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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/12 20060101AFI20241028BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241028BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241028BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241028BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H01L29/78 652T
H01L29/78 652M
H01L29/78 652D
H01L29/78 658F
H01L29/78 652B
H01L29/78 655A
H01L21/28 301B
H01L21/28 301S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021154470
(22)【出願日】2021-09-22
(65)【公開番号】P2023045864
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】朝羽 俊介
(72)【発明者】
【氏名】楠本 雄司
(72)【発明者】
【氏名】田中 克久
(72)【発明者】
【氏名】原 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】水上 誠
(72)【発明者】
【氏名】古川 大
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋志
(72)【発明者】
【氏名】永田 真統
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/048800(WO,A1)
【文献】特開2006-128191(JP,A)
【文献】特開2017-055011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有する炭化珪素層であって、
前記第1の面に接する第1の領域を含む第1導電形の第1の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の面に接する第2の領域を含む第2導電形の第2の炭化珪素領域と、
前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第2の炭化珪素領域の第2導電形不純物濃度よりも第2導電形不純物濃度の高い、第2導電形の第3の炭化珪素領域と、
前記第3の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の面に接する第1導電形の第4の炭化珪素領域と、
前記第3の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の面に接し、前記第4の炭化珪素領域に対し、前記第1の面に平行な第1の方向に設けられた第1導電形の第5の炭化珪素領域と、
を含む炭化珪素層と、
前記炭化珪素層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1の領域及び前記第2の領域と対向するゲート電極と、
前記第1の領域と前記ゲート電極との間、及び、前記第2の領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、
前記炭化珪素層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1の方向において、前記第4の炭化珪素領域と前記第5の炭化珪素領域との間に位置する第1の部分を含む第1の電極と、
前記炭化珪素層の前記第2の面の側に設けられた第2の電極と、
前記第1の部分と前記第3の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第1の面から前記第2の面に向かう第2の方向において前記第3の炭化珪素領域に接し、前記第1の方向において前記第1の部分と前記第4の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第4の炭化珪素領域に接し、前記第1の方向において前記第1の部分と前記第5の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第5の炭化珪素領域に接する金属シリサイド層と、
を備え、
前記炭化珪素層は、前記第2の方向において前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の方向において前記第2の領域と前記第4の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第1の面に接し、前記ゲート電極に対向し、前記第4の炭化珪素領域の第1導電形不純物濃度よりも第1導電形不純物濃度の低い第1導電形の第6の炭化珪素領域を、更に含み、
前記第1の面から前記第6の炭化珪素領域と前記第2の炭化珪素領域の界面までの前記第2の方向の第1の距離は、前記第1の面から前記第4の炭化珪素領域と前記第3の炭化珪素領域の界面までの前記第2の方向の第2の距離よりも長い、半導体装置。
【請求項2】
前記第1の面から前記金属シリサイド層と前記第3の炭化珪素領域の界面までの前記第2の方向の第3の距離は、前記第1の距離よりも短く、前記第2の距離よりも長い請求項記載の半導体装置。
【請求項3】
第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有する炭化珪素層であって、
前記第1の面に接する第1の領域を含む第1導電形の第1の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の面に接する第2の領域を含む第2導電形の第2の炭化珪素領域と、
前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第2の炭化珪素領域の第2導電形不純物濃度よりも第2導電形不純物濃度の高い、第2導電形の第3の炭化珪素領域と、
前記第3の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の面に接する第1導電形の第4の炭化珪素領域と、
前記第3の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の面に接し、前記第4の炭化珪素領域に対し、前記第1の面に平行な第1の方向に設けられた第1導電形の第5の炭化珪素領域と、
を含む炭化珪素層と、
前記炭化珪素層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1の領域及び前記第2の領域と対向するゲート電極と、
前記第1の領域と前記ゲート電極との間、及び、前記第2の領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、
前記炭化珪素層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1の方向において、前記第4の炭化珪素領域と前記第5の炭化珪素領域との間に位置する第1の部分を含む第1の電極と、
前記炭化珪素層の前記第2の面の側に設けられた第2の電極と、
前記第1の部分と前記第3の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第1の面から前記第2の面に向かう第2の方向において前記第3の炭化珪素領域に接し、前記第1の方向において前記第1の部分と前記第4の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第4の炭化珪素領域に接し、前記第1の方向において前記第1の部分と前記第5の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第5の炭化珪素領域に接する金属シリサイド層と、
