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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】バランサー及び成形装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/06 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
B30B15/06 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020198289
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086341
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田幡 諭史
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第2785409(JP,B2)
【文献】特開2019-072753(JP,A)
【文献】実開平03-120997(JP,U)
【文献】特開2007-190572(JP,A)
【文献】特開2005-028394(JP,A)
【文献】特開2008-105045(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0025475(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0022679(US,A1)
【文献】特開2004-273741(JP,A)
【文献】実開平3-120997(JP,U)
【文献】実公平6-44558(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対となる金型を離合させるストローク方向に往復動作を行うスライドの移動に抗する圧力を付与するバランサーであって、
シリンダと、
前記シリンダ内で前記ストローク方向に移動可能に格納されたピストンと、
前記シリンダ内における、前記ピストンの前記ストローク方向の少なくとも一方の領域に充填され、前記領域に対して流出入可能とする作動流体と、
当該作動流体を前記領域に供給する圧力供給装置とを有し、
前記シリンダは、前記作動流体を作動油とする油圧シリンダであり、
前記圧力供給装置は、
前記シリンダに対して供給圧力を付与しつつ前記作動流体を給排する第1給排部及び第2給排部を備えると共に少なくとも前記第1給排部をアキュムレーターとし、
前記スライドの往復動作において、前記対となる金型が離隔する第1位置を含む第1可動範囲よりも、前記対となる金型が合わさる第2位置を含む第2可動範囲で、前記第2位置側への移動に抗する圧力が大きくなるように、
前記第1可動範囲で、前記第1給排部及び前記第2給排部の両方から前記作動流体を供給し、
前記第2可動範囲で、前記第1給排部のみから前記作動流体を供給するバランサー。
【請求項2】
前記第2位置は、前記スライドにおける死点である請求項1記載のバランサー。
【請求項3】
前記第2可動範囲の開始位置は、前記第2位置より手前の、前記スライドのストローク幅の2分の1の範囲内とする請求項1又は2に記載のバランサー。
【請求項4】
前記第2可動範囲の開始位置と終了位置とが前記ストローク方向について同じ位置となる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバランサー。
【請求項5】
前記対となる金型を離合させるストローク方向に往復動作を行う前記スライドと、
前記スライドの移動に抗する圧力を付与する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバランサーと、
を備える成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランサー及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成形装置としてのプレス装置は、第1金型を往復させるスライドと、第2金型を固定保持するボルスタと、偏心部を有するエキセン軸と、エキセン軸の回転駆動を行う駆動機構と、エキセン軸の偏心部に一端部が連結されるコネクティングロッドと、コネクティングロッドの他端部をスライドに揺動可能に連結する連結ピンとを備えている。
そして、駆動機構がエキセン軸の回転駆動を行うと、エキセン軸の偏心部に連結されたコネクティングロッドは、他端部側の連結ピンを揺動支軸として一端部が周回運動を行う。その結果、コネクティングロッドの一端部側の周回運動における往復動作方向の変位が他端部側に伝達され、スライドが往復動作を行う。この往復動作における一方の死点位置において、第1金型が第2金型内の被成形物を加圧し、プレス加工を行っている。
【0003】
成形装置は、上記プレス装置等のように、スライドに往復動作を伝える各部材間の隙間を生じうる。このため、部材間の隙間が、スライドの移動によって隙間による部材間での衝突を生じて騒音や衝撃が発生するおそれがあった。
これを回避するために、スライドに対して一方への圧力を付与する液圧又は空圧のシリンダ装置を有するバランサーを搭載する成形装置が知られている。バランサーは、シリンダによりスライドに一方への支持圧力を付与することで、部材を片方に寄せて隙間を解消し、部材間での衝突による騒音や衝撃を抑制していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4343799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の成形装置は、バランサーによる支持圧力が負担となり、エネルギーロスを生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、エネルギーロスを低減して高効率で成形を行うためのバランサー、及び成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るバランサーは、
対となる金型を離合させるストローク方向に往復動作を行うスライドの移動に抗する圧力を付与するバランサーであって、
シリンダと、
前記シリンダ内で前記ストローク方向に移動可能に格納されたピストンと、
前記シリンダ内における、前記ピストンの前記ストローク方向の少なくとも一方の領域に充填され、前記領域に対して流出入可能とする作動流体と、
当該作動流体を前記領域に供給する圧力供給装置とを有し、
前記シリンダは、前記作動流体を作動油とする油圧シリンダであり、
前記圧力供給装置は、
前記シリンダに対して供給圧力を付与しつつ前記作動流体を給排する第1給排部及び第2給排部を備えると共に少なくとも前記第1給排部をアキュムレーターとし、
