(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241028BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20241028BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20241028BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20241028BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H01L21/60 301P
H01L21/88 T
H01L21/76 L
(21)【出願番号】P 2021115299
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 孝行
(72)【発明者】
【氏名】佐山 弘和
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-050707(JP,A)
【文献】特開2017-045910(JP,A)
【文献】特開2001-339071(JP,A)
【文献】特開2019-114673(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020713(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/3205-21/3213
H01L21/447 -21/449
H01L21/60 -21/607
H01L21/70
H01L21/74 -21/764
H01L21/768
H01L23/522
H01L23/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1溝と、
前記第1溝の底面に形成され、前記第1溝よりも深さが深い第2溝と、
前記第1溝内を埋め込む第1膜から成る第1トレンチ分離と、
前記第2溝内に埋め込まれ、前記第2溝内において内部に第1空隙を有する第2膜から成る第2トレンチ分離と、
前記第1トレンチ分離、前記第2トレンチ分離および前記半導体基板のそれぞれの上のパッドの上面に接続されたボンディングワイヤと、
前記ボンディングワイヤの先端を構成するボールと、
平面視において前記ボールの端部と重なる環状の第1領域と、
を有し、
前記第1領域は、前記ボールの底面のうち、前記第1空隙から、前記半導体基板の上面に対して垂直な第1方向において最も近い前記ボールの前記底面の端部と、前記半導体基板の前記上面に沿う第2方向における前記ボールの最外周との間の領域であって、前記ボールの直下を含み、
前記第2トレンチ分離は、平面視において前記第1領域から離間している、半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1溝の前記底面に形成され、前記第1溝よりも深さが深い第3溝と、
前記第3溝内に埋め込まれ、前記第3溝内において内部に第2空隙を有する前記第2膜から成る第3トレンチ分離と、
半導体素子が形成された素子領域と、
をさらに有し、
前記第3トレンチ分離は、前記半導体素子を電気的に分離し、
前記第2トレンチ分離は、擬似的な素子分離であり、
前記第3トレンチ分離は、平面視において前記第1領域から離間している、半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置において、
平面視において、前記素子領域は、前記ボールの全体と重なり、前記第3トレンチ分離は、前記第1領域を囲んでいる、半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1溝の前記底面に形成され、前記第1溝よりも深さが深い第3溝と、
前記第3溝内に埋め込まれ、前記第3溝内において内部に第2空隙を有する前記第2膜から成る第3トレンチ分離と、
半導体素子が形成された素子領域と、
をさらに有し、
前記第3トレンチ分離は、前記半導体素子を電気的に分離し、
前記第2トレンチ分離は、擬似的な素子分離であり、
前記第3トレンチ分離は、平面視において前記第1領域と交差している、半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2膜は、絶縁膜、シリコン膜または金属膜である、半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2トレンチ分離は、擬似的な素子分離である、半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置において、
半導体素子が形成された素子領域をさらに有し、
前記第2トレンチ分離は、前記半導体素子を電気的に分離している、半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
