(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】車両用温調システム
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20241028BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241028BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20241028BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20241028BHJP
B60K 6/22 20071001ALI20241028BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20241028BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20241028BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241028BHJP
【FI】
B60K11/04 Z
B60L3/00 J
B60L1/00 L
B60K11/04 H ZHV
B60K1/00
B60K6/22
B60W10/30 900
B60W20/15
B60K1/04 Z
B60K11/04 J
(21)【出願番号】P 2021153639
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】本荘 拓也
(72)【発明者】
【氏名】尾梶 智哉
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-022374(JP,A)
【文献】特開2017-087801(JP,A)
【文献】特開2015-104927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0010766(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113227546(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00-16/00
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60W 10/30
B60W 20/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が備える回転電機及びギヤボックスの温調を行う、第1ポンプが設けられた第1温調回路と、
前記車両が備える電力変換装置の温調を行う、第2ポンプが設けられた第2温調回路と、
前記第1温調回路を循環する第1温調媒体と前記第2温調回路を循環する第2温調媒体との間の熱交換を行う熱交換器と、
制御装置と、
を備える車両用温調システムであって、
前記第1温調回路は、前記第1温調媒体の温度を検出する第1温度センサを備え、
前記第2温調回路は、前記第2温調媒体の温度を検出する第2温度センサと、
前記第2温調媒体と外気との間の熱交換を行うラジエータと、
前記熱交換器を迂回する前記第2温調媒体の第1分岐流路と、
前記熱交換器を通る前記第2温調媒体の第2分岐流路と、
前記第2温調媒体の前記第2分岐流路への流量を調整する流量調整弁と、
を備え、
前記車両は、蓄電装置をさらに備えるとともに、外部電源から供給された電力により前記蓄電装置を充電可能に構成され、
前記電力変換装置は、前記蓄電装置の充電時に駆動し、
前記制御装置は、
前記第1温度センサにより検出された前記第1温調媒体の温度と、前記第2温度センサにより検出された前記第2温調媒体の温度とに基づいて、前記流量調整弁を制御可能に構成され、
前記蓄電装置の充電時であって、前記第1温調媒体の温度が前記第2温調媒体の温度よりも高い場合には、前記第1温調媒体の温度が前記第2温調媒体の温度よりも低い場合に比べて、前記第2分岐流路への流量が少なく、かつ前記第1分岐流路への流量が多くなるように前記流量調整弁を制御する、
車両用温調システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両用温調システムであって、
前記車両は、前記制御装置の制御にしたがって開閉されて、前記ラジエータに当たる外気の量を調整可能に構成されたシャッタをさらに備え、
前記制御装置は、前記第2温調媒体の温度が所定値以下である場合には、前記シャッタを閉じる、
車両用温調システム。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の車両用温調システムであって、
前記制御装置は、前記第2温調媒体の温度が前記第1温調媒体の温度よりも高くなった場合には、前記第2温調媒体の温度が前記第1温調媒体の温度よりも高くなる前に比べて、前記第2分岐流路への流量を多くするように前記流量調整弁を制御する、
車両用温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に対する具体的な対策として、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。車両においても、CO2排出量の削減が強く要求され、駆動源の電動化が急速に進んでいる。具体的には、電気自動車あるいはハイブリッド電気自動車といった、駆動源としての電動機(以下「回転電機」ともいう)と、この電動機に電力を供給可能な二次電池としてのバッテリと、を備える車両(以下「電動車両」ともいう)の開発が進められている。また、このような電動車両は、電力の変換を行う電力変換装置、変速装置を構成するギヤボックス等も備える。さらに、このような電動車両には、回転電機や電力変換装置等の温調を行う車両用温調システムが搭載される。
【0003】
