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特許7577538ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂を調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/281 20060101AFI20241028BHJP
   C07K 1/16 20060101ALI20241028BHJP
   C12N 7/02 20060101ALI20241028BHJP
   C07K 17/00 20060101ALI20241028BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20241028BHJP
   B01D 15/34 20060101ALI20241028BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20241028BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20241028BHJP
   B01J 20/32 20060101ALI20241028BHJP
   B01J 20/282 20060101ALI20241028BHJP
   B01J 20/285 20060101ALI20241028BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20241028BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20241028BHJP
【FI】
B01J20/281 X
C07K1/16
C12N7/02
C07K17/00
C07K1/22
B01D15/34
B01J20/04 A
B01J20/10 A
B01J20/26 L
B01J20/32 Z
B01J20/281 G
B01J20/282 Z
B01J20/285
G01N30/88 J
C07K16/00
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020538532
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2020075807
(87)【国際公開番号】W WO2021163910
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】507190880
【氏名又は名称】バイオ-ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ソン ファン
(72)【発明者】
【氏名】シュー ジェームズ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リャオ ジアリ
(72)【発明者】
【氏名】ベライル クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ユアン ハイフイ
(72)【発明者】
【氏名】ユー ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】カオ ウェンリ
(72)【発明者】
【氏名】バオ シャオチョン
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0085735(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103923355(CN,A)
【文献】特表2002-510541(JP,A)
【文献】特開2004-099433(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181925(WO,A1)
【文献】米国特許第07678269(US,B1)
【文献】国際公開第2019/173731(WO,A1)
【文献】特開2010-132779(JP,A)
【文献】Tugba BASARGAN et al.,Spray-Dried Mesoporous Hydroxyapatite-Chitosan Biocomposites, Polymer-Plastics Technology and Engineering,2015年04月,Vol.54, No.11,pp.1172-1183,DOI: 10.1080/03602559.2014.1003235
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/281-20/282,
B01J 20/30,20/32,
C08J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融解ポリマーを含む溶液に、細孔を有するクロマトグラフィー樹脂ビーズを撹拌しながら加え、該融解ポリマーを吸収させるかまたはさもなければ該融解ポリマーを該クロマトグラフィー樹脂ビーズの細孔に入り込ませる工程;
該溶液を霧化して、不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを形成させる工程、および該不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを水浴に集める工程;ならびに
該不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズから、過剰のポリマーを除去する工程
を含む、不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを調製する方法。
【請求項2】
前記除去する工程が、前記不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを、50μm~200μmの目開きを有する一つまたは複数の篩に通すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを洗浄することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記融解ポリマーがアガロースであり、該アガロースが0.5 w/v%~8 w/v%の濃度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記クロマトグラフィー樹脂ビーズが、マクロ多孔性樹脂ビーズである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記マクロ多孔性樹脂ビーズが、ヒドロキシアパタイトミクロスフェアである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マクロ多孔性樹脂ビーズが、アクリルアミド、メタクリレート、ポリスチレン、またはシリカを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記マクロ多孔性樹脂ビーズが、N,N’-メチレンビスアクリルアミドで架橋された3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールとビニルピロリドンとの共重合体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マクロ多孔性樹脂ビーズが、グリシジルメタクリレートおよびジエチレングリコールジメタクリレートを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記融解ポリマーを含む溶液が、60℃~100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記霧化する工程が、ノズルを通して前記溶液を流すこと、およびノズルから現れる該溶液を空気流で取り囲むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記空気流の温度が、20℃~90℃である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記空気流の流速が、15 L/分~5 L/分である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記水浴の温度が、4℃~40℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセスによって調製した不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズによって標的分子が捕捉されないような条件下で、該標的分子を含む試料を、該不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズに接触させる工程;および
