(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】還元型グルタチオンのα型結晶の製造方法及び当該結晶の保存方法
(51)【国際特許分類】
C07K 5/037 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
C07K5/037
(21)【出願番号】P 2021021715
(22)【出願日】2021-02-15
(62)【分割の表示】P 2017522276の分割
【原出願日】2016-06-03
【審査請求日】2021-02-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2015114855
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308032666
【氏名又は名称】協和発酵バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【氏名又は名称】田村 明照
(72)【発明者】
【氏名】井口 茉耶
(72)【発明者】
【氏名】福本 一成
(72)【発明者】
【氏名】長野 宏
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】中村 浩
【審判官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-282397(JP,A)
【文献】特開平5-339286(JP,A)
【文献】特開2010-059125(JP,A)
【文献】特開2011-223896(JP,A)
【文献】社団法人日本化学会,標準化学用語辞典,1998年10月10日,p.476,p.17,p.558,p.440,p.175-176
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
JST7580/JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
BIOSIS/CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-アラニン、D-プロリン
、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、酸化型グルタチオン及びL-アラニル-L-システインからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含む、還元型グルタチオンのβ型結晶の発生及び/又は還元型グルタチオンのα型結晶からβ型結晶への転移抑制用媒晶剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元型グルタチオンのα型結晶の製造方法及び当該結晶の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
還元型グルタチオンは、3種類のアミノ酸(グルタミン酸、システイン及びグリシン)から構成されるトリペプチドであり、抗酸化機能、解毒作用を有する素材として医薬品或いは健康食品の原料として利用されてきた。近年では他にも、飲料、化粧品など多岐にわたる市場への展開が期待されている。
【0003】
還元型グルタチオンの結晶には、α型結晶とβ型結晶という2種類の結晶多形が存在する(非特許文献1)。不安定晶であるα型結晶と安定晶であるβ型結晶は、溶解度が大きく異なっており、10℃における飽和溶解度は、α型結晶が89g/L、β型結晶が30g/Lである(
図1)。そのため、溶解度の低いβ型結晶は、原料として加工しにくく、取り扱いにくいという問題があった。更に、柱状晶で大型化しやすいα型結晶に対して、針状で小型のβ型結晶は、母液との分離性が悪いため、品質及び生産性の両面でα型結晶に劣っている。
【0004】
また、還元型グルタチオンのα型結晶の飽和溶液にα型結晶を添加して調製した結晶スラリー及び還元型グルタチオンの過飽和溶液中では、安定晶であるβ型結晶が容易に発生するため、望ましい結晶形であるα型結晶の効率的な製造を大きく妨げていた。このような状況においては、還元型グルタチオンの過飽和溶液において、β型結晶の発生を抑制し、α型結晶を選択的に結晶化させる方法の開発が強く望まれていた。
【0005】
一方、アミノ酸をはじめとする有機化合物の結晶多形の発生を制御する方法として、媒晶剤の添加が有効な場合がある(特許文献1、非特許文献2)。しかし、媒晶剤が有効に機能するためには、媒晶剤として添加する化合物の化学構造が、目的とする化合物の化学構造と極めて高い類似性を有すること(非特許文献2)、更には、媒晶剤の分子量は目的とする化合物の分子量と同じかやや小さい必要があること(非特許文献3)など、厳しい制約を受ける。これらの制約があることから、構造類似性の低い化合物や、分子量が目的化合物からかけ離れた化合物については、媒晶剤探索の対象から除外されるのが一般的である。
