(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】負荷試験装置、荷重検出ユニット、および負荷試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/24 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
G01N3/24
(21)【出願番号】P 2021098287
(22)【出願日】2021-06-11
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】和氣 知貴
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-045100(JP,A)
【文献】特開平10-073521(JP,A)
【文献】特開平09-054027(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111272583(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体の上面に垂直荷重を加えながら前記試験体の下面を水平方向に変位させた際における前記試験体の水平方向の負荷荷重を測定する負荷試験装置であって、
前記試験体が載置され、水平方向アクチュエータにより水平方向に移動可能な載置テーブルと、
垂直方向アクチュエータにより垂直方向に移動して、前記試験体を加圧する荷重検出ユニットと、を備え、
前記荷重検出ユニットは、
前記試験体の上面と当接する第1加圧板と、
前記第1加圧板上に載置された第1支承と、
前記第1支承上に配置され、前記第1加圧板に対して水平方向に移動可能な第2加圧板と、
前記第2加圧板上に載置された第2支承と、
前記第2支承上に配置され、前記第2加圧板に対して前記第1加圧板と同方向に同量だけ移動するように前記第1加圧板に連結された第3加圧板と、
前記第3加圧板上に載置された第3支承と、
前記第3支承上に配置され、前記垂直方向アクチュエータにより垂直方向に移動可能な荷重伝達フレームと、
前記荷重伝達フレームと前記第1加圧板および前記第3加圧板との間に配置され、前記第1加圧板および前記第3加圧板に加わる水平方向の負荷荷重を測定する第1ロードセルと、
前記荷重伝達フレームと前記第2加圧板との間に配置され、前記第2加圧板に加わる水平方向の負荷荷重を測定する第2ロードセルと、を有する
ことを特徴とする負荷試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷試験装置であって、
前記第1支承、前記第2支承、および前記第3支承は、同じせん断ばね定数を有するゴム支承である
ことを特徴とする負荷試験装置。
【請求項3】
請求項1に記載の負荷試験装置であって、
前記第1支承、前記第2支承、および前記第3支承は、同じ摩擦係数を有するローラ支承である
ことを特徴とする負荷試験装置。
【請求項4】
試験体の水平方向の負荷荷重を測定するために用いられる荷重検出ユニットであって、
前記試験体の上面と当接する第1加圧板と、
前記第1加圧板上に載置された第1支承と、
前記第1支承上に配置され、前記第1加圧板に対して水平方向に移動可能な第2加圧板と、
前記第2加圧板上に載置された第2支承と、
前記第2支承上に配置され、前記第2加圧板に対して前記第1加圧板と同方向に同量だけ移動するように前記第1加圧板に連結された第3加圧板と、
前記第3加圧板上に載置された第3支承と、
前記第3支承上に配置され、垂直方向に移動可能な荷重伝達フレームと、
前記荷重伝達フレームと前記第1加圧板および前記第3加圧板との間に配置され、前記第1加圧板および前記第3加圧板に加わる水平方向の負荷荷重を測定する第1ロードセルと、
前記荷重伝達フレームと前記第2加圧板との間に配置され、前記第2加圧板に加わる水平方向の負荷荷重を測定する第2ロードセルと、を有する
ことを特徴とする荷重検出ユニット。
【請求項5】
負荷試験装置を用いて試験体の水平方向の負荷荷重を測定する負荷試験方法であって、
前記負荷試験装置は、
前記試験体が載置され、水平方向アクチュエータにより水平方向に移動可能な載置テーブルと、
垂直方向アクチュエータにより垂直方向に移動して、前記試験体を加圧する荷重検出ユニットと、を備え、
前記荷重検出ユニットは、
前記試験体の上面と当接する第1加圧板と、