前記スライドの往復動作において、前記対となる金型が離隔する第1位置を含む第1可動範囲よりも、前記対となる金型が合わさる第2位置を含む第2可動範囲で、前記第2位置側への移動に抗する圧力が大きくなるように、
前記第1可動範囲で、前記第1給排部及び前記第2給排部の両方から前記作動流体を供給し、
前記第2可動範囲で、前記第1給排部のみから前記作動流体を供給するように構成される。
【0008】
また、本発明に係る成形装置は、
前記対となる金型を離合させるストローク方向に往復動作を行う前記スライドと、
前記スライドの移動に抗する圧力を付与する、上記のバランサーとを備えるように構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エネルギーロスを低減して高効率で成形を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るプレス装置の装置本体を示す図である。
図2】プレス装置の概略制御構成を示すブロック図である。
図3】バランサーの第一構成例を示す概略構成図である。
図4】プレス成形時のスライドの1ストロークにおけるストローク方向の位置の経時的な変化を示す線図である。
図5】バランサーの第二構成例を示す概略構成図である。
図6】バランサーの第三構成例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[成形装置の構成]
図1は本実施形態に係る成形装置としてのプレス装置1の装置本体100を示す図である。
この図に示すように、プレス装置1は、鍛造成形を行う鍛造プレス装置であり、装置本体100を備える。装置本体100は、ベッド23、複数のアップライト22、クラウン21、ボルスタ24、スライド18、駆動部10、位置検出部としての移動量計測器35、バランサー60(図2参照)を備える。
【0013】
ベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、プレス装置1のフレーム部を構成する。これらベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、その内部にタイロッド25aが挿入され、タイロッドナット25bにより締め付けられることで、互いに締結される。
【0014】
ボルスタ24は、ベッド23上に固定され、その上部には複数の下金型32が固定される。
スライド18は、アップライト22に設けられたガイド19により、上下方向をストローク方向として往復動作可能に支持される。スライド18の下部には下金型32と同数の上金型31が固定される。金型としての複数の上金型31と金型としての複数の下金型32とは、互いに対応して組をなすととともに、それぞれ図示左右方向に沿って配列されており、それぞれ組をなすものと上下に対向している。スライド18が上昇することで、上金型31及び下金型32が離隔し、スライド18が下降することで、上金型31及び下金型32が合わさってこれらの間で被成形物が鍛造成形される。上記スライド18において、最も上昇した位置を上死点(第1位置)とし、最も下降した位置を下死点(第2位置)とする。
なお、スライド18のストローク方向は上下方向に限定されないが、本実施形態では、ストローク方向が上下方向である場合を例示する。
【0015】
上金型31と下金型32の近傍には搬送部としてのトランスファー装置(図示略)が設けられている。このトランスファー装置は、上金型31と下金型32とが離間したときに、一列に配列された複数組の上金型31と下金型32に対して、被成形物を順次搬送する。
【0016】
駆動部10は、スライド18を進退させるための構成であり、モータ11、フライホイール12、クラッチ13、ブレーキ14、エキセン軸16及びコネクティングロッド(コンロッド)17を備えて構成される。
モータ11は、ベルト11aを介してフライホイール12に連結され、その動力によりフライホイール12を回転させる。このモータ11は、回転速度を制御することは可能だが、いわゆるサーボモータのように軸角度を任意の位置で制止させる位置決め機能等は有していない。但し、モータ11にサーボモータを適用してもよい。その場合には、フライホイール12、クラッチ13、ブレーキ14を不要とすることができる。
【0017】
クラッチ13は、フライホイール12とエキセン軸16との連結及び連結解除の切り替えを行う。ブレーキ14は、エキセン軸16の制動を行う。クラッチ13によりフライホイール12とエキセン軸16が連結されると、フライホイール12の回転運動がエキセン軸16に伝達された後に、コンロッド17を介してスライド18の直進運動に変換されて、スライド18が上下方向に進退する。なお、エキセン軸16は、スライド18の駆動軸に相当する。
【0018】
移動量計測器35は、スライド18の上下方向への往復動作の軌跡中のいずれに位置するか(以下、「スライド位置」という。)を検出するためのものである。移動量計測器35は、例えば、エキセン軸16の回転角度を検出するエンコーダ等の検出器により構成される。
また、例えば、フレーム部に設けられて、スライド18の移動量を計測する構成としても良い。その場合、移動量計測器35としては、スライド18側に設けられたラックと、アップライト22又はガイド19側に設けられたピニオンと、当該ピニオンの回転量を検出するエンコーダ等の検出器とから構成しても良いし、スライド18の上下方向の位置変位を検出するリニアセンサ、スライド18の上下方向の位置を光学的な測距によって検出するレーザ検出器等、直線方向の位置検出が可能ないずれの検出器から構成しても良い。
【0019】
[バランサー]
バランサー60は、スライド18のストローク方向(上下方向)の移動に対して所定の圧力を付与するために、油圧シリンダ61,62とエアシリンダ63のいずれか一方又は両方を備えている。
油圧シリンダ61,62は、ベッド23に固定支持されたシリンダと、シリンダ内でストローク方向(上下方向)に移動可能に格納されたピストンとを備え、シリンダ内におけるピストンの少なくとも下側領域に作動流体としての作動油が供給される。
油圧シリンダ61,62は、ピストンに連結されたピストンロッドが上方に延出され、その上端部がスライド18の図示左右両側に突出した取付ボスの下側に個別に連結されている。油圧シリンダ61,62のピストンロッドは、スライド18とストローク方向が一致しており、スライド18を下方から支えるように、スライド18の下降移動に抗する支持圧力を付与することができる。
なお、油圧シリンダ61,62は、スライド18に対して二つ設ける場合を例示しているが、その個体数は増減可能である。
【0020】
