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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】封止用樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20241028BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20241028BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20241028BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20241028BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L21/56 R
C08G59/18
C08L101/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021532793
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2020026413
(87)【国際公開番号】W WO2021010205
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019130145
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019130159
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019130201
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019130202
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019228200
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐作
(72)【発明者】
【氏名】土生 剛志
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼名 大樹
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-133055(JP,A)
【文献】特開2006-321216(JP,A)
【文献】特開2015-43378(JP,A)
【文献】特開2015-61017(JP,A)
【文献】特開2015-179814(JP,A)
【文献】特開2018-103584(JP,A)
【文献】特開2018-162418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/18
C08L 101/00
H01L 21/56
H01L 23/28―23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂と層状ケイ酸塩化合物とを含み、
前記熱可塑性樹脂の酸価が、18mgKOH/g以上であり、
せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)が、8×10Pa・s以上であり、
せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)が、8×10Pa・s未満であることを特徴とする、封止用樹脂シート。
【請求項2】
せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)と、せん断速度10rad/秒における、85℃の粘度(ν10)とが、下記式(1)を満足することを特徴とする、請求項1に記載の封止用樹脂シート。
ν0.01/ν10≧70 (1)
【請求項3】
せん断速度10rad/秒における、85℃の粘度(ν10)が、0.4×10Pa・s以下であることを特徴とする、請求項1に記載の封止用樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂シート、詳しくは、素子を封止するための封止用樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂を含む封止用シートを用いて、基板に実装された半導体素子や電子部品を、プレスにより封止し、その後、熱硬化性樹脂を熱硬化させて、封止用シートから硬化体を形成することが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-162909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の高機能化に伴い、それに備えられる半導体素子や電子部品にも小型化が要求されている。それに伴い、半導体素子や電子部品を保護する樹脂(硬化体)に対しても、硬化時の寸法精度の向上が要求されている。具体的には、半導体素子や電子部品の側端縁から、半導体素子や電子部品、および、基板間に侵入する硬化体の侵入量をより低減したい要求がある。
【0005】
本発明は、素子を十分に封止することができ、かつ、半導体素子や電子部品に代表される素子および基板間への硬化体の侵入を低減できる封止用樹脂シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)が、8×10Pa・s以上であり、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)が、8×10Pa・s未満である、封止用樹脂シートである。
【0007】
本発明[2]は、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)と、せん断速度10rad/秒における、85℃の粘度(ν10)とが、下記式(1)を満足する、上記[1]に記載の封止用樹脂シートを含んでいる。
ν0.01/ν10≧70 (1)
本発明[3]は、せん断速度10rad/秒における、85℃の粘度(ν10)が、0.4×10Pa・s以下である、上記[1]または[2]に記載の封止用樹脂シートを含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の封止用樹脂シートにおいて、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)が、8×10Pa・s以上であり、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)が、8×10Pa・s未満である。
【0009】
そのため、素子を十分に封止することができ、かつ、この封止用樹脂シートを加熱して硬化体を形成するときに、素子および基板間への硬化体の侵入量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A図1Dは、本発明の封止用樹脂シートの第1実施形態を用いて、複数の電子素子を封止して、電子素子パッケージを製造する工程断面図であり、図1Aが、封止用樹脂シートを準備する工程、図1Bが、電子素子を準備する工程、図1Cが、封止用樹脂シートをプレスして封止体を形成する工程、図1Dが、封止体を加熱して硬化体を形成する工程である。