該不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズにフロースルーさせて、該標的分子を集める工程
を含む、クロマトグラフィーを実施する方法。
【請求項16】
前記試料が、前記不溶ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズによって捕捉される混入物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記標的分子がタンパク質-ナノ粒子複合体であり、前記混入物がフリータンパク質である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記試料が、タンパク質-ナノ粒子複合体、フリータンパク質、および緩衝剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、界面活性剤をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記界面活性剤が、ポリアルキレングリコールである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記界面活性剤が、プルロニック(登録商標)F-68である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記標的分子が、ウイルスである、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記集める工程が、前記不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズから、前記標的分子に富む一つまたは複数の画分を集めることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記集める工程が、前記不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズに遠心力または真空を適用すること、および前記不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズから前記標的分子に富む一つまたは複数の画分を集めることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記タンパク質がIgG抗体である、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記タンパク質-ナノ粒子複合体が、タンパク質-ポリマードット複合体である、請求項18~21および25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記試料がフリーナノ粒子をさらに含み、前記不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズが、前記複合体から該フリーナノ粒子を分離させる、請求項18~21、25および26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズが、セラミックヒドロキシアパタイトを含む、請求項15~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記不溶性ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズが、N,N’-メチレンビスアクリルアミドで架橋された3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールとビニルピロリドンとの共重合体を含むマクロ多孔性樹脂ビーズを含む、請求項15~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記融解ポリマーが、0.5 w/v%~8 w/v%の濃度のアガロースである、請求項15~29のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
現在、ウイルス、大粒子に結合したタンパク質、および他の大きな生体分子の、より小さい不純物からの精製には、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)および/または遠心分離を含むがこれらに限定されない、様々な分離方法の使用が含まれる。SECでは、高価なサイズ排除樹脂が詰め込まれた大きなカラム、低流速および限定された試料ロードを必要とする。IEXおよびHICは選択性が限定されている。遠心分離は、生体分子が懸濁される媒体と比較して相対的に高密度である大きい生体分子にだけ適用し得る。
【発明の概要】
【0002】
不溶性多孔質ポリマーを含むクロマトグラフィー樹脂を調製する方法が提供される。いくつかの実施形態において、方法は、融解ポリマーを含む溶液にクロマトグラフィー樹脂を撹拌しながら加え、融解ポリマーを吸収させるかまたはさもなければ融解ポリマーをクロマトグラフィー樹脂の細孔に入り込ませる工程を含む。次に、溶液を霧化し、不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを水浴に集める。次に、例えば、不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを約50μm~約200μmの目開きを有する篩に通すことによって、および/または不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを洗浄することによって、過剰のポリマーを不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズから除去する。いくつかの実施形態において、融解ポリマー溶液の温度は、約100℃である。いくつかの実施形態において、ポリマーはアガロースであり、該アガロースの濃度は、約0.5%~約8%の範囲である。特定の実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は、マクロ多孔性樹脂である。いくつかの実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は、ヒドロキシアパタイトミクロスフェアである。いくつかの実施形態において、マクロ多孔性樹脂はアクリルアミド、メタクリレート、ポリスチレン、またはシリカを含む。特定の実施形態において、マクロ多孔性樹脂は、N,N’-メチレンビスアクリルアミドで架橋された3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールとビニルピロリドンとの共重合体を含む。いくつかの実施形態において、マクロ多孔性樹脂は、グリシジルメタクリレートおよびジエチレングリコールジメタクリレートを含む。特定の実施形態において、溶液を霧化する工程は、ノズルから現れる溶液を空気流で取り囲むことを含む(例えば、約20℃~約90℃で、約15 L/分~約25 L/分の流速)。いくつかの実施形態において、水浴の温度は、約4℃~約40℃である。
【0003】
ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂を使用するクロマトグラフィーを実施する方法がまた提供される。いくつかの実施形態において、方法は、標的分子が、不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂によって捕捉されないような条件下で、標的分子を含む試料を不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂に接触させる工程、および不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂から、標的分子を集める工程を含む。いくつかの実施形態において、試料は、クロマトグラフィー樹脂によって捕捉される混入物を含む。いくつかの実施形態において、標的分子は、タンパク質-ナノ粒子複合体であり、混入物はフリー(非複合化)タンパク質である。いくつかの実施形態において、試料は、タンパク質-ナノ粒子複合体、フリータンパク質、および緩衝剤を含む。特定の実施形態において、標的はウイルスである。いくつかの実施形態において、試料は、界面活性剤をさらに含む(例えば、ポリアルキレングリコールまたはプルロニックF-68)。特定の実施形態において、集める工程は、不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂から、標的分子に富む一つまたは複数の画分を集めることを含む。いくつかの実施形態において、集める工程は、不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂に遠心力または真空を適用すること、および不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂から標的分子に富む一つまたは複数の画分を集めることを含む。いくつかの実施形態において、タンパク質は抗体である。いくつかの実施形態において、タンパク質はIgG抗体である。特定の実施形態において、タンパク質-ナノ粒子複合体は、タンパク質-ポリマードット複合体である。いくつかの実施形態において、試料はフリーナノ粒子をさらに含み、不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂は、複合体からフリーナノ粒子を分離させる。
[本発明1001]
融解ポリマーを含む溶液にクロマトグラフィー樹脂を撹拌しながら加え、該加熱されたポリマーを吸収させるかまたはさもなければ該加熱されたポリマーをクロマトグラフィー樹脂の細孔に入り込ませる工程;
該溶液を霧化する工程、および不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを水浴に集める工程;ならびに
該不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズから、過剰のポリマーを除去する工程
を含む、ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂を調製する方法。
[本発明1002]
前記除去する工程が、前記不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを、約50μm~約200μmの目開きを有する一つまたは複数の篩に通すことを含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを洗浄することをさらに含む、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
前記ポリマーがアガロースであり、該アガロースが約0.5%~約8%の濃度を有する、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
前記クロマトグラフィー樹脂が、マクロ多孔性樹脂である、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記マクロ多孔性樹脂が、ヒドロキシアパタイトミクロスフェアである、本発明1005の方法。
[本発明1007]
前記マクロ多孔性樹脂が、アクリルアミド、メタクリレート、ポリスチレン、またはシリカを含む、本発明1005の方法。
[本発明1008]
前記マクロ多孔性樹脂が、N,N’-メチレンビスアクリルアミドで架橋された3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールとビニルピロリドンとの共重合体を含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記マクロ多孔性樹脂が、グリシジルメタクリレートおよびジエチレングリコールジメタクリレートを含む、本発明1007の方法。
[本発明1010]
前記融解ポリマーが、約100℃である、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記溶液を霧化する工程が、ノズルから現れる該溶液を空気流で取り囲むことを含む、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記空気流の温度が、約20℃~約90℃である、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記空気流の流速が、約15 L/分~約25 L/分である、本発明1011または1012の方法。
[本発明1014]
前記水浴の温度が、約4℃~約40℃である、本発明1001の方法。
[本発明1015]
本発明1001~1013のいずれかのプロセスによって調製した不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂によって標的分子が捕捉されないような条件下で、該標的分子を含む試料を、該不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂に接触させる工程;および
該不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂から、該標的分子を集める工程
を含む、クロマトグラフィーを実施する方法。
[本発明1016]
前記試料が、前記不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂によって捕捉される混入物を含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
前記標的分子がタンパク質-ナノ粒子複合体であり、前記混入物がフリータンパク質である、本発明1015の方法。
[本発明1018]
前記試料が、タンパク質-ナノ粒子複合体、フリータンパク質、および緩衝剤を含む、本発明1015の方法。
[本発明1019]
前記試料が、界面活性剤をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記界面活性剤が、ポリアルキレングリコールである、本発明1019の方法。
[本発明1021]
前記界面活性剤が、プルロニック(登録商標)F-68である、本発明1020の方法。
[本発明1022]
前記標的分子が、ウイルスである、本発明1015の方法。
[本発明1023]
前記集める工程が、前記不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂から、前記標的分子に富む一つまたは複数の画分を集めることを含む、本発明1015の方法。
[本発明1024]
前記集める工程が、前記不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂に遠心力または真空を適用すること、および前記不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂から前記標的分子に富む一つまたは複数の画分を集めることを含む、本発明1015の方法。
[本発明1025]
前記タンパク質がIgG抗体である、本発明1017~1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
前記タンパク質-ナノ粒子複合体が、タンパク質-ポリマードット複合体である、本発明1017~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
前記試料がフリーナノ粒子をさらに含み、前記不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂が、前記複合体から該フリーナノ粒子を分離させる、本発明1017~1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
前記クロマトグラフィー樹脂が、セラミックヒドロキシアパタイトである、本発明1015~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
前記クロマトグラフィー樹脂が、N,N’-メチレンビスアクリルアミドで架橋された3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールとビニルピロリドンとの共重合体を含むマクロ多孔性樹脂である、本発明1015~1027のいずれかの方法。
[本発明1030]