【0006】
還元型グルタチオンのような2個以上のアミノ酸からなるペプチドについて、媒晶剤を添加することにより結晶多形の発生を制御した例は、これまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Yamasaki, K. et al., 分析化学, 18(7), p874-878 (1969)
【文献】Kuroda, K. et al., Yakugaku Zasshi, 99, p745-751 (1979)
【文献】Momonaga,M. et al., 化学工学論文集, 18(5)p553-561 (1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、品質及び生産性の両面において優れた還元型グルタチオンのα型結晶を効率的かつ安定的に製造する方法及び保存方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を行い、還元型グルタチオンの水溶液及びα型結晶に媒晶剤を共存させることにより、β型結晶の発生及びβ型結晶への転移が顕著に阻害されること、また、還元型グルタチオンのα型結晶の晶析を媒晶剤共存下で行うことにより、媒晶剤を添加していない場合と比較して、β型結晶の発生及びβ型結晶への転移が顕著に抑制され、α型結晶を効率良く、かつ安定的に製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]脂肪族アミノ酸、含硫アミノ酸、芳香族アミノ酸、類縁化合物及びジペプチドからなる群より選択される少なくとも1つの化合物からなる、還元型グルタチオンのβ型結晶の発生及び/又は還元型グルタチオンのα型結晶からβ型結晶への転移を抑制するための媒晶剤。
[2]上記[1]記載の媒晶剤を含有する、還元型グルタチオンのα型結晶。
[3]媒晶剤の含有量が、還元型グルタチオンのα型結晶に対して0.01~10重量%である、上記[2]記載の結晶。
[4]還元型グルタチオンを含有する水溶液に、上記[1]記載の媒晶剤を添加する工程、及び還元型グルタチオンのα型結晶を晶析させる工程を含む、還元型グルタチオンのα型結晶の製造方法。
[5]媒晶剤の添加量が、還元型グルタチオンに対して0.01~10重量%である、上記[4]記載の方法。
[6]還元型グルタチオンの水溶液に、上記[1]記載の媒晶剤を添加する工程を含む、還元型グルタチオンの水溶液の保存方法。
[7]媒晶剤の添加量が、還元型グルタチオンに対して0.01~10重量%である、上記[6]記載の方法。
[8]還元型グルタチオンのα型結晶に、上記[1]記載の媒晶剤を添加する工程を含む、還元型グルタチオンのα型結晶の保存方法。
[9]媒晶剤の添加量が、還元型グルタチオンに対して0.01~10重量%である、上記[8]記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、還元型グルタチオンのα型結晶の製造(晶析)や保存の際に、特定の媒晶剤を共存させておくことにより、β型結晶の発生及びα型結晶からβ型結晶への転移が顕著に抑えられ、還元型グルタチオンのα型結晶を効率良く、安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、還元型グルタチオンのα型結晶とβ型結晶の溶解度曲線を示す図であり、縦軸は各温度における各結晶の水への溶解度(g/L)、横軸は温度(℃)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
(定義)
【0015】
本明細書中、「還元型グルタチオン」とは、前記した通り、グルタミン酸、システイン及びグリシンから構成されるトリペプチドを意味する。本発明に用いる還元型グルタチオンとしては、どのような製造法によって得られたものであってもよいが、例えば、特公昭57-016196号公報等に記載の方法により得られたものを挙げることができる。
【0016】
「媒晶剤」とは、一般に、母化合物の晶癖を変化させたり、多形の転移を阻止するために添加される添加剤を意味するが、本発明においては、特に、還元型グルタチオンのα型結晶の製造及び保存の際に、還元型グルタチオンのβ型結晶の発生を抑制したり、還元型グルタチオンのα型結晶からβ型結晶への転移を阻害する添加剤を意味する。本発明に用いる媒晶剤としては、アラニン、プロリン等の脂肪族アミノ酸、システイン等の含硫アミノ酸、フェニルアラニン、トリプトファン等の芳香族アミノ酸、酸化型グルタチオン等の類縁化合物、アラニルシステイン等のジペプチド等が挙げられる。中でも、L-システイン、L-アラニン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン及びD-プロリン、酸化型グルタチオン及びL-アラニル-L-システインからなる群より選択される少なくとも1つの媒晶剤が特に好ましい。媒晶剤は、どのような製造方法によって得られたものであってもよいが、例えば、化学合成法、抽出法及び発酵法により得られたものを挙げることができる。