エアシリンダ63は、クラウン21の上部に固定支持されたシリンダと、シリンダ内でストローク方向(上下方向)に移動可能に格納されたピストンとを備え、シリンダ内におけるピストンの少なくとも下側領域に作動流体としてのエアーが供給される。
エアシリンダ63は、ピストンに連結されたピストンロッドが下方に延出され、その下端部がスライド18の上端部に連結されている。エアシリンダ63のピストンロッドは、スライド18とストローク方向が一致しており、スライド18を上方から支えるように、スライド18の下降移動に抗する支持圧力を付与することができる。
なお、本実施形態では、エアシリンダ63がスライド18に対して前後に並んで二つ設けられた場合を例示するが(図1では一つのみ図示)、エアシリンダ63の数は増減させてもよい。
【0021】
[プレス装置の概略制御構成]
図2はプレス装置1の概略制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、プレス装置1は、装置本体100の動作を制御する制御装置50を備える。
制御装置50は、入力部51、表示部54、記憶部52、制御部53を備える。
入力部51は、キーボードやマウス等のプレス装置1の使用者による入力インターフェイスである。この入力部51から、装置本体100の動作制御に関する設定等を行うことができる。
表示部54は、ディスプレイを備えており、当該ディスプレイに各種情報を表示する。
記憶部52は、装置本体100の動作制御を行うための制御プログラム55や設定データを記憶するとともに、作業領域としても機能するメモリである。制御プログラム55は制御部53により実行される。
制御部53は、制御プログラム55に基づいてプレス装置1の各部の制御を行う。
本実施形態では、主に、制御部53がバランサー60について行う制御について説明する。バランサー60の制御については後述する。
【0022】
[バランサーの第一構成例]
図3はバランサー60の第一構成例を示す概略構成図である。
この第一の構成例によるバランサー60は、上記油圧シリンダ61,62を有し、エアシリンダ63を有さない構成である。
このバランサー60は、第1アキュムレーター64(第1給排部)、第2アキュムレーター65(第2給排部)、第1切替弁66、第2切替弁67、油圧供給源68、逆止弁69,70を有する油圧回路からなる圧力供給装置60aを備えている。
油圧供給源68は、作動油の貯留部と油圧ポンプなどで構成される。
【0023】
第1アキュムレーター64と第2アキュムレーター65は、いずれも二つの油圧シリンダ61,62に対して供給圧力を付与しつつ作動油を給排することが可能である。即ち、各アキュムレーター64,65は、内部に作動油を蓄積することが可能であって、作動油に対して常に排出圧力を付与する。この排出圧力が各油圧シリンダ61,62に対する供給圧力となる。この供給圧力は、作動油の蓄積量の増加に伴い上昇する。
【0024】
第1アキュムレーター64と第2アキュムレーター65のそれぞれの作動油の給排容量は、互いに等しくなるように設定しても、異なるように設定しても良い。
一方のアキュムレーターの作動油の給排容量を他方のアキュムレーターより小さく設定した場合には、給排容量の小さいアキュムレーター内への作動油の蓄積量の増加に対する供給圧力の上昇率を、給排容量の大きなアキュムレーターよりも大きくすることができる。その場合、スライド18に対して、その下降時に各シリンダ61,62がより大きな支持圧力を付与することができる。
【0025】
なお、第1アキュムレーター64と第2アキュムレーター65のいずれか一方の作動油の給排容量が他方よりも小さい場合に適した制御(以下では、第2アキュムレーター65の作動油の給排容量が第1アキュムレーター64より小さい場合を例示する)と、第1アキュムレーター64と第2アキュムレーター65の給排容量の大小関係を問わずに実施可能な制御の二種類の制御があり、これらの制御については後述する。
【0026】
第1アキュムレーター64は、逆止弁69を介して油圧供給源68に接続され、油圧供給源68側への作動油の逆流が防止されている。
また、第1アキュムレーター64は、第1切替弁66を介して各油圧シリンダ61,62に接続され、各油圧シリンダ61,62への接続状態と切断状態とを切り替えることができる。
【0027】
第2アキュムレーター65は、逆止弁70を介して油圧供給源68に接続され、油圧供給源68側への作動油の逆流が防止されている。
また、第2アキュムレーター65は、第2切替弁67を介して各油圧シリンダ61,62に接続され、各油圧シリンダ61,62への接続状態と切断状態とを切り替えることができる。
【0028】
[プレス成形時のバランサーの第一構成例に対する動作制御]
制御装置50の制御部53が行うバランサー60に対するプレス成形時の動作制御について説明する。
図4はプレス成形時のスライド18の1ストロークにおけるストローク方向の位置の経時的な変化を示す線図であり、縦軸が位置、横軸が時間を示している。また、下記の表1は、前述した第2アキュムレーター65の作動油の給排容量が第1アキュムレーター64よりも小さい場合に適した制御であり、表2は前述した第2アキュムレーター65と第1アキュムレーター64の給排容量の大小関係を問わずに実施可能な制御を示す。なお、表2の制御については、第2アキュムレーター65と第1アキュムレーター64の給排容量とが等しい場合を例示する。
なお、各表1,2(後述する表5も含む)において、「電磁弁A」は第1切替弁66、「電磁弁B」は第2切替弁67、「アキュムレーターP1」は第1アキュムレーター64、「アキュムレーターP2」は第2アキュムレーター65を示す。また、第1切替弁66と第2切替弁67は、常開式の電磁弁であり、「OFF」で開状態となり、「ON」で閉状態となる。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
制御部53は、図4に示すように、移動量計測器35の出力からスライド18の位置を取得する。スライド18は、プレス成形時において、上死点[1]から動作を開始し、下死点手前位置[2]、下死点[3]、下死点通過位置[4]を通過して再び上死点[5]に戻るまでが1ストローク分の動作となる。プレス成形動作は、1ストロークごとに停止させてもよい。
下死点手前位置[2]と下死点通過位置[4]とは、ストローク方向について同じ位置であることが好ましいが、同じ位置とすることは必須ではない。例えば、下死点通過位置[4]は、ストローク方向について下死点手前位置[2]よりも下死点[3]に近い位置としても良い。
また、下死点手前位置[2]は、少なくとも、下死点[3]より手前(上流側)のスライド18のストローク幅の2分の1の範囲内に設定され、より下死点[3]に近い位置としても良い。但し、下死点[3]の手前であって、下降する上金型31が下金型32内の被成形物に接する位置より手前とすることが好ましい。
