(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】ケーシング
(51)【国際特許分類】
F16C 1/26 20060101AFI20241028BHJP
F16C 1/10 20060101ALI20241028BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
F16C1/26 B
F16C1/10 C
B25J15/08 J
(21)【出願番号】P 2021121314
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 智弘
(72)【発明者】
【氏名】竹村 佳也
(72)【発明者】
【氏名】和井田 寛則
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲也
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/013000(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0025542(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 1/26
F16C 1/10
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を伝達するワイヤを受容する受容孔を形成するべく、一つの列に沿って並んで配置される複数の筒状体を備えたケーシングであって、
隣接する2つの前記筒状体のうち、
一方の前記筒状体には、他方の前記筒状体に隣接する端部において、縮径する挿入部が設けられ、
他方の前記筒状体には、一方の前記筒状体に隣接する端部において、内孔が前記挿入部に整合するように拡径し、且つ、前記挿入部を一方の前記筒状体の軸線に対して、他方の前記筒状体の軸線が傾動可能となるように受容する被挿入部が設けられ、
前記挿入部が前記被挿入部に挿入され、且つ、一方の前記筒状体の
前記軸線に対して、他方の前記筒状体の
前記軸線が所定角度傾動したときに、2つの前記軸線を含む断面において、2つの前記筒状体の傾動方向側の内周面が連続し
て一つの円弧となり、
前記挿入部と前記被挿入部とには、一方の前記筒状体の前記軸線に対して、他方の前記筒状体の前記軸線が所定角度以上の傾動を規制する規制機構が設けられ、
前記規制機構は、前記挿入部の基端に設けられた前記軸線を中心とする円環状の環状肩面と、前記被挿入部の突端に設けられた前記軸線を中心とする円環状の環状突端面とを含み、
前記挿入部が前記被挿入部に挿入され、且つ、一方の前記筒状体の前記軸線に対して、他方の前記筒状体の前記軸線が前記角度傾動したときには、前記環状肩面が前記環状突端面に衝当し、
前記環状肩面は直円錐台の外周面状をなし、
前記環状突端面は逆円錐台の内周面状をなし、
前記環状肩面と前記軸線とがなす角度と、前記環状突端面と前記軸線とがなす角度との和は180度より大きく、
一方の前記筒状体が他方の前記筒状体に対して前記所定角度傾動したときに、前記環状肩面と前記環状突端面とが2つの前記軸線を含む面内において線接触するケーシング。
【請求項2】
前記挿入部の外周には凸球面状の凸摺動面が設けられ、
前記被挿入部の内周には凹球面状の凹摺動面が設けられ、
前記凸摺動面と前記凹摺動面とは互いに摺動可能な相補的な形状をなす
請求項1に記載のケーシング。
【請求項3】
両端に前記挿入部を備えた第1筒状体と、両端に前記被挿入部を備えた第2筒状体とを含み、
前記第1筒状体と前記第2筒状体とは交互に並んで配置されている
請求項1又は請求項2に記載のケーシング。
【請求項4】
前記第2筒状体の内孔を画定する壁面は、前記被挿入部の間において、前記軸線に向かって隆起している
請求項3に記載のケーシング。
【請求項5】
前記筒状体は、一端に前記挿入部を備え、他端に前記被挿入部を備える