【0017】
本明細書中、「脂肪族アミノ酸」とは、疎水性アミノ酸のうち、芳香族アミノ酸を含まないものを意味する。脂肪族アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン等が挙げられるが、中でも、L-アラニン及びD-プロリンが好ましい。
【0018】
本明細書中、「含硫アミノ酸」とは、その構造中に硫黄原子を有するアミノ酸を意味する。含硫アミノ酸としては、システイン、ホモシステイン、メチオニン等が挙げられるが、中でも、L-システインが好ましい。
【0019】
本明細書中、「芳香族アミノ酸」とは、芳香環及び芳香族複素環を有する疎水性アミノ酸を意味する。芳香族アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン等が挙げられるが、中でも、L-フェニルアラニン及びL-トリプトファンが好ましい。
【0020】
本明細書中、「類縁化合物」とは、還元型グルタチオンと受容体結合特性などの分子生物学的な性質や構造が類似しているが、還元型グルタチオンを構成する原子又は原子団が別の原子又は原子団と置換された組成を持つ別の化合物を意味する。類縁化合物としては、酸化型グルタチオン、N-L-システイニルグリシン、γグルタミルシステイン等が挙げられるが、中でも、酸化型グルタチオンが好ましい。
【0021】
本明細書中、「酸化型グルタチオン」とは、2分子の還元型グルタチオンがジスルフィド結合によって連結した分子を意味する。以下、酸化型グルタチオンを「GSSG」と略記することもある。
【0022】
本明細書中、「ジペプチド」とは、2分子のアミノ酸がペプチド結合によって連結した分子を意味する。ジペプチドとしては、L-アラニン-L-グルタミン、L-アラニル-L-システイン等が挙げられるが、中でも、L-アラニル-L-システインが好ましい。
【0023】
本明細書中、「水溶液」とは、水のみを溶媒とする溶液、又は水を主溶媒とする溶液を意味する。水溶液は、本発明の効果を害さない限り、水以外に、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン等の水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
【0024】
本明細書中、「還元型グルタチオン水溶液」又は「還元型グルタチオンを含有する水溶液」とは、少なくとも溶解した還元型グルタチオンを含む水溶液であり、還元型グルタチオンが完全に溶解した溶液であってもよく、溶解した還元型グルタチオンに加え、還元型グルタチオンのα型結晶を含んでいてもよい。
(本発明の還元型グルタチオン水溶液の保存方法)
【0025】
本発明は、還元型グルタチオン水溶液において、溶解度が低く水溶液中で結晶が容易に析出する安定晶であるβ型結晶の発生を抑制するために、脂肪族アミノ酸、含硫アミノ酸、芳香族アミノ酸、類縁化合物及びジペプチドのいずれか1種、又は複数種の化合物を媒晶剤として共存させることを特徴とする、還元型グルタチオン水溶液の保存方法(以下、「本発明の水溶液の保存方法」という。)である。媒晶剤としては、前記したものを好適に用いることができる。
【0026】
還元型グルタチオン(を含有する)水溶液は、本発明の効果を害さない限り、脂肪族アミノ酸、含硫アミノ酸、芳香族アミノ酸、類縁化合物及びジペプチドからなる群より選択される少なくともの1つの媒晶剤以外の溶質を含んでいてもよい。そのような溶質としては、例えば、塩及び緩衝剤を挙げることができる。更に、還元型グルタチオン(を含有する)水溶液は、還元型グルタチオンを含む発酵液の上清、還元型グルタチオンを生成する反応液等であってもよい。前記塩としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられ、前記緩衝剤としては、例えば、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。媒晶剤を共存させる方法に特に制限はなく、還元型グルタチオン水溶液に媒晶剤を添加してもよく、又は媒晶剤に還元型グルタチオン水溶液を添加してもよい。固体の媒晶剤を添加する場合は、還元型グルタチオン水溶液に添加後に溶解させることが好ましい。また、発酵法、抽出法又は化学合成法によって還元型グルタチオンを生成させる過程において、還元型グルタチオンの生成を妨げない限りは、いずれの工程においても本発明の媒晶剤を共存させることができる。更に、本発明の媒晶剤を含む原材料を用いることにより、当該原材料から製造された還元型グルタチオンに本発明の媒晶剤を共存させることもできる。
