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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】給糸パッケージ取付システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 49/16 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
B65H49/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021037453
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137785
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】利山 裕介
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-024737(JP,A)
【文献】米国特許第07971822(US,B1)
【文献】実開昭50-024835(JP,U)
【文献】特開昭49-134956(JP,A)
【文献】米国特許第03915406(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 49/00-49/38
B65H 67/00-67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸加工装置に供給する合繊糸が巻回された給糸パッケージを回転可能に支持する一対のペッグを有し、一方の前記ペッグに支持された前記給糸パッケージを形成する合繊糸の糸端と他方の前記ペッグに支持された前記給糸パッケージを形成する合繊糸の糸端とを繋げることによって、一方の前記給糸パッケージを形成する前記合繊糸が無くなると、他方の前記給糸パッケージを形成する前記合繊糸を前記糸加工装置に供給することができるクリールスタンドと、
前記ペッグに前記給糸パッケージを取り付ける取付機構と、を備え、
一対の前記ペッグのそれぞれは、前記糸加工装置に前記合繊糸を供給する方向に前記給糸パッケージを向ける状態である第一回動状態と前記取付機構による前記給糸パッケージの取り付けが可能な方向に向ける状態である第二回動状態との間を回動可能に設けられており、
前記取付機構は、前記第二回動状態の前記ペッグに対して前記給糸パッケージを取り付けた後、前記第一回動状態と前記第二回動状態との間の一つの方向に向ける状態である第三回動状態に前記ペッグを回動させ、
前記クリールスタンドは、一対の前記ペッグを一セットとする複数の給糸パッケージ支持部が形成されると共に、複数の前記給糸パッケージ支持部を構成する複数の前記ペッグは一方向に配列されており、
互いに隣り合う前記給糸パッケージ支持部において、一方の前記給糸パッケージ支持部に含まれると共に他方の前記給糸パッケージ支持部側に配置される前記ペッグを第一ペッグとし、他方の前記給糸パッケージ支持部に含まれると共に一方の前記給糸パッケージ支持部側に配置される前記ペッグを第二ペッグとしたとき、
前記第一ペッグ及び前記第二ペッグは、前記第一ペッグ及び前記第二ペッグのそれぞれが所定径以上の前記給糸パッケージを支持したときに、前記第一ペッグ及び前記第二ペッグのそれぞれが前記第二回動状態のときには前記給糸パッケージ同士が互いに接触するように設けられると共に、前記第一ペッグ及び前記第二ペッグの一方が前記第二回動状態であって、前記第一ペッグ及び前記第二ペッグの他方が前記第三回動状態であるときには所定径以上の前記給糸パッケージ同士が互いに接触しないように設けられる、給糸パッケージ取付システム。
【請求項2】
前記取付機構は、前記ペッグから使用済みの前記給糸パッケージを回収した後に前記ペッグに新たな前記給糸パッケージを取り付ける、請求項1記載の給糸パッケージ取付システム。
【請求項3】
前記クリールスタンドは、
鉛直方向に延在する軸部と、
前記軸部に対して前記ペッグを回動可能に支持する回動部と、
前記第一回動状態と前記第二回動状態と前記第三回動状態とにおいて、前記回動部の回動を規制する回動規制部と、
を更に有している、請求項1又は2記載の給糸パッケージ取付システム。
【請求項4】
前記回動規制部は、
前記軸部に回動不能に設けられる固定部及び前記回動部の一方に設けられる係止部と、
前記固定部及び前記回動部の他方に設けられ、前記係止部を係止させる被係止部と、
を有している、請求項3記載の給糸パッケージ取付システム。
【請求項5】
前記係止部は、凸部であり、
前記被係止部は、前記凸部を係止させる溝部である、請求項4記載の給糸パッケージ取付システム。
【請求項6】
前記係止部は、凸部であり、
前記被係止部は、前記凸部を係止させる凹部である、請求項4記載の給糸パッケージ取付システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、給糸パッケージ取付システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給糸パッケージから供給された複数の合繊糸に仮撚加工を施し、加工後の合繊糸を巻取装置において巻き取って巻取パッケージを形成する仮撚加工機が知られている。例えば、特許文献1には、複数の給糸パッケージを保持するクリールスタンドと、給糸パッケージから供給された糸に仮撚加工を施す仮撚加工装置と、を有する仮撚加工機が開示されている。クリールスタンドには、給糸パッケージを支持し、鉛直方向に延在する軸を回転軸として回動させることができるペッグが設けられている。そして、ペッグは、仮撚加工機の仮撚加工装置に合繊糸を供給する方向に給糸パッケージを向ける状態である第一回動状態と、給糸パッケージを取り付け可能な方向に向ける状態である第二回動状態との二つの状態に切り替えることができる。
【0003】
クリールスタンドの中には、一対の上記ペッグからなる給糸パッケージ支持部が一方向に配列される構成のクリールスタンドがある。このようなクリールスタンドでは、一のペッグに支持される給糸パッケージの合繊糸と、他のペッグに支持される給糸パッケージの合繊糸とを繋ぐことにより、一方の給糸パッケージを形成する合繊糸が無くなっても他方の給糸パッケージを形成する合繊糸を送り出すことができるため、合繊糸を連続的に仮撚加工装置に供給することができる。
