(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】漏液検出装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20241028BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20241028BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
A61M5/168 512
A61B5/01
A61M5/168 510
A61M5/172 500
(21)【出願番号】P 2021191237
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小山 亮彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 洋
(72)【発明者】
【氏名】野中(土居) 聡子
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/179228(WO,A1)
【文献】特公昭49-017717(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/034104(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61B 5/01
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管に注入される注射液が血管外に漏出したことを検出する漏液検出装置であって、
前記注射液を注射する注射針の穿刺部周辺の体温に基づいて前記漏出を検出する装置本体と、
前記装置本体に接続される温度検出部と、を備え、
前記温度検出部は、
穿刺部周辺に貼付可能なシート状の基部と、
前記基部において該基部の広がる方向に互いに間隔をあけて配置される複数の感熱素子であって、それぞれが前記体温を検出して該体温に応じた信号である体温情報を出力可能な複数の感熱素子と、を有し、
前記装置本体は、前記複数の感熱素子のうちの一部の感熱素子から入力される各体温情報に基づく体温が、前記複数の感熱素子のうちの残りの感熱素子から入力される各体温情報に基づく体温より低くなったときに、前記漏出があったと判断する判断部を有し、
前記一部の感熱素子は、隣り合う二つ以上の感熱素子であ
り、
前記装置本体は、
各感熱素子から経時的に入力される前記体温情報をそれぞれ記憶可能な記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記各感熱素子に対応する前記体温情報毎に、現在時刻以前の所定時刻又は所定時間の該体温情報に基づいて基準温度をそれぞれ導出する基準温度導出部と、を有し、
前記判断部は、第一の感熱素子に対応する前記体温情報において、現在時刻の該体温情報に基づく現在の体温が前記基準温度より所定温度低くなり、且つ、該第一の感熱素子と隣り合う第二の感熱素子に対応する前記体温情報において、現在時刻の該体温情報に基づく現在の体温が前記基準温度より前記所定温度低くなると、前記漏出があったと判断し、
前記第一の感熱素子及び前記第二の感熱素子は、前記一部の感熱素子に含まれ、
前記一部の感熱素子は、前記複数の感熱素子のうちの半数未満の感熱素子であり、
前記基準温度導出部は、前記複数の感熱素子のうちの過半数の感熱素子によって検出される各体温が、共通の所定時間の間にそれぞれ所定温度以上低下したときに、それ以前の前記複数の感熱素子のそれぞれに対応する各基準温度を消去すると共に、それ以降の前記複数の感熱素子のそれぞれに対応する前記体温情報から各基準温度をそれぞれ求める、漏液検出装置。
【請求項2】
血管に注入される注射液が血管外に漏出したことを検出する漏液検出装置であって、
前記注射液を注射する注射針の穿刺部周辺の体温に基づいて前記漏出を検出する装置本体と、
前記装置本体に接続される温度検出部と、を備え、
前記温度検出部は、
穿刺部周辺に貼付可能なシート状の基部と、
前記基部において該基部の広がる方向に互いに間隔をあけて配置される複数の感熱素子であって、それぞれが前記体温を検出して該体温に応じた信号である体温情報を出力可能な複数の感熱素子と、を有し、
前記装置本体は、前記複数の感熱素子のうちの一部の感熱素子から入力される各体温情報に基づく体温が、前記複数の感熱素子のうちの残りの感熱素子から入力される各体温情報に基づく体温より低くなったときに、前記漏出があったと判断する判断部を有し、
前記一部の感熱素子は、隣り合う二つ以上の感熱素子であ
り、
前記装置本体は、
各感熱素子から経時的に入力される前記体温情報をそれぞれ記憶可能な記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記各感熱素子に対応する前記体温情報毎に、現在時刻以前の所定時間である第一時間の平均体温である基準温度をそれぞれ導出する基準温度導出部と、を有し、
前記判断部は、第一の感熱素子に対応する前記体温情報において、現在時刻の該体温情報に基づく現在の体温が、前記基準温度に基づいて該基準温度より低く設定される閾値温度と比べて前記第一時間より短い第二時間連続して低くなったときに、該第一の感熱素子と隣り合う第二の感熱素子に対応する前記体温情報において、現在時刻の該体温情報に基づく現在の体温が、前記基準温度に基づく前記閾値温度と比べて低いと、前記漏出があったと判断し、