【0027】
本発明の水溶液の保存方法において、媒晶剤共存下では、非共存下に比べて、より長時間にわたってβ型結晶の発生、及び/又はα型結晶からβ型結晶への転移を抑制することができる。
【0028】
本発明の水溶液の保存方法において、還元型グルタチオン水溶液の温度は、β型結晶の発生及び/又はα型結晶からβ型結晶への転移が起らない限り、特に制限されないが、より低温の方が転移の抑制の点で好ましい。β型結晶の発生及び/又はβ型結晶への転移が起らない還元型グルタチオン水溶液の温度は、媒晶剤の種類又は濃度によっても異なるが、通常60℃以下であり、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは25℃以下、特に好ましくは10℃以下である。
【0029】
還元型グルタチオン水溶液に共存させる媒晶剤の添加量は、還元型グルタチオンに対して、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上であり、特に好ましくは1重量%以上である。また、10重量%以下であることが望ましい。
【0030】
媒晶剤を添加することにより、還元型グルタチオン水溶液中の還元型グルタチオン濃度がβ型結晶の10℃における飽和溶解度である30g/L以上であってもβ型結晶の発生が抑制され、澄明な水溶液の状態を維持することができる。また、還元型グルタチオン水溶液がα型結晶を含む場合は、系中の還元型グルタチオン濃度が30g/L以上であっても、β型結晶の発生及びβ型結晶への転移を防止することができる。
【0031】
好適な媒晶剤の添加量は、例えば、以下のようにして決定することができる。還元型グルタチオン水溶液に対し、媒晶剤を5重量%以下程度になるように添加し、一定時間攪拌する。攪拌中に析出した結晶を顕微鏡で観察して、結晶がすべてα型結晶か、或いはβ型結晶の発生又はβ型結晶への転移が起きているかを判断する。大型柱状晶であるα型結晶と、小型針状晶のβ型結晶では形状が大きく異なっていることから、両者は顕微鏡観察によって容易に区別することができる。β型結晶の混入状況を定量的に把握するためには、一部を分離して得られた結晶を25℃の水で100g/Lになるように溶解させる。十分な時間、攪拌保持した後、溶解液を層長1cmのセルを用いて、水を対照として可視吸光度測定法により試験を行い、430nmにおける透過率を測定し濁りを確認する。透過率は、透過率(T%)430nm=100×10-A(A=Abs:430nm、1cm)で表すことができる。溶解度の低いβ型結晶が存在すると、溶け残った結晶が濁りとして検出されるため、該溶解液の透過率が低下する。また、β型結晶が発生することにより晶析やスラリー中の溶液の還元型グルタチオン濃度が、α型結晶のみを含む溶液のそれよりも低下するため、共存する結晶を除去した母液中の還元型グルタチオン濃度を測定することによっても、共存する結晶の種類を判別することができる。母液中の還元型グルタチオン濃度は、共存する結晶を濾過などで除去したのち、一定の濃度に移動相で希釈し、十分な時間、攪拌保持した後、以下のHPLC条件を用いて測定する。
【0032】
HPLC条件
カラム:Inertsil ODS-3 内径3.0mm、長さ150mm
カラム温度:35℃
検出器:UV検出器 波長210nm
移動相組成:1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム/リン酸二水素カリウム/リン酸/メタノール
【0033】
還元型グルタチオン水溶液に含まれる各媒晶剤成分の種類と含有量は、例えば、試料を約0.25g精秤し、純水に溶解後、25mLに定容し1mLを採取する。希釈緩衝液を加え、10mLに定容した後、定容液を10000rpm、5分間遠心分離し、上澄み液をアミノ酸アナライザー JLC-500V(日本電子社製)に導入し、説明書の記載に従い、測定することもできる。
(本発明の還元型グルタチオンのα型結晶)
【0034】
本発明は、前記した媒晶剤を含有する、還元型グルタチオンのα型結晶(以下、「本発明のα型結晶」ともいう。)である。
【0035】
還元型グルタチオンのα型結晶とは、粉末X線回折において、回折角2θが、6.3°、12.6°、13.8°、16.2°、22.3°、25.7°、30.1°、31.9°、32.0°及び33.5°にピークを有する結晶である。
【0036】
還元型グルタチオンのα型結晶に含まれる媒晶剤の含有量は、還元型グルタチオンのα型結晶に対して、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上であり、特に好ましくは1.0重量%以上である。また、10重量%以下であることが望ましい。
【0037】