図2図2A図2Dは、本発明の封止用樹脂シートの第2実施形態を用いて、複数の電子素子を封止して、電子素子パッケージを製造する工程断面図であり、図2Aが、封止用多層樹脂シートを準備する工程、図2Bが、電子素子を準備する工程、図2Cが、封止用多層樹脂シートをプレスして封止体を形成する工程、図2Dが、封止体を加熱して、硬化体を形成する工程である。
図3図3A図3Dは、実施例における硬化体侵入長さYを測定する方法の工程断面図であり、図3Aが、封止用多層樹脂シートを準備する工程(ステップA)、図3Bが、電子素子(ダミー素子)を準備する工程(ステップB)、図3Cが、封止用多層樹脂シートをプレスして封止体を形成する工程(ステップC)、図3Dが、封止体を加熱して、硬化体を形成する工程(ステップD)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の封止用樹脂シートは、後述する粘弾性測定において、所定のせん断速度における、85℃の粘度が、所定の値である。
【0012】
以下、このような封止用樹脂シートの第1実施形態(1層の封止用樹脂シート)を説明する。
【0013】
封止用樹脂シートは、素子を封止するための樹脂シートであって、厚み方向に直交する面方向に延びる略板形状(フィルム形状)を有する。
【0014】
封止用樹脂シートの材料は、例えば、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含有する。
【0015】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0016】
熱硬化性樹脂は、単独または2種以上併用することができる。
【0017】
熱硬化性樹脂として、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。なお、エポキシ樹脂は、主剤、硬化剤および硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物として調製される。
【0018】
主剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などの3官能以上の多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これら主剤は、単独で使用または2種以上を併用することができる。主剤として、好ましくは、2官能エポキシ樹脂、より好ましくは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0019】
主剤のエポキシ当量の下限は、例えば、10g/eq.、好ましくは、100g/eq.である。主剤のエポキシ当量の上限は、例えば、300g/eq.、好ましくは、250g/eq.である。
【0020】
主剤の軟化点の下限は、例えば、50℃、好ましくは、70℃、より好ましくは、72℃、さらに好ましくは、75℃である。主剤の軟化点の上限は、例えば、130℃、好ましくは、110℃、より好ましくは、90℃である。
【0021】
主剤の軟化点が上記した下限以上であれば、図1Cに示す工程において、封止用樹脂シート1が流動できる。従って、図1Cに示す工程の時間短縮、および、図2Cに示す工程における封止用樹脂シート1の厚み方向一方面を平坦にできる。
【0022】
材料における主剤の割合の下限は、例えば、1質量%、好ましくは、2質量%である。材料における主剤の割合の上限は、例えば、30質量%、好ましくは、15質量%である。エポキシ樹脂組成物における主剤の割合の下限は、例えば、30質量%、好ましくは、50質量%である。エポキシ樹脂組成物における主剤の割合の上限は、例えば、80質量%、好ましくは、70質量%である。
【0023】
硬化剤は、加熱によって、上記した主剤を硬化させる潜在性硬化剤である。硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂などのフェノール樹脂が挙げられる。硬化剤がフェノール樹脂であれば、フェノール樹脂が主剤とともに、それらの硬化体が、高い耐熱性と高い耐薬品性とを有する。従って、硬化体は、封止信頼性に優れる。
【0024】
硬化剤の割合は、下記の当量比となるように設定される。具体的には、主剤中のエポキシ基1当量に対する、フェノール樹脂中の水酸基の合計の下限が、例えば、0.7当量、好ましくは、0.9当量である。主剤中のエポキシ基1当量に対する、フェノール樹脂中の水酸基の合計の上限が、例えば、1.5当量、好ましくは、1.2当量である。具体的には、主剤100質量部に対する硬化剤の含有部数の下限は、例えば、20質量部、好ましくは、40質量部である。主剤100質量部に対する硬化剤の含有部数の上限は、例えば、80質量部、好ましくは、60質量部である。
【0025】
硬化促進剤は、加熱によって、主剤の硬化を促進する触媒(熱硬化触媒)である。硬化促進剤としては、例えば、有機リン系化合物、例えば、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ-PW)などのイミダゾール化合物などが挙げられる。好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。主剤100質量部に対する硬化促進剤の含有部数の下限は、例えば、0.05質量部である。主剤100質量部に対する硬化促進剤の含有部数の上限は、例えば、5質量部である。
【0026】
材料(封止用樹脂シート)における熱硬化性樹脂の含有割合の下限は、例えば、5質量%、好ましくは、10質量%、より好ましくは、13質量%である。材料(封止用樹脂シート)における熱硬化性樹脂の含有割合の上限は、例えば、30質量%、好ましくは、25質量%、より好ましくは、20質量%である。
【0027】
熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂(6-ナイロンや6,6-ナイロンなど)、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂(PETなど)、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体などが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0028】
熱可塑性樹脂として、好ましくは、熱硬化性樹脂との分散性を向上させる観点から、アクリル樹脂が挙げられる。
【0029】
アクリル樹脂としては、例えば、直鎖または分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、その他のモノマー(共重合性モノマー)とを含むモノマー成分を重合してなる(メタ)アクリル酸エステルコポリマー(好ましくは、カルボキシル基含有アクリル酸エステルコポリマー)などが挙げられる。
【0030】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1~6のアルキル基などが挙げられる。
【0031】
その他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基含有モノマー、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリルまたは(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなど燐酸基含有モノマー、例えば、スチレンモノマー、例えば、アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは単独使用または2種以上を併用することができる。
