(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】特性予測システム
(51)【国際特許分類】
H10K 50/10 20230101AFI20241028BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20241028BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20241028BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20241028BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20241028BHJP
H10K 85/00 20230101ALI20241028BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20241028BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20241028BHJP
【FI】
H10K50/10
G06F30/27
G06N20/00 130
H10K50/11
H10K71/00
H10K85/00
H10K101:30
H10K101:40
(21)【出願番号】P 2021541741
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(86)【国際出願番号】 IB2020057715
(87)【国際公開番号】W WO2021038362
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2019156559
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】細海 俊介
(72)【発明者】
【氏名】河内 峻太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦彦
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/048965(WO,A1)
【文献】特開2008-138097(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0133188(US,A1)
【文献】特開2012-004181(JP,A)
【文献】特開2017-091526(JP,A)
【文献】特表2019-502988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
H05B 33/00-33/28
G06F 30/27
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物を含む層を有する発光デバイスの特性を予測する、特性予測システムであって、
入力部と、処理部と、演算部と、出力部と、を有し、
前記入力部は、前記発光デバイスの構造、または、前記発光デバイスの特性を供給する機能を有し、
前記処理部は、学習用データセット、または、特性の予測に用いるデータを生成する機能と、有機化合物の分子構造を数値化する機能と、を有し、
前記演算部は、前記学習用データセットに基づいて、教師あり学習を行う機能と、前記教師あり学習の学習結果を基にして、前記データから、発光デバイスの特性の推論を行う機能と、を有し、
前記出力部は、前記推論の結果を提供する機能を有し、
前記発光デバイスは、複数の層を有し、
前記複数の層のうち一以上は、一または複数の有機化合物を有し、
前記学習用データセットは、複数の学習用データを有し、
前記複数の学習用データのそれぞれは、入力データ、および前記入力データに対する教師データを有し、
前記入力データは、前記複数の層の積層順と、前記複数の層のうち一以上が有する、前記一または複数の有機化合物の分子構造と、前記複数の層それぞれの膜厚と、複数の有機化合物を有する層における、前記複数の有機化合物の濃度比と、を有し、
前記教師データは、前記入力データに対する発光デバイスの特性を有する、
特性予測システム。
【請求項2】
請求項
1において、
前記発光デバイスの特性は、輝度-電流密度特性、電流効率-輝度特性、輝度-電圧特性、電流-電圧特性、外部量子効率-輝度特性、色度-輝度特性、発光スペクトル、および信頼性のいずれか一または複数である、
特性予測システム。
【請求項3】
有機化合物を含む層を有する発光デバイスの特性を予測する、特性予測システムであって、
入力部と、処理部と、演算部と、出力部と、を有し、
前記入力部には、学習用データセットと、特性の予測に用いられるデータと、が入力され、
