(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】自律走行ロボット
(51)【国際特許分類】
A47L 11/30 20060101AFI20241028BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241028BHJP
【FI】
A47L11/30
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2021018492
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和賀井 佑介
(72)【発明者】
【氏名】箱守 大典
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-139720(JP,A)
【文献】特開昭63-150044(JP,A)
【文献】特表2009-524503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 11/30
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドで床に薬剤を塗布し、前記パッドよりも走行方向に対して後方
側に
設けられた伸縮するアームにより前記パッドから所定の距離だけ離して
支持された回収部で塗布された前記薬剤を回収
し、
直進するときは、前記所定の距離を決められた最小の回収時間で除算した速度以下で走行し、
コーナーを曲がるときは、前記アームを短縮し、該アームが短縮された状態で自装置が該コーナーを曲がることができる速度に減速する
自律走行ロボット。
【請求項2】
前記距離を走行速度に応じて変化させる
請求項1に記載の自律走行ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床を清掃する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
床を清掃する技術として、特許文献1には、走行手段と滴下ノズルの走査手段とを備えると共に、該滴下ノズルを走査させながら走行することにより、床面に消毒液やワックスなどの液体を塗布する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、液体を滴下したあと塗り延ばすことでその液体を塗布しているが、例えば清掃において薬剤を塗布する場合には、薬剤を塗布するだけでなく余分な薬剤を回収しなければ清掃の効果が低くなることがある。
本発明は、上記の背景に鑑み、薬剤を用いた清掃の効果を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、パッドで床に薬剤を塗布し、前記パッドよりも走行方向に対して後方側に設けられた伸縮するアームにより前記パッドから所定の距離だけ離して支持された回収部で塗布された前記薬剤を回収し、直進するときは、前記所定の距離を決められた最小の回収時間で除算した速度以下で走行し、コーナーを曲がるときは、前記アームを短縮し、該アームが短縮された状態で自装置が該コーナーを曲がることができる速度に減速する自律走行ロボットを第1の態様として提供する。
【0006】
第1の態様の自律走行ロボットによれば、薬剤を用いた清掃の効果を高めることができる。また、第1の態様の自律走行ロボットによれば、コーナーにおいても薬剤を用いた清掃の効果を維持しつつ、コーナーを曲がりやすくすることができる。
【0007】
上記の第1の態様の自律走行ロボットにおいて、前記距離を走行速度に応じて変化させる、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0008】
第2の態様の自律走行ロボットによれば、走行速度が変化する場合でも薬剤を用いた清掃の効果を維持することができる。
【0018】
第7の態様の清掃システムによれば、薬剤を用いた清掃の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施例に係る清掃ロボットの構成を表す図
【
図3】清掃ロボットの薬剤の塗布等に関する構成を表す図
【
図5】第2実施例に係る清掃システムの構成を表す図
【