例えば、特許文献1には、オイルが循環して電動機Mを冷却する循環路Lと、冷却水が循環してインバータUを冷却する循環路Fと、循環路Fを流れる冷却水と循環路Lを流れるオイルとの間で熱交換を行う熱交換部(オイルクーラC)と、を備える車両用温調システムが開示されている。また、特許文献2には、オイルの温度が所定値未満の場合には、オイルの温度が上がるよう電動ウォータポンプの吐出量を減らす一方、オイルの温度が所定値以上の場合には、オイルの温度が下がるよう電動ウォータポンプの吐出量を車速に比例して変化させる制御を行うようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-238406号公報
【文献】特開2019-103334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転電機及びギヤボックスの潤滑を行うオイルの温度が低いと、これらのフリクションロスが増大する。したがって、回転電機及びギヤボックスの潤滑を行うオイルの温度が比較的低いときには、なるべく早期にこのオイルを昇温することが望まれるが、従来技術にあってはこの点に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、回転電機及びギヤボックスのフリクションロスの増加を抑制可能な車両用温調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
車両が備える回転電機及びギヤボックスの温調を行う、第1ポンプが設けられた第1温調回路と、
前記車両が備える電力変換装置の温調を行う、第2ポンプが設けられた第2温調回路と、
前記第1温調回路を循環する第1温調媒体と前記第2温調回路を循環する第2温調媒体との間の熱交換を行う熱交換器と、
制御装置と、
を備える車両用温調システムであって、
前記第1温調回路は、前記第1温調媒体の温度を検出する第1温度センサを備え、
前記第2温調回路は、前記第2温調媒体の温度を検出する第2温度センサと、
前記第2温調媒体と外気との間の熱交換を行うラジエータと、
前記熱交換器を迂回する前記第2温調媒体の第1分岐流路と、
前記熱交換器を通る前記第2温調媒体の第2分岐流路と、
前記第2温調媒体の前記第2分岐流路への流量を調整する流量調整弁と、
を備え、
前記車両は、蓄電装置をさらに備えるとともに、外部電源から供給された電力により前記蓄電装置を充電可能に構成され、
前記電力変換装置は、前記蓄電装置の充電時に駆動し、
前記制御装置は、
前記第1温度センサにより検出された前記第1温調媒体の温度と、前記第2温度センサにより検出された前記第2温調媒体の温度とに基づいて、前記流量調整弁を制御可能に構成され、
前記蓄電装置の充電時であって、前記第1温調媒体の温度が前記第2温調媒体の温度よりも高い場合には、前記第1温調媒体の温度が前記第2温調媒体の温度よりも低い場合に比べて、前記第2分岐流路への流量が少なく、かつ前記第1分岐流路への流量が多くなるように前記流量調整弁を制御する、
車両用温調システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転電機及びギヤボックスのフリクションロスの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の車両用温調システムを搭載した車両の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の車両のフロント部分の一例を示す図である。
【
図3】第1温調媒体及び第2温調媒体の温度に基づくバルブ装置及びグリルシャッタの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第1温調媒体及び第2温調媒体の温度に基づくバルブ装置及びグリルシャッタの制御動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図5】本実施形態の車両用温調システムを搭載した車両の他の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両用温調システムが搭載された車両の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0011】
[車両]
まず、本実施形態の車両について
図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両Vは、プラグインハイブリッド電気自動車であり、内燃機関ICEと、制御装置ECUと、車両用温調システム10と、電動機20と、発電機30と、変速装置40と、電力変換装置50と、温調回路60と、を備える。
【0012】
電動機20は、車両Vに搭載された蓄電装置54に蓄電されている電力、又は、発電機30によって発電された電力によって、車両Vを駆動する動力を出力する回転電機である。電動機20は、車両Vの制動時に、車両Vの駆動輪の運動エネルギーによって発電し、蓄電装置54を充電してもよい。電動機20には、電動機20の温度を検出する第3温度センサ20aが設けられている。第3温度センサ20aは、電動機20の温度の検出値を制御装置ECUに出力する。
【0013】
発電機30は、内燃機関ICEの動力によって発電し、蓄電装置54を充電し、又は、電動機20に電力を供給する回転電機である。蓄電装置54は、充放電可能な二次電池であり、直列あるいは直並列に接続された複数の蓄電セル等により構成される。蓄電セルには、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池等が用いられる。
【0014】
変速装置40は、電動機20と車両Vの駆動輪との間に設けられ、電動機20と駆動輪との間における動力伝達が可能に構成された動力伝達装置である。例えば、変速装置40は、電動機20から出力された動力を減速して駆動輪に伝達する歯車式の動力伝達装置である。
【0015】
