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特許7577549駆動装置、駆動装置の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】駆動装置、駆動装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/68 20060101AFI20241028BHJP
   A01D 34/78 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
A01D34/68 Z
A01D34/78 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021009113
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022113026
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】籾山 寛
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】宮原 洋一
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 晃
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135108(JP,A)
【文献】特開2017-100224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0034349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/68
A01D 34/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を刈払又は切断するための手持ち式の駆動装置であって、
筐体と、作用部と、制御部とを備え、
前記筐体は、ユーザが位置する後方側から前記対象が位置する前方側に向かって延在し、
前記作用部は、
前記筐体の前記前方側に設けられ、
前記対象を刈払又は切断するための力学的作用を前記対象に付与可能に、駆動するように構成され、
前記制御部は、次の各ステップを実行するように構成され、
駆動ステップでは、前記作用部の駆動出力を目標値に制御することで前記作用部を駆動させ、
監視ステップでは、前記駆動ステップにおける制御中に、前記目標値に対する前記駆動出力の状態又は挙動を監視し、
調整ステップでは、監視中の前記状態又は挙動に基づいて、前記目標値を調整し、前記駆動出力が前記目標値である第1の目標値に追従する状態が、当該状態の開始から所定時間以上検出された場合に、前記目標値を下降させて第2の目標値とする駆動装置
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記駆動ステップでは、前記駆動出力が一定以上の振幅で前記目標値の上下に振動し続ける期間中は当該目標値が維持される、駆動装置
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の駆動装置において、
前記目標値は、複数のレベルの中から1つを選択することでユーザが設定可能に構成される、駆動装置
【請求項4】
請求項に記載の駆動装置において、
前記調整ステップでは、設定されたレベルに対応する値以下且つその1つ下のレベルに対応する値以上の範囲で、前記目標値を調整する、駆動装置
【請求項5】
請求項1~請求項の何れか1つに記載の駆動装置において、
前記調整ステップでは、前記駆動出力が前記目標値である第2の目標値に追従する状態から前記第2の目標値に比して所定値以上下がる挙動が検出された場合に、前記目標値を上昇させて第1の目標値とする、駆動装置
【請求項6】
請求項1~請求項の何れか1つに記載の駆動装置において、
前記調整ステップでは、
前記駆動出力が前記目標値である第1の目標値に追従する状態が所定時間以上検出された場合に、前記目標値を下降させて第2の目標値とし、
続いて、前記駆動出力が前記第2の目標値に追従する状態から前記第2の目標値に比して所定値以上下がる挙動が検出された場合に、前記目標値を上昇させて前記第1の目標値に戻す、駆動装置
【請求項7】
請求項1~請求項の何れか1つに記載の駆動装置において、
エンコーダをさらに備え、
前記エンコーダは、前記作用部の駆動出力を物理的な信号として出力するように構成され、
前記監視ステップでは、前記エンコーダより出力された前記信号と、前記目標値に対応する物理量との偏差を監視することで、前記駆動出力の各状態又は挙動を検出する、駆動装置
【請求項8】
請求項1~請求項の何れか1つに記載の駆動装置において、
前記作用部は、回転駆動するように構成され、
前記目標値及び前記駆動出力は、前記作用部の回転数である、駆動装置
【請求項9】
請求項1~請求項の何れか1つに記載の駆動装置において、
前記駆動装置は、刈払機又はチェーンソーである。
【請求項10】
対象を刈払又は切断するための手持ち式の駆動装置の制御方法であって、
