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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】情報処理プログラム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241028BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241028BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20241028BHJP
   G06T 7/223 20170101ALI20241028BHJP
   B60W 40/09 20120101ALI20241028BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06T7/00 650A
G06T7/20 100
G06T7/223
B60W40/09
G08G1/00 X
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021076785
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022170575
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深町 侑加
(72)【発明者】
【氏名】小玉 光志
(72)【発明者】
【氏名】鵜川 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 真亜子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孟弘
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003512(JP,A)
【文献】特開2019-182623(JP,A)
【文献】特開2017-151815(JP,A)
【文献】特開2014-192776(JP,A)
【文献】特開2012-104053(JP,A)
【文献】特開2020-135675(JP,A)
【文献】特開2009-015684(JP,A)
【文献】特開2001-116136(JP,A)
【文献】特開2021-033403(JP,A)
【文献】特開2020-042853(JP,A)
【文献】特開2020-149708(JP,A)
【文献】特開2014-202543(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0229238(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009030953(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0003602(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G06T 7/00
G06T 7/20
G06T 7/223
B60W 40/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体本体に対して相対的に可動する可動部を含む移動体の運転状態を撮影した動画像から、前記移動体の走行状態、及び前記可動部の操作状態を判定し、
前記走行状態及び前記操作状態の判定結果に基づいて、前記動画像において、前記移動体の危険運転が行われているか否かを特定することを含む処理をコンピュータに実行させるための情報処理プログラムであって、
前記走行状態を判定する処理は、前記動画像に含まれる各フレームから算出したオプティカルフローの大きさと第1閾値との比較に基づいて、フレーム毎に前記移動体が走行中か停止中かを判定すると共に、走行中と判定されたフレームについて、さらに、フレーム内でのオプティカルフローの角度の分布に基づいて、前記移動体が前進若しくは後進中か、又は旋回中かを判定する、
情報処理プログラム。
【請求項2】
前記動画像のある区間が、前記危険運転が行われている区間か否かに基づいて、前記動画像の再生速度を変更することを含む請求項1の記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記動画像の再生速度を変更する処理は、前記危険運転が行われていない区間の再生速度を、前記危険運転が行われている区間の再生速度よりも速くすることを含む請求項2に記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記走行状態として、前記移動体が走行中であると判定され、かつ前記操作状態として、前記可動部を操作中であると判定されている前記動画像の区間を、前記危険運転が行われている区間として特定する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
基準となる動画像の各フレームから算出したオプティカルフローの統計値に対する、対象の動画像の各フレームから算出したオプティカルフローの統計値の比率を前記第1閾値に乗算する請求項に記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
前記走行状態として、前記移動体が停止中であると判定された場合、停止状態の継続時間が第2閾値以下の前記動画像の区間を、前記危険運転が行われている区間として特定する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【請求項7】
前記操作状態を判定する処理は、前記動画像の各フレームから前記可動部を示す第1領域を検出し、検出した前記第1領域におけるオプティカルフローと、フレーム全体におけるオプティカルフローとの差と第3閾値との比較、及び、前記動画像の各フレームから、前記可動部又は前記可動部に取り付けたマーカの特定の色を示す第2領域を検出し、前記第2領域のフレーム間での変動量と第4閾値との比較の少なくとも一方に基づいて、フレーム毎に前記可動部を操作中か停止中かを判定することを含む請求項1~請求項のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【請求項8】
前記走行状態及び前記操作状態の判定結果と、前記危険運転が行われている区間の特定結果とを、前記動画像に対応付けて表示することをさらに含む処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1~請求項のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【請求項9】
前記移動体への乗員の乗降状態をさらに判定し、
前記動画像において、前記乗員が前記移動体に乗車中であると判定された区間に対する、前記危険運転が行われている区間の割合を安全係数として算出し、