前記第1加圧板上に載置された第1支承と、
前記第1支承上に配置され、前記第1加圧板に対して水平方向に移動可能な第2加圧板と、
前記第2加圧板上に載置された第2支承と、
前記第2支承上に配置され、前記第2加圧板に対して前記第1加圧板と同方向に同量だけ移動するように前記第1加圧板に連結された第3加圧板と、
前記第3加圧板上に載置された第3支承と、
前記第3支承上に配置され、前記垂直方向アクチュエータにより垂直方向に移動可能な荷重伝達フレームと、
前記荷重伝達フレームと前記第1加圧板および前記第3加圧板との間に配置され、前記第1加圧板および前記第3加圧板に加わる水平方向の負荷荷重を測定する第1ロードセルと、
前記荷重伝達フレームと前記第2加圧板との間に配置され、前記第2加圧板に加わる水平方向の負荷荷重を測定する第2ロードセルと、を有し、
前記垂直方向アクチュエータによって前記荷重伝達フレームを垂直方向に移動させることにより、前記試験体の上面に垂直荷重を加えながら、前記水平方向アクチュエータによって前記載置テーブルを水平方向に移動させることにより、前記試験体の下面を水平方向に変位させて、前記第1ロードセルおよび前記第2ロードセルの測定値を取得し、
前記取得した前記第1ロードセルおよび前記第2ロードセルの測定値を用いて、前記試験体の水平方向の負荷荷重を算出する
ことを特徴とする負荷試験方法。
【請求項6】
請求項5に記載の負荷試験方法であって、
前記第1支承、前記第2支承、および前記第3支承は、同じせん断ばね定数を有するゴム支承であり、
前記第1ロードセルの測定値をF1、前記第2ロードセルの測定値をF2、前記第1ロードセルの剛性をk1、および、前記第2ロードセルの剛性をk2として、前記試験体の水平方向の負荷荷重Fhを、
【数10】
により算出する
ことを特徴とする負荷試験方法。
【請求項7】
請求項5に記載の負荷試験方法であって、
前記第1支承、前記第2支承、および前記第3支承は、同じ摩擦係数を有するローラ支承であり、
前記第1ロードセルの測定値をF1、および前記第2ロードセルの測定値をF2として、前記試験体の水平方向の負荷荷重Fhを、
【数11】
により算出する
ことを特徴とする負荷試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ゴム支承等の試験体の水平方向の負荷荷重を測定する負荷試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層ゴム支承等の試験体の上面に垂直荷重を加えながら試験体の下面を水平方向に変位させた際における試験体の水平方向の負荷荷重(水平抗力)を測定する負荷試験装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の負荷試験装置は、試験体が載置され、水平方向アクチュエータにより水平方向に移動可能な可動ベースと、試験体の上面と当接する第1加圧部材と、第1加圧部材上に載置された積層ゴムと、積層ゴム上に配置され、垂直方向アクチュエータにより垂直方向に移動可能な第2加圧部材と、第1加圧部材に加わる水平方向の負荷荷重を測定するロードセルと、を備えている。
【0004】
特許文献1に記載の負荷試験装置において、ロードセルにより測定される、第1加圧部材に加わる水平方向の負荷荷重は、試験体および積層ゴムそれぞれの水平方向の負荷荷重の合計値であり、可動ベースの水平方向への移動手段(ローラ支承、リニアガイド等)の摩擦力は含まれない。また、積層ゴムは、垂直剛性が高くて水平剛性が低く、その水平方向の負荷荷重は水平方向の変位量に比例する。このため、可動ベースの水平方向の移動量が極めて小さい場合、ロードセルの測定値に含まれる積層ゴムの水平方向の負荷荷重を小さくすることができる。したがって、特許文献1に記載の負荷試験装置によれば、試験体の水平方向の負荷荷重を高精度に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、積層ゴムは、垂直剛性が高くて水平剛性が低く、その水平方向の負荷荷重は水平方向の変位量に比例する。このため、特許文献1に記載の負荷試験装置において、可動ベースの水平方向の移動量が大きくなると、それに比例して、ロードセルの測定値に含まれる積層ゴムの水平方向の負荷荷重も大きくなる。積層ゴムの水平剛性が低いほど、その負荷荷重を小さくするができるが、そのためには、積層ゴムの積層数を増やす必要があり、これにより負荷試験装置が大型化してしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、試験体の水平方向の負荷荷重をより高精度に測定可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、垂直方向アクチュエータにより垂直方向に移動して、積層ゴム支承等の試験体を加圧する荷重検出ユニットを用いる。
