(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】モータドライバ装置
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20241028BHJP
H02P 6/08 20160101ALI20241028BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241028BHJP
【FI】
H02P27/08
H02P6/08
H02M7/48 F
(21)【出願番号】P 2020206438
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 公貴
(72)【発明者】
【氏名】橋本 明
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-037279(JP,A)
【文献】特開2001-086793(JP,A)
【文献】特開2012-205370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/08
H02P 6/08
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
U相、V相及びW相のコイルを有する三相モータを二相変調にて駆動するモータドライバ装置であって、
前記三相モータのロータの位置検出信号に基づいて前記ロータの位置を特定し、特定位置に応じたデジタルの制御信号を出力する制御信号生成部と、
複数の抵抗の直列回路から成る抵抗ラダー部を有し、前記制御信号に基づき、前記抵抗ラダー部を用いて、U相、V相及びW相の内、2つの相のコイルに供給すべき相電圧を表すアナログの第1及び第2指令相電圧を生成するDAコンバータと、
周期的に変動する電圧値を持つアナログの周期電圧を生成する周期電圧生成部と、
前記第1指令相電圧と前記周期電圧を比較することで第1PWM信号を生成する第1比較部と、
前記第2指令相電圧と前記周期電圧を比較することで第2PWM信号を生成する第2比較部と、
前記位置検出信号に基づいて、
U相、V相及びW相の内の何れか2つの相である第1及び第2スイッチング駆動相に対して夫々前記第1及び第2PWM信号を割り当てることにより前記二相変調を実現するロジック回路と、を備え
、
前記二相変調にて前記ロータが回転しているとき、第1期間、第2期間、第3期間、第4期間、第5期間、第6期間が、この順番で繰り返し訪れ、
前記第1指令相電圧は、前記第1期間及び前記第2期間においてU相のコイルに供給すべき相電圧を表し、前記第3期間及び前記第4期間においてV相のコイルに供給すべき相電圧を表し、前記第5期間及び前記第6期間においてW相のコイルに供給すべき相電圧を表し、
前記第2指令相電圧は、前記第2期間及び前記第3期間においてW相のコイルに供給すべき相電圧を表し、前記第4期間及び前記第5期間においてU相のコイルに供給すべき相電圧を表し、前記第6期間及び前記第1期間においてV相のコイルに供給すべき相電圧を表す
、モータドライバ装置。
【請求項2】
前記直列回路に対し所定の直流電圧が印加されることで前記抵抗ラダー部における複数のノードにおいて複数の電圧が生じ、
前記DAコンバータは、前記複数のノードに接続される第1スイッチ回路及び前記複数のノードに接続される第2スイッチ回路を有し、
前記第1スイッチ回路は、前記制御信号に基づいて前記複数の電圧の何れかを選択することにより前記第1指令相電圧を生成し、前記第2スイッチ回路は、前記制御信号に基づいて前記複数の電圧の何れかを選択することにより前記第2指令相電圧を生成する
、請求項1に記載のモータドライバ装置。
【請求項3】
出力段回路を更に備え、
前記ロジック回路は、前記位置検出信号に基づいて、
前記第1及び第2スイッチング駆動相に対して夫々前記第1及び第2PWM信号を割り当てるとともに、残りの1つの相であるスイッチング停止相に対して固定信号を割り当て、
前記出力段回路は、前記ロジック回路の割り当て結果に基づく前記ロジック回路からの出力信号に従い、前記第1及び第2スイッチング駆動相のコイルに対して前記第1及び第2PWM信号に基づく第1及び第2スイッチング電圧を供給するとともに、前記スイッチング停止相のコイルに対して固定電圧を供給する
、請求項1又は2に記載のモータドライバ装置。
【請求項4】
前記ロジック回路は、
前記第1期間においてはU相及びV相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、
前記第2期間においてはU相及びW相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、
前記第3期間においてはV相及びW相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、
前記第4期間においてはV相及びU相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、
前記第5期間においてはW相及びU相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、
前記第6期間においてはW相及びV相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定する
、請求項
1~3の何れかに記載のモータドライバ装置。
【請求項5】
前記位置検出信号は第1~第3検出信号から成り、前記第1~第3検出信号により前記ロータの位置を表す前記ロータの位相が電気角60°刻みで特定され、
前記第1~第6期間は、夫々に、前記ロータの位相が電気角で120°変化する分の長さを有し、
前記ロジック回路は、前記第1~第3検出信号に基づき、前記ロータの位相が電気角120°分変化するごとに信号レベルが変化する内部信号を生成し、前記内部信号の信号レベル変化を契機に前記第1及び第2PWM信号の割り当ての対象となる相をU相、V相及びW相の中で切り替え、前記割り当ての対象となる相を前記第1~第3検出信号に基づき決定する
、請求項
1~4の何れかに記載のモータドライバ装置。
【請求項6】
当該モータドライバ装置において進角制御を実行可能であり、
前記ロジック回路は、前記第1~第3検出信号と前記内部信号との間に進角値分の位相差を設けることで前記進角制御を実現する
、請求項5に記載のモータドライバ装置。
【請求項7】
前記第1~第3検出信号の夫々は二値化信号である
、請求項5又は6に記載のモータドライバ装置。
【請求項8】
電源電圧が入力され、前記アナログの周期電圧の振幅を決定する信号を前記周期電圧生成部に出力する基準電圧生成部を更に備える
、請求項2に記載のモータドライバ装置。
【請求項9】
前記基準電圧生成部は、前記抵抗ラダー部に印加する前記所定の直流電圧を出力する
、請求項8に記載のモータドライバ装置。
【請求項10】
前記基準電圧生成部は、第1直流電圧と前記第1直流電圧よりも低い第2直流電圧を出力し、前記所定の直流電圧は、前記第1直流電圧及び前記第2直流電圧間の差である
、請求項9に記載のモータドライバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータドライバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図21に、関連技術に係り、パルス幅変調(PWM)を用いて三相モータを駆動するモータ駆動システムの構成を示す。モータ1001は、三相ブラシレスモータであり、U相、V相、W相のコイル1002u、1002v及び1002wを有するステータと、永久磁石から成るロータ(不図示)と、を備える。モータ1001には、ロータの位置(磁極位置)を検出するための位置検出器1004が設置されている。位置検出器1004は、3つのホール素子を備え、ロータの位置(ロータの位相)を電気角60°刻みで検出する。
図21のドライバIC1010は、駆動制御回路1020、プリドライバ1030及びインバータ回路1040を備える。インバータ回路1040は三相分のハーフブリッジ回路を備える。
【0003】
駆動制御回路1020は、位置検出器1004における3つのホール素子の検出結果を示す検出信号HALL_u’、HALL_v’及びHALL_w’に基づいて、三相のハーフブリッジ回路に対する駆動信号DRVu’、DRVv’及びDRVw’を生成する。プリドライバ1030は、駆動信号DRVu’、DRVv’及びDRVw’に基づいて三相のハーフブリッジ回路をスイッチング駆動することにより、直流の電源電圧VPWR’をパルス幅変調した電圧をコイル1002u、1002v及び1002wに供給し、これによってモータ1001を回転駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図22に駆動制御回路1020の構成例を示す。DAコンバータ1024は、検出信号HALL_u’、HALL_v’又はHALL_w’に基づいて生成されたデジタルの制御信号CNT’を受け、制御信号CNT’をアナログ電圧に変換することでU相、V相、W相のコイルに供給すべき3つの指令相電圧を生成及び出力する。DAコンバータ1024は、複数の抵抗の直列回路から成る抵抗ラダー部1240と、制御信号CNT’に基づき各タイミングにおいて抵抗ラダー部1240における何れかのノードの電圧を抽出することにより3つの指令相電圧を生成するスイッチ回路1241~1243と、を備える。コンパレータ1025_1、1025_2及び1025_3から成る比較ブロックは、3つの指令相電圧の夫々を三角波電圧と比較する。ロジック回路1026は、必要に応じ検出信号HALL_u’、HALL_v’及びHALL_w’を参照しつつ、比較ブロックの比較結果に基づき、駆動信号DRVu’、DRVv’及びDRVw’を生成する。
【0006】
駆動制御回路1020を用い、モータ1001を二相変調にて駆動することも可能である。二相変調では、常に、U相、V相及びW相の内、2相分のハーフブリッジ回路だけが所定のPWM周波数にてスイッチングされ、残り1相分のハーフブリッジ回路の出力はローレベル又はハイレベルに固定される。
【0007】
二相変調を用いる場合、
図22の駆動制御回路1020の構成には無駄があると言え、回路規模縮小の観点から改善の余地がある。この理由については後述の説明から明らかとなる。
【0008】