請求項1~4のいずれか1項に記載のケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力を伝達するためのワイヤを収容するケーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドブレーキや、ロボットハンド等において、駆動力を伝達するためのワイヤをチューブに挿通したワイヤ駆動力伝達機構が広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、引張力を伝達するためのケーブルと、ケーブルを収容する可撓性チューブと、可撓性チューブを取り囲むハウジングとを備えたケーブルシステムが開示されている。ハウジングは並列された複数のフォームパーツによって構成されている。
【0004】
フォームパーツはボアを備えた筒状をなしている。フォームパーツの一方側の端面には、凸状の球面曲率を有する支持面が設けられている。フォームパーツの他方側には支持面に整合する凹状の開口部が設けられている。フォームパーツの一方側が、隣接する他のフォームパーツの他方側にねじ込まれると、支持面の表面が開口部の表面に摺動し、フォームパーツが互いに回動可能に結合される。これにより、フォームパーツのボアが連続して通路を形成し、可撓性チューブがその通路内に収容されている。
【0005】
特許文献2には、特許文献1と同様に、複数の円筒状の節輪が順次互いに連結することにより構成されたチューブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6250175号明細書
【文献】特開2014-124475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、ハウジングが屈曲すると、フォームパーツが隣接するフォームパーツに対して回転する。これにより、フォームパーツの端部が、隣接するフォームパーツのボア内において突出するため、可撓性チューブやワイヤに当接し、ワイヤの変形が引き起される虞がある。
【0008】
以上の背景に鑑み、本発明は、駆動力を伝達するワイヤを受容する複数の筒状体を備え、ワイヤが変形し難いケーシングを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、駆動力を伝達するワイヤ(6)を受容する受容孔(12)を形成するべく、一つの列に沿って並んで配置される複数の筒状体(10a,10b、10c、10d,10e)を備えたケーシング(2、52、60)であって、隣接する2つの前記筒状体のうち、一方の前記筒状体(10a、10c、10d)には、他方の前記筒状体に隣接する端部において、縮径する挿入部(20)が設けられ、他方の前記筒状体(10b、10e)には、一方の前記筒状体に隣接する端部において、内孔(12a,12c)が前記挿入部に整合するように拡径し、且つ、前記挿入部を一方の前記筒状体の軸線に対して、他方の前記筒状体の軸線が傾動可能となるように受容する被挿入部(30)が設けられ、前記挿入部が前記被挿入部に挿入され、且つ、一方の前記筒状体の軸線(X、Z)に対して、他方の前記筒状体の軸線(Y、Z)が所定角度(δ)傾動したときに、2つの前記軸線を含む断面において、2つの前記筒状体の傾動方向側の内周面(18S,28S、54S)が連続し、且つ、同一円弧(Ca)上に位置する。
【0010】
この態様によれば、複数の筒状体を備えたケーシングにおいて、ケーシングが屈曲し、筒状体が隣接する筒状体に対して所定角度傾動すると、2つの筒状体の傾動方向側の内周面が連続し、且つ、同一円弧上に位置する。そのため、筒状体が隣接する筒状体に対して所定角度傾動したときに、筒状体の端部が受容孔内において突出し難くなり、ワイヤの変形が防止できる。
【0011】
上記の態様において、前記挿入部と前記被挿入部とには、一方の前記筒状体の前記軸線に対して、他方の前記筒状体の前記軸線が所定角度以上の傾動を規制する規制機構(38)が設けられているとよい。
【0012】
この態様によれば、ワイヤのケーシングに合わせた屈曲によって、ワイヤの曲率が大きくなりすぎ、ワイヤに負荷が加わることが防止できる。