平面視において、前記素子領域は、前記ボールの全体と重なり、前記第2トレンチ分離は、前記第1領域を囲んでいる、半導体装置。
【請求項9】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1溝と、
前記第1溝の底面に形成され、前記第1溝よりも深さが深い第2溝と、
前記第1溝内を埋め込む第1膜から成る第1トレンチ分離と、
前記第2溝内に埋め込まれ、前記第2溝内において内部に第1空隙を有する第2膜から成る第2トレンチ分離と、
前記第1トレンチ分離、前記第2トレンチ分離および前記半導体基板のそれぞれの上のパッドの上面に接続されたボンディングワイヤと、
前記ボンディングワイヤの先端を構成するボールと、
平面視において前記ボールの端部と重なる環状の第1領域と、
半導体素子が形成された素子領域と、
を有し、
前記第2トレンチ分離は、前記半導体素子を電気的に分離し、
前記第1領域は、前記ボールの底面のうち、前記第1空隙から、前記半導体基板の上面に対して垂直な第1方向において最も近い前記ボールの前記底面の端部と、前記半導体基板の前記上面に沿う第2方向における前記ボールの最外周との間の領域であって、前記ボールの直下を含み、
前記第2トレンチ分離は、平面視において前記第1領域と交差している、半導体装置。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置において、
前記第2膜は、絶縁膜、シリコン膜または、金属膜である、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、内部に空洞を有する溝を基板に備えた半導体装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の主面としての表面に形成された溝部内に絶縁膜が形成された素子分離構造を有する半導体装置がある。また、溝部の幅に対する溝部の深さの比であるアスペクト比として1よりも高い高アスペクト比を有する溝部内に、空隙を含む絶縁膜が形成された素子分離(Deep Trench Isolation;DTI)構造(トレンチ分離)を有する半導体装置がある。半導体チップとリードフレームなどとを接続する際には、先端にCuボールを備えたCuワイヤ(ボンディングワイヤ)を半導体チップの表面のパッドに接続することが知られている。
【0003】
特許文献1(特開2008-135692号公報)には、ボンディング時の震動でCu電極が揺動し、Cu電極の下の層間絶縁膜にクラックが入るという課題が記載されている。ここでは、パッド部の下層に配置される最上配線兼電極層を、パッド部よりもヤング率が大きな材料で構成することで、ボンディング時に電極の揺動を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空洞を内部に有するトレンチ分離を備えた半導体チップでは、Cuワイヤの接続強度評価のためのプッシュプル試験を行った際、Cuボールの外周部分の直下のトレンチ分離の空隙を境にせん断応力が働き、Si剥がれまたはクラックが発生し易い問題がある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0008】
一実施の形態である半導体装置は、半導体基板の上面に形成に形成された第1溝内の第1トレンチ分離と、第1トレンチ分離の直下において空隙を含む第2トレンチ分離と、半導体基板上のパッドに接続されたボール付きのボンディングワイヤとを有するものである。この半導体装置は、平面視においてボールの端部と重なる環状のトレンチ分離配置禁止領域を有しており、第2トレンチ分離は、平面視においてトレンチ分離配置禁止領域から離間している。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1である半導体装置を示す平面レイアウトである。
【
図4】実施の形態2である半導体装置を示す平面レイアウトである。
【
図5】実施の形態2である半導体装置を示す拡大断面図である。
【
図6】実施の形態2の変形例1である半導体装置を示す平面レイアウトである。
【
図7】実施の形態2の変形例1である半導体装置を示す拡大断面図である。
【
図8】実施の形態2の変形例2である半導体装置を示す平面レイアウトである。
【
図9】実施の形態2の変形例2である半導体装置を示す拡大断面図である。
【
図10】実施の形態3である半導体装置を示す平面レイアウトである。
【
図11】実施の形態3である半導体装置を示す平面レイアウトである。
【
図12】実施の形態3である半導体装置を示す平面レイアウトである。
【
図13】比較例である半導体装置を示す平面レイアウトである。
【
図14】比較例である半導体装置を示す断面図である。
【
図15】比較例である半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その言及した数に限定されるものではなく、言及した数以上でも以下でもよい。