を備え、
前記第1の部分と前記第3の炭化珪素領域との間の前記金属シリサイド層の前記第2の方向の厚さは、前記第1の部分と前記第4の炭化珪素領域との間の前記金属シリサイド層の前記第1の方向の厚さよりも厚い、半導体装置。
【請求項4】
前記炭化珪素層は、前記第2の方向において前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の方向において前記第2の領域と前記第4の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第1の面に接し、前記ゲート電極に対向し、前記第4の炭化珪素領域の第1導電形不純物濃度よりも第1導電形不純物濃度の低い第1導電形の第6の炭化珪素領域を、更に含む請求項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の面から前記金属シリサイド層と前記第3の炭化珪素領域の界面までの前記第2の方向の第3の距離は、200nm以上である請求項1又は請求項3項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の部分と前記第3の炭化珪素領域との間の前記金属シリサイド層の前記第2の方向の厚さは、30nm以上90nm以下である請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項7】
前記金属シリサイド層の前記第2の方向において、前記第3の炭化珪素領域の中の第2導電形不純物濃度が最大となる位置と、前記金属シリサイド層と前記第3の炭化珪素領域の界面との間の前記第2の方向の距離は、50nm以下である請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第4の炭化珪素領域と前記金属シリサイド層の界面は、前記第2の方向に対して傾斜する請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属シリサイド層はニッケルシリサイド層であり、前記第1の電極はアルミニウム(Al)を含む請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1の方向において、前記ゲート電極と前記第1の電極との間に設けられた絶縁層を、更に備える請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の半導体デバイス用の材料として炭化珪素(SiC)が期待されている。炭化珪素はシリコン(Si)と比較して、バンドギャップが3倍、破壊電界強度が約10倍、熱伝導率が約3倍と優れた物性を有する。この特性を活用すれば高耐圧、低損失かつ高温動作可能なパワー半導体デバイスを実現することができる。
【0003】
炭化珪素を用いたMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET)では、コンタクト抵抗を低減することが望まれる。コンタクト抵抗を低減することで、例えば、MOSFETの定常損失やスイッチング損失が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-59600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、コンタクト抵抗の低減が可能な半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置は、前記第1の面に接する第1の領域を含む第1導電形の第1の炭化珪素領域と、前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の面に接する第2の領域を含む第2導電形の第2の炭化珪素領域と、前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第2の炭化珪素領域の第2導電形不純物濃度よりも第2導電形不純物濃度の高い、第2導電形の第3の炭化珪素領域と、前記第3の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の面に接する第1導電形の第4の炭化珪素領域と、前記第3の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の面に接し、前記第4の炭化珪素領域に対し、前記第1の面に平行な第1の方向に設けられた第1導電形の第5の炭化珪素領域と、を含む炭化珪素層と、前記炭化珪素層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1の領域及び前記第2の領域と対向するゲート電極と、前記第1の領域と前記ゲート電極との間、及び、前記第2の領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、前記炭化珪素層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1の方向において、前記第4の炭化珪素領域と前記第5の炭化珪素領域との間に位置する第1の部分を含む第1の電極と、前記炭化珪素層の前記第2の面の側に設けられた第2の電極と、前記第1の部分と前記第3の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第2の方向において前記第3の炭化珪素領域に接し、前記第1の方向において前記第1の部分と前記第4の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第4の炭化珪素領域に接し、前記第1の方向において前記第1の部分と前記第5の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第5の炭化珪素領域に接する金属シリサイド層と、を備え、前記炭化珪素層は、前記第2の方向において前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の方向において前記第2の領域と前記第4の炭化珪素領域との間に設けられ、前記第1の面に接し、前記ゲート電極に対向し、前記第4の炭化珪素領域の第1導電形不純物濃度よりも第1導電形不純物濃度の低い第1導電形の第6の炭化珪素領域を、更に含み、前記第1の面から前記第6の炭化珪素領域と前記第2の炭化珪素領域の界面までの前記第2の方向の第1の距離は、前記第1の面から前記第4の炭化珪素領域と前記第3の炭化珪素領域の界面までの前記第2の方向の第2の距離よりも長い
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図2】第1の実施形態の半導体装置の拡大模式断面図。
図3】第1の実施形態の半導体装置の不純物濃度分布を示す図。
図4】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図5】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図6】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図7】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図8】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図9】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図10】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図11】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図12】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図13】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図14】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図15】第1の実施形態の半導体装置の比較例の模式断面図。
