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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】タイヤ成形用金型及びタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20241028BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20241028BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20241028BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021103649
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2023002405
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 泰之
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-341415(JP,A)
【文献】特開2011-140192(JP,A)
【文献】米国特許第05066448(US,A)
【文献】特開2011-73252(JP,A)
【文献】特開2002-254433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0009020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に並ぶ複数のセグメントに分割されるとともにそれぞれの前記セグメントが径方向に移動することで開閉するように構成された円環状のトレッド成形部を備え、未加硫の生タイヤをタイヤに加硫成形するタイヤ成形用金型であって、
それぞれの前記セグメントが、
前記タイヤの加硫成形後に前記トレッド成形部が開かれるときに、前記タイヤのトレッドを成形するトレッド意匠面から突出して、加硫成形後の前記タイヤのトレッドを押圧する押出し部材を有することを特徴とするタイヤ成形用金型。
【請求項2】
前記セグメントに設けられたテーパー面に沿って前記セグメントに対して前記トレッド成形部の軸線方向に相対移動することで前記セグメントを径方向外側に駆動するアウターリングと、
前記アウターリングに固定され、前記押出し部材の前記アウターリングの側を向く後端部に当接するとともに、前記アウターリングが前記セグメントに対して前記軸線の方向に相対移動したときに、前記押出し部材を前記トレッド意匠面から突出する方向に駆動するカム部材と、を有する、請求項1に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項3】
前記押出し部材が、前記トレッド意匠面の、前記トレッド成形部の軸線の方向の中心位置よりも当該軸線の方向の一方側に偏った位置から突出するように配置されている、請求項1または2に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項4】
それぞれの前記セグメントに、複数の前記押出し部材が、円周方向に間隔を空けて設けられている、請求項1~3の何れか1項に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項5】
前記タイヤの加硫成形後に前記トレッド成形部が開かれるときに、第1の前記セグメントに設けられた第1の前記押出し部材が第1の前記トレッド意匠面から突出した後、第2の前記セグメントに設けられた第2の前記押出し部材が第2の前記トレッド意匠面から突出するように構成されている、請求項1~4の何れか1項に記載のタイヤ成形用金型。
【請求項6】
円周方向に並ぶ複数のセグメントに分割されるとともにそれぞれの前記セグメントが径方向に移動することで開閉するように構成された円環状のトレッド成形部を備えたタイヤ成形用金型を用いて、未加硫の生タイヤを加硫成形してタイヤを製造するタイヤ製造方法であって、
