IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ピラー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-メカニカルシール 図1
  • 特許-メカニカルシール 図2
  • 特許-メカニカルシール 図3
  • 特許-メカニカルシール 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】メカニカルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20241028BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20241028BHJP
   F16C 23/06 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
F16J15/34 L
F16C19/26
F16C23/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021078386
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2022172542
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 優記
(72)【発明者】
【氏名】藤永 繁行
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 優司
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0099984(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0312898(US,A1)
【文献】実開昭63-112672(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34-15/38
F16C 19/26
F16C 23/06-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転密封環を有し回転軸と一体回転可能である回転ユニットと、
前記回転密封環との間でシールするための静止密封環を有する静止ユニットと、
前記静止ユニットを支持する支持ユニットと、
を備え、
前記支持ユニットは、当該支持ユニットの軸線上に中心点を有する仮想球面に沿った形状の凹曲面を内周に有する外側リングを有し、
前記静止ユニットは、
前記外側リングに対する回転が規制されていると共に前記凹曲面に面接触する凸曲面を外周に有する球面リングと、
前記球面リングと一体であって前記静止密封環を保持する保持リングと、
前記回転軸の傾きに前記球面リングを追従させるために前記球面リングと一体であって当該球面リングと前記回転軸または前記回転ユニットとの間に介在する軸受ブロックと、
を有し、
前記支持ユニットは、前記外側リングを径方向に変位可能として支持するガイド溝が設けられている支持ブロックを有し、
前記軸受ブロックは、
複数のローラを有していて、前記ローラと当該ローラが転がり接触する軌道面との間で軸方向の変位を許容する転がり軸受と、
前記転がり軸受を保持すると共に前記球面リングと連結される軸受ケースと、を有する、
メカニカルシール。
【請求項2】
前記外側リングに対する前記球面リングの回転を規制する回り止め機構として、前記外側リングは、前記球面リング側に突出するピンを有し、
前記球面リングに、前記ピンの先部を収容する凹部が設けられている、請求項1に記載のメカニカルシール。
【請求項3】
前記支持ブロックに対する前記外側リングの回転を規制する第二回り止め機構として、前記外側リングは、前記支持ブロック側に突出する第二のピンを有し、
前記支持ブロックに、前記第二のピンの先部を収容する第二の凹部が設けられている、請求項に記載のメカニカルシール。
【請求項4】
前記ガイド溝、及び、当該ガイド溝と滑り接触する前記外側リングの摺動面の一方または双方に、摩擦係数を低減するためのコーティングが設けられている、請求項または請求項に記載のメカニカルシール。
【請求項5】
前記外側リングの前記凹曲面、及び、前記球面リングの前記凸曲面の一方または双方に、摩擦抵抗を低減するためのコーティングが設けられている、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【請求項6】
前記静止ユニットは、
前記球面リングと前記保持リングとの間をシールする第一環状シール部材と、
前記第一環状シール部材よりも摩擦抵抗が小さく前記球面リングと前記外側リングとの間をシールする第二環状シール部材と、
を有する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