図16】第1の実施形態の半導体装置の比較例の製造方法の一例を示す模式断面図。
図17】第1の実施形態の半導体装置の比較例の製造方法の一例を示す模式断面図。
図18】第1の実施形態の半導体装置の変形例の拡大模式断面図。
図19】第2の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図20】第2の実施形態の半導体装置の拡大模式断面図。
図21】第2の実施形態の半導体装置の変形例の拡大模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0009】
また、以下の説明において、n、n、n及び、p、p、pの表記がある場合は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちnはnよりもn形不純物濃度が相対的に高く、nはnよりもn形不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、pはpよりもp形不純物濃度が相対的に高く、pはpよりもp形不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n形、n形を単にn形、p形、p形を単にp形と記載する場合もある。
【0010】
不純物濃度は、例えば、Secondary Ion Mass Spectrometry(SIMS)により測定することが可能である。また、不純物濃度の相対的な高低は、例えば、Scanning Capacitance Microscopy(SCM)で求められるキャリア濃度の高低から判断することも可能である。また、不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SIMSで求めることが可能である。また。不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SCMの画像やScanning Electron Microscope(SEM)の画像から求めることが可能である。また、絶縁層の厚さ等は、例えば、SIMS、SEM、又はTransmission Electron Microscope(TEM)の画像上で計測することが可能である。
【0011】
なお、本明細書中でp形の炭化珪素領域の「p形不純物濃度」とは、当該領域のp形不純物濃度から当該領域のn形不純物濃度を引いた正味(net)のp形不純物濃度を意味する。また、n形の炭化珪素領域の「n形不純物濃度」とは、当該領域のn形不純物濃度から当該領域のp形不純物濃度を引いた正味(net)のn形不純物濃度を意味する。
【0012】
また、明細書中に別段の記述がない限り特定の領域の不純物濃度とは、当該領域の最大不純物濃度を意味するものとする。
【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の面に接する第1の領域を含む第1導電形の第1の炭化珪素領域と、第1の炭化珪素領域と第1の面との間に設けられ、第1の面に接する第2の領域を含む第2導電形の第2の炭化珪素領域と、第2の炭化珪素領域と第1の面との間に設けられ、第2の炭化珪素領域の第2導電形不純物濃度よりも第2導電形不純物濃度の高い、第2導電形の第3の炭化珪素領域と、第3の炭化珪素領域と第1の面との間に設けられ、第1の面に接する第1導電形の第4の炭化珪素領域と、第3の炭化珪素領域と第1の面との間に設けられ、第1の面に接し、第4の炭化珪素領域に対し、第1の面に平行な第1の方向に設けられた第1導電形の第5の炭化珪素領域と、を含む炭化珪素層と、炭化珪素層の第1の面の側に設けられ、第1の領域及び第2の領域と対向するゲート電極と、第1の領域とゲート電極との間、及び、第2の領域とゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、炭化珪素層の第1の面の側に設けられ、第1の方向において、第4の炭化珪素領域と第5の炭化珪素領域との間に位置する第1の部分を含む第1の電極と、炭化珪素層の第2の面の側に設けられた第2の電極と、第1の部分と第3の炭化珪素領域との間に設けられ、第2の方向において第3の炭化珪素領域に接し、第1の方向において第1の部分と第4の炭化珪素領域との間に設けられ、第4の炭化珪素領域に接し、第1の方向において第1の部分と第5の炭化珪素領域との間に設けられ、第5の炭化珪素領域に接する金属シリサイド層と、を備える。
【0014】
第1の実施形態の半導体装置は、MOSFET100である。MOSFET100は、ボディ領域とソース領域をイオン注入で形成する、Double Implantation MOSFET(DIMOSFET)である。また、MOSFET100は、電子をキャリアとするnチャネル形のMOSFETである。以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。
【0015】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図2は、第1の実施形態の半導体装置の拡大模式断面図である。図2は、図1の一部を拡大した断面図である。
【0016】
MOSFET100は、炭化珪素層10、ソース電極12(第1の電極)、ドレイン電極14(第2の電極)、ゲート電極16、ゲート絶縁層18、層間絶縁層20(絶縁層)、金属シリサイド層22を備える。ソース電極12は第1の部分12aを含む。
【0017】
炭化珪素層10は、n形のドレイン領域24、n形のドリフト領域26(第1の炭化珪素領域)、p形のボディ領域28(第2の炭化珪素領域)、p形のコンタクト領域30(第3の炭化珪素領域)、n形の第1のソース領域32a(第4の炭化珪素領域)、及びn形の第2のソース領域32b(第5の炭化珪素領域)を含む。ドリフト領域26は、第1の領域26aを含む。ボディ領域28は、第2の領域28aを含む。
【0018】
ソース電極12は、第1の電極の一例である。ドレイン電極14は、第2の電極の一例である。層間絶縁層20は、絶縁層の一例である。ドリフト領域26は、第1の炭化珪素領域の一例である。ボディ領域28は、第2の炭化珪素領域の一例である。コンタクト領域30は、第3の炭化珪素領域の一例である。第1のソース領域32aは、第4の炭化珪素領域の一例である。第2のソース領域32bは、第5の炭化珪素領域の一例である。
【0019】
炭化珪素層10は、ソース電極12とドレイン電極14との間に設けられる。炭化珪素層10は、第1の面(図1図2中“F1”)と第2の面(図1図2中“F2”)とを備える。
【0020】
第2の面F2は、第1の面F1に対向する。第2の面F2は、第1の面F1に対して平行である。
【0021】
第1の方向は第1の面F1に対して平行な方向である。また、第2の方向は第1の面F1から第2の面F2に向かう方向である。第2の方向は、第1の面F1の法線方向である。
【0022】
以下、「深さ」とは、第1の面F1を基準とする深さを意味する。「深さ」とは、第1の面F1を基準とする第2の方向の距離である。第2の方向は炭化珪素層10の深さ方向である。
【0023】
炭化珪素層10は、単結晶のSiCである。炭化珪素層10は、例えば、4H-SiCである。炭化珪素層10の第1の面F1は、例えば、シリコン面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。シリコン面は、(0001)面である。炭化珪素層10の第2の方向の厚さは、例えば、3μm以上500μm以下である。
【0024】
ソース電極12は、炭化珪素層10の第1の面F1側に設けられる。ソース電極12は、炭化珪素層10の第1の面F1の上に設けられる。
【0025】
ソース電極12は、第1の部分12aを有する。第1の部分12aは、第1の方向において、第1のソース領域32aと第2のソース領域32bとの間に設けられる。第1の部分12aは、金属シリサイド層22に接する。
【0026】
ソース電極12は、第1のソース領域32a及び第2のソース領域32bに電気的に接続される。ソース電極12は、コンタクト領域30に電気的に接続される。