【0012】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0014】
<改善の余地の詳細>
図13に、比較例である半導体装置である半導体チップの平面レイアウトを示す。
図13には、破線で示した矩形のパッド(電極パッド)PDを示している。パッドPDの中央に示す丸は、パッドPDの上面に接続された、ボンディングワイヤであるCuワイヤの先端のCuボールCBの最外周の輪郭である。当該丸の内側に示す破線の丸は、CuボールCBの底面の輪郭である。
図13に行列状に並ぶ複数の四角のそれぞれは、平面視にて矩形の環状レイアウトを有するトレンチ分離DT1である。トレンチ分離DT1は、半導体基板の上面に形成された溝内に埋め込まれた絶縁膜と、当該絶縁膜内に存在する空隙とを含む素子分離(素子分離領域)である。つまり、当該四角の四辺のそれぞれが溝であり、平面視における当該四角の内側の領域は、溝の外の領域である。
【0015】
この比較例では、トレンチ分離DT1が、パッドPDの直下を含め配置制限なく配置されている。このため、
図15で破線の丸で示すCuボールCBの底面の端部と、実線の丸で示すCuボールCBの最外周との間の領域の直下に、トレンチ分離DT1が配置されている。
【0016】
図14および
図15に、CuボールCBの端部近傍およびその直下の領域を含む拡大断面図を示す。
図14および
図15に示すように、比較例の半導体装置である半導体チップは、半導体基板SBと、半導体基板SBの上面の第1の溝D1に埋め込まれた絶縁膜IF1から成るトレンチ分離TIとを有している。また、半導体チップは、トレンチ分離TIの直下に形成されたトレンチ分離DT1を複数有している。トレンチ分離DT1は、トレンチ分離TIの直下に形成され、溝D1よりも深い第2の溝D2と、溝D2内に埋め込まれた絶縁膜IF1と、溝D2内において絶縁膜IF1内に形成された空隙V1とから成る。
【0017】
ここで、半導体チップの上面のパッドPDにCuワイヤを接続する半導体装置では、Cuワイヤを接続した後、Cuワイヤの接続強度評価のためのプッシュプル試験を行う。プッシュプル試験では、Cuワイヤを半導体チップ側に押し付ける試験、および、Cuワイヤを半導体チップから離れる方向に引っ張る試験を行う。
【0018】
このとき、Cuワイヤを半導体チップ側に押し付けた場合には、CuボールCBの端部の直下のトレンチ分離DT1を基準に、CuボールCB側では、半導体基板SBを押す方向に力が加わり、CuボールCBの外側では、半導体基板SBを押し上げる方向に力が働く。反対に、Cuワイヤを上方に引っ張った場合には、CuボールCBの端部の直下のトレンチ分離DT1を基準に、CuボールCB側では半導体基板SBを引き上げる力が加わり、CuボールCBの外側では半導体基板SBを押し下げる方向に力が加わる。このため、プッシュプル試験を通してトレンチ分離DT1の空隙V1を境にせん断応力が働き、シリコン剥がれ(シリコン基板の剥がれ)、酸化膜剥がれ、または、酸化膜におけるクラックが発生し易い問題がある。当該クラックなどは、
図14および
図15に太い破線で示した箇所において、当該破線の下端の空隙V1を起点として生じる。
【0019】
このように、空隙V1を備えたトレンチ分離を有し、ワイヤボンディングを行う半導体装置では、Cuワイヤに力が印加される際のシリコン剥がれ、または、クラックが発生を防ぎ、これにより半導体装置の信頼性を向上させる改善の余地が存在する。
【0020】
<半導体装置の構造>
以下に、
図1~
図3を用いて、本実施の形態の半導体装置の構造について説明する。半導体装置は、半導体チップであり、この半導体チップは、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)、ダイオード、抵抗素子または容量素子などの半導体素子を備えている。これらの半導体素子は、半導体チップを構成する半導体基板内または半導体基板の上面近傍に形成されている。
【0021】
図1には、破線で示した矩形のパッド(電極パッド)PDを示している。パッドPDの中央に示す丸は、パッドPDの上面に接続された、ボンディングワイヤであるCuワイヤの先端を構成するCuボールCBの最外周の輪郭である。当該丸の内側に示す破線の丸は、CuボールCBの底面の輪郭である。
図1にX方向およびY方向に行列状に並ぶ複数の四角のそれぞれは、平面視にて矩形の環状レイアウトを有するトレンチ分離DT1である。
図1に示すX方向およびY方向は、半導体基板の上面(主面)に沿う方向である。X方向およびY方向は、平面視で互いに直交する関係にある。本願では、X方向およびY方向のそれぞれに沿う方向を、横方向と呼び、X方向およびY方向のそれぞれに対して垂直な方向を、縦方向と呼ぶ。トレンチ分離DT1は、半導体基板の上面に形成された溝内に埋め込まれた絶縁膜と、当該絶縁膜内に存在する空隙とを含む素子分離(素子分離領域)である。つまり、上記四角の四辺のそれぞれが溝であり、平面視における当該四角の内側の領域は、溝の外の領域である。CuボールCBの平面視における直径は、ボンディングワイヤの直径よりも大きい。