図6】第2実施例の制御処理における動作手順の一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1]第1実施例
図1は第1実施例に係る清掃ロボット10の構成を表す。清掃ロボット10は、自律的に走行し、パッドで床に薬剤を塗布する装置である。パッドとは、多少の吸水性を有する柔らかい物体であり、例えばスポンジパッドである。清掃ロボット10は、例えば、床の汚れを落とす効能を有する液状の薬剤を床に塗布する。なお、塗布される薬剤は、効能及び種類がこれに限らず、パッドで床に塗布されるものであればよい。
【0021】
清掃ロボット10は、動作制御部11と、走行部12と、滴下部13と、パッド昇降部14と、吸引部15と、駆動部16とを備える。動作制御部11は、走行部12等の各部の動作を制御する。動作制御部11は、プロセッサ、メモリ及びストレージを備える。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置、レジスタ及び周辺回路等を有する。メモリは、プロセッサが読み取り可能な記録媒体であり、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を有する。
【0022】
ストレージは、プロセッサが読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ハードディスクドライブ又はフラッシュメモリ等を有する。プロセッサは、RAMをワークエリアとして用いてROMやストレージに記憶されているプログラムを実行することで走行部12等の各部の動作を制御する。走行部12は、モータ、ギア及び車輪等を有し、清掃ロボット10を走行させる。
【0023】
滴下部13は、液状の薬剤を貯えるタンク及びノズル等を有し、薬剤を床に滴下する。パッド昇降部14は、モータ、ギア及びパッド等を有し、パッドを昇降させて床に接触させたり床から離したりする。床に接触したパッドは、滴下された薬剤を床に塗布する。吸引部15は、スクイージ、パイプ、ポンプ、及びアーム等を有し、床に塗布された薬剤を拭き取って吸引する。駆動部16は、モータ及びギア等を有し、吸引部15のアームを昇降させたり伸縮させたりする。
【0024】
図2は清掃ロボット10の外観を表す。
図2では、清掃時に走行する方向を前方とした場合の側方側から見た清掃ロボット10が表されている。清掃ロボット10は、筐体101と、走行部12が有する車輪121と、滴下部13が有するノズル131と、パッド昇降部14が有するパッド141と、吸引部15が有するアーム151及びスクイージ152とを備える。
【0025】
筐体101は、各部が有するプロセッサ、メモリ、ストレージ、モータ、ギア、タンク及びポンプ等を格納する。車輪121は、筐体101の前方側と後方側にそれぞれ設けられ、筐体101等を支持すると共に、回転して自装置を走行方向A1に向けて走行させる。前方側又は後方側の車輪121のいずれかが向きを変えることで、清掃ロボット10の走行方向が変化する。
【0026】
ノズル131は、筐体101の前方側に設けられ、筐体101内のタンクに貯えられた液状の薬剤を滴下する。パッド141は、吸水性が少ないポリエステル繊維等を用いて形成されている。パッド141は、清掃をしていないときは
図2(a)に表すように床面から離れているが、清掃時には
図2(b)に表すようにパッド昇降部14の動作により下降して床面に接触する。アーム151は、筐体101の後方側に設けられ、スクイージ152を支持する。
【0027】
スクイージ152は、ゴム製のブレードを有し、平らな床面に塗布された薬剤をかき集めて回収する。スクイージ152は、清掃をしていないときは
図2(a)に表すように床面から離れているが、清掃時には
図2(b)に表すように駆動部16の動作により下降して床面に接触する。薬剤の塗布等(滴下、塗布、回収)を行う構成の詳細について、
図3を参照して説明する。
【0028】
図3は清掃ロボット10の薬剤の塗布等に関する構成を表す。
図3(a)では鉛直上方から見た清掃ロボット10が表され、
図3(b)では側方側から見た清掃ロボット10が表されている。走行方向A1に直交する方向は、清掃ロボット10の幅を表す方向であり、以下では幅方向A2と言う。
図3(a)に表すように、複数のノズル131が幅方向A2に並べて設けられており、幅方向A2の全体に薬剤が塗布されるようにしている。
【0029】