【0027】
ソース電極12は、金属を含む。ソース電極12は、例えば、バリアメタル層と金属層との積層構造を備える。
【0028】
バリアメタル層は、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、又は、タンタル(Ta)を含む。バリアメタル層は、例えば、チタン層、窒化チタン層、窒化タングステン層、又は、窒化タンタル層である。
【0029】
金属層は、例えば、アルミニウム(Al)を含む。金属層は、例えば、アルミニウム層である。
【0030】
ドレイン電極14は、炭化珪素層10の第2の面F2側に設けられる。ドレイン電極14は、炭化珪素層10の第2の面F2上に設けられる。ドレイン電極14は、第2の面F2に接する。
【0031】
ドレイン電極14は、例えば、金属又は金属半導体化合物を含む。ドレイン電極14は、例えば、ニッケルシリサイド層、チタン層、ニッケル層、銀層、又は金層を含む。
【0032】
ドレイン電極14は、ドレイン領域24に電気的に接続される。ドレイン電極14は、例えば、ドレイン領域24に接する。
【0033】
ゲート電極16は、炭化珪素層10の第1の面F1側に設けられる。ゲート電極16は、第1の方向に繰り返し配置される。ゲート電極16は、例えば、第1の面F1に平行で、第1の方向に垂直な方向に延びる。
【0034】
ゲート電極16は、第1の面F1に対向する。ゲート電極16は、ドリフト領域26の第1の領域26aに対向する。ゲート電極16は、ボディ領域28の第2の領域28aに対向する。
【0035】
ゲート電極16は、導電層である。ゲート電極16は、例えば、p形不純物又はn形不純物を含む多結晶質シリコンを含む。ゲート電極16は、例えば、多結晶シリコン層である。
【0036】
ゲート絶縁層18は、ゲート電極16と炭化珪素層10との間に設けられる。ゲート絶縁層18は、ドリフト領域26の第1の領域26aとゲート電極16との間、ボディ領域28の第2の領域28aとゲート電極16との間に設けられる。
【0037】
ゲート絶縁層18は、例えば、酸化シリコンを含む。ゲート絶縁層18は、例えば、酸化シリコン層を含む。ゲート絶縁層18には、例えば、高誘電率絶縁材料を適用することも可能である。また、ゲート絶縁層18には、例えば、酸化シリコン層と高誘電率絶縁層との積層構造を適用することも可能である。
【0038】
ゲート絶縁層18の第2の方向の厚さは、例えば、30nm以上100nm以下である。
【0039】
層間絶縁層20は、ゲート電極16上に設けられる。層間絶縁層20は、ゲート電極16とソース電極12との間に設けられる。層間絶縁層20は、第1の方向において、ゲート電極16とソース電極12との間に設けられる。
【0040】
層間絶縁層20は、ゲート電極16とソース電極12を電気的に分離する。層間絶縁層20は、例えば、酸化シリコンを含む。層間絶縁層20は、例えば、酸化シリコン層である。
【0041】
形のドレイン領域24は、炭化珪素層10の第2の面F2側に設けられる。ドレイン領域24は、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。ドレイン領域24のn形不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【0042】
形のドリフト領域26は、ドレイン領域24上に設けられる。ドリフト領域26は、ドレイン領域24と第1の面F1との間に設けられる。
【0043】
ドリフト領域26の一部は、第1の面F1に接する。ドリフト領域26の第1の領域26aは、第1の面F1に接する。第1の領域26aは、ゲート絶縁層18に接する。
【0044】
ドリフト領域26は、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。ドリフト領域26のn形不純物濃度は、ドレイン領域24のn形不純物濃度よりも低い。ドリフト領域26のn形不純物濃度は、例えば、4×1014cm-3以上1×1018cm-3以下である。
【0045】
ドリフト領域26は、例えば、ドレイン領域24の上にエピタキシャル成長により形成されたSiCのエピタキシャル成長層である。ドリフト領域26の第2の方向の厚さは、例えば、3μm以上500μm以下である。
【0046】
p形のボディ領域28は、ドリフト領域26と第1の面F1との間に設けられる。ボディ領域28の一部は、第1の面F1に接する。ボディ領域28の第2の領域28aは、第1の面F1に接する。第2の領域28aは、ゲート絶縁層18と接する。
【0047】
ボディ領域28の第2の領域28aは、MOSFET100のチャネル形成領域として機能する。例えば、MOSFET100のオン動作時に、第2の領域28aに電子が流れるチャネルが形成される。第2の領域28aが、チャネル形成領域となる。
【0048】
ボディ領域28は、例えば、アルミニウム(Al)をp形不純物として含む。ボディ領域28のp形不純物濃度は、例えば、5×1016cm-3以上5×1019cm-3以下である。
【0049】
ボディ領域28の深さは、例えば、500nm以上900nm以下である。第1の面F1からボディ領域28とドリフト領域26の界面までの第2の方向の距離は、例えば、500nm以上900nm以下である。
【0050】
形のコンタクト領域30は、ボディ領域28と第1の面F1との間に設けられる。コンタクト領域30は、ボディ領域28と第1のソース領域32aとの間に設けられる。コンタクト領域30は、ボディ領域28と第2のソース領域32bとの間に設けられる。コンタクト領域30は、ボディ領域28と金属シリサイド層22との間に設けられる。
【0051】
コンタクト領域30は、例えば、アルミニウム(Al)をp形不純物として含む。コンタクト領域30のp形不純物濃度は、ボディ領域28のp形不純物濃度よりも高い。コンタクト領域30のp形不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上5×1021cm-3以下である。
【0052】
コンタクト領域30の深さは、例えば、200nm以上500nm以下である。第1の面F1からコンタクト領域30とボディ領域28の界面までの第2の方向の距離は、例えば、200nm以上500nm以下である。
【0053】
形の第1のソース領域32aは、コンタクト領域30と第1の面F1との間に設けられる。第1のソース領域32aは、第1の面F1に接する。第1のソース領域32aは、第1の方向において金属シリサイド層22に接する。
【0054】
第1のソース領域32aは、例えば、窒素(N)又はリン(P)をn形不純物として含む。第1のソース領域32aのn形不純物濃度は、ドリフト領域26のn形不純物濃度よりも高い。第1のソース領域32aのn形不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上5×1021cm-3以下である。
【0055】
第1のソース領域32aの深さは、コンタクト領域30の深さよりも浅い。第1の面F1から第1のソース領域32aとコンタクト領域30の界面までの第2の方向の距離は、例えば、80nm以上200nm以下である。
【0056】
形の第2のソース領域32bは、コンタクト領域30と第1の面F1との間に設けられる。第2のソース領域32bは、第1のソース領域32aに対して第1の方向に設けられる。第2のソース領域32bは、第1の面F1に接する。第2のソース領域32bは、第1の方向において金属シリサイド層22に接する。
【0057】
第2のソース領域32bは、例えば、窒素(N)又はリン(P)をn形不純物として含む。第2のソース領域32bのn形不純物濃度は、ドリフト領域26のn形不純物濃度よりも高い。第2のソース領域32bのn形不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上5×1021cm-3以下である。
【0058】
第2のソース領域32bの深さは、コンタクト領域30の深さよりも浅い。第1の面F1から第2のソース領域32bとコンタクト領域30の界面までの第2の方向の距離は、例えば、80nm以上200nm以下である。
【0059】