前記処理部は、有機化合物の分子構造を数値化する機能を有し、
前記演算部は、前記学習用データセットに基づいて、教師あり学習を行う機能と、前記教師あり学習の学習結果を基にして、前記データから、発光デバイスの信頼性の推論を行う機能と、を有し、
前記出力部は、前記推論の結果を提供する機能を有し、
前記学習用データセットは、複数の学習用データを有し、
前記複数の学習用データのそれぞれは、入力データ、および前記入力データに対する教師データを複数有し、
前記入力データは、前記複数の層の積層順と、前記複数の層それぞれが有する、前記一または複数の有機化合物の分子構造と、前記複数の層それぞれの膜厚と、複数の有機化合物を有する層における、前記複数の有機化合物の濃度比と、前記発光デバイスの外部量子効率-輝度特性と、を有し、
前記教師データは、前記入力データに対する発光デバイスの信頼性を有する、
特性予測システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか一において、
前記有機化合物の分子構造の数値化は、定量的構造活性相関またはフィンガープリント法を用いて行われる、
特性予測システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれか一において、
前記教師あり学習に、ニューラルネットワークを用い、
前記ニューラルネットワークは、入力層と、出力層との間に、2以上の隠れ層を有する、
特性予測システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
5のいずれか一において、
記憶部を有し、
前記記憶部には、前記教師あり学習により生成された学習済みモデルが記憶される、
特性予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光デバイスの特性を予測する方法に関する。また、本発明の一態様は、発光デバイスの特性を予測する特性予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一対の電極間にEL(Electro Luminescence)層を挟んでなる発光デバイス(発光素子ともいう)は、薄型軽量、入力信号に対する高速な応答性、低消費電力などの特性を有することから、これらを適用したディスプレイは、次世代のフラットパネルディスプレイとして注目されている。
【0003】
EL層に有機化合物を用いた発光デバイス(有機ELデバイス、有機EL素子ともいう)は、様々な有機化合物を積層することによって様々な特性を示す。しかしながら、有機化合物は、知られているだけでも100万種類を超える。更に、発光デバイスが積層構造で構成される場合、積層した各層の膜厚、有機化合物の濃度比なども、発光デバイスの特性に影響を与える。したがって、発光デバイスの構造(単に素子構造ともいう)の最適化に大きな労力を要する。
【0004】
近年、機械学習などの方法を利用して分類、推定、予測などを行う方法が大きな進化を遂げている。ニューラルネットワーク(特に、ディープラーニング)による選別や予測の性能は大きく向上しており、様々な分野において優れた成果を上げている。特許文献1では、機械学習を用いた新規物質探索方法およびその装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機ELデバイスの構造を最適化するためには、熟練者によるところが大きい。有機ELデバイスの技術は複数の学問領域にまたがっており、有機化学、半導体物理、電気工学などの知識を要するため、高い熟練が必要とされる。また、最適化に長い年月が必要となるため、その過程を記憶する必要がある。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、発光デバイスの特性を予測する方法を提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、発光デバイスの特性を予測するシステムを提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、学習用データセットの生成方法を提供することを課題の一とする。
【0008】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を鑑み、本発明の一態様は、複数の発光デバイスに関する情報と、当該複数の発光デバイスの特性とを機械学習に用いることで、発光デバイスに関する情報から、当該発光デバイスの特性を予測するシステムを提供する。
【0010】