本開示は、回路規模縮小に寄与するモータドライバ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るモータドライバ装置は、U相、V相及びW相のコイルを有する三相モータを二相変調にて駆動するモータドライバ装置であって、前記三相モータのロータの位置検出信号に基づいて前記ロータの位置を特定し、特定位置に応じたデジタルの制御信号を出力する制御信号生成部と、複数の抵抗の直列回路から成る抵抗ラダー部を有し、前記制御信号に基づき、前記抵抗ラダー部を用いて、U相、V相及びW相の内、2つの相のコイルに供給すべき相電圧を表すアナログの第1及び第2指令相電圧を生成するDAコンバータと、周期的に変動する電圧値を持つアナログの周期電圧を生成する周期電圧生成部と、前記第1指令相電圧と前記周期電圧を比較することで第1PWM信号を生成する第1比較部と、前記第2指令相電圧と前記周期電圧を比較することで第2PWM信号を生成する第2比較部と、前記位置検出信号に基づいて、前記第1及び第2PWM信号を、U相、V相及びW相の内、何れか2つの相に割り当てることにより前記二相変調を実現するロジック回路と、を備えた構成(第1の構成)である。
【0010】
上記第1の構成に係るモータドライバ装置において、前記直列回路に対し所定の直流電圧が印加されることで前記抵抗ラダー部における複数のノードにおいて複数の電圧が生じ、前記DAコンバータは、前記複数のノードに接続される第1スイッチ回路及び前記複数のノードに接続される第2スイッチ回路を有し、前記第1スイッチ回路は、前記制御信号に基づいて前記複数の電圧の何れかを選択することにより前記第1指令相電圧を生成し、前記第2スイッチ回路は、前記制御信号に基づいて前記複数の電圧の何れかを選択することにより前記第2指令相電圧を生成する構成(第2の構成)であっても良い。
【0011】
上記第1又は第2の構成に係るモータドライバ装置において、出力段回路を更に備え、前記ロジック回路は、前記位置検出信号に基づいて、U相、V相及びW相の内の何れか2つの相である第1及び第2スイッチング駆動相に対して夫々前記第1及び第2PWM信号を割り当てるとともに、残りの1つの相であるスイッチング停止相に対して固定信号を割り当て、前記出力段回路は、前記ロジック回路の割り当て結果に基づく前記ロジック回路からの出力信号に従い、前記第1及び第2スイッチング駆動相のコイルに対して前記第1及び第2PWM信号に基づく第1及び第2スイッチング電圧を供給するとともに、前記スイッチング停止相のコイルに対して固定電圧を供給する構成(第3の構成)であっても良い。
【0012】
上記第3の構成に係るモータドライバ装置において、前記二相変調にて前記ロータが回転しているとき、第1期間、第2期間、第3期間、第4期間、第5期間、第6期間が、この順番で繰り返し訪れ、前記第1指令相電圧は、前記第1期間及び前記第2期間においてU相のコイルに供給すべき相電圧を表し、前記第3期間及び前記第4期間においてV相のコイルに供給すべき相電圧を表し、前記第5期間及び前記第6期間においてW相のコイルに供給すべき相電圧を表し、前記第2指令相電圧は、前記第2期間及び前記第3期間においてW相のコイルに供給すべき相電圧を表し、前記第4期間及び前記第5期間においてU相のコイルに供給すべき相電圧を表し、前記第6期間及び前記第1期間においてV相のコイルに供給すべき相電圧を表し、前記ロジック回路は、前記第1期間においてはU相及びV相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、前記第2期間においてはU相及びW相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、前記第3期間においてはV相及びW相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、前記第4期間においてはV相及びU相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、前記第5期間においてはW相及びU相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、前記第6期間においてはW相及びV相を夫々前記第1及び第2スイッチング駆動相に設定する構成(第4の構成)であっても良い。
【0013】
上記第4の構成に係るモータドライバ装置において、前記位置検出信号は第1~第3検出信号から成り、前記第1~第3検出信号により前記ロータの位置を表す前記ロータの位相が電気角60°刻みで特定され、前記第1~第6期間は、夫々に、前記ロータの位相が電気角で120°変化する分の長さを有し、前記ロジック回路は、前記第1~第3検出信号に基づき、前記ロータの位相が電気角120°分変化するごとに信号レベルが変化する内部信号を生成し、前記内部信号の信号レベル変化を契機に前記第1及び第2PWM信号の割り当ての対象となる相をU相、V相及びW相の中で切り替え、前記割り当ての対象となる相を前記第1~第3検出信号に基づき決定する構成(第5の構成)であっても良い。
【0014】
上記第5の構成に係るモータドライバ装置において、進角制御を実行可能であり、前記ロジック回路は、前記第1~第3検出信号と前記内部信号との間に進角値分の位相差を設けることで前記進角制御を実現する構成(第6の構成)であっても良い。
【0015】
上記第5又は第6の構成に係るモータドライバ装置において、前記第1~第3検出信号の夫々は二値化信号である構成(第7の構成)であっても良い。
【0016】
上記第2の構成に係るモータドライバ装置において、電源電圧が入力され、前記アナログの周期電圧の振幅を決定する信号を前記周期電圧生成部に出力する基準電圧生成部を更に備える構成(第8の構成)であっても良い。
【0017】
上記第8の構成に係るモータドライバ装置において、前記基準電圧生成部は、前記抵抗ラダー部に印加する前記所定の直流電圧を出力する構成(第9の構成)であっても良い。
【0018】
上記第9の構成に係るモータドライバ装置において、前記基準電圧生成部は、第1直流電圧と前記第1直流電圧よりも低い第2直流電圧を出力し、前記所定の直流電圧は、前記第1直流電圧及び前記第2直流電圧間の差である構成(第10の構成)であっても良い。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、回路規模縮小に寄与するモータドライバ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の実施形態に係るモータの構造の模式図である。
【
図2】本開示の実施形態に係り、ロータの磁極と3つの位置検出ユニットとの関係を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係り、3つの位置検出ユニットの出力信号をロータの位置(位相)との関係を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るモータ駆動システムの構成図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るドライバICの外観斜視図である。
【
図6】本開示の実施形態に係り、二相変調が行われる際のU相、V相及びW相の相電圧の波形図である。
【
図7】本開示の実施形態に係り、二相変調が行われる際の3つの相間電圧の波形図である。
【
図8】本開示の実施形態に係り、二相変調が行われる際の各目標相電圧の波形図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る駆動制御回路の構成図である。
【
図10】
図9の周期電圧生成部により生成される周期電圧の波形図である。
【
図11】本開示の実施形態に係り、DAコンバータから出力される2つの指令相電圧の波形図である。
【
図12】本開示の実施形態に係り、U相、V相及びW相の目標相電圧と2つの指令相電圧との関係を示す図である。
【
図13】本開示の実施形態に係り、2つの指令相電圧をパルス幅変調することで得られる2つのPWM信号の波形図である。
【
図14】本開示の実施形態に係り、
図9の駆動制御回路により生成されるU相、V相及びW相の駆動信号の波形図である。
【
図15】本開示の実施形態に係り、2つのPWM信号とU相、V相及びW相の駆動信号との関係を示す図である。
【
図16】本開示の実施形態に係るDAコンバータの内部構成図である。
【
図17】
図16の抵抗ラダー部で生じる複数の電圧を説明するための図である。
【
図18】本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、駆動信号生成部の回路図である。
【
図19】本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、駆動信号生成部の動作に関わるタイミングチャートである。
【
図20】本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、駆動信号生成部の動作に関わるタイミングチャートである。
【
図21】関連技術に係るモータ駆動システムの構成図である。
【
図22】関連技術に係り、U相、V相及びW相の駆動信号を生成するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“TrH”によって参照されるハイサイドトランジスタは(
図4参照)、ハイサイドトランジスタTrHと表記されることもあるし、トランジスタTrHと略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0022】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略称である。ラインとは電気信号が伝播又は印加される配線を指す。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体にて形成される。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。
【0023】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。任意の注目した信号について、当該信号がハイレベルであるとき、当該信号の反転信号はローレベルをとり、当該信号がローレベルであるとき、当該信号の反転信号はハイレベルをとる。
【0024】
任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジ(或いはライジングエッジ)と称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミング(或いはライジングエッジタイミング)と称する。同様に、任意の注目した信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジ(或いはフォーリングエッジ)と称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミング(或いはフォーリングエッジタイミング)と称する。