前記ポリマーが、約0.5%~約8%の濃度のアガロースである、本発明1015~1029のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1Aは、アガロース充填ヒドロキシアパタイトミクロスフェアの画像を示す。図1Bは、ヒドロキシアパタイトをHAc-NaAc 緩衝液(pH=3.5)を用いて溶解させた後の、染色したアガロース-ヒドロキシアパタイトミクロスフェアの画像を示す。
図2】アガロース充填UNOsphereの画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
発明の詳細な説明
本発明者らは、多様な特性、すなわち、サイズ排除モードおよび捕捉モードを有する、不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂を調製する新規な方法を見出した。また本発明者らは、樹脂の選択性または結合能力に大きな影響を与えることなく、不溶性多孔質ポリマーを樹脂中に導入し得ることを見出した。当該拡張性のある方法は、有機溶媒を使用しないので、環境に優しい。本方法においては、ポリマー内でビーズがクラスターになることなく、分離したポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズが生成される。
【0006】
定義
「ヒドロキシアパタイト」という用語は、Ca10(PO4)6(OH)2の構造式を有するリン酸カルシウムの不溶性水酸化無機物を意味する。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂は、生体分子とマルチモードの相互作用を有する点で、マルチモードな樹脂と考えられる。その相互作用の主要モードは、リン酸カチオン交換およびカルシウム金属親和性である。ヒドロキシアパタイト(Hydroxapatite)は、高温で焼結されて結晶形態からセラミック形態に改変されているヒドロキシアパタイトの化学的に純粋な形態である、ヒドロキシアパタイトミクロスフェア(hydroxyapatite microspheres)を含むがこれらに限定されない数多くの形態で市販されている。ヒドロキシアパタイトミクロスフェアは球形をしており、約10ミクロン~約100ミクロンの範囲の粒子直径を有し、公称直径が20ミクロン、40ミクロン、および80ミクロンで一般的に入手可能である。ヒドロキシアパタイトミクロスフェア(またはHAM)はマクロ多孔性(macroporous)であり、以下の3つのタイプが入手可能である;タイプI:中程度の多孔性および相対的に高い結合能力を有する、タイプII:より大きい多孔性およびより低い結合能力を有する、タイプXT:中程度の多孔性、相対的に高い結合能力および優れた圧力-流動特性を有する。本段落における全てのアパタイトベースの樹脂は、Bio-Rad Laboratories, Inc. (Hercules, California, USA)から入手可能である。
【0007】
「抗体」という用語は、免疫グロブリンまたはその部分形態を意味する。本用語は、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組み換え抗体、ハイブリッド抗体、突然変異抗体、移植抗体、およびインビトロ産生抗体などの天然形態または遺伝子組み換え形態を含む、ヒトまたは他の哺乳動物の細胞系に由来する、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMクラスのポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を含むがこれらに限定されない。「抗体」は、免疫グロブリン部分を含有する融合タンパク質を含むがこれらに限定されない、複合物形態を包含する。また「抗体」は、それらが抗原結合機能を保持しているかどうかにかかわらず、Fab、F(ab')2、Fv、scFv、Fd、dAb、Fc、および他の組成物などの、抗体フラグメントを含む。
【0008】
「タンパク質」という用語は、アミノ酸ポリマー、または一連の2またはそれ以上の相互作用しているもしくは結合したアミノ酸ポリマーを示すために使用される。この用語は、アミノ酸ポリマー(ここで、一つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学的模倣物である)、ならびに、天然に存在するアミノ酸ポリマー、改変された残基を含む天然に存在するアミノ酸ポリマー、および天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0009】
「試料」という用語は、精製されていることが望ましい標的分子を含む任意の組成物を意味する。いくつかの実施形態において、精製される標的分子は、タンパク質-ナノ粒子複合体(例えば、抗体-ナノ粒子複合体)またはウイルスである。
【0010】
「混入物」(contaminant)という用語は、試料から除去されるべき任意の不純物を意味する。いくつかの実施形態において、試料は、抗体-ナノ粒子複合体および未反応成分の複合反応混合物であり、混入物は、複合化していない(未反応またはフリー)抗体(および任意に複合化していないナノ粒子)である。
【0011】
本明細書において使用されるとおり、「a」、「an」、および「the」という用語は、「一つまたは複数」を意味することを意図する。本明細書において使用されるとおり、「約」という用語は、記載される数、および記載される数の10%以内の任意の数値を意味する。したがって、「約5」は、4.5および5.5を含む4.5~5.5の間の任意の数値を意味する。
【0012】
ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂を調製する方法
一実施形態において、ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂を調製する方法は、融解ポリマーを含む溶液にクロマトグラフィー樹脂を撹拌しながら加え、融解ポリマーを吸収させるかまたはさもなければ融解ポリマーをクロマトグラフィー樹脂の細孔に入り込ませる工程を含む。いくつかの実施態様において、ポリマーは、該ポリマーの融点を超える温度に加熱された水に溶解される。一実施形態において、クロマトグラフィーの間、クロマトグラフィーの水性条件により、ポリマーがクロマトグラフィー樹脂から除去されないように、ポリマーは不溶性である。いくつかの実施形態において、巨大分子(例えば、タンパク質、核酸など)がクロマトグラフィー樹脂内の部位と相互作用し、それによってクロマトグラフィー樹脂の選択性および結合能力が実質的に維持されることが、クロマトグラフィー樹脂を充填することによって妨げられないように、ポリマーは十分に多孔性である。クロマトグラフィー樹脂は多孔性であり、標的分子が、樹脂の細孔を通して少なくとも部分的にクロマトグラフィー樹脂と相互作用するのを可能にする。したがって、ポリマーは、この相互作用を著しく阻害すべきでない。
【0013】
クロマトグラフィー樹脂を充填するために、様々なポリマーを使用することができる。いくつかの実施形態において、ポリマーはアガロースである。アガロース(例えば、0.5~8%)は、アガロースを加熱して該アガロースを融解させ、融解したアガロースの溶液をクロマトグラフィー樹脂と混合することによって、クロマトグラフィー樹脂に導入し得る。いくつかの実施形態において、アガロース溶液は、約100℃に加熱される。特定の実施形態において、アガロース溶液は、約60℃~約100℃に加熱される。
【0014】
次に、融解ポリマー/クロマトグラフィー樹脂溶液をノズルを通して流し、ノズルから現れる溶液を空気流で取り囲むことによって、融解ポリマー/クロマトグラフィー樹脂溶液を霧化し、粘性のあるポリマー液滴ならびにビーズの外側表面および細孔内がポリマーで被覆されたクロマトグラフィー樹脂ビーズを形成させる。いくつかの実施形態において、ノズルは二元ノズルであり、例えば、加熱された空気および懸濁流をノズル開口部に対して混合する。いくつかの実施形態において、空気流の温度は、約20℃~約90℃である。特定の実施態様において、空気流の流速は、約15 L/分~約25 L/分(例えば、約20L/分)である。樹脂ビーズとポリマー液滴の再混合を防止するため、樹脂ビーズおよびポリマー液滴は、霧化した後、直ちに水浴に集められる。ポリマー液滴および樹脂の細孔内および樹脂の表面上に組み込まれたポリマーは凝固する。ポリマー充填された樹脂ビーズは水浴の底に集められ、過剰のポリマー(すなわち、固体のポリマー液滴)は水中に懸濁したままになる。例えば、水に懸濁した不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズを、約50μm~約200μmの範囲の目開きを有する篩に通すことによって、過剰のポリマーが不溶性多孔質ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂ビーズから除去される。いくつかの実施形態において、過剰のポリマーを除去するために120μmおよび65μmの篩が使用される。選択肢として、過剰のポリマーは、ポリマー充填樹脂ビーズを洗浄することによって除去される。いくつかの実施形態において、過剰のポリマーは、懸濁液をデカンテーションすることによって除去される。いくつかの実施形態において、スプレーノズル径は、直径1~3mmであり、例えば直径2mmである。いくつかの実施形態において、水浴の温度は約4℃~40℃である。