好ましくは、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーが挙げられ、より好ましくは、カルボキシル基含有モノマーが挙げられる。
【0032】
その他のモノマーは単独使用または2種以上を併用することができる。
【0033】
熱可塑性樹脂として、より好ましくは、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、熱可塑性樹脂は、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂からなる。
【0034】
カルボキシル基を含有するアクリル樹脂の酸価の下限は、例えば、18、好ましくは、25である。アクリル樹脂の酸価の上限は、50、好ましくは、40である。
【0035】
上記の酸価が、上記下限以上であれば、封止用樹脂シートを加熱して硬化体を形成するとき(後述する硬化工程)に、封止用樹脂シートの流動性を低減することができ、封止用樹脂シートを加熱して硬化体を形成するとき(後述する硬化工程)に、硬化体の侵入量が所定の範囲となる素子や基板を得ることができる。
【0036】
また、上記の酸価が、上記上限以下であれば、封止用樹脂シートを加熱して硬化体を形成するとき(後述する硬化工程)に、封止用樹脂シートの流動性を適度に低減することができ、硬化体の侵入量が所定の範囲となる素子や基板を得ることができる。
【0037】
なお、上記の酸価は、従来公知の水酸化カリウムを用いた指示薬滴定法を用いて測定することができる。
【0038】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgの下限は、例えば、-70℃、好ましくは、-50℃、より好ましくは、-30℃である。熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgの上限は、例えば、0℃、好ましくは、5℃、より好ましくは、-5℃である。ガラス転移温度Tgは、例えば、Fox式により求められる理論値であって、その具体的な算出手法は、例えば、特開2016-175976号公報などに記載される。
【0039】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量の下限は、例えば、100,000、好ましくは、300,000、より好ましくは、1,000,000、さらに好ましくは、1,100,000である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量の上限は、例えば、1,400,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトフラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値に基づいて測定される。
【0040】
材料(封止用樹脂シート)における熱可塑性樹脂の割合の下限は、例えば、1質量%、好ましくは、5質量%、より好ましくは、15質量%である。材料における熱可塑性樹脂の割合の上限は、例えば、30質量%である。
【0041】
また、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の総量に対する、熱可塑性樹脂の割合の下限は、例えば、10質量%、好ましくは、20質量%である。熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の総量に対する、熱可塑性樹脂の割合の上限は、例えば、40質量%、好ましくは、30質量%である。
【0042】
材料には、さらに、層状ケイ酸塩化合物、無機フィラー(層状ケイ酸塩化合物を除く)、顔料、シランカップリング剤、その他の添加剤を添加することができる。
【0043】
層状ケイ酸塩化合物は、材料(封止用樹脂シート)において、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂(樹脂マトリクス)に対して分散される。また、層状ケイ酸塩化合物は、封止用樹脂シートから封止体および硬化体(後述)を形成するときの流動調整剤である。具体的には、封止用樹脂シートを加熱して硬化体を形成するときに、硬化体の流動性を低減する、硬化時流動低減剤である。
【0044】
層状ケイ酸塩化合物は、例えば、二次元(面方向に)に広がった層が、厚み方向に積み重なった構造(三次元構造)を有するケイ酸塩であって、フィロケイ酸塩と呼称される。
【0045】
具体的には、層状ケイ酸塩化合物としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイトなどのスメクタイト、例えば、カオリナイト、例えば、ハロイサイト、例えば、タルク、例えば、マイカなどが挙げられる。層状ケイ酸塩化合物として、好ましくは、熱硬化性樹脂との混合性を向上させる観点からスメクタイトが挙げられ、より好ましくは、モンモリロナイトが挙げられる。
【0046】
層状ケイ酸塩化合物は、表面が変性されていない未変性物であってもよく、また、表面が有機成分により変性された変性物でもよい。好ましくは、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂との優れた親和性を得る観点から、層状ケイ酸塩化合物は、表面が有機成分により変性されている。具体的には、層状ケイ酸塩化合物として、表面が有機成分で変性された有機化スメクタイト、さらに好ましくは、表面が有機成分で変性された有機化ベントナイトが挙げられる。
【0047】
有機成分として、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、フォスフォニウムなどの有機カチオン(オニウムイオン)が挙げられる。
【0048】
アンモニウムとしては、例えば、ジメチルジステアリルアンモニウム、ジステアリルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム、2-ヘキシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、トリオクチルアンモニウムなどが挙げられる。イミダゾリウムとしては、例えば、メチルステアリルイミダゾリウム、ジステアリルイミダゾリウム、メチルヘキシルイミダゾリウム、ジヘキシルイミダゾリウム、メチルオクチルイミダゾリウム、ジオクチルイミダゾリウム、メチルドデシルイミダゾリウム、ジドデシルイミダゾリウムなどが挙げられる。ピリジニウムとしては、例えば、ステアリルピリジニウム、ヘキシルピリジニウム、オクチルピリジニウム、ドデシルピリジニウムなどが挙げられる。フォスフォニウムとしては、例えば、ジメチルジステアリルフォスフォニウム、ジステアリルフォスフォニウム、オクタデシルフォスフォニウム、ヘキシルフォスフォニウム、オクチルフォスフォニウム、2-ヘキシルフォスフォニウム、ドデシルフォスフォニウム、トリオクチルフォスフォニウムなどが挙げられる。有機カチオンは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、アンモニウム、より好ましくは、ジメチルジステアリルアンモニウムが挙げられる。
【0049】
有機化層状ケイ酸塩化合物として、好ましくは、表面がアンモニウムで変性された有機化スメクタイト、より好ましくは、表面がジメチルジステアリルアンモニウムで変性された有機化ベントナイトが挙げられる。
【0050】