前記安全係数を、さらに前記動画像に対応付けて表示する
請求項に記載の情報処理プログラム。
【請求項10】
前記乗降状態を判定する処理は、前記動画像の各フレームから前記乗員を示す第3領域を検出し、各フレームにおける前記第3領域の位置と、前記動画像全体における前記第3領域の位置の平均との差と、第5閾値との比較に基づいて、フレーム毎に前記乗員が前記移動体に乗車中か、前記移動体から降車中かを判定することを含む請求項9に記載の情報処理プログラム。
【請求項11】
前記動画像の再生速度を変更する処理は、前記乗員が前記移動体に乗車中の区間の再生速度を、前記乗員が前記移動体から降車中の区間の再生速度よりも速くすることを含む請求項10に記載の情報処理プログラム。
【請求項12】
移動体本体に対して相対的に可動する可動部を含む移動体の運転状態を撮影した動画像から、前記移動体の走行状態、及び前記可動部の操作状態を判定する判定部と、
前記走行状態及び前記操作状態の判定結果に基づいて、前記動画像において、前記移動体の危険運転が行われているか否かを特定する特定部と、を含み、
前記判定部は、前記動画像に含まれる各フレームから算出したオプティカルフローの大きさと第1閾値との比較に基づいて、フレーム毎に前記移動体が走行中か停止中かを判定すると共に、走行中と判定されたフレームについて、さらに、フレーム内でのオプティカルフローの角度の分布に基づいて、前記移動体が前進若しくは後進中か、又は旋回中かを判定する、
報処理装置。
【請求項13】
移動体本体に対して相対的に可動する可動部を含む移動体の運転状態を撮影した動画像から、前記移動体の走行状態、及び前記可動部の操作状態を判定し、
前記走行状態及び前記操作状態の判定結果に基づいて、前記動画像において、前記移動体の危険運転が行われているか否かを特定することを含む処理をコンピュータが実行する情報処理方法であって、
前記走行状態を判定する処理は、前記動画像に含まれる各フレームから算出したオプティカルフローの大きさと第1閾値との比較に基づいて、フレーム毎に前記移動体が走行中か停止中かを判定すると共に、走行中と判定されたフレームについて、さらに、フレーム内でのオプティカルフローの角度の分布に基づいて、前記移動体が前進若しくは後進中か、又は旋回中かを判定する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、情報処理プログラム、情報処理装置、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の危険運転の検知に関し、例えば、移動体の挙動を観測し、観測結果が特定条件を満たすことを契機として、移動体に危険運転の可能性があると判断するシステムが提案されている。このシステムにおいて、特定条件は、例えば、移動体に対して後方の移動体が異常接近する行為、後方の移動体が急加速したり若しくは急に減速したり、又は急加速と急な減速とを繰り返す行為等である。
【0003】
また、取得した情報に基づいて加工された映像をユーザが見ることができるようにする再生装置が提案されている。この再生装置では、パーソナルコンピュータの表示装置の表示画面上に再生ウインドウが表示され、ドライブレコーダによって記録された映像が再生ウインドウの映像表示領域に表示される。また、この再生装置は、車両の運転操作に伴い変化する情報を記録し、被写体の動きの変化がない映像部分の表示速度を被写体の動きの変化がある映像部分の表示速度と比較して速くする。また、この再生装置は、映像データの記録時における車両の状況に関する情報を表示させる。
【0004】
また、フォークリフト等の荷役車両の危険運転の検知に関する技術も提案されている。例えば、乗員へフォークリフトの操作に役立つ情報を提供する画像処理装置が提案されている。この画像処理装置は、フォークリフトの車体の前方を撮影する撮影部の撮影により得られた映像から物体を検出し、車体の移動速度情報を取得し、車体の前方側に昇降可能に支持されたフォークの姿勢及び高さ方向の位置に関する状態情報を取得する。また、この画像処理装置は、フォーク上の荷物の有無又は荷物のサイズを検出し、フォークの状態情報及び荷物の検出結果に応じて、フォークリフトの作業状況を判定する。そして、この画像処理装置は、判定した作業状況に応じた表示画像を生成し、フォークリフトの運転席から視認できる位置に取り付けられた表示部に表示させる。
【0005】
また、例えば、リーチ式フォークリフトに搭載され、リーチ式フォークリフトの周囲の少なくとも一部を撮像するカメラを備えたフォークリフト用運転支援装置が提案されている。この装置は、操舵角に応じた走行予想軌跡上に最大旋回円を生成し、カメラにて撮像された画像に最大旋回円を重畳して表示し、旋回開始位置の判断を支援する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-102092号公報
【文献】特開2019-32739号公報
【文献】特開2020-142903号公報
【文献】特開2020-83572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、物流倉庫内で荷役作業を行うフォークリフト等の移動体が安全運転を行っているか否かを評価する方法として、移動体に取り付けられたドライブレコーダの映像を点検することが考えられる。しかし、映像を人手で点検する場合、膨大な工数を要する。
【0008】
一つの側面として、開示の技術は、移動体の運転状態を撮影した動画像から危険運転を判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの態様として、開示の技術は、移動体本体に対して相対的に可動する可動部を含む移動体の運転状態を撮影した動画像から、前記移動体の走行状態、及び前記可動部の操作状態を判定する。そして、開示の技術は、前記走行状態及び前記操作状態の判定結果に基づいて、前記動画像において、前記移動体の危険運転が行われているか否かを特定する。
【発明の効果】
【0010】
一つの側面として、移動体の運転状態を撮影した動画像から危険運転を判定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】情報処理装置の機能ブロック図である。
図2】前処理後の動画像の1フレームの一例を示す図である。
図3】走行状態の判定を説明するための図である。
図4】旋回中のオプティカルフローの向きを説明するための図である。
図5】前後進のオプティカルフローの向きを説明するための図である。
図6】旋回中のオプティカルフローの向きの条件を説明するための図である。
図7】バックレストの検出及び爪可動領域の特定を説明するための図である。
図8】爪の可動方向に対応するオプティカルフローの角度を説明するための図である。
図9】バックレストに特定色のテープを貼付した例を示す概略図である。
図10】特定色の領域の抽出を説明するための図である。
図11】人物の位置の特定を説明するための図である。