【0015】
いくつかの実施形態において、加熱されたアガロース溶液中のアガロースは、クロマトグラフィー樹脂の細孔を充填し、クロマトグラフィー樹脂の外面をコーティングするのに十分な濃度(例えば、アガロースが約0.5%を超える、約1%を超える、約2%を超える、約3%を超える、または約4%を超える)にある。ビーズ内部のアガロース溶液は、約40℃未満の温度で不溶性ゲルを形成する。
【0016】
いくつかの実施形態において、アガロースは架橋されない。例えば、実施例に記載されるように、アガロースは、非架橋形態でクロマトグラフィー樹脂に導入し得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、アガロースをクロマトグラフィー樹脂に充填した後、架橋剤(例えば、ジビニルスルホン、エピクロロヒドリン、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,3ジクロロプロパノール、2,3ジブロモプロパノールを含むがこれらに限定されない化学架橋剤)が導入される。したがって、いくつかの実施形態において、クロマトグラフィー樹脂内のアガロースは架橋される。
【0017】
一般に、アガロースは官能化されない。したがって、いくつかの実施形態において、アガロースは、クロマトグラフィーの間に試料中の成分と相互作用するように改変されず、それによって、ポリマーなしのクロマトグラフィー樹脂と実質的に同じ選択性を提供する。
【0018】
本明細書に記載の方法においては、クロマトグラフィーに適した様々なマクロ多孔性樹脂を使用し得る。いくつかの実施形態において、樹脂はセラミックヒドロキシアパタイトである。いくつかの実施形態において、タイプIセラミックヒドロキシアパタイトまたはタイプIIセラミックヒドロキシアパタイトを使用し得る(すなわち、いずれかの多孔度を使用し得る)。いくつかの実施形態において、樹脂は、例えば、イオン交換官能基、疎水性相互作用官能基、混合モード官能基、または親和性リガンドで官能化されている。任意の特定のタンパク質の分離または精製に最適な多孔度は、タンパク質または原料混合物の組成によって異なる。特定の実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は、アクリルアミド、メタクリレート、ポリスチレン、またはシリカを含むマクロ多孔性樹脂である。一つの実施形態において、マクロ多孔性樹脂は、N,N’-メチレンビスアクリルアミドで架橋された3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールとビニルピロリドンとの共重合体を含む。別の実施形態において、マクロ多孔性樹脂は、グリシジルメタクリレートおよびジエチレングリコールジメタクリレートを含む。そのようなマクロ多孔性樹脂の例は、UNOsphere Q、UNOsphere S、UNOsphere Rapid S、Macro-Prep High Q、Macro-Prep DEAE、Macro-Prep 25 Q、Macro-Prep CM、Macro-Prep 25 S、Nuvia S、およびNuvia Q (全てBio-Radから)を含むがこれらに限定されない。マクロ多孔性樹脂の他の例は、トーソーバイオサイエンス社(Tosoh Bioscience)からのToyopearl SP、CM Q、DEAE、DGigaCap S、CM、Q;サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)からのPoros HS、XS、HQ、XQ;ミリポア(Millipore)からのEshmuno S、Q、CPX、CPS、HCX;およびGEヘルスケア(GE healthcare)からのSepharose Q、Sepharose S、Capto Q、Capto S、Capto MMC、Capto Adhereを含むがこれらに限定されない。
【0019】
ポリマー充填樹脂は、充填層の形態のクロマトグラフィ-固体相として使用し得、充填層全体、または体積で50%以上などの充填層の主要部分のいずれかを構成し得る。充填層は、任意の形状の管において保持され得、樹脂で実施される精製ならびに洗浄および再生は、両方とも、バッチプロセス、連続プロセス、またはバッチ/連続の混成プロセスのいずれかとして実施され得る。一つの実施態様において、管は、幅に対して適切な長さを有するカラムであり、適切なプロセスは、カラムを通した連続流などの連続プロセスを含む。
【0020】
クロマトグラフィー樹脂(例えば、クロマトグラフィービーズ)は、サイズ排除モードおよび捕捉モードを有し得る。サイズ排除モードは、分子、複合体または粒子のサイズまたは分子量に基づいてこれらを分離させる。ビーズは、サイズの閾値を超える分子、複合体または粒子が、細孔に入り込むのを排除し、空隙容積(void volume)、排除容積(excluded volume)またはクロマトグラフィーカラムフロースルー(chromatography column flow through)に集められるようなサイズの細孔を有する。より小さいタンパク質および他の分子は、ビーズの細孔に入り込み得、ビーズに捕捉される。本明細書において使用されるように、ビーズの分子量限界サイズは、細孔に入り込むことができるタンパク質または分子のおおよそのサイズを意味する。ヒドロキシアパタイトミクロスフェアの細孔を充填するアガロースの割合が増加するにつれて、細孔はより小さくなり、より低い分子量限界サイズをもたらす。したがって、4%アガロース充填ビーズの分子量限界は、0.5%アガロース充填ビーズの分子量限界未満である。
【0021】
ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂を使用する方法
本明細書において記載されるポリマー充填クロマトグラフィー樹脂は、クロマトグラフィー方法において使用し得る。一つの実施形態において、方法は、ビーズによって標的分子が捕捉されないような条件下で、標的分子を含む試料を、ポリマー充填クロマトグラフィー樹脂(例えば、多数のアガロース充填ヒドロキシアパタイトミクロスフェア)に接触させる工程を含む。一つの実施形態において、試料はポリマー充填クロマトグラフィー樹脂によって捕捉される混入物を含む。
【0022】
試料をポリマー充填クロマトグラフィー樹脂に適用する前に、樹脂は試料をロードするのに使用される緩衝剤または塩でしばしば平衡化される。一般に、標準的クロマトグラフィーと同じ条件および試薬が用いられる。例えば、セラミックヒドロキシアパタイトベースのクロマトグラフィーには、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、およびカルシウムなどのカチオン、ならびに塩素、フッ素、酢酸塩、リン酸塩、およびクエン酸塩などのアニオンを有する緩衝剤または塩を含む、様々な緩衝剤および塩のいずれかが使用される。平衡化溶液のpHは、通常は約6.0またはそれ以上であり、多くの場合、pHは、約6.5~約8.6の範囲内、または約6.5~約7.8の範囲内である。いくつかの実施形態において、平衡化はトリス(Tris)またはリン酸ナトリウム緩衝液を含む溶液において実施し得る。リン酸ナトリウム緩衝液は、例えば、約0.5mM~約50mM、または約10mM~約35mMの濃度で存在し得る。
【0023】
