉛直バッフル板20Fおよび前鉛直バッフル板20Bの上半部が透明であるため、フード本体10の一方の側から他方の側のサッシの開閉状況を容易に把握することができる。このため卓上フード1の誤使用を防止することができる。
【0044】
両面式の卓上フード1は、実験室の中央に設けられた実験台上に搭載された状態で運用される。上記実施形態によれば、バッフル板20F,20Rの少なくとも上半部が透明であるため(勿論、前側、後側、右側および左側の外パネル14も透明であるため)、卓上フード1を実験室内に設置することにより実験室を狭く感じさせることも無い。つまり、卓上フード1の意匠性が優れたものとなる。なお、バッフル板20F,20Rの全体が透明とすると、卓上フード1の意匠性がより優れたものとなる。
【0045】
上記実施形態によれば、鉛直バッフル板20F、鉛直バッフル板20B、スラントバッフル板22Fおよびスラントバッフル板22Bは、フード本体10のフレーム12に対してネジ止めされているため、フレーム12から容易に取り外すことができる。このため、制御風速対応を必要としない場合、広大な作業空間が必要な場合には、通常の両面型卓上フードとして使用することができる。また、バッフル板20F,20R,22F,22Bが容易に取り外し可能であるため、これらのバッフル板20F,20R,22F,22Bおよびフード本体10内の清掃を容易に行うことができる。また、上記実施形態によれば、排気流路40が複数の部品、つまり、鉛直バッフル板20F,20Bおよびスラントバッフル板22F,22B(およびチャネル材24R,24L)から構成されているため、排気流路40がまとまった1つまたは2つ程度の大型部品から構成されている場合に比較して、着脱が容易である。さらに鉛直バッフル板20F,20Bの各々が上半部と下半部とに分割される場合には、より取り扱いが容易になる。
【0046】
また、鉛直バッフル板20F,20Bをチャネル材24R,24Lを介してフード本体10のフレーム12に取り付けているので、鉛直バッフル板20F,20Bを直接フレーム12に取り付ける場合と比較して、取り付け作業が容易となる。
【0047】
なお、上記実施形態ではチャネル材24R,24Lのコーナー部にスリット状の開口33を設けており、そうすることがより好ましいのであるが、この開口33は省略することも可能である。また、スラントバッフル板22F,22Bの構成は図示されたものに限定されるものではなく、少なくとも部分的に形状を変更してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 卓上フード
10 フード本体
12 フレーム
14 外パネル
18F,18B 開閉扉(サッシ)
20F,20B バッフル板(鉛直バッフル板)
20FU バッフル板の上半部
20FD バッフル板の下半部
24R,24L 取付部材(チャネル材)
33 チャネル材のスリット
44 排気口