【0004】
このような構成のクリールスタンドにおいて、作業者は、ペッグに支持される給糸パッケージの取り付け作業、給糸パッケージから解舒される合繊糸を保護するキャップを新しい給糸パッケージに取り付けるキャップ付け作業、及び一方のペッグに支持される給糸パッケージの合繊糸と他方のペッグに支持される給糸パッケージの合繊糸とを繋ぐ糸継ぎ作業(テール継ぎ作業)の全てを手作業にて行っている。しかしながら、満巻の給糸パッケージが重いため、給糸パッケージの取り付け作業は、作業者にとって特に負担が大きい。そこで、ペッグに給糸パッケージを取り付けさせる取付機構を新たに設けることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平7-68010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、取付機構に給糸パッケージを取り付けさせた後、ペッグを第二回動状態のまま放置したときに問題が生じた。すなわち、クリールスタンドのコンパクト化のため、給糸パッケージ支持部は配列方向に互いに間隔を詰めた状態で配置される。ここで、互いに隣り合う給糸パッケージ支持部において、一方の給糸パッケージ支持部に含まれると共に他方の給糸パッケージ側に配置されるペッグを第一ペッグとし、他方の給糸パッケージ支持部に含まれると共に一方の給糸パッケージ側に配置されるペッグを第二ペッグとしたとき、第一ペッグ及び第二ペッグのそれぞれが第二回動状態で所定径以上の給糸パッケージを支持したときに給糸パッケージ同士が互いに接触することがある。言い換えれば、互いに隣り合う第一ペッグ及び第二ペッグの一方に給糸パッケージが支持されて、第二回動状態となっている場合、第一ペッグ及び第二ペッグの他方に給糸パッケージを取り付けることができない。
【0007】
そこで、取付機構に給糸パッケージを取り付けさせた後、ペッグを第一回動状態に回動させることが考えられる。しかしながら、ペッグを第一回動状態にすると、上記キャップ付け作業及び糸継ぎ作業が完了した後の仮撚加工装置に糸を供給している状態と同じとなり、作業者は、上記キャップ付け作業及び糸継ぎ作業が完了しているのか否か見分けがつかない。このため、作業者がキャップ付け作業又は糸継ぎ作業の実施を見落としてしまうという問題が生じた。
【0008】
そこで、本発明の一側面の目的は、クリールスタンドのコンパクト化が図れると共に、取付機構によって給糸パッケージがペッグに取り付けられた後の作業状態を作業者が認識しやすくなることから、作業者の作業の見落としを防ぐことができる、給糸パッケージ取付システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る給糸パッケージ取付システムは、糸加工装置に供給する合繊糸が巻回された給糸パッケージを回転可能に支持する一対のペッグを有し、一方のペッグに支持された給糸パッケージを形成する合繊糸の糸端と他方のペッグに支持された給糸パッケージを形成する合繊糸の糸端とを繋げることによって、一方の給糸パッケージを形成する合繊糸が無くなると、他方の給糸パッケージを形成する合繊糸を糸加工装置に供給することができるクリールスタンドと、ペッグに給糸パッケージを取り付ける取付機構と、を備え、一対のペッグのそれぞれは、糸加工装置に合繊糸を供給する方向に給糸パッケージを向ける状態である第一回動状態と取付機構による給糸パッケージの取り付けが可能な方向に向ける状態である第二回動状態との間を回動可能に設けられており、取付機構は、第二回動状態のペッグに対して給糸パッケージを取り付けた後、第一回動状態と第二回動状態との間の一つの方向に向ける状態である第三回動状態に前記ペッグを回動させ、クリールスタンドは、一対のペッグを一セットとする複数の給糸パッケージ支持部が形成されると共に、複数の給糸パッケージ支持部を構成する複数のペッグは一方向に配列されており、互いに隣り合う給糸パッケージ支持部において、一方の給糸パッケージ支持部に含まれると共に他方の給糸パッケージ支持部側に配置されるペッグを第一ペッグとし、他方の給糸パッケージ支持部に含まれると共に一方の給糸パッケージ支持部側に配置されるペッグを第二ペッグとしたとき、第一ペッグ及び第二ペッグは、第一ペッグ及び第二ペッグのそれぞれが所定径以上の給糸パッケージを支持したときに、第一ペッグ及び第二ペッグのそれぞれが第二回動状態のときには給糸パッケージ同士が互いに接触するように設けられると共に、第一ペッグ及び第二ペッグの一方が第二回動状態であって、第一ペッグ及び第二ペッグの他方が第三回動状態であるときには所定径以上の給糸パッケージ同士が互いに接触しないように設けられる。
【0010】
この構成の給糸パッケージ取付システムでは、第一ペッグ及び第二ペッグのそれぞれが第二回動状態にあり、かつ所定径以上の給糸パッケージを支持したときに、当該給糸パッケージ同士が互いに接触するように接近して設けられるので、クリールスタンドのコンパクト化が図れる。更に、この構成の給糸パッケージ取付システムでは、取付機構は、第二回動状態の第一ペッグ及び第二ペッグの一方に給糸パッケージを取り付けた後、そのペッグをそのまま放置するのではなく第三回動状態に回動させている。これにより、第一ペッグ及び第二ペッグの他方にも、給糸パッケージを取り付けることが可能となる。更に、取付機構は、第一回動状態とは異なる第三回動状態に第一ペッグ及び第二ペッグの一方を回動させているので、作業者にキャップ付け作業又は糸継ぎ作業が完了しておらず、これらの作業をすべき状態であることを容易に認識させることができる。この結果、取付機構によってペッグに給糸パッケージが取り付けられた後の作業者の作業の見落としを防ぐことができる。
【0011】
本発明の一側面に係る給糸パッケージ取付システムでは、取付機構は、ペッグから使用済みの給糸パッケージを回収した後にペッグに新たな給糸パッケージを取り付けてもよい。この構成では、ペッグに給糸パッケージを取り付けるだけでなく、使用済みの給糸パッケージを回収することができる。
【0012】