層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径の下限は、例えば、1nm、好ましくは、5nm、より好ましくは、10nmである。層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径の上限は、例えば、100μm、好ましくは、50μm、より好ましくは、10μmである。なお、層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
【0051】
層状ケイ酸塩化合物としては、市販品を用いることができる。例えば、有機化ベントナイトの市販品として、エスベンシリーズ(ホージュン社製)などが用いられる。
【0052】
材料(封止用樹脂シート)における層状ケイ酸塩化合物の含有割合の下限は、例えば、0.1質量%、好ましくは、1質量%、より好ましくは、2質量%、さらに好ましくは、3質量%である。材料(封止用樹脂シート)における層状ケイ酸塩化合物の含有割合の上限は、例えば、25質量%、好ましくは、15質量%、より好ましくは、10質量%、さらに好ましくは、7質量%である。
【0053】
無機フィラーとしては、例えば、オルトケイ酸塩、ソロケイ酸塩、イノケイ酸塩などの層状ケイ酸塩化合物以外のケイ酸塩化合物、例えば、石英(ケイ酸)、シリカ(無水ケイ酸)、窒化ケイ素などのケイ素化合物(層状ケイ酸塩化合物以外のケイ素化合物)などが挙げられる。また、無機フィラーとして、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素なども挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、層状ケイ酸塩化合物以外のケイ素化合物、より好ましくは、シリカが挙げられる。
【0054】
無機フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、略球形状、略板形状、略針形状、不定形状などが挙げられる。好ましくは、略球形状が挙げられる。
【0055】
無機フィラーの最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径と同義。)の上限は、例えば、50μm、好ましくは、20μm、より好ましくは、10μmである。無機フィラーの最大長さの平均値の下限は、また、例えば、0.1μm、好ましくは、0.5μmである。なお、無機フィラーの平均粒子径は、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
【0056】
また、無機フィラーは、第1フィラーと、第1フィラーの最大長さの平均値より小さい最大長さの平均値を有する第2フィラーと、第2フィラーの最大長さの平均値より小さい最大長さの平均値を有する第3フィラーとを含むことができる。
【0057】
第1フィラーの最大長さの平均値の下限は、例えば、1μm、好ましくは、3μmである。第1フィラーの最大長さの平均値の上限は、例えば、50μm、好ましくは、30μmである。
【0058】
第2フィラーの最大長さの平均値の上限は、例えば、0.9μm、好ましくは、0.8μmである。第2フィラーの最大長さの平均値の下限は、例えば、0.02μm、好ましくは、0.1μmである。
【0059】
第3フィラーの最大長さの平均値の上限は、例えば、0.015μmである。第2フィラーの最大長さの平均値の下限は、例えば、0.001μm、好ましくは、0.01μmである。
【0060】
第1フィラーの最大長さの平均値の、第2フィラーの最大長さの平均値に対する比の下限は、例えば、2、好ましくは、5である。第1フィラーの最大長さの平均値の、第2フィラーの最大長さの平均値に対する比の上限は、例えば、50、好ましくは、20である。
【0061】
第2フィラーの最大長さの平均値の、第3フィラーの最大長さの平均値に対する比の下限は、例えば、10、好ましくは、20である。第2フィラーの最大長さの平均値の、第3フィラーの最大長さの平均値に対する比の上限は、例えば、60、好ましくは、50である。
【0062】
第1フィラー、第2フィラーおよび第3フィラーの材料は、ともに同一あるいは相異っていてもよい。
【0063】
さらに、無機フィラーは、その表面が、部分的あるいは全体的に、シランカップリング剤などで表面処理されていてもよい。
【0064】
材料(封止用樹脂シート)における無機フィラーの含有割合の下限は、例えば、30質量%、好ましくは、40質量%である。材料(封止用樹脂シート)における無機フィラーの含有割合の上限は、例えば、70質量%、好ましくは、60質量%である。
【0065】
無機フィラーの含有割合および/または含有部数が上記した下限以上であれば、図1Cに示す工程における封止用樹脂シート1が流動できる。
【0066】
無機フィラーが第1フィラーと第2フィラーとを含む場合(第3フィラーを含まない場合)には、材料(封止用樹脂シート)における第1フィラーの含有割合の下限は、例えば、20質量%、好ましくは、30質量%である。材料(封止用樹脂シート)における第1フィラーの含有割合の上限は、例えば、60質量%、好ましくは、50質量%である。材料(封止用樹脂シート)における第2フィラーの含有割合の下限は、例えば、10質量%、好ましくは、15質量%である。材料(封止用樹脂シート)における第2フィラーの含有割合の上限は、例えば、30質量%、好ましくは、25質量%である。第1フィラー100質量部に対する第2フィラーの含有部数の下限は、例えば、30質量部、好ましくは、40質量部、より好ましくは、50質量部である。第1フィラー100質量部に対する第2フィラーの含有部数の上限は、例えば、70質量部、好ましくは、60質量部、より好ましくは、55質量部である。
【0067】
無機フィラーが第1フィラーと第2フィラーと第3フィラーとを含む場合には、材料(封止用樹脂シート)における第1フィラーの含有割合の下限は、例えば、20質量%、好ましくは、30質量%である。材料(封止用樹脂シート)における第1フィラーの含有割合の上限は、例えば、60質量%、好ましくは、50質量%である。材料(封止用樹脂シート)における第2フィラーの含有割合の下限は、例えば、10質量%、好ましくは、15質量%である。材料(封止用樹脂シート)における第2フィラーの含有割合の上限は、例えば、30質量%、好ましくは、25質量%である。材料(封止用樹脂シート)における第3フィラーの含有割合の下限は、例えば、1質量%、好ましくは、3質量%である。材料(封止用樹脂シート)における第3フィラーの含有割合の上限は、例えば、10質量%、好ましくは、5質量%である。第1フィラー100質量部に対する第2フィラーの含有部数の下限は、例えば、30質量部、好ましくは、40質量部、より好ましくは、50質量部である。第1フィラー100質量部に対する第2フィラーの含有部数の上限は、例えば、70質量部、好ましくは、60質量部、より好ましくは、55質量部である。第2フィラー100質量部に対する第3フィラーの含有部数の下限は、例えば、10質量部、好ましくは、15質量部である。第2フィラー100質量部に対する第3フィラーの含有部数の上限は、例えば、40質量部、好ましくは、30質量部である。
【0068】
顔料としては、例えば、カーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。顔料の粒子径の下限は、例えば、0.001μmである。顔料の粒子径の上限は、例えば、1μmである。顔料の粒子径は、顔料を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径である。材料に対する顔料の割合の下限は、例えば、0.1質量%である。材料に対する顔料の割合の上限は、例えば、2質量%である。
【0069】
