(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】X線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減の方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/51 20240101AFI20241028BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20241028BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241028BHJP
【FI】
A61B6/51 500
A61B6/03 560T
A61B6/03 560B
G06T7/00 612
(21)【出願番号】P 2021540231
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2020060864
(87)【国際公開番号】W WO2020212573
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-14
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【氏名又は名称】森川 元嗣
(72)【発明者】
【氏名】サルティ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】スタンニゲル、カイ
(72)【発明者】
【氏名】エルフェルス、ミヒャエル
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/126396(WO,A1)
【文献】特開2013-233168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減の方法であって、
患者顎(3a)の周りでX線源(4)及び検出器(5)を相対的に回転させることによって取得される、前記患者顎(3a)の少なくとも一部(V)の2次元X線画像(1)又はサイノグラム(2)を得るステップ(S1)
を備え、
前記方法は、
前記2次元X線画像(1)内の金属物体(6)を表す2Dマスク(7)又は前記サイノグラム(2)内の前記金属物体(6)を表す3Dマスクをそれぞれ生成するために、少なくとも訓練された人工知能アルゴリズムを使用することで、前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)内の前記金属物体(6)を検出するステップ(S2)と、
前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)と、生成された前記2Dマスク(7)又は前記3Dマスクとにそれぞれ基づいて3次元断層画像(8)を再構成する再構成ステップ(S4;S5)と、
少なくとも生成された前記2Dマスク(7)又は前記3Dマスクをそれぞれ用いて前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)を補正する補正ステップ(S3)と
を更に備え、前記再構成ステップ(S4)において、補正された前記2次元X線画像(1)又は補正された前記サイノグラム(2)に基づいて前記3次元断層画像(8)が再構成されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記再構成ステップ(S5)において、前記3次元断層画像(8)が、最初に得られた前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)と、生成された前記2Dマスク(7)又は前記3Dマスクとにそれぞれ基づいて再構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補正ステップ(S3)において、前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)が画像処理によって補正されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記補正ステップ(S3)において、前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)が、別の訓練された人工知能アルゴリズムによって補正されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記再構成ステップ(S4)において、前記3次元断層画像(8)の前記再構成が、補正された前記2次元X線画像(1)及び補正されていない前記2次元X線画像(1)、又は補正された前記サイノグラム(2)及び補正されていない前記サイノグラム(2)に更に基づくことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