本発明のα型結晶は、前記した媒晶剤を含有することにより、溶解度が低く原料として加工しにくいβ型結晶への転移が抑制される。
【0038】
本発明のα型結晶に含有される媒晶剤の量は、本発明のα型結晶を一定の濃度に移動相で希釈し、十分な時間、攪拌保持した後、以下のHPLC条件を用いて濃度を測定することにより決定することができる。
【0039】
HPLC条件
カラム:YMC Triart C18 内径3.0mm、長さ150mm
カラム温度:40℃
検出器:蛍光検出器 励起波長360nm/蛍光波長440nm
移動相組成:クエン酸三ナトリウム二水和物/無水硫酸ナトリウム/n-プロパノール/ラウリル硫酸ナトリウム
【0040】
本発明のα型結晶に含まれる各媒晶剤成分の種類と含有量は、例えば、試料を約0.25g精秤し、純水に溶解後、25mLに定容し1mLを採取する。希釈緩衝液を加え、10mLに定容した後、定容液を10000rpm、5分間遠心分離し、上澄み液をアミノ酸アナライザー JLC-500V(日本電子社製)に導入し、説明書の記載に従い、測定することもできる。
(本発明の還元型グルタチオンのα型結晶の保存方法)
【0041】
本発明は、還元型グルタチオンのα型結晶において、溶解度が低く原料として加工しにくいβ型結晶への転移を抑制するために、脂肪族アミノ酸、含硫アミノ酸、芳香族アミノ酸、類縁化合物及びジペプチドからなる群より選択される1種又は複数種を媒晶剤として共存させることを特徴とする、還元型グルタチオンのα型結晶の保存方法(以下、「本発明のα型結晶の保存方法」という。)である。媒晶剤としては、前記したものを好適に用いることができる。
【0042】
また、還元型グルタチオンのα型結晶は、本発明の効果を害さない限り、還元型グルタチオン、並びに脂肪族アミノ酸、含硫アミノ酸、芳香族アミノ酸、類縁化合物及びジペプチドからなる群より選択される1種又は複数種の媒晶剤以外の物質を含んでいてもよい。
そのような物質としては、例えば、塩、有機溶媒及び類縁化合物を挙げることができる。
【0043】
本発明のα型結晶の保存方法において、還元型グルタチオンのα型結晶からβ型結晶への転移を抑制するために、還元型グルタチオンのα型結晶に媒晶剤を共存させる。還元型グルタチオンのα型結晶に媒晶剤を共存させる方法に制限はないが、還元型グルタチオンのα型結晶を、媒晶剤の溶解液に懸濁した後に該結晶を分離して、媒晶剤を共存させた結晶を得てもよく、還元型グルタチオンのα型結晶に媒晶剤を含む溶液を噴霧することにより、媒晶剤を共存させた結晶を得てもよい。
【0044】
本発明のα型結晶の保存方法において、媒晶剤共存下では、非共存下に比べて、より長時間にわたってβ型結晶の発生、及び/又はα型結晶からβ型結晶への転移を抑制することができる。
【0045】
本発明のα型結晶の保存方法において、還元型グルタチオンのα型結晶の保存温度は、β型結晶の発生及び/又はα型結晶からβ型結晶への転移が起らない限り特に制限されないが、より低温の方が転移の抑制の点で好ましい。β型結晶の発生及び/又はβ型結晶への転移が起らない還元型グルタチオンのα型結晶の保存温度は、媒晶剤の種類又は濃度によっても異なるが、具体的には、通常60℃以下であり、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは25℃以下、特に好ましくは10℃以下である。
【0046】
還元型グルタチオンのα型結晶に共存させる媒晶剤の添加量は、還元型グルタチオンのα型結晶に対して、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上であり、特に好ましくは1.0重量%以上である。また、10重量%以下であることが望ましい。
【0047】
還元型グルタチオンのα型結晶に共存する媒晶剤の量は、媒晶剤を共存させた還元型グルタチオンのα型結晶を一定の濃度に移動相で希釈し、十分な時間、攪拌保持した後、以下のHPLC条件を用いて濃度を測定することにより決定することができる。
【0048】
HPLC条件
カラム:YMC Triart C18 内径3.0mm、長さ150mm
カラム温度:40℃
検出器:蛍光検出器 励起波長360nm/蛍光波長440nm
移動相組成:クエン酸三ナトリウム二水和物/無水硫酸ナトリウム/n-プロパノール/ラウリル硫酸ナトリウム
【0049】
還元型グルタチオンのα型結晶に含まれる各媒晶剤成分の種類と含有量は、例えば、試料を約0.25g精秤し、純水に溶解後、25mLに定容し1mLを採取する。希釈緩衝液を加え、10mLに定容した後、定容液を10000rpm、5分間遠心分離し、上澄み液をアミノ酸アナライザー JLC-500V(日本電子社製)に導入し、説明書の記載に従い、測定することもできる。
(本発明の還元型グルタチオンのα型結晶の製造方法)
【0050】
