(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】クリップおよび被取付部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/10 20060101AFI20241028BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20241028BHJP
F21V 21/00 20060101ALI20241028BHJP
B60Q 3/51 20170101ALN20241028BHJP
B60Q 3/74 20170101ALN20241028BHJP
【FI】
F16B5/10 G
F21V19/00 413
F21V21/00 130
F21V19/00 510
B60Q3/51
B60Q3/74
(21)【出願番号】P 2021008556
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 準弥
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特許第5524477(JP,B2)
【文献】特開2018-192881(JP,A)
【文献】特開2011-018610(JP,A)
【文献】実開平04-095840(JP,U)
【文献】実開平03-096933(JP,U)
【文献】実開平04-012691(JP,U)
【文献】実開平01-087310(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0026104(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014017332(DE,A1)
【文献】中国実用新案第204152905(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/10
F21V 19/00
F21V 21/00
B60Q 3/51
B60Q 3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材に対して被取付部材を取り付けるクリップであって、
前記取付部材に形成されている取付孔に係合可能な係合爪と、
前記係合爪を前記被取付部材に対して抜け防止状態で進退可能にスライドさせるスライド体と、
前記係合爪を前記被取付部材に対して進出状態から退行状態に向けてスライドさせると、前記スライドさせた前記係合爪が戻されるように復元力を作用させる弾性部材と、を備えて
おり、
前記弾性部材は、一対のパンタグラフから構成されており、
前記取付孔の第1の軸線と、前記一対のパンタグラフの第2の軸線とは、平行となるように設定されているクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップであって、
前記スライド体は、前記一対のパンタグラフを挟み込む一対のスライド板から構成されているクリップ。
【請求項3】
取付部材に対する被取付部材の取付構造であって、
前記被取付部材には、前記取付部材に形成されている取付孔に係合可能な係合爪が前記被取付部材に対して抜け防止状態で進退可能に備えられ、
前記取付孔に前記係合爪を挿し込んでいくと、挿し込みによって退行した前記係合爪が弾性部材の復元力によって進出して前記取付孔の縁に係合
し、
前記弾性部材は、一対のパンタグラフから構成されており、
前記取付孔の第1の軸線と、前記一対のパンタグラフの第2の軸線とは、平行となるように設定されている被取付部材の取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載の被取付部材の取付構造であって、
前記係合爪は、前記一対のパンタグラフを挟み込む一対のスライド板を備え、
前記被取付部材には、前記一対のスライド板を摺動させる一対の摺動部を備えている被取付部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップおよび被取付部材の取付構造に関し、詳しくは、取付部材に対して被取付部材を取り付けるクリップおよび取付部材に対する被取付部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の天井ブラケット等の取付部材に対してルームランプユニット等の内装部材である被取付部材がクリップを介して取り付けられている。ここで、下記特許文献1には、被取付部材から逆U字形状に大きく突出するクリップを介して取付部材の取付孔に被取付部材を取り付ける技術が開示されている。これにより、取付部材にバラつきが生じていても、このバラつきを吸収した状態で被取付部材を取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、クリップは、取付部材のバラつきを吸収するための弾性変形量を大きく確保するために、高さ方向に大きく突出するように形成されている。すなわち、このクリップ3の大きく突出する突出方向は、高さ方向となっている。そのため、高さ方向にクリップの嵩張りが生じることがあった。したがって、車室の空間を広く確保できなかった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、取付部材に対する被取付部材の取り付けにおいて、クリップの高さ方向の嵩張りを抑えても、取付部材のバラつきを吸収した状態で被取付部材を取り付けることができるクリップおよび被取付部材の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの特徴によると、取付部材に対して被取付部材を取り付けるクリップである。このクリップは、取付部材に形成されている取付孔に係合可能な係合爪と、係合爪を被取付部材に対して抜け防止状態で進退可能にスライドさせるスライド体と、係合爪を被取付部材に対して進出状態から退行状態に向けてスライドさせると、スライドさせた係合爪が戻されるように復元力を作用させる弾性部材とを備えている。