各種回転機器において、その機器ケーシングと回転軸との間で、内部の流体をシールする装置として、回転軸と一体回転する回転密封環と、機器ケーシング側に設けられていて前記回転密封環との間でシールするための静止密封環とを備えるメカニカルシールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-138334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転機器では、例えば各部の組み立て精度が原因となって、機器ケーシングに対して回転軸が傾く場合がある。この場合、回転軸の傾きに合わせてメカニカルシールを回転機器に装着する必要がある。前記特許文献1に開示のメカニカルシールでは、静止ユニットが、内周に凹曲面を有する外側リングと、前記凹曲面に接触する凸曲面を外周に有する内側リングとを備えていて、固定状態となる外側リングに対して内側リングを傾けることが可能となる。そこで、メカニカルシールを回転機器に装着する際、回転軸の傾きに合わせて、内側リング及びその内側リングと一体である静止密封環を傾け、これにより、静止密封環と回転密封環との間のシール性能が確保される。
【0005】
前記特許文献1に開示のメカニカルシールでは、組み立て当初の傾斜角度を維持したまま回転軸が回転する場合、シール性能は維持される。しかし、回転軸が、回転しながら、その傾斜角度を変化させる場合、その回転軸に静止ユニットは追従できず、シール性能を維持することが困難になる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、回転軸が、回転しながら、その傾斜角度を変化させる場合であってもシール性能を維持することが可能となるメカニカルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のメカニカルシールは、回転密封環を有し回転軸と一体回転可能である回転ユニットと、前記回転密封環との間でシールするための静止密封環を有する静止ユニットと、前記静止ユニットを支持する支持ユニットと、を備え、前記支持ユニットは、当該支持ユニットの軸線上に中心点を有する仮想球面に沿った形状の凹曲面を内周に有する外側リングを有し、前記静止ユニットは、前記外側リングに対する回転が規制されていると共に前記凹曲面に面接触する凸曲面を外周に有する球面リングと、前記球面リングと一体であって前記静止密封環を保持する保持リングと、前記回転軸の傾きに前記球面リングを追従させるために前記球面リングと一体であって当該球面リングと前記回転軸または前記回転ユニットとの間に介在する軸受ブロックと、を有する。
【0008】
前記メカニカルシールによれば、回転軸が、回転しながら、その回転軸の軸線の傾斜角度が変化すると、軸受ブロックによって球面リングがその傾斜角度に追従し、球面リングの軸線の傾斜角度も変化する。球面リングの傾斜角度が変化しても、外側リングによって、その変化を前記凹曲面により許容して球面リングは支持される。球面リングの傾斜角度の変化に合わせて、その球面リングと一体である保持リングに保持される静止密封環も傾斜角度が変化する。その結果、回転軸が、回転しながら、その傾斜角度を変化させる場合であっても、回転密封環と静止密封環との相対的な姿勢変化が生じず、シール性能は維持される。
【0009】
(2)回転軸が振れ回る場合、回転軸は、傾斜角度を変化させると共に、径方向に変位(偏心)する。そこで、好ましくは、前記支持ユニットは、前記外側リングを径方向に変位可能として支持するガイド溝が設けられている支持ブロックを有する。
この構成によれば、回転軸が、傾斜角度を変化させると共に、径方向に変位する場合であっても、球面リングを支持する外側リングが径方向に変位することで、その回転軸に静止ユニットは追従する。その結果、回転密封環と静止密封環との相対的な姿勢変化が生じず、シール性能は維持される。
【0010】
(3)また、特にメカニカルシールよりも軸方向一方側または軸方向他方側の位置が基点となって傾斜角度が変化するように回転軸が傾く際、その回転軸及び回転ユニットと、静止ユニットとの間で軸方向の変位成分が生じる。そこで、好ましくは、前記軸受ブロックは、複数のローラを有していて、前記ローラと当該ローラが転がり接触する軌道面との間で軸方向の変位を許容する転がり軸受と、前記転がり軸受を保持すると共に前記球面リングと連結される軸受ケースと、を有する。
前記構成によれば、静止ユニットの軸受ブロックに対して、回転軸及び回転ユニットは回転自在であり、また、軸受ブロックと回転軸及び回転ユニットとの間で軸方向の変位が許容される。つまり、ローラと軌道面との間で軸方向について滑りが生じ、回転軸及び回転ユニットと、静止ユニットとの間で生じる軸方向の変位成分は、前記転がり軸受によって吸収される。その結果、メカニカルシールにおける回転軸の追従がスムーズとなる。
【0011】
(4)また、前記メカニカルシールは、前記外側リングに対する前記球面リングの回転を規制する回り止め機構として、前記外側リングは、前記球面リング側に突出するピンを有し、前記球面リングに、前記ピンの先部を収容する凹部が設けられている。
前記構成によれば、回転軸が回転ユニットと共に回転し、回転密封環から静止密封環が回転力を受けて、静止ユニットの球面リングが回転しようとしても、外側リングが有するピンの先部が、球面リングに設けられている凹部の内面に接触し、球面リングが回り止めされる。
【0012】
(5)また、前記(2)に記載のメカニカルシールの場合、外側リングがガイド溝によって径方向に変位可能であり、外側リングについても、回り止めが必要となる場合がある。そこで、前記支持ブロックに対する前記外側リングの回転を規制する第二回り止め機構として、前記外側リングは、前記支持ブロック側に突出する第二のピンを有し、前記支持ブロックに、前記第二のピンの先部を収容する第二の凹部が設けられている。