【0032】
まず、表1の第2アキュムレーター65の給排容量が第1アキュムレーター64よりも小さい場合に適した制御について説明する。
第1アキュムレーター64は、初期の供給圧力が、各油圧シリンダ61,62の協働により、スライド18の重量(厳密には、スライド18に連結され、スライド18と共に上下動を行う他の部材との合計重量)を支えることが可能な最低限の圧力程度に設定されている。これにより、第1アキュムレーター64は、各油圧シリンダ61,62を通じてスライド18の自重を支える上向きの圧力を付与しつつ、スライド18の下降により緩やかに支持圧力を高めながら、スライド18と他の部材との隙間を低減、抑制することができる。
【0033】
第2アキュムレーター65は、初期の供給圧力が第1アキュムレーター64と同程度又はより高い圧力(例えば、スライド18が下死点手前位置[4]にあるときの第1アキュムレーター64の供給圧力等)に設定されている。第2アキュムレーター65は、給排容量が小さいので、各油圧シリンダ61,62を通じてスライド18の自重を支える上向きの圧力を付与しつつ、スライド18の下降により速やかに支持圧力が上昇し、スライド18の自重を支える圧力よりも十分に大きな圧力をスライド18に付与して、上金型31、下金型32、被成形物に生じる衝撃を緩和低減することができる。また、スライド18のストローク動作の高速化やストロークが大きくなった場合でも、慣性によって生じるスライド18と他の部材との隙間を低減、抑制することができる。
【0034】
制御部53は、プレス成形時において、スライド18が上死点[1]から開始される場合に、第1切替弁66を「OFF(開)」、第2切替弁67を「ON(閉)」とする。これにより、給排容量が大きい第1アキュムレーター64が油圧シリンダ61,62に接続される回路P1が構成され、給排容量が小さい第2アキュムレーター65は油圧シリンダ61,62に対して切断される。
【0035】
そして、スライド18が下死点手前位置[2]に到達すると、第1切替弁66を「ON(閉)」、第2切替弁67を「OFF(開)」とする。これにより、給排容量が大きい第1アキュムレーター64は油圧シリンダ61,62に対して切断され、給排容量が小さい第2アキュムレーター65が油圧シリンダ61,62に接続される回路P2が構成される。
また、スライド18が下死点[3]を通過する際にも上記接続状態が維持される。
【0036】
そして、スライド18が下死点通過位置[4]に到達すると、第1切替弁66を「OFF(開)」、第2切替弁67を「ON(閉)」とする。これにより、再び、給排容量が大きい第1アキュムレーター64が油圧シリンダ61,62に接続される回路P1が構成され、給排容量が小さい第2アキュムレーター65は油圧シリンダ61,62に対して切断される。
また、スライド18が上死点[5]に到達した場合も上記接続状態が維持される。
【0037】
上記制御では、スライド18が、下死点[3]を含む下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で給排容量が小さい第2アキュムレーター65が油圧シリンダ61,62に接続され、それ以外の範囲(第1可動範囲)では給排容量が大きい第1アキュムレーター64が油圧シリンダ61,62に接続される。
従って、プレス成形開始時の上死点[1]から下死点手前位置[2]までの範囲(第1可動範囲)で、第1アキュムレーター64による小さい供給圧力でスライド18を支えて他の部材との隙間を低減する。さらに、下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で、第2アキュムレーター65による大きな供給圧力でスライド18を支える。このため、スライド18のストローク動作がより高速な場合やストロークが大きな場合でも、スライド18を十分に支えることができ、スライド18と他の部材との隙間を低減することができる。従って、上金型31と下金型32と間の衝撃を効果的に低減することができる。
【0038】
次に、表2の第2アキュムレーター65と第1アキュムレーター64の給排容量の大小関係を問わずに実施可能な制御について説明する。
第1アキュムレーター64と第2アキュムレーター65は、これら二つが同時に油圧シリンダ61,62に接続された状態で、各油圧シリンダ61,62の協働により、スライド18の重量を支えることが可能な最低限の圧力程度に初期の供給圧力が設定されている。
【0039】
制御部53は、プレス成形時において、スライド18が上死点[1]から動作を開始される場合に、第1切替弁66及び第2切替弁67を「OFF(開)」とする。これにより、第1アキュムレーター64と第2アキュムレーター65の両方が油圧シリンダ61,62に接続される回路P1,P2が構成される。
【0040】
そして、スライド18が下死点手前位置[2]に到達すると、第1切替弁66を「ON(閉)」、第2切替弁67を「OFF(開)」とする。これにより、第1アキュムレーター64は油圧シリンダ61,62に対して切断され、第2アキュムレーター65のみが油圧シリンダ61,62に接続される回路P2が構成される。
また、スライド18が下死点[3]を通過する際にも上記接続状態が維持される。
【0041】
そして、スライド18が下死点通過位置[4]に到達すると、第1切替弁66及び第2切替弁67を「OFF(開)」とする。これにより、再び、第1アキュムレーター64と第2アキュムレーター65の両方が油圧シリンダ61,62に接続される回路P1,P2が構成される。
また、スライド18が上死点[5]に到達した場合も上記接続状態が維持される。
【0042】
上記制御では、スライド18が、下死点[3]を含む下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で第2アキュムレーター65のみが油圧シリンダ61,62に接続され、それ以外の範囲(第1可動範囲)では第1アキュムレーター64と第2アキュムレーター65の両方が油圧シリンダ61,62に接続される。
従って、プレス成形開始時の上死点[1]から下死点手前位置[2]までの範囲(第1可動範囲)では、第1アキュムレーター64と第2アキュムレーター65の合計の給排容量で作動油が蓄積されるので、初期の供給圧力から緩やかに上昇して、小さい供給圧力のままスライド18を支えて他の部材との隙間を低減する。
一方、下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で、第2アキュムレーター65のみの給排容量で作動油が蓄積されるので、供給圧力が速やかに上昇し、より大きな供給圧力でスライド18を支える。このため、スライド18のストローク動作がより高速な場合やストロークが大きな場合でも、スライド18を十分に支えることができ、スライド18と他の部材との隙間を低減することができる。従って、上金型31と下金型32と間の衝撃を効果的に低減することができる。