【0009】
ここで、荷重検出ユニットは、試験体の上面と当接する第1加圧板と、第1加圧板上に載置された第1支承と、第1支承上に配置され、第1加圧板に対して水平方向に移動可能な第2加圧板と、第2加圧板上に載置された第2支承と、第2支承上に配置され、第2加圧板に対して第1加圧板と同方向に同量だけ移動するように第1加圧板に連結された第3加圧板と、第3加圧板上に載置された第3支承と、第3支承上に配置され、垂直方向アクチュエータにより垂直方向に移動可能な荷重伝達フレームと、荷重伝達フレームと第1および第3加圧板との間に配置され、第1および第3加圧板に加わる水平方向の負荷荷重を測定する第1ロードセルと、荷重伝達フレームと第2加圧板との間に配置され、第2加圧板に加わる水平方向の負荷荷重を測定する第2ロードセルと、を有する。なお、第1~第3支承は、同じせん断ばね定数のゴム支承でもよいし、あるいは、同じ摩擦係数のローラ支承でもよい。
【0010】
例えば、本発明の負荷試験装置は、
試験体の上面に垂直荷重を加えながら前記試験体の下面を水平方向に変位させた際における前記試験体の水平方向の負荷荷重を測定する負荷試験装置であって、
前記試験体が載置され、水平方向アクチュエータにより水平方向に移動可能な載置テーブルと、
垂直方向アクチュエータにより垂直方向に移動して、前記試験体を加圧する荷重検出ユニットと、を備え、
前記荷重検出ユニットは、
前記試験体の上面と当接する第1加圧板と、
前記第1加圧板上に載置された第1支承と、
前記第1支承上に配置され、前記第1加圧板に対して水平方向に移動可能な第2加圧板と、
前記第2加圧板上に載置された第2支承と、
前記第2支承上に配置され、前記第2加圧板に対して前記第1加圧板と同方向に同量だけ移動するように前記第1加圧板に連結された第3加圧板と、
前記第3加圧板上に載置された第3支承と、
前記第3支承上に配置され、前記垂直方向アクチュエータにより垂直方向に移動可能な荷重伝達フレームと、
前記荷重伝達フレームと前記第1加圧板および前記第3加圧板との間に配置され、前記第1加圧板および前記第3加圧板に加わる水平方向の負荷荷重を測定する第1ロードセルと、
前記荷重伝達フレームと前記第2加圧板との間に配置され、前記第2加圧板に加わる水平方向の負荷荷重を測定する第2ロードセルと、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、垂直方向アクチュエータにより荷重伝達フレームに垂直荷重を加えながら水平方向アクチュエータにより載置テーブルを水平方向に移動させた場合、第1ロードセルの測定値である、第1加圧板および前記第3加圧板に加わる水平方向の負荷荷重は、試験体の水平方向の負荷荷重から第1~第3支承の水平方向の負荷荷重を差し引いた値となる。また、第2ロードセルの測定値である、第2加圧板に加わる水平方向の負荷荷重は、第1および第2支承の水平方向の負荷荷重の合計値となる。このように、第1および第2ロードセルの測定値は、載置テーブルの水平方向への移動手段の摩擦力を含んでいない。
【0012】
ここで、第1~第3支承が同じせん断ばね定数のゴム支承である場合、これらの支承の水平方向の負荷荷重は、このせん断ばね定数とその水平方向の変位量との積となる。ここで、第2ロードセルの測定値である、第2加圧板に加わる水平方向の負荷荷重は、第1および第2支承それぞれの水平方向の負荷荷重の合計値であるので、せん断ばね定数は、第2ロードセルの測定値と第1および第2支承の水平方向の変位量で表すことができる。また、第1および第2支承の水平方向の変位量は、第1ロードセルの変位量から第2ロードセルの変位量を差し引いた値であり、第1および第2ロードセルそれぞれの変位量は、それぞれの測定値と剛性を用いて表現できる。このため、第1および第2ロードセルの測定値を用いて、第1~第3支承のせん断ばね定数に依存することなく、試験体の水平方向の負荷荷重を算出することができる。
【0013】