【0025】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。
【0026】
任意のスイッチを1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成することができ、或るスイッチがオン状態のときには当該スイッチの両端間が導通する一方で或るスイッチがオフ状態のときには当該スイッチの両端間が非導通となる。以下、任意のトランジスタ又はスイッチについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
【0027】
図1は本開示の実施形態に係るモータ1の構造の模式図である。モータ1は、三相ブラシレスモータであり、三相分の電機子巻線を有するステータと、永久磁石から成るロータ3と、を備える。三相分の電機子巻線は、U相の電機子巻線であるコイル2uと、V相の電機子巻線であるコイル2vと、W相の電機子巻線であるコイル2wと、から成る。尚、本実施形態において、モータ1の回転とは詳細にはロータ3の回転を意味する。また、本実施形態においてロータ3の回転の向きは一定であるとする。また、モータ1の極数は任意である。
【0028】
モータ1には、ロータ3の位置を検出するための位置検出器4が設置されている。位置検出器4は、U相用の位置検出ユニット4uと、V相用の位置検出ユニット4vと、W相用の位置検出ユニット4wと、を備える。各位置検出ユニットは、ホール素子と、ホール素子の出力信号を増幅及び二値化する信号処理回路と、を備える。各位置検出ユニットは、集積回路の形態で形成されたホールICであって良い。ここでは、位置検出器4がモータ1に設けられていると考えるが、位置検出器4がモータ1とは別に設けられているという考え方も採用できる。尚、各位置検出ユニットは、ホール素子を有するものの、ホール素子の出力信号を増幅及び二値化する信号処理回路を有さない構成であっても良い。この場合、ホール素子の出力信号を受ける装置(後述のドライバIC10;
図4参照)に上記信号処理回路を設けておけば良い。以下では、各位置検出ユニットが信号処理回路を有していることを前提とする。
【0029】
位置検出器4にて検出されるロータ3の位置は、ロータ3の磁極位置であって、ロータ3が回転運動する際のロータ3の位相を表す。本実施形態において、特に記述なき限り、ロータ3の位相は電気角における位相を指し、60°、120°などの角度は電気角における角度を表す。
図2に示す如く、位置検出ユニット4u、4v及び4wは互いに電気角で120°だけずれた位置に配置される。尚、ロータ3の位相を、以下、記号θで参照することがある。
【0030】
図3に、検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wの波形を示す。位置検出ユニット4uは、ロータ3の永久磁石よりホール素子(ユニット4u内のホール素子)に加わる磁界の向きに応じた信号を、検出信号HALL_uとして出力する。位置検出ユニット4vは、ロータ3の永久磁石よりホール素子(ユニット4v内のホール素子)に加わる磁界の向きに応じた信号を、検出信号HALL_vとして出力する。位置検出ユニット4wは、ロータ3の永久磁石よりホール素子(ユニット4w内のホール素子)に加わる磁界の向きに応じた信号を、検出信号HALL_wとして出力する。各検出信号は、ハイレベル又はローレベルの何れかの信号レベルをとる二値化信号である。即ち、各位置検出ユニットによりロータ3の位相θが180°刻みで検出される。そして、上述したように、位置検出ユニット4u、4v及び4wは互いに電気角で120°だけずれた位置に配置されるので、ユニット4u、4v及び4wによりロータ3の位相θが60°刻みで検出される(即ち60°を最小単位にして検出される)。
【0031】
ここでは、ロータ3が所定の向きに回転運動しているときにおいて、検出信号HALL_uにアップエッジが生じるときのロータ3の位相θを0°にとり、検出信号HALL_uにダウンエッジが生じるときのロータ3の位相θを180°にとる。そうすると、検出信号HALL_vにアップエッジが生じるときのロータ3の位相θは240°であり、検出信号HALL_vにダウンエッジが生じるときのロータ3の位相θは60°であり、検出信号HALL_wにアップエッジが生じるときのロータ3の位相θは120°であり、検出信号HALL_wにダウンエッジが生じるときのロータ3の位相θは300°である。
【0032】
図4に、モータ1を有するモータ駆動システムの構成を示す。モータ駆動システムは、モータ1と、モータドライバ装置の例であるドライバIC10と、を備えて構成される。尚、
図4ではロータ3の図示を省略している。ドライバIC10は、
図5に示すような、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品である。尚、
図5に示されるドライバIC10のピン数(外部端子の数)及び
図5に示されるドライバIC10の筐体の種類は例示に過ぎず、ドライバIC10のピン数及び筐体の種類は任意である。
【0033】
ドライバIC10に設けられた外部端子には、端子OUTu、OUTv及びOUTwが含まれる。モータ1において、コイル2u、2v及びコイル2wはスター結線されている。コイル2uの一端、コイル2vの一端、コイル2wの一端は、夫々、外部端子OUTu、OUTv、OUTwに接続され、コイル2u、2v及び2wの他端同士は中性点NPにて共通接続されている。外部端子OUTu、OUTv、OUTwは出力端子とも称され得る。
【0034】
ドライバIC10は、駆動制御回路20と、プリドライバ30と、インバータ回路40と、を備える。インバータ回路40は、U相用のハーフブリッジ回路40uと、V相用のハーフブリッジ回路40vと、W相用のハーフブリッジ回路40wと、を備える。
【0035】
ハーフブリッジ回路40u、40v及び40wの夫々は、電源電圧VPWRが加わるラインとグランドとの間に直列に接続されたハイサイドトランジスタTrH及びローサイドトランジスタTrLから成る。トランジスタTrH及びTrLはNチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)として構成されている。電源電圧VPWRは所定の正の直流電圧(例えば12V)である。
【0036】
より具体的には、ハーフブリッジ回路40u、40v及び40wの夫々において、トランジスタTrHのドレインは、電源電圧VPWRが印加される第1電源端子に接続されて電源電圧VPWRの供給を受け、トランジスタTrHのソースとトランジスタTrLのドレインはノードNDにて共通接続され、トランジスタTrLのソースは第2電源端子として機能するグランドに接続されている。尚、各トランジスタTrLのソースを異常電流検出用の抵抗を介してグランドに接続するようにしても良い(
図1では、異常電流検出用の抵抗の図示を省略)。ハーフブリッジ回路40u、40v、40wにおけるノードNDは、夫々、出力端子OUTu、OUTv、OUTwに接続される。故に、ハーフブリッジ回路40u、40v、40wにおけるノードNDは、夫々、出力端子OUTu、OUTv、OUTwを介して、コイル2u、2v、2wの一端に接続されることになる。コイル2u、2v、2wの一端における電圧に相当する、出力端子OUTu、OUTv、OUTwに加わる電圧を、夫々、Vu、Vv、Vwにて表す、電圧Vu、Vv又はVwは、相電圧又は端子電圧と称される。
【0037】
位置検出器4から出力される検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wは、ドライバIC10に設けられる3つの外部端子を通じて駆動制御回路20に入力される。駆動制御回路20は、検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wに基づいて、ハーフブリッジ回路40uに対する駆動信号DRVu、ハーフブリッジ回路40vに対する駆動信号DRVv及びハーフブリッジ回路40wに対する駆動信号DRVwを生成及び出力する。例えば、モータ1にて発生されるべきトルクを指定するトルク指令信号が駆動制御回路20に与えられていて良く、この場合、駆動制御回路20は、トルク指令信号にて指定されたトルクがモータ1にて発生するよう駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwを生成する。また例えば、モータ1の回転速度を指定する回転速度指令信号が駆動制御回路20に与えられていても良く、この場合、駆動制御回路20は、回転速度指令信号にて指定された回転速度にてモータ1が回転するよう駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwを生成する。駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwの夫々は二値化信号であり、“1”又は“0”の値をとる。
【0038】
プリドライバ30は、駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwに従ってハーフブリッジ回路40u、40v及び40w内の各トランジスタのゲート電位を制御することで各ハーフブリッジ回路の状態を制御する。ハーフブリッジ回路40u、40v及び40wの内の任意の1つである対象ハーフブリッジ回路において、トランジスタTrHがオンであって且つトランジスタTrLがオフとなっている状態を出力ハイ状態と称し、トランジスタTrHがオフであって且つトランジスタTrLがオンとなっている状態を出力ロー状態と称する。トランジスタTrH及びTrLのオン抵抗がゼロであると仮定すると、例えばハーフブリッジ回路40uにおいて、出力ハイ状態であればハイサイドトランジスタTrHを介して電源電圧VPWRが出力端子OUTuに加わり、出力ロー状態であればローサイドトランジスタTrLを介してグランドの電位が出力端子OUTuに加わる(但し過渡状態を無視)。ハーフブリッジ回路40v及び40wについても同様である。
【0039】