それぞれの前記セグメントを径方向外側に移動させて前記トレッド成形部を開くときに、前記タイヤのトレッドを成形するトレッド意匠面から押出し部材を突出させ、加硫成形後の前記タイヤのトレッドを前記押出し部材で押圧しながら前記タイヤを前記トレッド成形部から離型させることを特徴とするタイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形用金型及びタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、未加硫の生タイヤを加硫成形してタイヤを製造する際に用いられるタイヤ成形用金型として、タイヤのトレッドを成形する円環状のトレッド成形部(トレッドモールド)が、円周方向に並ぶ複数のセグメントに分割されるとともに、それぞれのセグメントが径方向に移動することで開閉するように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-326332号公報
【文献】特開2000-334740号公報
【文献】特開2009-149079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のタイヤ成形用金型ないしタイヤ製造方法では、加硫成形後にタイヤをトレッド成形部から離型するときに、それぞれのセグメントがタイヤのトレッドに対する姿勢を維持したまま径方向外側に向けて移動するため、セグメントのトレッドを成形するトレッド意匠面の全体が当該トレッドから同時に剥離しようとして、タイヤの離型の初期においてセグメントの駆動に大きな駆動力が必要になるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、その目的は、タイヤの離型の初期におけるセグメントの駆動に必要な駆動力を低減することができるタイヤ成形用金型及びタイヤ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤ成形用金型は、円周方向に並ぶ複数のセグメントに分割されるとともにそれぞれの前記セグメントが径方向に移動することで開閉するように構成された円環状のトレッド成形部を備え、未加硫の生タイヤをタイヤに加硫成形するタイヤ成形用金型であって、それぞれの前記セグメントが、前記タイヤの加硫成形後に前記トレッド成形部が開かれるときに、前記タイヤのトレッドを成形するトレッド意匠面から突出して、加硫成形後の前記タイヤのトレッドを押圧する押出し部材を有することを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤ成形用金型は、1つの実施形態として、前記セグメントに設けられたテーパー面に沿って前記セグメントに対して前記トレッド成形部の軸線方向に相対移動することで前記セグメントを径方向外側に駆動するアウターリングと、前記アウターリングに固定され、前記押出し部材の前記アウターリングの側を向く後端部に当接するとともに、前記アウターリングが前記セグメントに対して前記軸線の方向に相対移動したときに、前記押出し部材を前記トレッド意匠面から突出する方向に駆動するカム部材と、を有する構成とすることができる。
【0008】
本発明のタイヤ成形用金型は、1つの実施形態として、前記押出し部材が、前記トレッド意匠面の、前記トレッド成形部の軸線の方向の中心位置よりも当該軸線の方向の一方側に偏った位置から突出するように配置されている構成とすることができる。
【0009】
本発明のタイヤ成形用金型は、1つの実施形態として、それぞれの前記セグメントに、複数の前記押出し部材が、円周方向に間隔を空けて設けられている構成とすることができる。
【0010】
本発明のタイヤ成形用金型は、1つの実施形態として、前記タイヤの加硫成形後に前記トレッド成形部が開かれるときに、第1の前記セグメントに設けられた第1の前記押出し部材が第1の前記トレッド意匠面から突出した後、第2の前記セグメントに設けられた第2の前記押出し部材が第2の前記トレッド意匠面から突出するように構成されている構成とすることができる。
【0011】
本発明のタイヤ製造方法は、円周方向に並ぶ複数のセグメントに分割されるとともにそれぞれの前記セグメントが径方向に移動することで開閉するように構成された円環状のトレッド成形部を備えたタイヤ成形用金型を用いて、未加硫の生タイヤを加硫成形してタイヤを製造するタイヤ製造方法であって、それぞれの前記セグメントを径方向外側に移動させて前記トレッド成形部を開くときに、前記タイヤのトレッドを成形するトレッド意匠面から押出し部材を突出させ、加硫成形後の前記タイヤのトレッドを前記押出し部材で押圧しながら前記タイヤを前記トレッド成形部から離型させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タイヤの離型の初期におけるセグメントの駆動に必要な駆動力を低減することができるタイヤ成形用金型及びタイヤ製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態であるタイヤ成形用金型の正面視での断面図である。