パッド141は、滴下された薬剤を残さず塗布するため、薬剤が滴下される範囲よりも幅方向A2の寸法が大きくなっている。スクイージ152は、
図3(a)に表すように、鉛直上方から見て幅方向A2の中央が最も後方になるように折れ曲がった形をしている。スクイージ152は、この形状により、パッド141により塗布された薬剤を幅方向A2の中央にかき集める。
【0030】
アーム151の内部にはパイプ153が設けられており、パイプ153は、スクイージ152側の端に、スクイージ152によりかき集められた薬剤を吸引可能な開口部154を有する。また、パイプ153の筐体101側には図示せぬポンプ及びタンクが接続されている。このポンプが駆動することで、スクイージ152によってかき集められた薬剤が開口部154から吸引され、筐体101の内部のタンクに蓄積される。
【0031】
スクイージ152及び開口部154は、パッド141よりも走行方向A1に対して後方に所定の距離(
図3(a)、(b)の状態では距離L1)だけ離して設けられて、塗布された薬剤を回収する。スクイージ152及び開口部154を以下では「回収部」とも言う。パッド141から開口部154までの距離は、清掃ロボット10における薬剤を塗布する位置から薬剤を回収する位置までの距離を意味しており、以下では「所定の回収距離」と言う。
【0032】
清掃ロボット10においては、上記のとおり所定の回収距離だけ離して回収部が設けられているが、駆動部16が動作してアーム151を伸縮させることにより所定の回収距離が変化する。本実施例では、
図3(c)に表すように所定の回収距離が距離L2から距離L3まで変化する。清掃ロボット10の動作制御部11は、この所定の回収距離を、自装置の走行速度に応じて変化させる。
【0033】
具体的には、動作制御部11は、コーナー(曲がり角)を曲がるときは、直進しているときに比べて、走行速度を小さくし且つ所定の回収距離を短くする。また、動作制御部11は、直進するときは、コーナーを曲がるときに比べて、走行速度を大きくし且つ所定の回収距離を長くする。動作制御部11は、走行速度及び所定の回収距離の変更を、直線とコーナーとの境目において行う。
【0034】
動作制御部11が走行速度及び所定の回収距離を制御する制御処理について、
図4を参照して説明する。
図4は制御処理における動作手順の一例を表す。本実施例では、清掃ロボット10が走行するルートが予め決まっており、走行ルートを清掃ロボット10が記憶しているものとする。
図4の動作手順は、例えば、清掃ロボット10の利用者が清掃開始の操作を行うこと又はスケジュールされた清掃開始の時刻になることを契機に開始される。
【0035】
まず、動作制御部11は、自装置が記憶している走行ルートを読み出して取得する(ステップS11)。次に、動作制御部11は、パッド141及びスクイージ152を下降させる(ステップS12)。続いて、動作制御部11は、自装置の走行を開始して、最初は、自装置を直進時の速度で直進走行させる(ステップS21)。直進時の速度とは、清掃ロボット10を直進させる際の走行速度として予め定められた速度である。
【0036】
清掃ロボット10においては、直進時の所定の回収距離(パッド141から開口部154までの距離)も予め定められている。直進時の速度及び所定の回収距離は、例えば次のように定められる。パッド141によって塗布された薬剤は、一定の時間以上経過してから回収した方が効能を発揮しやすい。薬剤の塗布から回収までの時間を「回収時間」と言うものとすると、使用する薬剤毎に望ましい効能を発揮する最小の回収時間が決まっている。
【0037】
走行速度=所定の回収距離÷回収時間であるから、直進時の速度=直進時の所定の回収距離÷最小の回収時間と定められる。なお、直進時の速度としては、直進時の所定の回収距離÷最小の回収時間よりも遅い速度が定められていてもよい。次に、動作制御部11は、走行開始から経過した時間に基づき走行ルートにおける走行位置を判断し、自装置がコーナーに到達したか否かを判断する(ステップS22)。
【0038】
動作制御部11は、コーナーに至った(YES)と判断した場合、コーナー時に走行速度が速いと曲がり切れずに走行ルートから外れやすいので、コーナー時の速度まで走行速度を減速させる(ステップS23)。コーナー時の速度としては、清掃ロボット10が走行ルートに沿ってコーナーを確実に曲がることができる速度が定められる。動作制御部11は、自装置を減速させると共に、アーム151を短縮して、所定の回収距離を短くしてから(ステップS24)、コーナーを走行させる(ステップS25)。