ソース電極12の第1の部分12aは、第1の方向において、第1のソース領域32aと第2のソース領域32bとの間に設けられる。
【0060】
金属シリサイド層22は、ソース電極12の第1の部分12aとコンタクト領域30との間に設けられる。金属シリサイド層22は、第2の方向において、コンタクト領域30と接する。金属シリサイド層22は、例えば、第1の方向において、コンタクト領域30と接する。
【0061】
金属シリサイド層22は、第1の方向において、ソース電極12の第1の部分12aと第1のソース領域32aとの間に設けられる。金属シリサイド層22は、第1の方向において、第1のソース領域32aに接する。
【0062】
金属シリサイド層22は、第1の方向において、ソース電極12の第1の部分12aと第2のソース領域32bとの間に設けられる。金属シリサイド層22は、第1の方向において、第2のソース領域32bに接する。
【0063】
金属シリサイド層22の深さは、例えば、100nm以上300nm以下である。第1の面F1から金属シリサイド層22とコンタクト領域の界面までの第2の方向の第3の距離(図2中のd3)は、例えば、100nm以上300nm以下である。
【0064】
金属シリサイド層22の深さは、第1のソース領域32aの深さよりも深い。第1の面F1から金属シリサイド層22とコンタクト領域30の界面までの第2の方向の第3の距離d3は、第1の面F1から第1のソース領域32aとコンタクト領域30の界面までの第2の方向の第2の距離(図2中のd2)よりも長い。
【0065】
第1のソース領域32aの深さは、例えば、金属シリサイド層22の深さの2分の1以上である。第2の距離d2の長さは、例えば、第3の距離d3の2分の1以上である。
【0066】
ソース電極12の第1の部分12aは、第1の方向において、金属シリサイド層22の間に挟まれる。第1の部分12aと金属シリサイド層22の第2の方向の界面の位置は、第2の方向において、第1の面F1よりもドレイン電極14の側にある。言い換えれば、ソース電極12と金属シリサイド層22の第2の方向の界面の位置は、第2の方向において、第1の面F1よりもドレイン電極14の側にある。
【0067】
金属シリサイド層22は、例えば、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、又はコバルト(Co)を含む。金属シリサイド層22は、例えば、ニッケルシリサイド層、チタンシリサイド層、又は、コバルトシリサイド層である。
【0068】
金属シリサイド層22の、第1の部分12aとコンタクト領域30との間の第2の方向の厚さ(図2中のt1)は、例えば、30nm以上90nm以下である。金属シリサイド層22の、第1の部分12aと第1のソース領域32aとの間の第1の方向の厚さ(図2中のt2)は、例えば、30nm以上120nm以下である。金属シリサイド層22の、第1の部分12aと第1のソース領域32aとの間の第1の方向の厚さt2は、例えば、50nm以上100nm以下である。金属シリサイド層22の、第1の部分12aと第2のソース領域32bとの間の第1の方向の厚さは、例えば、30nm以上120nm以下である。金属シリサイド層22の、第1の部分12aと第2のソース領域32bとの間の第1の方向の厚さは、例えば、50nm以上100nm以下である。
【0069】
金属シリサイド層22の、第1の部分12aとコンタクト領域30との間の第2の方向の厚さt1は、例えば、金属シリサイド層22の、金属シリサイド層22の、第1の部分12aと第1のソース領域32aとの間の第1の方向の厚さt2よりも厚い。
【0070】
図3(a)、図3(b)は、第1の実施形態の半導体装置の不純物濃度分布を示す図である。図3は、コンタクト領域30のp形不純物濃度の深さ方向のp形不純物濃度を示す図である。
【0071】
図3は、p形不純物がアルミニウム、金属シリサイド層22がニッケルシリサイド層である場合を示す。図3(a)は第1の例、図3(b)は第2の例である。
【0072】
MOSFET100では、図3(a)、図3(b)に示すように、ニッケルシリサイド層の深さ方向において、コンタクト領域30のアルミニウム濃度が最大となる位置と、ニッケルシリサイド層とコンタクト領域30の界面との間の深さ方向の距離(図3(a)中のd)は、50nm以下である。第2の例は、コンタクト領域30のアルミニウム濃度が最大となる位置と、ニッケルシリサイド層とコンタクト領域30の界面の位置とが一致する場合の例である。
【0073】
次に、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例について説明する。
【0074】
第1の実施形態の半導体装置の製造方法は、第1導電形の炭化珪素層に、第2導電形不純物をイオン注入する第1のイオン注入を行い、第1の第2導電形領域を形成し、第1の第2導電形領域に、第2導電形不純物をイオン注入する第2のイオン注入を行い、第1の第2導電形領域よりも浅く、第1の第2導電形領域よりも第2導電形不純物濃度の高い、第2の第2導電形領域を形成し、第2の第2導電形領域に、第1導電形不純物をイオン注入する第3のイオン注入を行い、第2の第2導電形領域よりも浅い、第1導電形領域を形成し、第1導電形領域に、第2の第2導電形不純物領域と第1の第2導電形不純物領域との界面よりも浅いトレンチを形成し、トレンチの中に金属膜を形成し、熱処理を行い、第2の第2導電形領域及び第1導電形領域に接する金属シリサイド層を形成する。
【0075】
図4図5図6図7図8図9図10図11図12図13、及び図14は、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図である。図4ないし図14は、図1に相当する断面図である。
【0076】
以下、第1導電形がn形、第2の導電形がp形、第1導電形不純物がリン(P)、第2導電形不純物がアルミニウム(Al)、金属膜がニッケル膜、金属シリサイド層がニッケルシリサイド層である場合を例に説明する。
【0077】
最初に、n形のドレイン領域24、及び、ドレイン領域24の上にエピタキシャル成長により形成されたn形のドリフト領域26を有する炭化珪素層10を準備する(図4)。
【0078】
炭化珪素層10は、第1の面(図4中“F1”)と第2の面(図4中“F2”)とを備える。以下、第1の面F1を表面、第2の面F2を裏面とも称する。
【0079】
次に、炭化珪素層10の表面に、マスク材50を形成する。マスク材50は、例えば、酸化シリコン膜である。
【0080】
次に、マスク材50をマスクに第1のイオン注入を行う(図5)。第1のイオン注入では、炭化珪素層10にアルミニウム(Al)をイオン注入する。第1のイオン注入によりp形のボディ領域28が形成される。p形のボディ領域28は、第1の第2導電形領域の一例である。
【0081】
次に、マスク材50を剥離し、炭化珪素層10の表面に、新たにマスク材52を形成する。マスク材52は、例えば、酸化シリコン膜である。
【0082】
次に、マスク材52をマスクに第2のイオン注入を行う(図6)。第2のイオン注入では、炭化珪素層10のボディ領域28にアルミニウム(Al)をイオン注入する。第2のイオン注入により、ボディ領域28より浅いp形のコンタクト領域30が形成される。p形のコンタクト領域30は、第2の第2導電形領域の一例である。
【0083】
次に、マスク材52をマスクに第3のイオン注入を行う(図7)。第3のイオン注入では、炭化珪素層10のコンタクト領域30にリン(P)をイオン注入する。第3のイオン注入により、コンタクト領域30より浅いn形のソース領域32が形成される。n形のソース領域32は、第1導電形領域の一例である。ソース領域32の一部が、最終的に第1のソース領域32a及び第2のソース領域32bとなる。
【0084】
次に、マスク材52を剥離する(図8)。次に、p形不純物であるアルミニウム(Al)及びn形不純物であるリン(P)の活性化アニールを行う。活性化アニールは、例えば、図示しないカーボン膜を炭化珪素層10の表面に形成した後に、アルゴン雰囲気中で、1500℃以上1800℃以下の温度で行う。
【0085】