電力変換装置50には、充電インレット53と、蓄電装置54が接続されている。電力変換装置50は、蓄電装置54から出力された電力を直流から交流へと変換するとともに電動機20及び発電機30の入出力電力を制御する不図示のPDU(Power Drive Unit)と、充電インレット53を介して受け付けた商用電源(外部電源)の交流電力を直流電力に変換するチャージャ52と、チャージャ52から出力された直流電力の電圧を蓄電装置54の充電に適した電圧に変換するVCU(Voltage Control Unit)51とを備える。また、VCU51は、蓄電装置54から出力された電力を必要に応じて昇圧する。VCU51は、車両Vの制動時に電動機20が発電した場合、電動機20が発電した電力を降圧してもよい。電力変換装置50には、電力変換装置50の温度を検出する第4温度センサ50aが設けられている。第4温度センサ50aは、電力変換装置50の温度の検出値を制御装置ECUに出力する。
【0016】
温調回路60は、非導電性の第1温調媒体TCM1が循環し、電動機20、発電機30、及び変速装置40の温調を行う第1温調回路61と、導電性の第2温調媒体TCM2が循環し、電力変換装置50の温調を行う第2温調回路62と、第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との間で熱交換を行う熱交換器63と、を有する。非導電性の第1温調媒体TCM1は、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)と呼ばれる、電動機20、発電機30、及び変速装置40の潤滑及び温調を行うことが可能なオイルである。導電性の第2温調媒体TCM2は、例えば、LLC(Long Life Coolant)と呼ばれる、冷却水である。
【0017】
第1温調回路61には、第1ポンプ611と、貯留部612と、が設けられている。第1ポンプ611は、内燃機関ICEの動力と、車両Vの不図示の車軸の回転力と、によって駆動する機械式ポンプである。貯留部612は、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1を貯留する。貯留部612は、例えば、電動機20、発電機30、及び変速装置40を収容する不図示のハウジングの底部に設けられたオイルパンである。
【0018】
また、第1温調回路61は、第1ポンプ611が設けられた圧送流路610aと、電動機20及び発電機30が設けられた第1分岐流路610b1と、変速装置40が設けられた第2分岐流路610b2と、第1分岐流路610b1又は第2分岐流路610b2に分岐する分岐部613と、を有する。
【0019】
圧送流路610aは、上流側の端部が貯留部612に接続され、第1ポンプ611を通って、下流側の端部が分岐部613に接続される。第1分岐流路610b1は、上流側の端部が分岐部613に接続され、電動機20及び発電機30を通って、下流側の端部が貯留部612に接続される。第2分岐流路610b2は、上流側の端部が分岐部613に接続され、変速装置40を通って、下流側の端部が貯留部612に接続される。
【0020】
第1温調回路61において、熱交換器63は、第1分岐流路610b1における電動機20及び発電機30よりも上流に配置されている。したがって、第1温調回路61には、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、分岐部613から第1分岐流路610b1を通って、熱交換器63で第2温調媒体TCM2と熱交換することによって冷却され、電動機20及び発電機30に供給されて電動機20及び発電機30を潤滑及び温調した後、貯留部612に貯留する第1の流路と、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、分岐部613から第2分岐流路610b2を通って、変速装置40に供給されて変速装置40を潤滑及び温調した後、貯留部612に貯留する第2の流路と、が並列に形成され、貯留部612に貯留した第1温調媒体TCM1が圧送流路610aを流れて第1ポンプ611に供給されて、第1温調媒体TCM1が第1温調回路61を循環する。
【0021】
本実施形態では、第1分岐流路610b1及び第2分岐流路610b2は、第1分岐流路610b1を流れる第1温調媒体TCM1の流量が、第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の流量よりも大きくなるように形成されている。
【0022】
第1温調回路61には、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1の温度を検出する第1温度センサ61aが設けられている。本実施形態では、第1温度センサ61aは、オイルパンである貯留部612に設けられており、貯留部612に貯留する第1温調媒体TCM1の温度を検出する。第1温度センサ61aは、貯留部612に貯留する第1温調媒体TCM1の温度の検出値を制御装置ECUに出力する。
【0023】
また、第1温調回路61は、調圧バルブ619が設けられた調圧回路610cをさらに有する。調圧回路610cは、上流側の端部が貯留部612に接続され、下流側の端部が第1ポンプ611より下流側で圧送流路610aに接続される。調圧バルブ619は、逆止弁であってもよいし、ソレノイドバルブ等の電磁弁であってもよい。第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の液圧が所定圧以上となると調圧バルブ619は開状態となり、第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の一部が貯留部612に戻される。これにより、第1分岐流路610b1及び第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の液圧は、所定圧以下に保持される。
【0024】