前記第一の感熱素子及び前記第二の感熱素子は、前記一部の感熱素子に含まれ、
前記一部の感熱素子は、前記複数の感熱素子のうちの半数未満の感熱素子であり、
前記基準温度導出部は、前記複数の感熱素子のうちの過半数の感熱素子によって検出される各体温が、共通の所定時間の間にそれぞれ所定温度以上低下したときに、それ以前の前記複数の感熱素子のそれぞれに対応する各基準温度を消去すると共に、それ以降の前記複数の感熱素子のそれぞれに対応する前記体温情報から各基準温度をそれぞれ求める、漏液検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管外への注射液の漏出を検出する漏液検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管内に注入されるべき注射液が血管外に漏出したことを検出する漏液検出装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この漏液検出装置は、注射液を注入する注射針の穿刺部周辺に貼付される複数の熱電対と、複数の熱電対から得られた体表温度に基づいて注射液が血管外に漏出していることを判定する判定部と、を備える。
【0004】
この判定部は、熱電対の貼着箇所における体表温度を予め繰り返しサンプリングして平均的な体表温度を算出しておき、リアルタイムの体表温度をサンプリングする度に、当該平均的な体表温度との変動量を算出し、当該変動量が閾値を超えているか否かによって、体表温度が平常温度から逸脱しているか否かを調べ、逸脱しているときに注射液の血管外への漏出が生じたものと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開番号WO2017/179228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の漏液検出装置では、体表に貼付された複数の熱電対のうちの一つの熱電対が体表から剥がれたときに、この剥がれた熱電対が外気温を検出することで予め算出しておいた平均的な体表温度からの変動量が大きくなり、これにより、注射液の血管外への漏出が生じていないにも関わらず前記漏出が生じていると判定してしまう、即ち、誤検出してしまうことが懸念される。
【0007】
そこで、本発明は、注射液の血管外への漏出を精度よく検出できる漏液検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の漏液検出装置は、
血管に注入される注射液が血管外に漏出したことを検出する漏液検出装置であって、
前記注射液を注射する注射針の穿刺部周辺の体温に基づいて前記漏出を検出する装置本体と、
前記装置本体に接続される温度検出部と、を備え、
前記温度検出部は、
穿刺部周辺に貼付可能なシート状の基部と、
前記基部において該基部の広がる方向に互いに間隔をあけて配置される複数の感熱素子であって、それぞれが前記体温を検出して該体温に応じた信号である体温情報を出力可能な複数の感熱素子と、を有し、
前記装置本体は、前記複数の感熱素子のうちの一部の感熱素子から入力される各体温情報に基づく体温が、前記複数の感熱素子のうちの残りの感熱素子から入力される各体温情報に基づく体温より低くなったときに、前記漏出があったと判断する判断部を有し、
前記一部の感熱素子は、隣り合う二つ以上の感熱素子である。
【0009】
このように、複数の感熱素子のうちの一部(隣り合う二つ以上)の感熱素子によって検出される体温が残りの感熱素子によって検出される体温より低下したときに注射液の血管外への漏出(以下、単に「漏液」とも称する。)があったと判断することで、漏液の検出精度が向上する。即ち、注射針の穿刺部周辺に貼付した温度検出部(詳しくは、基部)の一部に剥がれが生じて一つの感熱素子のみが室温等の雰囲気温度を検出した場合等を漏液があったと判断されること(誤検出)を防ぐことができる。
【0010】
しかも、隣り合う二つ以上の感熱素子によって検出される体温が残りの感熱素子によって検出される体温より低いときに漏液があったと判断するため、基部の周縁部等の穿刺部周辺からの剥がれ等によって互いに離れた位置にある複数の感熱素子が雰囲気温度を検出した場合等を漏液があったと判断されること(誤検出)も防ぐことができる。
【0011】
前記漏液検出装置では、
前記装置本体は、
各感熱素子から経時的に入力される前記体温情報をそれぞれ記憶可能な記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記各感熱素子に対応する前記体温情報毎に、現在時刻以前の所定時刻又は所定時間の該体温情報に基づいて基準温度をそれぞれ導出する基準温度導出部と、を有し、
前記判断部は、第一の感熱素子に対応する前記体温情報において、現在時刻の該体温情報に基づく現在の体温が前記基準温度より所定温度低くなり、且つ、該第一の感熱素子と隣り合う第二の感熱素子に対応する前記体温情報において、現在時刻の該体温情報に基づく現在の体温が前記基準温度より前記所定温度低くなると、前記漏出があったと判断し、
前記第一の感熱素子及び前記第二の感熱素子は、前記一部の感熱素子に含まれてもよい。
【0012】
このように、隣り合う二つの感熱素子(第一の感熱素子と第二の感熱素子)によって検出される体温が、対応する基準温度に対してそれぞれ所定温度低下したときに漏液があったと判断することで、漏液の検出精度がより向上する。
【0013】
また、前記漏液検出装置では、
前記装置本体は、