請求項1~請求項の何れか1つに記載の駆動装置において前記制御部が実行する各ステップを備える、方法。
【請求項11】
プログラムであって、
コンピュータに、請求項1~請求項の何れか1つに記載の駆動装置において前記制御部が実行する各ステップを実行させる、プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、駆動装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
草木等の対象を刈払又は切断するための手持ち式の駆動装置がある。例えば、刈払機やチェーンソー等が知られている。
【0003】
特許文献1には、手持ち式の駆動装置の一例である刈払機の先行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3208014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される刈払機に代表されるような公知技術では、使用中のユーザへの負担について考慮されていない。特に、このような駆動装置は作用部の駆動中に騒音や振動が出るため、ユーザへの負担が大きい。さらに、対象に高い力学的作用をかけるために高い駆動出力を要することとなるため、エネルギー消費を抑制したい需要も存在する。
【0006】
本発明では上記事情を鑑み、ユーザへの負担を軽減可能であり且つエネルギー効率の高い駆動装置等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、対象を刈払又は切断するための手持ち式の駆動装置が提供される。この駆動装置は、筐体と、作用部と、制御部とを備える。筐体は、ユーザが位置する後方側から対象が位置する前方側に向かって延在する。作用部は、筐体の前方側に設けられる。対象を刈払又は切断するための力学的作用を対象に付与可能に、駆動するように構成される。制御部は、次の各ステップを実行するように構成される。駆動ステップでは、作用部の駆動出力を目標値に制御することで作用部を駆動させる。監視ステップでは、駆動ステップにおける制御中に、目標値に対する駆動出力の状態又は挙動を監視する。調整ステップでは、監視中の状態又は挙動に基づいて、目標値を調整する。
【0008】
このような一態様によれば、駆動装置の使用に際して、ユーザへの負担を軽減し且つ駆動装置のエネルギー効率の高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】刈払機1の外観構成を示す斜視図である。
図2】刈払機1の電気的なハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】グリップ42bの外観を示す斜視図である。
図4】刈払機1における制御部73等によって実現される機能を示すブロック図である。
図5】制御方法の一例を示すアクティビティ図である。
図6】レベルHighに設定されている場合の、駆動出力DOの時間変化の一例を示すグラフである。
図7】制御方法の他の一例を示すアクティビティ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0011】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0012】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0013】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0014】
1.ハードウェア構成
本節では、本実施形態に係る駆動装置のハードウェア構成について説明する。駆動装置は、対象を刈払又は切断するための手持ち式の駆動装置である。また、好ましくは、駆動装置は、刈払機1又は不図示のチェーンソーである。以下、刈払機1を例に説明するものとする。
【0015】
図1は、刈払機1の外観構成を示す斜視図である。図2は、刈払機1の電気的なハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示されるように、刈払機1は、筐体の一例である操作棹11と、作用部の一例である回転刃2と、取付機構3と、ハンドルユニット4と、電動ユニット6とを備える。また、図2に示されるように、刈払機1は、制御部73を有するマイコン7を備える。
【0016】
(操作棹11)
刈払機1における操作棹11は、駆動装置における筐体の一例である。操作棹11は、ユーザが位置する後方側1rから対象が位置する前方側1fに向かって延在する。操作棹11の長さは特に限定されるものではないが、想定されるユーザが成人であるため、成人の身長に合わせた適切な長さであることが好ましい。このように、筐体として長尺なパイプ状の操作棹11を採用することで、ユーザがわざわざ屈むことなく、自然な姿勢で歩きながら地面に生えた雑草等の刈払を効率的に行うことができる。また、操作棹11の内部には不図示のシャフト等が設けられ、後述の回転刃2と、電動ユニット6におけるモータ64とを接続し、動力が伝達可能な構成となっている。なお、あくまでも一例であり、この限りではない。例えば、モータ64を回転刃2の近く、すなわち操作棹11の前方に設けてもよい。かかる場合、モータ64に給電するバッテリパック62(後述)を、モータ64と同様に、操作棹11の前方に設けてもよいし、バッテリパック62を操作棹11の後方に設け、操作棹11の内部に挿通させた給電用の電源ケーブルによって、操作棹11の前方に位置するモータ64に給電するように実施してもよい。
