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特許7577590簡易耐火試験方法および柱状試験体保持具
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  • 特許-簡易耐火試験方法および柱状試験体保持具 図1
  • 特許-簡易耐火試験方法および柱状試験体保持具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】簡易耐火試験方法および柱状試験体保持具
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/50 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
G01N25/50 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021053858
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022151001
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】藤井 良清
(72)【発明者】
【氏名】針金 奏一郎
(72)【発明者】
【氏名】井田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ バン ニー
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-167407(JP,A)
【文献】特表2016-533487(JP,A)
【文献】特開2004-093298(JP,A)
【文献】特開2009-236757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁炉の熱原面に対向して位置する受熱面側に、実際寸法の柱試験体よりも小寸法の柱状試験体を配置し、当該小寸法の柱状試験体を上記受熱面から離間させて隙間を形成した状態で耐火試験を行うことを特徴とする簡易耐火試験方法。
【請求項2】
請求項1に記載の簡易耐火試験方法において、互いに耐火仕様が異なる複数の小寸法の柱状試験体を配置して耐火試験を行うことを特徴とする簡易耐火試験方法。
【請求項3】
耐火面材と、実際寸法の柱試験体よりも小寸法の柱状試験体を上記耐火面材との間に隙間を形成して取り付ける取付部材と、を備えることを特徴とする柱状試験体保持具。
【請求項4】
請求項3に記載の柱状試験体保持具において、上記耐火面材の上記取付部材が位置する側に、当該耐火面材への熱影響を低減する耐火材を備えることを特徴とする柱状試験体保持具。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の柱状試験体保持具において、上記取付部材を2以上備えることを特徴とする柱状試験体保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、模擬的に耐火試験を行うことができる簡易耐火試験方法および柱状試験体保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の鉄骨柱の耐火試験は、この鉄骨柱の四周を均一に加熱することができる柱炉を用いて行っている。また、特許文献1には、耐火壁に沿って設けられる鉄骨梁の耐火認定試験において、「座屈試験」を実施できるような耐火試験体構造および耐火試験方法が開示されている。また、特許文献2には、コンクリートから構成される実大寸法の試験体よりも小規模の試験体を加熱する簡易耐火試験方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-226849号公報
【文献】特開2014-167407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、試験機関等において柱炉を用いて耐火試験を行う場合は、順番待ち等で、事業者側が要望する時期に試験が行えない問題がある。また、上記柱炉を用いて耐火試験で良好な結果が得られない場合もあり、このような場合には、再度の耐火試験で試験費用が嵩むという問題もある。また、上記柱炉は一般に高額であり、この柱炉で用いる実際寸法の柱試験体の作製にも高額の費用がかかる。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、柱炉を用いて実際の鉄骨柱について耐火試験を行う前段階において、適時に模擬耐火試験を行うことが容易になり、上記柱炉を用いた本番の耐火試験で良好な結果が得られ易く、また、安価に実施することができる簡易耐火試験方法および柱状試験体保持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の簡易耐火試験方法は、壁炉の熱原面に対向して位置する受熱面側に、実際寸法の柱試験体よりも小寸法の柱状試験体を配置し、当該小寸法の柱状試験体を上記受熱面から離間させて隙間を形成した状態で耐火試験を行うことを特徴とする。
【0007】