図12】人物の位置と平均位置との距離を説明するための図である。
図13】判定結果と運転状態との関係を示すテーブルの一例を示す図である。
図14】加工動画像の表示の一例を示す図である。
図15】情報処理装置として機能するコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
図16】情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図17】走行判定処理の一例を示すフローチャートである。
図18】操作判定処理の一例を示すフローチャートである。
図19】乗降判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、開示の技術に係る実施形態の一例を説明する。本実施形態では、フォークリフトの運転評価を行う場合を例に説明する。なお、フォークリフトは、開示の技術の移動体の一例であり、フォークリフトの爪(フォーク)は、開示の技術の、移動体本体に対して相対的に可動する可動部の一例である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10には、動画像が入力され、情報処理装置10が、動画像を運転評価用に加工して、加工動画像として出力する。情報処理装置10に入力される動画像は、フォークリフトに取り付けられたドライブレコーダから出力される動画像である。例えば、ドライブレコーダは、フォークリフト本体、爪の可動領域、乗員等を含む領域を撮影し、フォークリフトの運転状態を認識可能な動画像を取得するカメラと、撮影された動画像を記憶するレコーダとを備える。このカメラとしては、例えば、フォークリフトのヘッドカバーやマストの先端等の上部に取り付けられ、上部からフォークリフト本体側を撮影する360度広角カメラを適用してよい。レコーダに記憶された動画像は、例えば、パーソナルコンピュータ等のユーザ端末により読み出され、ユーザ端末から、ネットワークを介して情報処理装置10にアップロードすることにより、情報処理装置10に入力される。動画像は、所定のフレームレート(例えば、10fps)で撮影されており、動画像の1ファイルには、複数のフレームが含まれる。
【0014】
情報処理装置10は、機能的には、図1に示すように、前処理部11と、走行判定部12と、操作判定部13と、乗降判定部14と、特定部15と、算出部16と、生成部17とを含む。走行判定部12、操作判定部13、及び乗降判定部14は、開示の技術の判定部の一例である。
【0015】
前処理部11は、情報処理装置10に入力された動画像に対して前処理を行う。例えば、前処理部11は、動画像の各フレームを所定のサイズにリサイズする。リサイズするサイズは、例えば、後段の処理でディープラーニングを適用する場合に、ディープラーニングの処理に適したサイズ(例えば、256画素×256画素)とすればよい。
【0016】
また、前処理部11は、動画像に含まれる全てのフレームの輝度を、例えば、適応的ヒストグラム平坦化処理等により正規化する。撮影場所が屋内から屋外、又は屋外から屋内へ移動する場合など、画像の明るさの変化の激しさによる、後段の各機能部での誤判定等を抑制するためである。
【0017】
また、前処理部11は、動画像において、ピントのぼやけが発生しているフレームを検知する。例えば、前処理部11は、各フレームにラプラシアンフィルタを適用し、フィルタ適用後のフレーム全体の画素値の分散が1,000未満の場合、ぼやけが発生しているフレームとして検知する。
【0018】
図2に、前処理後の動画像の1フレームの一例を示す。前処理部11は、前処理後の動画像を、走行判定部12、操作判定部13、及び乗降判定部14の各々へ受け渡す。
【0019】
走行判定部12は、前処理部11から受け渡された動画像から、フォークリフトの走行状態を判定する。具体的には、走行判定部12は、動画像に含まれる各フレームからオプティカルフローを算出し、オプティカルフローの大きさと第1閾値との比較に基づいて、フレーム毎に、フォークリフトが走行中か停止中かを判定する。
【0020】
より具体的には、走行判定部12は、フレーム間で対応する画素の対応付けにより、フレーム間の画像の変動を表すオプティカルフローを示すベクトルを算出し、フレーム内のベクトルの大きさの中央値を算出する。なお、中央値に替えて、平均値等の他の統計値を算出してもよい。また、統計値として、所定フレーム分の移動平均を適用してもよい。オプティカルフローの値が大きい場合には、フレーム間での画像の変動が大きいことを表しているため、フォークリフトが走行中の可能性が高い。一方、オプティカルフローの値が小さい場合には、フレーム間での画像の変動が小さいことを表しているため、フォークリフトが停止中の可能性が高い。
【0021】
そこで、走行判定部12は、図3に示すように、処理対象のフレームから算出したオプティカルフローの中央値Xが閾値TH1以上の場合、そのフレームに「走行中」の仮判定結果を示すフラグ「1」を付与する。閾値TH1としては、例えば、走行中と停止中とのオプティカルフローの大きさを区別可能な値を予め定めておけばよい。走行判定部12は、フレーム毎に算出したオプティカルフローの中央値の、動画像全体における最大値と最小値間の幅を、基準動画像から算出された幅で除算した比率Ratioを予め定めた値に乗算した値を、閾値TH1として設定してよい。基準動画像としては、明るさが標準的な動画像を予め定めておけばよい。また、走行判定部12は、処理対象のフレームから算出したオプティカルフローの中央値Xが、閾値TH1未満の場合、そのフレームに「停止中」の仮判定結果を示すフラグ「0」を付与する。また、走行判定部12は、前処理部11において、ぼやけの発生が検知されているフレームには、オプティカルフローの中央値Xの大きさにかかわらず、そのフレームにフラグ「0」を付与する。ぼやけが発生しているフレームについて、誤って「走行中」と判定されることを抑制するためである。
【0022】
走行判定部12は、図3に示すように、フラグ「1」が付与されているフレームの前後所定数のフレーム(例えば、3フレーム)に、判定結果「走行中」を示すメタデータを付与する。また、走行判定部12は、残りのフレームに、判定結果「停止中」を示すメタデータを付与する。これにより、判定結果の過度な切り替わりを抑制する。
【0023】
また、走行判定部12は、判定結果「走行中」のフレームについて、さらに、フレーム内でのオプティカルフローの角度の分布に基づいて、フォークリフトが前進若しくは後進(以下、「前後進」という)中か、又は旋回中かを判定する。
【0024】
例えば、図4に示すように、フレームを左右半分ずつの領域に分けた場合、フォークリフトが旋回中であれば、左領域と右領域とで、オプティカルフローは相反する向きとなる。一方、図5に示すように、フォークリフトが前後進中であれば、左領域と右領域とで、オプティカルフローは同じ向きとなる。
【0025】