前記構成によれば、回転軸が回転ユニットと共に回転し、回転密封環から静止密封環が回転力を受けて、静止ユニットの球面リングに連れられて外側リングが回転しようとしても、外側リングが有する第二のピンの先部が、支持ブロックに設けられている第二の凹部の内面に接触し、外側リングが回り止めされる。
【0013】
(6)また、好ましくは、前記ガイド溝、及び、当該ガイド溝と滑り接触する前記外側リングの摺動面の一方または双方に、摩擦係数を低減するためのコーティングが設けられている。
前記構成によれば、支持ブロックのガイド溝に対する外側リングの径方向の変位が滑らかとなる。
【0014】
(7)また、好ましくは、前記外側リングの前記凹曲面、及び、前記球面リングの前記凸曲面の一方または双方に、摩擦抵抗を低減するためのコーティングが設けられている。
前記構成によれば、外側リングに対する球面リングの姿勢変化が滑らかとなる。
【0015】
(8)また、好ましくは、前記静止ユニットは、前記球面リングと前記保持リングとの間をシールする第一環状シール部材と、前記第一環状シール部材よりも摩擦抵抗が小さく前記球面リングと前記外側リングとの間をシールする第二環状シール部材と、を有する。
前記構成によれば、球面リングと保持リングとは摺動しないので、これらの間の摩擦抵抗を考慮する必要がなく、これらの間をシールするために、一般的なOリングなどの第一環状シール部材が用いられる。これに対して、球面リングと外側リングとは摺動するので、これらの間をシールするために、摩擦抵抗の小さいOリングなどの第二環状シール部材が用いられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回転軸が、回転しながら、その傾斜角度を変化させる場合であってもシール性能を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第一実施形態に係るメカニカルシールの断面図である。
図2】メカニカルシールの機外側の一部を拡大して示す断面図である。
図3】第二実施形態に係るメカニカルシールの断面図である。
図4】回転軸が振れ回りしている状態を示すメカニカルシールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔メカニカルシール全体について〕
図1は、第一実施形態に係るメカニカルシール10の断面図である。メカニカルシール10は、ポンプまたは撹拌機等の回転機器7に用いられる。回転機器7は、回転軸8と、その回転軸8を包囲する機器ケーシング9とを備える。メカニカルシール10は、回転軸8と機器ケーシング9との間において、回転機器7の内部の流体をシールする。回転軸8は、回転機器7が有する図外の軸受によって回転可能に支持されている。
【0019】
本開示の発明における方向について定義する。回転軸8の軸線Lに沿った方向及びその軸線Lに平行な方向を「軸方向」と定義する。その軸方向に関して、回転機器7の外部側(図1の左側)が軸方向一方側であり、これを「機外側」と称する。これに対して、回転機器7の内部側(図1の右側)が軸方向他方側であり、これを「機内側」と称する。前記軸線Lに直交する方向を「径方向」と定義する。回転軸8の軸線Lを中心とする円に沿った方向を「周方向」と定義する。つまり、回転軸8の回転方向が周方向となる。
【0020】
図1では、回転軸8の軸線Lが、機器ケーシング9の軸線と一致した状態を示している。後述するが、回転軸8は回転しながらその軸線Lの傾斜角度が変化する。本開示の発明が備える各構成についての方向は、特に説明しない限り、回転軸8の軸線Lが、機器ケーシング9の軸線と一致した状態として定義される。また、この一致した状態を基準状態と称する。
【0021】
メカニカルシール10は、機内側の被密封流体(溶剤、水又は油等)が機外側へ漏洩するのを防ぐ。そのために、メカニカルシール10は、一つの回転密封環16と、二つの静止密封環17-1,17-2とを備える。回転密封環16と第一静止密封環17-1との間、及び、回転密封環16と第二静止密封環17-2との間それぞれが、流体の漏洩を防ぐシール部となる。第一実施形態に係るメカニカルシール10は、二つのシール部を有するダブルシール型である。
【0022】
回転密封環16の機外側の第一シール面16aと第一静止密封環17-1のシール面17aとが対向する(接触する)シール部の径方向内側及び軸方向一方側が、機外側の領域となる。回転密封環16の機内側の第二シール面16bと第二静止密封環17-2のシール面17bとが対向する(接触する)シール部の径方向内側及び軸方向他方側が、機内側の領域となる。回転密封環16と二つの静止密封環17-1,17-2それぞれとの間のシール部の径方向外側の空間が、例えばクエンチ用のオイルなどの流体が充填される第三の領域K3となる。
【0023】
メカニカルシール10は、回転軸8と一体回転可能であり全体として環状または筒状である回転ユニット11と、回転ユニット11の径方向外側に設けられ全体として環状または筒状である静止ユニット12と、静止ユニット12を支持する全体として環状または筒状である支持ユニット13とを備える。
【0024】
〔回転ユニット11について〕
回転ユニット11は、環状である回転密封環16、スリーブ31、及び、ストッパリング32を有する。回転密封環16は、機外側に環状の第一シール面16aを有し、機内側に環状の第二シール面16bを有する。スリーブ31は、筒状の部材であり、回転軸8に外嵌して設けられていて、セットスクリュ36により固定される。回転密封環16は、スリーブ31の一部に外嵌して取り付けられている。