【0013】
上記の態様において、前記規制機構は、前記挿入部の基端に設けられた前記軸線(X、Z)を中心とする円環状の環状肩面(26)と、前記被挿入部の突端に設けられた前記軸線(Y、Z)を中心とする円環状の環状突端面(34)とを含み、前記挿入部が前記被挿入部に挿入され、且つ、一方の前記筒状体の前記軸線に対して、他方の前記筒状体の前記軸線が前記角度傾動したときには、前記環状肩面が前記環状突端面に衝当するとよい。
【0014】
この態様によれば、環状肩面と環状突端面とが衝当することによって、筒状体の中心軸線に対して、隣接する筒状体の中心軸線が所定角度以上となるような傾動を規制できる。
【0015】
上記の態様において、前記環状肩面は直円錐台の外周面状をなし、前記環状突端面は逆円錐台の内周面状をなし、前記環状肩面と前記軸線とがなす角度(θ)と、前記環状突端面と前記軸線とがなす角度(φ)との和は180度より大きく、一方の前記筒状体が他方の前記筒状体に対して前記所定角度傾動したときに、前記環状肩面と前記環状突端面とが2つの前記軸線を含む面内において線接触するとよい。
【0016】
この態様によれば、環状肩面と環状突端面とが点接触する場合に比べて、第1筒状体の第2筒状体に対する傾動を的確に規制することができる。
【0017】
上記の態様において、前記挿入部の外周には凸球面状の凸摺動面(22)が設けられ、前記被挿入部の内周には凹球面状の凹摺動面(32)が設けられ、前記凸摺動面と前記凹摺動面とは互いに摺動可能な相補的な形状をなすとよい。
【0018】
この態様によれば、筒状体を互いに回動可能に接続できる。
【0019】
上記の態様において、両端に前記挿入部を備えた第1筒状体(10a)と、両端に前記被挿入部を備えた第2筒状体(10b)とを含み、前記第1筒状体と前記第2筒状体とは交互に並んで配置されているとよい。
【0020】
この態様によれば、第1筒状体と第2筒状体との二種類の部材を組み合わせることによって、ケーシングを構成できる。
【0021】
上記の態様において、前記第2筒状体の内孔を画定する壁面(28S)は、前記被挿入部の間において、前記軸線に向かって隆起しているとよい。
【0022】
この態様によれば、第2筒状体の内孔を画定する壁面が中心軸線側に隆起しているため、ケーシングが屈曲し、筒状体が隣接する筒状体に対して所定角度傾動すると、2つの筒状体の傾動方向側の内周面を同一円弧に沿って連続させることができる。
【0023】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、前記筒状体(10c)は、一端に前記挿入部を備え、他端に前記被挿入部を備えるとよい。
【0024】
この態様によれば、一種類の部材を組み合わせることによって、ケーシングを簡素に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(A)第1実施形態に係るケーシングであって、最も屈曲した状態を示す部分断面図、(B)第1筒状体及び第2筒状体が組み合わされた状態を示す斜視図、及び、(C)
図1(A)の二点鎖線で囲まれた部分の拡大図
【
図2】(A)第2実施形態に係るケーシングであって、最も屈曲した状態を示す部分断面図、及び、(B)2つの第3筒状体が組み合わされた状態を示す斜視図
【
図3】(A)本発明に係るケーシングの変形例を示す斜視図、及び、(B)そのケーシングが設けられたロボットハンドの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態に係るケーシングの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
<<第1実施形態>>
図1に示すように、本実施形態に係るケーシング2はワイヤ駆動力伝達体4を受容するケースである。ワイヤ駆動力伝達体4は押し出し力や引っ張り力を含む駆動力を伝達するための金属製のワイヤ6と、ワイヤ6が挿通される可撓性のチューブ8とを含む。ワイヤ駆動力伝達体4は、例えば、自転車のハンドブレーキや、ロボットの指先を駆動させるために使用される。