データ対を使用することで前記人工知能アルゴリズムを訓練する訓練ステップを更に備え、各データ対は、2次元X線画像(1’)と、関連する前記2次元X線画像(1’)内の任意の金属物体(6’)の位置を表す関連する2Dマスク(7’)とを含むか、又は各データ対は、サイノグラム(2’)と、前記サイノグラム(2’)内の任意の金属物体(6’)の前記位置を表す関連する3Dマスクとを含み、前記データ対の前記2次元X線画像(1’)及び前記サイノグラム(2’)は、1つ又は複数の患者(3’)の患者顎(3a’)の部分又は全体に対応し、X線源(4’)及び検出器(5’)によって又はシミュレーション技法によって生成されており、複数の視野角をカバーし、前記データ対のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの金属物体(6)を備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記訓練ステップで使用される前記2Dマスク(7’)又は前記3Dマスクが、金属アーチファクトが補正されていない3次元断層画像(8’)を解析することによって生成されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
得られた前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)が、金属物体(6)がない又は少なくとも1つの金属物体(6b)を含む前記患者顎(3a)の部分(V)に対応し、前記患者顎(3a)の残りの部分が少なくとも1つの金属物体(6a)を含むことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
X線歯科ボリューム断層撮影システムであって、
患者顎(3a)の周りで完全にX線源(4)及び検出器(5)を相対的に回転させることによって、前記患者顎(3a)の少なくとも一部(V)の2次元X線画像(1)又はサイノグラム(2)を取得するように
適合された取得手段を備えるX線ユニット(9)と、
前記取得手段によって取得された前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)内の金属物体(6)を検出するように
適合された画像処理手段を備える断層撮影再構成ユニットと
を備え、前記X線歯科ボリューム断層撮影システムは、前記画像処理手段が、
前記2次元X線画像(1)内の前記金属物体(6)を表す2Dマスク(7)又は前記サイノグラム(2)内の前記金属物体(6)を表す3Dマスクをそれぞれ生成する、訓練された人工知能アルゴリズムを使用することで、前記金属物体(6)を検出することと、
2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)と、生成された前記2Dマスク(7)又は前記3Dマスクとにそれぞれ基づいて、3次元断層画像(8)を再構成することと
を行うように更に
適合されており、
前記画像処理手段が、
生成された前記2Dマスク(7)又は前記3Dマスクをそれぞれ用いて、前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)を補正することと、
補正された前記2次元X線画像(1)又は補正された前記サイノグラム(2)に基づいて前記3次元断層画像(8)を再構成することと
を行うように更に
適合されていることを特徴とする、システム。
【請求項10】
前記画像処理手段が、最初に得られた前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)と、生成された前記2Dマスク(7)又は前記3Dマスクとに基づいて前記3次元断層画像(8)を再構成するように更に
適合されていることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記画像処理手段が、画像処理によって、前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)を補正するように更に
適合されていることを特徴とする、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記画像処理手段が、別の訓練された人工知能アルゴリズムによって前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)を補正するように更に
適合されていることを特徴とする、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記画像処理手段が、補正された前記2次元X線画像(1)及び補正されていない前記2次元X線画像(1)、又は補正された前記サイノグラム(2)及び補正されていない前記サイノグラム(2)に基づいて前記3次元断層画像(8)を再構成するように更に
適合されていることを特徴とする、請求項9乃至12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
断層撮影再構成ユニットが、訓練された前記人工知能アルゴリズムを検索するための入力手段を有することを特徴とする、請求項9乃至13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記取得手段が、異なるボリュームを有する前記患者顎(3a)の複数の異なるユーザ選択可能かつ調整可能な部分のうちの1つに対応する前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)を、ユーザ選択可能かつ調整可能に取得するように
適合されていることを特徴とする、請求項9乃至14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