上記の方法であれば、小寸法の柱状試験体を上記受熱面から離間させて隙間を形成した状態で耐火試験を行うので、上記小寸法の柱状試験体の背面側(受熱面側)にも上記隙間から壁炉内の熱気流が回り込み、さらに、上記受熱面が放出する輻射熱も上記背面側に至るので、上記小寸法の柱状試験体の四周の面を極力均等に加熱することができる。よって、小寸法の柱状試験体を用いて適切に模擬耐火試験を行うことができる。また、このように壁炉を用いて小寸法の柱状試験体の耐火試験を行うので、適時に模擬耐火試験を行うことが容易になり、柱炉を用いた本番の耐火試験で良好な結果が得られ易くなる。また、壁炉を用いた模擬耐火試験は、柱炉を用いた耐火試験に比べて安価に行える。
【0008】
互いに耐火仕様が異なる複数の小寸法の柱状試験体を配置して耐火試験を行ってもよい。これによれば、壁炉を用いて様々な耐火仕様を効率的に模擬試験することができる。
【0009】
また、この発明の柱状試験体保持具は、耐火面材と、実際寸法の柱試験体よりも小寸法の柱状試験体を上記耐火面材との間に隙間を形成して取り付ける取付部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の構成の柱状試験体保持具であれば、上記取付部材によって、小寸法の柱状試験体と上記耐火面材との間に隙間を形成することができ、壁炉を用いて上記小寸法の柱状試験体の四周の面を極力均等に加熱できるので、小寸法の柱状試験体を用いて適切に模擬耐火試験を行うことができる。
【0011】
上記柱状試験体保持具は、上記耐火面材の上記取付部材が位置する側に、当該耐火面材への熱影響を低減する耐火材を備えてもよい。これによれば、壁炉内の熱で上記耐火面材が脆くなるのを上記耐火材で抑制し、当該柱状試験体保持具を繰り返し使用することが容易になる。
【0012】
上記柱状試験体保持具は、上記取付部材を2以上備えてもよい。これによれば、1つの柱状試験体保持具に、互いに耐火仕様が異なる複数の小寸法の柱状試験体を装着することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明であれば、柱炉を用いて実際の鉄骨柱について耐火試験を行う前段階において、適時に模擬耐火試験を行うことが容易になり、柱炉を用いた本番の認定耐火試験で良好な結果が得られ易くなる。また、壁炉を用いた模擬耐火試験は、柱炉を用いた耐火試験に比べて安価に行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の簡易耐火試験方法を示した説明図である。
図2】実施形態の柱状試験体保持具を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、この実施形態の簡易耐火試験方法は、実際寸法の柱試験体よりも小寸法の柱状試験体Aを壁炉1内に配置して行う。壁炉1は、例えば、箱状の本体部11と、この本体部11の開口を覆う例えばALC(軽量気泡コンクリート)等からなる可動蓋部12とを備える。また、本体部11は、可動蓋部12と対向する熱原面11aを有する。熱原面11aには、例えば、フラットフレームガスバーナーが縦横4×4で16基(或いは、所定配列で22基等)設けられている。
【0016】
この実施形態の簡易耐火試験方法では、壁炉1の熱原面11aに対向して位置する可動蓋部12の受熱面12aに、柱状試験体保持具5を設けており、この柱状試験体保持具5によって、実際寸法の柱試験体よりも小寸法の柱状試験体Aを壁炉1内において鉛直配置で保持する。柱状試験体Aにおける柱状体として、例えば、80mm×80mm×3.2mmの角形鋼管が用いられる。角形鋼管の長さは、800mm程度である。また、柱状試験体Aにおいて、上記角形鋼管には、実験したい耐火被覆材等が適宜巻かれる。
【0017】
柱状試験体保持具5は、例えば、図2にも示すように、ベース部51と取付部材52とを備える。ベース部51は、例えば、金属製の方形状枠51aと、この方形状枠51aの一方の面に貼り付けられた耐火面材(ケイ酸カルシウム板等)51bと、この耐火面材51bにピン等で留め付けられた耐火材(アルカリアースシリケートウール(AES)等)51cと、上記方形状枠51aの他方の面に張り付けられた耐火面材(ケイ酸カルシウム板等)51dと、この耐火面材51dに貼り付けられた石膏ボード51eとを有する。
【0018】
上記柱状試験体保持具5において、上記一方の面側に位置する耐火面材51bおよび耐火材51cが壁炉1の熱原面11aに対向する受熱面12aとなる。耐火面材51bの水分含有率が高い場合は、受熱で脆くなるおそれがあるが、耐火材51cは、耐火面材51bへの熱影響を軽減し、耐火面材51bを保護する。また、ウール状である耐火材51cによる方形状枠51a側への熱気流抜けは、耐火面材51dにより防止される。耐火材51cは、耐火面材51bよりも高い輻射率を有するのがよい。
【0019】
また、柱状試験体保持具5には、取付部材52が2台、その中心間の間隔を400mm程度あけて設けられている。各取付部材52は、上下に所定間隔をおいて配置された2個の金属製のLアングル材52aからなる。各Lアングル材52aは短辺部と長辺部とを有しており、上記短辺部は方形状枠51aの一方の面と平行に配置され、上記長辺部は上記方形状枠51aの上記一方の面から突出している。Lアングル材52aの上記短辺部は、螺子等の締結部材で上記方形状枠51aに固定される。