【0022】
図2に、
図1のA-A線における断面図を示す。
図2に示すように、本実施の形態の半導体装置は、半導体基板SBと、半導体基板SBの上面の第1の溝D1に完全に埋め込まれた絶縁膜IF1から成るトレンチ分離TIとを有している。半導体基板SBは、例えば単結晶Si(シリコン)から成る。また、半導体チップは、トレンチ分離TIの直下に形成されたトレンチ分離DT1を複数有している。トレンチ分離DT1は、トレンチ分離TIの直下に形成され、溝D1よりも深い第2の溝D2と、溝D2内に埋め込まれた絶縁膜IF1と、溝D2内において絶縁膜IF1内に形成された空隙(空洞部)V1とから成る。溝D2は、溝D1の底面に形成され、下方(半導体基板SBの裏面側)に向かって延在している。
【0023】
トレンチ分離TIは、半導体基板SBの主面に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidization of Silicon)法などにより形成された、絶縁膜IF1から成る素子分離領域である。また、トレンチ分離DT1は、DTI(Deep Trench Isolation)構造を有している。ここでは、トレンチ分離DT1を、溝により素子を分離するものとしてトレンチ分離と呼ぶが、トレンチ分離DT1は実際には素子の分離に用いられていないダミー素子分離である。ダミー素子分離は、素子の分離に寄与する素子分離が形成される溝D2を含め、半導体チップに形成される溝D2の製造ばらつきを抑えるために設けられる擬似的な素子分離である。つまり、ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1は、溝D1より深い溝D2のエッチング深さを均一にするために設けられている。ダミー素子分離を配置してトレンチ分離パターンの占有率を調整することで、エッチング深さを均一にすることができる。ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1の上端近傍のトレンチ分離TIも、ダミー素子分離である。
【0024】
トレンチ分離TI、トレンチ分離DT1および半導体基板SBの上には、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、主に酸化シリコン膜などから成る。ただし、実際には、層間絶縁膜ILは積層配線層であり、金属から成る配線を含む配線層を複数積層した構造を有している。
図2には示していないが、層間絶縁膜ILの下の半導体基板SBの上面近傍には、半導体素子が形成されている。層間絶縁膜IL上には、例えば主にAl(アルミニウム)から成るパッドPDが形成されている。パッドPDは、上記配線を介して、上記半導体素子に電気的に接続されている。パッドPDの端部の上面および側面は、層間絶縁膜ILの上面を覆うパッシベーション膜PFにより覆われている。
【0025】
パッシベーション膜PFから露出しているパッドPDの上面には、Cu(銅)から成るボンディングワイヤであるCuワイヤCWが接続されている。具体的には、CuワイヤCWの先端のCuボールCBがパッドPDの上面に押し付けられ、CuボールCBは潰れた状態となっている。これにより、CuボールCBに隣接する領域では、パッドPDの上面の一部が盛り上がっている。潰れたCuボールCBは、平坦な底面と、曲面から成る側面とを備えている。
【0026】
ここで、
図1および
図3を用いて、本実施の形態の半導体装置の主な特徴について説明する。
図3は、
図2の一部(破線で示す箇所)を拡大した断面図である。
図3に示すように、本実施の形態の半導体装置は、トレンチ分離配置禁止領域1Aを有している。トレンチ分離配置禁止領域1Aは、
図1に示す破線の丸と実線の丸との間の領域である。すなわち、トレンチ分離配置禁止領域1Aは、平面視においてCuボールCBの端部と重なる環状の領域である。
【0027】
具体的には、トレンチ分離配置禁止領域1Aは、
図3に示すCuボールCBの底面のうち、トレンチ分離DT1を構成する空隙V1から、縦方向において最も近いCuボールCBの底面の端部と、横方向におけるCuボールCBの最外周との間の領域であり、CuボールCBの直下の領域を含む。言い換えれば、トレンチ分離配置禁止領域1Aは、CuボールCBの底面のうち、トレンチ分離DT1を構成する空隙V1から、縦方向において最も近いCuボールCBの底面の端部と、平面視でのCuボールCBの径方向において、CuボールCBの最外周との間が最短である領域である。本実施の形態の半導体装置の主な特徴は、このトレンチ分離配置禁止領域1Aの半導体基板SB内にトレンチ分離DT1を配置せず、トレンチ分離配置禁止領域1A以外の半導体基板SB内にトレンチ分離DT1を配置している。