コンピュータベースのX線歯科ボリューム断層撮影システムに、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのコードを備えるコンピュータ読取可能なプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のコンピュータ読取可能なプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線歯科ボリュームトモグラフィ(DVT)に関する。本発明は、より詳細には、X線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減(MAR)の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線歯科ボリュームトモグラフィでは、患者顎の3次元(3D)断層画像が2次元(2D)X線画像に基づいて再構成される。患者の口内の金属充填物又はインプラントのような金属物体は、最終的な3次元断層画像内に金属アーチファクトを生じさせる可能性がある。金属アーチファクトは、
図1に示されるように暗い又は明るいストライプとして現れる。これらのアーチファクトは、医療診断を複雑にする可能性がある。金属アーチファクトを低減する従来の方法が
図3に示される。従来の方法では、最初に2次元X線画像を取得し、続いて、それを使用して、3次元(3D)断層画像を再構成する。その後、3次元断層画像の時間のかかる解析を通して2次元X線画像における金属物体の位置を決定する。金属物体の位置が分かると、続いて、2次元X線画像における金属アーチファクトが、古典的な画像処理によって補正される。最後に、金属アーチファクトが低減された3次元断層画像が、補正された2次元X線画像と補正されていない2次元X線画像とに基づいて再構成される。
図2は、
図1の金属アーチファクトが
図3の方法によって低減された断層写真を示す。
【0003】
多くの状況では、
図6に示されるように、患者顎(3a)の一部(V)、即ち小体積だけが診断に関連している。この場合、患者顎(3a)のそのような小体積(V)だけが全ての角度から照射され、再構成される。患者顎(3a)の残りの部分は、全ての角度からは照射されず、取得される2次元X線画像の一部だけに見られ、再構成されない。これらの2次元X線画像は、
図6に示されるように再構成される小体積(V)の外側に金属物体(6a)が存在する場合、そのような小体積(V)が金属物体(6b)を1つも含んでいない場合であっても、
図7に示されるように最終的な3次元断層画像において金属アーチファクトを生じさせる可能性がある。
図8は、
図7と同じ断面に対応する断層写真であり、
図3に示されるような従来技術による金属アーチファクト低減方法で再構成されたものである。小体積(V)の外側にある金属物体(6a)によって生じる
図7の金属アーチファクトは、
図3に示される従来の金属アーチファクト低減方法では補正することができないため、従来の金属アーチファクト低減方法は確実ではない。
【0004】
図3の従来の方法における上述の第1の再構成ステップを回避するため、及び、再構成される小体積(V)の外側に位置する金属物体(6a)によるアーチファクトを防止するために、金属物体の検出が2次元X線画像に対して直接実行され得る。この目的のために、2次元X線画像又は代替的にサイノグラムを解析することができる。2次元X線画像は、照射された3次元物体、例えば
図4に示されるような患者顎の投影を表す。サイノグラムは、全ての角度で撮影されたこれらの投影が
図5aに示されるような投影のアレイに組み合わされるときに作成される。時間をかけて撮像された金属物体のトレースは、
図5a及び5bに示されるように、サイノグラム内の曲線を画定する。2次元X線画像における金属物体の検出のために、閾値処理、エッジ検出のような古典的な画像処理方法が使用され得る。しかしながら、骨又は象牙質のような他の高密度構造により、金属物体の確実な検出を達成することは困難である。高密度構造は、誤って金属物体と認識されることがある。逆もまた起こり得、密度がより低い金属物体は検出されないことがある。そのような場合、2次元X線画像の古典的な画像処理に基づく金属アーチファクト低減は、確実には達成されない可能性がある。
【0005】
2次元X線画像では、金属物体が位置する場所において、アーチファクトのない3D断層画像を再構成するためのデータが一般に欠落している。国際公開第2018/126396号に開示されている手法では、データが欠落している2次元X線画像を補足するために人工知能が使用される。欠落データを含む場所は、最初に閾値処理によって決定され、続いて、訓練された人工知能で補足されて、金属アーチファクトが低減された3次元断層画像が再構成される。しかしながら、この手法もまた、閾値処理の使用を含む上述した古典的な画像処理技法の欠点を有する傾向がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の上述の欠点を克服し、X線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減の方法を提供することである。
【0007】
この目的は、請求項1に記載の金属アーチファクト低減方法及び請求項10に記載のX線歯科ボリューム断層撮影システムによって達成される。従属請求項の主題は、更なる発展形態に関する。
【0008】
本発明は、X線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減の方法を提供する。方法は、患者顎の周りでX線源及び検出器を相対的に回転させることによって取得される、患者顎の少なくとも一部の2次元X線画像又はサイノグラムを得るステップと、2次元X線画像内の金属物体を表す2Dマスク又はサイノグラム内の金属物体を表す3Dマスクをそれぞれ生成するために、訓練された人工知能アルゴリズムを使用することで、2次元X線画像又はサイノグラム内の金属物体を検出するステップと、2次元X線画像又はサイノグラムと、生成された2Dマスク又は3Dマスクとにそれぞれ基づいて3次元断層画像を再構成するステップとを備える。