【0025】
ストッパリング32は、筒状の部材であり、スリーブ31の機内側に固定される。ストッパリング32の内周に雌ねじが形成されていて、スリーブ31の外周に雄ねじが形成されていて、これらが螺合することでストッパリング32はスリーブ31に固定される。ストッパリング32は、スリーブ31の一部との間で回転密封環16を軸方向について挟み、回転密封環16が機内側に脱落するのを防ぐ。スリーブ31の前記一部と回転密封環16との間には、樹脂製のクッションシート51が介在する。スリーブ31は、回転密封環16側に突出するピン33を有する。回転密封環16の内周に孔が設けられている。ピン33がその孔に嵌ることで、回転密封環16は、スリーブ31及びストッパリング32と共に回転軸8と一体回転する。スリーブ31と回転軸8との間はOリング34によってシールされている。スリーブ31と回転密封環16との間はOリング35によってシールされている。
【0026】
〔静止ユニット12について〕
静止ユニット12は、回転密封環16との間でシールするための第一静止密封環17-1及び第二静止密封環17-2を有する。第一静止密封環17-1は、機内側に環状の第一シール面17aを有する。第二静止密封環17-2は、機外側に環状の第二シール面17bを有する。静止ユニット12は、二つの静止密封環17-1,17-2の他に、球面リング18と、球面リング18と一体であって第一静止密封環17-1を保持する環状である第一保持リング19-1と、球面リング18と一体であって第二静止密封環17-2を保持する環状の第二保持リング19-2と、球面リング18と一体である軸受ブロック21とを有する。
【0027】
図1に示す形態では、球面リング18は二分割構造を有する。つまり、球面リング18は、機外側の第一球面リング18-1と、機内側の第二球面リング18-2とを有する。第一球面リング18-1と第二球面リング18-2とは、ボルト22によって連結されていて、一体となる。第二球面リング18-2に、前記第三の領域K3の一部を形成するための径方向に貫通する流路23が設けられている。
【0028】
球面リング18は、その外周に、球面リング18(静止ユニット12)の軸線上に中心点を有する仮想球面に沿った形状の凸曲面24を有する。前記基準状態で、球面リング18の軸線は、回転軸8の軸線Lと一致する。凸曲面24は、後述する外側リング60の凹曲面61に面接触する。凸曲面24の一部に、径方向外側に開口する孔により構成されている凹部25が設けられている。
【0029】
後に説明する第一回り止め機構71(図2参照)が有するピン73の先部73cが、凹部25に収容された状態にある。本実施形態では、凹部25に、転がり軸受29が取り付けられている。ピン73は、凹部25の転がり軸受29の内周側に収容された状態にある。この構成により、外側リング60に対する、球面リング18の回転が規制される。
【0030】
図1において、第一保持リング19-1は、第一球面リング18-1の内周側に設けられている。第一保持リング19-1の内周に凹溝が形成されていて、その凹溝に第一静止密封環17-1が密着嵌合して取り付けられている。第一球面リング18-1に周方向に沿って複数の連結ボルト26が取り付けられている。第一保持リング19-1に、連結ボルト26を貫通させる孔が設けられている。この構成により、第一保持リング19-1は、第一球面リング18-1との関係で、相対回転不能であるが軸方向に変位可能となって、取り付けられる。第一保持リング19-1と第一球面リング18-1との間はOリング38-1によってシールされている。
【0031】
第二保持リング19-2は、第二球面リング18-2の内周側に設けられている。第二保持リング19-2の内周に凹溝が形成されていて、その凹溝に第二静止密封環17-2が密着嵌合して取り付けられている。第二球面リング18-2に周方向に沿って複数の有底孔27が設けられている。有底孔27に弾性部材(圧縮コイルばね28)が設けられている。圧縮コイルばね28の機外側の端部は、第二保持リング19-2に接触している。圧縮コイルばね28の弾性復元力によって、第二静止密封環17-2は回転密封環16に押し付けられ、回転密封環16は第一静止密封環17-1に押し付けられる。回転軸8が回転ユニット11と共に回転すると、回転密封環16は、静止密封環17-1,17-2それぞれに対して滑り接触する。第二保持リング19-2と第二球面リング18-2との間はOリング38-2によってシールされている。
【0032】
〔軸受ブロック21について〕
図2は、図1に示すメカニカルシール10の機外側の一部を拡大して示す断面図である。軸受ブロック21は、転がり軸受43と、転がり軸受43を保持する筒状の軸受ケース41とを有する。軸受ケース41は、ボルト39によって球面リング18の機外側に連結されている。軸受ケース41の内周側であって転がり軸受43の軸方向両側に、異物の侵入を防ぐシール42が取り付けられている。軸受ケース41と第一球面リング18-1との間はOリング37によってシールされている。
【0033】
転がり軸受43は、外輪44と、周方向に並ぶ複数のローラ45とを有し、本実施形態の転がり軸受43はニードル軸受である。外輪44は、軸受ケース41に嵌合して固定されている。外輪44は、その内周側にローラ45が転がり接触する外軌道面46と、その外軌道面46の軸方向両側に径方向内方に突出する一対の鍔部47,47とを有する。一対の鍔部47,47によって、ローラ45は軸方向について位置が規制される(つまり、軸方向の変位が制限される)。回転軸8に対するメカニカルシール10の組み立て完了状態で、ローラ45には径方向の荷重(与圧)が付与されている。