【0039】
コーナーでも、上述した最小の回収時間が確保されるようにコーナー時の速度及び所定の回収距離が定められる。つまり、コーナー時の所定の回収距離=コーナー時の速度×最小の回収時間と定められる。なお、直進時の所定の回収距離>コーナー時の所定の回収距離≧コーナー時の速度×最小の回収時間という範囲でコーナー時の所定の回収距離が定められてもよい。動作制御部11は、コーナーの走行が終わるまで、コーナー時の速度及び所定の回収距離を維持する。
【0040】
動作制御部11は、コーナーの走行が終わると、自装置の走行速度を直進時の速度に増速させると共に(ステップS26)、アーム151を伸長して、所定の回収距離を直進時の所定の回収距離まで長くする(ステップS27)。そして、動作制御部11は、走行ルートの終点に到達したか否かを判断し(ステップS31)、到達していない(NO)と判断した場合はステップS21に戻って直進走行を行う。
【0041】
動作制御部11は、ステップS22でコーナーに到達していない(NO)と判断した場合も、ステップS31の判断を行う。動作制御部11は、ステップS31で終点に到達した(YES)と判断した場合は、自装置の走行を停止し(ステップS32)、パッド141及びスクイージ152を上昇させて(ステップS33)、この動作手順を終了する。
【0042】
本実施例では、上記のとおり薬剤を塗布したあと最小の回収時間が経過してから薬剤を回収するように、所定の回収距離をあけてスクイージ152が設けられている。これにより、パッド141とスクイージ152との距離を所定の回収距離よりも短くする場合に比べて、薬剤が効能を発揮しやすくなり、薬剤を用いた清掃の効果を高めることができる。
【0043】
また、本実施例では、清掃ロボット10の走行速度に応じて所定の回収距離を変化させ、最小の回収時間を経てから薬剤が回収されるようにしている。これにより、走行速度が変化する場合でも薬剤を用いた清掃の効果を維持することができる。特に、コーナーにおいて所定の回収距離を変化させることで、コーナーにおいても薬剤を用いた清掃の効果を維持しつつ、清掃ロボット10の先端から後端までの寸法を短くしてコーナーを曲がりやすくすることができる。
【0044】
[2]第2実施例
本発明の第2実施例について、以下、第1実施例と異なる点を中心に説明する。第1実施例では、薬剤の塗布と薬剤の回収が同時に行われたが、第2実施例では、まず薬剤の塗布が行われ、それが終わったあとに薬剤が回収される。
【0045】
図5は第2実施例に係る清掃システム1の構成を表す。清掃システム1は、清掃ロボット10a及び10bを備える。
図5(a)に表すように、清掃ロボット10aは、動作制御部11と、走行部12と、滴下部13と、パッド昇降部14と、通信部17とを備え、清掃ロボット10bは、動作制御部11と、走行部12と、吸引部15と、駆動部16と、通信部17とを備える。
【0046】
通信部17は、アンテナ及び通信回路等を備え、他の通信部17と1対1又は通信回線を介した無線通信を行う。また、
図5(b)に表すように、清掃ロボット10aは、筐体101aと、車輪121と、ノズル131と、パッド141とを備え、清掃ロボット10bは、筐体101bと、車輪121と、アーム151b及びスクイージ152bとを備える。
【0047】
このように、清掃ロボット10aは、薬剤を塗布する構成を備えるが、薬剤を回収する構成を備えない。清掃ロボット10aは、パッド141で床に薬剤を塗布する塗布用の自律走行ロボットである。清掃ロボット10bは、薬剤を塗布する構成を備えないが、薬剤を回収する構成を備える。清掃ロボット10bは、塗布された薬剤を回収する回収部を有する回収用の自律走行ロボットである。
【0048】
また、清掃ロボット10a及び10bは、それぞれ無線通信を行い、互いの状況を相互に伝達できるようになっている。清掃システム1においては、まず、清掃ロボット10aが床に薬剤を塗布し、そのあとに、清掃ロボット10bが塗布された薬剤を回収する。詳細には、清掃ロボット10bは、清掃ロボット10aより所定時間以上遅れて清掃ロボット10aの走行ルート上を走行しながら、塗布された薬剤を回収する。
【0049】