第2温調回路62には、第2ポンプ621と、ラジエータ622と、貯留タンク623と、が設けられている。第2ポンプ621は、例えば、蓄電装置54に蓄電された電力によって駆動する電動式ポンプである。また、第2ポンプ621には、第2ポンプ621の回転速度を検出する回転速度センサ621aが取り付けられている。回転速度センサ621aは、第2ポンプ621の回転速度の検出値を制御装置ECUに出力する。
【0025】
ラジエータ622は、車両Vの前部に配置されており、車両Vの走行時における走行風によって、第2温調媒体TCM2を冷却する放熱装置である。ラジエータ622の前方には、ラジエータ622に当たる外気の量を調整可能に構成されたグリルシャッタ70が設けられている。グリルシャッタ70の一例については
図2を用いて後述する。
【0026】
貯留タンク623は、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2を一時的に貯留するタンクである。第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2にキャビテーションが発生した場合でも、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2が貯留タンク623で一時的に貯留されることによって、第2温調媒体TCM2に発生したキャビテーションは消滅する。
【0027】
第2温調回路62は、分岐部624及び合流部625を有する。第2温調回路62は、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622が、上流側からこの順に設けられている。また、第2温調回路62は、圧送流路620aをさらに有する。圧送流路620aは、上流側の端部が合流部625に接続され、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622を通って、下流側の端部が分岐部624に接続される。貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2は、圧送流路620aを通って第2ポンプ621で圧送され、ラジエータ622で冷却される。
【0028】
また、第2温調回路62は、電力変換装置50が設けられた第1分岐流路620b1と、熱交換器63が設けられた第2分岐流路620b2と、をさらに有する。第1分岐流路620b1は、上流側の端部が分岐部624に接続され、電力変換装置50を通って、下流側の端部が合流部625に接続される。第2分岐流路620b2は、上流側の端部が分岐部624に接続され、熱交換器63を通って、下流側の端部が合流部625に接続される。
【0029】
本実施形態では、第2分岐流路620b2における熱交換器63よりも上流部分に、流量調整弁としてのバルブ装置626が設けられている。バルブ装置626は、第2分岐流路620b2を全開状態と全閉状態とのいずれかの状態に切り替えるON-OFFバルブであってもよいし、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量を調節可能な可変流量バルブであってもよい。バルブ装置626は、制御装置ECUによって制御される。
【0030】
圧送流路620aにおいて第2ポンプ621で圧送されてラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2は、分岐部624で第1分岐流路620b1と第2分岐流路620b2とに分岐する。第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2は、電力変換装置50を冷却して合流部625で第2分岐流路620b2及び圧送流路620aと合流する。第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2は、熱交換器63で第1温調媒体TCM1と熱交換することによって第1温調媒体TCM1を冷却し、合流部625で第1分岐流路620b1及び圧送流路620aと合流する。第1分岐流路620b1を流れた第2温調媒体TCM2と第2分岐流路620b2を流れた第2温調媒体TCM2とは、合流部625で合流して圧送流路620aを流れて貯留タンク623に一時的に貯留される。そして、貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2が圧送流路620aを通って第2ポンプ621に再び供給されて、第2温調媒体TCM2が第2温調回路62を循環する。
【0031】
本実施形態では、第1分岐流路620b1及び第2分岐流路620b2は、第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2の流量が、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量よりも大きくなるように形成されている。
【0032】
第2温調回路62には、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2の温度を検出する第2温度センサ62aが設けられている。本実施形態では、第2温度センサ62aは、ラジエータ622と分岐部624との間の圧送流路620aに設けられており、貯留タンク623に貯留する第2温調媒体TCM2の温度を検出する。第2温度センサ62aは、ラジエータ622から排出された第2温調媒体TCM2の温度の検出値を制御装置ECUに出力する。
【0033】
第1温調回路61において、電動機20、発電機30、及び変速装置40を冷却した後に貯留部612に貯留した第1温調媒体TCM1の温度が約100[℃]であるとすると、熱交換器63には、約100[℃]の第1温調媒体TCM1が供給される。
【0034】
一方、第2温調回路62において、ラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2の温度が約40[℃]であるとすると、熱交換器63に供給される第2温調媒体TCM2は、被温調装置である電力変換装置50を通らないため、熱交換器63には、約40[℃]の第2温調媒体TCM2が供給される。
【0035】