【0034】
図2に示す形態では、転がり軸受43は、内輪を有しておらず、スリーブ31の外周面の一部が、ローラ45が転がり接触する内軌道面48となる。内輪として機能するスリーブ31の一部は、ローラ45の軸方向両側に鍔部を有しておらず、内軌道面48と、その内軌道面48が軸方向両側それぞれに延長された円筒面49とを有する。この構成により、ローラ45と内軌道面48との間で軸方向について滑りが生じる構成が得られる。つまり、ローラ45と、内軌道面48との間で軸方向の変位が許容される。
【0035】
このように、軸受ブロック21は、球面リング18(第一球面リング18-1)と、回転ユニット11(スリーブ31)との間に介在する。このため、回転軸8及び回転ユニット11の傾斜角度が変化すると、軸受ブロック21もその変化に追従するようにして傾斜角度が変化し、軸受ブロック21は、球面リング18をその傾斜角度で傾斜させる。つまり、軸受ブロック21は、球面リング18とボルト39によって連結されていて一体であり、回転軸8の傾きに球面リング18を追従させる。
【0036】
なお、図示しないが、転がり軸受43のローラ45は、回転軸8の外周面の一部を転がり接触してもよい。この場合、軸受ブロック21は、球面リング18(第一球面リング18-1)と、回転軸8との間に介在する。
また、図示しないが、転がり軸受43は、ローラ45が転がり接触する内輪を有していてもよい。この場合、その内輪は、回転ユニット11に含まれる。
これらの場合においても、軸受ブロック21は、回転軸8の傾きに球面リング18を追従させる。また、ローラ45と、内軌道面との間で軸方向の変位が許容される。
【0037】
〔支持ユニット13について〕
図1において、支持ユニット13は、静止ユニット12を支持する。そのために、支持ユニット13は、外側リング60と、外側リング60を支持する支持ブロック62とを有する。外側リング60は、その内周側に、球面リング18の凸曲面24に面接触する凹曲面61を有する。凹曲面61は、支持ユニット13の軸線上に中心点を有する仮想球面に沿った形状である。前記基準状態で、支持ユニット13の軸線は、回転軸8の軸線Lと一致する。
【0038】
図1に示す形態では、外側リング60は、第一球面リング18-1の凸曲面24に面接触する機外側の第一外側リング60-1と、第二球面リング18-2の凸曲面24に面接触する機内側の第二外側リング60-2とを有する。第一外側リング60-1と第二外側リング60-2とは連結されておらず、後述する支持ブロック62のガイド溝65-1、65-2において、それぞれが独立して保持されている。第一外側リング60-1と第二外側リング60-2との間に、前記第三の領域K3の一部が形成されている。
【0039】
後に説明するが、回転軸8が傾斜角度を変えると、凸曲面24は、凹曲面61に対して滑り接触する。そこで、凹曲面61に、摩擦係数を低減するためのコーティング81が設けられている。なお、凸曲面24にコーティング81が設けられていてもよい。つまり、凹曲面61及び凸曲面24の一方または双方に、コーティング81が設けられていればよい。
【0040】
支持ブロック62は、機内側から機外側に向かって複数の環状ブロック62aを有し、複数の環状ブロック62aはボルト63によって一体となるように連結されている。支持ブロック62は、取り付けボルト59によって機器ケーシング9に固定されている。支持ブロック62の軸方向の中央に、前記第三の領域K3の一部を構成する貫通孔64が設けられている。貫通孔64に、図示しないが、クエンチ用のオイルなどの流体が流れる配管が接続される。
【0041】
支持ブロック62の機外側に第一ガイド溝65-1が設けられていて、支持ブロック62の機内側に第二ガイド溝65-2が設けられている。第一ガイド溝65-1及び第二ガイド溝65-2それぞれは、径方向内側に開口する凹周溝により構成されている。第一ガイド溝65-1に、第一外側リング60-1が径方向に変位可能となって支持されている。第二ガイド溝65-2に、第二外側リング60-2が径方向に変位可能となって支持されている。
【0042】
第一外側リング60-1は、第一ガイド溝65-1に対して滑り接触する。第二外側リング60-2は、第二ガイド溝65-2に対して滑り接触する。そこで、第一ガイド溝65-1に対する第一外側リング60-1の摺動面に、摩擦係数を低減するためのコーティング80が設けられている。また、第二ガイド溝65-2に対する第二外側リング60-2の摺動面に、摩擦係数を低減するためのコーティング80が設けられている。前記のとおり、第三の領域K3では、圧力が機内側及び機外側よりも高くなる。そこで、図1に示すように、第三の領域K3から離れている側の摺動面にのみ、コーティング80が設けられている。
【0043】
なお、第一ガイド溝65-1及び第二ガイド溝65-2側にコーティング80が設けられていてもよい。つまり、ガイド溝65-1,65-2、及び、ガイド溝65-1,65-2と滑り接触する外側リング60-1,60-2の摺動面の一方または双方に、コーティング80が設けられていればよい。
【0044】
第一外側リング60-1と第一ガイド溝65-1との間はOリング66-1によってシールされている。第一外側リング60-1と第一球面リング18-1との間はOリング67-1によってシールされている。第二外側リング60-2と第二ガイド溝65-2との間はOリング66-2によってシールされている。第二外側リング60-2と第二球面リング18-2との間はOリング67-2によってシールされている。