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどの3-グリシドキシジアルキルジアルコキシシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどの3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。好ましくは、3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。材料におけるシランカップリング剤の含有割合の下限は、例えば、0.1質量%、好ましくは、0.5質量%である。材料におけるシランカップリング剤の含有割合の上限は、例えば、10質量%、好ましくは、5質量%、より好ましくは、2質量%である。
【0070】
この封止用樹脂シートを得るには、上記した各成分を上記した割合で配合して、材料を調製する。また、材料に、層状ケイ酸塩化合物を配合する場合には、好ましくは、上記した成分を十分に攪拌して、層状ケイ酸塩化合物を熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂に対して均一に分散させる。
【0071】
また、必要により、溶媒(メチルエチルケトンなどのケトン系など)をさらに配合して、ワニスを調製する。その後、ワニスを、図示しない剥離シートに塗布し、その後、加熱により乾燥させて、シート形状を有する封止用樹脂シートを製造する。一方、ワニスを調製せず、混練押出によって、材料から封止用樹脂シートを形成することもできる。
【0072】
なお、形成される封止用樹脂シートは、Bステージ(半硬化状態)であって、具体的には、Cステージ前の状態である。つまり、完全硬化前の状態である。封止用樹脂シートは、上記した乾燥における加熱や、押出混練における加熱によって、Aステージの材料から、Bステージシートに形成される。
【0073】
封止用樹脂シートの厚みの下限は、例えば、10μm、好ましくは、25μm、より好ましくは、50μmである。封止用樹脂シートの厚みの上限は、例えば、3000μm、好ましくは、1000μm、より好ましくは、500μm、さらに好ましくは、300μmである。
【0074】
次いで、封止用樹脂シートによって、素子の一例としての電子素子を封止して、電子素子パッケージ51を製造する方法を、図1A図1Dを参照して説明する。
【0075】
この方法では、図1Aに示すように、まず、封止用樹脂シート1を準備する(準備工程)。封止用樹脂シート1は、厚み方向に互いに対向する厚み方向一方面および他方面を有する。
【0076】
別途、図1Bに示すように、電子素子21を準備する。
【0077】
電子素子21は、電子部品を含んでおり、例えば、基板22に複数実装されている。複数の電子素子21と、基板22とは、素子実装基板24に、バンプ23とともに、備えられる。つまり、この素子実装基板24は、複数の電子素子21と、基板22と、バンプ23とを備える。
【0078】
基板22は、面方向に延びる略平板形状を有する。基板22の厚み方向一方面25には、電子素子21の電極(図示せず)と電気的に接続される端子(図示せず)が設けられている。
【0079】
複数の電子素子21のそれぞれは、面方向に延びる略平板形状(チップ形状)を有する。複数の電子素子21は、互いに面方向に間隔を隔てて配置されている。複数の電子素子21の厚み方向他方面28は、基板22の厚み方向一方面25に平行する。複数の電子素子21のそれぞれの厚み方向他方面28には、電極(図示せず)が設けられている。電子素子21の電極は、次に説明するバンプ23を介して、基板22の端子と電気的に接続されている。なお、電子素子21の厚み方向他方面28は、基板22の厚み方向一方面25との間の隙間(空間)26が隔てられる。
【0080】
隣接する電子素子21の間隔の下限は、例えば、50μm、好ましくは、100μm、より好ましくは、200μmである。隣接する電子素子21の間隔の上限は、例えば、10mm、好ましくは、5mm、より好ましくは、1mmである。隣接する電子素子21の間隔が上記上限以下であれば、基板22により多くの電子素子21を実装でき、省スペース化できる。
【0081】
バンプ23は、複数の電子素子21のそれぞれの電極(図示せず)と、基板22のそれぞれの端子とを電気的に接続する。バンプ23は、電子素子21の電極と、基板22の端子の間に配置される。バンプ23の材料としては、例えば、半田、金などの金属などが挙げられる。バンプ23の厚みは、隙間26の厚み(高さ)に相当する。バンプ23の厚みは、素子実装基板24の用途および目的に応じて適宜設定される。
【0082】
次いで、図1Bに示すように、封止用樹脂シート1を、複数の電子素子21に配置する(配置工程)。具体的には、封止用樹脂シート1の厚み方向他方面を、複数の電子素子21の厚み方向一方面に接触させる。
【0083】
次いで、図1Cに示すように、封止用樹脂シート1および素子実装基板24を、プレスする(封止工程)。好ましくは、封止用樹脂シート1および素子実装基板24を、熱プレスする。
【0084】
例えば、2つの平板を備えるプレス27により、封止用樹脂シート1および素子実装基板24を厚み方向に挟みながら、それらをプレスする。なお、プレス27の平板には、例えば、図示しない熱源が備えられる。
【0085】
プレス条件(圧力、時間、さらには、温度など)は、特に限定されず、複数の電子素子21間に封止用樹脂シート1が侵入できる一方、素子実装基板24が損傷しない条件が選択される。より具体的には、プレス条件は、封止用樹脂シート1が流動して、隣接する電子素子21間に侵入し、複数の電子素子21のそれぞれの周側面を被覆しつつ、電子素子21と平面視で重複しない基板22の厚み方向一方面25に接触できるように、設定される。
【0086】
具体的には、プレス圧の下限は、例えば、0.01MPa、好ましくは、0.05MPaである。プレス圧の上限は、例えば、10MPa、好ましくは、5MPaである。プレス時間の下限は、例えば、0.3分、好ましくは、0.5分である。プレス時間の上限は、例えば、10分、好ましくは、5分である。
【0087】
具体的には、加熱温度の下限は、例えば、40℃、好ましくは、60℃である。加熱温度の上限は、例えば、100℃、好ましくは、95℃である。
【0088】
封止用樹脂シート1のプレスよって、封止用樹脂シート1は、電子素子21の外形に対応して塑性変形する。封止用樹脂シート1の厚み方向他方面は、複数の電子素子21の厚み方向一方面および周側面に対応する形状に変形する。
【0089】
なお、封止用樹脂シート1は、Bステージを維持しながら、塑性変形する。
【0090】
これによって、封止用樹脂シート1は、複数の電子素子21のそれぞれの周側面を被覆しつつ、平面視において、電子素子21と重複しない基板22の厚み方向一方面25に接触する。
【0091】
これによって、電子素子21を封止する封止体31が、封止用樹脂シート1から形成(作製)される。封止体31の厚み方向一方面は、平坦面になる。
【0092】
このとき、封止体31は、隙間(電子素子21および基板22間の隙間)26にわずかに侵入することが許容される。具体的には、封止体31は、電子素子21の側端縁75を基準として、封止体31が隙間26に侵入する封止体侵入長さX(図3C参照)を有することが許容される。
【0093】
具体的には、封止体侵入長さXの上限は、例えば、20μm、好ましくは、10μm、より好ましくは、5μm、さらに好ましくは、3μm、とりわけ好ましくは、1μmである。
【0094】
その後、図1Dに示すように、封止体31を加熱して、封止体31から硬化体41を形成する(硬化工程)。