この場合、熱交換器63は、熱交換器63に供給された約100[℃]の第1温調媒体TCM1と約40[℃]の第2温調媒体TCM2との間で、熱交換を行う。そして、熱交換器63からは、約80[℃]の第1温調媒体TCM1が、第1温調回路61の第1分岐流路610b1の下流側に排出され、約70[℃]の第2温調媒体TCM2が、第2温調回路62の第2分岐流路620b2の下流側に排出される。
【0036】
このようにして、第1温調媒体TCM1は、熱交換器63で冷却されるので、温調回路60は、第1温調媒体TCM1を冷却するためのラジエータを設けることなく、第1温調媒体TCM1を冷却することができる。したがって、温調回路60は、1つのラジエータ622で、第1温調回路61を流れる第1温調媒体TCM1と第2温調回路62を流れる第2温調媒体TCM2とを冷却することができるので、温調回路60を小型化できる。
【0037】
制御装置ECUは、例えば、各種演算を行うプロセッサ、各種情報を記憶する記憶装置、制御装置ECUの内部と外部とのデータの入出力を制御する入出力装置などを備えるECU(Electronic Control Unit)によって実現され、車両V全体を統括制御する。制御装置ECUは、1つのECUによって実現されてもよいし、複数のECUによって実現されてもよい。制御装置ECUは、例えば、内燃機関ICE、電力変換装置50、第2ポンプ621、バルブ装置626、グリルシャッタ70等を制御する。
【0038】
一般的に、第1温調媒体TCM1は、温度が低くなると粘度が高くなる。そして、第1温調媒体TCM1の粘度が高くなると、電動機20及び変速装置40で生じるフリクションロスが増大し、電動機20及び変速装置40の出力効率が低下する。したがって、例えば電動機20及び発電機30の始動直後等、第1温調媒体TCM1が低温(例えば第1温調媒体TCM1の温度が所定値以下)である場合には、第1温調媒体TCM1は冷却されない方(すなわち昇温される方)が好ましい。
【0039】
そこで、制御装置ECUは、第1温度センサ61aにより検出される第1温調媒体TCM1の温度と、第2温度センサ62aにより検出される第2温調媒体TCM2の温度とに基づいて、バルブ装置626を制御する。これにより、制御装置ECUは、熱交換器63が設けられた第2分岐流路620b2への第2温調媒体TCM2の流量を調整し、熱交換器を63介した第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との熱交換を制御する。
【0040】
具体的に説明すると、制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1の温度が第2温調媒体TCM2の温度よりも高い場合には、第1温調媒体TCM1の温度が第2温調媒体TCM2の温度よりも低い場合に比べて、第2分岐流路620b2への第2温調媒体TCM2の流量が少なくなるようにバルブ装置626を制御する。換言すると、制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1の温度が第2温調媒体TCM2の温度よりも高い場合には、第1温調媒体TCM1の温度が第2温調媒体TCM2の温度よりも低い場合に比べて、第1分岐流路620b1への第2温調媒体TCM2の流量が多くなるようにバルブ装置626を制御する。
【0041】
このように、第1温調媒体TCM1の温度が第2温調媒体TCM2の温度よりも高い場合には、熱交換器63が設けられた第2分岐流路620b2への第2温調媒体TCM2の流量を少なくすることで、熱交換器を63介した第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との熱交換を抑制できる。これにより、第1温調媒体TCM1の熱が第2温調媒体TCM2に伝達されるのを回避して、第1温調媒体TCM1の温度低下を抑制できる。したがって、第1温調媒体TCM1の温度が低いことに起因した電動機20及び変速装置40のフリクションロスの増加を抑制できる。
【0042】
そして、制御装置ECUは、第2温調媒体TCM2の温度が第1温調媒体TCM1の温度よりも高くなった場合には、第2温調媒体TCM2の温度が第1温調媒体TCM1の温度よりも高くなる前に比べて、第2分岐流路620b2への第2温調媒体TCM2の流量が多くなるようにバルブ装置626を制御する。
【0043】
このように、制御装置ECUは、第2温調媒体TCM2の温度が第1温調媒体TCM1の温度よりも高くなると、熱交換器63が設けられた第2分岐流路620b2への第2温調媒体TCM2の流量を多くすることで、熱交換器を63介した第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との熱交換を促進できる。これにより、第2温調媒体TCM2の熱を利用して第1温調媒体TCM1を昇温することが可能となる。
【0044】
ところで、電力変換装置50(例えばVCU51及びチャージャ52)は、蓄電装置54の充電時に駆動して発熱する。このため、蓄電装置54の充電時には、電力変換装置50の熱によって第2温調媒体TCM2の温度が上昇する。従来技術にあっては、このような場合、後述のラジエータファン401を起動する等して、第2温調媒体TCM2の熱を大気放出するのみであった。一方、車両Vの停止中にも、第1温調媒体TCM1を高い温度に維持できれば、次回の車両Vの走行開始時の電動機20等のフリクションロスを低減することが可能である。このため、蓄電装置54の充電時といった、その後に車両Vが走行することが見込まれるときには、第1温調媒体TCM1を温調(例えば昇温)しておくことが望まれる。
【0045】