【0043】
なお、表2に示す制御は、第1アキュムレーター64の給排容量と第2アキュムレーター65の給排容量とが等しい場合を例示したが、これらの給排容量は一致してなくともよい。即ち、上死点[1]から下死点手前位置[2]までの範囲(第1可動範囲)に比べて、下死点[3]を含む下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)の各油圧シリンダ61,62に対する作動油の給排容量が小さくなればよい。
また、下死点[3]を含む下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で、第1アキュムレーター64のみが油圧シリンダ61,62に接続されるように制御しても良い。
【0044】
[バランサーの第二構成例]
図5はバランサー60の第二構成例を示す概略構成図である。
この第二の構成例によるバランサー60は、油圧シリンダ61,62を有さず、エアシリンダ63を有する構成である。
このバランサー60は、第1空気タンク71(第1給排部)、第2空気タンク72(第2給排部)、第1切替弁73、第2切替弁74、空圧供給源75、逆止弁76,77を有する空圧回路からなる圧力供給装置60bを備えている。なお、エアシリンダ63は、実際には二つ設けられているが、これらは、並列状態で二つとも同じ状態で空圧回路に接続されている。
空圧供給源75は、エアーコンプレッサ、エアーの貯留部などで構成される。
【0045】
第1空気タンク71と第2空気タンク72は、いずれもエアシリンダ63に対して供給圧力を付与しつつエアーを給排することが可能である。即ち、各空気タンク71,72は、内部にエアーを蓄積することが可能であって、エアーに対して常に排出圧力を付与する。この排出圧力がエアシリンダ63に対する供給圧力となる。この供給圧力は、エアーの蓄積量の増加に伴い上昇する。
【0046】
第1空気タンク71と第2空気タンク72のそれぞれのエアーの給排容量は、互いに等しくなるように設定しても、異なるように設定しても良い。
一方の空気タンクのエアーの給排容量を他方の空気タンクより小さく設定した場合には、小さい給排容量の空気タンク内へのエアーの蓄積量に対する供給圧力の上昇率を、給排容量の大きな空気タンクよりも大きくすることができる。その場合、スライド18に対して、その下降時にエアシリンダ63がより大きな支持圧力を付与することができる。
【0047】
なお、第1アキュムレーター64と第2アキュムレーター65のいずれか一方の作動油の給排容量が他方よりも小さい場合に適した制御(以下では、第2アキュムレーター65の作動油の給排容量が第1アキュムレーター64より小さい場合を例示する)と、第1空気タンク71と第2空気タンク72の給排容量の大小関係を問わずに実施可能な制御とで異なる制御が行われる。これらの制御については後述する。
【0048】
第1空気タンク71は、逆止弁76を介して空圧供給源75に接続され、空圧供給源75側へのエアーの逆流が防止されている。
また、第1空気タンク71は、第1切替弁73を介して、エアシリンダ63に接続され、エアシリンダ63への接続状態と切断状態とを切り替えることができる。
【0049】
第2空気タンク72は、逆止弁77を介して空圧供給源75に接続され、空圧供給源75側へのエアーの逆流が防止されている。
また、第2空気タンク72は、第2切替弁74を介して、エアシリンダ63に接続され、エアシリンダ63への接続状態と切断状態とを切り替えることができる。
【0050】
[プレス成形時のバランサーの第二構成例に対する動作制御]
制御装置50の制御部53が行うバランサー60に対するプレス成形時の動作制御について前述した図4及び下記の表3及び表4を参照して説明する。
下記の表3は、前述した第2空気タンク72の給排容量が第1空気タンク71よりも小さい場合に適した制御であり、表4は前述した第2空気タンク72と第1空気タンク71の給排容量の大小関係を問わずに実施可能な制御を示す。
なお、各表3,4において、「電磁弁A」は第1切替弁73、「電磁弁B」は第2切替弁74、「空気タンクP1」は第1空気タンク71、「空気タンクP2」は第2空気タンク72を示す。また、第1切替弁73と第2切替弁74は、常開式の電磁弁であり、「OFF」で開状態となり、「ON」で閉状態となる。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
まず、表3の第2空気タンク72の給排容量が第1空気タンク71よりも小さい場合に適した制御について説明する。
第1空気タンク71は、初期の供給圧力が、エアシリンダ63により、スライド18の重量(厳密には、スライド18に連結され、スライド18と共に上下動を行う他の部材との合計重量)を支えることが可能な最低限の圧力程度に設定されている。これにより、第1空気タンク71は、エアシリンダ63を通じてスライド18の自重を支える上向きの圧力を付与しつつ、スライド18の下降により緩やかに支持圧力を高めながら、スライド18と他の部材との隙間を低減、抑制することができる。
【0054】
第2空気タンク72は、初期の供給圧力が第1空気タンク71と同程度又はより高い圧力(例えば、スライド18が下死点手前位置[4]にあるときの第1空気タンク71の供給圧力等)に設定されている。これにより、第2空気タンク72は、給排容量が小さいので、エアシリンダ63を通じてスライド18の自重を支える上向きの圧力を付与しつつ、スライド18の下降により速やかに支持圧力が上昇し、スライド18の自重を支える圧力よりも十分に大きな圧力をスライド18に付与して、上金型31、下金型32、被成形物に生じる衝撃を緩和低減することができる。また、スライド18のストローク動作の高速化やストロークが大きくなった場合でも、慣性によって生じるスライド18と他の部材との隙間を低減、抑制することができる。
【0055】
制御部53は、プレス成形時において、スライド18が上死点[1]から開始される場合に、第1切替弁73を「OFF(開)」、第2切替弁74を「ON(閉)」とする。これにより、給排容量が大きい第1空気タンク71がエアシリンダ63に接続される回路P1が構成され、給排容量が小さい第2空気タンク72はエアシリンダ63に対して切断される。
【0056】
そして、スライド18が下死点手前位置[2]に到達すると、第1切替弁73を「ON(閉)」、第2切替弁74を「OFF(開)」とする。これにより、給排容量が大きい第1空気タンク71はエアシリンダ63に対して切断され、給排容量が小さい第2空気タンク72がエアシリンダ63に接続される回路P2が構成される。
また、スライド18が下死点[3]を通過する際にも上記接続状態が維持される。
【0057】