また、第1~第3支承が同じ摩擦係数のローラ支承である場合、これらの支承の水平方向の負荷荷重は、この摩擦係数と垂直方向アクチュエータによる垂直荷重との積となる。ここで、第2ロードセルの測定値である、第2加圧板に加わる水平方向の負荷荷重は、第1および第2支承それぞれの水平方向の負荷荷重の合計値であるので、摩擦係数は、第2ロードセルの測定値と垂直方向アクチュエータによる垂直荷重で表すことができる。このため、第1および第2ロードセルの測定値を用いて、第1~第3支承の摩擦係数に依存することなく、試験体の水平方向の負荷荷重を算出することができる。
【0014】
このように、本発明によれば、試験体の水平方向の負荷荷重をより高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る負荷試験装置1の概略構成図である。
【
図2】
図2は、負荷試験装置1の各部に加わる負荷荷重を説明するための図である。
【
図3】
図3は、負荷試験装置1を用いた負荷試験方法を説明するためのフロー図である。
【
図4】
図4は、負荷試験装置1の変形例1aの概略構成図である。
【
図5】
図5は、負荷試験装置1の変形例1bにおいて、各部に加わる負荷荷重を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る負荷試験装置1の概略構成図である。
【0018】
本実施の形態に係る負荷試験装置1は、積層ゴム支承等の試験体3の水平方向の負荷荷重(水平抗力)を測定するための装置であり、図示するように、断面コの字型の固定ベース10と、載置テーブル11と、荷重検出ユニット12と、垂直方向アクチュエータ13と、水平方向アクチュエータ14と、水平移動機構15と、垂直移動機構16と、を備えている。
【0019】
水平移動機構15は、ローラ支承、リニアガイド等で構成され、載置テーブル11を固定ベース10に対して水平方向に移動可能に支持する。
【0020】
垂直移動機構16は、ローラ支承、リニアガイド等で構成され、荷重検出ユニット12を固定ベース10に対して垂直方向に移動可能に支持する。
【0021】
垂直方向アクチュエータ13は、固定ベース10に取り付けられており、荷重検出ユニット12を垂直方向に加圧する。
【0022】
水平方向アクチュエータ14は、固定ベース10に取り付けられており、載置テーブル11を水平方向に加圧する。
【0023】
載置テーブル11は、試験体3が載置され、水平方向アクチュエータ14および水平移動機構15によって水平方向に移動することにより、試験体3の下面を水平方向に変位させる。
【0024】
荷重検出ユニット12は、試験体3の水平方向の負荷荷重を算出するために必要な測定値を計測するためのものであり、荷重伝達フレーム120と、第1加圧板121と、第1ゴム支承122と、第2加圧板123と、第2ゴム支承124と、第3加圧板125と、第3ゴム支承126と、第1ロードセル127と、第2ロードセル128と、を有する。
【0025】
第1加圧板121は、試験体3の上面と当接している。また、第1加圧板121上には、第1ゴム支承122が載置されている。
【0026】
第2加圧板123は、第1ゴム支承122上に配置され、第1加圧板121に対して水平方向に移動可能である。第2加圧板123上には、第2ゴム支承124が載置されている。
【0027】
第3加圧板125は、第2ゴム支承124上に配置され、第2加圧板123に対して第1加圧板121と同方向に同量だけ移動するように、連結部1251によって第1加圧板121に連結されている。第3加圧板125上には、第3ゴム支承126が載置されている。
【0028】
荷重伝達フレーム120は、固定ベース10側の端部に側壁部1201が形成された断面L字型であり、第3ゴム支承126上に配置される。また、荷重伝達フレーム120は、垂直方向アクチュエータ13および垂直移動機構16によって垂直方向に移動する。これにより、それぞれ、第3ゴム支承126、第2ゴム支承124、および第1ゴム支承122を介して、第3加圧板125、第2加圧板123、および第1加圧板121が加圧され、最終的に、第1加圧板121が試験体3を加圧する。
【0029】
第1ゴム支承122、第2ゴム支承124、および第3ゴム支承126には、同じせん断ばね定数を有するものが用いられる。
【0030】