本発明の一側面に係る給糸パッケージ取付システムでは、クリールスタンドは、鉛直方向に延在する軸部と、軸部に対してペッグを回動可能に支持する回動部と、第一回動状態と第二回動状態と第三回動状態とにおいて、回動部の回動を規制する回動規制部と、を更に有していてもよい。この構成では、取付機構による第二回動状態及び第三回動状態への位置決めが容易になると共に、作業者による第一回動状態への位置決めが容易となる。
【0013】
本発明の一側面に係る給糸パッケージ取付システムでは、回動規制部は、軸部に回動不能に設けられる固定部及び回動部の一方に設けられる係止部と、固定部及び回動部の他方に設けられ、係止部を係止させる被係止部と、を有していてもよい。この構成では、簡易な構成で給糸パッケージ支持部を位置決めすることができる。
【0014】
本発明の一側面に係る給糸パッケージ取付システムでは、係止部は、凸部であり、被係止部は、凸部を係止させる溝部であってもよい。この構成では、簡易な構成で給糸パッケージ支持部を位置決めすることができる。
【0015】
本発明の一側面に係る給糸パッケージ取付システムでは、係止部は、凸部であり、被係止部は、凸部を係止させる凹部であってもよい。この構成では、簡易な構成で給糸パッケージ支持部を位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、クリールスタンドのコンパクト化が図れると共に、取付機構によって給糸パッケージがペッグに取り付けられた後の作業状態を作業者が認識しやすくなることから、作業者の作業の見落としを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態に係るクリールスタンドを備える仮撚加工機及びパッケージ交換システムの構成を示す図である。
図2図2は、クリールスタンドを示す斜視図である。
図3図3(A)及び図3(B)は、一実施形態に係るペッグを示す斜視図である。
図4図4(A)及び図4(B)は、一実施形態に係るペッグを示す斜視図である。
図5図5(A)は、溝部を示した平面図である。図5(B)は、溝部と凸部との係合状態を示した図である。図5(C)は、溝部と凸部との係合状態を示した図である。
図6図6は、パッケージ交換装置を示す斜視図である。
図7図7は、パッケージ交換装置に備わる交換ユニットを示す概要図である。
図8図8は、パッケージ交換装置の機能構成を示すブロック図である。
図9図9(A)は、第一回動状態を示す図である。図9(B)は、第二回動状態を示す図である。
図10図10(A)は、第三回動状態を示す図である。図10(B)は、所定径以上の給糸パッケージを保持した第二回動状態に位置する一対のペッグ同士が干渉することを示す図である。
図11図11(A)は、第三回動状態の一対の一方のペッグと第二回動状態の他方のペッグを示す図である。図11(B)は、第三回動状態の一対の一方のペッグと第一回動状態の他方のペッグを示す図である。
図12】作業者が作業する側から図10(A)の状態にあるペッグに支持されたパッケージを見た正面図である。
図13図13(A)は、一方のペッグが第三回動状態にして糸継処理をするときの作業状態を示す図である。図13(B)は、両方のペッグを第一回動状態にして糸継処理をするときの作業状態を示す図である。
図14図14(A)及び図14(B)は、変形例に係るペッグを示す斜視図である。
図15図15(A)は、溝部が設けられたカムの斜視図である。図15(B)は、溝部と凸部との係合状態を示した断面図である。
図16図16(A)は、変形例に係るペッグを示す斜視図である。図16(B)は、溝部と凸部との係合状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の一側面の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1に示されるように、一実施形態のクリールスタンド20は、仮撚加工機1に設けられている。また、一実施形態の給糸パッケージ交換システム(給糸パッケージ取付システム)100は、クリールスタンド20と、パッケージ交換装置(取付機構)9と、を備えている。以下の説明において、図中に示す「Z方向」は鉛直方向(上下方向)であり、「X方向」は水平方向であり、「Y方向」は「X方向」に直交する水平方向であり、X方向及びZ方向の両方に直交する方向でもある。
【0020】
仮撚加工機1は、複数の給糸パッケージP1から供給される糸(合繊糸)Yに加工を施し、巻取パッケージP2を製造する。糸Yは、例えば、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性の合成繊維からなる合繊糸である。給糸パッケージP1は、給糸ボビンB1に半延伸糸(POY:Partially Oriented Yarn)が巻き取られて形成される。巻取パッケージP2は、巻取ボビンB2に延伸加工糸(DTY:Draw Textured Yarn)が巻き取られて形成される。すなわち、仮撚加工機1は、半延伸糸である糸Yに加工を施して延伸加工糸を生成する。
【0021】
仮撚加工機1は、給糸部2と、加工部(糸加工装置)3と、巻取部4と、を備えている。後述する給糸部2、加工部3及び巻取部4が有する各構成は、給糸部2から加工部3を通って巻取部4に至る糸道が配置される糸Yの走行面(図1の紙面)と直交するY方向(機台長手方向)において、複数配列されている。
【0022】
給糸部2は、加工部3に糸Yを供給する。給糸部2は、複数の給糸パッケージP1を保持するクリールスタンド20を備えている。図1及び図2に示されるように、クリールスタンド20は、クリール基台部21と、第一支柱22と、第二支柱(軸部)23と、仕切板24と、ペッグ25と、を備えている。クリール基台部21は、床面等に設置され、第一支柱22及び第二支柱23を支持する。第一支柱22及び第二支柱23は、クリール基台部21に立設されている。
【0023】
第一支柱22は、Z方向(鉛直方向)に沿って延在している。第一支柱22は、Y方向に等間隔に配列されている。第一支柱22は、クリールスタンド20におけるX方向の一方側F1に配置されている。X方向の一方側F1は、後段にて詳述する加工部3が配置される側であり、仮撚加工を施す加工部3に糸Yを送り出す側である。