【0045】
〔静止ユニット12の回り止め機構について〕
回転軸8が回転ユニット11と共に回転すると、回転密封環16は、静止密封環17-1,17-2それぞれに対して滑り接触(摺動)する。このため、静止密封環17-1,17-2を有する静止ユニット12に回転力が作用する。そこで、メカニカルシール10は、静止ユニット12の回転を規制する回り止め機構を備える。
【0046】
具体的には、図2において、外側リング60(第一外側リング60-1)に対して、球面リング18(第一球面リング18-1)が回転することを規制する第一回り止め機構71を備える。メカニカルシール10は、更に、支持ブロック62に対する外側リング60(第一外側リング60-1)の回転を規制する第二回り止め機構72を備える。
【0047】
第一回り止め機構71として、外側リング60は、球面リング18側に突出するピン(第一のピン)73を有する。ピン73は、外周に雄ねじを有する本体部73aと、本体部73aから突出する軸部73bとを有する。本体部73aの雄ねじが、外側リング60に形成されているねじ穴に取り付けられる。軸部73bは、球形状の先部73cを有する。
【0048】
前記のとおり、球面リング18に凹部25が設けられている。凹部25は、球形状の先部73cの直径よりも拡大した内径を有する孔により構成されている。凹部25はピン73の先部73cを収容した状態となる。本実施形態では、凹部25に転がり軸受29が取り付けられている。転がり軸受29は、球形状の先部73cの直径よりも拡大した内径を有していて、転がり軸受29は、ピン73の先部73cを収容した状態となる。ピン73の先部73cが、転がり軸受29の内周面に接触可能である。なお、転がり軸受29は省略されていてもよく、この場合、ピン73の先部73cは、凹部25の内周面に接触可能である。ピン73が凹部25に取り付けられている転がり軸受29または凹部25に接触することで、外側リング60に対する球面リング18の回転が規制される。
【0049】
第二回り止め機構72として、外側リング60は、支持ブロック62側に突出する第二のピン74を有する。ピン74は、外周に雄ねじを有する本体部74aと、本体部74aから突出する軸部74bとを有する。本体部74aの雄ねじが、外側リング60に形成されているねじ穴に取り付けられる。軸部74bの先部74cに転がり軸受75が取り付けられている。
【0050】
前記のとおり、支持ブロック62は、複数の環状ブロック62aを有していて、そのうち、機外側の環状ブロック62aは、第一ガイド溝65-1を機外側から閉じる蓋部材として機能する。その機外側の環状ブロック62aに、第二の凹部76が設けられている。凹部76は、ピン74の先部74cの外径よりも、更には、転がり軸受75の外径よりも拡大した内径を有する孔により構成されている。凹部76はピン74の先部74c、更には、転がり軸受75を収容した状態となる。ピン74の先部74cに取り付けられている転がり軸受75が、凹部76の内周面に接触可能である。なお、転がり軸受75は省略されていてもよく、この場合、ピン74の先部74cが、凹部76の内周面に接触可能である。ピン74またはピン74に取り付けられている転がり軸受75が、凹部25に接触することで、支持ブロック62に対する外側リング60の回転が規制される。
【0051】
なお、第一回り止め機構71において、ピン73の先部に、第二回り止め機構72のように転がり軸受が設けられていてもよく、また、第二回り止め機構72において、第二の凹部76に、第一回り止め機構71のように転がり軸受が設けられていてもよい。
【0052】
〔第一実施形態のメカニカルシール10について〕
図1に示す第一実施形態に係るメカニカルシール10は、一つの回転密封環16と二つの静止密封環17-1,17-2とを有するダブルシール型である。静止密封環が二つであることにあわせて、球面リング18は、機外側の第一球面リング18-1と、機内側の第二球面リング18-2とを有していて、外側リング60は、機外側の第一外側リング60-1と、機内側の第二外側リング60-2とを有する。
【0053】
〔第二実施形態のメカニカルシール10について〕
【0054】
図3は、第二実施形態に係るメカニカルシール10の断面図である。図3に示すメカニカルシール10は、一つの回転密封環16と一つの静止密封環17-1とを有するシングルシール型である。静止密封環17-1が一つであることにあわせて、メカニカルシール10は、機外側に、一つの第一球面リング18-1と、一つの外側リング60-1とを有する。図1に示す第一実施形態と比較して、図3に示す第二実施形態では、機内側の第二球面リング18-2、機内側の第二外側リング60-2、及び、第三の領域K3が省略されていて、その他については、ほぼ同じである。第一実施形態と同じ構成については、図3に示す第二実施形態においても、同じ符号を付している。なお、第二実施形態では、静止密封環17-1と回転密封環16との間に軸方向の付勢力を付与する圧縮コイルばねは、図示しないが、保持リング19-1に設けられている。
【0055】
〔各実施形態のメカニカルシール10について〕