本発明の一態様は、有機化合物を含む層を有する発光デバイスの特性を予測する、特性予測システムである。特性予測システムは、入力部と、処理部と、演算部と、出力部と、を有する。入力部は、発光デバイスの構造、または、発光デバイスの特性を供給する機能を有する。処理部は、学習用データセット、または、特性の予測に用いるデータを生成する機能と、有機化合物の分子構造を数値化する機能と、を有する。演算部は、学習用データセットに基づいて、教師あり学習を行う機能と、教師あり学習の学習結果を基にして、データから、発光デバイスの特性の推論を行う機能と、を有する。出力部は、推論の結果を提供する機能を有する。
【0011】
上記特性予測システムにおいて、発光デバイスは、複数の層を有し、複数の層のうち一以上は、一または複数の有機化合物を有し、学習用データセットは、複数の学習用データを有し、複数の学習用データのそれぞれは、入力データ、および入力データに対する教師データを有し、入力データは、複数の層の積層順と、複数の層のうち一以上が有する、一または複数の有機化合物の分子構造と、複数の層それぞれの膜厚と、複数の有機化合物を有する層における、複数の有機化合物の濃度比と、を有し、教師データは、入力データに対する発光デバイスの特性を有することが好ましい。
【0012】
また、上記特性予測システムにおいて、発光デバイスの特性は、輝度-電流密度特性、電流効率-輝度特性、輝度-電圧特性、電流-電圧特性、外部量子効率-輝度特性、色度-輝度特性、発光スペクトル、および信頼性のいずれか一または複数であることが好ましい。
【0013】
本発明の他の一態様は、有機化合物を含む層を有する発光デバイスの特性を予測する、特性予測システムである。特性予測システムは、入力部と、処理部と、演算部と、出力部と、を有する。入力部には、学習用データセットと、特性の予測に用いられるデータと、が入力される。処理部は、有機化合物の分子構造を数値化する機能を有する。演算部は、学習用データセットに基づいて、教師あり学習を行う機能と、教師あり学習の学習結果を基にして、データから、発光デバイスの信頼性の推論を行う機能と、を有する。出力部は、推論の結果を提供する機能を有する。学習用データセットは、複数の学習用データを有し、複数の学習用データのそれぞれは、入力データ、および入力データに対する教師データを複数有する。入力データは、複数の層の積層順と、複数の層それぞれが有する、一または複数の有機化合物の分子構造と、複数の層それぞれの膜厚と、複数の有機化合物を有する層における、複数の有機化合物の濃度比と、発光デバイスの外部量子効率-輝度特性と、を有する。教師データは、入力データに対する発光デバイスの信頼性を有する。
【0014】
上記特性予測システムにおいて、有機化合物の分子構造の数値化は、定量的構造活性相関またはフィンガープリント法を用いて行われることが好ましい。
【0015】
また、上記特性予測システムにおいて、教師あり学習に、ニューラルネットワークを用い、ニューラルネットワークは、入力層と、出力層との間に、2以上の隠れ層を有することが好ましい。
【0016】
また、上記特性予測システムにおいて、記憶部を有し、記憶部には、教師あり学習により生成された学習済みモデルが記憶されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様により、発光デバイスの特性を予測する方法を提供することができる。また、本発明の一態様により、発光デバイスの特性を予測するシステムを提供することができる。また、本発明の一態様により、学習用データセットの生成方法を提供することができる。
【0018】
なお、本発明の一態様の効果は、上記列挙した効果に限定されない。上記列挙した効果は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、他の効果は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない効果である。本項目で言及していない効果は、当業者であれば、明細書、図面などの記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した効果、及び/又は他の効果のうち、少なくとも一つの効果を有するものである。したがって本発明の一態様は、場合によっては、上記列挙した効果を有さない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A、
図1Bは、特性予測システムを説明する図である。
図2は、発光デバイスの特性を予測する方法を示すフローである。
図3は、発光デバイスの特性を予測する方法を示すフローである。
図4A、
図4Bは、ニューラルネットワークの構成を説明する図である。
図5は、発光デバイスの構造を示す図である。
図6A乃至
図6Dは、学習用データセットを説明する図である。
図7は、フィンガープリント法による分子構造の変換方法を表す図である。
図8A乃至
図8Dは、フィンガープリント法の種類について説明する図である。