上記のように、本明細書において記載されるクロマトグラフィー工程は、充填カラム、および流動層カラムまたは膨張層カラムを含むがこれらに限定されない従来の精製形態で、ならびにローディング、洗浄および溶出のためのバッチモードとともに、連続モードまたはフロースルーモードを含む任意の従来のクロマトグラフィー法によって実施し得る。いくつかの実施形態において、0.5センチメートル未満~メーターを超える範囲の直径、および1センチメーター未満~30センチメーターを超える範囲のカラム高さを有するカラムに媒体が詰め込まれる。一つの実施形態において、樹脂はスピンカラムに提供される。試料をスピンカラムの上端に入れ、遠心力または真空により試料をカラムに通過させる。いくつかの場合において、樹脂をクロマトグラフィーカラムに提供し、試料をカラムの上端に入れ、重力により試料をカラムに通過させる。カラムは、圧力ありでまたは圧力なしで、上端から下端にまたは下端から上端に作動し得、カラムにおける流体の流れの方向は、プロセス中に反転し得る。いくつかの場合において、充填層の充填形態を維持したままで流体の流れを反転することは有利になり得る。
【0024】
本明細書において記載される方法は、ウイルス、自然発生のタンパク質、および組み換えタンパク質を含む、数多くのタイプの標的分子を精製するために使用し得る。いくつかの実施形態において、標的分子は、例えばナノ粒子などのレポーターと複合化または結合する。いくつかの実施形態において、標的分子は、ナノ粒子と複合化した抗体(例えば、IgG)である。ナノ粒子は、例えば、約1nm~約1000nmのナノスケールのサイズの粒子である。いくつかの実施形態において、粒子は、1~300nm、5~500nm、または10~50nmである。多くのナノ粒子は、おおよそ球形であり、それにより球状粒子の半径または直径に係る寸法がもたらされる。流体力学半径または流体力学直径が、ナノ粒子サイズを定義するのにも使用し得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、蛍光半導体ポリマードット(pdot)である。そのようなpdotの例は、例えば、Wu, C., et al., Chem. Mater. 21:3816-3822 (2009); Rahim, N. A. A., et al., Adv. Mater. 21:3492-3496 (2009), Rong et al., ACS Nano 7(1):376-84 (2013); 米国特許公開第2013/0266957号公報; WO2012/054525;および米国特許公開第2012/0282632号公報に記載されている。発色性pdotは、ポリマーを安定なサブミクロンサイズの粒子に崩壊させることにより生成し得る。本明細書において提供されるpdotナノ粒子は、沈殿に依存する方法、エマルションの形成に依存する方法(例えば、ミニエマルションまたはミクロエマルション)、および凝縮に依存する方法を含むがこれらに限定されない、本分野で公知のポリマーを崩壊させるための任意の方法によって形成し得る。pdotナノ粒子のサイズは、pdotを生成するために使用されるポリマーの分子量に依存する(例えば、Zhang, Y., et al., Chem Sci. 6(3):2102-2109 (2015)、および米国特許第9382473号を参照)。いくつかの実施形態において、各pdotの分子量は、約500,000ダルトン~約15,000,000ダルトン、または約1,800,000ダルトン~約7,000,000ダルトンの範囲である。
【0026】
本明細書において記載される方法において使用し得る他のナノ粒子の例は、磁性ナノ粒子、量子ドット、および金ナノ粒子を含むが、これらに限定されない。磁性ナノ粒子は、磁場勾配を用いて操作し得るナノ粒子のクラスである。磁性ナノ粒子は、鉄、ニッケルおよびコバルトならびにこれらの化合物を含むがこれらに限定されない、磁性元素または常磁性元素から形成される。量子ドットは、無機半導体材料から形成されるナノ粒子である。金ナノ粒子(例えば、コロイド金)は、生物医学的応用をもたらす光学特性を有し、例えば、Huang, X., et al., Journal of Advanced Research 1(1):13-28 (2010)に記載されている。
【0027】
ナノ粒子をタンパク質に結合するために、ナノ粒子を所望のとおり官能化し得る。ナノ粒子の官能化の例は、前述の米国特許公開第2012/0282632号公報に記載されている。例えば、ナノ粒子は、一つ又は複数のカルボン酸部分を存在させるように官能化し得、これは一つ又は複数のリンカーをタンパク質に結合させるのに使用し得る。複合体成分(例えば、タンパク質とナノ粒子)は、共有結合または非共有結合で結合し得る。非共有結合の例は、複合体の一つのメンバーがビオチン化され、複合体の他方のメンバーがストレプトアビジンに結合した、ビオチン-ストレプトアビジン親和性結合である。結合オプションの他の例は、ナノ粒子のタンパク質アミンへの直接カップリング;マレイミドによるナノ粒子の修飾およびそれに続く露出したチオール基を有するタンパク質との結合(例えば、タンパク質をメルカプトエチルアミンまたは2-イミノチオラン(トラウト試薬)で処理することによって生成される);ヒドラジンによるナノ粒子の修飾および酸化グリカン(アルデヒド)を有するタンパク質との結合;またはクリック化学(例えば、歪みアルキンによるナノ粒子の修飾およびアジドで修飾されたタンパク質との結合)の使用を含むがこれらに限定されない。
【0028】
複合化方法のいずれの類型も、タンパク質をナノ粒子と複合化するのに使用し得る。一般に、複合体の所望の収率を生み出すために、過剰のタンパク質が複合化反応に提供される。これは、複合化反応の後に、著しい量のフリー(非複合化)タンパク質をもたらし得る。いくつかの実施形態において、反応混合物中には、ある量のフリー非複合化ナノ粒子も存在する。本明細書において記載される方法は、複合化反応のフリーの非複合化メンバーから複合体を精製するのに有用である。いくつかの実施形態において、残っている反応基に反応し、更なる反応を妨げるために試薬が適用される。例として、マレイミド官能化ナノ粒子とチオール化タンパク質または還元タンパク質との間の複合化は、N-エチルマレイミドを含むがこれに限定されないアルキル化試薬で停止またはクエンチされる。NHS-付加ナノ粒子とタンパク質との間の反応は、エタノールアミンを含むがこれに限定されないアミンで停止またはクエンチされる。
【0029】
一旦複合化が実施された場合、得られる複合化混合物(例えば、ナノ粒子/タンパク質複合体、未反応のフリータンパク質および任意にフリーナノ粒子)は、適切なpH、伝導性、および/または塩濃度を備えるように調整される。例えば、複合化緩衝液をクロマトグラフィー樹脂平衡化緩衝液で置き換えることによって、複合化混合物(すなわち、精製されるべき試料)に対する調整を実施し得る。緩衝化合物の例は、リン酸塩、HEPES、MES、およびトリスを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、平衡化緩衝液は、約10mM~約30mM(例えば、10mM、20mMまたは30 mM)の範囲の量のHEPESを含む。いくつかの実施形態において、平衡化緩衝液は、約5mM~約50mM(例えば、5mM、10mM、25mM)の範囲の量のリン酸塩(PO4 3-)を含む。特定の実施形態において、平衡化緩衝液のpHは、約5~約8(例えば、約6、約7、または約8)の範囲にある。いくつかの実施形態において、平衡化緩衝液は、少なくとも10~100mMのNa+またはK+(例えば、10~150mMの間、20~200mMの間、または100~300mMの間)を含む。特定の実施形態において、平衡化緩衝液は、pH7.3の20mM HEPES-KOHである。いくつかの実施形態において、平衡化緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS=10 mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム pH7.8)である。
【0030】