図2図1に示すトレッド成形部の平面視での断面図である。
図3図1に示すタイヤ成形用金型の開かれた状態における正面視での断面図である。
図4図1に示すトレッド成形部の開かれた状態における平面視での断面図である。
図5図1に示すタイヤ成形用金型の要部の詳細構造を拡大して示す正面視での断面図である。
図6図5に示す押出し部材とカム部材の構造を拡大して示す正面視での断面図である。
図7図5に示す押出し部材とカム部材の構造を拡大して示す平面視での断面図である。
図8】トレッド成形部が開きはじめたときの、押出し部材とカム部材の状態を示す正面視での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係るタイヤ成形用金型及びタイヤ製造方法を、図面を参照しつつ詳細に例示説明する。なお、各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0015】
図1に示す本発明の一実施の形態に係るタイヤ成形用金型1は、未加硫(加硫前)の合成ゴムを主体として形成された生タイヤを、加硫しつつ所定の形状に成形してタイヤ2を製造するために用いられるものである。
【0016】
なお、タイヤ2は、合成ゴムを主体として、一対のサイドウォール2a、2bとトレッド2cとを有し、内部に空気や窒素等の気体が充填される空間を備えた形状に形成された中空タイヤである。
【0017】
タイヤ成形用金型1は、サイドウォール成形部10とトレッド成形部20とを備えている。
【0018】
サイドウォール成形部10は、例えば、下側コンテナ3の上面に固定された円環状の下側サイドウォール成形部11と、上側コンテナ4の下面に固定された円環状の上側サイドウォール成形部12とを備えた構成とすることができる。
【0019】
サイドウォール成形部10は、下側サイドウォール成形部11と上側サイドウォール成形部12との間に、円環状のタイヤ2ないし生タイヤを、その中心軸がサイドウォール成形部10の中心軸Oと同軸となる姿勢で配置(収納)することができる。下側サイドウォール成形部11は、中心軸Oを中心とした円環状で上向きの下側サイドウォール意匠面11aを備えており、下側サイドウォール意匠面11aによりタイヤ2ないし生タイヤの一方(図1において下方を向く側)のサイドウォール2aの外側面を成形することができる。同様に、上側サイドウォール成形部12は、中心軸Oを中心とした円環状で下向きの上側サイドウォール意匠面12aを備えており、上側サイドウォール意匠面12aによりタイヤ2ないし生タイヤの他方(図1において上方を向く側)のサイドウォール2bの外側面を成形することができる。図3に示すように、下側コンテナ3に対して上側コンテナ4が上方(タイヤ2の中心軸に沿って両者が離れる方向)に相対移動することで、サイドウォール成形部10は開かれ、タイヤ2はサイドウォール成形部10から離型される。一方、上側コンテナ4が図1に示す元の位置にまで下方に移動することにより、サイドウォール成形部10は、開いた状態からタイヤ2ないし生タイヤの成形が可能な状態にまで閉じられる。
【0020】
なお、サイドウォール成形部10の構成は、例えば、上側コンテナ4に対して下側コンテナ3が下方に相対移動して開かれる構成とするなど、その構成は適宜変更可能である。
【0021】
トレッド成形部20は、サイドウォール成形部10と同軸の円環状となっており、下側サイドウォール成形部11及び上側サイドウォール成形部12の径方向外側に隣接して配置されている。トレッド成形部20の径方向内側を向く内周面は、タイヤ2のトレッド2cの外周面を成形するトレッド意匠面20aとなっている。
【0022】
図2に示すように、トレッド成形部20は、円周方向に並ぶ複数のセグメント21に分割されている。それぞれのセグメント21は平面視において円弧状となっており、円周方向に組み合わされて全体として円環状の金型となるトレッド成形部20を構成している。本実施の形態では、トレッド成形部20は、円周方向の長さが互いに同一の9つのセグメント21に分割された構成とされている。なお、トレッド成形部20の円周方向への分割数は、7~13とするのが好ましいが、これに限らず適宜変更可能である。