次に、炭化珪素層10の表面に、公知のプロセス技術を用いて、ゲート絶縁層18、ゲート電極16、及び層間絶縁層20を形成する(図9)。ゲート絶縁層18は、例えば、酸化シリコン層である。ゲート電極16は、例えば、多結晶シリコン層である。層間絶縁層20は、例えば、酸化シリコン層である。
【0086】
次に、層間絶縁層20の表面にマスク材56を形成する。マスク材56は、例えば、フォトレジストである。次に、マスク材56をマスクに、層間絶縁層20に開口部58を形成する(図10)。開口部58は、例えば、反応性イオンエッチング法(RIE法)により層間絶縁層20をエッチングして形成する。
【0087】
次に、マスク材56をマスクに、開口部58の下にトレンチ60を形成する(図11)。トレンチ60は、例えば、RIE法によりソース領域32をエッチングして形成する。
【0088】
トレンチ60の深さは、コンタクト領域30とボディ領域28の界面の深さよりも浅い。トレンチ60の深さは、例えば、100nm以上140nm以下である。例えば、トレンチ60の底面に、コンタクト領域30が露出する。
【0089】
トレンチ60により、ソース領域32が、第1のソース領域32aと第2のソース領域32bとに分離される。
【0090】
次に、マスク材56を剥離する。次に、ニッケル膜62を形成する(図12)。ニッケル膜62は、例えば、スパッタ法により形成する。ニッケル膜62はトレンチ60の中に形成される。ニッケル膜62の膜厚は、例えば、30nm以上120nm以下である。ニッケル膜62の膜厚は、例えば、50nm以上100nm以下である。ニッケル膜62は金属膜の一例である。
【0091】
次に、熱処理を行い、ニッケルシリサイド層64を形成する(図13)。ニッケルシリサイド層64は、ニッケル膜62とトレンチ60の内面に露出した炭化珪素層10とが反応することにより形成される。ニッケルシリサイド層64は金属シリサイド層の一例である。
【0092】
次に、未反応のニッケル膜62を除去する(図14)。ニッケル膜62は、例えば、ウェットエッチングにより除去する。
【0093】
その後、公知のプロセス技術を用いて、炭化珪素層10の表面側にソース電極12、炭化珪素層10の裏面側にドレイン電極14を形成する。
【0094】
以上の製造方法により、図1及び図2に示すMOSFET100が形成される。
【0095】
次に、第1の実施形態の半導体装置、及び、半導体装置の製造方法の作用及び効果について説明する。
【0096】
炭化珪素を用いたMOSFETでは、ソース電極のコンタクト抵抗を低減することが望まれる。nチャネル形のMOSFETでは、例えば、ソース電極とn形ソース領域との間のコンタクト抵抗を低減することで、オン抵抗が低減され定常損失が低減される。また、nチャネル形のMOSFETでは、例えば、ソース電極とp形ボディ領域とのコンタクト抵抗を低減することで、p形ボディ領域へのキャリアの注入や、p形ボディ領域からのキャリアの排出が促進されスイッチング損失が低減される。
【0097】
図15は、第1の実施形態の半導体装置の比較例の模式断面図である。図15は、第1の実施形態の半導体装置の図1に対応する。
【0098】
第1の実施形態の半導体装置の比較例は、MOSFET900である。MOSFET900は、ソース電極12が、第1の方向において、第1のソース領域32aと第2のソース領域32bとの間に設けられた第1の部分12aを備えない点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。
【0099】
MOSFET900は、第1の方向において、第1のソース領域32aと第2のソース領域32bとの間には、金属シリサイド層22のみが存在する。MOSFET900の金属シリサイド層22の第2の方向の厚さは、第1の実施形態のMOSFET100の金属シリサイド層22の第2の方向の厚さよりも厚い。MOSFET900のソース電極12と金属シリサイド層22の第2の方向の界面の位置は、第2の方向において、第1の面F1よりも上側にある。
【0100】
MOSFET900は、ソース電極12とn形の第1のソース領域32aとの間に金属シリサイド層22を備えることで、ソース電極12とn形の第1のソース領域32aとの間のコンタクト抵抗が低減する。また、ソース電極12とn形の第2のソース領域32bとの間に金属シリサイド層22を備えることで、ソース電極12とn形の第2のソース領域32bとの間のコンタクト抵抗が低減する。また、MOSFET900は、ソース電極12とp形のコンタクト領域30との間に、金属シリサイド層22を備えることで、ソース電極12とコンタクト領域30との間のコンタクト抵抗が低減する。
【0101】
次に、第1の実施形態の半導体装置の比較例の製造方法の一例について説明する。
【0102】
図16図17は、第1の実施形態の半導体装置の比較例の製造方法の一例を示す模式断面図である。図16図17は、図15に相当する断面図である。以下、第1の実施形態の半導体装置の製造方法と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0103】
層間絶縁層20に開口部58を形成するまでは、第1の実施形態の半導体装置の製造方法と同様である。
【0104】
次に、開口部58の下にトレンチ60は形成せず、ニッケル膜62を形成する(図16)。ニッケル膜62の膜厚は、第1の実施形態の製造方法のニッケル膜62の膜厚よりも厚い。ニッケル膜62の膜厚は、例えば、150nm以上である。
【0105】
次に、熱処理を行い、ニッケルシリサイド層64を形成する(図17)。ニッケルシリサイド層64は、ソース電極12とコンタクト領域30とを電気的に接続させるため、コンタクト領域30に接する厚さとなるように形成される。ニッケルシリサイド層64の第2の方向の厚さは、第1の実施形態の製造方法で製造されるニッケルシリサイド層64の第2の方向の厚さよりも厚い。
【0106】
その後、第1の実施形態の製造方法と同様の製造方法で、図15に示すMOSFET900が形成される。
【0107】
MOSFET900を製造する際、厚いニッケルシリサイド層64の形成で生じる応力が、炭化珪素層10や層間絶縁層20に加わる。このため、例えば、層間絶縁層20にクラックが生じるおそれがある。層間絶縁層20にクラックが生じると、例えば、ソース電極12とゲート電極16との間が電気的にショートし問題となる。
【0108】
比較例の製造方法において、例えば、応力を低減させるためニッケル膜62の膜厚を薄くすると、例えば、ニッケルシリサイド層64の底面がコンタクト領域30に届かず、ソース電極12とコンタクト領域30との電気的接続が得られない。また、仮に、ニッケルシリサイド層64の底面がコンタクト領域30に届いた場合でも、ニッケルシリサイド層64の底面がコンタクト領域30の中のアルミニウム濃度が高い領域までは届かず、ソース電極12とコンタクト領域30との間のコンタクト抵抗が高くなり問題となる。
【0109】
また、比較例の製造方法において、ソース領域32の第2の方向の深さを浅くして、ニッケル膜62の膜厚が薄い場合でも、ニッケルシリサイド層64の底面が、コンタクト領域30に届くようにすることが考えられる。しかし、この場合は、ニッケルシリサイド層64の側面と第1のソース領域32a及び第2のソース領域32bとの接触面積が小さくなり、ソース電極12と第1のソース領域32a及び第2のソース領域32bと間のコンタクト抵抗が高くなり問題となる。
【0110】
第1の実施形態のMOSFET100は、金属シリサイド層22の厚さが、比較例のMOSFET900に比べて薄い。したがって、金属シリサイド層22の形成に伴って発生する応力を低減できる。よって、層間絶縁層20のクラックが抑制され、かつ、コンタクト抵抗の低減されたMOSFET100が実現できる。また、第1のソース領域32a及び第2のソース領域32bの深さを深くすることが可能となり、第1のソース領域32a及び第2のソース領域32bの拡散抵抗も低減できる。よって、オン抵抗の低減されたMOSFET100が実現できる。
【0111】
金属シリサイド層22の薄いMOSFET100は、金属膜の形成の前に、炭化珪素層10にトレンチ60を形成する製造方法を適用することで、実現できる。
【0112】