【0007】
そのため、取付部材の取付孔に対して弾性部材の弾性変形によってクリップの係合爪を係合させることができる。したがって、取付部材にクリップを介して被取付部材を取り付けることができる。また、このクリップの弾性部材は、弾性部材の軸心方向および挿抜方向のいずれにも直交する方向に沿って大きく突出するように形成されている。そのため、この弾性部材の弾性変形量を大きく確保できる。したがって、取付部材にバラつきが生じていても、このバラつきを吸収した状態で被取付部材を取り付けることができる。また、このクリップの大きく突出する方向(弾性部材の軸心方向および挿抜方向のいずれにも直交する方向)は、水平方向となっている。そのため、高さ方向におけるクリップの嵩張りを抑えることができる。したがって、車室の空間を広く確保できる。結果として、クリップの高さ方向の嵩張りを抑えても、取付部材のバラつきを吸収した状態で被取付部材を取り付けることができる。
【0008】
本開示の他の特徴によると、弾性部材は、一対のパンタグラフから構成されている。取付孔の第1の軸線と、一対のパンタグラフの第2の軸線とは、平行となるように設定されている。
【0009】
そのため、パンタグラフといった簡便な構造の物を弾性部材として使用できる。
【0010】
また、本開示の他の特徴によると、スライド体は、一対のパンタグラフを挟み込む一対のスライド板から構成されている。
【0011】
そのため、スライド体が1枚のスライド板から構成されている場合と比較すると、スライド体のスライドの精度を高めることができる。したがって、係合爪の進退を滑らかなものにできる。
【0012】
また、本開示の他の特徴によると、取付部材に対する被取付部材の取付構造であって、被取付部材には、取付部材に形成されている取付孔に係合可能な係合爪が被取付部材に対して抜け防止状態で進退可能に備えられている。取付孔に係合爪を挿し込んでいくと、挿し込みによって退行した係合爪が弾性部材の復元力によって進出して取付孔の縁に係合する。
【0013】
そのため、取付部材の取付孔に対して弾性部材の弾性変形によってクリップの係合爪を係合させることができる。したがって、取付部材にクリップを介して被取付部材を取り付けることができる。また、このクリップの弾性部材は、挿抜方向に大きく突出するように形成されている。そのため、この弾性部材の弾性変形量を大きく確保できる。したがって、取付部材にバラつきが生じていても、このバラつきを吸収した状態で被取付部材を取り付けることができる。また、このクリップの大きく突出する突出方向は、水平方向となっている。そのため、高さ方向におけるクリップの嵩張りを抑えることができる。したがって、車室の空間を広く確保できる。結果として、クリップの高さ方向の嵩張りを抑えても、取付部材のバラつきを吸収した状態で被取付部材を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るルームランプユニットにクリップを装着する前の分解斜視図である。
【
図8】
図6のVIII-VIII線の断面図である。
【
図9】天井ブラケットにルームランプを取り付ける手順を説明する縦断面図である。
【
図10】第2実施形態に係るルームランプの斜視図である。
【
図13】天井ブラケットにルームランプを取り付ける手順を説明する縦断面図である。
【
図14】第3実施形態に係るルームランプの斜視図である。
【
図17】天井ブラケットにルームランプを取り付ける手順を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「取付部材」と「被取付部材」との例として、「自動車の天井ブラケット1」と「内装部材であるルームランプユニット2」とを説明する。
【0016】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態を、
図1~9を用いて説明する。まず、
図1~5を参照して、第1実施形態に係るルームランプユニット2とクリップ3とを個別に説明する。はじめに、ルームランプユニット2から説明する。
【0017】
ルームランプユニット2は、自動車の天井ブラケット1に取り付けられる照明装置である(
図1参照)。このルームランプユニット2は、ルームランプユニット本体20とレンズカバー27から構成されている。このルームランプユニット本体20は、矩形状のベース21と、ベース21の裏面21b(反意匠面)から突出するように形成された矩形状の第1ケース24と、第1ケース24から突出するように形成された矩形状の第2ケース26から構成されている。
【0018】
ベース21の裏面21bの長手方向における一方側には、後述するクリップ3の下スライド板35を挿し込み可能な第1挿込部22が形成されている。この第1挿込部22は、ベース21の裏面21bに略L字形状を成すように形成された左右一対の側壁22aから構成されている。この略L字形状により、第1挿込部22に挿し込まれた下スライド板35の脱落を防止できる。