そこで、制御装置ECUは、蓄電装置54の充電時であって、第1温調媒体TCM1の温度が第2温調媒体TCM2の温度よりも高い場合には、第1温調媒体TCM1の温度が第2温調媒体TCM2の温度よりも低い場合に比べて、第2分岐流路620b2への第2温調媒体TCM2の流量が少なくなるようにバルブ装置626を制御する。これにより、熱交換器63を介した第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との熱交換により第1温調媒体TCM1の温度が低下することを回避しつつ、電力変換装置50の熱を利用して第2温調媒体TCM2を速やかに昇温することが可能となる。そして、第2温調媒体TCM2を速やかに昇温させることで、第2温調媒体TCM2の熱を利用した第1温調媒体TCM1の昇温が実行可能となるまでの期間の短縮を図れる。
【0046】
なお、制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1の温度が所定値以下であることを条件に、前述した第1温調媒体TCM1の温度低下を抑制するための各制御を行うようにしてもよい。
【0047】
また、
図2に示すように、車両Vのフロント部分には、ラジエータ622の後方にラジエータファン401が設けられている。ラジエータファン401は、車両Vの前方(Fr)から後方(Rr)に向かって送風を行うことにより、ラジエータ622に外気を導入する。
【0048】
エアコンコンデンサ402は、車両Vのエア・コンディショナのコンデンサであり、例えば、ラジエータファン401の前方且つラジエータ622の上方に位置している。第1ラジエータ403は、内燃機関ICEを冷却するためのラジエータであり、例えば、ラジエータファン401の前方且つラジエータ622の後方に位置している。
【0049】
ラジエータ622の前方には、グリルシャッタ70が設けられている。グリルシャッタ70は、不図示のモータと、そのモータによって駆動されるルーバ71とを備え、制御装置ECUによって駆動制御される。
【0050】
例えば、制御装置ECUは、第2温調媒体TCM2の温度が所定値(例えば55[℃])を超えた場合には、グリルシャッタ70を開く(例えば全開する)。これにより、第2温調媒体TCM2の温度が上がり過ぎることを回避できる。一方、制御装置ECUは、第2温調媒体TCM2の温度が所定値以下である場合には、グリルシャッタ70を閉じる(例えば全閉する)。これにより、ラジエータ622に当たる外気を少なくでき、ラジエータ622による第2温調媒体TCM2の冷却を抑制できる。したがって、第2温調媒体TCM2を速やかに昇温させることが可能となる。なお、ここで、所定値は、例えば、制御装置ECUの製造者等によりあらかじめ設定される。
【0051】
[制御装置によるバルブ装置及びグリルシャッタの制御例]
次に、
図3及び
図4を参照しながら、制御装置ECUによるバルブ装置626及びグリルシャッタ70の具体的な制御例について説明する。
【0052】
図4中、符号「P1」で示す期間は、車両Vが停車してから、外部電源の電力による蓄電装置54の充電が開始されるまでの期間である。この期間中の任意のタイミングで、ユーザにより、充電プラグ(不図示)が充電インレット53に差し込まれる。そして、充電プラグが充電インレット53に差し込まれた後の所定のタイミングで、外部電源の電力による蓄電装置54の充電が開始される。蓄電装置54の充電開始タイミングは、充電プラグが充電インレット53に差し込まれたタイミングであってもよいし、ユーザによりあらかじめ設定されたタイミングであってもよい。
【0053】
ところで、車両Vが停車すると電動機20等も停止することになるため、
図4に例示するように、第1温調媒体TCM1の温度T1は徐々に低下する。その結果、車両Vが停車している期間(以下「停車期間」ともいう)が長くなると、次回の車両V(電動機20等)の始動時には、第1温調媒体TCM1が低温となっていることが想定される(
図4中、符号「L1」で示す一点鎖線を参照)。このような場合、車両Vの始動直後の電動機20及び変速装置40で生じるフリクションロスが増大する。そこで、制御装置ECUは、このような車両Vの停車中の第1温調媒体TCM1の温度低下を抑制すべく、例えば、車両Vの停車中に
図3に示す処理を実行する。
【0054】
図3に示すように、まず、制御装置ECUは、外部電源の電力による蓄電装置54の充電中であるか否か判断する(ステップS301)。制御装置ECUは、蓄電装置54の充電中であると判断したならば(ステップS301:Yes)、車両Vの停車期間がある程度長くなることが想定されるため、ステップS302へ移行する。一方、制御装置ECUは、蓄電装置54の充電中でないと判断したならば(ステップS301:No)、蓄電装置54の充電が開始されるまでステップS301の処理を繰り返す。
【0055】
ステップS302において、制御装置ECUは、第2ポンプ621を駆動する(ステップS302)。第2ポンプ621を駆動することにより、第2温調媒体TCM2が第2温調回路62内を圧送される。
【0056】
次に、制御装置ECUは、第1温度センサ61aによって検出された第1温調媒体TCM1の温度及び第2温度センサ62aによって検出された第2温調媒体TCM2の温度を取得し(ステップS303)、ステップS304へ移行する。
【0057】
ステップS304において、制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1の温度が第2温調媒体TCM2の温度よりも高いか否か判断する(ステップS304)。制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1の温度が第2温調媒体TCM2の温度よりも高いと判断したならば(ステップS304:Yes)、バルブ装置626を閉じて(ステップS305)、ステップS303に戻る。
【0058】
すなわち、
図4に例示するように、制御装置ECUは、外部電源の電力による蓄電装置54の充電中であり、且つ第1温調媒体TCM1の温度T1が第2温調媒体TCM2の温度T2よりも高い期間(
図4中、符号「P2」で示す期間)には、バルブ装置626を閉じる。これにより、熱交換器63が設けられた第2分岐流路620b2への第2温調媒体TCM2の流量を少なくできるため、熱交換器を63介した第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との熱交換を抑制でき、第1温調媒体TCM1の熱が第2温調媒体TCM2に伝達されることによる第1温調媒体TCM1の温度低下を抑制できる。