そこで、走行判定部12は、フレームの左領域及び右領域の各々からオプティカルフローの角度の中央値を算出し、左領域と右領域とで、オプティカルフローの角度の組み合わせが所定条件を満たすか否かを判定する。所定条件としては、例えば、図6に示すように角度の範囲を設定した場合、左領域及び右領域の一方の角度が範囲1に含まれ、他方の角度が範囲3に含まれる場合、又は、一方の角度が範囲2に含まれ、他方の角度が範囲4に含まれる場合のいずれかとする。
【0026】
走行判定部12は、処理対象のフレームから算出されたオプティカルフローの角度の組み合わせが条件を満たす場合、そのフレームに「旋回中」の仮判定結果を示すフラグ「1」を付与する。一方、条件を満たさない場合、走行判定部12は、そのフレームに「前後進」の仮判定結果を示すフラグ「1」を付与する。また、走行判定部12は、図3の場合と同様に、フラグ「1」が付与されているフレームの前後所定数のフレーム(例えば、5フレーム)に付与されている判定結果「走行中」を示すメタデータを、判定結果「旋回中」を示すメタデータに変更する。また、走行判定部12は、残りのフレームに付与されている判定結果「走行中」を示すメタデータを、判定結果「前後進」を示すメタデータに変更する。
【0027】
また、走行判定部12は、判定結果「停止中」のフレームについて、停止状態の継続時間に基づいて、適正な停止か、一時停止かを判定する。例えば、走行判定部12は、判定結果「停止中」のフレームが、第2閾値TH2以上のフレーム数(例えば、20フレーム)連続しているか否かを判定する。閾値TH2としては、適正な停止として求められる停止状態の継続時間(例えば、2秒)を予め定めておけばよい。連続している場合、走行判定部12は、連続している区間に含まれる各フレームに付与されている判定結果「停止中」のメタデータを、適正な停止を示す判定結果「適正停止中」を示すメタデータに変更する。また、走行判定部12は、判定結果「停止中」のフレームの連続数が所定時間に満たない場合、各フレームに付与されている判定結果「停止中」のメタデータを、判定結果「一時停止」を示すメタデータに変更する。
【0028】
操作判定部13は、前処理部11から受け渡された動画像から、爪の操作状態を判定する。具体的には、操作判定部13は、動画像の各フレームから爪に対応する領域を検出し、検出した領域におけるオプティカルフローと、フレーム全体におけるオプティカルフローとの差と第3閾値との比較に基づいて、フレーム毎に、爪を操作中か否かを判定する。
【0029】
より具体的には、操作判定部13は、例えば、YOLO(You Only Look Once)等のディープラーニングによる物体検出手法により、予め大量のバックレスト画像を用いて訓練されたモデルを用いて、各フレームからバックレストを示す領域を検出する。バックレストとは、爪の上に載せた荷物がマストの後方に落下するのを防ぐための荷受け枠であり、爪の上下方向の可動に対応して可動する。したがって、バックレストの動きを検知することにより、爪の動きを検知することになる。
【0030】
例えば、操作判定部13は、図7上図に示すように検出したバックレストを示す領域21と、ドライブレコーダのカメラの取り付け位置とに基づいて、図7下図に示すように、爪の可動範囲を示す爪可動領域22を特定する。操作判定部13は、フレーム毎に、フレーム内のオプティカルフローを算出し、算出したオプティカルフローから、爪可動領域22内、かつ爪の可動方向に対応する角度のオプティカルフローを抽出する。図7の例の場合、例えば図8の網掛で示す範囲の角度を、爪の可動方向に対応する角度として予め定めておいてよい。操作判定部13は、抽出したオプティカルフローの大きさの中央値X1と、フレーム全体のオプティカルフローの大きさの中央値X2との差が、閾値TH3以上の場合、そのフレームに「操作中」の仮判定結果を示すフラグ「1」を付与する。一方、X1とX2との差が閾値TH3未満の場合、操作判定部13は、そのフレームに「非操作中」の仮判定結果を示すフラグ「0」を付与する。閾値TH3としては、例えば、爪の操作中と非操作中とのオプティカルフローの大きさを区別可能な値を予め定めておけばよい。
【0031】
操作判定部13は、図3の場合と同様に、フラグ「1」が付与されているフレームの前後所定数のフレーム(例えば、3フレーム)に、判定結果「操作中」を示すメタデータを付与する。また、操作判定部13は、残りのフレームに、判定結果「非操作中」を示すメタデータを付与する。
【0032】
また、操作判定部13は、動画像の各フレームから、爪可動領域22内における、予め定めた特定色の領域を検出し、検出した領域のフレーム間での変動量と第4閾値との比較に基づいて、フレーム毎に、爪を操作中か否かを判定してもよい。特定色の領域は、例えば、図9に示すように、バックレスト23の所定位置に貼付した特定色のテープ等のマーカ24を示す領域である。また、マーカ24を貼付する場合に限らず、バックレスト自体の少なくとも一部に塗布された特定色の領域であってもよい。なお、特定色としては、蛍光色等の画像上での認識が容易な色を採用することが望ましい。
【0033】
具体的には、操作判定部13は、フレーム毎に、爪可動領域22の各画素のHSV値に基づいて、特定色を示す画素を抽出し、図10に示すように、爪可動領域22において特定色を抽出できた画素を白、抽出できなかった画素を黒で表現した2値画像を生成する。操作判定部13は、フレーム間で2値画像の背景差分をとって、特定色を示す領域の変化量Cを算出する。操作判定部13は、算出した変化量Cが、閾値TH4以上の場合、そのフレームに「操作中」の仮判定結果を示すフラグ「1」を付与する。一方、変化量Cが閾値TH4未満の場合、操作判定部13は、そのフレームに「非操作中」の仮判定結果を示すフラグ「0」を付与する。閾値TH4としては、例えば、走行中と停止中との特定色を示す領域の変化量Cの大きさを区別可能な値を予め定めておけばよい。そして、上記と同様に、操作判定部13は、フラグに基づいて、フレーム毎に、判定結果「操作中」又は「非操作中」を示すメタデータを付与する。
【0034】
なお、操作判定部13は、上記のオプティカルフローに基づく判定と、特定色に基づく判定とを合わせて行ってもよい。例えば、操作判定部13は、オプティカルフローの大きさの中央値X1とX2との差が閾値TH3以上、かつ特定色を示す領域の変化量Cが閾値TH4以上の場合に、フラグ「1」を付与するようにしてもよい。
【0035】
乗降判定部14は、前処理部11から受け渡された動画像から、フォークリフトへの乗員の乗降状態を判定する。具体的には、乗降判定部14は、動画像の各フレームから人物に対応する領域を検出する。そして、乗降判定部14は、各フレームにおいて検出した領域の位置と、全フレームから検出された領域の位置の平均との差と第5閾値との比較に基づいて、フレーム毎に、乗員が乗車中か降車中かを判定する。
【0036】