図9は、SMILES表記からフィンガープリント法による表記への変換を説明する図である。
図10は、フィンガープリント法の種類と表記の重複について説明する図である。
図11A、
図11Bは、複数のフィンガープリント法を用いて分子構造を表記した例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0022】
また、図面において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0023】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態では、発光デバイスの特性を予測する特性予測システム、および発光デバイスの特性を予測する方法について説明する。
【0025】
<特性予測システムの構成例>
特性予測システムの構成例について、
図1A、および
図1Bを用いて説明する。
【0026】
図1Aは、特性予測システム100の構成例を示す図である。特性予測システム100は、入力部101と、処理部102と、演算部103と、出力部104と、を有する。
【0027】
入力部101と、処理部102とは、伝送路を介して接続されている。また、処理部102と、演算部103とは、伝送路を介して接続されている。また、演算部103と、出力部104とは、伝送路を介して接続されている。なお、入力部101と、処理部102と、演算部103と、出力部104と、のそれぞれは、伝送路を介して接続されていてもよい。
【0028】
上記伝送路には、ローカルエリアネットワーク(LAN)や、インターネットなどのネットワークが含まれる。また、当該ネットワークは、有線、および無線のいずれか一方、または両方による通信を用いることができる。
【0029】
また、上記ネットワークにおいて無線通信を用いる場合、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの近距離通信手段の他に、第3世代移動通信システム(3G)に準拠した通信手段、LTE(3.9Gと呼ぶ場合もある)に準拠した通信手段、第4世代移動通信システム(4G)に準拠した通信手段、または第5世代移動通信システム(5G)に準拠した通信手段などの様々な通信手段を用いることができる。
【0030】
入力部101は、データIN1、およびデータIN2を処理部102へ供給する機能を有する。データIN1、およびデータIN2のそれぞれには、発光デバイスに関する情報、発光デバイスの特性などのデータが含まれる。なお、データIN2には、少なくとも発光デバイスに関する情報が含まれる。また、データIN2には、発光デバイスの特性などのデータが含まれる場合がある。
【0031】
データIN1、およびデータIN2の、処理部102への供給は、同じタイミングでもよいし、異なるタイミングでもよい。なお、異なるタイミングで供給される場合、データIN1が処理部102へ供給された後、データIN2が処理部102へ供給されるとよい。
【0032】
処理部102は、データIN1から、学習用データセットDSを生成する機能を有する。また、処理部102は、データIN2から、特性の予測に用いるデータDIを生成する機能を有する。また、処理部102は、有機化合物の分子構造を数値化する機能を有する。なお、処理部102は、無機化合物の構造を数値化する機能を有してもよい。
【0033】
演算部103は、機械学習を行う機能を有する。例えば、演算部103は、学習用データセットDSに基づいて、教師あり学習を行う機能を有することが好ましい。また、演算部103は、当該教師あり学習の学習結果を基にして、特性の予測に用いるデータDIから、発光デバイスの特性の推論を行う機能を有することが好ましい。教師あり学習を行うことで、発光デバイスの特性の推論の精度を高めることができる。なお、当該教師あり学習を行うことで、学習済みモデルを生成してもよい。
【0034】
上記教師あり学習には、ニューラルネットワーク(特に、ディープラーニング)を用いることが好ましい。ディープラーニングとして、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)、オートエンコーダ(AE:Autoencoder)、変分オートエンコーダ(VAE:Variational Autoencoder)、ランダムフォレスト(Random Forest)、サポートベクターマシン(Support Vector Machine)、勾配ブースティング(Gradient Boosting)、敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative Adversarial Networks)などを用いることが好ましい。
【0035】