【0028】
ケーシング2は、
図1(A)に示すように、複数の筒状体10を含む。筒状体10はそれぞれ中心軸線X、Yに沿って延びる筒状の部材であり、貫通孔である内孔12(ボア)を備えている。筒状体10はステンレス等の金属によって構成されていてもよく、プラスチック等の樹脂製の部材によって構成されていてもよい。
【0029】
筒状体10は一つの列をなすように並んで配置されている。筒状体10の内孔12はそれぞれ、隣接する筒状体10の内孔12に接続している。連続する内孔12によって、ワイヤ6を受容する受容孔13が形成され、受容孔13はワイヤ6を受容する通路Tを構成する。本実施形態では、その受容孔13にワイヤ駆動力伝達体4であるワイヤ6及びチューブ8が挿通されている。
【0030】
筒状体10は、第1筒状体10aと、第2筒状体10bとを含む。第1筒状体10aと第2筒状体10bとが交互に並ぶように配置されている。
【0031】
図1(B)に示すように、第1筒状体10aは中心軸線Xを中心とする回転対称な円筒状をなしている。第1筒状体10aの内孔12(以下、内孔12a)は中心軸線Xに沿って延び、第1筒状体10aを貫通している。第1筒状体10aの中心軸線X方向における両端部はそれぞれ第2筒状体10bに隣接している。
図1(A)に示すように、第1筒状体10aの内孔12aは中心軸線X方向の略中央部に近づくにつれて縮径している。第1筒状体10aの内周面18S(内孔12aを画定する壁面)は、中心軸線Xを含む縦断面視において中心軸線X方向の略中央部において中心軸に近づくように隆起し、略円弧状をなすように湾曲している。
【0032】
図1(B)に示すように、第1筒状体10aは両端にそれぞれ挿入部20を備えている。挿入部20の外面は、中心軸線X方向外端(遊端)において、外面が中心軸線X方向外方に向かって縮径している。挿入部20の遊端外面(以下、凸摺動面22)は、凸球面状をなしている。
【0033】
挿入部20の中心軸線X方向内端(基端)には、基端側に向かってステップ状に拡径する部分である段部24が設けられている。段部24は隣接する第2筒状体10bの方向であって、概ね中心軸線X方向遊端側を向く環状肩面26を備えている。環状肩面26は中心軸線Xを中心とする円環状をなしている。
【0034】
図1(C)に示すように、環状肩面26は中心軸線Xから離れる方向に向かって、基端側に傾斜している。換言すれば、環状肩面26は中心軸線Xから離れるに従って、隣接する第2筒状体10bから離反する方向に傾斜している。これにより、
図1(B)に示すように、環状肩面26は直円錐台の外周面状をなしている。
【0035】
第2筒状体10bは、中心軸線Yを中心とする回転対称な円筒状をなしている。第2筒状体10bの内孔12(以下、内孔12b)は中心軸線Yに沿って延び、第2筒状体10bを貫通している。第2筒状体10bの中心軸線Y方向における両端部はそれぞれ第1筒状体10aに隣接している。
図1(A)に示すように、内孔12bは中心軸線Y方向略中央部に近づくにつれて縮径している。
【0036】
図1(B)に示すように、第2筒状体10bは、両端にそれぞれ被挿入部30を備えている。内孔12bは、被挿入部30の中心軸線Y方向外端(遊端)において、挿入部20を傾動可能に受容するべく、中心軸線Y方向外方に向かって拡径している。内孔12bは挿入部20に整合する形状をなす。内孔12bの被挿入部30の遊端側の部分を画定する面(以下、凹摺動面32)は、凹球面状をなしている。凸摺動面22と凹摺動面32とは、互いに摺動可能な相補的な形状をなしている。
図1(A)に示すように、第2筒状体10bの内周面28S(内孔12bを画定する壁面)は、被挿入部30の間において、中心軸線Yに向かって隆起し、中心軸線Yを含む縦断面視で略円弧状をなすように湾曲している。
【0037】
被挿入部30の突端には、隣接する第1筒状体10aの方向であって、概ね中心軸線Yの方向を向く環状突端面34が設けられている。環状突端面34は中心軸線Yを中心とする円環状をなしている。