各感熱素子から経時的に入力される前記体温情報をそれぞれ記憶可能な記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記各感熱素子に対応する前記体温情報毎に、現在時刻以前の所定時間である第一時間の平均体温である基準温度をそれぞれ導出する基準温度導出部と、を有し、
前記判断部は、第一の感熱素子に対応する前記体温情報において、現在時刻の該体温情報に基づく現在の体温が、前記第一の感熱素子に対応する基準温度に基づいて該基準温度より低く設定される閾値温度と比べて前記第一時間より短い第二時間連続して低くなったときに、該第一の感熱素子と隣り合う第二の感熱素子に対応する前記体温情報において、現在時刻の該体温情報に基づく現在の体温が、前記第二の感熱素子に対応する基準温度に基づく閾値温度と比べて低いと、前記漏出があったと判断し、
前記第一の感熱素子及び前記第二の感熱素子は、前記一部の感熱素子に含まれてもよい。
【0014】
周囲の温度変化やストレス等によって注射液を注入される人の体表の広い範囲で体温(体表温度)が変化するような場合でも、上記構成のように、穿刺部周辺での漏液を判断する際に基準となる体温として現在時刻以前の一定時間(第一時間)の平均体温(基準温度)を用いることで、漏液の判断における前記体温の変化の影響が好適に抑えられた状態で第一の感熱素子と対応する部位での漏液に起因する温度低下を検出しつつ、この部位の周囲への注射液の広がりに起因する温度低下(第一の熱素子と隣り合う第二の感熱素子と対応する部位での所定の温度低下)も検出した上で漏液の有無を判断することで、漏液をより精度よく検出することができる。
【0015】
また、前記漏液検出装置では、
前記一部の感熱素子は、前記複数の感熱素子のうちの半数未満の感熱素子であり、
前記基準温度導出部は、前記複数の感熱素子のうちの過半数の感熱素子によって検出される各体温が、共通の所定時間の間にそれぞれ所定温度以上低下したときに、それ以前の前記複数の感熱素子のそれぞれに対応する各基準温度を消去すると共に、それ以降の前記複数の感熱素子のそれぞれに対応する前記体温情報から各基準温度をそれぞれ求めてもよい。
【0016】
このように、複数の感熱素子のうちの過半数の感熱素子によって検出される体温が共通の時間(所定時間)で大きく(所定温度以上)低下したときに、複数の感熱素子のそれぞれに対応する各基準温度が導出し直される(即ち、リセットされる)ことで、漏液検出において雰囲気温度の低下等に伴う体の全体的な体温低下の影響が抑えられ、これにより、漏液の検出精度がより向上する。
【発明の効果】
【0017】
以上より、本発明によれば、注射液の血管外漏出を精度よく検出できる漏液検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る漏液検出装置が備える温度検出部の貼付状態を示す図である。
【
図2】
図2は、前記漏液検出装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、前記温度検出部の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、穿刺部周辺において一つの温度センサによって検出された時間経過に伴う体温の変化と、体温の変化に伴う基準温度の変化との一例を示す図である。
【
図6】
図6は、前記漏液検出装置による漏液検出のフロー図である。
【
図7】
図7は、他実施形態に係る温度検出部を説明するための図である。
【
図8】
図8は、他実施形態に係る温度検出部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図6を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係る漏液検出装置は、
図1に示すように、腕等の血管Bv内に注入されるべき抗がん剤などの注射液が血管Bv外に漏出したこと(以下、「漏液」とも称する。)を検出するために用いられ、当該注射液を血管Bvに注入する点滴装置100と共に使用される。以下では、点滴装置100について簡単に説明した後、漏液検出装置1について詳細に説明する。
【0021】
この点滴装置100は、注射液を収容している容器(不図示)と、容器から輸液ポンプ(不図示)や輸液コントローラ(不図示)等の機器を通して患者へ注射液を運ぶ輸液セット110と、を有する。輸液セット110は、注射液の流路となる患者ライン111(上記機器と患者の間部分)と、患者ライン111の先端に接続されている注射器112と、を有し、患者の血管Bvに対して注射針113が穿刺されることで注射液を血管Bv内に注入する。このとき、注射器112と患者ライン111の先端側の部分とは、テープ115によって患者の体表に沿わせるようにして固定されている。
【0022】
漏液検出装置1は、
図2にも示すように、注射液を注射する注射針113の穿刺部周辺の体温(体表温度)に基づいて注射液の血管外漏出を検出する装置本体2と、患者等の体表における穿刺部周辺に貼付される温度検出部3と、を備える。本実施形態の漏液検出装置1は、装置本体2と温度検出部3とを接続するケーブル4も備える。
【0023】
温度検出部3は、
図3及び
図4にも示すように、シート部31と、シート31部に配置される複数の温度センサ(感熱素子)32と、を有する。また、温度検出部3は、ケーブル4や装置本体2が接続されるコネクタ33を有する。本実施形態のコネクタ33には、ケーブル4が接続される。
【0024】