より具体的には、乗降判定部14は、例えば、YOLO等のディープラーニングによる物体検出手法により、予め大量の人物画像を用いて訓練されたモデルを用いて、各フレームから人物示す領域を検出する。なお、1フレームから人物を示す領域が2つ以上検出された場合は、モデルから出力される、検出した領域が人物であることの尤もらしさを示す確信度が高い方の領域を採用すればよい。乗降判定部14は、図11に示すように、フレーム毎に人物を示す領域として検出したバウンディングボックス25の中心点のフレーム内での座標を人物の位置P1として特定する。また、乗降判定部14は、各フレームから特定した位置P1の動画全体における平均を、人物の平均位置P2として特定する。P2は、乗員を示す領域が平均的にフレーム上のどの位置に存在するかを示す基準点となる。
【0037】
乗降判定部14は、図12に示すように、フレーム27における人物の位置P1と平均位置P2との距離Dが、閾値TH5以上の場合、そのフレームに「降車中」の仮判定結果を示すフラグ「1」を付与する。また、乗降判定部14は、人物を示す領域が検出されていないフレームにも、フラグ「1」を付与する。一方、距離Dが閾値TH5未満の場合、乗降判定部14は、そのフレームに「乗車中」の仮判定結果を示すフラグ「0」を付与する。閾値TH5としては、例えば、フレームのサイズ、画角、フレーム内の運転席の領域等に基づいて、乗車中と降車中との位置関係の相違を区別可能な値(例えば、70画素)を予め定めておけばよい。
【0038】
乗降判定部14は、フラグ「1」のフレームが、所定時間(例えば、1秒)以上のフレーム数(例えば、10フレーム)連続している区間に含まれる各フレームに、判定結果「降車中」を示すメタデータを付与する。また、乗降判定部14は、それ以外のフレームに、判定結果「乗車中」を示すメタデータを付与する。
【0039】
特定部15は、走行状態及び爪の操作状態の判定結果に基づいて、動画像において、フォークリフトの危険運転が行われている区間を特定する。ここで、「区間」とは、動画像に時間軸に対応した区切りである。動画像における区間は、例えば、区間の開始時に対応するフレームに対応付けられた時間情報又はフレーム番号、及び、区間の終了時に対応するフレームに対応付けられた時間情報又はフレーム番号により特定される。本実施形態では、走行しながら爪を操作している「ながら操作」、及び停止不足を危険運転とする。具体的には、特定部15は、フレームの判定結果が「旋回中」又は「前後進」、かつ「操作中」である動画像の区間を、危険運転が行われている区間として特定する。また、特定部15は、フレームの判定結果が「一時停止」である動画像の区間を、危険運転が行われている区間として特定する。
【0040】
例えば、特定部15は、図13に示すような、判定結果と運転状態との関係を示すテーブルを保持しておく。図13の例では、判定結果が「旋回中」かつ「操作中」の場合、運転状態は、「ながら操作」のうち「旋回ながら操作」である。また、判定結果が「前後進」かつ「操作中」の場合、運転状態は、「ながら操作」のうち「走行ながら操作」である。図13では、太線枠で示す運転状態「旋回ながら操作」、「走行ながら操作」、及び「停止不足」が危険運転である。なお、図13のテーブルに含まれる「再生速度」については後述する。
【0041】
特定部15は、このテーブルを参照し、各フレームに付与された判定結果に対応する運転状態を特定し、各フレームに、特定した運転状態の種別を示すメタデータを付与する。そして、特定部15は、運転状態が「旋回ながら操作」、「走行ながら操作」、及び「停止不足」のいずれかであると特定されたフレームに、危険運転であることを示すメタデータを付与する。危険運転であることを示すメタデータが付与されたフレームが連続している区間が、危険運転が行われている区間である。
【0042】
算出部16は、動画像において、乗員がフォークリフトに乗車中であると判定された区間に対する、危険運転が行われている区間の割合を安全係数として算出する。具体的には、算出部16は、運転状態が「旋回ながら操作」、「走行ながら操作」、及び「停止不足」のいずれかであると特定されたフレーム数を、判定結果「乗車中」のフレーム数で除算した値を安全係数として算出する。
【0043】
生成部17は、危険運転が行われている区間か否かの特定結果に基づいて、動画像の再生速度が変更されるように動画像を加工する。具体的には、生成部17は、危険運転が行われていない区間の再生速度が、危険運転が行われている区間の再生速度よりも速くなるように、動画像を倍速処理する。生成部17は、倍速処理として、再生速度を速くする区間のフレーム数を間引いてもよいし、再生時に指定した再生速度となるような制御情報を動画像に付加してもよい。また、生成部17は、例えば、図13に示すテーブルのように、運転状態に応じた「再生速度」を予め定めておき、この「再生速度」を参照して、動画像の各区間の再生速度を決定してよい。図13の例では、危険運転の場合は1倍速、すなわち通常の再生速度、危険運転ではない乗車中の場合は6倍速、降車中の場合は10倍速と定められている。このように定めておくことで、動画像を評価する際、危険運転のシーンは通常再生、それ以外のシーンは早送り再生となり、評価の工数を大幅に削減することができる。
【0044】
また、生成部17は、走行判定部12、操作判定部13、及び乗降判定部14の各々の判定結果と、特定部15の特定結果と、算出部16により算出された安全係数が、動画像に対応付けて表示されるように、動画像を加工する。例えば、生成部17は、図2に示すような動画像に対して、図14に示すように、各フレームに付与されたメタデータに基づく情報が各フレームに表示されるように、動画像に情報を付加する。
【0045】
図14の例では、加工された動画像(以下、「加工動画像」という)28には、危険運転が行われていると判定された区間について、その運転状態の種別が表示される危険運転状態表示29が含まれる。また、加工動画像28には、各判定部による判定結果を示す判定結果表示30が含まれる。図14の例では、判定結果表示30は、判定結果を示す文字列にランプが対応付けられた表示であって、該当する判定結果に対応するランプが点灯する表示となっている。また、加工動画像28には、乗降判定部14で検出された人物を示す領域表示31、算出部16で算出された安全係数を示す安全係数表示32、及び運転状態に応じて決定した再生速度を示す倍速表示33が含まれる。
【0046】
生成部17は、上記のように、動画像に倍速処理及び情報付加の加工を行い、加工動画像28を生成し、加工動画像28のファイルをユーザ端末へ送信する。ユーザ端末への送信は、情報処理装置10の所定の記憶領域に記憶した加工動画像28を、加工動画像28のダウンロード要求を行ったユーザ端末へダウンロードすることで行われてよい。
【0047】