【0038】
図1(C)に示すように、環状突端面34は中心軸線Yから離れる方向に向かって、突端側に傾斜している。換言すれば、環状突端面34は中心軸線Yから離れるに従って、隣接する第1筒状体10aに近接する方向に傾斜している。これにより、環状突端面34は逆円錐台の内周面状をなしている。
【0039】
本実施形態では、第1筒状体10aの中心軸線Xと環状肩面26とのなす角度θと、第2筒状体10bの中心軸線Yと環状突端面34とのなす角度φとの和は、180度よりも大きい。
【0040】
図1(A)に示すように、第1筒状体10aと第2筒状体10bとはワイヤ6に沿って交互に配置されている。
図1(B)に示すように、第1筒状体10aの挿入部20はそれぞれ、凸摺動面22と凹摺動面32とが互いに接するように、隣接する第2筒状体10bの被挿入部30に挿入されている。凸摺動面22と凹摺動面32とが相補的な形状をなし、互いに摺動可能であるため、第1筒状体10aと第2筒状体10bとは凹摺動面32の中心点P(
図1(C)参照)を中心とする回動可能に接続される。これにより、挿入部20と被挿入部30とによってボールジョイント36(球関節)が構成される。このとき、
図1(A)に示すように、第1筒状体10aの内孔12aと第2筒状体10bの内孔12bとが連続し、ワイヤ6及びチューブ8を挿通させる受容孔13を形成する。
【0041】
図1(A)に示すように、第1筒状体10aの中心軸線Xと、第2筒状体10bの中心軸線Yとが一直線上に位置しているときから、第1筒状体10aが所定角度(以下、上限角度δと記載する)傾動すると、
図1(C)に示すように、環状肩面26が環状突端面34に衝当し、その傾動が規制される。すなわち、環状肩面26と環状突端面34とによって、第1筒状体10aの第2筒状体10bに対する所定角度以上の傾動を規制する規制機構38が構成される。すなわち、挿入部20と被挿入部30とには、第1筒状体10aの第2筒状体10bに対する上限角度δ以上の傾動を規制する規制機構38が設けられている。
図1(A)は、ケーシング2が、最も屈曲した状態を示している。
【0042】
本実施形態では、第1筒状体10aの中心軸線Xと環状肩面26とのなす角度θと、第2筒状体10bの中心軸線Yと環状突端面34とのなす角度φとの和は、180度よりも大きく、θとφの差は上限角度δに等しい。これにより、第1筒状体10aが第2筒状体10bに対して上限角度δ傾動すると、
図1(C)に示すように、環状肩面26と、環状突端面34とは、中心軸線X、Yを含む面内において線接触する。よって、環状肩面26と環状突端面34とが点接触する場合に比べて、第1筒状体10aの第2筒状体10bに対する傾動をより的確に規制することができる。
【0043】
第1筒状体10aがそれぞれ隣接する第2筒状体10bに対して上限角度δ傾動しているときには、
図1(A)に示すように、第1筒状体10aと第2筒状体10bとは円周C上に沿って並ぶように配置されている。第1筒状体10aの内周面18Sと、第2筒状体10bの内周面28Sとは、2つの中心軸線X、Yを含む断面において、第1筒状体10aの傾動方向側(円周Cの中心側)において連続している。更に、第1筒状体10aの内周面18Sは挿入部20の間において中心軸線Xに向かって隆起し、第2筒状体10bの内周面28Sは被挿入部30の間において、中心軸線Yに向かって隆起している。第1筒状体10aの内周面18Sと、第2筒状体10bの内周面28Sとはともに、2つの中心軸線X、Yを含む縦断面視において、第1筒状体10aの傾動方向側(円周Cの中心側)において同一円弧Ca上に位置している。
【0044】
次にこのように構成したケーシング2の効果について説明する。
図1(A)に示すように、第1筒状体10aがそれぞれ隣接する第2筒状体10bに対して上限角度傾動しているときには、ケーシング2が屈曲し、ケーシング2に収容されたワイヤ6は円弧状をなすように湾曲する。
【0045】