一つまたは複数の界面活性剤も混合物に含み得る。複合体を安定化させ、混合物中の複合体の凝集および沈殿を防止するために、十分な量の界面活性剤を含有し得、特に、高イオン強度緩衝液を導入する場合は、そうしないと複合体の凝集または沈殿をもたらし得る。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ポリエチレングリコールなどの非イオン性ポリアルキレングリコール界面活性剤である。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ポロキサマー界面活性剤などのポリオキシプロピレン含有界面活性剤である。ポロキサマー界面活性剤は、中央のポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の疎水性鎖と、その両側に配置されるポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖によって特徴づけられる。ポリマーブロックの長さをカスタマイズすることが可能であるため、若干異なる特性を有する数多くの異なるポロキサマーが存在する。ポロキサマー共重合体は、通常、文字「P」(ポロキサマー)と、それに続く3つの数字で命名され、最初の2つの数字×100で、ポリオキシプロピレンコアのおおよその分子量を与え、最後の数字×10でポリオキシエチレン含有割合を与える(例えば、P407は、ポリオキシプロピレンの分子量が4,000g/molであり、ポリオキシエチレンの含有量が70%のポロキサマーである)。プルロニック(Pluronic)およびシンペロニック(Synperonic)という商品名については、これらの共重合体のコードは、その室温での物理的形状を規定する文字で始まり(Lは液体、Pはペースト状、Fはフレーク状(固体))、次に2つまたは3つの数字が続く。表示された数字における最初の数字(3つの数字の場合は2つの数字)に300を乗じたものは、疎水鎖のおおよその分子量を意味し;最後の数字を10倍したものは、ポリオキシエチレン含有割合を示す(例えば、F-68は、ポリオキシプロピレンの分子量が1,800g/molであり、ポリオキシエチレンの含有量が80%である)。ポロキサマー界面活性剤の例は、プルロニックF-68を含むがこれに限定されない。使用される界面活性剤の濃度は、実験的に決定し得る(すなわち、複合体の沈殿が起きないように滴定される)。いくつかの実施形態において、界面活性剤の濃度は、0.02%~1%であり、例えば0.05~0.2%であり、例えば0.1%である。
【0031】
試料(例えば、複合体混合物)をポリマー充填クロマトグラフィー樹脂に接触させる前に、樹脂は、適切なpH、伝導性、および/または塩濃度を備えるように平衡化し得る。
【0032】
試料をポリマー充填クロマトグラフィー樹脂に接触させた後、標的分子(例えば、タンパク質-ナノ粒子複合体)は、樹脂のポリマー充填された細孔から排除され、樹脂からフロースルーに集められる。混入物、例えばフリー抗体(および任意に非複合化ナノ粒子)は、ビーズの細孔における樹脂の基によって捕捉される。
【0033】
標的分子を含む画分、およびフリーの画分、または当初の試料と比べて混入物の量が少なくとも減少している画分を決定するために、所望のとおり、試料の標的分子または他の成分の存在について、樹脂からのアウトプットをモニターし得る。いくつかの実施形態において、試料中の少なくとも90%、95%、99%の混入物が、得られた精製標的分子の画分において除去される。アウトプットを測定する方法の例は、標的分子の特徴的な吸収波長をモニタリングすることを含む。「画分」という用語は、クロマトグラフィーのアウトプットの部分を示すために使用され、アウトプットがどのように集められるのか、またはアウトプットが一部分または連続して集められるのどうかを限定することを意図するものではない。
【実施例
【0034】
実施例1:3%アガロース充填ヒドロキシアパタイトミクロスフェア(HAM)の調製および特性評価
アガロース充填HAMの調製
100℃で、水140mLに4.0gのアガロース(Hispanagar D5 High Gel Strength)を溶解して、3%アガロース溶液を作製した。210グラムの乾燥HAM(Bio-Rad Type XT)および700mLの熱い融解アガロース溶液を700mlのフラスコ中で混合し、次に、60分間撹拌して、HAMの細孔内部に不溶性ゲルを形成させた。次に、加熱した溶液を、約25℃、約20L/分の流速の空気流で取り囲まれた内径2mmのノズルを通して流すことによって、加熱した溶液を霧化した。次に、得られた粒子を約20℃~30℃の水浴に集めた。次に粒子を120μm篩および65μm篩で篩にかけ、薄いフレーク状の過剰のアガロースを除去した。次に、篩にかけたアガロース充填HAMを水中で懸濁させ、過剰のアガロースを除去した。図1A(光学顕微鏡によるビーズの画像)を参照すると、得られたアガロース充填HAMは、細孔中にアガロースを有する別々のHAMを含み、アガロース中にHAMのクラスターはなかった。アガロースがHAMの細孔中にあることを示すため、アガロース充填HAMをpH3.5の酢酸緩衝液で処理してヒドロキシアパタイトを溶解させ、次に染色した。光学顕微鏡により得られたビーズの画像の図1Bを参照されたい。
【0035】
アガロース充填HAMの特性評価
a)サイログロブリンの静的結合能力(Static Binding Capacity)の決定
最終樹脂生成物全部を水に再懸濁した。樹脂の層の高さがカラムの0.5mlのマークラインに達するまで、スラリーのいくらかを、遠心カラムに移動した(カラムの底から液体を引き出すためシリンジを使用し、媒体が安定するまでカラムの側面をたたいた)。樹脂を20秒間真空乾燥した。次に、1mlの超純水を加え、樹脂とよく混合し、0.3mlのスラリーを新しいカラムに移した。新しいカラムにおいて、真空下、pH6.5、5mlの10mM MESで樹脂を洗浄した。樹脂を20秒間真空乾燥した。半乾きの樹脂を2mlのエッペンドルフ型チューブに移した。サイログロブリン試料1mLをチューブに加えた。チューブを回転ミキサー上に置き、60分間回転させた。次に、チューブを3000rpmで4分間、遠心分離機にかけた。上澄み試料とサイログロブリン試料それぞれの280 nmにおける紫外吸光度を分光光度計で測定した。静的結合能力(SBC)を下記式を用いて計算した。
SBC (mg/mL) = (使用した総タンパク質(mg)-非結合タンパク質(mg))/樹脂の体積(mL)
紫外吸光度は、タンパク質濃度を決定するために使用し、タンパク質の分子量はタンパク質のmgを決定するために使用した。SBCの結果を表1に示す。
【0036】
b)γ-グロブリンの静的結合能力の決定
最終樹脂生成物全部を水に再懸濁した。樹脂の層の高さがカラムの0.5mlのマークラインに達するまで、スラリーのいくらかを、遠心カラムに移動した(カラムの底から液体を引き出すためシリンジを使用し、媒体が安定するまでカラムの側面をたたいた)。樹脂を20秒間真空乾燥した。次に、1mlの超純水を加え、樹脂とよく混合し、0.3mlのスラリーを新しいカラムに移した。新しいカラムにおいて、真空下、pH7.5、5mLの20mM トリス塩酸(Tris-HCl)、150mM NaClで樹脂を洗浄した。樹脂を20秒間真空乾燥した。半乾きの樹脂を2mlのエッペンドルフ型チューブに移した。γ-グロブリン試料1mlをチューブに加えた。チューブを回転ミキサー上に置き、60分間回転させた。チューブを3000rpmで4分間、遠心分離機にかけた。上澄み試料とγ-グロブリン試料それぞれの280 nmにおける紫外吸光度を分光光度計で測定した。静的結合能力(SBC)の結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1を参照すると、アガロース充填樹脂については、タンパク質がミクロスフェアの細孔に入り込んで内部表面に結合することをアガロースが阻止している。その結果、その対応するコントロール試料と比較して、SBCが減少している。タンパク質のサイズが大きくなればなるほど、SBCが減少する。サイログロブリンおよびγ-グロブリンの分子量は、それぞれ、660kDaおよび150kDaである。したがって、アガロース充填樹脂において、γ-グロブリンと比較して、より大きいサイログロブリンにおいてSBCがより減少する。γ-グロブリンのSBCもいくらか減少しており、これはより小さいサイズのタンパク質であるγ-グロブリンが、細孔に入り込んで樹脂と結合できることを示している。
【0039】
実施例2:HAMに対するアガロース充填HAMのクロマトグラフィー特性の比較
この実施例の目的は、HAMのクロマトグラフィー特性が、HAMの細孔をアガロースで充填することにより変化するかどうかを決定することであった。複合体が各樹脂に結合したかどうか、または複合体が空隙容積(void volume)に排除されたかどうかを決定するために、IgG-pdot複合体(約25nmの直径を有する)を各樹脂に適用した。非複合化pdotを3%アガロース充填HAMにも適用して、アガロース充填された細孔において非複合化pdotがアガロース充填HAMの細孔に入り込みかつアガロース充填HAMに捕捉されるかどうかを決定した。