【0019】
また、ベース21の裏面21bの長手方向における一方側には、左右一対の側壁22aの間に位置するように摺動部21cが形成されている。これにより、第1挿込部22に挿し込まれたクリップ3の下スライド板35を滑らかにスライドさせることができる。また、ベース21の裏面21bの長手方向における他方側には、この裏面21bとの間で天井ブラケット1の取付孔10の縁を挟み込み可能な挟持片23が形成されている。
【0020】
また、第1ケース24の裏面24aの長手方向における一方側には、クリップ3の上スライド板34を挿し込み可能な第2挿込部25が形成されている。この第2挿込部25は、第1ケース24の裏面24aに略L字形状を成すように形成された左右一対の側壁25aから構成されている。この略L字形状により、第2挿込部25に挿し込まれたクリップ3の上スライド板34の脱落を防止できる。
【0021】
この左右一対の側壁25aの略L字形状の先端の対向間隔は、クリップ3の上スライド板34のリブ34aのガイド作用を成すように形成されている。すなわち、この左右一対の側壁25aの略L字形状の先端は、ガイド部25eと成っている。また、この左右一対の側壁25aの内面には、摺動部25bが形成されている。これにより、第2挿込部25に挿し込まれたクリップ3の上スライド板34を滑らかにスライドさせることができる。
【0022】
また、第1ケース24には、ストッパ24bが形成されている。また、第2ケース26には、係合爪25dを有する弾性片25cが形成されている。この係合爪25dは、クリップ3の上スライド板34の係合爪34cに係合可能となっている。これら第1ケース24、第2ケース26の内部には、LED等の光源、基板、スイッチ等の電気品(図示しない)が備えられている。このベース21の表面21a(意匠面)は、レンズカバー27によって覆われている。ルームランプユニット2は、このように構成されている。
【0023】
次に、クリップ3を説明する(
図2~5参照)。このクリップ3は、PP等の剛性を有する合成樹脂材による一体成形品であって、その構成は、主として、係合体30とスライド体33と弾性部材(左右一対のパンタグラフ36)とから構成されている。以下に、これら係合体30とスライド体33と左右一対のパンタグラフ36とを個別に説明する。
【0024】
はじめに、係合体30から説明する。この係合体30は、後述する天井ブラケット1の取付孔10の内壁11の上縁12に係合可能な係合爪31と、係合爪31の下端31bから下方に延びる垂下板32とから構成されている。次に、スライド体33を説明する。スライド体33は、後述する左右一対のパンタグラフ36を上下に挟み込むように略平行な上下一対のスライド板(上スライド板34、下スライド板35)から構成されている。
【0025】
上スライド板34は、係合爪31の上端31aから係合爪31の突出方向の反対方向に延びるように形成されている。上スライド板34の上面の幅方向の中央には、リブ34aが形成されている。下スライド板35も、係合爪31の下端31bから係合爪31の突出方向の反対方向に延びるように形成されている。
【0026】
最後に、左右一対のパンタグラフ36を説明する。左右一対のパンタグラフ36は、屈曲点36aを起点に略V形状に折り曲げ可能な弾性部材である。そのため、この屈曲点36aを起点にパンタグラフ36を折り曲げると、折り曲げたパンタグラフ36が復元するように弾性力(復元力)を作用させることができる。この左右一対のパンタグラフ36の折り曲げにより両屈曲点36aが近づいたり遠ざかったりする方向は、天井ブラケット1の取付孔10の第1の軸線H1と、左右一対のパンタグラフ36の第2の軸線H2のいずれにも直交する方向である。以下、この方向を近接方向H4と記す。この左右一対のパンタグラフ36は、その各一端36bが係合体30の垂下板32に接続され、その各他端36cが係合体30の垂下板32に対向する押当板37に接続されている。
【0027】
なお、このクリップ3の左右一対のパンタグラフ36は、天井ブラケット1のバラつきを吸収するための弾性変形量を大きく確保するために、クリップ3の近接方向H4に沿って大きく突出するように形成されている(
図2、4参照)。なお、この
図2、4から明らかなように、クリップ3の大きく突出する方向(近接方向H4)は、水平方向となっている。また、
図1~2からも明らかなように、天井ブラケット1の取付孔10の第1の軸線H1と、左右一対のパンタグラフ36の第2の軸線H2とは、ともに上下方向に沿っているため平行となるように設定されている。また、
図2~3からも明らかなように、クリップ3は、挿抜方向H3において、上スライド板34の係合爪34c、押当板37、下スライド板35の先端35aの順となる位置関係となるように形成されている。クリップ3は、このように構成されている。
【0028】
次に、
図1、6~8を参照して、上述したルームランプユニット2にクリップ3を装着する手順を説明する。まず、
図1に示す状態から、ルームランプユニット2の第1挿込部22、第2挿込部25にクリップ3の下スライド板35、上スライド板34を挿し込む作業を行う。すると、クリップ3の上スライド板34の係合爪34cがルームランプユニット2の第2挿込部25の係合爪25dに干渉する。これにより、ルームランプユニット2の第2挿込部25の弾性片25cが撓んでいく。