【0028】
上記した、トレンチ分離DT1を構成する空隙V1から、縦方向において最も近いCuボールCBの底面の端部とは、
図3に示すCuボールCBの底面のうち、縦方向(高さ方向、厚さ方向)の距離Lが最も短い領域の端部を指す。当該端部は、CuボールCBの底面のうち、縦方向における空隙V1からの距離Lが最も短い領域(平坦な底面)と、縦方向における空隙V1からCuボールCBまでの距離が、CuボールCBの最外周に向かって徐々に大きくなる領域(曲面を有する側面)との境界である。
【0029】
(本実施の形態の効果)
図14および
図15を用いて説明したように、Cuワイヤが半導体基板SB側に押された場合または上方に引っ張られた場合には、CuボールCBの端部の直下、すなわち上述したトレンチ分離配置禁止領域1Aにトレンチ分離DT1が形成されていると、当該トレンチ分離DT1を基準に、半導体基板SB内にせん断応力が働く。そこで、本実施の形態では、
図3に示すように、トレンチ分離配置禁止領域1Aにトレンチ分離DT1を配置しておらず、これにより、当該せん断応力の発生を防げる。したがって、半導体チップにおけるシリコン剥がれ、酸化膜剥がれ、または、酸化膜におけるクラックの発生を防げるため、半導体装置の信頼性を向上できる。よって、上記改善の余地を解消できる。
【0030】
また、より確実にシリコン剥がれ、酸化膜剥がれ、または、酸化膜におけるクラックの発生を防ぐため、CuボールCBの位置合わせずれ、CuボールCBの径ばらつきなどを考慮する必要がある。このため、トレンチ分離配置禁止領域1Aを横方向(平面視におけるCuボールCBの径方向)にさらに広げたトレンチ分離配置禁止領域1Bを設ける方がより好ましい。
【0031】
また、ここでは、溝D2内に空隙V1を伴った絶縁膜IF1が埋め込まれていることについて説明したが、溝D2内に埋め込まれる膜の材料は、ポリシリコン膜、または、W(タングステン)などから成る金属膜であってもよい。溝D2内にポリシリコン膜または金属膜などの導電膜が埋め込まれる場合としては、当該導電膜を介して半導体基板SBに電位を供給する場合、当該導電膜を素子分離に用いる場合、または、当該導電膜を容量素子として用いる場合などが考えられる。溝D2内にポリシリコン膜または金属膜のいずれが埋め込まれる場合であっても、溝D2内のそれらの膜内には、空隙V1が形成されている。そのような膜を含むトレンチ分離をトレンチ分離配置禁止領域1Aに形成しないことで、上述した本実施の形態の効果を得られる。
【0032】
(実施の形態2)
図4および
図5(特に
図4)に示すように、半導体素子を電気的に分離するためのトレンチ分離DT2が設けられていてもよい。
図5は、
図3と同様に、CuボールCBの端部近傍を示す拡大断面図である。
図4に示すように、本実施の形態では、半導体素子が形成された素子領域1Cが存在している。素子領域1Cの周囲の半導体基板内には、トレンチ分離DT1と同じ構造を有するトレンチ分離DT2が形成されている。トレンチ分離DT2は、素子領域1Cを平面視で囲むように、矩形の環状構造を有している。
【0033】
ここでは、素子領域1Cおよびその周囲のトレンチ分離DT2は、平面視において、トレンチ分離配置禁止領域1Aの内側および外側のそれぞれに形成されている。ただし、平面視において、トレンチ分離配置禁止領域1Aとトレンチ分離DT2とは互いに離間しており、重なっていない。
【0034】
本実施の形態では、ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1と、素子の電気的分離に用いられるトレンチ分離DT2との両方を、トレンチ分離配置禁止領域1Aから離間した位置に形成している。このため、Cuワイヤが半導体基板SB側に押された場合または上方に引っ張られた場合に、トレンチ分離DT1またはDT2を基準に、半導体基板SB内にせん断応力が働くことを防げる。したがって、半導体チップにおけるシリコン剥がれ、酸化膜剥がれ、または、酸化膜におけるクラックの発生を防げるため、半導体装置の信頼性を向上できる。
【0035】
<変形例1>
図6および
図7に示すように、素子領域1Cが、平面視でトレンチ分離配置禁止領域1Aの全体と重なっていてもよい。この場合、素子領域1CはCuボールCBの直下の領域を全て含んでおり、平面視において、当該素子領域1Cを囲むトレンチ分離DT2は、トレンチ分離配置禁止領域1Aの全体を囲んでいる。つまり、トレンチ分離DT2はトレンチ分離配置禁止領域1Aから離間している。また、素子領域1C内に、トレンチ分離DT1は形成されていない。
【0036】
本変形例では、ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1と、素子の電気的分離に用いられるトレンチ分離DT2との両方を、トレンチ分離配置禁止領域1Aから離間した位置に形成している。このため、Cuワイヤが半導体基板SB側に押された場合または上方に引っ張られた場合に、トレンチ分離DT1またはDT2を基準に、半導体基板SB内にせん断応力が働くことを防げる。したがって、半導体チップにおけるシリコン剥がれ、酸化膜剥がれ、または、酸化膜におけるクラックの発生を防げるため、半導体装置の信頼性を向上できる。