そして、スライド18が下死点通過位置[4]に到達すると、第1切替弁73を「OFF(開)」、第2切替弁74を「ON(閉)」とする。これにより、再び、給排容量が大きい第1空気タンク71がエアシリンダ63に接続される回路P1が構成され、給排容量が小さい第2空気タンク72はエアシリンダ63に対して切断される。
また、スライド18が上死点[5]に到達した場合も上記接続状態が維持される。
【0058】
上記制御では、スライド18が、下死点[3]を含む下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で給排容量が小さい第2空気タンク72がエアシリンダ63に接続され、それ以外の範囲(第1可動範囲)では給排容量が大きい第1空気タンク71がエアシリンダ63に接続される。
従って、プレス成形開始時の上死点[1]から下死点手前位置[2]までの範囲(第1可動範囲)で、第1空気タンク71による小さい供給圧力でスライド18を支えて他の部材との隙間を低減する。さらに、下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で、第2空気タンク72による大きな供給圧力でスライド18を支える。このため、スライド18のストローク動作がより高速な場合やストロークが大きな場合でも、スライド18を十分に支えることができ、スライド18と他の部材との隙間を低減することができる。従って、上金型31と下金型32と間の衝撃を効果的に低減することができる。
【0059】
次に、表4の第1空気タンク71と第2空気タンク72の給排容量の大小関係を問わずに実施可能な制御について説明する。
第1空気タンク71と第2空気タンク72は、これら二つが同時にエアシリンダ63に接続された状態で、エアシリンダ63により、スライド18の重量を支えることが可能な最低限の圧力程度に初期の供給圧力が設定されている。
【0060】
制御部53は、プレス成形時において、スライド18が上死点[1]から開始される場合に、第1切替弁73及び第2切替弁74を「OFF(開)」とする。これにより、第1空気タンク71と第2空気タンク72の両方がエアシリンダ63に接続される回路P1,P2が構成される。
【0061】
そして、スライド18が下死点手前位置[2]に到達すると、第1切替弁73を「ON(閉)」、第2切替弁74を「OFF(開)」とする。これにより、第1空気タンク71はエアシリンダ63に対して切断され、第2空気タンク72のみがエアシリンダ63に接続される回路P2が構成される。
また、スライド18が下死点[3]を通過する際にも上記接続状態が維持される。
【0062】
そして、スライド18が下死点通過位置[4]に到達すると、第1切替弁73及び第2切替弁74を「OFF(開)」とする。これにより、再び、第1空気タンク71と第2空気タンク72の両方がエアシリンダ63に接続される回路P1,P2が構成される。
また、スライド18が上死点[5]に到達した場合も上記接続状態が維持される。
【0063】
上記制御では、スライド18が、下死点[3]を含む下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で第2空気タンク72がエアシリンダ63に接続され、それ以外の範囲(第1可動範囲)では第1空気タンク71と第2空気タンク72の両方がエアシリンダ63に接続される。
従って、プレス成形開始時の上死点[1]から下死点手前位置[2]までの範囲(第1可動範囲)では、第1空気タンク71と第2空気タンク72の合計の給排容量でエアーが蓄積されるので、初期の供給圧力から緩やかに上昇して、小さい供給圧力のままスライド18を支えて他の部材との隙間を低減する。
さらに、下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で、第2空気タンク72のみの給排容量でエアーが蓄積されるので、供給圧力が速やかに上昇し、より大きな供給圧力でスライド18を支える。このため、スライド18のストローク動作がより高速な場合やストロークが大きな場合でも、スライド18を十分に支えることができ、スライド18と他の部材との隙間を低減することができる。従って、上金型31と下金型32と間の衝撃を効果的に低減することができる。
【0064】
なお、表4に示す制御は、第1空気タンク71の給排容量と第2空気タンク72の給排容量とが等しい場合を例示したが、これらの給排容量は一致してなくともよい。即ち、上死点[1]から下死点手前位置[2]までの範囲(第1可動範囲)に比べて、下死点[3]を含む下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)のエアシリンダ63に対するエアーの給排容量が小さくなればよい。
また、下死点[3]を含む下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で、第1空気タンク71のみがエアシリンダ63に接続されるように制御しても良い。
【0065】
[バランサーの第三構成例]
図6はバランサー60の第三構成例を示す概略構成図である。
この第三の構成例によるバランサー60は、油圧シリンダ61,62とエアシリンダ63とを有する構成である。
このバランサー60は、遊行降下用油タンク78、アキュムレーター79(第1給排部)、第1切替弁80、第2切替弁81、油圧供給源85、逆止弁84を有する油圧回路と、空気タンク82(第2給排部)、空圧供給源83、逆止弁86を有する空圧回路とからなる圧力供給装置60cを備えている。
油圧供給源85は、作動油の貯留部と油圧ポンプなどで構成される。
空圧供給源83は、エアーコンプレッサ、エアーの貯留部などで構成される。
【0066】
遊行降下用油タンク78は、大気に解放された作動油のタンクであり、二つの油圧シリンダ61,62に対してほぼ無負荷(大気圧)で作動油を給排することが可能である。
アキュムレーター79は、二つの油圧シリンダ61,62に対して供給圧力を付与しつつ作動油を給排することが可能である。即ち、アキュムレーター79は、内部に作動油を貯留することが可能であって、作動油に対して常に排出圧力を付与する。この排出圧力が各油圧シリンダ61,62に対する供給圧力となる。
【0067】
遊行降下用油タンク78は、第1切替弁80を介して、各油圧シリンダ61,62に接続され、各油圧シリンダ61,62への接続状態と切断状態とを切り替えることができる。
アキュムレーター79は、逆止弁84を介して油圧供給源85に接続され、油圧供給源85側への作動油の逆流が防止されている。また、アキュムレーター79は、第2切替弁81を介して、各油圧シリンダ61,62に接続され、各油圧シリンダ61,62への接続状態と切断状態とを切り替えることができる。
【0068】