以上のように、第一実施形態及び第二実施形態それぞれのメカニカルシール10は、回転密封環16を有し回転軸8と一体回転可能である回転ユニット11と、回転密封環16との間でシールするための静止密封環17-1(17-2)を有する静止ユニット12と、静止ユニット12を支持する支持ユニット13とを備える。支持ユニット13は、外側リング60を有していて、外側リング60は、支持ユニット13の軸線上に中心点を有する仮想球面に沿った形状の凹曲面61を内周に有する。
【0056】
静止ユニット12は、外側リング60に対する回転が規制されている球面リング18と、球面リング18と一体である保持リング19-1(19-2)と、球面リング18と一体である軸受ブロック21とを有する。球面リング18は、凹曲面61に面接触する凸曲面24を外周に有する。保持リング19-1(19-2)は、静止密封環17-1(17-2)を保持する。軸受ブロック21は、球面リング18と回転ユニット11(または回転軸8)との間に介在していて、回転軸8の傾きに球面リング18を追従させる。
【0057】
図1及び図3は、回転軸8の軸線Lが、機器ケーシング9の軸線と一致した基準状態を示す。図4は、回転軸8が振れ回りしている状態を示し、基準状態から、回転軸8の軸線Lが傾斜し、更に、その軸線Lが径方向に変位する(偏心する)。図4では、基準状態からの軸線Lの傾斜角度が「θ」で示され、基準状態からの軸線Lの偏心量が「E」で示されている。回転軸8の軸線Lが傾斜角度θとなると、回転ユニット11に含まれる回転密封環16の軸線の傾斜角度も「θ」となる。
【0058】
前記各実施形態のメカニカルシール10によれば、回転軸8が、回転しながら、その回転軸8の軸線Lの傾斜角度θが変化すると、軸受ブロック21によって球面リング18がその傾斜角度θに追従し、球面リング18の軸線の傾斜角度も変化する。球面リング18の傾斜角度が変化しても、外側リング60によって、その変化を凹曲面61により許容して球面リング18は支持される。つまり、球面リング18の傾斜角度が「θ」となる。
球面リング18の傾斜角度の変化に合わせて、その球面リング18と一体である保持リング19-1(19-2)に保持される静止密封環17-1(17-2)も傾斜角度が変化する。つまり、静止密封環17-1(17-2)の傾斜角度が「θ」となる。
その結果、回転軸8が、回転しながら、その傾斜角度θを変化させる場合であっても、回転密封環16と静止密封環17-1(17-2)との相対的な姿勢変化が生じず、シール性能は維持される。
【0059】
前記のとおり、回転軸8が振れ回る場合、回転軸8は、傾斜角度θを変化させると共に、図4に示すように、径方向に変位(偏心)する。
前記各実施形態のメカニカルシール10では、支持ユニット13が有する支持ブロック62に、外側リング60を径方向に変位可能として支持するガイド溝65-1(65-2)が設けられている。このため、回転軸8が、傾斜角度θを変化させると共に、径方向に変位する場合であっても、球面リング18を支持する外側リング60が径方向に変位することで、その回転軸8に静止ユニット12は追従する。その結果、回転密封環16と静止密封環17-1(17-2)との相対的な姿勢変化が生じず、シール性能は維持される。
【0060】
図4に示す例では、メカニカルシール10よりも機外側の位置が基点となって傾斜角度θが変化するように回転軸8が傾く。この場合、回転軸8及び回転ユニット11と、静止ユニット12との間で軸方向の変位成分が生じる。そこで、前記各実施形態では、静止ユニット12を回転ユニット11に追従させるための軸受ブロック21は、転がり軸受43と、転がり軸受43を保持すると共に球面リング18と連結される軸受ケース41とを有する。転がり軸受43は、複数のローラ45を有していて、ローラ45と、ローラ45が転がり接触する軌道面(内軌道面48)との間で軸方向の変位を許容する構成を有する。
【0061】
そのための構成として、図2を例として説明すると、前記のとおり、転がり軸受43の外輪44は、ローラ45の軸方向両側に鍔部47を有する。これに対して、内輪となるスリーブ31は、ローラ45の軸方向両側に鍔部を有していない。これにより、ローラ45と内軌道面48との間で軸方向について滑りが生じる構成が得られ、ローラ45と内軌道面48との間で軸方向の変位が許容される。
【0062】
このため、回転軸8及び回転ユニット11と、静止ユニット12との間で生じる軸方向の変位成分は、転がり軸受43によって吸収される。その結果、メカニカルシール10における回転軸8の追従がスムーズとなる。なお、ローラ45は、内軌道面48との間で軸方向の滑りを許容する場合について説明したが、外輪44側において軸方向の滑りを許容するように構成してもよい。
【0063】
前記各実施形態のメカニカルシール10は、前記のとおり、外側リング60に対する球面リング18の回転を規制する第一回り止め機構71を備える。回転軸8が回転ユニット11と共に回転し、回転密封環16から静止密封環17-1(17-2)が回転力を受けて、球面リング18が回転しようとしても、外側リング60が有するピン73の先部73cが、球面リング18に設けられている凹部25(凹部25に取り付けられている転がり軸受29)の内面に接触し、球面リング18が回り止めされる。
凹部25(転がり軸受29の内周側の空間)は、ピン73の先部73cよりも拡大しているので、外側リング60に対する球面リング18の傾斜角度の変化が妨げられない。
【0064】