【0017】
(回転刃2)
刈払機1における回転刃2は、駆動装置における作用部の一例である。回転刃2は、操作棹11の前方側1f、特に好ましくは操作棹11の前端に設けられる。回転刃2は、対象を刈払又は切断するための力学的作用を対象に付与可能に、駆動するように構成される。このような作用部の一例である回転刃2は、使用に伴う摩耗や劣化を伴うため、ユニットとして交換可能に構成されるとよい。さらに、作業の用途に応じて回転刃2以外の作用部を取り付けられるように、ユニットとして交換可能に構成されるとよい。本実施形態では、回転刃2は、回転駆動するように構成される。すなわち本実施形態では、目標値PV及び駆動出力DOは、回転刃2の回転数である。あくまでも回転刃2の場合であり、限定されるものではない。目標値PV及び駆動出力DOについては、後にさらに説明する。
【0018】
なお、回転刃2の回転数は、特に限定されるものではないが、例えば、3000~10000rpmであればよい。回転数は、具体的には例えば、3000,3100,3200,3300,3400,3500,3600,3700,3800,3900,4000,4100,4200,4300,4400,4500,4600,4700,4800,4900,5000,5100,5200,5300,5400,5500,5600,5700,5800,5900,6000,6100,6200,6300,6400,6500,6600,6700,6800,6900,7000,7100,7200,7300,7400,7500,7600,7700,7800,7900,8000,8100,8200,8300,8400,8500,8600,8700,8800,8900,9000,9100,9200,9300,9400,9500,9600,9700,9800,9900,10000rpmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
(取付機構3)
取付機構3は、操作棹11を挿通させる孔と、ハンドルユニット4を挿通させる孔とを有し、直線的に延在するパイプ状の操作棹11に、ハンドルユニット4を交差させて取り付けることを可能とする。取付機構3の形状は一例であり、操作棹11とハンドルユニット4との取り付け手法を特に制限するものではない。
【0020】
(ハンドルユニット4)
ハンドルユニット4は、ユーザの手によって操作される部分であり、湾曲したパイプ状に構成される。ハンドルユニット4は、延在部41と、グリップ42と、トリガーレバー43と、ロックアウトレバー44とを備える。
【0021】
図1に示されるように、延在部41は、取付機構3を中心に、前後に延在する操作棹11に対して交差するように左右に延在する。左側に延在する延在部41の一部は、その途中において屈曲し、ユーザが直接把握するグリップ42aがその先端に設けられている。一方、右側に延在する延在部41の一部は、緩やかに湾曲し、その先端には、グリップ42bが設けられている。グリップ42bは、グリップ42aよりも大きく構成され、グリップ42aにトリガーレバー43及びロックアウトレバー44が設けられる。
【0022】
トリガーレバー43は、ユーザが回転刃2を回転させる際に把握して押圧するレバーである。トリガーレバー43を把握することで、後述のモータ64が通電されて回転し、その動力によって回転刃2が回転駆動する。一方、ロックアウトレバー44は安全機構であり、例えば電気的に、好ましくは機構的に、トリガーレバー43の押圧を規制するように構成されている。すなわち、ロックアウトレバー44を解除しない状態では、ユーザがトリガーレバー43を押圧することができず、回転刃2を回転駆動させることができない構成となっている。このような態様により、意図しない回転刃2の回転駆動を防止し、ユーザの安全を担保している。
【0023】
図3は、グリップ42bの外観を示す斜視図である。グリップ42bは、操作パネル47を備え、操作パネル47に電源スイッチ45と、出力切替ボタン46とが設けられる。図示されるように、出力切替ボタン46は、プラスボタン46aと、マイナスボタン46bとを含むことが好ましい。電源スイッチ45は主電源のオンオフを切り替えるスイッチであり、電源スイッチ45をオンにすることで、刈払機1がスタンバイ状態となる。スタンバイ状態で、ロックアウトレバー44を解除し、トリガーレバー43が押圧されると、回転刃2が回転駆動する。
【0024】
また、本実施形態では、ユーザが出力切替ボタン46を押下することで、回転刃2の回転数を設定又は調整することが可能である。ユーザがプラスボタン46aを押下すると、回転刃2の回転数、より詳細には回転刃2の制御に用いる目標値PVを上昇させることができる。ユーザがマイナスボタン46bを押下すると、回転刃2の回転数、より詳細には回転刃2の制御に用いる目標値PVを下降させることができる。これについては後にさらに説明する。