なお、ニューラルネットワークにおいては、積和演算が行われる。当該積和演算をハードウェアによって行う場合、演算部103は、積和演算回路を有することが好ましい。当該積和演算回路としては、デジタル回路を用いてもよいし、アナログ回路を用いてもよい。なお、当該積和演算は、プログラムを用いてソフトウェア上で行ってもよい。
【0036】
演算部103は、機械学習として、半教師あり学習を行う機能を有してもよい。学習用データには、教師データ(教師信号、正解ラベルなどともいう)として発光デバイスの特性のデータが与えられるが、教師データを用意するには、実際に発光デバイスを作製し、発光デバイスの特性を測定する必要がある。教師あり学習と比べて、半教師あり学習は、学習用データセットに含まれる学習用データの数が少なくてもよいため、学習用データの作成に費やす時間を短縮しつつ、推論を行うことができる。
【0037】
出力部104は、データOUTを提供する機能を有する。データOUTには、上記推論の結果が含まれる。
【0038】
以上により、発光デバイスの特性を予測する、特性予測システムが構成される。
【0039】
なお、特性予測システム100は、上記の構成に限られない。例えば、
図1Bに示すように、入力部101、処理部102、演算部103、および出力部104に加えて、記憶部105を有してもよい。
【0040】
記憶部105は、演算部103が生成した学習済みモデルを格納する機能を有する。特性予測システム100が記憶部105を有することで、学習済みモデルを基にして、発光デバイスの特性の予測を行うことができる。よって、学習済みモデルを予め生成しておくことで、発光デバイスの特性を予測する際、教師あり学習を実施する必要がなくなる。したがって、発光デバイスの特性を予測するのに要する時間を短縮することができる。
【0041】
記憶部105は、演算部103と伝送路を介して接続されている。なお、記憶部105は、入力部101、処理部102、演算部103、および出力部104のそれぞれと、伝送路を介して接続されていてもよい。
【0042】
以上が、特性予測システムの構成例についての説明である。
【0043】
<特性を予測する方法>
次に、発光デバイスの特性を予測する方法の一例について、
図2、
図3、
図4A、および
図4Bを用いて説明する。
【0044】
図2は、発光デバイスの特性を予測する方法の一例を示すフロー図である。発光デバイスの特性を予測する方法は、ステップS001乃至ステップS007を有する。ステップS001乃至ステップ003は、教師あり学習を行う工程であり、ステップS004乃至ステップS007は、発光デバイスの特性の推論を行う工程である。
【0045】
ステップS001は、第1のデータを入力する工程である。ステップS001は、
図1Aおよび
図1Bに示す入力部101にて行われる。また、当該第1のデータは、
図1Aおよび
図1Bに示すデータIN1に対応する。つまり、当該第1のデータには、発光デバイスに関する情報、発光デバイスの特性などのデータが含まれる。
【0046】
ステップS002は、上記第1のデータから、学習用データセットを作成する工程である。ステップS002は、
図1Aおよび
図1Bに示す処理部102にて行われる。当該学習用データセットは、
図1Aおよび
図1Bに示す学習用データセットDSに対応する。
【0047】
また、上記第1のデータに、有機化合物の分子構造が含まれる場合、ステップS002は、当該有機化合物の分子構造を数値化する工程を含む。なお、数値化された有機化合物の分子構造は、上記学習用データセットに含まれる。
【0048】
また、上記第1のデータに、無機化合物の構造が含まれる場合、ステップS002は、当該無機化合物の構造を数値化する工程を含んでもよい。また、数値化された無機化合物の構造は、上記学習用データセットに含まれてもよい。
【0049】
ステップS003は、上記学習用データセットに基づいて、教師あり学習を行う工程である。ステップS003は、
図1Aおよび
図1Bに示す演算部103にて行われる。当該教師あり学習に、ニューラルネットワーク(特に、ディープラーニング)を用いることが好ましい。なお、当該教師あり学習により、発光デバイスの特性を予測するための、学習済みモデルを生成してもよい。
【0050】
ステップS004は、第2のデータを入力する工程である。ステップS004は、
図1Aおよび
図1Bに示す入力部101にて行われる。当該第2のデータは、
図1Aおよび
図1Bに示すデータIN2に対応する。つまり、当該第2のデータには、少なくとも発光デバイスに関する情報が含まれる。なお、当該第2のデータには、発光デバイスの特性などのデータが含まれる場合がある。
【0051】
なお、ステップS004は、ステップS001と同時に実施してもよいし、ステップS001乃至ステップS003の実施中に実施してもよいし、ステップS003まで実施された後に実施してもよい。