【0024】
第二支柱23は、Z方向に沿って延在している。第二支柱23は、Y方向に二本一組で配置されており、複数の組の第二支柱23,23が、Y方向に配列されている。第二支柱23は、クリールスタンド20におけるX方向の他方側F2に配置されている。X方向の他方側F2は、後段にて詳述するパッケージ交換装置9が走行する側であり、糸継ぎ作業を実施する作業者が作業する側である。複数の第一支柱22からなる第一支柱22群と複数の第二支柱23からなる第二支柱23群とは、X方向に対向して配列されている。
【0025】
仕切板24は、第一支柱22と第二支柱23とに跨がるように設けられている。仕切板24は、板状部材であり、Z方向において、所定の間隔をあけて配置されている。仕切板24は、ペッグ25からの給糸パッケージP1の落下を防止する。
【0026】
ペッグ25は、給糸パッケージP1を支持する。ペッグ25は、第二支柱23に設けられている。ペッグ25は、第二支柱23のZ方向において、所定の間隔をあけて複数(例えば、4個)配置されている。ペッグ25は、Z方向において二枚の仕切板24の間に配置されている。また、ペッグ25は、二本一組で配置される第二支柱23,23に対応して二個一組で配置されており、複数の組(一対)のペッグ25,25が、Y方向に配列されている。
【0027】
この構成のペッグ25では、一対の一方のペッグ(第一ペッグ)25に支持される給糸パッケージP1の糸Yと、一対の他方のペッグ(第二ペッグ)25に支持されている給糸パッケージP1の糸Yとを繋ぐことができる。具体的には、一対の一方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の糸Yの外層側の糸端と、一対の他方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の糸Yの内層側の糸端とを繋ぐか、又は、一対の一方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の糸Yの内層側の糸端と、一対の他方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の糸Yの外層側の糸端とを繋ぐ。これにより、一対のペッグ25,25にそれぞれ支持される二個の給糸パッケージP1,P1から一本の糸Yが供給される。すなわち、加工部3に連続的に糸Yを供給することができる。
【0028】
図3(A)、図3(B)、図4(A)及び図4(B)に示されるように、ペッグ25は、給糸パッケージ支持部251と、ペッグ本体部(回動部)252と、本体支持部(回動部)253と、回転伝達部254と、固定部255と、を備えている。給糸パッケージ支持部251は、給糸パッケージP1を回転可能に支持する。給糸パッケージ支持部251は、一方向に延在する一対の棒状部材である。一対の給糸パッケージ支持部251は、一方向に沿って延在すると共に互いに平行となるように所定の間隔をあけて配置されている。給糸パッケージ支持部251は、基端部から先端部まで延在する棒状部材を給糸パッケージP1の給糸ボビンB1に形成された孔部に挿入させることで給糸パッケージP1を支持する。ペッグ25は、二つの給糸パッケージ支持部251,251によって、給糸パッケージP1を二点で支持する。
【0029】
ペッグ本体部252は、二つの給糸パッケージ支持部251を支持する。ペッグ本体部252は、給糸パッケージ支持部251,251をZ軸方向に延在する回転軸回りに回転可能に設けられている。ペッグ本体部252には、挿通穴252Aが形成されている。挿通穴252Aには、クリールスタンド20の第二支柱23が挿通される。
【0030】
本体支持部253は、一方向に延在する筒状部材である。本体支持部253の延在方向における一端はペッグ本体部252に接続されている。本体支持部253とペッグ本体部252とは、一体的に形成されている。本体支持部253は、給糸パッケージ支持部251を第二支柱23に対して回動可能に支持する。本体支持部253の中空部は、ペッグ本体部252の挿通穴252Aと連通している。ペッグ本体部252の挿通穴252A及び本体支持部253の中空部には、クリールスタンド20の第二支柱23が内挿されている。
【0031】
本体支持部253は、糸Yに加工を施す加工部3に糸Yを供給できるように給糸パッケージP1を支持している状態である第一回動状態C1と、給糸パッケージP1を交換(給糸ボビンB1の回収及び給糸パッケージP1の取付)できるように給糸パッケージP1を支持している状態である第二回動状態C2とを回動端とする回動範囲R(図5(A)参照)において回動可能に設けられている。
【0032】
回転伝達部254は、ゼネバ機構を構成するゼネバホイールである。回転伝達部254は、本体支持部253の延在方向における他端に接続されている。回転伝達部254とペッグ本体部252とは、一体的に形成されている。回転伝達部254は、後述する回動装置932(図7参照)の回動ドライバ932A(図7参照)の駆動によって回動する。ペッグ本体部252は、回転伝達部254の回転に伴って回動する。これにより、給糸パッケージ支持部251,251が回動する。
【0033】
固定部255は、第二支柱23に回動不能に固定されている。回動規制部256は、所定状態において第二支柱23に対する本体支持部253の回動を一時的に規制(位置決め)する。回動規制部256は、第一回動状態C1と、第二回動状態C2と、第一回動状態C1と第二回動状態C2との間の一つの回動状態である第三回動状態C3とにおいて、第二支柱23に対する本体支持部253の回動を一時的に規制する。回動規制部256によって回動が規制された本体支持部253は、作業者によって回動方向に力が加えられることでその規制が解除される。
【0034】
回動規制部256は、本体支持部253及び固定部255の一方に設けられる凸部(係止部)257と、本体支持部253及び固定部255の他方に設けられ、凸部257を係止させる溝部(被係止部)258と、によって構成される。本実施形態では、回動規制部256を形成する凸部257は本体支持部253に設けられ、溝部258は固定部255に設けられている。図5(A)に示されるように、固定部255には、凸部257を係止したときに、本体支持部253が第一回動状態C1となる溝部258と、本体支持部253が第二回動状態C2となる溝部258と、本体支持部253が第三回動状態C3となる溝部258とが形成されている。