第1ロードセル127は、荷重伝達フレーム120の側壁部1201と第1加圧板121との間に配置され、第1加圧板121および連結部1251によって第1加圧板121に連結された第3加圧板125に加わる水平方向の負荷荷重(第1加圧板121および第3加圧板125と荷重伝達フレーム120との間の水平方向の負荷荷重)を測定する。
【0031】
第2ロードセル128は、荷重伝達フレーム120の側壁部1201と第2加圧板123との間に配置され、第2加圧板123に加わる水平方向の負荷荷重(第2加圧板123と荷重伝達フレーム120との間の水平方向の負荷荷重)を測定する。
【0032】
図2は、本実施の形態に係る負荷試験装置1の各部に加わる負荷荷重を説明するための図である。
【0033】
図示するように、垂直方向アクチュエータ13により荷重伝達フレーム120に垂直荷重Nを加えながら水平方向アクチュエータ14により載置テーブル11を水平方向に移動させた場合、第1ロードセル127の測定値である、第1加圧板121および第3加圧板125に加わる水平方向の負荷荷重F1は、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhから第1ゴム支承122、第2ゴム支承124、および第3ゴム支承126の水平方向の負荷荷重を差し引いた値となる。また、第2ロードセル128の測定値である、第2加圧板123に加わる水平方向の負荷荷重F2は、第1ゴム支承122および第2ゴム支承124の水平方向の負荷荷重の合計値となる。このように、第1ロードセル127および第2ロードセル128の測定値F1、F2は、水平移動機構15の摩擦力(水平移動機構15の摩擦係数をμとした場合、μ・Nとなる)を含んでいない。
【0034】
ここで、第1加圧板121および第3加圧板125は、第2加圧板123に対して同方向に同量だけ移動するので、第1ゴム支承122および第2ゴム支承124の変位量は同じである。第1ゴム支承122、第2ゴム支承124、および第3ゴム支承126のせん断ばね定数をkr、第1ゴム支承122および第2ゴム支承124の変位量をdxr、第3ゴム支承126の変位量をdx1とした場合、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhは、第1ロードセル127の測定値F1を用いて数1で表すことができる。
【0035】
【0036】
また、第1ゴム支承122、第2ゴム支承124、および第3ゴム支承126のせん断ばね定数krは、第2ロードセルの測定値F2を用いて数2で表すことができる。
【0037】
【0038】
また、第1ゴム支承122および第2ゴム支承124の変位量dxrは、第1ロードセル127の変位量から第2ロードセル128の変位量を差し引いた値であり、第1ロードセル127の変位量は、第3ゴム支承126の水平方向の変位量dx1と同じである。第2ロードセル128の変位量をdx2とした場合、第1ゴム支承122および第2ゴム支承124の変位量dxrは、数3で表すことができる。
【0039】
【0040】
さらに、第1ロードセル127の測定値F1は、第1ロードセル127の剛性と変位量dx1との積であるので、第1ロードセル127の剛性をk1とした場合、第1ロードセル127の変位量dx1は、数4で表すことができる。
【0041】
【0042】
同様に、第2ロードセル128の測定値F2は、第2ロードセル128の剛性と変位量dx2との積であるので、第2ロードセル128の剛性をk2とした場合、第2ロードセル128の変位量dx2は、数5で表すことができる。
【0043】
【0044】
数1~数5により、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhは、数6で表すことができる。したがって、第1ロードセル127および第2ロードセル128の測定値F1、F2を用いて、第1ゴム支承122、第2ゴム支承124、および第3ゴム支承126のせん断ばね定数krに依存することなく、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhを算出することができる。
【0045】
【0046】
図3は、本実施の形態に係る負荷試験装置1を用いた負荷試験方法を説明するためのフロー図である。
【0047】
まず、垂直方向アクチュエータ13により荷重伝達フレーム120に垂直荷重Nを加えながら、水平方向アクチュエータ14により載置テーブル11を水平方向に移動させる(S10)。これにより、試験体3は、その上面を垂直荷重Nで加圧されながら、その下面が水平方向に変位して、水平方向の負荷荷重Fhを発生させる。