シート部31は、血管Bvに注射針113が穿刺された患者の穿刺部周辺に貼付されるシート(基部)31aと、該シート31aから剥離可能な剥離シート311dと、を有するシート状部材である。
【0025】
シート31aは、透光性を有していてもよい。本実施形態のシート31aは、半透明であるため、透光性を有する。これにより、穿刺部周辺に貼付したときに、体表における該シート31aの貼付されている部位の色の変化等を観察することができる。
【0026】
このシート31aは、複数の温度センサ32が配置される矩形のセンサ配置部311の中央を縦断するように延びるガイドライン312を有していてもよい。このガイドライン312は、シート31aを穿刺部周辺に貼付する際のシート31aの位置決めに利用される。具体的には、ガイドライン312が血管Bvに穿刺された注射針113と重なるようにシート31aが穿刺部周辺に貼付される。
【0027】
本実施形態のシート31aでは、保護フィルム311aと、温度センサフィルム311bと、粘着シート311cと、が順に積層されている。このシート31aには添着シート311cと対向するように剥離シート311dが積層されており、該シート31aが穿刺部周辺に貼付される際には、剥離シート311dが粘着シート311cから剥がされた状態で該粘着シート311cが穿刺部周辺(体表)に接するようにシート31aが貼付される。
【0028】
複数の温度センサ32は、シート31aのセンサ配置部311において該シート31aの広がる方向に互いに間隔をあけて配置されている。これら複数の温度センサ32のそれぞれは、シート31aの温度センサフィルム311bに配置され、該シート31aが穿刺部周辺に貼付されたときに粘着シート311cを介して穿刺部周辺(体表)とそれぞれ対向する。本実施形態のシート31aでは、複数の温度センサ32は、格子状に配置されている。より具体的に、複数の温度センサ32は、ガイドライン312の延びる方向に並ぶと共に、ガイドライン312の延びる方向と直交する方向に並ぶように配置されている。各温度センサ32は、コネクタ33と電気的に接続されており、検出した体温に応じた信号(体温情報)をそれぞれ出力する。
【0029】
装置本体2は、ケーブル4が接続される入力部21と、入力部21を通じて各温度センサ32からの体温情報が入力される演算部22と、演算部22に接続される警報部23と、有する。
【0030】
演算部22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、このCPUによって実行される種々のプログラムやその実行に必要なデータ等を予め記憶するROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性記憶素子、このCPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子およびその周辺回路等を備えたマイクロコンピュータによって構成される。
【0031】
この演算部22には、当該演算部22が所定のプログラムを実行することによって、機能的に、基準温度導出部221と、判断部222と、が構成される。また、演算部22は、入力部21を通じて各温度センサ32から経時的に入力される体温情報をそれぞれ記憶可能な記憶部223を有する。
【0032】
基準温度導出部221は、
図5にも示すように、記憶部223に記憶されている各温度センサ32に対応する体温情報毎に基準温度Tをそれぞれ導出する。この基準温度Tは、現在時刻t10以前の所定時間である第一時間t1の平均体温である。尚、
図5は、穿刺部周辺において一つの温度センサ(例えば、
図1に示す第一温度センサ32a)によって検出された体温(詳しくは、体表温度)の時間の経過に伴う変化と、体温の変化に伴う基準温度Tの変化との一例を示すグラフである。このグラフでは、横軸が時間で縦軸が体温であり、横軸において漏液が始まった時点を0秒としている。
【0033】
より詳しくは、基準温度導出部221は、記憶部223に記憶されている経時的な体温情報に基づき、各温度センサ32に対応する体温情報毎に、現在時刻t10に対して一定時間前の第一基準時刻t11から該第一基準時刻t11より所定時間後の時刻であって現在時刻t10以前の時刻である第二基準時刻t12までの第一時間t1の平均体温である基準温度Tを経時的に導出し続ける。
【0034】
例えば、温度検出部3の一つの温度センサ32aから経時的に演算部22に入力される体温情報に着目したときに(
図1及び
図5参照)、本実施形態の基準温度導出部221は、現在時刻t10を
図5の0秒としたときに、180秒前(一定時間前)の第一基準時刻t11から、現在時刻t10の120秒前(第一基準時刻t11から所定時間後)の第二基準時刻t12までの60秒間(第一時間t1)の平均体温を現在時刻t10における基準温度Tとして導出する。この基準温度Tは、時間の経過に伴って体温が変化すると、体温の変化に対して所定時間遅れて同様に変化する(
図5参照)。基準温度導出部221は、この基準温度Tを、各温度センサ32から入力された体温情報毎にそれぞれ経時的(連続又は断続)に導出し続ける。
【0035】