【0029】
さらに、クリップ3の下スライド板35、上スライド板34を挿し込む作業を行うと、クリップ3の上スライド板34の係合爪34cがルームランプユニット2の第2挿込部25の撓んだ弾性片25cの係合爪25dを乗り越える。これにより、ルームランプユニット2に対するクリップ3の装着が完了する(
図6~8参照)。すなわち、ルームランプユニット2に対してクリップ3が抜け防止状態となって装着される。
【0030】
このように装着されたクリップ3の上スライド板34、下スライド板35は、ルームランプユニット2の第2挿込部25、第1挿込部22をスライドできる。そのため、クリップ3の係合爪31をルームランプユニット本体20に対して進出および退行(進退)させることができる。
図7~8において、実線で示すクリップ3が進出状態を示しており、二点鎖線で示すクリップ3が退行状態を示している。
【0031】
このとき、クリップ3の上スライド板34は、ルームランプユニット2の第2挿込部25の摺動部25bをスライドする。そのため、クリップ3の上スライド板34を滑らかにスライドさせることができる。また、このとき、クリップ3の下スライド板35は、ルームランプユニット2の第1挿込部22の摺動部21cをスライドする。そのため、クリップ3の下スライド板35を滑らかにスライドさせることができる。
【0032】
また、このとき、クリップ3の上スライド板34のリブ34aは、ルームランプユニット2の第2挿込部25のガイド部25eにガイドされている。そのため、クリップ3の上スライド板34をより滑らかにスライドさせることができる。なお、クリップ3の係合爪31を退行させていくと、クリップ3の押当板37がルームランプユニット2のストッパ24bに干渉する。そのため、左右一対のパンタグラフ36が、その屈曲点36aを起点に折り曲げられ撓んでいく。したがって、クリップ3の係合爪31が進出するように係合爪31に対して弾性力が作用する。
【0033】
最後に、
図7、9を参照して、自動車の天井ブラケット1にルームランプユニット2を取り付ける手順を説明する。まず、
図7に示すように、予め、ルームランプユニット2にクリップ3を装着しておく。この
図7に示す状態から、ルームランプユニット2を傾けて、この傾けたルームランプユニット2のベース21と挟持片23との間に天井ブラケット1の取付孔10の縁を挟み込む作業を行う(
図9において、一点鎖線のルームランプユニット2を参照)。
【0034】
次に、この挟持片23を回転の中心として、ルームランプユニット2を上方に回転させる作業を行う(
図9において、二点鎖線のルームランプユニット2を参照)。すると、回転させたルームランプユニット2に装着されたクリップ3が天井ブラケット1の取付孔10に挿し込まれる。これにより、クリップ3の係合爪31が天井ブラケット1の取付孔10の内壁11の下縁13に干渉する。
【0035】
そのため、このクリップ3の係合爪31が左右一対のパンタグラフ36を撓ませながらルームランプユニット本体20に向けて退行していく。さらに、このルームランプユニット2を回転させる作業を行うと、このクリップ3の係合爪31が天井ブラケット1の取付孔10を通過する。すると、撓んだ左右一対のパンタグラフ36の弾性力(復元力)によってクリップ3の係合爪31がルームランプユニット本体20から進出する。
【0036】
これにより、この進出した係合爪31が天井ブラケット1の取付孔10の上縁12に係合する(引っ掛かる)と共に、この天井ブラケット1にベース21が押し当てられる。そのため、このクリップ3の係合爪31とベース21との間で天井ブラケット1を挟み込んで保持できる。すなわち、天井ブラケット1にクリップ3を係合できる(
図9において、実線のルームランプユニット2を参照)。したがって、天井ブラケット1にクリップ3を介してルームランプユニット2を取り付けることができる。
【0037】
なお、取り付けたルームランプユニット2を天井ブラケット1から取り外すには、クリップ3の垂下板32を押し込み左右一対のパンタグラフ36を撓ませて係合爪31を退行させればよい。すると、天井ブラケット1の取付孔10の上縁12に対する係合爪31の係合(引っ掛かり)が解消するため、挟持片23を回転の中心として、ルームランプユニット2を下方に回転させることができる。これにより、取り付けたルームランプユニット2を天井ブラケット1から取り外すことができる。
【0038】
第1実施形態に係るクリップ3は、上述したように構成されている。この構成によれば、クリップ3は、係合体30とスライド体33と左右一対のパンタグラフ36とから構成されている。係合体30は、天井ブラケット1の取付孔10に係合可能な係合爪31を備えている。スライド体33は、係合爪31をルームランプユニット2に対して抜け防止状態で進退可能にスライドさせる上下一対のスライド板(上スライド板34、下スライド板35)を備えている。左右一対のパンタグラフ36は、係合爪31をルームランプユニット2に対して進出状態から退行状態に向けてスライドさせると、スライドさせた係合爪31が戻されるように復元力を作用させる。
【0039】