【0035】
図5(B)に示されるように、凸部257を係止したときに本体支持部253が第一回動状態C1となる溝部258は、第一被係止面258Aと、第二被係止面258Bと、第三被係止面258Cとを有している。第一被係止面258Aは、本体支持部253を第二回動状態C2に回動させる側に形成されている。第一被係止面258Aは、鉛直方向に延在する平面である。第二被係止面258Bは斜面である。第三被係止面258Cは、水平面である。このような溝部258の形状により、第二被係止面258B側からのみ凸部257を摺動させながら溝部258に進入又は溝部258から進出させることができ、溝部258の第一被係止面258A側から凸部257を進出させることを防止できると共に、凸部257を溝部258に係止させることができる。
【0036】
図示はしないが、凸部257を係止したときに本体支持部253が第二回動状態C2となる溝部258も、第一被係止面258Aと、第二被係止面258Bと、第三被係止面258Cとを有している。第一被係止面258Aは、本体支持部253を第一回動状態C1に回動させる側に形成されている。第一被係止面258Aは、鉛直方向に延在する平面である。第二被係止面258Bは斜面である。第三被係止面258Cは、水平面である。このような溝部258の形状により、第二被係止面258B側からのみ凸部257を摺動させながら溝部258に進入又は溝部258から進出させることができ、溝部258の第一被係止面258A側から凸部257を進出させることを防止できると共に、凸部257を溝部258に係止させることができる。
【0037】
図5(C)に示されるように、凸部257を係止したときに本体支持部253が第三回動状態C3となる溝部258は、第四被係止面258Dと、第五被係止面258Eと、第六被係止面258Fとを有している。第四被係止面258Dは、本体支持部253を第一回動状態C1に回動させる側に形成されており、斜面である。第五被係止面258Eは、本体支持部253を第二回動状態C2に回動させる側に形成されており、斜面である。第六被係止面258Fは、水平面である。このような溝部258の形状により、第四被係止面258D側から凸部257を摺動させながら溝部258に進入又は溝部258から進出させ、第五被係止面258E側から凸部257を摺動させながら溝部258に進入又は溝部258から進出させることができる共に、凸部257を溝部258に係止させることができる。
【0038】
図2に示されるように、ペッグ25は、Y方向に配列されている。本体支持部253は、図9(A)の左から二番目のペッグ25に示されるように、第一回動状態C1において給糸パッケージ支持部251の先端部がX方向の一方側F1を向き、図9(B)の左から二番目のペッグ25に示されるように、第二回動状態C2において給糸パッケージ支持部251の先端部がX方向の他方側F2を向き、図10(A)の左から二番目のペッグ25に示されるように、第三回動状態C3において給糸パッケージ支持部251の先端部がY方向を向くように回動する。
【0039】
また、ペッグ25は、図10(B)の左から二番目のペッグ25と左から三番目のペッグ25とで示されるように、上記一対の一方のペッグ25に所定径の給糸パッケージP1が支持された状態で、他方のペッグ25に所定径以上の給糸パッケージP1が取り付けられることを阻害する。より詳細には、D≦r2+r3の関係にあるとき、上記一対の一方のペッグ25に所定径r2の給糸パッケージP1が支持された状態で、他方のペッグ25に所定径r3の給糸パッケージP1が取り付けられることを阻害する。
D:左から二番目のペッグ25(第二支柱23の中心)と左から三番目のペッグ25(第二支柱23の中心)との距離
r2:左から二番目のペッグ25に支持された給糸パッケージP1の半径
r3:左から三番目のペッグ25に支持された給糸パッケージP1の半径
すなわち、上記一対のペッグ25,25は、互いに第二回動状態C2に位置させたときに支持される給糸パッケージP1,P1同士が互いに接触するように、Y方向の間隔を詰めた状態で配置されている。
【0040】
一方、ペッグ25は、図11(A)の左から二番目のペッグ25と左から三番目のペッグ25とで示されるように、上記一対の一方である第二回動状態C2のペッグ25に支持された給糸パッケージP1と上記一対の他方である第三回動状態C3のペッグ25に支持された給糸パッケージP1とが互いに接触しないように設けられ、図11(B)の左から二番目のペッグ25と左から三番目のペッグ25とで示されるように、上記一対の一方である第一回動状態C1のペッグ25に支持された給糸パッケージP1と上記一対の他方である第三回動状態C3のペッグ25に支持された給糸パッケージP1とが互いに接触しないように設けられている。
【0041】
加工部3は、給糸部2から供給された糸Yに対して仮撚加工を施す。図1に示されるように、加工部3は、撚止ガイド31と、第一加熱装置32と、冷却装置33と、仮撚装置34と、第二加熱装置35と、フィードローラ36(フィードローラ361~363)と、を備えている。撚止ガイド31、第一加熱装置32、冷却装置33、仮撚装置34、第二加熱装置35及びフィードローラ36(フィードローラ361~363)のそれぞれは、給糸部2から供給されるそれぞれの糸Yに対して個別に設けられており、Y方向に一列に配列されている。
【0042】
撚止ガイド31は、後述する仮撚装置34で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド31よりも糸走行方向上流側に伝播することを防止する。第一加熱装置32は、給糸部2からフィードローラ361を介して送られてきた糸Yを加熱する。冷却装置33は、第一加熱装置32で加熱された糸Yを冷却する。仮撚装置34は、糸Yを撚る。第二加熱装置35は、仮撚装置34からフィードローラ362を介して送られてきた糸Yを加熱する。
【0043】