尚、漏液検出装置1において、基準温度導出部221が漏液の検出を行う際の現在時刻t10と第一基準時刻t11の間隔は、1~300秒が好ましく、120~180秒がより好ましい。現在時刻t10と第一基準時刻t11との間隔が300秒を超えると、体表の温度変化が大きくなった場合に現在時刻t10の温度と基準温度Tとの差が大きくなり、漏液と誤検知するというデメリットがある。また、現在時刻t10と第一基準時刻t11との間隔が1秒未満の場合、血管外への注射液の漏出が始まり、温度が既に下がってきている状況であると、現在時刻t10の温度と基準温度Tとの差が小さいため、漏液の検出精度が低下するというデメリットがある。また、第一基準時刻t11と第二基準時刻t12との間隔である第一時間t1は、10~300秒が好ましく、60~180秒がより好ましい。第一基準時刻t11と第二基準時刻t12との間隔である第一時間t1が300秒を超えると、その間の平均温度(基準温度T)を算出するまでの時間が長くなり、検出開始時間が遅くなるというデメリットがある。また、第一基準時刻t11と第二基準時刻t12との間隔である第一時間t1が10秒未満であると、その間の平均温度(基準温度T)を取得する時間が短くなり基準温度Tの精度が低下するというデメリットがある。
【0036】
また、基準温度導出部221は、複数の温度センサ32のうちの過半数の温度センサ32によって検出される各体温が、共通の所定時間の間にそれぞれ所定温度以上低下したとき、即ち、過半数の温度センサ32によって検出される各体温が、短時間で一斉に大きく低下したときに、それ以前の複数の温度センサ32のそれぞれに対応する各基準温度Tを消去すると共に、それ以降の複数の温度センサ32のそれぞれから入力される体温情報から各基準温度T(各温度センサ32に対応する基準温度T)をそれぞれ求める。即ち、基準温度Tがリセットされる。
【0037】
本実施形態の基準温度導出部221は、複数の温度センサ32のうちの80%以上の温度センサ32によって検出される各体温が、2秒間(共通の所定時間)の間にそれぞれ2℃(所定温度)以上低下したときに、それ以前の各温度センサ32に対応する基準温度Tをそれぞれ消去すると共に、それ以降の各温度センサ32から入力される体温情報から基準温度Tをそれぞれ求める。
【0038】
尚、漏液検出装置1において、前記共通の所定時間は、1~20秒が好ましく、1~3秒がより好ましい。また、前記所定温度は、1~6℃が好ましく、2~6℃がより好ましい。前記共通の所定時間が20秒を超えると、血管外への注射液の漏出が広範囲に起こるまで検知しないデメリットがある。また、前記所定温度が6℃を超えると、体表からの剥がれが生じていくつかの温度センサ32が室温等の雰囲気温度を検出して該温度センサ32の検出する温度が大きく低下した場合でも、これを血管外への注射液の漏出があったと判断される(誤検出)というデメリットがある。また、前記所定温度が1℃未満であると体調変化による温度変化を漏液が生じたと誤認識するというデメリットがある。
【0039】
判断部222は、複数の温度センサ32からの体温情報に基づいて漏液しているか否かを判断する、即ち、漏液の検出を行う。本実施形態の判断部222は、複数の温度センサ32のうちの一部(隣り合う二つ以上)の温度センサ32から入力される各体温情報に基づく体温が、複数の温度センサ32のうちの残りの温度センサ32から入力される各体温情報に基づく体温より低くなったときに、漏液していると判断する。より具体的には、以下の通りである。
【0040】
判断部222は、各温度センサ32から入力された体温情報毎に、現在時刻t10の体温情報に基づく現在の体温と、閾値温度T1と比較し続ける。この閾値温度T1は、判断部222が基準温度Tに基づいて該基準温度Tより低く設定する値であり、各温度センサ32から入力された体温情報毎に設定される。また、閾値温度T1は、基準温度Tと同様に、時間の経過に伴って体温が変化すると該変化より所定時間遅れて同様に変化する。本実施形態の閾値温度T1は、基準温度Tより1℃低く設定される。尚、漏液検出装置1において、閾値温度T1は、基準温度Tより0.25~6.0℃低く設定されることが好ましく、0.5~2.0℃低く設定されることがより好ましい。閾値温度T1と基準温度Tとの差が6.0℃を超えて設定されると、少量の注射液が漏出した場合に検出精度が低下するというデメリットがある。また、閾値温度T1と基準温度Tとの差が0.25℃未満で設定されると、誤検出し易くなるというデメリットがある。
【0041】
そして、判断部222は、複数の温度センサ32のうちの一つの温度センサ(例えば、第一温度センサ32a:
図1参照)から入力される体温情報において、現在時刻t10(ここでは、
図5において、漏液の開始点以降に体温のグラフと閾値温度T1のグラフとが交差する時刻とする。)の該体温情報に基づく現在の体温が、閾値温度T1(詳しくは、第一温度センサ32aから入力される体温情報に対応する閾値温度T1a)と比べて第二時間(本実施形態の例では、10秒間)t2連続して低くなったときに(
図5のt2で示される範囲参照)、第一温度センサ32aと隣り合う第二温度センサ32bから入力される体温情報において、現在時刻t10の該体温情報に基づく現在の体温が、閾値温度T1(詳しくは、第二温度センサ32bから入力された体温情報に対応する閾値温度T1b)と比べて低いと、漏液が発生した(又は漏液している)と判断する。
【0042】
尚、第二時間t2は、第一時間t1より短い時間であり、好ましくは10~60秒であり、より好ましくは20~40秒である。また、本実施形態の温度検出部3において、第一温度センサ32aと隣り合う第二温度センサ32bは、第一温度センサ32aの周囲に配置される四つの温度センサ32bである(
図1参照)。そして、この四つの第二温度センサ32bのうちの少なくとも一つの第二温度センサ32bから入力される体温情報において、現在時刻の体温が閾値温度T1bより低くなっていれば、判断部222は、漏液が発生したと判断する。