プリドライバ30は、駆動信号DRVuが“1”の値を持つ期間においてハーフブリッジ回路40uが出力ハイ状態となるように且つ駆動信号DRVuが“0”の値を持つ期間においてハーフブリッジ回路40uが出力ロー状態となるように、ハーフブリッジ回路40uのトランジスタTrH及びTrLのゲート電位を制御するU相駆動動作を行う。同様に、プリドライバ30は、駆動信号DRVvが“1”の値を持つ期間においてハーフブリッジ回路40vが出力ハイ状態となるように且つ駆動信号DRVvが“0”の値を持つ期間においてハーフブリッジ回路40vが出力ロー状態となるように、ハーフブリッジ回路40vのトランジスタTrH及びTrLのゲート電位を制御するV相駆動動作を行う。同様に、プリドライバ30は、駆動信号DRVwが“1”の値を持つ期間においてハーフブリッジ回路40wが出力ハイ状態となるように且つ駆動信号DRVwが“0”の値を持つ期間においてハーフブリッジ回路40wが出力ロー状態となるように、ハーフブリッジ回路40wのトランジスタTrH及びTrLのゲート電位を制御するW相駆動動作を行う。
【0040】
駆動制御回路20は駆動信号DRVu、DRVv又はDRVwとしてPWM信号を出力することができる。PWMはパルス幅変調(pulse width modulation)の略称である。PWM信号は、所定のPWM周波数を持つ二値化信号であり、“1”、“0”の値を交互にとる。PWM信号とされる駆動信号(DRVu、DRVv又はDRVw)はパルス幅が可変の二値化信号である。PWM信号についてのパルス幅とは、当該PWM信号の各周期において当該PWM信号が“1”の値をとる期間の長さを指す。PWM信号とされる駆動信号(DRVu、DRVv又はDRVw)についても同様である。
【0041】
駆動信号DRVuがPWM信号であるとき、ハーフブリッジ回路40uにより電源電圧VPWRが駆動信号DRVuに従ってパルス幅変調され、当該パルス幅変調により得られる電圧が相電圧Vuとしてコイル2uの一端に印加される。この際の相電圧Vuは、駆動信号DRVuが“1”の値を持つ期間において電源電圧VPWRの電位を有し且つ駆動信号DRVuが“0”の値を持つ期間においてグランドの電位を有するスイッチング電圧(矩形波電圧)である(但し過渡状態を無視)。駆動信号DRVvがPWM信号であるとき、ハーフブリッジ回路40vにより電源電圧VPWRが駆動信号DRVvに従ってパルス幅変調され、当該パルス幅変調により得られる電圧が相電圧Vvとしてコイル2vの一端に印加される。この際の相電圧Vvは、駆動信号DRVvが“1”の値を持つ期間において電源電圧VPWRの電位を有し且つ駆動信号DRVvが“0”の値を持つ期間においてグランドの電位を有するスイッチング電圧(矩形波電圧)である(但し過渡状態を無視)。駆動信号DRVwがPWM信号であるとき、ハーフブリッジ回路40wにより電源電圧VPWRが駆動信号DRVwに従ってパルス幅変調され、当該パルス幅変調により得られる電圧が相電圧Vwとしてコイル2wの一端に印加される。この際の相電圧Vwは、駆動信号DRVwが“1”の値を持つ期間において電源電圧VPWRの電位を有し且つ駆動信号DRVwが“0”の値を持つ期間においてグランドの電位を有するスイッチング電圧(矩形波電圧)である(但し過渡状態を無視)。
【0042】
プリドライバ30及びインバータ回路40により駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwに基づく相電圧Vu、Vv及びVwをコイル2u、2v及び2wに供給する出力段回路が形成される。尚、本実施形態では、インバータ回路40がドライバIC10に内蔵されていることを想定しているが、インバータ回路40はドライバIC10の外部に設けられる回路であっても良い。インバータ回路40に加え、プリドライバ30もドライバIC10の外部に設けられていても良い。
【0043】
ドライバIC10は、モータ1を二相変調にて駆動することが可能である。二相変調では、モータ1の駆動期間において、常に、駆動信号DRVu、DRVv又はDRVwの内、2つの駆動信号だけがPWM信号とされ、残りの1つの駆動信号の値は“0”で固定される。換言すれば、二相変調では、モータ1の駆動期間において、常に、U相、V相及びW相の内、2相分のハーフブリッジ回路だけがPWM信号に従いPWM周波数にてスイッチングされ、残り1相分のハーフブリッジ回路は出力ロー状態で固定される。
【0044】
図6に、ドライバIC10にて二相変調が行われる際の相電圧Vu、Vv、Vwの波形を示す。駆動信号DRVuがPWM信号であるとき、相電圧Vuは実際には相電圧Vuの周期よりも十分に短い周期でパルス幅変調されているが、
図6では、相電圧Vuの平均電圧が示されている。但し、ここにおける平均はパルス幅変調の周期(即ちPWM周波数の逆数)に対する平均を指す。相電圧Vv及びVwについても同様である。
図6に示される二相変調において、相電圧Vu(厳密には相電圧Vuの平均電圧)は、ロータ3の位相θが不等式“0°<θ<240°”を満たす期間において正の電圧を持ち、且つ、それ以外の期間において0Vとなる。
図6に示される二相変調において、相電圧Vv(厳密には相電圧Vvの平均電圧)は、ロータ3の位相θが不等式“0°<θ<120°”又は“240°<θ<360°”を満たす期間において正の電圧を持ち、且つ、それ以外の期間において0Vとなる。
図6に示される二相変調において、相電圧Vw(厳密には相電圧Vwの平均電圧)は、ロータ3の位相θが不等式“120°<θ<360°”を満たす期間において正の電圧を持ち、且つ、それ以外の期間において0Vとなる。
【0045】
図7に、二相変調が行われているときの、3つの相間電圧の波形を示す。3つの相間電圧は、相電圧Vwから見た相電圧Vuを表す相間電圧Vu_wと、相電圧Vvから見た相電圧Vwを表す相間電圧Vw_vと、相電圧Vuから見た相電圧Vvを表す相間電圧Vv_uと、から成る。相間電圧Vu_wは実際には相間電圧Vu_wの周期よりも十分に短い周期でパルス幅変調されているが、
図7では、相間電圧Vu_wの平均電圧が示されている。但し、ここにおける平均はパルス幅変調の周期(即ちPWM周波数の逆数)に対する平均を指す。相間電圧Vw_v及び相間電圧Vv_uについても同様である。二相変調において、相間電圧Vu_w、Vw_v、Vv_uの夫々の平均電圧は正弦波電圧(正弦波状の波形を持つ電圧)となり、且つ、相間電圧Vu_w、Vw_v及びVv_uの位相は電気角で120°ずつ互いにずれている。以下の説明において、単に3つの相間電圧と述べた場合は、それは相間電圧Vu_w、Vw_v、Vv_uを指す。
【0046】
以下では、U相、V相及びW相の内、対応する駆動信号がPWM信号とされる相をスイッチング駆動相と称する。従って、U相がスイッチング駆動相であるとき、対応する駆動信号DRVuがPWM信号とされることで、駆動信号DRVuに基づき電源電圧VPWRをパルス幅変調した電圧が相電圧Vuとしてコイル2uの一端に印加される。同様に、V相がスイッチング駆動相であるとき、対応する駆動信号DRVvがPWM信号とされることで、駆動信号DRVvに基づき電源電圧VPWRをパルス幅変調した電圧が相電圧Vvとしてコイル2vの一端に印加される。W相がスイッチング駆動相であるときも同様である。U相、V相及びW相の内、対応する駆動信号の値が“0”で固定される相をスイッチング停止相と称する。従って、U相がスイッチング停止相であるとき、対応する駆動信号DRVuの値が“0”に固定されることによりハーフブリッジ回路40uが出力ロー状態で固定されることを通じて相電圧Vuが0V(ゼロボルト)に固定される。同様に、V相がスイッチング停止相であるとき、対応する駆動信号DRVvの値が“0”に固定されることによりハーフブリッジ回路40vが出力ロー状態で固定されることを通じて相電圧Vvが0V(ゼロボルト)に固定される。W相がスイッチング停止相であるときも同様である。
【0047】
図8に、複数周期分の目標相電圧Vu
*、Vv
*及びVw
*の波形を示す。目標相電圧Vu
*、Vv
*、Vw
*は、夫々、二相変調により3つの相間電圧を正弦波電圧とするために、コイル2u、2v、2wに供給すべき相電圧Vu、Vv、Vw(即ち、出力端子OUTu、OUTv、OUTwに印可すべき電圧)の目標を表す。但し、目標相電圧Vu
*、Vv
*、Vw
*は、パルス幅変調が成されていない電圧である。従って、厳密には、目標相電圧Vu
*は二相変調により3つの相間電圧を正弦波電圧とするためにコイル2uに供給すべき相電圧Vuの平均電圧の目標を表し、目標相電圧Vv
*は二相変調により3つの相間電圧を正弦波電圧とするためにコイル2vに供給すべき相電圧Vvの平均電圧の目標を表し、目標相電圧Vw
*は二相変調により3つの相間電圧を正弦波電圧とするためにコイル2wに供給すべき相電圧Vwの平均電圧の目標を表す。
【0048】
目標相電圧Vu*、Vv*及びVw*の位相は、互いに電気角で120°ずつ相違している。それらの位相の相違を除けば、目標相電圧Vu*、Vv*及びVw*は互いに同じ波形を有する。目標相電圧Vu*、Vv*及びVw*の夫々は、ロータ3が回転運動する際、最低電圧VBTMから最高電圧VTOPまでで変動し、この変動の過程で中間電圧VMIDと一致する。ここで、“VBTM<VMID<VTOP”である。最低電圧VBTMはグランド電位と一致する。
【0049】
二相変調が行われる全期間を期間P1~P6に分類することができる。期間P1及びP4の夫々ではU相及びV相がスイッチング駆動相に設定される。期間P2及びP5の夫々ではU相及びW相がスイッチング駆動相に設定される。期間P3及びP6の夫々ではV相及びW相がスイッチング駆動相に設定される。期間P1~P6は、夫々に、ロータ3の位相θが電気角120°だけ変化する分の長さを有する。二相変調にてロータ3が一定の向きに回転運動している過程において、期間P1、P2、P3、P4、P5、P6が、この順番で繰り返し訪れる。期間P1~P6の内、互いに隣接する2つの期間の間に隙間は無い。即ち例えば、期間P1の終了タイミングと期間P2の開始タイミングは一致し、期間P2の終了タイミングと期間P3の開始タイミングは一致する。また、期間P1~P5を経た期間P6の終了タイミングは、新たな期間P1の開始タイミングと一致する。
図8において、期間P1及びP4は“0°≦θ≦120°を満たす期間に対応し、期間P2及びP5は“120°≦θ≦240°を満たす期間に対応し、期間P3及びP6は“240°≦θ≦360°=0°”を満たす期間に対応する(
図6も参照)。
【0050】