【0023】
図1に示すように、それぞれのセグメント21は、下側コンテナ3と下側サイドウォール成形部11とに支持されて当該セグメント21の径方向に沿って延びるガイドレール22に支持され、トレッド成形部20の軸心(中心軸O)を中心とした径方向に向けて移動することができるようになっている。トレッド成形部20は、それぞれのセグメント21が径方向に移動することで開閉することができる。
【0024】
より具体的には、それぞれのセグメント21は、径方向外側を向く外周面に、上方に向けて徐々に外径が小さくなるように傾斜するテーパー面21aを備えている。一方、アウターリング5は円環状となっており、上側コンテナ4の下面に固定されてセグメント21の径方向外側に配置されている。アウターリング5は、径方向内側を向く内周面に、上方に向けて徐々に外径が小さくなるように傾斜するテーパー面5aを備えている。アウターリング5は、テーパー面5aがセグメント21のテーパー面21aに沿って上下方向に摺動するように、図示しないガイド部材等により、それぞれのセグメント21に連結されている。また、それぞれのセグメント21と下側サイドウォール成形部11との間にはバネ部材23が配置され、それぞれのセグメント21は対応するバネ部材23により、径方向外側に向けて付勢されている。
【0025】
下側コンテナ3に対して上側コンテナ4が上方に相対移動すると、アウターリング5がテーパー面5aをセグメント21のテーパー面21aに沿って摺動させながらそれぞれのセグメント21に対してトレッド成形部20の軸線方向の一方側である上方側に相対移動する。これにより、図3図4に示すように、それぞれのセグメント21がアウターリング5により駆動されるとともにバネ部材23に付勢されてトレッド成形部20の軸心を中心とした径方向外側に向けて移動し、トレッド成形部20は、トレッド意匠面20aがタイヤ2ないし生タイヤのトレッド2cから離間する位置にまで開かれる。一方、上側コンテナ4が図1に示す元の位置にまで下方に移動すると、トレッド成形部20は、下側サイドウォール成形部11に隣接する位置にまで下降し、次いでアウターリング5がそれぞれのセグメント21に対して下方に移動し、それぞれのセグメント21がトレッド成形部20の軸心を中心とした径方向内側に向けて移動する。これにより、図1図2に示すように、それぞれのセグメント21がアウターリング5に駆動されて径方向内側に向けて移動し、トレッド成形部20は、タイヤ2ないし生タイヤの成形が可能な状態にまで閉じられる。
【0026】
このように、本実施の形態のタイヤ成形用金型1では、円環状のトレッド成形部20は、円周方向に並ぶ複数のセグメント21に分割されるとともに、それぞれのセグメント21が径方向に移動することで開閉するように構成されている。
【0027】
タイヤ成形用金型1は、生タイヤの内部に配置され、加圧蒸気が供給されることにより膨張するブラダー6を備えている。また、タイヤ成形用金型1は、サイドウォール成形部10及びトレッド成形部20を加熱するためのヒーター(不図示)を備えている。ヒーターの設置場所は適宜設定可能である。
【0028】
図5に示すように、本実施の形態のタイヤ成形用金型1では、トレッド成形部20を構成する複数のセグメント21は、それぞれホルダ24と意匠面分割金型部25を有する構成とされている。
【0029】
ホルダ24は、トレッド成形部20が開閉されるときに、アウターリング5により径方向に向けて駆動される部分であり、その外周面はテーパー面21aを構成している。ホルダ24は、例えば低炭素鋼などの金属製のブロックを切削加工して形成されたものとすることができる。
【0030】
意匠面分割金型部25は、タイヤ2のトレッド2cを成形するトレッド意匠面20aを構成する部分であり、径方向内側を向く面はトレッド意匠面20aの円周方向に分割された一部を構成している。意匠面分割金型部25は、ホルダ24の径方向内側に配置され、図示しないボルト等の固定部材を用いてホルダ24に固定されている。
【0031】