そのため、天井ブラケット1の取付孔10に対して左右一対のパンタグラフ36の弾性変形によってクリップ3の係合爪31を係合させることができる。したがって、天井ブラケット1にクリップ3を介してルームランプユニット2を取り付けることができる。また、このクリップ3の左右一対のパンタグラフ36は、近接方向H4に沿って大きく突出するように形成されている。そのため、この左右一対のパンタグラフ36の弾性変形量を大きく確保できる。したがって、天井ブラケット1にバラつきが生じていても、このバラつきを吸収した状態でルームランプユニット2を取り付けることができる。また、このクリップ3の大きく突出する方向(近接方向H4)は、水平方向となっている。そのため、高さ方向におけるクリップ3の嵩張りを抑えることができる。したがって、車室の空間を広く確保できる。結果として、クリップ3の高さ方向の嵩張りを抑えても、天井ブラケット1のバラつきを吸収した状態でルームランプユニット2を取り付けることができる。
【0040】
また、この構成によれば、弾性部材は、左右一対のパンタグラフ36である。天井ブラケット1の取付孔10の第1の軸線H1と、左右一対のパンタグラフ36の第2の軸線H2とは、ともに上下方向に沿っているため平行となるように設定されている。そのため、パンタグラフ36といった簡便な構造の物を弾性部材として使用できる。
【0041】
また、この構成によれば、スライド体33は、左右一対のパンタグラフ36を上下に挟み込むように略平行な上下一対のスライド板(上スライド板34、下スライド板35)から構成されている。そのため、スライド体33が1枚のスライド板から構成されている場合と比較すると、スライド体33のスライドの精度を高めることができる。したがって、係合爪31の進退を滑らかなものにできる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、
図10~13を用いて説明する。この第2実施形態は、既に説明した第1実施形態と比較すると、ルームランプユニット2とクリップ3を一体化した形態である。すなわち、この第2実施形態は、ルームランプユニット2のルームランプユニット本体20にクリップ3が一体を成すように成形されている形態である。なお、以下の説明にあたって、第1実施形態で説明した部材と同一もしくは均等な構成の部材には、図面において同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する。このことは、後述する第3実施形態全ての実施形態において同様である。
【0043】
この第2実施形態では、クリップ3の左右一対のパンタグラフ36は、その各他端36cが第1ケース24に接続されている(
図10~12参照)。また、第1ケース24には、被スライド板28が形成されている。被スライド板28の内面には、クリップ3の上スライド板34が摺動可能な摺動部28aが形成されている。また、この第2実施形態では、クリップ3の係合爪31の進出状態において、クリップ3の上スライド板34が第2挿込部25に挿し込まれている。そのため、クリップ3の係合爪31を退行させると、第2挿込部25に対するクリップ3の上スライド板34の挿し込みを確実に実施できる。
【0044】
この第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、天井ブラケット1にクリップ3を介してルームランプユニット2を取り付けることができる(
図13参照)。また、取り付けたルームランプユニット2を天井ブラケット1から取り外すこともできる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、
図14~17を用いて説明する。この第3実施形態は、既に説明した第2実施形態と比較すると、クリップ3の係合爪31を滑らかにスライドさせた形態である。
【0046】
この第3実施形態では、上スライド板34と下スライド板35は、その各先端34b、先端35aの位置が挿抜方向H3において一致するように形成されている(
図14~16参照)。そのため、この第3実施形態の下スライド板35は、第2実施形態の下スライド板35と比較すると、長く形成されている。したがって、下スライド板35をより安定させてスライドできる。結果として、クリップ3の係合爪31を滑らかにスライドさせることができる。
【0047】
この第3実施形態においても、第1実施形態~第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、天井ブラケット1にクリップ3を介してルームランプユニット2を取り付けることができる(
図17参照)。また、取り付けたルームランプユニット2を天井ブラケット1から取り外すこともできる。
【0048】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【0049】
各実施形態では、「取付部材」と「被取付部材」との例として、「自動車の天井ブラケット1」と「内装部材であるルームランプユニット2」とを説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「取付部材」と「被取付部材」との例として、「各種のパネル材」と「各種の内装部材」であっても構わない。
【0050】
また、各実施形態では、「弾性部材」の例として、「左右一対のパンタグラフ36」を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「弾性部材」の例として、「スタビライザ」であっても構わない。
【符号の説明】
【0051】
1 天井ブラケット(取付部材)
2 ルームランプユニット(被取付部材)
3 クリップ
10 取付孔
31 係合爪
33 スライド体
36 パンタグラフ(弾性部材)