二相変調にてロータ3が一定の向きに回転運動している過程における目標相電圧Vu*の変化を簡単に説明する。期間P1の開始タイミングでは“Vu*=VBTM”である。期間P1中でロータ3の位相θが変化するにつれて目標相電圧Vu*が最低電圧VBTMから単調増加して“Vu*=VTOP”となった後、目標相電圧Vu*の変化が単調減少に切り替わり、期間P1の終了タイミングにおいて“Vu*=VMID”となる。期間P2の開始タイミングでは“Vu*=VMID”である。期間P2中でロータ3の位相θが変化するにつれて目標相電圧Vu*が中間電圧VMIDから単調増加して“Vu*=VTOP”となった後、目標相電圧Vu*の変化が単調減少に切り替わり、期間P2の終了タイミングにおいて“Vu*=VBTM”となる。期間P3では全体に亘り“Vu*=VBTM”で維持される。期間P4、P5、P6における目標相電圧Vu*の挙動は、夫々、期間P1、P2、P3における目標相電圧Vu*の挙動と同じである。
【0051】
目標相電圧Vw*は、目標相電圧Vu*を、ロータ3の位相θの電気角120°だけ遅らせたものである。従って、期間P2、P3、P4における目標相電圧Vw*の挙動は、夫々、期間P1、P2、P3における目標相電圧Vu*の挙動と同じであり、期間P5、P6、P1における目標相電圧Vw*の挙動は、夫々、期間P4、P5、P6における目標相電圧Vu*の挙動と同じである。目標相電圧Vv*は、目標相電圧Vu*を、ロータ3の位相θの電気角240°だけ遅らせたものである。従って、期間P3、P4、P5における目標相電圧Vv*の挙動は、夫々、期間P1、P2、P3における目標相電圧Vu*の挙動と同じであり、期間P6、P1、P2における目標相電圧Vv*の挙動は、夫々、期間P4、P5、P6における目標相電圧Vu*の挙動と同じである。
【0052】
二相変調が行われているとき、必ず1つの相はスイッチングが停止されるので、各タイミングにおいてPWM信号を2相分だけ生成できる能力があれば足る。つまり、駆動制御回路20において2相分のPWM信号だけ生成する回路を設け、2相分のPWM信号を検出信号HALL_U、HALL_V及びHALL_Wに基づき3相の駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwに割り当てるようにすれば、1相分の回路を省略できる。1相分の回路省略を実現する構成を以下に示す。
【0053】
図9は、1相分の回路省略を実現する構成であって、二相変調にてモータ1を駆動するための駆動制御回路20の構成図である。
図9の駆動制御回路20は、基準電圧生成部21と、制御信号生成部22と、周期電圧生成部23と、DAコンバータ24と、コンパレータ25_1及び25_2と、ロジック回路26と、を備える。
【0054】
基準電圧生成部21には電源電圧VCCと制御電圧VSPが供給される。基準電圧生成部21は、周期電圧生成部23にて生成される電圧Vtriの振幅を決定する振幅指令信号AMP*を周期電圧生成部23に出力する。また、基準電圧生成部21は、制御電圧VSPに基づいて電圧V_H及びV_Lを設定し、電圧V_H及びV_LをDAコンバータ24に出力する。電圧V_H及びV_L間の差電圧(V_H-V_L)が、所定の直流電圧としてDAコンバータ24内の抵抗ラダー部240に対して印加される。電圧V_H及びV_Lは、“V_H>V_L”を満たす直流電圧である。電圧V_Hは制御電圧VSPに基づき電源電圧VCC以下の電圧に設定される。電圧V_Lは0V(ゼロボルト)であって良いし、或いは、正の電圧値を有していても良い。尚、駆動制御回路20内の各部は電源電圧VCCを駆動電圧として用いて駆動して良い。電源電圧VCCは、ドライバIC10の外部からドライバIC10に対して供給される。或いは、電源電圧VCCは、ドライバIC10の外部からドライバIC10に対して供給される直流電圧(例えば電圧VPWR)に基づきドライバIC10内で生成される。
【0055】
制御信号生成部22は、検出信号HALL_Xの入力を受け、検出信号HALL_Xに基づいてデジタルの制御信号CNTを生成及び出力する。検出信号HALL_Xは、検出信号HALL_U、HALL_V及びHALL_Wの内、任意の何れか1つである。
【0056】
制御信号生成部22は、検出信号HALL_Xに基づいて現在のロータ3の位置(即ち位相θ)を特定し、特定したロータ3の位置(即ち位相θ)に応じた制御信号CNTを出力する。具体的には例えば、検出信号HALL_Xが検出信号HALL_Uである場合、検出信号HALL_Uにおける隣接する2つのアップエッジの時間差に基づいて電気角におけるロータ3の回転周期(位相θが360°分変化する時間の長さに相当)を検出すると共に、検出信号HALL_Uの各周期において検出信号HALL_Uのアップエッジタイミングから現タイミングまでの経過時間に基づき現タイミングにおける位相θを特定する。特定された位相θの電気角の値を制御信号CNTのデジタル値とすることができる。但し、制御信号CNTは、特定された位相θに応じたデジタル値を持つ限り、任意である。
【0057】
尚、制御信号生成部22は、検出信号HALL_U、HALL_V及びHALL_Wの内、任意の2つの検出信号に基づいて、又は、それら3つの検出信号の全てに基づいて、制御信号CNTを生成及び出力するようにしても良い。
【0058】
周期電圧生成部23は、周期的に変動する電圧値を有する電圧Vtriを生成及び出力する。電圧Vtriの周波数が上記PWM周波数に相当する。ここでは、
図10に示す如く、電圧Vtriは三角波電圧であるとする。即ち、電圧Vtriの各周期において、電圧Vtriの周期の1/2分の時間をかけて電圧Vtriは所定の下限電圧Vtri_Lから所定の上限電圧Vtri_Hに向けて単調増加し、その後、電圧Vtriの周期の残りの1/2分の時間をかけて電圧Vtriは上限電圧Vtri_Hから下限電圧Vtri_Lに向けて単調減少する。電圧Vtriの振幅は基準電圧生成部21からの振幅指令信号AMP
*に従う。尚、電圧Vtriを鋸波状の電圧にしても良い。
【0059】
DAコンバータ24は、デジタルの電圧信号である制御信号CNTをアナログ電圧信号に変換するデジタル/アナログ変換器である。この変換により、DAコンバータ24にて2つのアナログ電圧信号が生成される。生成される2つのアナログ電圧信号は、二相変調を実現するために、2つのスイッチング駆動相における2つのコイルに供給すべき2つの相電圧(以下、指令相電圧とも称する)を指定する。一方の指令相電圧を記号V1*にて参照し、他方の指令相電圧を記号V2*にて参照する。指令相電圧V1*は二相変調により3つの相間電圧(厳密には3つの相間電圧の夫々の平均電圧)を正弦波電圧とするために、第1スイッチング駆動相のコイルの端子(OUTu、OUTv及びOUTwの何れか)に供給すべきアナログ電圧を表す。指令相電圧V2*は二相変調により3つの相間電圧(厳密には3つの相間電圧の夫々の平均電圧)を正弦波電圧とするために、第2スイッチング駆動相のコイルの端子(OUTu、OUTv及びOUTwの何れか)に供給すべきアナログ電圧を表す。尚、指令相電圧V1*及びV2*はパルス幅変調が行われる前の電圧である。
【0060】
DAコンバータ24は、複数の抵抗の直列回路から成る抵抗ラダー部240と、制御信号CNTに基づき各タイミングにおいて抵抗ラダー部240における何れかのノードの電圧を抽出することで指令相電圧V1*及びV2*を生成するスイッチ回路241及び242と、を備える。
【0061】
図11に指令相電圧V1
*及びV2
*の波形を示す。
図12(a)も参照し、指令相電圧V1
*は、期間P1及びP2中の目標相電圧Vu
*に相当する電圧Vu
*_1と、期間P3及びP4中の目標相電圧Vv
*に相当する電圧Vv
*_1と、期間P5及びP6中の目標相電圧Vw
*に相当する電圧Vw
*_1と、を組み合わせたものである。即ち、指令相電圧V1
*は、期間P1及びP2において目標相電圧Vu
*(コイル2uに供給すべき相電圧Vu)を表し、期間P3及びP4において目標相電圧Vv
*(コイル2vに供給すべき相電圧Vv)を表し、期間P5及びP6において目標相電圧Vw
*(コイル2wに供給すべき相電圧Vw)を表す。
図12(b)も参照し、指令相電圧V2
*は、期間P2及びP3中の目標相電圧Vw
*に相当する電圧Vw
*_2と、期間P4及びP5中の目標相電圧Vu
*に相当する電圧Vu
*_2と、期間P6及びP1中の目標相電圧Vv
*に相当する電圧Vv
*_2と、を組み合わせたものである。即ち、指令相電圧V2
*は、期間P2及びP3において目標相電圧Vw
*(コイル2wに供給すべき相電圧Vw)を表し、期間P4及びP5において目標相電圧Vu
*(コイル2uに供給すべき相電圧Vu)を表し、期間P6及びP1において目標相電圧Vv
*(コイル2vに供給すべき相電圧Vv)を表す。
【0062】
コンパレータ25_1は、指令相電圧V1*を電圧Vtriと比較して比較結果を示す信号Spwm1を出力する。より具体的には、コンパレータ25_1において非反転入力端子に指令相電圧V1*が入力され、反転入力端子に電圧Vtriが入力される。コンパレータ25_1は、指令相電圧V1*が電圧Vtriより高いときには信号Spwm1をハイレベルとし、指令相電圧V1*が電圧Vtriより低いときには信号Spwm1をローレベルとする。“V1*=Vtri”のときには、信号Spwm1はハイレベル又はローレベルとなる。信号Spwm1は、指令相電圧V1*をパルス幅変調することで得られるPWM信号であり、パルス幅変調された指令相電圧V1*に相当する。
【0063】
コンパレータ25_2は、指令相電圧V2*を電圧Vtriと比較して比較結果を示す信号Spwm2を出力する。より具体的には、コンパレータ25_2において非反転入力端子に指令相電圧V2*が入力され、反転入力端子に電圧Vtriが入力される。コンパレータ25_2は、指令相電圧V2*が電圧Vtriより高いときには信号Spwm2をハイレベルとし、指令相電圧V2*が電圧Vtriより低いときには信号Spwm2をローレベルとする。“V2*=Vtri”のときには、信号Spwm2はハイレベル又はローレベルとなる。信号Spwm2は、指令相電圧V2*をパルス幅変調することで得られるPWM信号であり、パルス幅変調された指令相電圧V2*に相当する。
【0064】
図13に信号Spwm1及びSpwm2の波形を概略的に示す。
図13からは明らかではないが、信号Spwm1及びSpwm2の夫々は、期間P1~P6の夫々よりも十分に短い周期でパルス幅変調されており、
図13では、便宜上、信号Spwm1及びSpwm2を平均化した信号が示されている。ここにおける平均はパルス幅変調の周期(即ちPWM周波数の逆数)に対する平均を指す。
【0065】
ロジック回路26は、検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wに基づいて、2つのPWM信号である信号Spwm1及びSpwm2を、U相、V相及びW相の内の何れか2つの相に割り当てる。そして、ロジック回路26は、割り当て結果に従う駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwを生成及び出力することで二相変調を実現する。