クリールスタンド20と撚止ガイド31との間にはフィードローラ361が設けられ、仮撚装置34と第二加熱装置35との間にはフィードローラ362が設けられ、第二加熱装置35と巻取装置41との間にはフィードローラ363が設けられている。各フィードローラ36(フィードローラ361~363)は、駆動ローラ及び従動ローラを含んで構成されている。各フィードローラ36のそれぞれも、Y方向に一列に配列されている。
【0044】
フィードローラ362による糸Yの搬送速度は、フィードローラ361よる糸Yの搬送速度よりも速く、糸Yは、フィードローラ361とフィードローラ362との間で延伸される。フィードローラ363による糸Yの搬送速度は、フィードローラ362による糸Yの搬送速度よりも遅く、糸Yは、フィードローラ362とフィードローラ363との間で弛緩される。
【0045】
以上のように構成された加工部3では、フィードローラ361とフィードローラ362との間で延伸された糸Yが、仮撚装置34で撚られる。仮撚装置34により形成される撚りは、撚止ガイド31までは伝播するが、撚止ガイド31よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第一加熱装置32で加熱されて熱固定された後、冷却装置33で冷却される。仮撚装置34から下流では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって各フィラメントが仮撚りされた状態で維持される。
【0046】
糸Yは、フィードローラ362とフィードローラ363との間で弛緩されながら、第二加熱装置35で熱固定される。最後に、フィードローラ363から送られた糸Yは、巻取部4の巻取装置41によって巻き取られ、巻取パッケージP2が形成される。
【0047】
巻取部4は、巻取装置41、パッケージストッカ42及び玉揚装置(図示省略)等を備えている。巻取装置41は、加工部3で仮撚加工が施された糸Yを巻き取って巻取パッケージP2を形成する。パッケージストッカ42は、巻取装置41によって形成された巻取パッケージP2を貯留する。玉揚装置は、巻取装置41によって形成された巻取パッケージP2を取り外し、その巻取パッケージP2をパッケージストッカ42に移すと共に、巻取装置41に空の巻取ボビンB2の取り付け等を行う。
【0048】
パッケージ交換装置9は、ペッグ25から給糸ボビンB1を回収すると共に、ペッグ25に給糸パッケージP1を取り付ける。図6に示されるように、パッケージ交換装置9は、レール98に沿って走行する。レール98は、床に敷設されており、Y方向に沿って延在している。すなわち、パッケージ交換装置9は、Y方向に沿って走行可能に設けられている。パッケージ交換装置9は、走行ユニット90と、昇降ユニット91と、保持ユニット92と、交換ユニット93と、各ユニットの動作を制御する制御部94(図8参照)と、を備えている。
【0049】
走行ユニット90は、レール98を走行する車輪及び駆動機構等が設けられている。走行ユニット90は、昇降ユニット91、保持ユニット92及び交換ユニット93を支持する。昇降ユニット91は、作業者を搭乗させて昇降する。昇降ユニット91は、メンテナンス等の際に使用される。昇降ユニット91は、作業者が搭乗する作業台911と、作業台911をZ方向に移動可能に支持するガイド部912と、作業台を駆動する駆動機構(図示省略)と、を備える。
【0050】
保持ユニット92は、複数(例えば、4個)の給糸パッケージP1を保持する。保持ユニット92は、パッケージ補給装置(図示省略)から給糸パッケージP1の供給を受けて給糸パッケージP1を一時的に保管すると共に、交換ユニット93に給糸パッケージP1を供給する。保持ユニット92は、略90°の範囲で回動可能に設けられている。より詳細には、保持ユニット92は、パッケージ補給装置から給糸パッケージP1の供給を受ける補給位置と、交換ユニット93に給糸パッケージP1を供給する供給位置(図6に示す位置)との間で回動可能に設けられている。
【0051】
交換ユニット93は、ペッグ25において給糸ボビンB1と給糸パッケージP1との交換を行う。具体的には、交換ユニット93は、ペッグ25から給糸ボビンB1(図1参照)を回収すると共に、ペッグ25に給糸パッケージP1を取り付ける。交換ユニット93は、保持ユニット92と隣接して設けられている。図7に示されるように、交換ユニット93は、基台931と、回動装置932と、回収装置933と、供給装置934と、回転台936と、を備えている。なお、図6では、回動装置932、回収装置933、供給装置934及び回転台936の記載は省略する。
【0052】
基台931は、回動装置932、回収装置933、供給装置934及び回転台936を支持している。基台931は、Z方向に沿って昇降自在に設けられている。回動装置932は、基台931に固定されている。回動装置932は、クリールスタンド20のペッグ25を回動させる。回動装置932は、回動ドライバ932Aと、回動アーム932Bと、を有している。
【0053】
回動ドライバ932Aは、ペッグ25の回転伝達部254(例えば、図3(A)等参照)を回転させる。回動ドライバ932Aは、ゼネバ機構を構成するゼネバドライバである。回動ドライバ932Aは、モータ(図示省略)の回転駆動によって回転する。回動アーム932Bは、回動ドライバ932Aを支持している。回動アーム932Bは、水平方向において揺動可能に設けられている。回動アーム932Bは、例えば、モータ又はエアシリンダ(図示省略)によって駆動される。回動装置932は、クリールスタンド20において二個一組で設けられる一方のペッグ25及び他方のペッグ25にそれぞれ対応するように設けられている。
【0054】
回動装置932は、ペッグ25に給糸パッケージP1を取り付けるときに、ペッグ25を回動させてペッグ25の向きを変更する。より詳細には、回動装置932は、回動アーム932Bを揺動させて、回動ドライバ932Aをペッグ25の回転伝達部254に係合させる。回動装置932は、回動ドライバ932Aと回転伝達部254とが係合すると、回動ドライバ932Aを一方向に回転させる。ペッグ25は、回転伝達部254が回転すると、本体支持部253が回転する。これにより、ペッグ25が回動し、給糸パッケージ支持部251の先端部が交換ユニット93側を向く。
【0055】