【0020】
そして、上下に配置された2個のLアングル材52aの上記長辺部が互いに対向し、この長辺部間で柱状試験体Aが固定される。この固定は、例えば、上記長辺部を貫通する螺子等の締結部材を柱状試験体Aの上記角形鋼管の天板にねじ込むことによって行われる。各Lアングル材52aは、熱からの保護および耐火試験に対する影響を軽減するように、耐火材(アルカリアースシリケートウール(AES)等)53によって被覆される。また、柱状試験体保持具5の周囲側は、試験面を絞るマスク処理が施されている。例えば、マスク材(ALC)の開口部分に柱状試験体保持具5が着脱可能に嵌め込まれており、柱状試験体保持具5を受熱面12aから取り外した状態で、当該柱状試験体保持具5に柱状試験体Aをセットすることができる。
【0021】
柱状試験体Aは、Lアングル材52aの上記長辺部に固定されることで耐火面材51bから離間し、当該柱状試験体Aと耐火面材51bとの間に所定幅の隙間Gが形成される。この実施形態では、耐火面材51b上に耐火材51cを留め付けているので、この耐火材51cと柱状試験体Aとの間に所定幅の隙間Gが形成されるようにする。柱状試験体Aにおける上記角形鋼管と耐火材51cとの間の距離は、当該角形鋼管の幅と同等に設定するのが望ましく、上記角形鋼管に耐火被覆材が巻かれて柱状試験体Aとされた状態での上記隙間Gへの熱気流の通過の円滑さと、柱状試験体Aが熱原面11aに近づき過ぎて過加熱となるのを防止する観点から設定される。この実施形態では、柱状試験体Aにおける上記角形鋼管から耐火材51cの表面までの距離は、65mm程度(概ね柱状試験体Aの厚さ程度)に設定されている。
【0022】
そして、実施形態の簡易耐火試験方法では、小寸法の柱状試験体Aが、壁炉1の受熱面12a(耐火面材51bおよび耐火材51c)から離間して上記隙間Gを形成した状態で耐火試験が行われる。この耐火試験における加熱処理では、ISO834に規定される標準加熱曲線が得られるように壁炉1内の温度調整を行う。また、加熱温度の測定は、JIS C 1605(シース型熱電対)で規定される直径3mmのSKシース熱電対にて行う。また、柱状試験体Aの角形鋼管の温度測定は、柱状試験体Aの2面または4面に穴をあけ、この穴にJIS C 1602で規定される径0.65mmのK熱電対(C-A熱電対)を装着して行った。
【0023】
上記簡易耐火試験方法であれば、小寸法の柱状試験体Aを耐火面材51bから離間させて隙間Gを形成した状態で耐火試験を行うので、上記熱原面11aに対向する面とは反対側の柱状試験体Aの背面側にも上記隙間Gから壁炉1内の熱気流が回り込み、さらに、耐火面材51bおよび耐火材51cが放出する輻射熱も上記背面側に至るので、小寸法の柱状試験体Aの四周の面を極力均等に加熱することが可能である。よって、小寸法の柱状試験体Aを用いて適切に模擬耐火試験を行うことができる。また、このように小寸法の柱状試験体Aを用いるので、適時に模擬耐火試験を行うことが容易になり、柱炉を用いた本番の認定耐火試験で良好な結果が得られ易くなる。また、壁炉1を用いた模擬耐火試験は、柱炉を用いた耐火試験に比べて安価に行える。また、壁炉1を用いた模擬耐火試験は、柱炉を用いた耐火試験に比べて安価に行える。
【0024】
また、この簡易耐火試験方法において、互いに耐火仕様が異なる複数の柱状試験体Aを配置して耐火試験を行うと、壁炉1を用いて様々な耐火仕様を効率的に模擬試験することができる。
【0025】
また、上記柱状試験体保持具5であれば、小寸法の柱状試験体Aを耐火面材51bや耐火材51cから離間させて簡単に上記隙間Gを形成できる。そして、柱状試験体Aがセットされた上記柱状試験体保持具5を壁炉1に配置して適切に模擬耐火試験を行うことができる。
【0026】
また、上記柱状試験体保持具が耐火面材51bの取付部材52が配置される側の面に耐火材51cを備えると、壁炉1内の熱で当該耐火面材51bが脆くなるのを抑制でき、この柱状試験体保持具5を繰り返し使用することが容易になる。
【0027】
柱状試験体保持具5が取付部材52を2セット以上備えていると、1つの柱状試験体保持具5に、互いに耐火仕様が異なる複数の柱状試験体Aを装着することができる。この実施形態では、壁炉1内に1個の柱状試験体保持具5を配置したが、これに限らず、2個以上の柱状試験体保持具5を配置してもよく、これによれば、さらに多くの互いに耐火仕様が異なる複数の柱状試験体Aを同時に模擬耐火試験することができる。
【0028】
なお、この発明の簡易耐火試験方法は、上記柱状試験体保持具5を用いることに限定されず、この柱状試験体保持具5とは異なる構造の保持具で柱状試験体Aを保持してもよい。
【0029】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 :壁炉
5 :柱状試験体保持具
11 :本体部
11a :熱原面
12 :可動蓋部
12a :耐火面
51 :ベース部
51a :方形状枠
51b :耐火面材
51c :耐火材
51d :耐火面材
51e :石膏ボード
52 :取付部材
52a :Lアングル材
A :柱状試験体
G :隙間
図1
図2