空気タンク82は、エアシリンダ63に対して供給圧力を付与しつつエアーを給排することが可能である。即ち、各空気タンク82は、内部にエアーを蓄積することが可能であって、エアーに対して常に排出圧力を付与する。この排出圧力がエアシリンダ63に対する供給圧力となる。
【0069】
空気タンク82は、逆止弁86を介して空圧供給源83に接続され、空圧供給源83側へのエアーの逆流が防止されている。
【0070】
[プレス成形時のバランサーの第三構成例に対する動作制御]
制御装置50の制御部53が行うバランサー60に対するプレス成形時の動作制御について前述した図4及び下記の表5を参照して説明する。
なお、表5において、「電磁弁A」は第1切替弁80、「電磁弁B」は第2切替弁81、「有効回路P1」は遊行降下用油タンク78を油圧シリンダ61,62に接続する回路、「有効回路P2」はアキュムレーター79を油圧シリンダ61,62に接続する回路を示す。また、第1切替弁80は、常開式の電磁弁であり、「OFF」で開状態となり、「ON」で閉状態となる。一方、第2切替弁81は、常閉式の電磁弁であり、「OFF」で閉状態となり、「ON」で開状態となる。
【0071】
【表5】
【0072】
空気タンク82は、初期の供給圧力が、エアシリンダ63により、スライド18の重量(厳密には、スライド18に連結され、スライド18と共に上下動を行う他の部材との合計重量)を支えることが可能な最低限の圧力程度に設定されている。これにより、空気タンク82は、エアシリンダ63を通じてスライド18の自重を支える上向きの圧力を付与しつつ、スライド18の下降により緩やかに支持圧力を高めながら、スライド18と他の部材との隙間を低減、抑制することができる。
【0073】
アキュムレーター79は、初期の供給圧力が第1空気タンク71と同程度又はより高い圧力に設定されている。これにより、アキュムレーター79は、油圧シリンダ61,62を通じてスライド18の自重を支えつつ、スライド18の下降により支持圧力が上昇し、スライド18に上向きの圧力を付与して、上金型31、下金型32、被成形物に生じる衝撃を緩和低減することができる。また、スライド18のストローク動作の高速化やストロークが大きくなった場合でも、慣性によって生じるスライド18と他の部材との隙間を低減、抑制することができる。
【0074】
制御部53は、プレス成形時において、スライド18が上死点[1]から開始される場合に、第1切替弁80を「OFF(開)」、第2切替弁81を「OFF(閉)」とする。
これにより、遊行降下用油タンク78が油圧シリンダ61,62に接続される回路P1が構成されて油圧シリンダ61,62からの作動油が遊行降下用油タンク78に戻される。また、アキュムレーター79は油圧シリンダ61,62に対して切断される。
【0075】
そして、スライド18が下死点手前位置[2]に到達すると、第1切替弁80を「ON(閉)」、第2切替弁81を「ON(開)」とする。これにより、遊行降下用油タンク78は油圧シリンダ61,62に対して切断され、アキュムレーター79が油圧シリンダ61,62に接続される回路P2が構成される。
また、スライド18が下死点[3]を通過する際にも上記接続状態が維持される。
【0076】
そして、スライド18が下死点通過位置[4]に到達すると、第1切替弁80を「OFF(開)」、第2切替弁81を「OFF(閉)」とする。これにより、再び、遊行降下用油タンク78が油圧シリンダ61,62に接続される回路P1が構成され、アキュムレーター79は油圧シリンダ61,62に対して切断される。
また、スライド18が上死点[5]に到達した場合も上記接続状態が維持される。
【0077】
一方、プレス成形時の動作全体を通じて、空気タンク82は、エアシリンダ63に接続されている。
【0078】
上記制御では、スライド18が、下死点[3]を含む下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)でアキュムレーター79が油圧シリンダ61,62に接続され、それ以外の範囲(第1可動範囲)では遊行降下用油タンク78が油圧シリンダ61,62に接続される。
また、空気タンク82は、エアシリンダ63に常時接続されている。
【0079】
従って、プレス成形開始時の上死点[1]から下死点手前位置[2]までの範囲(第1可動範囲)で、空気タンク82の供給圧力でスライド18を支えて他の部材との隙間を低減する。なお、遊行降下用油タンク78は、油圧シリンダ61,62に対してほぼ無負荷なので、スライド18に対する支持圧力は殆ど付与されない。
さらに、下死点手前位置[2]から下死点通過位置[4]までの範囲(第2可動範囲)で、空気タンク82の供給圧力にアキュムレーター79の供給圧力が加わってスライド18を支える。このため、スライド18のストローク動作がより高速な場合やストロークが大きな場合でも、スライド18を十分に支えることができ、スライド18と他の部材との隙間を低減することができる。従って、上金型31と下金型32と間の衝撃を効果的に低減することができる。
【0080】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、プレス装置1は、バランサー60が、油圧シリンダ61,62又はエアシリンダ63におけるスライド18を押し上げる下側領域に作動流体を供給する圧力供給装置60a,60b,60cを有する。さらに、当該圧力供給装置60a,60b,60cは、制御部53の制御の下、スライド18の往復動作において、第1可動範囲よりも第2可動範囲で下死点側への移動に抗する上方への圧力が大きくなるように作動流体を供給する。
これにより、プレス成形時のスライド18の1ストロークの動作において、第1可動範囲でのスライド18の上方への圧力を第2可動範囲よりも小さくすることができ、1ストローク全体でスライド18に一様な上方への圧力を付与する場合に比べて、プレス成形の駆動源であるモータ11のエネルギー効率の向上を図ることが可能となる。
【0081】
また、第2可動範囲では、第1可動範囲よりも上方への圧力が大きくなるように作動流体が供給されるので、スライド18のストローク動作の高速化やストロークの拡大化を図る場合であっても、スライド18を十分に支えることができ、上金型31と下金型32と間の衝撃を効果的に低減することが可能である。
【0082】
特に、プレス装置1では、スライド18のストローク方向が上下方向であって、上金型31と下金型32とが閉じられる第2位置が下死点となっている。
このようなプレス装置1は、下死点において、スライド18が慣性力の影響を受けやすくなるが、このような場合でも、スライド18を十分に支えることができ、上金型31と下金型32と間の衝撃を効果的に低減することが可能である。
【0083】
また、バランサー60は、第2可動範囲の開始位置となる下死点手前位置[2]を下死点より手前のスライド18のストローク幅の2分の1の範囲内としているので、スライド18に対する上方への圧力が大きくなる範囲が過大とならず、エネルギー効率を効果的に向上させることが可能となる。