【0040】
クロマトグラフィー特性比較
表1に記載されるとおり、4つの使い捨てカラム(Bio-Rad Micro Bio-Spin(商標)クロマトグラフィーカラム;重力モード使用)に、0.5mLの樹脂を詰めた。0.1%プルロニックF68(Thermo Fisher)を有するpH7.3の1~2mLのHEPES緩衝液でカラムを平衡化した。HEPES緩衝液中、精製したヤギ抗ウサギIgG-pdot複合体または非複合化pdotの500μL試料を、各カラムに適用した。複合体は、pdotをマレイミドで修飾し、次にpdotをチオール基(抗体をトラウト試薬で処理することにより生成される)を介してIgGに結合させることによって調製した。pdotは、470ナノメーターで吸収し、エビ茶色を有している;それゆえ、複合体はエビ茶色を有していた。
【0041】
試料を適用した後、カラムを2mLのHEPES緩衝液で洗浄した。試料の樹脂への結合は、視覚的に決定した、すなわち、カラム上端の赤色または樹脂全体に分散した赤色は、試料が樹脂に結合したことを示していた。カラムが白いままであった場合は、試料は樹脂に結合しなかった(例えば、試料は非結合である)。結果を表2に要約する。
【0042】
【表2】
【0043】
表2における結果は、IgG-pdot複合体は、HAMに結合するが、3%アガロース充填HAMに結合しないことを示す。すなわち、3%アガロースでHAMの細孔を充填するとともに、HAMの表面をコーティングすることにより、大きい複合体がHAMに結合することが阻止される一方、より小さい非複合化pdotはHAMの細孔に入り込み、HAMの細孔の内部表面に結合される。
【0044】
実施例3:3%アガロース充填UNOsphereQの調製および特性評価
アガロース-UNOsphereQの調製
250mLのフラスコ中、100℃で、水100mLに3.0gのアガロース(Hispanagar D5 High Gel Strength)を溶解して、3%アガロース溶液を作製した。15mLのUNOsphere(Bio-Rad UNOsphere(商標) Q 強アニオン交換媒体)を250mlのフラスコ中で混合し、次に、60分間撹拌して、媒体の細孔内部に不溶性ゲルを形成させた。次に、加熱した溶液を、25℃、約20L/分の流速の空気流で取り囲まれた内径2mmのノズルを通して流すことによって、加熱した溶液を霧化した。次に、得られた粒子を約20℃~30℃の水浴に集めた。次に粒子を120μm篩で篩にかけ、薄いフレーク状の過剰のアガロースを除去した。次に、篩にかけたアガロース充填UNOsphereを水中で懸濁させ、過剰のアガロースを除去した。得られたアガロース充填UNOsphereは、細孔中にアガロースを有する別々のUNOsphereビーズを含み、アガロース中にUNOsphereビーズのクラスターはなかった(光学顕微鏡により得られたアガロース充填UNOsphereビーズの画像を図2に示す)。
【0045】
アガロース-UNOsphereQの特性評価
a)サイログロブリンの静的結合能力の決定
最終樹脂生成物全部を水に再懸濁した。樹脂の層の高さがカラムの0.5mlのマークラインに達するまで、スラリーのいくらかを、遠心カラムに移動した(カラムの底から液体を引き出すためシリンジを使用し、媒体が安定するまでカラムの側面をたたいた)。樹脂を20秒間真空乾燥した。次に、1mLの超純水を加え、樹脂とよく混合し、0.3mlのスラリーを新しいカラムに移した。新しいカラムにおいて、真空下、pH7.0、5mlの20 mM ビストリス(Bis-Tris)、50 mM NaClで樹脂を洗浄した。樹脂を20秒間真空乾燥した。半乾きの樹脂を2mlのエッペンドルフ型チューブに移し、次に、サイログロブリン試料1mlをチューブに加えた。チューブを回転ミキサー上に置き、30分間回転させた。チューブを3000rpmで4分間、遠心分離機にかけた。上澄み試料とサイログロブリン試料それぞれの280 nmにおける紫外吸光度を分光光度計で測定した。静的結合能力(SBC)の結果を表2に示す。
【0046】
b)γ-グロブリンの静的結合能力の決定
最終樹脂生成物全部を水に再懸濁した。樹脂の層の高さがカラムの0.5mlのマークラインに達するまで、スラリーのいくらかを、遠心カラムに移動した(カラムの底から液体を引き出すためシリンジを使用し、媒体が安定するまでカラムの側面をたたいた)。樹脂を20秒間真空乾燥した。次に、1mlの超純水を加え、樹脂とよく混合し、0.3mlのスラリーを新しいカラムに移した。新しいカラムにおいて、真空下、pH9.5、5mLの20mM トリス塩酸で樹脂を洗浄した。樹脂を20秒間真空乾燥した。半乾きの樹脂を2mlのエッペンドルフ型チューブに移した。γ-グロブリン試料1mlをチューブに加えた。チューブを回転ミキサー上に置き、30分間回転させた。次に、チューブを3000rpmで4分間、遠心分離機にかけた。上澄み試料とγ-グロブリン試料それぞれの280 nmにおける紫外吸光度を分光光度計で測定した。SBCを前述のとおりに計算した。SBCの結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3のアガロース充填UNOsphere Qについての結果は、γ-グロブリンを用いた場合と比較して、より大きいサイログロブリンについてのSBCが、より大きく減少したことを示している。これは、より大きいタンパク質は、樹脂のアガロース充填細孔に入り込んで内部表面に結合することが阻止されることを示している。
【0049】
実施例4:UNOsphere Qに対するアガロース充填UNOsphere Qのクロマトグラフィー特性の比較
この実施例の目的は、UNOsphere Qのクロマトグラフィー特性が、UNOsphere Qの細孔をアガロースで充填することにより変化するかどうかを決定することであった。複合体が各樹脂に結合したのか、または複合体が空隙容積に排除されたのかを決定するために、IgG-pdot複合体(約25nmの直径を有する)を各樹脂に適用した。非複合化pdotを3%アガロース充填UNOsphere Qにも適用し、アガロース充填された細孔において、非複合化pdotがアガロース充填UNOsphere Qの細孔に入り込み、アガロース充填UNOsphere Qに捕捉されるかどうかを決定した。
【0050】
クロマトグラフィー特性比較
表1に記載されるとおり、4つの使い捨てカラム(Bio-Rad Micro Bio-Spin(商標)クロマトグラフィーカラム;重力モード使用)に0.25mLの樹脂を詰めた。pH8.5の1~2mLの20mM トリス塩酸緩衝液でカラムを平衡化した。20mM トリス塩酸緩衝液中、精製したヤギ抗ウサギIgG-pdot複合体または非複合化pdotの500μL試料を、各カラムに適用した。複合体は、pdotをマレイミドで修飾し、次にpdotをチオール基(抗体をトラウト試薬で処理することにより生成される)を介してIgGに結合させることによって調製した。pdotは、470ナノメーターで吸収し、エビ茶色を有している;それゆえ、複合体はエビ茶色を有していた。
【0051】
試料を適用した後、カラムを1mLのトリス塩酸緩衝液で洗浄した。試料の樹脂への結合は、視覚的に決定した、すなわち、カラム上端の赤色または樹脂全体に分散した赤色は、試料が樹脂に結合したことを示していた。カラムが白いままであった場合は、試料は樹脂に結合しなかった(例えば、試料は非結合である)。結果を表4に要約する。
【0052】
【表4】
【0053】
表4における結果は、IgG-pdot複合体およびpdotの両方とも、UNOsphere Qに結合するが、3%アガロース充填UNOsphere Qには結合しないことを示す。すなわち、3%アガロースでUNOsphere Qの細孔を充填するとともに、UNOsphere Qの表面をコーティングすることにより、複合体-pdotおよびpdotの両方とも、UNOsphere Qに結合することが阻止される。
【0054】
本明細書において記載される実施例および実施形態は、説明目的のためだけのものであり、それらに照らして様々な変更あるいは修正が当業者に示唆されるとともに、本出願および添付のクレームの範囲の趣旨および範囲内に含まれるべきであることが理解される。本明細書において引用した全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のためその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
図1
図2