【0025】
(電動ユニット6)
電動ユニット6は、操作棹11の後方側1r、特に好ましくは操作棹11の後端に設けられる。図1及び図2に示されるように、電動ユニット6は、ハウジング61と、バッテリパック62とを備え、ハウジング61の内部には、精密部品であるインバータ63と、モータ64と、別途説明するマイコン7とが設けられる。バッテリパック62は、充電可能な電池を有する。かかる電池は、例えば、鉛蓄電池で、NAS電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等が適宜採用されればよい。
【0026】
本実施形態では、バッテリパック62に蓄電された電気エネルギーを回転刃2の回転駆動という力学的エネルギーに変換している。より具体的には、バッテリパック62の電力が、後述のマイコン7の制御によって、周波数や電圧等を調整するインバータ63を介してモータ64に付与される。このモータ64の動力が、操作棹11内の不図示のシャフト等を介して、回転刃2に伝達されることで回転刃2が回転駆動する。
【0027】
(マイコン7)
マイコン7は、刈払機1の動作を制御するように構成される。マイコン7は、通信部71と、記憶部72と、制御部73とを有し、これらの構成要素が刈払機1の内部において通信バス70を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0028】
通信部71は、マイコン7から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成される。また、通信部71は、外部の構成要素からマイコン7への種々の電気信号を受信可能に構成される。さらに好ましくは、通信部71がネットワーク通信機能を有し、これによりインターネット等のネットワークを介して、刈払機1と外部機器との間で種々の情報を通信可能に実施してもよい。
【0029】
記憶部72は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部73によって実行される刈払機1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部72は、制御部73によって実行される刈払機1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0030】
制御部73は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部73は、記憶部72に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、刈払機1に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部72に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部73によって具体的に実現されることで、制御部73に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、次節においてさらに詳述する。なお、制御部73は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部73を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0031】
2.機能構成
本節では、本実施形態の機能構成について説明する。前述の通り、記憶部72に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例である制御部73によって具体的に実現されることで、制御部73に含まれる各機能部が実行されうる。
【0032】
図4は、刈払機1における制御部73等によって実現される機能を示すブロック図である。具体的には、制御部73は、機能部として、読出部731と、駆動部732と、監視部733と、調整部734とを備える。また、刈払機1の機能に関連し、記憶部72は、駆動プログラム721と、監視プログラム722と、上昇プログラム723と、下降プログラム724とを記憶している。
【0033】
読出部731は、通信部71を介して外部から受け付けた又は予め記憶部72に記憶された種々の情報を読み出すように構成される。例えば、読出部731は、予め記憶部72に記憶された駆動プログラム721、監視プログラム722、上昇プログラム723又は下降プログラム724を読み出してもよい。
【0034】
駆動部732は、読み出された駆動プログラム721に基づき、駆動ステップを実行するように構成される。具体的には、駆動部732は、回転刃2の回転数(以下、駆動出力DOと称する)を目標値PVに制御することで回転刃2を駆動させる。この場合の制御手法は特に限定されないが、例えば、P制御、PD制御、PID制御等が適宜採用されうる。制御に係る各係数は、必要に応じて好ましい値を設定すればよい。具体例については後にさらに詳述する。
【0035】