【0084】
また、バランサー60の圧力供給装置60aは、油圧シリンダ61,62に対して供給圧力を付与して作動油を給排する第1アキュムレーター64及び第2アキュムレーター65を備え、第1可動範囲で、第1アキュムレーター64及び第2アキュムレーター65の両方から作動油を供給し、第2可動範囲で、一方のアキュムレーター(第2アキュムレーター65)のみから作動油を供給している。
これにより、バランサー60は、エネルギー効率の向上と、スライド18のストローク動作の高速化やストロークの拡大化を両立させることが可能となる。
【0085】
また、バランサー60の圧力供給装置60bは、エアシリンダ63に対して供給圧力を付与してエアーを給排する第1空気タンク71及び第2空気タンク72を備え、第1可動範囲で、第1空気タンク71及び第2空気タンク72の両方からエアーを供給し、第2可動範囲で、一方の空気タンク(第2空気タンク72)のみからエアーを供給している。
これにより、バランサー60は、エネルギー効率の向上と、スライド18のストローク動作の高速化やストロークの拡大化を両立させることが可能となる。
【0086】
また、バランサー60の圧力供給装置60cは、油圧シリンダ61,62に対して供給圧力を付与して作動油を給排するアキュムレーター79と、エアシリンダ63に対して供給圧力を付与してエアーを給排する空気タンク82を備えている。
そして、ストローク動作の可動範囲全体で、空気タンク82によるエアシリンダ63へのエアー供給を行い、第2可動範囲で、アキュムレーター79による油圧シリンダ61,62への作動油の供給を行っている。
これにより、バランサー60は、エネルギー効率の向上と、スライド18のストローク動作の高速化やストロークの拡大化を両立させることが可能となる。
【0087】
また、バランサー60の圧力供給装置60aは、第2アキュムレーター65の給排容量を第1アキュムレーター64よりも小さく設定した場合に、第1可動範囲で、第1アキュムレーター64から作動油を供給し、第2可動範囲で、第2アキュムレーター65のみから作動油を供給している。
これにより、バランサー60は、エネルギー効率の向上と、スライド18のストローク動作の高速化やストロークの拡大化を両立させることが可能となる。
【0088】
また、バランサー60の圧力供給装置60bは、第2空気タンク72の給排容量を第1空気タンク71よりも小さく設定した場合に、第1可動範囲で、第1空気タンク71からエアーを供給し、第2可動範囲で、第2空気タンク72のみからエアーを供給している。
これにより、バランサー60は、エネルギー効率の向上と、スライド18のストローク動作の高速化やストロークの拡大化を両立させることが可能となる。
【0089】
また、バランサー60は、第2可動範囲の開始位置である下死点手前位置[2]と終了位置である下死点通過位置[4]とがストローク方向について同じ位置に設定している。
これにより、第1可動範囲のみ又は第2可動範囲のみで作動流体の給排を行うアキュムレーターや空気タンクの作動流体の排出量と給入量とを等しくすることができ、安定的にスライド18に対して移動に抗する圧力を付与し続けることが可能となる。
【0090】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、スライド18が上下方向に往復する構成を例示したが、スライド18が上下方向に往復するプレス装置に限定されない。例えば、スライド18が水平方向や上下方向又は水平方向に対して傾斜した方向に往動するプレス装置(その他、金型を使用するあらゆる成形装置)であっても良い。
また、上記実施形態では、成形装置として鍛造プレス装置を例示したが、これに限定されない。例えば、本発明は、射出成形装置等、対となる金型を使用するあらゆる成形装置に適用することができる。
【0091】
また、油圧シリンダ61,62やエアシリンダ63に対して、下側領域に作動流体を供給することでスライド18の下死点(第2位置)側への移動に抗する圧力の付与を行う構成を例示したが、これに限定されない。
例えば、油圧シリンダ61,62やエアシリンダ63の上側領域に作動流体を供給する構成とし、流動抵抗の異なる二種類の絞り弁を切り替える制御等で作動流体に大小の異なる抵抗を付与して、スライド18の下死点(第2位置)側への移動に抗する圧力の付与を行う構成としても良い。また或いは、油圧シリンダ61,62やエアシリンダ63の上側領域と下側領域の両方に作動流体を供給する構成としても良い。
【0092】
なお、上記実施形態では、スライド18の往復動作において、第1可動範囲と第2可動範囲の二つのみを設定する場合を例示したが、可動範囲はより数多く設定しても良い。その場合、金型が合わさる第2位置(下死点)を含む可動範囲が、他の全ての可動範囲に比して、第2位置(下死点)側への移動に抗する圧力が大きくなるように設定することが好ましい。
ここで、「圧力が大きくなる」とは、第2可動範囲内における第2位置(下死点)側への移動に抗する最大圧力が、他の可動範囲内における第2位置(下死点)側への移動に抗する最大圧力よりも大きくなることを意味する。
【0093】
また、上記実施形態では、第1位置が上死点である場合を例示したが、これに限定されない。第1位置は、ストローク範囲内において上金型31と下金型32とが離隔したいずれの位置とすることが可能である。但し、第1位置を含む第1可動範囲(第2可動範囲以外の可動範囲が複数ある場合には第2可動範囲以外の全ての可動範囲)は、第2可動範囲と重複しないように設定すべきである。
【0094】
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 プレス装置(成形装置)
10 駆動部
11 モータ
16 エキセン軸
17 コネクティングロッド(コンロッド)
18 スライド
31 上金型(第1金型)
32 下金型(第2金型)
35 移動量計測器
50 制御装置
51 入力部
52 記憶部
53 制御部
54 表示部
55 制御プログラム
60 バランサー
60a,60b,60c 圧力供給装置
61,62 油圧シリンダ
63 エアシリンダ
64 第1アキュムレーター(第1給排部)
65 第2アキュムレーター(第2給排部)
68 油圧供給源
69,70 逆止弁
71 第1空気タンク(第1給排部)
72 第2空気タンク(第2給排部)
75 空圧供給源
76,77 逆止弁
78 遊行降下用油タンク
79 アキュムレーター(第1給排部)
82 空気タンク(第2給排部)
83 空圧供給源
84 逆止弁
85 油圧供給源
86 逆止弁
100 装置本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6