情報処理装置10は、例えば図15に示すコンピュータ40で実現することができる。コンピュータ40は、CPU(Central Processing Unit)41と、一時記憶領域としてのメモリ42と、不揮発性の記憶部43とを備える。また、コンピュータ40は、入力部、表示部等の入出力装置44と、記憶媒体49に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するR/W(Read/Write)部45とを備える。また、コンピュータ40は、インターネット等のネットワークに接続される通信I/F(Interface)46を備える。CPU41、メモリ42、記憶部43、入出力装置44、R/W部45、及び通信I/F46は、バス47を介して互いに接続される。
【0048】
記憶部43は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部43には、コンピュータ40を、情報処理装置10として機能させるための情報処理プログラム50が記憶される。情報処理プログラム50は、前処理プロセス51と、走行判定プロセス52と、操作判定プロセス53と、乗降判定プロセス54と、特定プロセス55と、算出プロセス56と、生成プロセス57とを有する。
【0049】
CPU41は、情報処理プログラム50を記憶部43から読み出してメモリ42に展開し、情報処理プログラム50が有するプロセスを順次実行する。CPU41は、前処理プロセス51を実行することで、図1に示す前処理部11として動作する。また、CPU41は、走行判定プロセス52を実行することで、図1に示す走行判定部12として動作する。また、CPU41は、操作判定プロセス53を実行することで、図1に示す操作判定部13として動作する。また、CPU41は、乗降判定プロセス54を実行することで、図1に示す乗降判定部14として動作する。また、CPU41は、特定プロセス55を実行することで、図1に示す特定部15として動作する。また、CPU41は、算出プロセス56を実行することで、図1に示す算出部16として動作する。また、CPU41は、生成プロセス57を実行することで、図1に示す生成部17として動作する。これにより、情報処理プログラム50を実行したコンピュータ40が、情報処理装置10として機能することになる。なお、プログラムを実行するCPU41はハードウェアである。
【0050】
なお、情報処理プログラム50により実現される機能は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で実現することも可能である。
【0051】
次に、本実施形態に係る情報処理装置10の作用について説明する。フォークリフトに取り付けられたドライブレコーダにより得られた動画像が情報処理装置10に入力されると、情報処理装置10において、図16に示す情報処理ルーチンが実行される。なお、情報処理ルーチンは、開示の技術の情報処理方法の一例である。
【0052】
ステップS10で、前処理部11が、情報処理装置10に入力された動画像を取得し、取得した動画像に対して、リサイズ、輝度の正規化、ぼやけが発生しているフレームの検知等の前処理を行う。
【0053】
次に、ステップS20で、走行判定処理が実行される。ここで、図17を参照して、走行判定処理について説明する。
【0054】
ステップS21で、走行判定部12が、前処理後の動画像に含まれる各フレームからオプティカルフローを算出し、オプティカルフローを示すベクトルのフレーム内での中央値Xを算出する。
【0055】
次に、ステップS22で、走行判定部12が、フレーム毎に算出したオプティカルフローの中央値の、動画像全体における最大値と最小値間の幅を、基準動画像から算出された幅で除算した比率Ratioを算出する。走行判定部12は、予め定めた値(例えば、0.15)にRatioを乗算した値を、閾値TH1として設定する。
【0056】
次に、ステップS23で、走行判定部12が、各フレームについて、オプティカルフローの中央値Xが閾値TH1以上か否かを判定する。X≧TH1となるフレームについては、ステップS24へ移行し、走行判定部12が、そのフレームにフラグ「1」を付与する。一方、X<TH1となるフレームについては、ステップS25へ移行し、走行判定部12が、そのフレームにフラグ「0」を付与する。また、走行判定部12は、前処理部11において、ぼやけの発生が検知されているフレームについても、フラグ「0」を付与する。
【0057】
次に、ステップS26で、走行判定部12が、フラグ「1」が付与されているフレームの前後所定数のフレーム(例えば、3フレーム)に、判定結果「走行中」を示すメタデータを付与する。また、走行判定部12は、残りのフレームに、判定結果「停止中」を示すメタデータを付与する。
【0058】
次に、ステップS27で、走行判定部12が、判定結果「走行中」のフレームについて、フレーム内でのオプティカルフローの角度の分布が所定条件を満たすか否かを判定する。所定条件を満たすフレームについては、ステップS28へ移行し、走行判定部12が、そのフレームにフラグ「1」を付与する。一方、所定条件を満たさないフレームについては、ステップS29へ移行し、走行判定部12が、そのフレームにフラグ「0」を付与する。
【0059】
次に、ステップS30で、走行判定部12が、フラグ「1」が付与されているフレームの前後所定数のフレーム(例えば、5フレーム)に付与されている判定結果「走行中」を示すメタデータを、判定結果「旋回中」を示すメタデータに変更する。また、走行判定部12が、残りのフレームに付与されている判定結果「走行中」を示すメタデータを、判定結果「前後進」を示すメタデータに変更する。
【0060】
次に、ステップS31で、走行判定部12が、判定結果「停止中」のフレームが、閾値TH2(例えば、2秒)以上のフレーム数(例えば、20フレーム)連続しているか否かを判定することにより、停止状態がTH2以上か否かを判定する。停止状態がTH2以上の場合、ステップS32へ移行し、走行判定部12が、判定結果「停止中」のフレームが連続している区間に含まれる各フレームに付与されている判定結果「停止中」のメタデータを、判定結果「適正停止中」を示すメタデータに変更する。一方、停止状態がTH2未満の場合、ステップS33へ移行し、各フレームに付与されている判定結果「停止中」のメタデータを、判定結果「一時停止」を示すメタデータに変更する。そして、走行判定処理は終了し、情報処理ルーチン(図16)に戻る。
【0061】
次に、ステップS40で、操作判定処理が実行される。ここで、図18を参照して、操作判定処理について説明する。
【0062】
ステップS41で、操作判定部13が、前処理部11から受け渡された動画像の各フレームからバックレストを示す領域を検出する。そして、操作判定部13が、検出したバックレストを示す領域と、ドライブレコーダのカメラの取り付け位置とに基づいて、爪可動領域を特定する。
【0063】
次に、ステップS42で、操作判定部13が、フレーム毎に、フレーム内のオプティカルフローを算出し、算出したオプティカルフローから、爪可動領域内、かつ爪の可動方向に対応する角度のオプティカルフローを抽出する。そして。操作判定部13が、抽出したオプティカルフローの大きさの中央値X1と、フレーム全体のオプティカルフローの大きさの中央値X2を算出する。
【0064】