本発明は、脂肪族アミノ酸、含硫アミノ酸、芳香族アミノ酸、類縁化合物及びジペプチドからなる群より選択される少なくともの1つの媒晶剤共存下で、還元型グルタチオン水溶液から還元型グルタチオンのα型結晶を晶析させ、還元型グルタチオンのα型結晶を取得することを特徴とする、還元型グルタチオンのα型結晶の製造方法(以下、「本発明の製造方法」という。)である。媒晶剤としては、前記したものを好適に用いることができる。
【0051】
還元型グルタチオンに媒晶剤を共存させるには、還元型グルタチオン水溶液に媒晶剤を添加してもよく、媒晶剤溶液に還元型グルタチオンを添加してもよい。添加する媒晶剤は、固体であってもよく、溶液であってもよい。固体の媒晶剤を添加する場合は、還元型グルタチオン水溶液に添加後に溶解させることが好ましい。更に、発酵法、抽出法又は化学合成法によって還元型グルタチオンを生成させる過程において、還元型グルタチオンの生成を妨げない限りは、いずれの工程でも本発明の媒晶剤を共存させることができる。また、本発明の媒晶剤を含む原材料を用いることにより、当該原材料から製造された還元型グルタチオンに本発明の媒晶剤を共存させることもできる。
【0052】
本発明の製造方法において、媒晶剤は、晶析を行う前に還元型グルタチオン水溶液に含有させてもよく、又は還元型グルタチオンのα型結晶が析出した後、β型結晶への転移が始まる前に添加してもよい。
【0053】
晶析の方法については、特に制限はないが、還元型グルタチオン水溶液を濃縮することにより晶析を行う濃縮晶析、還元型グルタチオン水溶液を冷却することにより晶析を行う冷却晶析、又は還元型グルタチオン水溶液に貧溶媒を添加することにより晶析を行う貧溶媒晶析、或いはこれらを組み合わせる方法によって行うことができる。貧溶媒としては、炭素数1~6のアルコール、並びにアセトン、メチルエチルケトン及びジエチルケトンを挙げることができる。
【0054】
還元型グルタチオン水溶液を濃縮又は冷却し、還元型グルタチオン濃度を飽和溶解度以上に高めることによって、或いは、還元型グルタチオン水溶液に貧溶媒を添加して飽和溶解度を低下させることによって、還元型グルタチオンの結晶が起晶する。その際に、脂肪族アミノ酸、含硫アミノ酸、芳香族アミノ酸、類縁化合物及びジペプチドからなる群より選択される少なくともの1つの媒晶剤を共存させることによって、非共存下の場合と比較して、より長い時間にわたってβ型結晶の発生、及びα型結晶が析出した後のβ型結晶への転移を抑制することができるため、効率的かつ安定的にα型結晶の結晶を得ることができる。
【0055】
また、別の態様として、還元型グルタチオン水溶液の濃縮、冷却操作又は貧溶媒添加に先立って、又はこれらの操作中に、還元型グルタチオンのα型結晶を種晶として添加してもよい。還元型グルタチオンのα型結晶は、例えば、還元型グルタチオン水溶液から25℃以下で晶析を行うことによって、取得することができる。
【0056】
還元型グルタチオン水溶液から還元型グルタチオンの結晶を晶析させる際、媒晶剤非共存下では、還元型グルタチオンのβ型結晶の発生、又はα型結晶からβ型結晶への転移が容易に起こる。この現象は、温度が高くなるとより顕著である。それに対し、媒晶剤共存下では非共存下に比べて、還元型グルタチオンのβ型結晶への転移が起こる温度をより高くすることができる。また、同じ温度であっても、還元型グルタチオンのα型結晶からβ型結晶への転移が起こるまでの時間を延長することができる。
【0057】
本発明の製造方法の一形態においては、還元型グルタチオン水溶液を濃縮して還元型グルタチオンの一部をα型結晶として析出させ、得られたスラリーを冷却することにより、溶存している還元型グルタチオンをα型結晶として更に析出させる。その際、還元型グルタチオン水溶液の濃縮の前又は後、或いは少なくとも還元型グルタチオンの結晶が起晶する前に媒晶剤を添加するのが望ましい。
【0058】
本発明の製造方法において、還元型グルタチオンのα型結晶の晶析を行う温度は、β型結晶の発生及び/又はα型結晶からβ型結晶への転移が起こらない限り特に制限されないが、より低温で行う方が収率の点で好ましい。β型結晶の発生及び/又はα型結晶からβ型結晶への転移が起こらない還元型グルタチオンのα型結晶の晶析を行う温度は、媒晶剤の種類又は濃度によっても異なるため適宜設定することが望ましいが、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは25℃以下であり、特に好ましくは10℃以下である。
【0059】