監視部733は、読み出された監視プログラム722に基づき、監視ステップを実行するように構成される。具体的には、監視部733は、駆動部732における制御中に、目標値PVに対する駆動出力DOの状態又は挙動を監視する。具体的には例えば、刈払機1は、不図示のエンコーダをさらに備えるとよい。このエンコーダは、回転刃2の駆動出力DOを物理的な信号として出力するように構成される。監視部733は、このエンコーダより出力された信号、例えば電圧値と、目標値PVに対応する物理量、例えば電圧値との偏差を監視することで、駆動出力DOの各状態又は挙動を検出する。すなわち、一般的な制御の構成をもって、次に説明する調整機能を有する刈払機1を実現することができる。さらなる具体例については後にさらに詳述する。
【0036】
調整部734は、読み出された上昇プログラム723又は下降プログラム724に基づき、調整ステップを実行するように構成される。具体的には、調整部734は、監視中の状態又は挙動に基づいて、目標値PVを調整する。具体例については後にさらに詳述する。
【0037】
3.制御方法
本節では、前述した駆動装置の一例である刈払機1の制御方法について説明する。この制御方法は、対象を刈払又は切断するための手持ち式の刈払機1の制御方法である。特に、この制御方法は、刈払機1における制御部73の各ステップを備える。より具体的には、次の各ステップを備える。駆動ステップでは、回転刃2の駆動出力DOを目標値PVに制御することで回転刃2を駆動させる。監視ステップでは、駆動ステップにおける制御中に、目標値PVに対する駆動出力DOの状態又は挙動を監視する。調整ステップでは、監視中の状態又は挙動に基づいて、目標値PVを調整する。
【0038】
ところで、ユーザは、出力切替ボタン46を用いて回転刃2の回転数の制御にあたっての目標値PVを設定することができる。好ましくは、目標値PVは、複数のレベルの中から1つを選択することでユーザが設定可能に構成されるとよい。レベルの段階数は、具体的には例えば、2,3,4,5,6,7,8,9,10段階であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。目標値PVの決定は回転刃2の回転数を左右する重要なパラメータであるが、このような態様によれば、ユーザがいちいち詳細な数値を入力する手間が省くことができ、ユーザビリティが向上する。
【0039】
また好ましくは、調整部734は、目標値PVが所定値以上に設定されている場合に、状態又は挙動に基づいて、目標値PVを調整するとよい。閾値となる所定値の基準は、限定されるものではないが、特に好ましくは、目標値PVに対応する所定値は、ユーザが感じる騒音が閾値を超える駆動出力DOに基づいて決定されるとよい。目標値PVの調整を行うか否かの目標値PVの所定値を設定しておくことで、人間工学的に騒音というユーザの負担軽減を考慮した製品を実施することができる。
【0040】
図5は、制御方法の一例を示すアクティビティ図である。このアクティビティ図では、ユーザが電源スイッチ45をオンにし且つロックアウトレバー44を解除した上で、トリガーレバー43を押圧した瞬間をスタートとみなすものとする。
【0041】
また、ユーザが設定可能なレベルは、Low,Middle,Highの3種類であるものとし、アクティビティA101での判定の結果、レベルHighに設定されている場合に、ループ処理であるアクティビティA102~A106に進むものとする。レベルHighに設定されている場合の、目標値PVを第1の目標値PV1とする。回転刃2の回転数が前述の通り3000~10000rpmである場合、レベルLowに対応する目標値PVの回転数が3500rpm、レベルMiddleに対応する目標値PVの回転数が6000rpm、レベルHighに対応する目標値PVの回転数が10000rpm等と例示されうる。
【0042】
図6は、レベルHighに設定されている場合の、駆動出力DOの時間変化の一例を示すグラフである。特に図6に示されるように、調整部734は、駆動出力DOが目標値PVである第1の目標値PV1に追従する状態が所定時間Δt以上検出された場合に、目標値PVを下降させて第2の目標値PV2とし、続いて、駆動出力DOが第2の目標値PV2に追従する状態から第2の目標値PV2に比して所定値ΔV以上下がる挙動が検出された場合に、目標値PVを上昇させて第1の目標値PV1に戻すとよい。この流れについて、以下に詳しく説明する。
【0043】
ループ処理であるアクティビティA102~A106では、前述の監視部733による監視ステップが継続的に実行されている。もちろん、ユーザがトリガーレバー43の押圧を解除することや、電源スイッチ45をオフにすることで、モータ64への通電が遮断され、このループ処理を終了することができる(アクティビティA199)。
【0044】
アクティビティA102では、駆動出力DOが第1の目標値PV1に対してオーバーシュートしているか否かが監視部733によって監視される。ここで、駆動部732は、駆動出力DOが目標値PVである第1の目標値PV1に対してオーバーシュートする状態が検出された場合に、目標値PVを維持する。
【0045】