【0059】
一方、制御装置ECUは、第2温調媒体TCM2の温度が第1温調媒体TCM1の温度よりも高いと判断すれば(ステップS304:No)、バルブ装置626を開く(ステップS306)。
【0060】
すなわち、
図4に例示するように、制御装置ECUは、外部電源の電力による蓄電装置54の充電中であり、且つ、第2温調媒体TCM2の温度が第1温調媒体TCM1の温度よりも高くなると(
図4中、符号「P3」で示す期間を参照)、バルブ装置626を開く。これにより、熱交換器63が設けられた第2分岐流路620b2への第2温調媒体TCM2の流量を多くできるため、熱交換器を63介した第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との熱交換を促進でき、第2温調媒体TCM2の熱を利用して第1温調媒体TCM1を昇温できる。
【0061】
次に、制御装置ECUは、第1ポンプ611を駆動する(ステップS307)。これにより、第1温調媒体TCM1が第1温調回路61内を圧送される。
【0062】
次に、制御装置ECUは、第2温調媒体TCM2の温度が55[℃]以上になったか否か判断する(ステップS308)。制御装置ECUは、第2温調媒体TCM2の温度が55[℃]以上になったと判断したならば(ステップS308:Yes)、グリルシャッタ70を開くとともに、ラジエータファン401を作動させ(ステップS309)、ステップS310へ移行する。グリルシャッタ70を開き、ラジエータファン401を作動させることにより、ラジエータ622による第2温調媒体TCM2の冷却が促進され、第2温調媒体TCM2が高温になり過ぎることを回避できる。
【0063】
一方、制御装置ECUは、第2温調媒体TCM2の温度が55[℃]以上になっていないと判断したならば(ステップS308:No)、そのままステップS310へ移行する。この場合には、グリルシャッタ70は閉じたままとなり、また、ラジエータファン401も停止したままとなる。
【0064】
すなわち、
図4に例示するように、制御装置ECUは、外部電源の電力による蓄電装置54の充電中には、第2温調媒体TCM2の温度T2が55[℃]以上である期間(
図4中、符号「P4」で示す期間)を除き、グリルシャッタ70を閉じておく(
図4中、符号「P2」及び「P3」で示す期間を参照)。これにより、ラジエータ622による第2温調媒体TCM2の冷却を抑制し、第2温調媒体TCM2の温度低下を抑制できる。
【0065】
次に、制御装置ECUは、第2温調媒体TCM22の温度が50[℃]以下になったか否か判断する。制御装置ECUは、第2温調媒体TCM2の温度が50[℃]以下になったと判断したならば(ステップS310:Yes)、ラジエータファン401を停止させ(ステップS311)、ステップS312へ移行する。このように第2温調媒体TCM2がそれほど高温でなくなった場合には、ラジエータファン401を停止させることで、車両Vにおける消費電力を削減できるとともに、第2温調媒体TCM2の温度低下を抑制できる。
【0066】
一方、制御装置ECUは、第2温調媒体TCM22の温度が50[℃]以下になっていないと判断したならば(ステップS310:No)、そのままステップS312へ移行する。
【0067】
ステップS312において、制御装置ECUは、蓄電装置54の充電率(SOC:State Of Charge)が100[%]になったか否か判断する。制御装置ECUは、蓄電装置54の充電率が100[%]になっていないと判断したならば(S312:No)、ステップS301に戻る。一方、制御装置ECUは、蓄電装置54の充電率が100[%]になったと判断したならば(ステップS312:Yes)、
図3に示す一連の処理を終了する。
【0068】
以上に説明したように、本実施形態によれば、車両Vの停車中の第1温調媒体TCM1の温度低下を抑制すべく、第1温調媒体TCM1の温度T1が第2温調媒体TCM2の温度T2よりも高い期間(例えば
図4中、符号「P2」で示す期間)には、バルブ装置626を閉じる。これにより、次回、車両V(電動機20等)の始動時に第1温調媒体TCM1が低温となっていることを回避して、第1温調媒体TCM1の温度T1が低いことに起因した電動機20及び変速装置40のフリクションロスの増加を抑制できる。
【0069】
一方、仮に、
図3に示した一連の処理を実行しないようにした場合には、
図4中の一点鎖線L1で示すように、車両Vの停車中に第1温調媒体TCM1の温度T1が低下し続けて、次回の車両V(電動機20等)の始動時に第1温調媒体TCM1が低温となる。また、
図4中の二点鎖線L2で示すように、蓄電装置54の充電に伴って第2温調媒体TCM2の温度T2が上昇する。
【0070】
これに対して、本実施形態によれば、第2温調媒体TCM2の熱を利用して、第1温調媒体TCM1を昇温できる。これにより、第1温調媒体TCM1を加温するヒータ等を設けずとも第1温調媒体TCM1の温度低下を抑制でき、また、第2温調媒体TCM2を冷却する消費電力(例えばラジエータファン401による消費電力)を削減しながら第2温調媒体TCM2が高温になり過ぎることを回避できる。
【0071】
なお、以上では、電力変換装置50がチャージャ52を備える構成を例として説明したが、これに限らない。例えば、
図5に示すように、チャージャ52を電力変換装置50の外部に設け、このチャージャ52に、充電インレット53と蓄電装置54とが接続されるような構成としてもよい。このような構成とした場合、チャージャ52は、例えば、第2温調回路62においてラジエータ622と分岐部624との間に配置され、第2温調媒体TCM2によって冷却される。このような構成とした場合であっても、以上に説明した例と同様にして、蓄電装置54の充電時等にチャージャ52が発熱することによる第2温調媒体TCM2の熱を利用して、第1温調媒体TCM1を昇温することが可能である。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0073】