第1の部分12aとコンタクト領域30との間の金属シリサイド層22の第2の方向の厚さ(図2中のt1)は、30nm以上90nm以下であることが好ましく、40nm以上80nm以上であることがより好ましい。上記下限値を上回ることで、ソース電極12とコンタクト領域30との間のコンタクト抵抗が更に低減される。上記上限値を下回ることで、金属シリサイド層22を形成する際の応力が更に低減される。
【0113】
第1の部分12aとコンタクト領域30との間の金属シリサイド層22の第2の方向の厚さ(図2中のt1)は、第1の部分12aと第1のソース領域32aとの間の金属シリサイド層22の第1の方向の厚さ(図2中のt2)よりも厚いことが好ましい。炭化珪素と金属シリサイドとの間の界面抵抗は、炭化珪素がp形の場合の方がn形の場合と比較して低減しにくい。p形のコンタクト領域30と接する金属シリサイド層22の厚さを相対的に厚くすることで、ソース電極12とコンタクト領域30との間のコンタクト抵抗が更に低減される。
【0114】
金属シリサイド層22の深さ方向において、コンタクト領域30のp形不純物濃度が最大となる位置と、金属シリサイド層22とコンタクト領域30の界面との間の深さ方向の距離は、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。上記上限値を下回ることで、ソース電極12とコンタクト領域30との間のコンタクト抵抗が更に低減される。
【0115】
第1の実施形態の製造方法によれば、トレンチ60の深さを調整することで、コンタクト領域30のp形不純物濃度が最大となる位置と、金属シリサイド層22とコンタクト領域30の界面との間の深さ方向の距離を容易に調整できる。
【0116】
第1の面F1から第1のソース領域32aとコンタクト領域30の界面までの第2の方向の距離は、80nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。すなわち、第1のソース領域32aの深さは、80nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。上記下限値を上回ることで、ソース電極12と第1のソース領域32aとの間のコンタクト抵抗が更に低減できる。同様の理由により、第1の面F1から第2のソース領域32bとコンタクト領域30の界面までの第2の方向の距離は、80nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。
【0117】
ソース電極12と第1のソース領域32aの間のコンタクト抵抗を低減する観点から、第1のソース領域32aの深さは、金属シリサイド層22の深さの2分の1以上であることが好ましく、4分の3以上であることがより好ましい。ソース電極12と第1のソース領域32aの間のコンタクト抵抗を低減する観点から、第2の距離d2の長さは、第3の距離d3の2分の1以上であることが好ましく、4分の3以上であることがより好ましい。
【0118】
(変形例)
第1の実施形態の半導体装置の変形例は、第4の炭化珪素領域と金属シリサイド層の界面は、第2の方向に対して傾斜する点、及び、第5の炭化珪素領域と金属シリサイド層の界面は、第2の方向に対して傾斜する点で第1の実施形態の半導体装置と異なる。
【0119】
第1の実施形態の半導体装置の変形例は、MOSFET101である。
【0120】
図18は、第1の実施形態の半導体装置の変形例の拡大模式断面図である。図18は、第1の実施形態の図2に対応する図である。
【0121】
第1のソース領域32aと金属シリサイド層22の界面は、第2の方向に対して傾斜する。第1のソース領域32aと金属シリサイド層22の界面は、順テーパ形状を有する。第1のソース領域32aと金属シリサイド層22の界面と、第1の面F1に平行な面との間の角度(図18中のθ1)は、例えば、75度以上85度以下である。
【0122】
第1のソース領域32aと金属シリサイド層22の界面がテーパ形状を備えることで、第1のソース領域32aと金属シリサイド層22との界面の面積が大きくなる。したがって、ソース電極12と第1のソース領域32aとの間のコンタクト抵抗が低減する。
【0123】
第2のソース領域32bと金属シリサイド層22の界面は、第2の方向に対して傾斜する。第2のソース領域32bと金属シリサイド層22の界面は、順テーパ形状を有する。第2のソース領域32bと金属シリサイド層22の界面と、第1の面F1に平行な面との間の角度(図18中のθ2)は、例えば、75度以上85度以下である。
【0124】
第2のソース領域32bと金属シリサイド層22の界面がテーパ形状を備えることで、第2のソース領域32bと金属シリサイド層22との界面の面積が大きくなる。したがって、ソース電極12と第2のソース領域32bとの間のコンタクト抵抗が低減する。
【0125】
以上、第1の実施形態及び変形例によれば、コンタクト抵抗の低減が可能なMOSFETが実現できる。
【0126】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、炭化珪素層は、第2の方向において第2の炭化珪素領域と第1の面との間に設けられ、第1の方向において第2の領域と第4の炭化珪素領域との間に設けられ、第1の面に接し、ゲート電極に対向し、第4の炭化珪素領域の第1導電形不純物濃度よりも第1導電形不純物濃度の低い第1導電形の第6の炭化珪素領域を、更に含む点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0127】
第2の実施形態の半導体装置は、MOSFET200である。MOSFET200は、DIMOSFETである。また、MOSFET200は、電子をキャリアとするnチャネル形のMOSFETである。以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。
【0128】
図19は、第2の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図20は、第2の実施形態の半導体装置の拡大模式断面図である。図20は、図19の一部を拡大した断面図である。
【0129】
MOSFET200は、炭化珪素層10、ソース電極12(第1の電極)、ドレイン電極14(第2の電極)、ゲート電極16、ゲート絶縁層18、層間絶縁層20(絶縁層)、金属シリサイド層22を備える。ソース電極12は第1の部分12aを含む。
【0130】
炭化珪素層10は、n形のドレイン領域24、n形のドリフト領域26(第1の炭化珪素領域)、p形のボディ領域28(第2の炭化珪素領域)、p形のコンタクト領域30(第3の炭化珪素領域)、n形の第1のソース領域32a(第4の炭化珪素領域)、及びn形の第2のソース領域32b(第5の炭化珪素領域)、n形の第1の低濃度領域34a(第6の炭化珪素領域)、n形の第2の低濃度領域34bを含む。ドリフト領域26は、第1の領域26aを含む。ボディ領域28は、第2の領域28aを含む。
【0131】
ソース電極12は、第1の電極の一例である。ドレイン電極14は、第2の電極の一例である。層間絶縁層20は、絶縁層の一例である。ドリフト領域26は、第1の炭化珪素領域の一例である。ボディ領域28は、第2の炭化珪素領域の一例である。コンタクト領域30は、第3の炭化珪素領域の一例である。第1のソース領域32aは、第4の炭化珪素領域の一例である。第2のソース領域32bは、第5の炭化珪素領域の一例である。第1の低濃度領域34aは、第6の炭化珪素領域の一例である。
【0132】
n形の第1の低濃度領域34aは、第2の方向において、ボディ領域28と第1の面F1との間に設けられる。第1の低濃度領域34aは、第1の方向において、ボディ領域28の第2の領域28aと、第1のソース領域32aとの間に設けられる。
【0133】
第1の低濃度領域34aは、第1の面F1に接する。第1の低濃度領域34aは、ゲート電極16に対向する。第1の低濃度領域34aは、ゲート電極16の端部に対向する。第1の低濃度領域34aとゲート電極16との間に、ゲート絶縁層18が設けられる。
【0134】