清掃ロボット10a及び10bの各々の動作制御部11は、薬剤の塗布及び回収のための動作を制御する制御処理を行う。
図6は本実施例の制御処理における動作手順の一例を表す。本実施例では、清掃ロボット10a及び10bが同じスタート地点に配置され、清掃システム1の利用者が清掃開始の操作を行うこと又はスケジュールされた清掃開始の時刻になることを契機にこの動作手順が開始される。
【0050】
図6(a)では清掃ロボット10aの動作手順が表されている。まず、清掃ロボット10aの動作制御部11は、自装置が記憶している走行ルートを読み出して取得する(ステップS31)。次に、清掃ロボット10aの動作制御部11は、パッド141を下降させる(ステップS32)。続いて、清掃ロボット10aの動作制御部11は、走行開始時刻を無線通信で発信して(ステップS33)、薬剤を塗布しながらの走行を開始する(ステップS34)
【0051】
そして、清掃ロボット10aの動作制御部11は、走行ルートの走行を終えてスタート地点に戻り(ステップS35)、パッド141を上昇させて(ステップS35)、この動作手順を終了する。
図6(b)では清掃ロボット10bの動作手順が表されている。まず、清掃ロボット10bの動作制御部11は、自装置が記憶している、清掃ロボット10aと同じ走行ルートを読み出して取得する(ステップS41)。
【0052】
次に、清掃ロボット10bの動作制御部11は、清掃ロボット10aから発信された塗布開始時刻を取得する(ステップS42)。続いて、清掃ロボット10bの動作制御部11は、走行開始時刻から所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS43)。所定時間としては、第1実施例で述べた最小の回収時間又はそれよりも長い時間が定められる。清掃ロボット10bの動作制御部11は、所定時間が経過するまでステップS43の動作を繰り返す。
【0053】
清掃ロボット10bの動作制御部11は、ステップS43において所定時間が経過した(YES)と判断した場合は、スクイージ152を下降させ(ステップS44)、自装置を、清掃ロボット10aと同じ走行ルートで薬剤を回収しながら走行させる(ステップS45)。清掃ロボット10bの走行速度は、例えば、清掃ロボット10aと同じ走行速度である。これにより、走行ルートの全体を通じて、清掃ロボット10bの清掃ロボット10aからの遅れが所定時間を超えることがない。
【0054】
そして、清掃ロボット10bの動作制御部11は、走行ルートの走行を終えてスタート地点に戻り(ステップS46)、スクイージ152を上昇させて(ステップS47)、この動作手順を終了する。なお、清掃ロボット10bの走行速度が清掃ロボット10aの走行速度と異なっていてもよく、走行を終えるまで、清掃ロボット10bの清掃ロボット10aからの遅れが走行ルートの全体を通じて所定時間を超えないようになっていればよい。
【0055】
本実施例でも、上記のとおり、第1実施例と同様に薬剤を塗布したあと最小の回収時間が経過してから薬剤を回収するように、所定時間が経過してから回収用の清掃ロボット10bが走行する。これにより、清掃ロボット10bが所定時間の経過前に走行を開始する場合に比べて、薬剤が効能を発揮しやすくなり、薬剤を用いた清掃の効果を高めることができる。
【0056】
また、第1実施例の清掃ロボット10では、アーム151の長さに限界があるので、最小の回収時間を確保するためには走行速度をある程度抑えなければならなかった。本実施例では、2台の清掃ロボット10a及び10bが間隔をあけて走行することで最小の回収時間が確保されるので、各清掃ロボットの走行速度を、第1実施例に比べて速くすることができる。
【0057】
なお、本実施例では、清掃システム1において、清掃ロボット10aの走行速度又は清掃ロボット10bの走行速度に応じて上述した所定時間を設定してもよい。例えば、単位時間に薬剤を滴下する量が一定である場合、清掃ロボット10aの走行速度が遅いほど、単位面積当たりの薬剤の量が多くなり、塗布された薬剤の全体が効能を発揮するまでに要する時間が長くなる。
【0058】
そこで、清掃システム1においては、清掃ロボット10aの走行速度が遅いほど所定時間を長く設定することで、所定時間が一定である場合に比べて、塗布された薬剤の全体が効能を発揮しやすいようにすることができる。また、塗布される薬剤の量及び所定時間が一定である場合、清掃ロボット10bの走行速度が速いほど、回収しきれず床に残る薬剤の量が多くなりやすい。