【0043】
一方、判断部222は、第一温度センサ32aから入力される体温情報において、現在時刻t10の該体温情報に基づく現在の体温が、閾値温度T1aと比べて第二時間t2連続して低くなっても、第二温度センサ32bから入力される体温情報において、現在時刻t10の該体温情報に基づく現在の体温が、閾値温度T1bと比べて低くない場合には、漏液していないと判断する。
【0044】
判断部222は、漏液していると判断すると、警報部23に向けて漏出信号を出力する。
【0045】
警報部23は、判断部222からの漏出信号が入力されると、警報を外部に出力する。具体的に、警報部23は、漏出信号の入力に伴って音や表示等による警報を外部に出力する。本実施形態の警報部23は、少なくともスピーカーを有し、漏出信号の入力に伴って警報音を外部に出力する。
【0046】
次に、漏液検出装置1による漏液の検出について
図6も参照しつつ説明する。
【0047】
まず、点滴装置100における輸液セット110の注射針113が血管Bvに穿刺された患者の穿刺部周辺に温度検出部3が貼付される(
図1参照)。このとき、シート31aのガイドライン312と、血管Bvに穿刺されている注射針113とが重なるように温度検出部3(詳しくは、シート31a)が貼付される。詳しくは、注射針113の先端113aが、センサ配置部311の中心部又は格子状に並ぶ複数の温度センサ32のうちの中央に配置された温度センサ32c(
図3参照)と、重なるように、シート31aが体表の穿刺部周辺に貼付される。
【0048】
続いて、温度検出部3(詳しくは、コネクタ33)と装置本体2(詳しくは、入力端子)とがケーブル4によって接続される。尚、ケーブル4による温度検出部3と装置本体2との接続は、温度検出部3の穿刺部周辺への貼付の前に行われてもよい。
【0049】
このように点滴装置100の注射針113の穿刺と、漏液検出装置1の温度検出部3の穿刺部周辺への貼付とが行われると、漏液検出装置1による漏液検出が開始されると共に、注射液の血管Bvへの注入が開始される。
【0050】
漏液検出が開始されると、各温度センサ32によって検出された体温(詳しくは、穿刺部周辺の体表温度)が体温情報として装置本体2の演算部22にそれぞれ入力される。この各温度センサ32からの体温情報の入力は、漏液検出の終了まで続く。
【0051】
各温度センサ32からの体温情報は、演算部22において記憶部223に入力(記憶)されると共に判断部222に入力される。
【0052】
記憶部223に各温度センサ32からの体温情報が記憶され始めると、基準温度導出部221が、記憶部223に記憶されている各温度センサ32からの体温情報毎に基準温度Tをそれぞれ導出する(ステップS1)。本実施形態の基準温度導出部221は、上述のように、各温度センサ32に対応する体温情報毎に、現在時刻t10の180秒前の第一基準時刻t11から、現在時刻t10の120秒前の第二基準時刻t12までの60秒間(第一時間t1)の平均体温(基準温度T)をそれぞれ導出する。この基準温度Tは、体温情報毎に、経時的に連続又は断続に導出される。
【0053】
体温情報毎に基準温度Tが導出されると、判断部222は、各温度センサ32から入力された体温情報毎に、現在時刻t10の体温情報に基づく現在の体温と、該体温情報と対応する閾値温度T1とをそれぞれ比較する(ステップS2)。
【0054】
漏液が発生すると、血管Bvから漏れ出た注射液によって体表(穿刺部周辺)の一部Ar1の温度が低下し、さらに漏液が続くことで体表において温度低下した部位の範囲が最初に温度低下を生じた領域Ar1の周囲の領域Ar2へ徐々に広がる(
図1の符号Ar1、Ar2参照)。このとき、判断部222では、体表において最初に温度低下した領域(第一領域)Ar1と対応する位置の第一温度センサ32aから入力される体温情報に基づき、現在時刻t10の該体温情報に基づく現在の体温が、第一温度センサ32aから入力される体温情報に対応する閾値温度T1aと比べて第二時間t2連続して低くなった(ステップS3:Yes)ことが特定される。
【0055】
そして、判断部222において、この第二時間t2の経過のタイミングにおいて、第一温度センサ32aと隣り合い且つ体表における第一領域Ar1と隣接する領域(第二領域)Ar2に位置する第二温度センサ32bから入力される温度情報に基づき、現在時刻t10の該体温情報に基づく現在の体温が、第二温度センサ32bから入力される体温情報に対応する閾値温度T1bと比べて低くなったこと(ステップS4:Yes)が特定されると、判断部222は、漏液している判断して警報部23に漏出信号を出力し(ステップS5)、漏出信号が入力された警報部23は、スピーカーから警報音を出力して(ステップS6)漏液が発生したことを周囲の人(看護師等)に知らせる。
【0056】
一方、ステップS4において、第二時間t2の経過のタイミングにおいて、第二温度センサ32bから入力される温度情報に基づき、現在時刻t10の該体温情報に基づく現在の体温が、第二温度センサ32bから入力される体温情報に対応する閾値温度T1bと比べて高い(ステップS4:No)ことが特定されると、判断部222は、漏液していないと判断して、各温度センサ32から入力された体温情報毎の、現在時刻t10の体温情報に基づく現在の体温と、該体温情報と対応する閾値温度T1との比較を続ける(ステップS2に戻る)。
【0057】