【0009】
本発明の主な有利な効果は、訓練された人工知能アルゴリズムによって生成される2D/3Dマスクを使用することで、2DX線画像又はサイノグラムを直接かつ単独で解析することによって金属物体をより確実に検出することができる点である。これにより、金属物体を有する3D断層画像を最初に再構成して解析する必要がなくなるため、処理時間が比較的短縮することができ、処理負荷を比較的軽減することができる。従って、金属アーチファクトが低減された3D断層画像を再構成する速度が向上した。本発明の別の主な有利な効果は、再構成されるボリューム内にない金属物体を確実に検出することができ、これらの金属物体によって生じる金属アーチファクトを低減することができる点である。従って、本発明の金属アーチファクト低減方法は、再構成されるボリュームのサイズから独立して、改善された断層画像品質を有する。本発明の別の主な有利な効果は、人工知能アルゴリズムが、患者顎又は較正体を様々な角度で撮影した2DX線画像を含む実/仮想データの助けを借りて継続的に訓練され得るため、金属物体を検出するための2D/3Dマスクの生成が、そのような訓練を通して相応に改善され得る点である。これにより、医療診断をより容易にすることができる。
【0010】
本発明によれば、3次元断層画像は2つの代替方法で再構成され得る。第1の代替方法では、方法は、生成された2Dマスク又は3Dマスクをそれぞれ用いて2次元X線画像又はサイノグラムを補正するステップを更に備え、再構成ステップにおいて、補正された2次元X線画像又は補正されたサイノグラムに基づいて3次元断層画像が再構成される。第2の代替方法では、再構成ステップにおいて、3次元断層画像が、最初に得られた2次元X線画像又はサイノグラムと、生成された2Dマスク又は3Dマスクとにそれぞれ基づいて再構成される。
【0011】
本発明によれば、2D/3Dマスクは、好ましくは2D/3Dバイナリマスクである。代替的に、確率マスク又は信頼マスクが使用され得る。
【0012】
本発明によれば、2次元X線画像又はサイノグラムは、古典的な画像処理によって補正され得る。代替的に、2次元X線画像を補正するために別の人工知能アルゴリズムが使用され得る。この人工知能アルゴリズムは、異なる患者顎から取得された2次元X線画像データを用いて訓練され得る。
【0013】
本発明によれば、3次元断層画像の再構成は、金属物体が最終的な3次元断層画像に存在しないように、補正された2次元X線画像又は補正されたサイノグラムだけに基づき得る。代替的に、3次元断層画像の再構成は、金属物体が3次元断層画像内に存在するように、補正されていない2次元X線画像又は補正されていないサイノグラムに更に基づくことができる。
【0014】
本発明によれば、人工知能アルゴリズムは、データ対を使用することで訓練され、各対は、2次元X線画像と、関連する2次元X線画像における任意の金属物体の位置を表す関連する2Dマスクとから構成される。代替的に、人工知能アルゴリズムは、サイノグラム及び関連する3Dマスクを用いて訓練され得る。2次元X線画像は、X線源及び検出器が患者顎の周りを回転することによって生成される。訓練に使用される2Dマスク又は3Dマスクは、2次元X線画像又はサイノグラムにおける金属物体の位置を通して得られる。それらを得る1つの方法は、金属アーチファクトが補正されていない3次元断層画像を(例えば、閾値処理又は他の画像処理技法によって)解析し、続いて、発見されたマスクを(例えば、順投影を用いて)2次元X線画像又はサイノグラムにトランスファすることによるものである。代替的に、訓練ステップで使用される2Dマスク及び/又は3Dマスクは、金属アーチファクトが補正されていない2次元X線画像及び/又はサイノグラムから手動で生成され得る。
【0015】
本発明によれば、得られることとなる2次元X線画像又はサイノグラムは、患者顎全体に限定されるものではなく、小体積のような患者顎の一部にも対応し得る。そのような小体積は、位置、サイズ、及び形状が異なり得る。金属アーチファクト低減方法は、小体積に金属物体がなく、患者顎が小体積の外側に1つ又は複数の金属物体を含む場合であっても、任意の小体積に適用され得る。
【0016】
本発明はまた、X線ユニット及び断層撮影再構成ユニットを有するX線歯科ボリューム断層撮影システムを提供する。X線ユニットは、患者顎の周りでX線源及び検出器を相対的に回転させることにより、患者顎の少なくとも一部、即ち小体積の2次元X線画像又はサイノグラムを取得するための取得手段を有する。検査される患者顎の部分は、ユーザによって選択され、それに基づいて照射されるため、患者の過剰摂取を防ぐことができる。断層撮影再構成ユニットはまた、X線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減のための本発明による方法を実行する画像処理手段を有する。
【0017】
以下の説明では、例示的な実施形態を使用し、図面を参照することで、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来技術による金属アーチファクトを有する断層写真である。
【
図2】
図3に示されるような従来技術による金属アーチファクト低減方法を用いて再構成された、
図1と同じ断面に対応する断層写真である。
【