【0059】
そこで、清掃システム1においては、清掃ロボット10bの走行速度が速いほど所定時間を長く設定することで、塗布された薬剤が効能を発揮する時間が確保されやすいようにしている。その結果、清掃ロボット10aの走行速度又は清掃ロボット10bの走行速度のどちらを用いる場合も、所定時間が一定の場合に比べて、薬剤を用いた清掃の効果をさらに高めることができる。
【0060】
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせてもよい。
【0061】
[3-1]1台の清掃ロボット
第2実施例では、2台の清掃ロボットを用いたが、1台の清掃ロボットだけを用いてもよい。
図7は本変形例に係る清掃ロボット10cの構成を表す。清掃ロボット10cは、筐体101cと、車輪121と、ノズル131と、パッド141と、アーム151c及びスクイージ152cとを備える。
【0062】
筐体101cは、第1実施例の清掃ロボット10と同様に、各部が有するプロセッサ、メモリ、ストレージ、モータ、ギア、タンク及びポンプ等を格納する。ただし、清掃ロボット10では、アーム151及びスクイージ152が筐体101の後方に設けられていたが、清掃ロボット10cでは、アーム151c及びスクイージ152cが筐体101cの下部でパッド141の後方に設けられている。
【0063】
アーム151cの内部にはパイプ153cが設けられている。パイプ153cの鉛直下方の開口部154cから、スクイージ152cによりかき集められた薬剤が吸引される。スクイージ152c及び開口部154cを以下では「回収部」とも言う。スクイージ152cは、アーム151cが伸縮することで上下に移動して床に接触したり離れたりするが、第1実施例とは異なり前後には移動しない。
【0064】
清掃ロボット10cは、塗布用の自律走行ロボット及び回収用の自律走行ロボットを兼ねている。清掃ロボット10cは、薬剤の塗布時にはパッド141を床に接触させ且つ回収部を床から離して走行する。また、清掃ロボット10cは、薬剤の回収時にはパッド141を床から離し且つ回収部を床に接触させて走行する。このように1台の清掃ロボットで薬剤の塗布及び回収を行うことで、2台の清掃ロボットを用いる場合に比べて、清掃ロボットの設置スペースをコンパクトにすることができる。
【0065】
なお、清掃ロボット10cを用いる場合においても、薬剤の塗布から薬剤の回収までの時間(回収時間)をその薬剤が効能を発揮するための最小の回収時間以上となるように走行速度が定められる。具体的には、走行速度を一定とすると、走行ルートの全長÷走行速度=走行時間≧最小の回収時間とする必要があるので、走行ルートの全長÷最小の回収時間≧走行速度となるように清掃ロボット10cの走行速度が定められる。
【0066】
[3-2]自律走行の方法
上記の各例では、各清掃ロボットが、予め定められた走行ルートを自律走行したが、自律走行の方法はこれに限らない。例えば、清掃ロボットが、障害物を認識しながら走行し、並行して走行ルートを生成しながら自律走行を行ってもよい。その場合、第2実施例であれば、清掃ロボット10aは、走行開始時刻に加え、生成した走行ルートを清掃ロボット10bに送信する。清掃ロボット10bは、受信した走行ルートに沿って走行して薬剤を回収する。
【0067】
[3-3]発明のカテゴリ
本発明は、
図1等で説明した清掃ロボット10、10a、10b、10cのような自律走行ロボットとして捉えられる。また、本発明は、
図5で説明した清掃システム1としても捉えられる。また、本発明は、
図4又は
図6に示す動作手順を実行する清掃方法としても捉えられるし、それらの清掃方法を実現する自律走行ロボットを制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…清掃システム、10、10a、10b、10c…清掃ロボット、11…動作制御部、12…走行部、13…滴下部、14…パッド昇降部、15…吸引部、16…駆動部、17…通信部、101、101a、101b、101c、121…車輪、131…ノズル141…パッド、151、151b、151c…アーム、152、152b、152c…スクイージ、153、153c…パイプ、154、154c…開口部。