【0037】
<変形例2>
図8および
図9に示すように、素子領域1Cが、平面視でトレンチ分離配置禁止領域1Aの一部と重なっていてもよい。ここでは、素子領域1Cおよびその周囲のトレンチ分離DT2のそれぞれの一部は、いずれも平面視でCuボールCBと重なっている。ここでは、内部に空隙V1を含むトレンチ分離DT2が、トレンチ分離配置禁止領域1Aに形成されている。ただし、環状のトレンチ分離配置禁止領域1Aと、トレンチ分離DT2とは、平面視で交差しており、平行な状態で重なってはいない。
【0038】
トレンチ分離配置禁止領域1Aとトレンチ分離DT2と平面視で平行している場合、つまり、トレンチ分離DT2がサークル状のトレンチ分離配置禁止領域1Aの接線のように延在している場合には、改善の余地で説明したようにせん断応力が生じ易い。しかし、本変形例のように、トレンチ分離配置禁止領域1Aとトレンチ分離DT2とが平面視で交差している場合には、せん断応力の発生を抑えることができる。サークル状に延在するトレンチ分離配置禁止領域1Aとトレンチ分離DT2とが平面視において交差する角度は、例えば45度以上、90度以下であることが好ましい。
【0039】
本変形例では、前記実施の形態1と同様に、ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1はトレンチ分離配置禁止領域1Aから離間している。よって、本変形例では、Cuワイヤが半導体基板SB側に押された場合または上方に引っ張られた場合に、トレンチ分離DT1またはDT2を基準に、半導体基板SB内にせん断応力が働くことを防げる。したがって、半導体チップにおけるシリコン剥がれ、酸化膜剥がれ、または、酸化膜におけるクラックの発生を防げるため、半導体装置の信頼性を向上できる。
【0040】
(実施の形態3)
前記実施の形態1、2では、ダミー素子分離であるトレンチ分離が形成されている場合について説明したが、以下では、ダミー素子分離がない場合について、
図10~
図12を用いて説明する。
図10図11および
図12は、それぞれ別々の実施例を示す平面レイアウトである。
【0041】
図10に示す構造は、
図4を用いて説明した構造と異なり、ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1を有していない。ここでは、素子領域1Cおよびその周囲のトレンチ分離DT2のそれぞれは、トレンチ分離配置禁止領域1Aから離間しており、平面視においてトレンチ分離配置禁止領域1Aの内側または外側に位置している。トレンチ分離DT2はトレンチ分離配置禁止領域1Aに形成されておらず、ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1が形成されていないため、前記実施の形態2(
図4参照)に比べ、より効果的にせん断応力の発生を防げる。
【0042】
図11に示す構造は、
図6を用いて説明した構造と異なり、ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1を有していない。ここでは、素子領域1Cは平面視においてトレンチ分離配置禁止領域1Aの全体に重なっており、素子領域1Cの周囲のトレンチ分離DT2は、トレンチ分離配置禁止領域1Aから離間している。このように、トレンチ分離DT2はトレンチ分離配置禁止領域1Aに形成されておらず、ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1が形成されていないため、前記実施の形態2の変形例1(
図6参照)に比べ、より効果的にせん断応力の発生を防げる。
【0043】
図12に示す構造は、
図8を用いて説明した構造と異なり、ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1を有していない。ここでは、素子領域1Cおよびその周囲のトレンチ分離DT2のそれぞれの一部は、トレンチ分離配置禁止領域1Aと平面視で重なっている。ただし、環状のトレンチ分離配置禁止領域1Aと、トレンチ分離DT2とは、平面視で交差しており、平行な状態で重なってはいない。また、ダミー素子分離であるトレンチ分離DT1が形成されていない。このため、前記実施の形態2の変形例2(
図8参照)に比べ、より効果的にせん断応力の発生を防げる。
【0044】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1A、1B トレンチ分離配置禁止領域
1C 素子領域
D1、D2 溝
DT1、DT2 トレンチ分離
IF1 絶縁膜
IL 層間絶縁膜
TI 素子分離
V1 空隙