図3】従来技術による金属アーチファクト低減方法のステップを示すフローチャートである。
【
図4】本発明によるX線ユニットで取得された2次元X線画像である。
【
図5a】本発明によるX線ユニットで取得された2次元X線画像のサイノグラムである。
【
図5b】垂直方向に沿って見たときの、
図5aのサイノグラムの断面図である。
【
図6】本発明によるX線歯科ボリューム断層撮影システムのX線ユニットの概略的な断面上面図である。
【
図7】再構成されたボリュームの外側にある金属物体によって生じた金属アーチファクトを有する従来技術による断層写真である。
【
図8】
図3に示されるような従来技術による金属アーチファクト低減方法を用いて再構成された、
図7の同じ断面に対応する断層写真である。
【
図9a】本発明の第1の代替実施形態による金属アーチファクト低減方法のステップを示すフロー図である。
【
図9b】本発明の第2の代替実施形態による金属アーチファクト低減方法のステップを示すフロー図である。
【
図10】本発明によるマスクを生成するための人工知能アルゴリズムを訓練するために使用されるデータ対を例示しており、データ対は、2次元X線画像と、関連する2Dマスクとを含む。
【
図11】本発明による金属アーチファクト低減方法を用いて再構成された、
図7と同じ断面に対応する断層写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面に示される参照番号は、以下に列挙される要素を示し、例示的な実施形態の後続の説明において参照される。
1: 2DX線画像
2: サイノグラム
3: 患者
3a: 患者顎
4: X線源
5: 検出器
6: 金属物体
6a: 金属物体(小体積(v)の外側)
6b: 金属物体(小体積(v)の内側)
7: 2Dマスク
8: 3D断層画像
9: X線ユニット
V: 患者顎(3a)の一部又は小体積
【0020】
図6は、本発明の一実施形態によるX線ユニット(9)を示す。X線ユニット(9)は、患者顎(3a)の周りでX線源(4)及び検出器(5)を相対的に回転させることにより、患者顎(3a)の少なくとも一部(V)、即ち小体積の2次元X線画像(1)又はサイノグラム(2)を取得するための取得手段を有する。X線ユニット(9)は、本発明によるX線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減の方法を実行するように構成された画像処理手段を有する断層撮影再構成ユニットに接続可能である。X線ユニット(9)及び断層撮影再構成ユニットは共に、本発明によるX線歯科ボリューム断層撮影システムを構成する。
【0021】
図9aは、本発明の第1の代替実施形態によるX線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減の方法のステップ(S1、S2、S3、S4)を示す。
【0022】
第1のステップ(S1)では、患者顎(3a)の少なくとも一部(V)の2次元X線画像(1)又はサイノグラム(2)が、X線ユニット(9)の取得手段から得られる。第2のステップ(S2)では、それぞれ、2次元X線画像(1)内の金属物体(6)を表す2Dマスク(7)又はサイノグラム(2)内の金属物体(6)を表す3Dマスクのいずれかを生成する、訓練された人工知能アルゴリズムを使用することで、2次元X線画像(1)又はサイノグラム(2)内の金属物体(6)が検出される。加えて、検出を最適化するために、オプションで、古典的アルゴリズムから得られた他の2Dマスク又は3Dマスクが、訓練された人工知能アルゴリズムによって生成されるものと組み合わせて使用され得る。第3のステップ(S3)では、2次元X線画像(1)又はサイノグラム(2)は、少なくとも、生成された2Dマスク(7)又は3Dマスクを用いてそれぞれ補正される。この補正は、古典的な画像処理によって実行され得る。代替的に、補正は、別の訓練された人工知能アルゴリズムによって実行され得る。ステップ(S4)では、補正された2次元X線画像(1)又は補正されたサイノグラム(2)に基づいて3次元断層画像(8)が再構成される。代替的に、3次元断層画像(8)の再構成は、金属物体(6)が存在する場合には、金属物体(6)もまた3次元断層画像(8)に示されるように、補正された2次元X線画像(1)及び補正されていない2次元X線画像(1)又は補正されたサイノグラム(2)及び補正されていないサイノグラム(2)に基づき得る。
【0023】
図9bは、本発明の第2の代替実施形態によるX線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減の方法のステップ(S1、S2、S5)を示す。第2の代替実施形態では、第3のステップ(S3)が省かれる。そして、3次元断層画像(8)が、最初に得られた2次元X線画像(1)又はサイノグラム(2)と、生成された2Dマスク(7)又は3Dマスクとにそれぞれ基づいて再構成される。
【0024】
比較のために、
図7には、再構成された小体積(V)の外側にある金属物体(6a)によって生じた金属アーチファクトを有する従来技術による断層写真が示されている。
図11は、本発明による金属アーチファクト低減方法を用いて再構成された、
図7と同じ断面に対応する断層写真を示す。
【0025】