第1の低濃度領域34aは、例えば、窒素(N)又はリン(P)をn形不純物として含む。第1の低濃度領域34aのn形不純物濃度は、第1のソース領域32aのn形不純物濃度よりも低い。第1の低濃度領域34aのn形不純物濃度は、第1のソース領域32aのn形不純物濃度の10分の1以下である。第1の低濃度領域34aのn形不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0135】
第1の低濃度領域34aの深さは、ボディ領域28の深さよりも浅い。第1の低濃度領域34aの深さは、例えば、100nm以上300nm以下である。第1の面F1から第1の低濃度領域34aとボディ領域28の界面までの第2の方向の第1の距離(図20中のd1)は、例えば、100nm以上300nm以下である。
【0136】
第1の低濃度領域34aの深さは、第1のソース領域32aの深さよりも深い。第1の面F1から第1の低濃度領域34aとボディ領域28の界面までの第2の方向の第1の距離d1は、第1の面F1から第1のソース領域32aとコンタクト領域30の界面までの第2の方向の第2の距離(図20中のd2)よりも長い。
【0137】
金属シリサイド層22の深さは、例えば、第1の低濃度領域34aの深さよりも浅い。第1の面F1から金属シリサイド層22とコンタクト領域30の界面までの第2の方向の第3の距離(図20中のd3)は、例えば、第1の面F1から第1の低濃度領域34aとボディ領域28の界面までの第2の方向の第1の距離d1よりも短い。
【0138】
金属シリサイド層22の深さは、例えば、第1のソース領域32aの深さよりも深い。第1の面F1から金属シリサイド層22とコンタクト領域30の界面までの第2の方向の第3の距離d3は、第1の面F1から第1のソース領域32aとコンタクト領域30の界面までの第2の方向の第2の距離d2よりも長い。
【0139】
n形の第2の低濃度領域34bは、第2の方向において、ボディ領域28と第1の面F1との間に設けられる。第2の低濃度領域34bは、第1の方向において、ボディ領域28と、第2のソース領域32bとの間に設けられる。
【0140】
第2の低濃度領域34bは、第1の面F1に接する。第2の低濃度領域34bは、ゲート電極16に対向する。第2の低濃度領域34bは、ゲート電極16の端部に対向する。第2の低濃度領域34bとゲート電極16との間に、ゲート絶縁層18が設けられる。
【0141】
第2の低濃度領域34bは、例えば、窒素(N)又はリン(P)をn形不純物として含む。第2の低濃度領域34bのn形不純物濃度は、第2のソース領域32bのn形不純物濃度よりも低い。第2の低濃度領域34bのn形不純物濃度は、第2のソース領域32bのn形不純物濃度の10分の1以下である。第2の低濃度領域34bのn形不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0142】
第2の低濃度領域34bの深さは、ボディ領域28の深さよりも浅い。第2の低濃度領域34bの深さは、例えば、100nm以上300nm以下である。第2の低濃度領域34bの深さは、第2のソース領域32bの深さよりも深い。
【0143】
第2の実施形態のMOSFET200は、ゲート電極16の端部に対向するn形の第1の低濃度領域34aを備える。第1の低濃度領域34aのn形不純物濃度は、第1のソース領域32aのn形不純物濃度よりも低い。したがって、ゲート電極16の端部が第1のソース領域32aに対向する第1の実施形態のMOSFET100に比べ、ゲート電極16の端部の下のゲート絶縁層18に加わる電界が緩和される。よって、ゲート絶縁層18の信頼性が向上する。
【0144】
また、第2の実施形態のMOSFET200は、ゲート電極16の端部に対向するn形の第2の低濃度領域34bを備える。第2の低濃度領域34bのn形不純物濃度は、第2のソース領域32bのn形不純物濃度よりも低い。したがって、ゲート電極16の端部が第1のソース領域32aに対向する第1の実施形態のMOSFET100に比べ、ゲート電極16の端部の下のゲート絶縁層18に加わる電界が緩和される。よって、ゲート絶縁層18の信頼性が向上する。
【0145】
第2の実施形態のMOSFET200において、第1の低濃度領域34aの深さは、第1のソース領域32aの深さよりも深い。また、第2の低濃度領域34bの深さは、第2のソース領域32bの深さよりも深い。したがって、MOSFET200のオン抵抗の増加が抑制される。
【0146】
(変形例)
第2の実施形態の半導体装置の変形例は、第1の面から第6の炭化珪素領域と第2の炭化珪素領域の界面までの第2の方向の第1の距離は、第1の面から第4の炭化珪素領域と第3の炭化珪素領域の界面までの第2の方向の第2の距離よりも短い点で、第2の実施形態の半導体装置と異なる。
【0147】
第2の実施形態の半導体装置の変形例は、MOSFET201である。
【0148】
図21は、第2の実施形態の半導体装置の変形例の拡大模式断面図である。図21は、第2の実施形態の図20に対応する図である。
【0149】
第1の低濃度領域34aの深さは、ボディ領域28の深さよりも浅い。第1の低濃度領域34aの深さは、例えば、40nm以上100nm以下である。第1の面F1から第1の低濃度領域34aとボディ領域28の界面までの第2の方向の第1の距離(図21中のd1)は、例えば、100nm以上300nm以下である。
【0150】
第1の低濃度領域34aの深さは、第1のソース領域32aの深さよりも浅い。第1の面F1から第1の低濃度領域34aとボディ領域28の界面までの第2の方向の第1の距離d1は、第1の面F1から第1のソース領域32aとコンタクト領域30の界面までの第2の方向の第2の距離(図21中のd2)よりも短い。
【0151】
第2の低濃度領域34bの深さは、ボディ領域28の深さよりも浅い。第2の低濃度領域34bの深さは、例えば、40nm以上100nm以下である。第2の低濃度領域34bの深さは、第2のソース領域32bの深さよりも浅い。
【0152】
第2の実施形態のMOSFET201は、ゲート電極16の端部の下のゲート絶縁層18に加わる電界が緩和される。よって、ゲート絶縁層18の信頼性が向上する。
【0153】
以上、第2の実施形態及び変形例によれば、第1の実施形態と同様、コンタクト抵抗の低減が可能なMOSFETが実現できる。また、ゲート絶縁層の信頼性が向上するMOSFETが実現できる。
【0154】
以上、第1の実施形態及び第2の実施形態、及びそれらの変形例では、炭化珪素の結晶構造として4H-SiCの場合を例に説明したが、本発明は6H-SiC、3C-SiCなど、その他の結晶構造の炭化珪素に適用することも可能である。
【0155】
また、第1及び第2の実施形態では、第1導電形がn形、第2導電形がp形の場合を例に説明したが、第1導電形をp形、第2導電形をn形とすることも可能である。この場合、MOSFETはpチャネル形となる。
【0156】
また、第1及び第2の実施形態では、ゲート電極が、第1の面F1に平行で、第1の方向に垂直な方向に延びる場合を例に説明したが、ゲート電極のパターンは、特に限定されるものではない。例えば、ゲート電極のパターンがメッシュ状のパターンでも構わない。
【0157】
また、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)に本発明を適用することも可能である。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0159】
10 炭化珪素層
12 ソース電極(第1の電極)
12a 第1の部分
14 ドレイン電極(第2の電極)
16 ゲート電極
18 ゲート絶縁層
20 層間絶縁層(絶縁層)
22 金属シリサイド層
26 ドリフト領域(第1の炭化珪素領域)
26a 第1の領域
28 ボディ領域(第2の炭化珪素領域)
28a 第2の領域
30 コンタクト領域(第3の炭化珪素領域)
32a 第1のソース領域(第4の炭化珪素領域)
32b 第2のソース領域(第5の炭化珪素領域)
34a 第1の低濃度領域(第6の炭化珪素領域)
100 MOSFET(半導体装置)
200 MOSFET(半導体装置)
F1 第1の面
F2 第2の面
d1 第1の距離
d2 第2の距離
d3 第3の距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21