【0095】
具体的には、封止体31および素子実装基板24をプレス27から取り出し、続いて、封止体31および素子実装基板24を乾燥機で、大気圧下で、加熱する。
【0096】
加熱温度(キュア温度)の下限は、例えば、100℃、好ましくは、120℃である。加熱温度(キュア温度)の上限は、例えば、200℃、好ましくは、180℃である。加熱時間の下限は、例えば、10分、好ましくは、30分である。加熱時間の上限は、例えば、180分、好ましくは、120分である。
【0097】
上記した封止体31の加熱によって、封止体31から、Cステージ化(完全硬化)した硬化体41が形成される。硬化体41の厚み方向一方面は、露出面である。
【0098】
なお、隙間へのわずかな侵入が許容された封止体31の端縁が、隙間26の内部にさらにわずかに侵入して、硬化体41となることが許容されるが、その程度は、可及的に小さく抑制される。具体的には、硬化体41は、電子素子21の側端縁75を基準として、硬化体41が隙間26に侵入する硬化体侵入長さY(図3D参照)から、封止体侵入長さXを差し引いた値(Y-X)(以下、封止体侵入量(Y-X)とする。)を小さくすることができる。
【0099】
具体的には、硬化体侵入長さYの上限は、例えば、45μm、好ましくは、25μm、より好ましくは、20μm、さらに好ましくは、10μm、とりわけ好ましくは、5μm、最も好ましくは、1μmである。硬化体侵入長さYの下限は、例えば、-25μm、好ましくは、-10μm、より好ましくは、-5μmである。
【0100】
また、封止体侵入量(Y-X)の上限は、例えば、30μm、好ましくは、15μm、より好ましくは、10μm、さらに好ましくは、5μm、とりわけ好ましくは、3μm、最も好ましくは、1μmである。
【0101】
そして、この封止用樹脂シート1は、後述する実施例で詳述する粘弾性測定において、所定のせん断速度における、85℃の粘度が、所定の値である。
【0102】
具体的には、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)の下限は、8×10Pa・s、好ましくは、10×10Pa・sである。せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)の上限は、例えば、25×10Pa・s、好ましくは、18×10Pa・sである。
【0103】
また、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)の上限は、8×10Pa・s未満、好ましくは、5×10Pa・s未満である。せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)の下限は、例えば、1×10Pa・sである。
【0104】
せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)が、上記下限以上であり、かつ、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)が、上記上限未満であれば、この封止用樹脂シート1を電子素子21に配置し、封止用樹脂シート1(封止体31)を加熱して、図1Dに示すように、硬化体41を形成するときに、電子素子21および基板22間である隙間26への硬化体41の侵入量を低減することができる。
【0105】
詳しくは、封止用樹脂シート1は、せん断力(せん断速度)が低い場合には高粘度(具体的には、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)が、上記下限以上)を示し、せん断力(せん断速度)が高い場合には低粘度(具体的には、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)が、上記上限未満)を示すチキソトロピック性を有する。
【0106】
このようなチキソトロピック性によれば、封止工程(せん断力(せん断速度)が高い場合)では、封止用樹脂シート1の粘度を低くできるため、複数の電子素子21間に封止用樹脂シート1を侵入させることができる一方、硬化工程(せん断力(せん断速度)が低い場合)では、封止用樹脂シート1の粘度を高くできるため、電子素子21および基板22間である隙間26への硬化体41の侵入量を低減できる。
【0107】
一方、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)が、上記下限未満であれば、封止用樹脂シートを加熱して硬化体を形成するとき(硬化工程)に、封止用樹脂シート1の流動性を低減することができない。その結果、封止用樹脂シートを加熱して硬化体を形成するとき(硬化工程)に、素子および基板間への硬化体の侵入量を低減することができない。
【0108】
また、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)が、上記上限以上であれば、複数の電子素子21間に封止用樹脂シート1を十分に侵入させることができない。
【0109】
せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)と、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)とが、好ましくは、下記式(2)を満足し、より好ましくは、下記式(3)を満足し、さらに好ましくは、下記式(4)を満足する。
ν0.01/ν0.1≧2 (2)
ν0.01/ν0.1≧3 (3)
ν0.01/ν0.1≧4 (4)
また、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)と、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)とが、好ましくは、下記式(5)を満足し、より好ましくは、下記式(6)を満足する。
ν0.01/ν0.1≦6 (5)
ν0.01/ν0.1≦5 (6)
せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)と、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)とが、上記式(2)または上記式(3)または上記式(4)を満足すれば、上記した効果を奏するのに十分なチキソトロピック性を発現することができる。
【0110】
また、せん断速度10rad/秒における、85℃の粘度(ν10)の上限は、例えば、0.4×10Pa・s、好ましくは、0.2×10Pa・sである。せん断速度10rad/秒における、85℃の粘度(ν10)の下限は、例えば、0.01×10Pa・s、好ましくは、0.05×10Pa・sである。
【0111】
せん断速度10rad/秒における、85℃の粘度(ν10)の上限以下であれば、封止工程(せん断力(せん断速度)が高い場合)において、封止用樹脂シート1の粘度を低くできるため、複数の電子素子21間に封止用樹脂シート1を侵入させることができる。
【0112】
また、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)と、せん断速度10rad/秒における、85℃の粘度(ν10)とが、好ましくは、下記式(7)を満足し、より好ましくは、下記式(8)を満足し、さらに好ましくは、下記式(9)を満足し、とりわけ好ましくは、下記式(10)を満足する。
ν0.01/ν10≧40 (7)
ν0.01/ν10≧70 (8)
ν0.01/ν10≧100 (9)