【0048】
つぎに、第1ロードセル127および第2ロードセル128の測定値F1、F2を取得する(S11)。それから、取得した測定値F1、F2をパーソナルコンピュータ等の情報処置装置に送信し、情報処置装置において、測定値F1、F2を上述の数6に代入して、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhを算出する(S12)。
【0049】
本実施の形態では第1ロードセル127および第2ロードセル128の測定値F1、F2を上述の数6に代入して、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhを算出することにより、第1ゴム支承122、第2ゴム支承124、および第3ゴム支承126のせん断ばね定数krに依存することなく、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhを算出することができる。したがって、本実施の形態によれば、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhをより高精度に測定することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0051】
本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0052】
例えば、本実施の形態において、水平方向アクチュエータ14により載置テーブル11を水平方向に移動して、
図2に示すように、試験体3が変形する場合、その変形量が大きくなると、第1加圧板121に回転モーメントが作用して、第1加圧板121が時計回りに回転(傾斜)しようとする。ゴムは、引張剛性が小さく、変形しやすい。そこで、これに対抗するために、第1ゴム支承122、第2ゴム支承124、および第3ゴム支承126の回転防止機構を採用してもよい。
【0053】
図4に示す負荷試験装置1の変形例1aでは、第1ゴム支承122、第2ゴム支承124、および第3ゴム支承126の回転防止機構として、ローラ軸受、すべり軸受等の水平移動機構170を有するボルト17を採用している。第1加圧板121、第2加圧板123、および第3加圧板125には、それぞれ、ボルト17の直径よりも大径の貫通穴1210、1230、1250が形成されており、荷重伝達フレーム120の下面(第3ゴム支承126との当接面)には、ボルト17の先端部に形成されたネジ部と螺合するネジ孔1200が形成されている。ボルト17を、第1加圧板1210の貫通穴1210、第2加圧板123の貫通穴1230、および第3加圧板125の貫通穴1250に通して、そのネジ頭と第1加圧板121の下面(試験体3との当接面)との間に水平移動機構170を介在させた状態で、その先端部を荷重伝達フレーム120のネジ孔1200に螺合させる。これにより、荷重伝達フレーム120に対して、第1加圧板121、第2加圧板123、および第3加圧板125の水平方向の移動を許容しつつ、これらの垂直方向の移動を拘束して、第1ゴム支承122、第2ゴム支承124、および第3ゴム支承126の回転を防止することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、第2加圧板123を第1加圧板121に対して水平方向に移動可能に支持する第1支承、第3加圧板125を第2加圧板123に対して水平方向に支持する第2支承、および、荷重伝達フレーム120を第3加圧板125に対して水平方向に移動可能に支持する第3支承として、同じばねせん断定数を有するゴム支承を用いている。しかし、本発明はこれに限定されない。第1~第3支承として、同じ摩擦係数を有するローラ支承、すべり支承等を用いてもよい。
【0055】
図5に示す負荷試験装置1の変形例1bでは、同じせん断ばね定数を有する第1ゴム支承122、第2ゴム支承124、および第3ゴム支承126に代えて、同じ摩擦係数を有する第1ローラ支承130、第2ローラ支承131、および第3ローラ支承132を用いている。
【0056】