意匠面分割金型部25は、トレッド意匠面20aに、トレッド意匠面20aから径方向内側に向けて径方向に沿って突出する複数の突起26が設けられた構成とすることができる。複数の突起26は、加硫成形の際に、タイヤ2のトレッド2cにトレッドパターンを形成する溝ないしサイプ等を成形するものである。複数の突起26は、タイヤ幅方向に延びるもの、タイヤ周方向に延びるものなど、トレッドパターンに対応した種々の形状ないし大きな(長さ)のものとすることができる。なお、トレッド意匠面20aに突起26を設けない構成としてもよい。
【0032】
意匠面分割金型部25は、例えばアルミニウム合金などの熱伝導性の高い金属材料を鋳造して形成されたものとするのが好ましい。この場合、例えば、鋼材によりリブ状ないしブレード状に形成された突起26を、意匠面分割金型部25を鋳造する際に意匠面分割金型部25に一体化させて設けた構成とすることができる。
【0033】
それぞれのセグメント21には、タイヤ2の加硫成形後にトレッド成形部20が開かれるときに、タイヤ2のトレッド2cを成形するトレッド意匠面20aから突出して、加硫成形後のタイヤ2のトレッド2cを押圧する押出し部材30が設けられている。
【0034】
押出し部材30は、それぞれのセグメント21に、円周方向に間隔を空けて複数設けた構成とすることもできる。本実施の形態では、図7に示すように、それぞれのセグメント21には、円周方向に間隔を空けて2つの押出し部材30が設けられている。
【0035】
図6図7に示すように、押出し部材30を支持するために、意匠面分割金型部25には、当該意匠面分割金型部25を径方向に貫通する貫通孔25aが設けられている。貫通孔25aの径方向外側に開口する部分は、径方向内側に開口する部分よりも大径の穴部25bとなっている。ホルダ24には、当該ホルダ24を閉方向に貫通するとともに当該ホルダ24の上端にまで達する切欠き部24aが設けられている。穴部25bは切欠き部24aに開口している。
【0036】
本実施の形態では、押出し部材30は、ロッド部31とヘッド部32とを有するピン形状のものとなっている。押出し部材30は、ロッド部31が貫通孔25aに挿通され、ヘッド部32が穴部25bに配置されることで、意匠面分割金型部25に径方向に移動自在に支持されている。ヘッド部32の一部は、穴部25bからホルダ24の切欠き部24aの内部に向けて突出している。
【0037】
ヘッド部32と穴部25bの底面との間にはバネ部材34が配置されている。押出し部材30は、バネ部材34により径方向外側に付勢されている。
【0038】
アウターリング5の内周面には、カム部材33が固定されている。カム部材33は、トレッド成形部20の軸線に平行で径方向内側を向く平面部33aと、平面部33aの下端に連なるとともに径方向内側に向けて傾斜する傾斜面部33bとを備えている、カム部材33は、ホルダ24の切欠き部24aの内部に配置され、トレッド成形部20が閉じた状態において、平面部33aにおいて押出し部材30の後端部を構成するヘッド部32に径方向外側から当接している。これにより、押出し部材30は、トレッド成形部20が閉じた状態において、ヘッド部32がカム部材33の平面部33aに当接するとともにロッド部31の径方向内側を向く先端がトレッド意匠面20aと同一面状となる位置に保持されている。
【0039】
カム部材33は、アウターリング5がセグメント21に対してトレッド成形部20の軸線の方向(図5図6において上方)に相対移動してトレッド成形部20が開かれるときに、押出し部材30をトレッド意匠面20aから突出する方向に駆動する。すなわち、トレッド成形部20を開くために、アウターリング5がセグメント21に対して図5図6において上方に相対移動すると、カム部材33は、アウターリング5とともに押出し部材30に対して、押出し部材30の軸方向に対して垂直な上方に向けて移動する。カム部材33が押出し部材30に対して上方に移動すると、押出し部材30のヘッド部32が傾斜面部33bに沿って移動して、押出し部材30はカム部材33により径方向内側に向けて駆動される。そして、カム部材33により駆動された押出し部材30は、バネ部材34を弾性変形させながら径方向内側に向けて移動し、当該移動により、ロッド部31の先端がトレッド意匠面20aから意匠面分割金型部25の外部に突出する。
【0040】
押出し部材30は、トレッド意匠面20aの、トレッド成形部20の軸線(中心軸O)の方向の中心位置よりも当該軸線の方向の一方側に偏った位置から突出するように配置されるのが好ましい。本実施の形態では、図5に示すように、押出し部材30は、トレッド意匠面20aの上下方向(タイヤ2の幅方向)の中心位置よりも上方側であって、トレッド2cのサイドウォール2bの側の端部に対向する位置から突出するように配置されている。