第1筒状体10aがそれぞれ隣接する第2筒状体10bに対して上限角度δ傾動しているときには、2つの中心軸線X、Yを含む断面において、第1筒状体10aの内周面18Sと、第2筒状体10bの内周面28Sとは、第1筒状体10aの傾動方向側(円周Cの中心側)において同一円弧Ca上に位置している。そのため、第1筒状体10aの端部及び第2筒状体10bの端部がそれぞれ受容孔13内において突出することが防止できる。これにより、第1筒状体10aの端部や第2筒状体10bの端部がワイヤ6に接触することによるワイヤ6の変形が防止でき、ロボット等における駆動力の伝達が阻害されにくくなる。
【0046】
挿入部20と被挿入部30との間には規制機構38が設けられているため、第1筒状体10aの第2筒状体10bに対する回動角度が上限角度δ以上にならないように規制される。これにより、ワイヤ6の曲率半径が円周Cの半径未満になることが防止できる。すなわち、ワイヤ6の曲率が大きくなりすぎることが防止できる。よって、ワイヤ6に負荷が加わることが防止できる。
【0047】
ケーシング2は、第1筒状体10aと第2筒状体10bとの二種類の部材を組み合わせることによって構成されている。そのため、その構成が簡素であり、組み立てが容易である。
【0048】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係るケーシング52は第1実施形態と同様に、ワイヤ駆動力伝達体4を受容するケースである。
図2(A)に示すように、ケーシング52は、同形をなす複数の筒状体10(以下、第3筒状体10c)によって構成されている点で第1実施形態と異なる。ワイヤ駆動力伝達体4の構成は第1実施形態と同様である。
【0049】
図2(B)に示すように、第3筒状体10cは中心軸線Zを中心とする回転対称をなす筒状をなしている。第3筒状体10cは、中心軸線Zに沿って延び、貫通する内孔12cを備えている。第3筒状体10cは一端側に第1実施形態の第1筒状体10aと同様の挿入部20を備え、他端側に第1実施形態の第2筒状体10bと同様の被挿入部30を備えている。
図2(A)に示すように、第3筒状体10cはその挿入部20が隣接する他の第3筒状体10cの被挿入部30に隣接するように、一列に並んで配置されている。
【0050】
挿入部20は第1実施形態と同様に、隣接する第3筒状体10cに向かって縮径している。挿入部20は第1実施形態と同様に、遊端側外面において凸球面状の凸摺動面22を備えている。
【0051】
被挿入部30は第1実施形態と同様に、その内孔12cが隣接する第3筒状体10cに向かって拡径している。被挿入部30は第1実施形態と同様に、遊端側内周面において凹球面状の凹摺動面32を備えている。凹摺動面32と凸摺動面22とは互いに摺接可能な相補的な形状をなしている。
図2(A)に示すように、第3筒状体10cの内周面54S(内孔12cを画定する壁面)は、挿入部20と被挿入部30との間において、中心軸線Zに向かって隆起している。
【0052】
図2(B)に示すように、第3筒状体10cの挿入部20はそれぞれ、凸摺動面22と凹摺動面32とが互いに接するように、隣接する第3筒状体10cの被挿入部30に挿入されている。凸摺動面22と凹摺動面32とが相補的な形状をなし、互いに摺動可能であるため、第3筒状体10cは、隣接する第3筒状体10cに凹摺動面32の中心点Pを中心として回動可能に接続される。これにより、第1実施形態と同様に、ケーシング52は屈曲可能となっている。
【0053】
図2(A)に示すように、挿入部20の基端側には、第1実施形態と同様に、段部24が設けられている。段部24は、隣接する第3筒状体10cの側を向く円環状の環状肩面26を備えている。被挿入部30の突端側には、第1実施形態と同様に、環状突端面34が設けられている。環状突端面34は、隣接する第3筒状体10cの側を向き、円環状をなしている。
【0054】