例えば、車両Vが内燃機関ICEを備える構成について説明したが、車両Vは内燃機関ICEを備えない電気自動車であってもよい。
【0074】
また、電力変換装置50と熱交換器63とが並列に配置された構成について説明したが、電力変換装置50と熱交換器63とが直列に配置された構成としてもよい。例えば、ラジエータ622と分岐部624との間に電力変換装置50を配置した構成としてもよい。
【0075】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0076】
(1) 車両(車両V)が備える回転電機(電動機20)及びギヤボックス(変速装置40)の温調を行う、第1ポンプ(第1ポンプ611)が設けられた第1温調回路(第1温調回路61)と、
前記車両が備える電力変換装置(電力変換装置50)の温調を行う、第2ポンプ(第2ポンプ621)が設けられた第2温調回路(第2温調回路62)と、
前記第1温調回路を循環する第1温調媒体と前記第2温調回路を循環する第2温調媒体との間の熱交換を行う熱交換器(熱交換器63)と、
制御装置(制御装置ECU)と、
を備える車両用温調システム(車両用温調システム10)であって、
前記第1温調回路は、前記第1温調媒体の温度を検出する第1温度センサ(第1温度センサ61a)を備え、
前記第2温調回路は、
前記第2温調媒体の温度を検出する第2温度センサ(第2温度センサ62a)と、
前記第2温調媒体と外気との間の熱交換を行うラジエータ(ラジエータ622)と、
前記熱交換器を迂回する前記第2温調媒体の第1分岐流路(第1分岐流路620b1)と、
前記熱交換器を通る前記第2温調媒体の第2分岐流路(第2分岐流路620b2)と、
前記第2温調媒体の前記第2分岐流路への流量を調整する流量調整弁(バルブ装置626)と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1温度センサにより検出された前記第1温調媒体の温度と、前記第2温度センサにより検出された前記第2温調媒体の温度とに基づいて、前記流量調整弁を制御可能に構成され、
前記第1温調媒体の温度が前記第2温調媒体の温度よりも高い場合には、前記第1温調媒体の温度が前記第2温調媒体の温度よりも低い場合に比べて、前記第2分岐流路への流量が少なくなるように前記流量調整弁を制御する、
車両用温調システム。
【0077】
(1)によれば、第1温調媒体の温度が第2温調媒体の温度よりも高い場合には、第1温調媒体の温度が第2温調媒体の温度よりも低い場合に比べて、熱交換器が設けられた第2分岐流路への第2温調媒体の流量を少なくできる。これにより、熱交換器を介した第1温調媒体と第2温調媒体との熱交換を抑制し、第1温調媒体の熱が第2温調媒体に伝達されることによる第1温調媒体の温度低下を抑制できる。したがって、第1温調媒体の温度が低いことに起因した回転電機及びギヤボックスのフリクションロスの増加を抑制できる。
【0078】
(2) (1)に記載の車両用温調システムであって、
前記車両は、蓄電装置(蓄電装置54)をさらに備えるとともに、外部電源から供給された電力により前記蓄電装置を充電可能に構成され、
前記電力変換装置は、前記蓄電装置の充電時に駆動し、
前記制御装置は、前記蓄電装置の充電時であって、前記第1温調媒体の温度が前記第2温調媒体の温度よりも高い場合には、前記第1温調媒体の温度が前記第2温調媒体の温度よりも低い場合に比べて、前記第2分岐流路への流量が少なくなるように前記流量調整弁を制御する、
車両用温調システム。
【0079】
電力変換装置は、車両の蓄電装置の充電時に駆動して発熱する。(2)によれば、蓄電装置の充電時であって、第1温調媒体の温度が第2温調媒体の温度よりも高い場合には、熱交換器が設けられた第2分岐流路への第2温調媒体の流量を少なくできる。これにより、熱交換器を介した第1温調媒体と第2温調媒体との熱交換により第1温調媒体の温度が低下するのを回避しつつ、電力変換装置の熱を利用して第2温調媒体を速やかに昇温することが可能となる。
【0080】
(3) (1)又は(2)に記載の車両用温調システムであって、
前記車両は、前記制御装置の制御にしたがって開閉されて、前記ラジエータに当たる外気の量を調整可能に構成されたシャッタ(グリルシャッタ70)をさらに備え、
前記制御装置は、前記第2温調媒体の温度が所定値以下である場合に前記シャッタを閉じる、
車両用温調システム。
【0081】
(3)によれば、第2温調媒体の温度が所定値以下である場合には、シャッタを閉じることで、ラジエータによる第2温調媒体の冷却を抑制できる。
【0082】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の車両用温調システムであって、
前記制御装置は、前記第2温調媒体の温度が前記第1温調媒体の温度よりも高くなった場合には、前記第2温調媒体の温度が前記第1温調媒体の温度よりも高くなる前に比べて、前記第2分岐流路への流量を多くするように前記流量調整弁を制御する、
車両用温調システム。
【0083】
(4)によれば、第2温調媒体の温度が第1温調媒体の温度よりも高くなった場合には、第2温調媒体の温度が第1温調媒体の温度よりも高くなる前に比べて、熱交換器が設けられた第2分岐流路への第2温調媒体の流量を多くできる。これにより、熱交換器を介した第1温調媒体と第2温調媒体との熱交換を促進し、第2温調媒体の熱を利用して第1温調媒体を昇温できる。
【符号の説明】
【0084】
10 車両用温調システム
20 電動機(回転電機)
40 変速装置(ギヤボックス)
50 電力変換装置
61 第1温調回路
61a 第1温度センサ
611 第1ポンプ
62 第2温調回路
62a 第2温度センサ
620b1 第1分岐流路
620b2 第2分岐流路
621 第2ポンプ
622 ラジエータ
626 バルブ装置(流量調整弁)
63 熱交換器
70 グリルシャッタ(シャッタ)
ECU 制御装置
V 車両