【0066】
この際、ロジック回路26は、検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wに基づき、第1スイッチング駆動相に信号Spwm1を割り当てると共に第2スイッチング駆動相に信号Spwm2を割り当て、且つ、スイッチング停止相には所定の固定信号を割り当てる。より具体的には、ロジック回路26は、検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wに基づき(
図15も適宜参照)、
期間P1においてはU相及びV相を夫々第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、
期間P2においてはU相及びW相を夫々第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、
期間P3においてはV相及びW相を夫々第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、
期間P4においてはV相及びU相を夫々第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、
期間P5においてはW相及びU相を夫々第1及び第2スイッチング駆動相に設定し、
期間P6においてはW相及びV相を夫々第1及び第2スイッチング駆動相に設定する。
スイッチング停止相に固定信号を割り当てるとは、U相、V相及びW相の内、スイッチング停止相に設定された相に対応する駆動信号の値を“0”に固定することを指す。
【0067】
図14に、二相変調が行われているときにロジック回路26から出力される駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwの波形を示す。
図14からは明らかではないが、U相が第1又は第2スイッチング駆動相に設定されているとき、駆動信号DRVuは、期間P1~P6の夫々よりも十分に短い周期でパルス幅変調されており、
図14では、便宜上、駆動信号DRVuを平均化した信号が示されている。ここにおける平均はパルス幅変調の周期(即ちPWM周波数の逆数)に対する平均を指す。駆動信号DRVv及びDRVwについても同様である。U相、V相及びW相の内、第1及び第2スイッチング駆動相の何れにも設定されない相は、スイッチング停止相に設定される。従って、期間P1及びP4ではW相がスイッチング停止相に設定され、期間P2及びP5ではV相がスイッチング停止相に設定され、期間P3及びP6ではU相がスイッチング停止相に設定される。
【0068】
U相が第1スイッチング駆動相に設定される期間では信号Spwm1が駆動信号DRVuとして、U相が第2スイッチング駆動相に設定される期間では信号Spwm2が駆動信号DRVuとして出力される。U相がスイッチング停止相に設定される期間では駆動信号DRVuの値は“0”に固定される。V相が第1スイッチング駆動相に設定される期間では信号Spwm1が駆動信号DRVvとして、V相が第2スイッチング駆動相に設定される期間では信号Spwm2が駆動信号DRVvとして出力される。V相がスイッチング停止相に設定される期間では駆動信号DRVvの値は“0”に固定される。W相が第1スイッチング駆動相に設定される期間では信号Spwm1が駆動信号DRVwとして、W相が第2スイッチング駆動相に設定される期間では信号Spwm2が駆動信号DRVwとして出力される。W相がスイッチング停止相に設定される期間では駆動信号DRVwの値は“0”に固定される。
【0069】
ロジック回路26から出力される駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwがプリドライバ30(
図4参照)に供給され、プリドライバ30及びインバータ回路40により駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwに基づく相電圧Vu、Vv及びVwがコイル2u、2v及び2wに供給される。
【0070】
即ち、プリドライバ30及びインバータ回路40は、第1スイッチング駆動相のコイルに対して信号Spwm1に基づく第1スイッチング電圧を供給すると共に第2スイッチング駆動相のコイルに対して信号Spwm2に基づく第2スイッチング電圧を供給し、且つ、スイッチング固定相に対して固定電圧(ここでは0Vの電圧)を供給する。
【0071】
図15に、期間P1~P6と、指令相電圧V1
*及びV2
*と、信号Spwm1及びSpwm2と、駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwと、の関係を示す。尚、
図15においては、信号Spwm1としてのPWM信号を便宜上“PWM1”と図示すると共に信号Spwm2としてのPWM信号を便宜上“PWM2”と図示している(後述の
図19及び
図20においても同様)。
【0072】
期間P1においてはU相及びV相が夫々第1及び第2スイッチング駆動相に設定される。故に、期間P1においては、信号Spwm1が駆動信号DRVuに割り当てられ、結果、期間P1中の信号Spwm1により電源電圧VPWRをパルス幅変調することで得られる第1スイッチング電圧(第1矩形波電圧)が、相電圧Vuとしてハーフブリッジ回路40uからコイル2uへと供給される。また、期間P1においては、信号Spwm2が駆動信号DRVvに割り当てられ、結果、期間P1中の信号Spwm2により電源電圧VPWRをパルス幅変調することで得られる第2スイッチング電圧(第2矩形波電圧)が、相電圧Vvとしてハーフブリッジ回路40vからコイル2vへと供給される。更に、期間P1においては、駆動信号DRVwの値が“0”に固定されるので、ハーフブリッジ回路40wは出力ロー状態に固定され、結果、相電圧Vwは0V(ゼロボルト)に固定される。
期間P2においてはU相及びW相が夫々第1及び第2スイッチング駆動相に設定される。故に、期間P2においては、信号Spwm1が駆動信号DRVuに割り当てられ、結果、期間P2中の信号Spwm1により電源電圧VPWRをパルス幅変調することで得られる第1スイッチング電圧(第1矩形波電圧)が、相電圧Vuとしてハーフブリッジ回路40uからコイル2uへと供給される。また、期間P2においては、信号Spwm2が駆動信号DRVwに割り当てられ、結果、期間P2中の信号Spwm2により電源電圧VPWRをパルス幅変調することで得られる第2スイッチング電圧(第2矩形波電圧)が、相電圧Vwとしてハーフブリッジ回路40wからコイル2wへと供給される。更に、期間P2においては、駆動信号DRVvの値が“0”に固定されるので、ハーフブリッジ回路40vは出力ロー状態に固定され、結果、相電圧Vvは0V(ゼロボルト)に固定される。
期間P3~P6についても同様である。
【0073】
図16に、DAコンバータ24における抵抗ラダー部240並びにスイッチ回路241及び242の構成例を示す。
図16に示す構成例において、抵抗ラダー部240は抵抗R[1]~R[n]を備え、スイッチ回路241及び242は夫々にスイッチSW[0]~SW[n]を備える。スイッチSW[0]~SW[n]の夫々は双方向スイッチ(バススイッチ)である。nは2以上の整数であり、通常は2より十分に大きい(例えば、n=256)。
【0074】
抵抗ラダー部240において、抵抗R[1]~R[n]は互いに直列に接続され、抵抗R[1]~R[n]の直列回路に対して所定の直流電圧が印加される。この直流電圧は、電圧V_Lの電位から見た電圧V_Hに相当する。抵抗R[1]~R[n]の内、抵抗R[n]が最も高電位側に配置され、抵抗R[1]が最も低電位側に配置される。抵抗R[n]の一端はノードND[n]に接続され、ノードND[n]には電圧V_Hが加わる。抵抗R[1]の一端はノードND[0]に接続され、ノードND[0]には電圧V_Lが加わる。“1≦i≦(n-1)”を満たす任意の整数iに関し、抵抗R[i+1]は抵抗R[i]よりも高電位側に配置され、且つ、抵抗R[i+1]及びR[i]はノードND[i]にて互いに接続される。ノードND[0]~ND[n]に生じる電圧(換言すればノードND[0]~ND[n]に加わる電圧)を、夫々、電圧V[0]~V[n]と称する。
【0075】
“0≦i≦n”を満たす任意の整数iに関し、スイッチ回路241のスイッチSW[i]の一端はノードND[i]に接続され、且つ、スイッチ回路242のスイッチSW[i]の一端もノードND[i]に接続される。スイッチ回路241のスイッチSW[0]~SW[n]の各他端はノードNDV1にて共通接続され、スイッチ回路242のスイッチSW[0]~SW[n]の各他端はノードNDV2にて共通接続される。ノードNDV1に加わる電圧が指令相電圧V1*に相当し、ノードNDV2に加わる電圧が指令相電圧V2*に相当する。
【0076】
スイッチ回路241には制御信号CNT1が入力され、スイッチ回路242には制御信号CNT2が入力される。制御信号生成部22(
図9参照)からの制御信号CNTは制御信号CNT1及びCNT2を含む。制御信号CNTが2種類の制御信号CNT1及びCNT2にて構成されていると考えても良いし、制御信号CNTが制御信号CNT1及びCNT2の情報を包含していて、DAコンバータ24にて制御信号CNTがデコードされることで制御信号CNT1及びCNT2が生成されると考えても良い。何れにせよ、制御信号CNT1及びCNT2の夫々は、制御信号生成部22にて特定されたロータ3の位相θに応じた信号である。
【0077】
スイッチ回路241は、制御信号CNT1に応じてスイッチ回路241内のスイッチSW[0]~SW[n]の何れか1つのみをオンとし、他の全てのスイッチをオフとする。このため、ノードND[0]~ND[n]における電圧V[0]~V[n]の何れかがノードNDV1に加わる。スイッチ回路241においてスイッチSW[i]がオンとされているタイミングには電圧V[i]がノードNDV1に加わることで、“V1*=V[i]”となる(ここにおけるiは“0≦i≦n”を満たす整数)。
【0078】
スイッチ回路242は、制御信号CNT2に応じてスイッチ回路242内のスイッチSW[0]~SW[n]の何れか1つのみをオンとし、他の全てのスイッチをオフとする。このため、ノードND[0]~ND[n]における電圧V[0]~V[n]の何れかがノードNDV2に加わる。スイッチ回路242においてスイッチSW[i]がオンとされているタイミングには電圧V[i]がノードNDV2に加わることで、“V2*=V[i]”となる(ここにおけるiは“0≦i≦n”を満たす整数)。