第3筒状体10cの中心軸線Zと、隣接する第3筒状体10cの中心軸線Zとが一直線上に位置しているときから、第3筒状体10cが上限角度δ傾動すると、環状肩面26が環状突端面34に衝当し、その傾動が規制される。すなわち、第1実施形態と同様に、環状肩面26と環状突端面34とによって、第3筒状体10cの隣接する第3筒状体10cに対する傾動を規制する規制機構38が構成される。このとき、第3筒状体10cの内周面54Sはそれぞれ、2つの中心軸線Zを含む断面において、傾動方向側(円周Cの中心側)において同一円弧Ca上に位置している。
図2(A)は、ケーシング52が、最も屈曲した状態を示している。
【0055】
次にこのように構成したケーシング52の効果について説明する。第1実施形態と同様に、第3筒状体10cがそれぞれ隣接する第3筒状体10cに対して上限角度δ傾動しているときには、ケーシング52が屈曲し、ケーシング52に収容されたワイヤ6は円弧状をなすように湾曲する。
【0056】
第3筒状体10cがそれぞれ隣接する第3筒状体10cに対して上限角度δ傾動しているときには、第3筒状体10cの内周面54Sがそれぞれ、中心軸線Zを含む断面において、傾動方向側(円周Cの中心側)において同一円弧Ca上に位置している。そのため、第3筒状体10cの端部が受容孔13内において突出することが防止できる。よって、第3筒状体10cの端部がワイヤ6に接触することによるワイヤ6の変形が防止できる。
【0057】
ケーシング52は、一種類の部材である第3筒状体10cを組み合わせることによって構成されている。そのため、その構成が簡素であり、組み立てが容易である。
【0058】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【0059】
上記実施形態では、ケーシング2、52は、ワイヤ6、及び、ワイヤ6を受容するチューブ8を収容していたが、この態様には限定されない。ケーシング52は、駆動力を伝達するワイヤ6のみを収容する態様であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、挿入部20、及び被挿入部30によって、ボールジョイント36(球関節)が構成されていたが、この態様には限定されない。
図3(A)に示すように、ケーシング60を構成する筒状体10の挿入部20及び被挿入部30によって構成される接続部分(ジョイント)は、筒状体10を一軸V回りに回動可能に接続するヒンジジョイント62(蝶番関節)であってもよい。
【0061】
ワイヤ6が2つのリンクにまたがって設けられる場合には、挿入部20と被挿入部30とによって構成されるジョイントは、その2つのリンクの接続態様に合致することが好ましい。
【0062】
図3(B)には、ロボットハンドHに設けられた2つのリンクL1、L2の例が示されている。リンクL1、L2はヒンジジョイントJを介して、一つの軸線W回りに回動可能に接続されている。ワイヤ6(不図示)がケーシング60に収容された状態で、それらのリンクL1、L2をまたぐように設けられている。このとき、挿入部20及び被挿入部30は軸線Wに対して平行な軸線V回りに回動可能に筒状体10d、10eを接続するヒンジジョイント62を構成するとよい。これにより、筒状体10d、10eの隣接する筒状体10d、10eに対する変位が軸線Wに平行な軸線V回りに規制されるため、ケーシング60の屈曲変形が軸線Wに直交する一つの面内に制限される。よって、ケーシング60がその面に直交する方向(すなわち、
図3(B)の紙面に直交する方向)に屈曲することが防止できる。
【符号の説明】
【0063】
2 :第1実施形態に係るケーシング
6 :ワイヤ
10 :筒状体
10 :筒状体
10a :第1筒状体
10b :第2筒状体
10c :第3筒状体
10d :筒状体
10e :筒状体
12 :内孔
12a :内孔
12b :内孔
12c :内孔
13 :受容孔
18S :内周面
20 :挿入部
22 :凸摺動面
26 :環状肩面
28S :内周面
30 :被挿入部
32 :凹摺動面
34 :環状突端面
38 :規制機構
52 :第2実施形態に係るケーシング
54S :内周面
60 :変形例に係るケーシング
Ca :円弧
X :中心軸線
Y :中心軸線
Z :中心軸線
θ :角度
φ :角度