還元型グルタチオン水溶液に共存させる媒晶剤の濃度としては、例えば、晶析温度が25℃であり、かつ晶析時間が24時間以上の場合は、還元型グルタチオンに対して好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上であり、特に好ましくは1.0重量%以上である。また、10重量%以下であることが望ましい。しかし、媒晶剤の種類、晶析を行う温度、還元型グルタチオン水溶液に含まれる還元型グルタチオン及び媒晶剤以外の成分の種類や濃度等によって、媒晶剤によるβ型結晶の発生及びβ型結晶への転移の阻害効果は変化し得る。従って、好適な媒晶剤の添加量は、本発明が適用される還元型グルタチオン水溶液、使用する媒晶剤の種類及びその濃度、並びに晶析温度に応じて、適宜設定することが望ましい。β型結晶の発生、又はα型結晶からβ型結晶への転移が起きる時間を延長するためには、媒晶剤の濃度を上げることが好ましい。
【0060】
上記のようにして還元型グルタチオンのα型結晶を析出させた後、結晶を母液から分離することにより、還元型グルタチオンのα型結晶が得られる。α型結晶は、再結晶又は結晶洗浄等により、過剰な媒晶剤や不純物を除去することができる。得られたα型結晶は、β型結晶へのさらなる転移を防ぐために乾燥させることが望ましい。
【0061】
乾燥の方法に制限はないが、例えば、減圧乾燥や通風乾燥を用いることができる。乾燥温度は、還元型グルタチオンが分解しない温度であればよく、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは60℃以下であり、特に好ましくは25℃以下である。乾燥させた還元型グルタチオンのα型結晶は、適宜包装して最終製品とすることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの記載に限定されるものではない。
【0063】
〔実施例1〕
還元型グルタチオンのα型結晶の保存時における媒晶剤の添加によるβ型結晶への転移抑制効果の確認試験
【0064】
還元型グルタチオンのα型結晶(9g)と水(30mL)をガラス瓶中で混合した。その調製液にL-アラニン(以下、L-Alaと略記することもある)、L-システイン(以下、L-Cysと略記することもある)、L-フェニルアラニン(以下、L-Pheと略記することもある)、L-トリプトファン(以下、L-Trpと略記することもある)、D-プロリン(以下、D-Proと略記することもある)、L-アラニル-L-システイン(以下、AlaCysと略記することもある)又は酸化型グルタチオン(GSSG)を各0.45gずつ添加して溶解させた。ガラス瓶を25℃に設定した箱型乾燥機内で24時間振盪させた。24時間後、スラリー中の結晶を顕微鏡観察して、β型結晶への転移の有無を判断した。
【0065】
その結果、L-アラニン、L-システイン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、D-プロリン、L-アラニル-L-システイン及び酸化型グルタチオンのいずれの化合物の共存下においても、α型結晶からβ型結晶への転移の抑制が認められた。
【0066】
〔実施例2〕
還元型グルタチオンのα型結晶の保存時における媒晶剤の添加によるβ型結晶の発生抑制効果の確認試験
【0067】
L-アラニン、L-システイン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-アラニル-L-システイン又は酸化型グルタチオン(GSSG)と、比較試験のためにL-ヒスチジン塩酸塩(以下、L-Hisと略記することもある)を各5重量%(対還元型グルタチオン)含有する水溶液(10mL)に還元型グルタチオンのα型結晶5gを浸漬させた後、メンブレンフィルターにて分離した時に得られた結晶全量を瓶に詰め、結晶部分が40℃となるように恒温槽にて静置保存した。3時間後の結晶各1gを25℃の水10mLで溶解し、430nmにおける透過率を測定し、濁りを確認して、β型結晶への転移の有無を判断した。結果を表1に示した。表1中の媒晶効果において、○はβ型結晶の発生が抑制されたことを示し、×はβ型結晶が発生したことを示す。
【0068】
【0069】
表1に示されるように、還元型グルタチオンのα型結晶をL-アラニン、L-システイン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-アラニル-L-システイン又は酸化型グルタチオン(GSSG)と共存させることにより、β型結晶発生の抑制が認められた。
【0070】
〔実施例3〕
還元型グルタチオン水溶液の保存時における媒晶剤の添加効果の確認試験
【0071】
還元型グルタチオン(100g)を1Lビーカーに計りとり、水を加え、1Lになるまでメスアップした。40℃で加温して結晶を完全に溶解し、メンブレンフィルターを用いてろ過をした。調製した還元型グルタチオン水溶液(100g/L)に〔実施例1〕で媒晶効果が確認された化合物と、比較試験のためL-ヒスチジン塩酸塩を各5重量%(対還元型グルタチオン)ずつ添加し、10℃に冷却後、24時間攪拌した。24時間後に上清をポアサイズ0.45μmのフィルターにてろ過し、上清中の還元型グルタチオンの濃度をHPLCにて測定し、当該濃度の変化に基づいて、β型結晶の発生の有無を判断した。結果を表2に示した。表2中の媒晶効果において、○はβ型結晶の発生が抑制されたことを示し、×はβ型結晶が発生したことを示す。