次に、ステップS43で、操作判定部13が、フレーム毎に、爪可動領域から特定色を示す領域を抽出し、フレーム間での特定色を示す領域の変化量Cを算出する。
【0065】
次に、ステップS44で、操作判定部13が、フレーム毎に、オプティカルフローの大きさの中央値X1とX2との差が閾値TH3以上、かつ特定色を示す領域の変化量Cが閾値TH4以上か否かを判定する。|X1-X2|≧TH3、かつC≧TH4のフレームについては、ステップS45へ移行し、操作判定部13が、そのフレームにフラグ「1」を付与する。一方、|X1-X2|<TH3、又はC<TH4のフレームについては、ステップS46へ移行し、操作判定部13が、そのフレームにフラグ「0」を付与する。なお、本ステップにおいて、|X1-X2|≧TH3、又はC≧TH4の場合に、肯定判定となるようにしてもよい。
【0066】
次に、ステップS47で、操作判定部13が、フラグ「1」が付与されているフレームの前後所定数のフレーム(例えば、3フレーム)に、判定結果「操作中」を示すメタデータを付与する。また、操作判定部13が、残りのフレームに、判定結果「非操作中」を示すメタデータを付与する。そして、操作判定処理は終了し、情報処理ルーチン(図16)に戻る。
【0067】
次に、ステップS50で、乗降判定処理が実行される。ここで、図19を参照して、乗降判定処理について説明する。
【0068】
ステップS51で、乗降判定部14が、動画像の各フレームから人物示す領域を検出し、人物を示す領域として検出したバウンディングボックス25の中心点のフレーム内での座標を人物の位置P1として特定する。次に、ステップS52で、乗降判定部14が、各フレームから特定した位置P1の動画像全体での平均を、人物の平均位置P2として特定する。
【0069】
次に、ステップS53で、乗降判定部14が、フレーム毎に、人物の位置P1と平均位置P2との距離Dが、閾値TH5以上か否かを判定する。D≧TH5のフレームについては、ステップS54へ移行し、乗降判定部14が、そのフレームにフラグ「1」を付与する。一方、D<TH5のフレームについては、ステップS55へ移行し、乗降判定部14が、そのフレームにフラグ「0」を付与する。
【0070】
次に、ステップS56で、乗降判定部14が、フラグ「1」のフレームが、所定時間(例えば、1秒)以上のフレーム数(例えば、10フレーム)連続している区間に含まれる各フレームに、判定結果「降車中」を示すメタデータを付与する。また、乗降判定部14が、それ以外のフレームに、判定結果「乗車中」を示すメタデータを付与する。そして、乗降判定処理は終了し、情報処理ルーチン(図16)に戻る。
【0071】
次に、ステップS60で、特定部15が、各フレームの判定結果に基づいて、運転状態の種別を特定し、各フレームに、運転状態の種別を示すメタデータを付与する。特定部15が、運転状態の種別が「旋回ながら操作」、「走行ながら操作」、又は「停止不足」であるフレームに、危険運転であることを示すメタデータを付与することで、動画像において、危険運転が行われている区間を特定する。
【0072】
次に、ステップS70で、算出部16が、運転状態の種別が「旋回ながら操作」、「走行ながら操作」、及び「停止不足」のいずれかであると特定されたフレーム数を、判定結果「乗車中」のフレーム数で除算した値を安全係数として算出する。
【0073】
次に、ステップS80で、生成部17が、危険運転が行われていない区間の再生速度が、危険運転が行われている区間の再生速度よりも速くなるように、動画像を倍速処理する。また、生成部17が、上記ステップS20~S50の各々での判定結果、上記ステップS60での特定結果、上記ステップS70で算出された安全係数等の情報が、動画像に対応付けて表示されるように、動画像を加工する。このようにして、生成部17が、加工動画像を生成し、加工動画像のファイルをユーザ端末へ送信する。そして、情報処理ルーチンは終了する。
【0074】
なお、上記の情報処理ルーチンにおいて、ステップS20、S40、及びS50の処理は、順番を入れ替えて実行してもよいし、並列に実行してもよい。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置は、フォークリフトの運転状態を撮影した動画像から、フォークリフトの走行状態、及び爪の操作状態を判定する。また、情報処理装置は、走行状態及び操作状態の判定結果に基づいて、動画像において、危険運転が行われている区間を特定する。そして、情報処理装置は、危険運転が行われている区間か否かの特定結果に基づいて、動画像の再生速度を変更する。これにより、車体本体の運転に加え、爪の操作が行われるフォークリフトの運転状態について、動画像のみから危険運転が行われている区間が特定されると共に、危険運転が行われている区間か否かにより再生速度を変更することができる。したがって、運転評価を効率良く行えるように支援することができる。
【0076】
また、乗降状態をさらに判定し、乗降中の危険運転の割合から安全係数を算出し、走行状態、操作状態、乗降状態、危険運転か否か、安全係数等を動画像に表示するため、運転評価をさらに効率良く行えるように支援することができる。
【0077】
なお、上記実施形態では、停止状態の継続時間に応じて、適正停止中か一時停止かを判定し、一時停止の場合は危険運転として特定する場合について説明したが、これに限定されない。適正な停止時間に満たない場合の停止を、更に段階的に分類してもよい。例えば、2秒以上の停止が適正である場合、停止状態が1秒以上2秒未満の一時停止と、停止時状態が1秒未満の瞬停止とに分類してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、フォークリフトの運転状態の評価を行う場合を例に説明したが、移動体本体に対して相対的に可動する可動部を含む移動体の運転状態であれば、開示の技術を適用可能である。
【0079】
また、上記実施形態では、情報処理プログラムが記憶部に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。開示の技術に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ等の記憶媒体に記憶された形態で提供することも可能である。
【0080】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0081】
(付記1)
移動体本体に対して相対的に可動する可動部を含む移動体の運転状態を撮影した動画像から、前記移動体の走行状態、及び前記可動部の操作状態を判定し、
前記走行状態及び前記操作状態の判定結果に基づいて、前記動画像において、前記移動体の危険運転が行われているか否かを特定する、
ことを含む処理をコンピュータに実行させるための情報処理プログラム。
【0082】
(付記2)
前記危険運転が行われている区間か否かに基づいて、前記動画像の再生速度を変更することを含む付記1に記載の情報処理プログラム。