以上の漏液検出装置1によれば、複数の温度センサ(感熱素子)32のうちの一部(隣り合う二つ以上)の温度センサ32によって検出される体温が残りの温度センサ32によって検出される体温より低下したときに漏液(即ち、注射液の血管Bv外への漏出)があったと判断することで、漏液の検出精度が向上する。即ち、注射針113の穿刺部周辺に貼付した温度検出部3(詳しくは、シート31a)の周縁部等の一部に体表からの剥がれが生じて一つの温度センサ32のみが室温等の雰囲気温度を検出して該温度センサ32の検出する温度が大きく低下した場合でも、これを注射液の漏出があったと判断されること(誤検出)が防がれる。
【0058】
しかも、隣り合う二つ以上の温度センサ32によって検出される体温が残りの温度センサ32によって検出される体温より低いときに漏液があったと判断するため、シート31aの周縁部等の体表からの剥がれによって互いに離れた位置にある複数の温度センサ32が雰囲気温度をそれぞれ検出した場合のように、互いに離れた位置にある複数の温度センサ32が検出する温度が大きく低下したときでも、漏液があったと判断されること(誤検出)が防がれる。
【0059】
具体的に、本実施形態の漏液検出装置1では、装置本体2が、各温度センサ32から経時的に入力される体温情報をそれぞれ記憶可能な記憶部223と、記憶部223に記憶されている各温度センサ32に対応する体温情報毎に、現在時刻以前の所定時間である第一時間t1の平均体温(基準温度T)をそれぞれ導出する基準温度導出部221と、を有する。そして、判断部222が、第一温度センサ32aに対応する体温情報において、現在時刻t10の該体温情報に基づく現在の体温が、第一温度センサ32aに対応する基準温度Tに基づいて該基準温度Tより低く設定される閾値温度T1aと比べて第二時間t2連続して低くなったときに、該第一温度センサ32aと隣り合う第二温度センサ32bに対応する体温情報において、現在時刻t10の該体温情報に基づく現在の体温が、第二温度センサ32bに対応する基準温度Tに基づく閾値温度T1bと比べて低いと、漏出があったと判断する。
【0060】
周囲の温度変化やストレス等によって注射液を注入される人(患者等)の穿刺部周辺を含む体表の広い範囲で体温(体表温度)が変化するような場合でも、上記構成のように、現在時刻t10を基準に設定される第一時間t1の平均体温(基準温度t)を用いる、即ち、体表の広い範囲での温度変化に連動して変動する基準温度Tを用いて漏液についての判断を行うため、漏液の判断における前記体表の広い範囲での温度変化の影響が好適に抑えられ、漏液を精度よく検出することができる。しかも、漏液の検出において、平均体温(基準温度T)を用いることで
図5のグラフに示すように、体温を示すグラフの振幅(波状のグラフの上下方向の幅)に比べ、基準温度Tを示すグラフの振幅が小さくなるため、漏液の判断における体温の変化(周囲の温度変化やストレス等に起因する体温の変化)の影響が抑えられる。
【0061】
このように、体表の広い範囲での体温変化の影響が抑えられた状態で、第一温度センサ32aと対応する部位(第一領域Ar1)での漏液に起因する温度低下を検出しつつ、この部位Ar1の周囲への注射液の広がりに起因する温度低下(第一温度センサ32aと隣り合う第二温度センサ32bと対応する部位(第二領域Ar2)での所定の温度低下)も検出した上で漏液の有無を判断することで、漏液をより精度よく検出することができる。
【0062】
また、本実施形態の漏液検出装置1では、基準温度導出部221は、複数の温度センサ32のうちの過半数(本実施形態の例では、80%)の温度センサ32によって検出される各体温が、共通の所定時間(本実施形態の例では、2秒)の間にそれぞれ所定温度(本実施形態の例では、2℃)以上低下したときに、それ以前の複数の温度センサ32のそれぞれに対応する各基準温度Tを消去すると共に、それ以降の複数の温度センサ32のそれぞれに対応する体温情報から各基準温度Tをそれぞれ求める。
【0063】
このように、複数の温度センサ32のうちの過半数の温度センサ32によって検出される体温が短い時間(共通の所定時間)で一斉に大きく(所定温度以上)低下したときに、複数の温度センサ32のそれぞれに対応する各基準温度Tが導出し直される(即ち、リセットされる)ことで、漏液検出において雰囲気温度の低下等に伴う体の全体的な体温低下を漏液が生じたと判断すること(誤判断)を避けることができ、これにより、漏液の検出精度がより向上する。
【0064】
尚、本発明の漏液検出装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0065】
演算部22における漏液検出のアルゴリズムは、上記実施形態のものに限定されない。例えば、演算部22における漏液検出のアルゴリズムは、複数の温度センサ32の一部(詳しくは、隣り合う二つ以上の温度センサ32)に対応する体温情報のそれぞれにおいて、現在時刻t10の所定時間前(例えば、10秒前)の該体温情報に基づく体温に比べ、現在時刻t10の該体温情報に基づく体温が所定温度(例えば、0.6℃)以上低下しているときに、漏液していると判断するものでもよい。ここで、前記所定時間は、10~60秒が好ましく、20~50秒がより好ましい。前記所定時間が60秒を超えると、漏液の検出までの時間が長くなるとうデメリットがある。また、前記所定時間が10秒未満であると、所定時間前の概体温情報と現在時刻t10の温度とが近くなり、温度差がなく漏液検知の精度が低下するというデメリットがある。また、前記所定温度は、0.25~6.0℃が好ましく、0.5~2.0℃がより好ましい。
【0066】