回収装置933は、基台931に回転可能に支持された回転台936に設けられている。回収装置933は、ペッグ25から給糸ボビンB1を回収する。回収装置933は、給糸ボビンB1を支持する給糸ボビン支持部933Aを有している。回収装置933は、ペッグ25に対して給糸ボビンB1を支持しない状態で給糸ボビン支持部933Aを進出させることにより給糸ボビンB1を支持し、ペッグ25に対して給糸ボビンB1を支持した状態で給糸ボビン支持部933Aを後退させることにより、給糸ボビンB1をペッグ25から回収する。
【0056】
供給装置934は、基台931に回転可能に支持された回転台936に設けられている。供給装置934は、ペッグ25に給糸パッケージP1を供給する。供給装置934は、給糸パッケージP1を支持する給糸パッケージ供給部934Aを有している。供給装置934は、ペッグ25に対して給糸パッケージP1を支持した状態で給糸パッケージ供給部934Aを進出することにより給糸パッケージP1をペッグ25に取り付け、ペッグ25に対して給糸パッケージP1を支持しない状態で給糸パッケージ供給部934Aを後退させることにより、給糸パッケージP1をペッグ25に供給する。
【0057】
回転台936は、基台931に回転可能に支持されている。回転台936は、給糸ボビンB1を回収するときに、給糸ボビン支持部933Aが対象となるペッグ25の正面に位置するように回転される。また、回転台936は、給糸パッケージP1を供給するときに、給糸パッケージ供給部934Aが対象となるペッグ25の正面に位置するように回転される。
【0058】
図8に示されるように、制御部94は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/Oポート及び通信ポート等からなる電子制御ユニットである。ROMには、走行ユニット90、昇降ユニット91、保持ユニット92及び交換ユニット93の各部を制御するためのプログラムが記録されている。また、制御部94における各機能は、CPU及び主記憶部等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもと実行される。
【0059】
上述したとおり、パッケージ交換装置9は、クリールスタンド20のF2側をY方向に沿って走行可能に設けられ、ペッグ25に支持された使用済みの給糸パッケージP1(給糸ボビンB1)を取り出して使用前の(新たな)給糸パッケージP1に交換する。給糸パッケージP1を交換するとき、制御部94は、パッケージ交換装置9を制御して、第一回動状態C1にあるペッグ25(図9(A)の左から二番目のペッグ25を参照)が第二回動状態C2となるように本体支持部253を回動させる(図9(B)の左から二番目のペッグ25を参照)。次に、制御部94は、パッケージ交換装置9を制御して、使用済みの給糸パッケージP1から使用前の給糸パッケージP1に交換する。次に、制御部94は、第二回動状態C2にあるペッグ25が第三回動状態C3となるように本体支持部253を回動させる(図10(A)の左から二番目のペッグ25を参照)。より詳細には、制御部94は、回動装置932の回動ドライバ932Aを駆動させ、回転伝達部254を回動させ、ペッグ本体部252を回動させる。
【0060】
上述の構成を有するクリールスタンド20は、糸Yに加工を施す加工部3に糸Yを供給できるように給糸パッケージP1を支持している状態である第一回動状態C1(図9(A)の左から二番目のペッグ25を参照)と、給糸パッケージP1を交換できるように給糸パッケージP1を支持している状態である第二回動状態C2(図9(B)の左から二番目のペッグ25を参照)とにおいて本体支持部253の回動を一時的に規制(位置決め)できるだけでなく、第一回動状態C1と第二回動状態C2との間の一つの回動状態である第三回動状態C3(図10(A)の左から二番目のペッグ25を参照)においても本体支持部253の回動を一時的に規制(位置決め)できる。
【0061】
図12は、図10(A)の状態にあるペッグ25に支持された給糸パッケージP1を他方側F2から(すなわち、作業者が作業を行う方向から)見た図である。第一回動状態C1のペッグ25に支持された給糸パッケージP1と、第三回動状態C3のペッグ25に支持された給糸パッケージP1とでは、クリールスタンド20をX方向の他方側F2から見たときの見え方が大きく異なるので、作業者は、第三回動状態C3に位置するペッグ25を、第一回動状態C1及び第二回動状態C2に位置するペッグ25と区別して認識することができる。言い換えれば、給糸パッケージP1の取り付け作業を終えているが、キャップ付け作業又は糸継ぎ作業が完了しておらず、これらの作業をすべき状態にあるペッグ25に支持された給糸パッケージP1を作業者が容易に認識することができる。
【0062】
糸継対象となる給糸パッケージP1を視覚的に区別するためには、給糸パッケージP1を交換後、第一回動状態C1に切り替えずに交換時の第二回動状態C2のままペッグ25を維持することが考えられる。しかしながら、図10(B)に示されるように、第二回動状態C2のペッグ25に取り付けられた給糸パッケージP1は、隣り合うペッグ25を第二回動状態C2の状態にすることを阻害することがある。これは、クリールスタンド20のY方向へのサイズの拡大を抑制するために、Y方向におけるペッグ25の間隔を詰めて配置されるためである。本実施形態のクリールスタンド20では、Y方向に隣り合う第二回動状態C2同士のペッグ25に支持された給糸パッケージP1が互いに接触するようにペッグ25が設けられ、隣り合う第二回動状態C2のペッグ25に支持された給糸パッケージP1と第三回動状態C3のペッグ25に支持された給糸パッケージP1とが互いに接触しないように設けられている。これにより、クリールスタンド20のY方向へのサイズ拡大を抑制することもできる。
【0063】
図13(A)及び図13(B)に示されるように、上記のキャップ付け作業又は糸継ぎ作業は、作業者の手作業により実施される。キャップ付け作業は、給糸パッケージ支持部251の先端部にキャップ259を被せる作業である。上記従来のクリールスタンド520では、図13(B)に示されるように、ペッグ25が第一回動状態C1において給糸パッケージ支持部251の先端部がX方向の一方側F1を向いており、このような状態において作業者によるキャップ付け作業が実施される。このとき、作業者が他方側F2からキャップ付け作業を実施するために手を差し入れるスペースの幅(長さ)はL2である。