例えば図6においては、X1,X2,X3等がオーバーシュートしている状態に該当する。オーバーシュートしている状態は、回転に変動が発生しており、すなわち、ユーザが回転刃2を雑草等の対象に当てている状態と判断されうるため、刈払に適した高い駆動出力DOを維持するために、目標値PVが第1の目標値PV1に維持されることとなる。
【0046】
一方、オーバーシュートが検出されない場合には、アクティビティA103において、駆動出力DOが第1の目標値PV1に安定して追従しているか否かが監視部733によって監視される。駆動出力DOが目標値PVに安定して追従する状態は、回転刃2を対象に当てずに空転させている状態と判断されうる。また、調整部734は、駆動出力DOが目標値PVである第1の目標値PV1に追従する状態が所定時間Δt以上検出された場合に、目標値PVを下降させて第2の目標値PV2とする(アクティビティA104)。
【0047】
例えば図6では、時刻t1~t1+Δt又は時刻t2~t2+Δtにかけて、Δt[秒]間、駆動出力DOが第1の目標値PV1に追従している態様が示されている。監視部733がこれを検出した結果、調整部734によって目標値PVが本来の第1の目標値PV1から第2の目標値PV2に下げられている。なお、あくまでもレベルHighに対応する目標値PVを第1の目標値PV1から第2の目標値PV2に下げたのであり、ユーザが設定可能なレベルを下げたわけでないことに留意されたい。
【0048】
Δtの値は、例えば0.5~10[秒]であり、好ましくは、1~3[秒]であり、具体的には例えば、0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5,8,8.5,9,9.5,10[秒]であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0049】
また、第1の目標値PV1に対する第2の目標値PV2の割合は、例えば、80~96%であり、具体的には例えば、80,80.5,81,81.5,82,82.5,83,83.5,84,84.5,85,85.5,86,86.5,87,87.5,88,88.5,89,89.5,90,90.5,91,91.5,92,92.5,93,93.5,94,94.5,95,95.5,96%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0050】
このように、空転させている場合と、刈払が行われている場合とで、駆動出力DOが目標値PVに追従している態様が異なるため、これらを区別することが可能である。すなわち、一定以上の振幅を有してオーバーシュートしている場合には、刈払が行われているものとして、目標値PVを第1の目標値PV1に維持すればよい。また、対象に対して力学的作用を付加していない空転状態で、目標値PVを第1の目標値PV1から第2の目標値PV2に下げることで、回転刃2の回転駆動による騒音を発生させることを防止し、ユーザの負担を軽減することができる。これとともに、対象に対して力学的作用を付加していない状態での消費電力を低減することができる。すなわち、ユーザの騒音への負担軽減と、作業性とを両立的に向上させることができる。
【0051】
続いて、目標値PVが第2の目標値PV2に下がった状態で、アクティビティA105において、駆動出力DOが第2の目標値PV2から所定値ΔV以上下がっているか否かが監視部733によって監視される。ここで、調整部734は、駆動出力DOが目標値PVである第2の目標値PV2に追従する状態から第2の目標値PV2に比して所定値ΔV以上下がる挙動が検出された場合に、目標値PVを上昇させて第1の目標値PV1とする(アクティビティA106)。
【0052】
例えば図6においては、Y1,Y2等がオーバーシュートしている状態に該当する。このように、第2の目標値PV2に下がった状態から、さらに駆動出力DOが所定値ΔV以上下がった場合は、対象に回転刃2が当たっていることと判断して、目標値PVを第1の目標値PV1に戻すことで、ユーザの作業時には高い刈払の機能を実現することができる。
【0053】
第2の目標値PV2に対するΔVの割合は、例えば、0.5~5%であり、具体的には例えば、0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4,4.1,4.2,4.3,4.4,4.5,4.6,4.7,4.8,4.9,5%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0054】
ところで、ユーザがレベルHighを設定した場合には、目標値PVが第1の目標値PV1と第2の目標値PV2との間を遷移するが、相対的に低い目標値PVである第2の目標値PV2であっても、レベルMiddleに対応する目標値PVよりも高いことが好ましい。換言すると、調整部734は、設定されたレベルに対応する値以下且つその1つ下のレベルに対応する値以上の範囲で、目標値PVを調整するとよい。
【0055】
目標値PVを調整する値をあまりにも大きくしてしまうと、かえって制御が不安定になり、場合によっては消費電力もかえって大きくなることが想定される。このような態様によれば、限定された範囲で目標値PVの調整を行うため、調整による制御の不安定化が抑制されている。
【0056】