人工知能アルゴリズムは、データ対を使用することで訓練される。続く説明において、プライム記号を有する参照符号は、プライム記号を有さない要素と同様の要素であるが、方法の訓練ステップにおいて使用されている要素を示す。各データ対は、2次元X線画像(1’)と、関連する2次元X線画像(1’)内の任意の金属物体(6’)の2D位置を表す関連する2Dマスク(7’)とを含む。代替的に、各データ対は、サイノグラム(2’)と、サイノグラム(2’)内の任意の金属物体(6’)の3D位置を表す関連する3Dマスクとを含む。ここにおいて、データ対の2次元X線画像(1’)及びサイノグラム(2’)は、好ましくは任意の患者(3’)の患者顎(3a’)全体に対応し、X線源(4’)及び検出器(5’)が好ましくは完全に患者顎(3a’)の周りを相対的に回転することによって生成されたものである。訓練ステップで使用される2Dマスク(7’)及び3Dマスクは、金属アーチファクトが補正されていない3次元断層画像(8’)を解析することによって得られ得る。例えば、訓練に使用される2Dマスク(7’)及び/又は3Dマスクは、解析ステップで得られる副産物として、
図3の従来技術の方法から得られ得る。代替的に、訓練ステップで使用される2Dマスク(7’)及び/又は3Dマスクは、金属アーチファクトが補正されていない2次元X線画像(1’)及び/又はサイノグラム(2’)から手動で生成され得る。
【0026】
別の実施形態では、断層撮影再構成ユニットは、2Dマスク(7)及び3Dマスクを生成するための訓練された人工知能アルゴリズムを検索するための入力手段を有する。入力手段は、データ検索のためにネットワークなどに接続され得るワイヤレス接続又はワイヤード接続であり得る。
【0027】
別の実施形態では、取得手段は、それぞれ異なるボリュームを有する患者顎(3a)の複数の異なる部分(V)のうちの1つに対応する2次元X線画像(1)又はサイノグラム(2)をユーザ選択的に取得するように構成される。ユーザは、照射される部分(V)を選択し、そのサイズを調整することができる。
【0028】
別の実施形態では、方法は、コンピュータベースのX線歯科ボリューム断層撮影システムに、X線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減方法の上述したステップを実行させるためのコードを有するコンピュータ読取可能なプログラムの形態で提供される。
【0029】
別の実施形態では、コンピュータ読取可能なプログラムは、コンピュータ読取可能な記憶装置に記憶される。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] X線歯科ボリュームトモグラフィにおける金属アーチファクト低減の方法であって、
患者顎(3a)の周りでX線源(4)及び検出器(5)を相対的に回転させることによって取得される、前記患者顎(3a)の少なくとも一部(V)の2次元X線画像(1)又はサイノグラム(2)を得るステップ(S1)
を備え、
前記方法は、
前記2次元X線画像(1)内の金属物体(6)を表す2Dマスク(7)又は前記サイノグラム(2)内の前記金属物体(6)を表す3Dマスクをそれぞれ生成するために、少なくとも訓練された人工知能アルゴリズムを使用することで、前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)内の前記金属物体(6)を検出するステップ(S2)と、
前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)と、生成された2Dマスク(7)又は前記3Dマスクとにそれぞれ基づいて3次元断層画像(8)を再構成する再構成ステップ(S4;S5)と
を更に備えることを特徴とする、方法。
[2] 前記再構成ステップ(S5)において、前記3次元断層画像(8)が、最初に得られた前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)と、生成された前記2Dマスク(7)又は前記3Dマスクとにそれぞれ基づいて再構成されることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3] 少なくとも前記生成された2Dマスク(7)又は前記3Dマスクをそれぞれ用いて前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)を補正する補正ステップ(S3)を更に備え、前記再構成ステップ(S4)において、前記補正された2次元X線画像(1)又は前記補正されたサイノグラム(2)に基づいて前記3次元断層画像(8)が再構成される、
ことを特徴とする、[1]に記載の方法。
[4] 前記補正ステップ(S3)において、前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)が古典的な画像処理によって補正されることを特徴とする、[3]に記載の方法。
[5] 前記補正ステップ(S3)において、前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)が、別の訓練された人工知能アルゴリズムによって補正されることを特徴とする、[3]に記載の方法。