【0064】
これに対し、本実施形態のクリールスタンド20では、図13(A)に示されるように、ペッグ25が第三回動状態C3において給糸パッケージ支持部251の先端部がY方向を向いており、このような状態において作業者によるキャップ付け作業が実施される。このとき、作業者が他方側F2からキャップ付け作業を実施するために手を差し入れるスペースの幅(長さ)はL1であり、L2より長い。したがって、本実施形態のクリールスタンド20では、キャップ付け作業を実施する際の作業性を向上させることができる。
【0065】
糸継ぎ作業は、給糸パッケージP1の取り付け作業を終えて第三回動状態C3となっているペッグ25が、第三回動状態C3のままで行われてもよく(図10(A)参照)、また、作業者によって第一回動状態C1にされてから行われてもよい(図9(A)参照)。
【0066】
以上、本発明の一側面の実施形態について説明してきたが、本発明の一側面は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0067】
(変形例1)
上記実施形態のペッグ25は、回動部としてのペッグ本体部252に係止部としての凸部257が形成され、固定部255に被係止部としての溝部258が形成されている例を挙げて説明したが、本発明の一側面はこれに限定されない。例えば、図14(A)、図14(B)、図15(A)及び図15(B)に示されるように、変形例1に係るペッグ25Aは、回動部としてのペッグ本体部252に被係止部としてのカム260が設けられ、固定部255Aに係止部としての凸部257Aが設けられている。
【0068】
カム260は、ペッグ本体部252に一体的に設けられている。カム260は、その周縁においてリング状に下方に向けて突出する突出部261が形成されている。突出部261には、凸部257Aを係止したときに、本体支持部253が第一回動状態C1となる溝部262と、本体支持部253が第二回動状態C2となる溝部262と、本体支持部253が第三回動状態C3となる溝部262とが形成されている。このような変形例1に係る構成のペッグ25Aであっても、糸Yに加工を施す加工部3に糸Yを供給できるように給糸パッケージP1を支持している状態である第一回動状態C1と、給糸パッケージP1を交換できるように給糸パッケージP1を支持している状態である第二回動状態C2とにおいて本体支持部253の回動を一時的に規制(位置決め)できるだけでなく、第一回動状態C1と第二回動状態C2との間の一つの回動状態である第三回動状態C3においても本体支持部253の回動を一時的に規制(位置決め)できる。
【0069】
(変形例2)
変形例1のペッグ25Aは、回動部としてのペッグ本体部252に被係止部としてのカム260が設けられ、固定部255Aに係止部としての凸部257Aが設けられる例を挙げて説明したが、本発明の一側面はこれに限定されない。例えば、図16(A)及び図16(B)に示されるように、変形例2に係るペッグ25Bは、回動部としての本体支持部253に被係止部としての凹部270が設けられ、固定部255Bに係止部としてプランジャ(凸部)280が設けられてもよい。
【0070】
本体支持部253Bには、プランジャ280を係止したときに、本体支持部253Bが第一回動状態C1となる凹部270と、本体支持部253Bが第二回動状態C2となる凹部270と、本体支持部253Bが第三回動状態C3となる凹部270とが形成されている。このような変形例2に係る構成のペッグ25Bであっても、糸Yに加工を施す加工部3に糸Yを供給できるように給糸パッケージP1を支持している状態である第一回動状態C1と、給糸パッケージP1を交換できるように給糸パッケージP1を支持している状態である第二回動状態C2とにおいて本体支持部253Bの回動を一時的に規制(位置決め)できるだけでなく、第一回動状態C1と第二回動状態C2との間の一つの回動状態である第三回動状態C3においても本体支持部253Bの回動を一時的に規制(位置決め)できる。
【0071】
(その他の変形例)
上記実施形態及び変形例においては、クリールスタンド20に沿って走行可能に設けられたパッケージ交換装置9を備える例を挙げて説明したが、パッケージ交換装置9を備えないクリールスタンド20であっても、上記実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0072】
上記実施形態及び変形例においては、ペッグ25から使用済みの給糸パッケージP1を回収した後にペッグ25に新たな給糸パッケージP1を取り付ける給糸パッケージ交換システム100に本願発明が適用される例に挙げて説明したが、ペッグ25から使用済みの給糸パッケージP1を回収せずに、ペッグ25に新たな給糸パッケージP1を取り付けることのみを行う給糸パッケージ取付システムに本願発明が適用されてもよい。
【0073】
上記実施形態及び変形例においては、加工部3の一例として撚糸加工(仮撚加工)を施す装置を例に挙げて説明したが、無撚糸加工(エアージェット加工)を施す装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…仮撚加工機、2…給糸部、20…クリールスタンド、23…第二支柱(軸部)、25,25A,25B…ペッグ(第一ペッグ・第二ペッグ)、251…給糸パッケージ支持部、252…ペッグ本体部(回動部)、253,253B…本体支持部(回動部)、254…回転伝達部、255,255A,255B…固定部、256…回動規制部、257,257A…凸部、258…溝部(被係止部)、262…溝部(被係止部)、270…凹部(被係止部)、280…プランジャ(係止部・凸部)、3…加工部、34…仮撚装置、9…パッケージ交換装置(取付機構)、100…給糸パッケージ交換システム(給糸パッケージ取付システム)、C1…第一回動状態、C2…第二回動状態、C3…第三回動状態、P1…給糸パッケージ、P2…巻取パッケージ、Y…糸(合繊糸)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16