このような一態様によれば、駆動装置、例えば刈払機1の使用に際して、ユーザへの負担を軽減し且つエネルギー効率を高めることができる。
【0057】
4.その他
刈払機1に例示される駆動装置に関して、以下のような態様を採用してもよい。
【0058】
(1)以上の実施形態では、刈払機1の構成として説明したが、コンピュータに、刈払機1における制御部73の各ステップを実行させるプログラムが提供されてもよい。
【0059】
(2)図5に示されるループ処理に変えて、図7に示されるループ処理を採用してもよい。図7は、制御方法の他の一例を示すアクティビティ図である。図7に示される例では、ループ処理そのものは同じであるが、レベルHighに設定された場合に、はじめから目標値PVを第1の目標値PV1よりも小さい第2の目標値PV2としている点に留意されたい。つまり、アクティビティA201(図5におけるアクティビティA101に相当)に続く処理が、アクティビティA204(図5におけるアクティビティA104に相当)となっている。このような態様によっても、ユーザへの負担を軽減し且つエネルギー効率の高めることができる。
【0060】
(3)目標値PVが第2の目標値PV2の状態で、駆動出力DOが第2の目標値PV2に安定して追従し、そのまま所定時間以上が経過した場合には、自動的に通電を解除するように実施してもよい。
【0061】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記駆動装置において、前記調整ステップでは、前記目標値が所定値以上に設定されている場合に、前記状態又は挙動に基づいて、前記目標値を調整する、もの。
前記駆動装置において、前記目標値に対応する前記所定値は、前記ユーザが感じる騒音が閾値を超える駆動出力に基づいて決定された、もの。
前記駆動装置において、前記目標値は、複数のレベルの中から1つを選択することでユーザが設定可能に構成される、もの。
前記駆動装置において、前記調整ステップでは、設定されたレベルに対応する値以下且つその1つ下のレベルに対応する値以上の範囲で、前記目標値を調整する、もの。
前記駆動装置において、前記調整ステップでは、前記駆動出力が前記目標値である第1の目標値に追従する状態が所定時間以上検出された場合に、前記目標値を下降させて第2の目標値とする、もの。
前記駆動装置において、前記調整ステップでは、前記駆動出力が前記目標値である第2の目標値に追従する状態から前記第2の目標値に比して所定値以上下がる挙動が検出された場合に、前記目標値を上昇させて第1の目標値とする、もの。
前記駆動装置において、前記調整ステップでは、前記駆動出力が前記目標値である第1の目標値に追従する状態が所定時間以上検出された場合に、前記目標値を下降させて第2の目標値とし、続いて、前記駆動出力が前記第2の目標値に追従する状態から前記第2の目標値に比して所定値以上下がる挙動が検出された場合に、前記目標値を上昇させて前記第1の目標値に戻す、もの。
前記駆動装置において、前記駆動ステップでは、前記駆動出力が前記目標値である第1の目標値に対してオーバーシュートする状態が検出された場合に、前記目標値を維持する、もの。
前記駆動装置において、エンコーダをさらに備え、前記エンコーダは、前記作用部の駆動出力を物理的な信号として出力するように構成され、前記監視ステップでは、前記エンコーダより出力された前記信号と、前記目標値に対応する物理量との偏差を監視することで、前記駆動出力の各状態又は挙動を検出する、もの。
前記駆動装置において、前記作用部は、回転駆動するように構成され、前記目標値及び前記駆動出力は、前記作用部の回転数である、もの。
前記駆動装置において、刈払機又はチェーンソーである、もの。
対象を刈払又は切断するための手持ち式の駆動装置の制御方法であって、前記駆動装置における制御部の各ステップを備える、方法。
プログラムであって、コンピュータに、前記駆動装置における制御部の各ステップを実行させる、もの。
もちろん、この限りではない。
【0062】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0063】
1 :刈払機
1f :前方側
1r :後方側
11 :操作棹
2 :回転刃
3 :取付機構
4 :ハンドルユニット
41 :延在部
42 :グリップ
42a :グリップ
42b :グリップ
43 :トリガーレバー
44 :ロックアウトレバー
45 :電源スイッチ
46 :出力切替ボタン
46a :プラスボタン
46b :マイナスボタン
47 :操作パネル
6 :電動ユニット
61 :ハウジング
62 :バッテリパック
63 :インバータ
64 :モータ
7 :マイコン
70 :通信バス
71 :通信部
72 :記憶部
721 :駆動プログラム
722 :監視プログラム
723 :上昇プログラム
724 :下降プログラム
73 :制御部
731 :読出部
732 :駆動部
733 :監視部
734 :調整部
DO :駆動出力
PV :目標値
PV1 :第1の目標値
PV2 :第2の目標値
ΔV :所定値
Δt :所定時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7