更に、前記各実施形態のメカニカルシール10は、前記のとおり、支持ブロック62に対する外側リング60の回転を規制する第二回り止め機構72を備える。回転軸8が回転ユニット11と共に回転し、回転密封環16から静止密封環17-1(17-2)が回転力を受けて、静止ユニット12の球面リング18に連れられて外側リング60が回転しようとしても、外側リング60が有する第二のピン74の先部(転がり軸受75)が、支持ブロック62に設けられている第二の凹部76の内面に接触し、外側リング60が回り止めされる。
第二の凹部76は、第二のピン74の先部(転がり軸受75)よりも拡大しているので、支持ブロック62に対する外側リング60の径方向の変位が妨げられない。
【0065】
第一回り止め機構71及び第二回り止め機構72において、転がり軸受29,75が設けられている。第一のピン73は凹部25の内面のうち任意の位置で接触し、また、第二のピン74は第二の凹部76の任意の位置で接触する。転がり軸受29,75によれば、ピン73,74がどの位置で相手部材に接触しても、ピン73,74と相手部材との間で滑らかに相対位置が変更され、相互が適切な姿勢となり、回転が規制される。
【0066】
また、前記のとおり、外側リング60の凹曲面61に、摩擦抵抗を低減するためのコーティング81が設けられている。このため、外側リング60に対する球面リング18の姿勢変化が滑らかとなる。
また、前記のとおり、ガイド溝65-1(65-2)と滑り接触する外側リング60の摺動面に、摩擦係数を低減するためのコーティング80が設けられている。このため、ガイド溝65-1(65-2)に対する外側リング60の径方向の変位が滑らかとなる。
【0067】
更に、前記各実施形態では、メカニカルシール10は、前記のとおり、複数のOリングを有するが、複数種類(二種類)のOリングが用いられている。複数種類のOリングのうち、一方は、汎用性の高いゴムからなる第一環状シール部材(Oリング)であり、他方は、その第一環状シール部材(Oリング)よりも摩擦抵抗が小さい第二環状シール部材(Oリング)である。なお、第二環状シール部材の方が一般的に高価である。
【0068】
具体的に説明すると、球面リング18と外側リング60との間をシールするOリング67-1(67-2)は、前記第二環状シール部材に該当する。また、外側リング60とガイド溝65-1(65-2)との間をシールするOリング66-1(66-2,66-2)は、前記第二環状シール部材に該当する。つまり、回転軸8が傾斜角度θを変更したり、径方向に変位したりする場合に摺動する面に用いられるOリングは、前記第二環状シール部材に該当する。
これに対して、回転軸8が傾斜角度θを変更したり、径方向に変位しても、摺動しない面に用いられるOリングは、前記第一環状シール部材に該当する。例えば、球面リング18と保持リング19-1(19-2)との間をシールするOリング38-1(38-2)は、前記第一環状シール部材に該当する。
【0069】
このように、二種類のOリングが用いられることで、次の作用効果を奏することが可能とである。
回転軸8が傾斜角度θを変更したり、径方向に変位したりしても、例えば、球面リング18と保持リング19-1(19-2)とは摺動しないので、これらの間の摩擦抵抗を考慮する必要がなく、これらの間をシールするために、一般的なOリングなどの第一環状シール部材が用いられる。これに対して、球面リング18と外側リング60とは摺動するので、また、外側リング60とガイド溝65-1(65-2)とは摺動するので、これらの間をシールするために、摩擦抵抗の小さいOリングなどの第二環状シール部材が用いられる。これにより、例えば、外側リング60に対する球面リング18の姿勢変化が滑らかとなり、回転軸8の傾きに静止ユニット12は追従しやすくなる。
【0070】
以上より、前記各実施形態に係るメカニカルシール10によれば、回転する回転軸8が姿勢を変化させても、回転密封環16と静止密封環17-1(17-2)シール性能を維持することが可能となる。
【0071】
〔その他〕
前記実施形態において、回転ユニット11は、回転密封環16を有していれば、図示する形態以外であってもよく、また、静止ユニット12は、静止密封環17を有していれば、図示する形態以外であってもよい。
【0072】
前記実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、前記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0073】
8 回転軸
10 メカニカルシール
11 回転ユニット
12 静止ユニット
13 支持ユニット
16 回転密封環
17-1,17-2 静止密封環
18 球面リング
18-1 第一球面リング
18-2 第二球面リング
19-1 第一保持リング
19-2 第二保持リング
21 軸受ブロック
24 凸曲面
25 凹部
37 Oリング(第一環状シール部材)
38-1 Oリング(第一環状シール部材)
38-2 Oリング(第一環状シール部材)
41 軸受ケース
43 転がり軸受
45 ローラ
48 内軌道面(軌道面)
60 外側リング
60-1 第一外側リング
60-2 第二外側リング
61 凹曲面
62 支持ブロック
65-1 第一ガイド溝
65-2 第二ガイド溝
66-1 Oリング(第二環状シール部材)
66-2 Oリング(第二環状シール部材)
67-1 Oリング(第二環状シール部材)
67-2 Oリング(第二環状シール部材)
71 回り止め機構
72 第二回り止め機構
73 ピン
73c 先部
74 第二のピン
74c 先部
76 第二の凹部
80 コーティング
81 コーティング
L 軸線
図1
図2
図3
図4