ν0.01/ν10≧120 (10)
また、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)と、せん断速度10rad/秒における、85℃の粘度(ν10)とが、好ましくは、下記式(11)を満足し、より好ましくは、下記式(12)を満足する。
ν0.01/ν10≦200 (11)
ν0.01/ν10≦150 (12)
せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)と、せん断速度10rad/秒における、85℃の粘度(ν10)とが、上記式(7)または上記式(8)または上記式(9)または上記式(10)を満足すれば(好ましくは、上記式(8)を満足すれば)、上記した効果を奏するのに十分なチキソトロピック性を発現することができる。
【0113】
続いて、本発明の封止用樹脂シートの第2実施形態(多層の封止用樹脂シート)を説明する。
【0114】
第2実施形態では、図2A図2Dに示すように、封止用樹脂シート1と、第2封止用樹脂シート12とを厚み方向一方側に順に備える封止用多層樹脂シート11とによって、電子素子21を封止し、続いて、硬化体41を形成する。
【0115】
封止用多層樹脂シート11は、封止用樹脂シート1と、その厚み方向一方面全面に配置される第2封止用樹脂シート12とを備える。好ましくは、封止用多層樹脂シート11は、封止用樹脂シート1と、第2封止用樹脂シート12とのみを備える。
【0116】
第2封止用樹脂シート12の材料は、封止用樹脂シート1の材料(熱硬化性樹脂組成物)と同様であるが、層状ケイ酸塩化合物を含有しない。封止用樹脂シート1の厚みに対する第2封止用樹脂シート12の厚みの割合の下限は、例えば、0.5、好ましくは、1、より好ましくは、2である。封止用樹脂シート1の厚みに対する第2封止用樹脂シート12の厚みの割合の上限は、例えば、10、好ましくは、5である。
【0117】
封止用多層樹脂シート11によって、複数の電子素子21を封止し、続いて、硬化体41を形成して、電子素子硬化体パッケージ50を製造する方法を、図2A図2Dを参照して説明する。
【0118】
図2Aに示すように、封止用多層樹脂シート11を準備する。具体的には、封止用樹脂シート1と第2封止用樹脂シート12とを貼り合わせる。
【0119】
図2Bに示すように、基板22に実装される複数の電子素子21を準備する。
【0120】
続いて、封止用樹脂シート1の厚み方向他方面が電子素子21の厚み方向一方面に接触するように、封止用多層樹脂シート11を電子素子21に配置する。
【0121】
図2Cに示すように、その後、封止用樹脂シート1および素子実装基板24を、プレスする。
【0122】
プレスによって、封止用樹脂シート1は、上記したチキソトロピック性を有するため、流動し、隣接する電子素子21間に侵入する。一方、第2封止用樹脂シート12は、プレスされても、流動性が大きく変化せず、低いままであって、隣接する電子素子21間に侵入することが抑制される。
【0123】
これにより、封止用多層樹脂シート11から、複数の電子素子21を封止する封止体31が形成される。
【0124】
なお、封止用樹脂シート1が上記した下限以上の割合でフィラーを含有し、第2封止用樹脂シート12が上記した下限以上の割合でフィラーを含有すれば、図2Cに示すプレスによって、封止用樹脂シート1と第2封止用樹脂シート12とが、流動できる。
【0125】
このとき、封止用樹脂シート1は、電子素子21に接触する一方、第2封止用樹脂シート12は、封止用樹脂シート1に対して電子素子21の反対側に位置する。つまり、封止体31において隙間26に面する端縁は、封止用樹脂シート1から形成される。一方、封止体31の厚み方向一方面は、第2封止用樹脂シート12から形成される。
【0126】
その後、図2Dに示すように、封止体31を加熱して、封止体31から硬化体41を形成する。
【0127】
そして、封止用多層樹脂シート11は、上記した封止用樹脂シート1を備えるので、隙間26への硬化体41の侵入量を低減することができる。
【0128】
とりわけ、封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12が、50℃以上、130℃以下の軟化点を有するエポキシ樹脂の主剤を含有すれば、図2Cに示す工程において、封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12が流動できる。従って、図2Cに示す工程の時間短縮、および、図2Cに示す工程における第2封止用樹脂シート12の厚み方向一方面を平坦にできる。
【0129】
さらに、封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12が、エポキシ樹脂の主剤とともにフェノール樹脂を硬化剤として含有すれば、硬化体41が、高い耐熱性と高い耐薬品性とを有する。従って、硬化体41は、封止信頼性に優れる。
【0130】
なお、図2Cに示す工程において、第2封止用樹脂シート12は、押圧力を受けて流動化し、厚み方向一方面が平坦になる。また、図2Cに示す工程において、封止用多層樹脂シート11では、上述のように、第2封止用樹脂シート12とともに封止用樹脂シート1が、押圧力を受けて軟化流動して、電子素子21の外形に追従して変形する。図2Cに示す工程では、封止用樹脂シート1が、隙間26にわずかに進入することが許容される。
【0131】
変形例
以下の各変形例において、上記した第1実施形態および第2実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1実施形態および第2実施形態、その変形例を適宜組み合わせることができる。
【0132】
第1実施形態では、1層の封止用樹脂シート1で、電子素子21を封止している。しかし、図示しないが、複数の封止用樹脂シート1(の積層体シート)で、電子素子21を封止することもできる。
【0133】
また、封止用多層樹脂シート11における第2封止用樹脂シート12は、多層であってもよい。
【0134】
素子の一例として、基板22の厚み方向一方面25に対して隙間26を隔てて配置される電子素子21を挙げ、これを封止用樹脂シート1で封止したが、例えば、図示しないが、基板22の厚み方向一方面25に接触する電子素子21を挙げることができ、これを封止用樹脂シート1で封止することができる。
【0135】
また、素子の一例として、電子素子21を挙げたが、半導体素子を挙げることもできる。
【実施例
【0136】
以下に調製例、比較調製例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら調製例、比較調製例、実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0137】
調製例および比較調製例で使用した各成分を以下に示す。
【0138】
層状ケイ酸塩化合物:ホージュン社製のエスベンNX(表面がジメチルジステアリルアンモニウムで変性された有機化ベントナイト)
主剤:新日鐵化学社製のYSLV-80XY(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、高分子量エポキシ樹脂、エポキシ当量200g/eq.、固体、軟化点80℃)
硬化剤:群栄化学社製のLVR-8210DL(ノボラック型フェノール樹脂、潜在性硬化剤、水酸基当量:104g/eq.、固体、軟化点:60℃)