【0072】
【0073】
L-アラニン、L-システイン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、D-プロリン、L-アラニル-L-システイン又は酸化型グルタチオン(GSSG)を含む還元型グルタチオンの各水溶液では、β型結晶発生の抑制が認められた。
【0074】
〔実施例4〕
還元型グルタチオン水溶液の保存時のβ型結晶の発生の抑制に必要な媒晶剤の添加量の検討
【0075】
還元型グルタチオン(100g)を1Lビーカーに計りとり、水を加え、1Lになるまでメスアップした。40℃で加温して結晶を完全に溶解し、メンブレンフィルターを用いてろ過をした。調製した還元型グルタチオン水溶液(100g/L)に媒晶効果が確認されたL-アラニンを0.01重量%~1重量%(対還元型グルタチオン)ずつ添加し、10℃に冷却後、15時間攪拌した。15時間後に上清をポアサイズ0.45μmのフィルターにてろ過し、上清の還元型グルタチオンの濃度をHPLCにて測定し、還元型グルタチオンの濃度の変化を観測することによるβ型結晶の発生の有無又は程度を判断した。時間経過及び媒晶剤の有無による還元型グルタチオンの濃度変化の結果を表3に示す。
【0076】
【0077】
L-アラニンを添加していない還元型グルタチオンの水溶液は15時間後には還元型グルタチオンの約20%がβ型結晶として発生していることが認められた。一方、媒晶剤としてL-アラニンを添加した水溶液では、β型結晶の発生が抑制されることが分かった。また、L-アラニンの添加量が多いほど、β型結晶の発生が起こりにくいことが分かった。
【0078】
還元型グルタチオンの水溶液に共存させる媒晶剤の添加量としては、L-アラニンの場合、還元型グルタチオンに対して、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは1重量%以上であることが分かった。
【0079】
〔実施例5〕
還元型グルタチオンのα型結晶の製造方法(1)
【0080】
還元型グルタチオン(50g)と水(500mL)を1Lビーカーに添加した。その調製液にL-アラニン、L-システイン又は酸化型グルタチオンを、各2.5g添加し、40℃で加温して結晶を完全に溶解し、メンブレンフィルターを用いてろ過をした。調製液(ろ液)の還元型グルタチオン濃度がα型結晶の飽和溶解度以上となるようにエバポレーターにて濃縮し、還元型グルタチオンの濃縮晶析を行った。濃縮液を25℃まで冷却し、24時間攪拌した後、スラリー中の結晶を顕微鏡観察して、β型結晶への転移の有無を判断した。
【0081】
その結果、L-アラニン、L-システイン又は酸化型グルタチオンを添加した晶析では、β型結晶が発生することなくα型結晶のみが起晶した。
【0082】
〔実施例6〕
還元型グルタチオンのα型結晶の製造方法(2)
【0083】
還元型グルタチオン(50g)と水(500mL)を1Lビーカーに添加した。その調製液にL-アラニン又はL-システインを還元型グルタチオンに対して、それぞれ10重量%添加し、40℃で加温して結晶を完全に溶解し、メンブレンフィルターを用いてろ過した。調製液(ろ液)の還元型グルタチオン濃度がα型結晶の飽和溶解度以上となるようにエバポレーターにて濃縮し、還元型グルタチオンの濃縮晶析を行った。濃縮液を25℃まで冷却し、24時間攪拌した後、スラリー中の結晶を顕微鏡観察することにより、β型結晶への転移の有無を判断した。
【0084】
その結果、L-アラニン又はL-システインを添加した晶析では、β型結晶が発生することなくα型結晶のみが起晶した。
L-アラニン又はL-システインをそれぞれ10重量%添加して晶析させることにより取得した結晶は、共に粉末X線回折において、回折角2θが、6.3°、12.6°、13.8°、16.2°、22.3°、25.7°、30.1°、31.9°、32.0°及び33.5°にピークを有する還元型グルタチオンのα型結晶であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、還元型グルタチオンのα型結晶の製造(晶析)や保存の際に、特定の媒晶剤又は保存剤を共存させておくことにより、β型結晶の発生及びβ型結晶への転移が顕著に抑えられ、還元型グルタチオンのα型結晶を効率良く、かつ安定的に製造することができる。また、本発明によれば、品質及び生産性の両面において優れた還元型グルタチオンのα型結晶を安定的に供給することができるので、医薬品、食品、化粧品等の多岐にわたる分野において有用である。
【0086】
本願は、日本に出願された特願2015-114855を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含される。