【0079】
図17に、目標相電圧Vu
*、Vv
*又はVw
*の波形と相似な電圧波形との関係において、電圧V[0]~V[n]の幾つかを示す。上述の最低電圧V
BTMから最高電圧V
TOPまでの電圧範囲(
図8参照)をn分割したときに形成される、計(n-1)個の境界の電圧が電圧V[1]~V[n-1]に対応し、且つ、電圧V
BTM、V
TOPが、夫々、電圧V[0]、V[n]に対応する。n分割における分割は、等分割であっても良いし、等分割でなくても良い。
【0080】
このように、スイッチ回路241は、制御信号CNT(CNT1)に基づいて電圧V[0]~V[n]の何れかを選択することにより指令相電圧V1
*を生成し、スイッチ回路242は、制御信号CNT(CNT2)に基づいて電圧V[0]~V[n]の何れかを選択することにより指令相電圧V2
*を生成する。ロータ3の回転に伴うロータ3の位相θの変化に伴い制御信号CNTも刻一刻と変化してゆくので、スイッチ回路241及び242の夫々においてオンとされるスイッチも次々と変化してゆく。結果、
図11を参照して上述したような指令相電圧V1
*及びV2
*が得られる。換言すれば、
図11の特性を有する指令相電圧V1
*及びV2
*がスイッチ回路241及び242から出力されるよう、検出信号HALL_Xに基づき制御信号CNTが生成され且つDAコンバータ24に入力される。
【0081】
本実施形態の構成によれば、
図22の構成との比較において、1相分のスイッチ回路及び1相分のコンパレータを省略することができ、ドライバICの回路規模を大きく削減することができる。
【0082】
以下、複数の実施例の中で、上述のモータ駆動システムに対する幾つかの具体的な構成例、動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0083】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。
図18は第1実施例に係る駆動信号生成部260の回路図である。駆動信号生成部260を
図9のロジック回路26に設けておくことができる。駆動信号生成部260は、AND回路261_1A~261_1C及び261_2A~261_2Cと、FF262_1A~262_1C及び262_2A~262_2Cと、AND回路263_1A~263_1C及び263_2A~263_2Cと、OR回路264u、264v及び264wと、回路265~267と、を備える。駆動信号生成部260において、ハイレベルの駆動信号DRVu、DRVv、DRVwは、夫々、駆動信号DRVu、DRVv、DRVwの値が“1”であることに相当し、ローレベルの駆動信号DRVu、DRVv、DRVwは、夫々、駆動信号DRVu、DRVv、DRVwの値が“0”であることに相当する。
【0084】
図19は、駆動信号生成部260の動作に関わるタイミングチャートであり、駆動信号生成部260の内部信号及び入出力信号の波形が
図19に示されている。ドライバIC10において進角制御を行うこともできるが、第1実施例では進角制御が行われないと仮定され、
図19では進角制御が行われてないときの各波形が示されている。信号DLYB1、DLYB2、FGR及びFGRBは、何れもハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる二値化信号である。
【0085】
回路265は、検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wに基づき信号DLYB1を生成する。信号DLYB1は原則としてハイレベルをとる。回路265は、検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wの何れかにアップエッジが生じると当該アップエッジに同期して微小時間だけ信号DLYB1をローレベルとし、且つ、検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wの何れかにダウンエッジが生じると当該ダウンエッジに同期して微小時間だけ信号DLYB1をローレベルとする。従って、ロータ3の位相θが電気角60°進むごとに信号DLYB1にダウンエッジが生じる。
【0086】
回路266は、信号DLYB1の位相を進角値ADVだけ進めることで信号DLYB2を生成する。進角値ADVは角度の量であり、0以上の値を持つ。ここでは、進角値ADVがゼロである(即ち進角制御を行わない)と仮定しているため、信号DLYB2は信号DLYB1と同じものとなる。
【0087】
回路267は、信号DLYB2に基づいて信号FGR及びFGRBを生成する。回路267は、信号DLYB2にて2回のダウンエッジが生じるごとに信号FGRのレベルをローレベル及びハイレベル間で交互に切り替える。但し、ここでは、検出信号HALL_uの奇数回目のアップエッジに同期した信号FGRのアップエッジのタイミングが期間P1の開始タイミングに相当し、検出信号HALL_uの偶数回目のアップエッジに同期した信号FGRのダウンエッジのタイミングが期間P4の開始タイミングに相当するものとする。信号FGRBは信号FGRの反転信号である。
【0088】
AND回路261_1Aは、検出信号HALL_vと検出信号HALL_wの反転信号との論理積信号を出力する。故に、AND回路261_1Aの出力信号は、信号HALL_v、HALL_wが夫々ハイレベル、ローレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。AND回路261_1Bは、検出信号HALL_wと検出信号HALL_uの反転信号との論理積信号を出力する。故に、AND回路261_1Bの出力信号は、信号HALL_w、HALL_uが夫々ハイレベル、ローレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。AND回路261_1Cは、検出信号HALL_uと検出信号HALL_vの反転信号との論理積信号を出力する。故に、AND回路261_1Cの出力信号は、信号HALL_u、HALL_vが夫々ハイレベル、ローレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。
【0089】
AND回路261_2Aは、検出信号HALL_uと検出信号HALL_vの反転信号との論理積信号を出力する。故に、AND回路261_2Aの出力信号は、信号HALL_u、HALL_vが夫々ハイレベル、ローレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。AND回路261_2Bは、検出信号HALL_vと検出信号HALL_wの反転信号との論理積信号を出力する。故に、AND回路261_2Bの出力信号は、信号HALL_v、HALL_wが夫々ハイレベル、ローレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。AND回路261_2Cは、検出信号HALL_wと検出信号HALL_uの反転信号との論理積信号を出力する。故に、AND回路261_2Cの出力信号は、信号HALL_w、HALL_uが夫々ハイレベル、ローレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。
【0090】
FF262_1A~262_1C及び262_2A~262_2Cの夫々は、ポジティブエッジトリガ型のDフリップフロップであり、データ入力端子(D)、クロック入力端子(CLK)及び出力端子(Q)と、負論理のリセット入力端子(RST)を備える。今、任意のポジティブエッジトリガ型のDフリップフロップを、便宜上、基準DFFと称し、基準DFFの動作を説明する。FF262_1A等と同様に、基準DFFは、データ入力端子(D)、クロック入力端子(CLK)及び出力端子(Q)と、負論理のリセット入力端子(RST)を備えるものとする。基準DFFに対する説明は、FF262_1A~262_1C及び262_2A~262_2Cの夫々に適用される。基準DFFの出力端子(Q)から基準DFFの出力信号が導出される。基準DFFは“0”又は“1”の値(論理値)を保持し、“0”の値を保持しているとき自身の出力信号をローレベルとし且つ“1”の値を保持しているとき自身の出力信号をハイレベルとする。基準DFFにおいて、リセット入力端子(RST)への入力信号がハイレベルであることを前提にクロック入力端子(CLK)への入力信号にアップエッジが生じたとき、それに同期して、データ入力端子(D)への入力信号がハイレベルであれば自身の保持値を“1”とする一方、データ入力端子(D)への入力信号がローレベルであれば自身の保持値を“0”とする。基準DFFにおいて、リセット入力端子(RST)への入力信号がローレベルとされることをデータリセットと称する。基準DFFにおいて、データリセットにより自身の保持値は“0”とされる。
【0091】
FF262_1A、262_1B、262_1C、262_2A、262_2B、262_2Cのデータ入力端子(D)には、夫々、AND回路261_1A、261_1B、261_1C、261_2A、261_2B、261_2Cの出力信号が入力される。FF262_1A、262_1B及び262_1Cのクロック入力端子(CLK)には信号FGRが入力され、FF262_2A、262_2B及び262_2Cのクロック入力端子(CLK)には信号FGRBが入力される。
【0092】
駆動信号生成部260において、FF262_1B又は262_1Cの出力信号にアップエッジが生じるとFF262_1Aにてデータリセットが生じるよう、且つ、FF262_1C又は262_1Aの出力信号にアップエッジが生じるとFF262_1Bにてデータリセットが生じるよう、且つ、FF262_1A又は262_1Bの出力信号にアップエッジが生じるとFF262_1Cにてデータリセットが生じるよう、FF262_1A、262_1B及び262_1Cのリセット入力端子(RST)へ信号が入力される。例えば、FF262_1A、262_1B、262_1Cのリセット入力端子(RST)に対し、夫々、FF262_1B、262_1C、262_1Aの出力信号の反転信号を入力して良い。
【0093】
駆動信号生成部260において、FF262_2B又は262_2Cの出力信号にアップエッジが生じるとFF262_2Aにてデータリセットが生じるよう、且つ、FF262_2C又は262_2Aの出力信号にアップエッジが生じるとFF262_2Bにてデータリセットが生じるよう、且つ、FF262_2A又は262_2Bの出力信号にアップエッジが生じるとFF262_2Cにてデータリセットが生じるよう、FF262_2A、262_2B及び262_2Cのリセット入力端子(RST)へ信号が入力される。例えば、FF262_2A、262_2B、262_2Cのリセット入力端子(RST)に対し、夫々、FF262_2B、262_2C、262_2Aの出力信号の反転信号を入力して良い。