【0083】
(付記3)
前記動画像の再生速度を変更する処理は、前記危険運転が行われていない区間の再生速度を、前記危険運転が行われている区間の再生速度よりも速くすることを含む付記2に記載の情報処理プログラム。
【0084】
(付記4)
前記走行状態として、前記移動体が走行中であると判定され、かつ前記操作状態として、前記可動部を操作中であると判定されている前記動画像の区間を、前記危険運転が行われている区間として特定する付記1~付記3のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【0085】
(付記5)
前記走行状態を判定する処理は、前記動画像に含まれる各フレームから算出したオプティカルフローの大きさと第1閾値との比較に基づいて、フレーム毎に前記移動体が走行中か停止中かを判定することを含む付記1~付記4のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【0086】
(付記6)
基準となる動画像の各フレームから算出したオプティカルフローの統計値に対する、対象の動画像の各フレームから算出したオプティカルフローの統計値の比率を前記第1閾値に乗算する付記5に記載の情報処理プログラム。
【0087】
(付記7)
走行中と判定されたフレームについて、さらに、フレーム内でのオプティカルフローの角度の分布に基づいて、前記移動体が前進若しくは後進中か、又は旋回中かを判定する付記5又は付記6に記載の情報処理プログラム。
【0088】
(付記8)
前記走行状態として、前記移動体が停止中であると判定された場合、停止状態の継続時間が第2閾値以下の前記動画像の区間を、前記危険運転が行われている区間として特定する付記1~付記7のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【0089】
(付記9)
前記操作状態を判定する処理は、前記動画像の各フレームから前記可動部を示す第1領域を検出し、検出した前記第1領域におけるオプティカルフローと、フレーム全体におけるオプティカルフローとの差と第3閾値との比較、及び、前記動画像の各フレームから、前記可動部又は前記可動部に取り付けたマーカの特定の色を示す第2領域を検出し、前記第2領域のフレーム間での変動量と第4閾値との比較の少なくとも一方に基づいて、フレーム毎に前記可動部を操作中か停止中かを判定することを含む付記1~付記8のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【0090】
(付記10)
前記走行状態及び前記操作状態の判定結果と、前記危険運転が行われている区間の特定結果とを、前記動画像に対応付けて表示することをさらに含む処理を前記コンピュータに実行させるための付記1~付記9のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【0091】
(付記11)
前記移動体への乗員の乗降状態をさらに判定し、
前記動画像において、前記乗員が前記移動体に乗車中であると判定された区間に対する、前記危険運転が行われている区間の割合を安全係数として算出し、
前記安全係数を、さらに前記動画像に対応付けて表示する
付記10に記載の情報処理プログラム。
【0092】
(付記12)
前記乗降状態を判定する処理は、前記動画像の各フレームから前記乗員を示す第3領域を検出し、各フレームにおける前記第3領域の位置と、前記動画像全体における前記第3領域の位置の平均との差と、第5閾値との比較に基づいて、フレーム毎に前記乗員が前記移動体に乗車中か、前記移動体から降車中かを判定することを含む付記11に記載の情報処理プログラム。
【0093】
(付記13)
前記動画像の再生速度を変更する処理は、前記乗員が前記移動体に乗車中の区間の再生速度を、前記乗員が前記移動体から降車中の区間の再生速度よりも速くすることを含む付記12に記載の情報処理プログラム。
【0094】
(付記14)
移動体本体に対して相対的に可動する可動部を含む移動体の運転状態を撮影した動画像から、前記移動体の走行状態、及び前記可動部の操作状態を判定する判定部と、
前記走行状態及び前記操作状態の判定結果に基づいて、前記動画像において、前記移動体の危険運転が行われているか否かを特定する特定部と、
を含む情報処理装置。
【0095】
(付記15)
前記危険運転が行われている区間に基づいて、前記動画像の再生速度を変更する生成部を含む付記14に記載の情報処理装置。
【0096】
(付記16)
前記生成部は、前記危険運転が行われていない区間の再生速度を、前記危険運転が行われている区間の再生速度よりも速くする付記15に記載の情報処理装置。
【0097】
(付記17)
前記特定部は、前記走行状態として、前記移動体が走行中であると判定され、かつ前記操作状態として、前記可動部を操作中であると判定されている前記動画像の区間を、前記危険運転が行われている区間として特定する付記15又は付記16に記載の情報処理装置。
【0098】
(付記18)
前記判定部は、前記走行状態を判定する処理は、前記動画像に含まれる各フレームから算出したオプティカルフローの大きさと第1閾値との比較に基づいて、フレーム毎に前記移動体が走行中か停止中かを判定することを含む付記15~付記17のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0099】
(付記19)
移動体本体に対して相対的に可動する可動部を含む移動体の運転状態を撮影した動画像から、前記移動体の走行状態、及び前記可動部の操作状態を判定し、
前記走行状態及び前記操作状態の判定結果に基づいて、前記動画像において、前記移動体の危険運転が行われているか否かを特定する、
ことを含む処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【0100】
(付記20)
移動体本体に対して相対的に可動する可動部を含む移動体の運転状態を撮影した動画像から、前記移動体の走行状態、及び前記可動部の操作状態を判定し、
前記走行状態及び前記操作状態の判定結果に基づいて、前記動画像において、前記移動体の危険運転が行われているか否かを特定する、
ことを含む処理をコンピュータに実行させるための情報処理プログラムを記憶した記憶媒体。
【符号の説明】
【0101】
10 情報処理装置
11 前処理部
12 走行判定部
13 操作判定部
14 乗降判定部
15 特定部
16 算出部
17 生成部
21 バックレストを示す領域
22 爪可動領域
23 バックレスト
24 マーカ
25 バウンディングボックス
27 フレーム
28 加工動画像
29 危険運転状態表示
30 判定結果表示
31 人物を示す領域表示
32 安全係数表示
33 倍速表示
40 コンピュータ
41 CPU
42 メモリ
43 記憶部
49 記憶媒体
50 情報処理プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19