[6] 前記再構成ステップ(S4)において、前記3次元断層画像(8)の前記再構成が、前記補正された2次元X線画像(1)及び前記補正されていない2次元X線画像(1)、又は前記補正されたサイノグラム(2)及び前記補正されていないサイノグラム(2)に更に基づくことを特徴とする、[3]乃至[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] データ対を使用することで前記人工知能アルゴリズムを訓練する訓練ステップを更に備え、各データ対は、2次元X線画像(1’)と、関連する前記2次元X線画像(1’)内の任意の金属物体(6’)の位置を表す関連する2Dマスク(7’)とを含むか、又は各データ対は、サイノグラム(2’)と、前記サイノグラム(2’)内の任意の金属物体(6’)の前記位置を表す関連する3Dマスクとを含み、前記データ対の前記2次元X線画像(1’)及び前記サイノグラム(2’)は、1つ又は複数の患者(3’)の患者顎(3a’)の部分又は全体に対応し、X線源(4’)及び検出器(5’)によって又はシミュレーション技法によって生成されており、複数の視野角をカバーし、前記データ対のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの金属物体(6)を備えることを特徴とする、[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8] 前記訓練ステップで使用される前記2Dマスク(7’)又は前記3Dマスクが、金属アーチファクトが補正されていない3次元断層画像(8’)を解析することによって生成されることを特徴とする、[7]に記載の方法。
[9] 得られた前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)が、金属物体(6)がない又は少なくとも1つの金属物体(6b)を含む前記患者顎(3a)の部分(V)に対応し、前記患者顎(3a)の残りの部分が少なくとも1つの金属物体(6a)を含むことを特徴とする、[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] X線歯科ボリューム断層撮影システムであって、
患者顎(3a)の周りで完全にX線源(4)及び検出器(5)を相対的に回転させることによって、前記患者顎(3a)の少なくとも一部(V)の2次元X線画像(1)又はサイノグラム(2)を取得するように構成された取得手段を備えるX線ユニット(9)と、
前記取得手段によって取得された前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)内の金属物体(6)を検出するように構成された画像処理手段を備える断層撮影再構成ユニットと
を備え、前記X線歯科ボリューム断層撮影システムは、前記画像処理手段が、
前記2次元X線画像(1)内の前記金属物体(6)を表す2Dマスク(7)又は前記サイノグラム(2)内の前記金属物体(6)を表す3Dマスクをそれぞれ生成する、訓練された人工知能アルゴリズムを使用することで、前記金属物体(6)を検出することと、
2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)と、生成された前記2Dマスク(7)又は前記3Dマスクとにそれぞれ基づいて、3次元断層画像(8)を再構成することと
を行うように更に構成されていることを特徴とする、システム。
[11] 画像処理手段が、最初に得られた前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)と、生成された前記2Dマスク(7)又は前記3Dマスクとに基づいて前記3次元断層画像(8)を再構成するように更に構成されていることを特徴とする、[10]に記載のシステム。
[12] 画像処理手段が、
前記生成された2Dマスク(7)又は前記3Dマスクをそれぞれ用いて、前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)を補正することと、
前記補正された2次元X線画像(1)又は前記補正されたサイノグラム(2)に基づいて前記3次元断層画像(8)を再構成することと
を行うように更に構成されていることを特徴とする、[10]に記載のシステム。
[13] 前記画像処理手段が、古典的な画像処理によって、前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)を補正するように更に構成されていることを特徴とする、[12]に記載のシステム。
[14] 前記画像処理手段が、別の訓練された人工知能アルゴリズムによって前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)を補正するように更に構成されていることを特徴とする、[12]に記載のシステム。
[15] 前記画像処理手段が、前記補正された2次元X線画像(1)及び前記補正されていない2次元X線画像(1)、又は前記補正されたサイノグラム(2)及び前記補正されていないサイノグラム(2)に基づいて前記3次元断層画像(8)を再構成するように更に構成されていることを特徴とする、[12]乃至[14]のいずれか1項に記載のシステム。
[16] 断層撮影再構成ユニットが、前記訓練された人工知能アルゴリズムを検索するための入力手段を有することを特徴とする、[10]乃至[15]のいずれか一項に記載のシステム。
[17] 前記取得手段が、異なるボリュームを有する前記患者顎(3a)の複数の異なるユーザ選択可能かつ調整可能な部分のうちの1つに対応する前記2次元X線画像(1)又は前記サイノグラム(2)を、ユーザ選択可能かつ調整可能に取得するように構成されていることを特徴とする、[10]乃至[16]のいずれか一項に記載のシステム。
[18] コンピュータベースのX線歯科ボリューム断層撮影システムに、[1]乃至[9]のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのコードを備えるコンピュータ読取可能なプログラム。
[19] [18]に記載のコンピュータ読取可能なプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶装置。