【0094】
尚、検出信号HALL_u、HALL_v又はHALL_wのアップエッジに同期して信号FGRにアップエッジが生じるとき、信号FGRのアップエッジタイミングの直前における検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wに基づきFF262_1A~262_1Cのデータ入力端子(D)への入力信号が決定されるよう、駆動信号生成部260が形成されているものとする。従って例えば、検出信号HALL_uのアップエッジに同期して信号FGRにアップエッジが生じるとき、信号FGRの当該アップエッジタイミングの直前では検出信号HALL_u、HALL_v、HALL_wが夫々、ローレベル、ハイレベル、ローレベルであるため、FF262_1A~262_1Cの内、FF262_1Aのデータ入力端子(D)への入力信号のみがハイレベルと認識されてFF262_1Aのみの出力信号がハイレベルになるものとする。同様に、検出信号HALL_u、HALL_v又はHALL_wのアップエッジに同期して信号FGRBにアップエッジが生じるとき、信号FGRBのアップエッジタイミングの直前における検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wに基づきFF262_2A~262_2Cのデータ入力端子(D)への入力信号が決定されるよう、駆動信号生成部260が形成されているものとする。従って例えば、検出信号HALL_wのアップエッジに同期して信号FGRBにアップエッジが生じるとき、信号FGRBの当該アップエッジタイミングの直前では検出信号HALL_u、HALL_v、HALL_wが夫々、ハイレベル、ローレベル、ローレベルであるため、FF262_2A~262_2Cの内、FF262_2Aのデータ入力端子(D)への入力信号のみがハイレベルと認識されてFF262_2Aのみの出力信号がハイレベルになるものとする。
【0095】
AND回路263_1Aは、FF262_1Aの出力信号と信号Spwm1との論理積信号S_1Aを出力する。故に、AND回路263_1Aの出力信号S_1Aは、FF262_1Aの出力信号と信号Spwm1とが共にハイレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。AND回路263_1Bは、FF262_1Bの出力信号と信号Spwm1との論理積信号S_1Bを出力する。故に、AND回路263_1Bの出力信号S_1Bは、FF262_1Bの出力信号と信号Spwm1とが共にハイレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。AND回路263_1Cは、FF262_1Cの出力信号と信号Spwm1との論理積信号S_1Cを出力する。故に、AND回路263_1Cの出力信号S_1Cは、FF262_1Cの出力信号と信号Spwm1とが共にハイレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。
【0096】
AND回路263_2Aは、FF262_2Aの出力信号と信号Spwm2との論理積信号S_2Aを出力する。故に、AND回路263_2Aの出力信号S_2Aは、FF262_2Aの出力信号と信号Spwm2とが共にハイレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。AND回路263_2Bは、FF262_2Bの出力信号と信号Spwm2との論理積信号S_2Bを出力する。故に、AND回路263_2Bの出力信号S_2Bは、FF262_2Bの出力信号と信号Spwm2とが共にハイレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。AND回路263_2Cは、FF262_2Cの出力信号と信号Spwm2との論理積信号S_2Cを出力する。故に、AND回路263_2Cの出力信号S_2Cは、FF262_2Cの出力信号と信号Spwm2とが共にハイレベルである期間においてのみハイレベルとなり、他の期間ではローレベルとなる。
【0097】
OR回路264uは、信号S_1Aと信号S_2Bの論理和信号を駆動信号DRVuとして出力する。故に、駆動信号DRVuは、信号S_1A及びS_2Bの少なくとも一方がハイレベルであればハイレベルとなり、信号S_1A及びS_2Bの双方がローレベルであればローレベルとなる。OR回路264vは、信号S_1Bと信号S_2Cの論理和信号を駆動信号DRVvとして出力する。故に、駆動信号DRVvは、信号S_1B及びS_2Cの少なくとも一方がハイレベルであればハイレベルとなり、信号S_1B及びS_2Cの双方がローレベルであればローレベルとなる。OR回路264wは、信号S_1Cと信号S_2Aの論理和信号を駆動信号DRVwとして出力する。故に、駆動信号DRVwは、信号S_1C及びS_2Aの少なくとも一方がハイレベルであればハイレベルとなり、信号S_1C及びS_2Aの双方がローレベルであればローレベルとなる。
【0098】
FF262_1A、FF262_2A、FF262_1B、FF262_2B、FF262_1C、FF262_2Cの出力信号のアップエッジタイミングが、夫々、期間P1、P2、P3、P4、P5、P6の開始タイミングに相当する。
【0099】
このように、ロジック回路26内の駆動信号生成部260は、検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wに基づき、ロータ3の位相θが電気角120°分変化するごとに信号レベルが変化する内部信号(FGR、FGRB)を生成し、当該内部信号の信号レベル変化を契機に信号Spwm1及びSpwm2の割り当ての対象となる相をU相、V相及びW相間で切り替える。
図18の回路構成から理解されるよう、割り当ての対象となる相は、検出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wに基づいて決定される。例えば、検出信号HALL_vがハイレベル且つ検出信号HALL_wがローレベルである期間において信号FGRにアップエッジが生じたとき、信号Spwm1の割り当ての対象となる相がU相に切り替えられる。
【0100】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。本実施形態において、ここまでの説明では、進角制御の存在を無視していたが(即ち、進角値ADVがゼロであると仮定しているが)、ドライバIC10において進角制御を行うこともできる。第2実施例では進角制御が行われることを前提とする。
【0101】
進角制御を行う場合、
図18の駆動信号生成部260を用い、進角値ADVに正の値を設定すれば良い。
図20は、進角制御が行われるときの駆動信号生成部260の動作に関わるタイミングチャートであり、駆動信号生成部260の内部信号及び入出力信号の波形が
図20に示されている。駆動信号生成部260は、出信号HALL_u、HALL_v及びHALL_wと内部信号(FGR、FGRB)との間に進角値ADV分の位相差を設けることで、進角制御を実現する。
【0102】
進角値ADVは固定値を有していても良いし、ドライバIC10の外部装置(不図示)からドライバIC10に対して入力される信号に基づき進角値ADVが設定されても良い。或いは、モータ1の回転速度に応じて進角値ADVが設定されても良いし、モータ1にて発生されるべきトルクを指定するトルク指令信号に基づいて進角値ADVが設定されても良い。
【0103】
進角制御が行われるとき、期間P1の開始タイミングが検出信号HALL_uのアップエッジタイミングから進角値ADVだけずれる。期間P2~P6の開始タイミングと検出信号HALL_u、HALL_v又はHALL_wのアップエッジタイミングとの間においても同様である。このため、進角値ADVを考慮して制御信号CNTが生成される。即ち例えば、
図9の検出信号HALL_Xが検出信号HALL_uであるならば、制御信号生成部22は、検出信号HALL_u及び進角値ADVに基づき、検出信号HALL_uのアップエッジタイミングから進角値ADV分だけ前のタイミングにおいて指令相電圧V1
*が最低電圧V
BTMから上昇開始するように制御信号CNTを生成すれば良い(指令相電圧V2
*は指令相電圧V1
*に対して電気角120°分だけ遅れたものとされる)。
【0104】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第3実施例では、上述の構成又は動作に対する幾つかの応用技術、変形技術などを説明する。
【0105】
一般に、二相変調ではスイッチング停止相のコイルの相電圧が電源電圧又はグランドの電圧に固定される。上述の実施形態では、スイッチング停止相に対応するハーフブリッジ回路を出力ロー状態に固定する例を挙げているが、これに代えて、スイッチング停止相に対応するハーフブリッジ回路が出力ハイ状態に固定されるようドライバIC10を変形しても良い。この場合には、スイッチング停止相のコイルに対し電源電圧VPWRが固定電圧として供給される(即ち、スイッチング停止相のコイルへの相電圧が電源電圧VPWRにて固定される)。例えば、U相がスイッチング停止相とされる期間において相電圧Vuは電源電圧VPWRに固定される。
【0106】
上述の実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示であり、Nチャネル型のFETがPチャネル型のFETに変更されるように、或いは、Pチャネル型のFETがNチャネル型のFETに変更されるように、FETを含む回路の構成は変形され得る。
【0107】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0108】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0109】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 モータ
2u、2v、2w コイル
3 ロータ
4 位置検出器
10 ドライバIC
20 駆動制御回路
21 基準電圧生成部
22 制御信号生成部
23 周期電圧生成部
24 DAコンバータ
240 抵抗ラダー部
241、242 スイッチ回路
25_1、25_2 コンパレータ
26 ロジック回路
30 プリドライバ
40 インバータ回路