アクリル樹脂1:根上工業社製のHME-2006M、カルボキシル基含有のアクリル酸エステルコポリマー(アクリル樹脂)、酸価:32、官能基数:736、重量平均分子量:1290000、ガラス転移温度(Tg):-13.9℃、固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液
アクリル樹脂2:根上工業社製のHME-2000M、カルボキシル基含有のアクリル酸エステルコポリマー(アクリル樹脂)、酸価:20、官能基数:367、重量平均分子量:1030000、ガラス転移温度(Tg):3.7℃、固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液
アクリル樹脂3:根上工業社製のHME-2004M、アクリル酸エステルコポリマー(アクリル樹脂)、酸価:0、官能基数:0、重量平均分子量:1180000、ガラス転移温度(Tg):-3℃、固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液
シランカップリング剤:信越化学社製のKBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
第1フィラー:FB-8SM(球状溶融シリカ粉末(無機フィラー)、平均粒子径7.0μm)
第2フィラー:アドマテックス社製のSC220G-SMJ(平均粒径0.5μm)を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製の製品名:KBM-503)で表面処理した無機フィラー(非晶質シリカおよび表面処理された非晶質シリカ)、無機フィラーの100質量部に対して1質量部のシランカップリング剤で表面処理した無機粒子
第3フィラー:日本アエロジル社製のAEROSIL200(平均粒径12nm)、親水性シリカ微粒子
硬化促進剤:四国化成工業社製の2PHZ-PW(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)
溶媒:メチルエチルケトン(MEK)
カーボンブラック:三菱化学社製の#20、粒子径50nm
調製例1~調製例3および比較調製例1~比較調製例3
表1に記載の配合処方に従って、材料のワニスを調製した。ワニスを剥離シートの表面に塗布した後、120℃で、2分間乾燥させて、厚み65μmの封止用樹脂シート1を作製した。封止用樹脂シート1は、Bステージであった。
【0139】
調製例4
表2に記載の配合処方に従って、材料のワニスを調製した。ワニスを剥離シートの表面に塗布した後、120℃で、2分間乾燥させて、厚み195μmの第2封止用樹脂シート12を作製した。第2封止用樹脂シート12は、Bステージであった。
【0140】
実施例1、2および比較例1~比較例
表3に示すような調製例の組合せで、封止用樹脂シートと第2封止用樹脂シートとを張り合わせて、厚み260μmの封止用多層樹脂シートを作製した。
【0141】
評価
<硬化体侵入長さの測定>
下記のステップA~ステップEを実施して、硬化体侵入長さYを測定した。
【0142】
ステップA:図3Aに示すように、各実施例および各比較例の封止用多層樹脂シート11から、縦10mm、横10mm、厚み260μmのサンプルシート61を準備する。
【0143】
ステップB:図3Bに示すように、縦3mm、横3mm、厚み200μmのダミー素子71が、厚み20μmのバンプ23を介してガラス基板72に実装されたダミー素子実装基板74を準備する。
【0144】
ステップC:図3Cに示すように、サンプルシート61によって、ダミー素子実装基板74におけるダミー素子71を、真空平板プレスにより、温度65℃、圧力0.1MPa、真空度1.6kPa、プレス時間1分で封止して、サンプルシート61から封止体31を形成する。
【0145】
ステップD:図3Dに示すように、封止体31を、150℃、大気圧下、1時間加熱により熱硬化させて、封止体31から硬化体41を形成する。
【0146】
ステップE:図3Dの拡大図に示すように、ダミー素子71の側端縁75を基準として、側端縁75からダミー素子71とガラス基板72との隙間26に硬化体41が侵入する硬化体侵入長さYを測定する。
【0147】
そして、下記の基準に従って、硬化体侵入長さYを評価した。その結果を表3に示す。
◎:硬化体侵入長さYが、0μm以上、25μm以下であった。
〇:硬化体侵入長さYが、25μm超過、45μm以下、または、0μm未満、-25μm以上であった。
×:硬化体侵入長さYが、45μm超過、または、-25μm未満であった。
【0148】
なお、評価中、「マイナス」は、ダミー素子71の側端縁75より外側に突出する空間(図2Dの太い破線参照)が形成されることを意味する。「マイナス」の絶対値が、その空間の突出長さに相当する。
【0149】
<封止体侵入長さの測定>
各実施例および各比較例の封止用多層樹脂シート11に関し、上記したステップCとステップDとの間に下記のステップFをさらに実施して、封止体侵入長さXを測定した。結果を表3に示す。
【0150】
ステップF:ダミー素子71の側端縁75を基準として、側端縁75からダミー素子22とガラス基板72との隙間26に封止体31が侵入する封止体侵入長さXを測定した。その結果を表3に示す。
◎:封止体侵入長さXが、0μm以上、10μm以下であった。
〇:封止体侵入長さXが、10μm超過20μm以下であった。
×:封止体侵入長さXが、20μm超過下であった。
【0151】
<封止体侵入量>
上記した方法により得られた硬化体侵入長さYから、上記した方法により得られた封止体侵入長さXを差し引くことにより、封止体侵入量(Y-X)を算出した。その結果を表3に示す。
◎:封止体侵入量(Y-X)が、0μm以上、15μm以下であった。
〇:封止体侵入量(Y-X)が、15μm超過30μm以下であった。
×:封止体侵入量(Y-X)が、30μm超過であった。
【0152】
<粘弾性測定>
実施例1、2、比較例1~比較例の封止用樹脂シート1(Bステージ)について、粘弾性を測定した。
【0153】
具体的には、粘弾性測定は、レオメーター(マーズIII)(測定条件:8mmφプレートを用いて温度85℃、ひずみ量0.005%)を用いて実施した。その結果を表3に示す。
【0154】
考察
せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)が、8×10Pa・s以上であり、かつ、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)が、8×10Pa・s未満である実施例1、2および比較は、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)が、8×10Pa・s未満である比較例1および比較例2に比べて、封止体侵入長さおよび封止体侵入量が小さいことがわかる。また、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)が、8×10Pa・s以上である比較例3は、複数のダミー素子間に封止用樹脂シートを十分に侵入させることができなかった。
【0155】
このことから、せん断速度0.01rad/秒における、85℃の粘度(ν0.01)が、8×10Pa・s以上であり、かつ、せん断速度0.1rad/秒における、85℃の粘度(ν0.1)が、8×10Pa・s未満とすれば、素子を十分に封止することができ、かつ、素子および基板間への硬化体の侵入量を低減することができるとわかる。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0160】
封止用樹脂シートは、素子の封止に用いられる。
【符号の説明】
【0161】
1 封止用樹脂シート
図1
図2
図3