【0041】
次に、上記構成を有するタイヤ成形用金型1を用いて、生タイヤを加硫成形して所定形状のタイヤ2を製造する方法、すなわち本発明の一実施の形態であるタイヤ製造方法について説明する。
【0042】
まず、サイドウォール成形部10及びトレッド成形部20を開いた状態として、タイヤ成形用金型1の内部に生タイヤを配置し、次いで、サイドウォール成形部10及びトレッド成形部20を閉じた状態とする。
【0043】
次に、生タイヤの内部に配置したブラダー7に加圧蒸気を供給して当該ブラダー7を膨張させ、生タイヤの両サイドウォールをそれぞれサイドウォール成形部10の下側サイドウォール意匠面11aないし上側サイドウォール意匠面12aに押し付けるとともに、トレッドをトレッド成形部20のトレッド意匠面20aに押し付ける。そして、この状態で、ヒーターによってサイドウォール成形部10及びトレッド成形部20を加熱し、当該熱により生タイヤを構成する合成ゴムを加硫して、所定形状のタイヤ2に成形する。
【0044】
タイヤ2の成形が完了した後、サイドウォール成形部10及びトレッド成形部20を開き、成形されたタイヤ2を取り出す。
【0045】
ここで、タイヤ2を加硫成形した後、それぞれのセグメント21を径方向外側に移動させてトレッド成形部20を開くとき、図8に示すように、押出し部材30がアウターリング5に設けられたカム部材33により駆動されてトレッド意匠面20cから突出し、加硫成形後のタイヤ2は、トレッド2cが押出し部材30により押圧されながらトレッド成形部20から離型されることになる。これにより、トレッド意匠面20cに密着するタイヤ2のトレッド2cが、押出し部材30により押される部分を起点として徐々にトレッド意匠面20cから離型されるようにして、タイヤ2の離型の初期において、タイヤ2のトレッド2cのトレッド意匠面20aからの離型抵抗を低減することができる。
【0046】
このように、本実施の形態のタイヤ成形用金型1を用いたタイヤ製造方法では、それぞれのセグメント21を径方向外側に移動させてトレッド成形部20を開くときに、タイヤ2のトレッド2cを成形するトレッド意匠面20aから押出し部材30を突出させ、加硫成形後のタイヤ2のトレッド2cを押出し部材30で押圧しながらタイヤ2をトレッド成形部20から離型させるようにしたので、タイヤ2の離型の初期における、タイヤ2のトレッド2cのトレッド意匠面20aからの離型抵抗を低減して、タイヤ2のトレッド2cをトレッド意匠面20aから離型させるのに必要な力を低減することができる。また、タイヤ2を離型する際にセグメント21に加える駆動力を低減することができるので、タイヤ成形用金型1を含む製造装置全体を小型化して、製造コストを低減することができる。さらに、タイヤ2のトレッド2cのトレッド意匠面20aからの離型抵抗を低減することができるので、離型後のタイヤ2に残留歪(永久変形)が生じることを抑制して、タイヤ2の初期性能を向上させることができる。
【0047】
特に、本実施の形態では、押出し部材30を、トレッド意匠面20cの、トレッド成形部20の軸線の方向の中心位置よりも当該軸線の方向の一方側に偏った位置から突出するように配置したので、トレッド意匠面20cに密着するタイヤ2のトレッド2cを押出し部材30により押される部分を起点として徐々にトレッド意匠面20cから離型させるとともに、当該部分からトレッド2cとトレッド意匠面20aとの間に徐々に外気が導入されるようにして、タイヤ2の離型の初期に、タイヤ2のトレッド2cをトレッド意匠面20aから離型させるのに必要な力をさらに低減することができる。
【0048】
また、本実施の形態では、タイヤ成形用金型1を、セグメント21に設けられたテーパー面21aに沿ってセグメント21に対してトレッド成形部20の軸線方向に相対移動することでセグメント21を径方向外側に駆動するアウターリング5と、アウターリング5に固定され、押出し部材30の後端部(ヘッド部32)に当接するとともに、アウターリング5がセグメント21に対してトレッド成形部20の軸線の方向に相対移動したときに、押出し部材30をトレッド意匠面20cから突出する方向に駆動するカム部材33と、を有する構成としたので、アウターリング5が作動してタイヤ2のトレッド成形部20からの離型が開始される際に、アウターリング5の動作に伴って押出し部材30がトレッド意匠面20cから突出するようにして、タイヤ2の離型の初期に、押出し部材30によりタイヤ2のトレッド2cを確実にトレッド意匠面20aから離型させることができる。