また、演算部22における漏液検出のアルゴリズムは、第一温度センサ32aに対応する体温情報において、現在時刻t10の該体温情報に基づく現在の体温が、該体温情報に対応する基準温度Tより所定温度(例えば、0.5℃)低くなり、且つ、第二温度センサ32bに対応する体温情報において、現在時刻t10の該体温情報に基づく現在の体温が、該体温情報に対応する基準温度Tより所定温度(例えば、0.5℃)低くなると、漏液が発生したと判断するもの等でもよい。
【0067】
即ち、演算部22における漏液検出のアルゴリズムは、複数の温度センサ32のうちの一部(隣り合う二つ以上)の温度センサ32から入力される各体温情報に基づく体温が、複数の温度センサ32のうちの残りの温度センサ32から入力される各体温情報に基づく体温より低くなったときに、漏出があったと判断するものであればよい。
【0068】
また、漏液検出装置1が有する漏液検出のアルゴリズムの数は限定されない。漏液検出装置1が漏液検出のアルゴリズムを複数備え、漏液検出の際にスイッチ等でモードを切り替えることで複数のアルゴリズムから一つを選択する構成等でもよい。このように漏液検出装置1が漏液検出のアルゴリズムを複数備える場合、これら複数のアルゴリズムのうちの一つのアルゴリズムとして、上記実施形態の漏液検出のアルゴリズムが含まれていればよく、他のアルゴリズムの具体的な構成は限定されない。
【0069】
また、上記実施形態の漏液検出装置1の基準温度導出部221では、現在時刻t10以前の所定時間t1(第一基準時刻t11と第二基準時刻t12との間)の平均体温を基準温度Tとして導出しているが、この構成に限定されない。現在時刻t10以前の所定時刻(例えば、第一基準時刻t11)の体温を基準温度Tとして導出する構成であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態の漏液検出装置1の温度検出部3では、複数の温度センサ32が格子状に配置されているが、この構成に限定されない。温度検出部3において、複数の温度センサ32は、径の異なる複数の同心円上に並ぶ配置や、放射状に並ぶ配置等でもよい。即ち、複数の温度センサ32は、シート31aの所定の領域(範囲)内において、隣り合う温度センサ32とそれぞれ間隔をあけた状態で配置されていればよい。
【0071】
また、上記実施形態の漏液検出装置1の温度検出部3では、複数の温度センサ32が一つのシート31aに配置されているが、この構成に限定されない。複数の温度センサ32のそれぞれが独立した状態(例えば、一つのシート31aに対して一つの温度センサ32が配置された構成等)で穿刺部周辺に貼付される構成でもよい。
【0072】
また、上記実施形態の漏液検出装置1では、温度検出部3は、例えば25個の温度センサを有しているが、この構成に限定されない。温度検出部3は、温度センサ32を24個以下や26個以上有してもよい。
【0073】
また、上記実施形態の漏液検出装置1の温度検出部3では、シート31aのセンサ配置部311は矩形状であり、該センサ配置部311の略全域に広がるように複数の温度センサ32が配置されているが、この構成に限定されない。例えば、
図7に示すように、センサ配置部311が切り欠き3110を有し、穿刺されている注射器112が切り欠き3110内に位置するように温度検出部3(詳しくは、シート31a)が穿刺部周辺に貼付される構成でもよい。また、
図8に示すように、センサ配置部311におけるコネクタ33と反対側の端部に温度センサ32の配置されていない延設部3111が設けられ、該延設部3111が注射器112に重なるように体表に貼付されることで注射器112を体表に固定する構成等でもよい。
【0074】
また、上記実施形態の漏液検出装置1では、装置本体2は、漏液を検出したときに外部に警報(上記実施形態の例では警報音)のみを出力(報知)するが、この構成に限定されない。装置本体2は、表示部等を通じて漏液している部位や量についての情報等を外部に出力する構成であってもよい。
【0075】
また、上記実施形態の漏液検出装置1では、装置本体2と温度検出部3とがケーブル4によって接続されているが、この構成に限定されない。装置本体2と温度検出部3とが直接接続される構成でもよい。また、装置本体2と温度検出部3とは、ケーブル4等の有線によって接続された構成に限定されず、無線によって接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…漏液検出装置、2…装置本体、21…入力部、22…演算部、221…基準温度導出部、222…判断部、223…記憶部、23…警報部、3…温度検出部、31…シート部、31a…シート(基部)、311…センサ配置部、311a…保護フィルム、311b…温度センサフィルム、311c…粘着シート、311d…剥離シート、3110…切り欠き、3111…延設部、312…ガイドライン、32…温度センサ(感熱素子)、32a…第一温度センサ(第一の感熱素子)、32b…第二温度センサ(第二の感熱素子)、32c…中央の温度センサ、33…コネクタ、4…ケーブル、100…点滴装置、110…輸液セット、111…患者ライン、112…注射器、113…注射針、113a…先端、115…テープ、Ar1…第一領域、Ar2…第二領域、Bv…血管、T…基準温度、t1…第一時間、t2…第二時間、t10…現在時刻、t11…第一基準時刻、t12…第二基準時刻、T1…閾値温度、T1a…第一温度センサから入力される体温情報に対応する閾値温度、T1b…第二温度センサから入力される体温情報に対応する閾値温度