図示するように、垂直方向アクチュエータ13により荷重伝達フレーム120に垂直荷重Nを加えながら水平方向アクチュエータ14により載置テーブル11を水平方向に移動させた場合、第1ロードセル127の測定値である、第1加圧板121および第3加圧板125に加わる水平方向の負荷荷重F1は、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhから第1ローラ支承130、第2ローラ支承131、および第3ローラ支承132の水平方向の負荷荷重を差し引いた値となる。また、第2ロードセル128の測定値である、第2加圧板123に加わる水平方向の負荷荷重F2は、第1ローラ支承130および第2ローラ支承131の水平方向の負荷荷重の合計値となる。このように、第1ロードセル127および第2ロードセル128の測定値F1、F2は、水平移動機構15の摩擦力μ・N(水平移動機構15の摩擦係数をμとした場合)を含んでいない。
【0057】
第1ローラ支承130、第2ローラ支承131、および第3ローラ支承132の摩擦係数をμrとした場合、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhは、第1ロードセル127の測定値F1を用いて数7で表すことができる。
【0058】
【0059】
また、第1ローラ支承130、第2ローラ支承131、および第3ローラ支承132の摩擦係数μrは、第2ロードセル128の測定値F2を用いて数8で表すことができる。
【0060】
【0061】
数7および数8により、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhは、数9で表すことができる。したがって、第1ロードセル127および第2ロードセル128の測定値F1、F2を用いて、第1ローラ支承130、第2ローラ支承131、および第3ローラ支承132の摩擦係数μrに依存することなく、試験体3の水平方向の負荷荷重Fhを算出することができる。
【0062】
【0063】
また、上記の実施の形態では、試験体3の水平方向の一方向における負荷荷重を測定する負荷試験装置を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明は、試験体3の水平方向の直交する二方向における負荷荷重を測定する負荷試験装置にも適用できる。
【0064】
例えば、
図1、
図4に示す負荷試験装置1、1aにおいて、水平移動機構15として、載置テーブル11を固定ベース10に対して水平方向の直交する二方向に移動可能に支持するXYステージ等を採用する。そして、水平方向の直交する二方向の断面図のそれぞれにおいて、
図1、
図4に示す負荷試験装置1、1aの構成となるように、固定ベース10および荷重伝達フレーム120を形成するとともに、水平方向アクチュエータ14、垂直移動機構16、第1ロードセル127、および第2ロードセル128を、それぞれ2つ設ける。
【0065】
また、
図5に示す負荷試験装置1bにおいて、水平移動機構15として、載置テーブル11を固定ベース10に対して水平方向の直交する二方向に移動可能に支持するXYステージ等を採用し、第1ローラ支承130の代わりに、第2加圧板123を第1加圧板121に対して水平方向の直交する二方向に移動可能に支持するXYステージ等を採用し、第2ローラ支承131の代わりに、第3加圧板125を第2加圧板123に対して水平方向の直交する二方向に移動可能に支持するXYステージ等を採用し、第3ローラ支承132の代わりに、荷重伝達フレーム120を第3加圧板132に対して水平方向の直交する二方向に移動可能に支持するXYステージ等を採用する。そして、水平方向の直交する二方向の断面図のそれぞれにおいて、
図5に示す負荷試験装置1bの構成となるように、固定ベース10および荷重伝達フレーム120を形成するとともに、水平方向アクチュエータ14、垂直移動機構16、第1ロードセル127、および第2ロードセル128を、それぞれ2つ設ける。
【符号の説明】
【0066】
1、1a、1b:負荷試験装置 3:試験体
10:固定ベース 11:載置テーブル
12:荷重検出ユニット 13:垂直方向アクチュエータ
14:水平方向アクチュエータ 15、170:水平移動機構
16:垂直移動機構 17:ボルト
120:荷重伝達フレーム 121:第1加圧板
122:第1ゴム支承 123:第2加圧板
124:第2ゴム支承 125:第3加圧板
126:第3ゴム支承 127:第1ロードセル
128:第2ロードセル 130:第1ローラ支承
131:第2ローラ支承 132:第3ローラ支承
1201:側壁部 1251:連結部
1210、1230、1250:貫通穴