【0049】
さらに、本実施の形態では、それぞれのセグメント21に、複数の押出し部材30を、円周方向に間隔を空けて設けるようにしたので、それぞれのセグメント21において、加硫成形後のタイヤ2のトレッド2cを、複数の押出し部材30により複数個所において押圧して、タイヤ2をトレッド成形部20からより確実に離型させることができる。特に、複数の押出し部材30を、トレッド意匠面20cの、トレッド成形部20の軸線の方向の中心位置よりも当該軸線の方向の一方側に偏った位置から突出するように配置した場合には、離型の初期において、タイヤ2のトレッド2cのタイヤ幅方向の一方側の全体を起点としてトレッド成形部20から離型されるようにして、タイヤ2の離型の初期に、タイヤ2のトレッド2cをトレッド意匠面20aから離型させるのに必要な力をさらに低減することができる。
【0050】
本実施の形態のタイヤ成形用金型1は、タイヤ2の加硫成形後にトレッド成形部20が開かれるときに、複数のセグメント21の内の1つのセグメント(第1のセグメント)21に設けられた押出し部材(第1の押出し部材)30が、当該セグメント21に設けられたトレッド意匠面(第1のトレッド意匠面)20aから突出した後、複数のセグメント21の内の他のセグメント(第2のセグメント)21に設けられた押出し部材(第2の押出し部材)30が当該セグメント21に設けられたトレッド意匠面(第2のトレッド意匠面)20aから突出する構成とすることができる。すなわち、それぞれのセグメント21に配置された押出し部材30を、セグメント21ごとに、時間差を有して順に作動させて、トレッド意匠面20aから突出させる構成とすることができる。この場合、1つのセグメント21の押出し部材30をトレッド意匠面20aから突出させた後、当該セグメント21に隣接するセグメント21の押出し部材30をトレッド意匠面20aから突出させ、次いで、当該セグメント21に隣接するセグメント21の押出し部材30をトレッド意匠面20aから突出させるというように、円周方向に向けて順に押出し部材30をトレッド意匠面20cから突出させる構成とすることができる。このような構成により、タイヤ2の離型の初期において、トレッド意匠面20aに対して、トレッド2cが、その一部から円周方向に順に離型されるようにして、より小さな駆動力でタイヤ2のトレッド2cをトレッド意匠面20aから離型させることができる。
【0051】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0052】
例えば、前記実施の形態では、それぞれのセグメント21にホルダ24を設け、意匠面分割金型部25をホルダ24に固定し、アウターリング5によりホルダ24を駆動する構成としているが、ホルダ24と意匠面分割金型部25を一体とした構成としてもよい。
【0053】
また、それぞれのセグメント21に設ける押出し部材30の数は適宜変更可能である。また、押出し部材30の形状、押出し部材30を駆動する構成も適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:タイヤ成形用金型、 2:タイヤ、 2a:サイドウォール、 2b:サイドウォール、 2c:トレッド、 3:下側コンテナ、 4:上側コンテナ、 5:アウターリング、 5a:テーパー面、 6:ブラダー、 10:サイドウォール成形部、 11:下側サイドウォール成形部、 11a:下側サイドウォール意匠面、 12:上側サイドウォール成形部、 12a:上側サイドウォール意匠面、 20:トレッド成形部、 20a:トレッド意匠面、 21:セグメント、 21a:テーパー面、 22:ガイドレール、23:バネ部材、 24:ホルダ、 24a:切欠き部、 25:意匠面分割金型部、 25a:貫通孔、 25b:穴部、 26:突起、 30:押出し部材、 31:ロッド部、 32:ヘッド部、 33:カム部材、 33a:平面部、 33b:傾斜面部、 34:バネ部材、 O:中心軸
図1
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図8