【0052】
ステップS005は、上記第2のデータから、特性の予測に用いるデータを作成する工程である。ステップS005は、
図1Aおよび
図1Bに示す処理部102にて行われる。つまり、当該データは、
図1Aおよび
図1Bに示す、特性の予測に用いるデータDIに対応する。
【0053】
また、上記第2のデータに、有機化合物の分子構造が含まれる場合、ステップS005は、当該有機化合物の分子構造を数値化する工程を含む。なお、数値化された有機化合物の分子構造は、上記データに含まれる。
【0054】
また、上記第2のデータに、無機化合物の構造が含まれる場合、ステップS005は、当該無機化合物の構造を数値化する工程を含んでもよい。また、数値化された無機化合物の構造は、上記データに含まれてもよい。
【0055】
ステップS006は、上記教師あり学習の学習結果を基にして、上記データから、発光デバイスの特性の推論を行う工程である。ステップS006は、
図1Aおよび
図1Bに示す演算部103にて行われる。
【0056】
ステップS007は、第3のデータを出力する工程である。ステップS007は、
図1Aおよび
図1Bに示す出力部104にて行われる。当該第3のデータは、
図1Aおよび
図1Bに示すデータOUTに対応する。つまり、当該第3のデータには、上記推論の結果が含まれる。
【0057】
以上により、発光デバイスの特性を予測することができる。
【0058】
なお、発光デバイスの特性を予測する方法は、上記に限られない。例えば、
図3に示すように、発光デバイスの特性を予測する方法は、ステップS003の後に、ステップS008を有してもよい。
【0059】
ステップS008は、ステップS003で生成された学習済みモデルを記憶する工程である。なお、当該学習済みモデルは、
図1Bに示す記憶部105に格納される。学習済みモデルを予め生成しておくことで、発光デバイスの特性を予測する際、ステップS001乃至ステップS003の工程を省略することができる。よって、発光デバイスの特性を予測するのに要する時間を短縮することができる。
【0060】
<<ニューラルネットワーク>>
ここで、教師あり学習に用いることができるニューラルネットワークについて説明する。
【0061】
図4Aに示すように、ニューラルネットワークNNは、入力層IL、出力層OL、および隠れ層HLによって構成することができる。入力層IL、出力層OL、および隠れ層HLはそれぞれ、1または複数のニューロン(ユニット)を有する。なお、隠れ層HLは、1層であってもよいし2層以上であってもよい。2層以上の隠れ層HLを有するニューラルネットワークはディープニューラルネットワーク(DNN)と呼ぶこともできる。また、ディープニューラルネットワークを用いた学習は深層学習(ディープラーニング)と呼ぶこともできる。
【0062】
入力層ILの各ニューロンには、入力データが入力される。隠れ層HLの各ニューロンには、前層または後層のニューロンの出力信号が入力される。出力層OLの各ニューロンには、前層のニューロンの出力信号が入力される。なお、各ニューロンは、前後の層の全てのニューロンと結合されていてもよいし(全結合)、一部のニューロンと結合されていてもよい。
【0063】
図4Bに、ニューロンによる演算の例を示す。ここでは、ニューロンNと、ニューロンNに信号を出力する前層の2つのニューロンを示している。ニューロンNには、前層のニューロンの出力x
1と、前層のニューロンの出力x
2が入力される。そして、ニューロンNにおいて、出力x
1と重みw
1の乗算結果(x
1w
1)と、出力x
2と重みw
2の乗算結果(x
2w
2)の総和x
1w
1+x
2w
2が計算された後、必要に応じてバイアスbが加算され、値a=x
1w
1+x
2w
2+bが得られる。そして、値aは活性化関数hによって変換され、ニューロンNから出力信号y=ahが出力される。活性化関数hとして、例えば、シグモイド関数、tanh関数、softmax関数、ReLU関数、しきい値関数などを用いることができる。
【0064】
このように、ニューロンによる演算には、前層のニューロンの出力と重みの積を足し合わせる演算、すなわち積和演算が含まれる(上記のx1w1+x2w2)。この積和演算は、プログラムを用いてソフトウェア上で行ってもよいし、ハードウェアによって行われてもよい。積和演算をハードウェアによって行う場合は、積和演算回路を用いることができる。この積和演算回路としては、デジタル回路を用いてもよいし、アナログ回路を用いてもよい。積和演算回路にアナログ回路を用いる場合、積和演算回路の回路規模の縮小、または、メモリへのアクセス回数の減少による処理速度の向上および消費電力の低減を図ることができる。
【0065】
積和演算回路は、チャネル形成領域にシリコン(単結晶シリコンなど)を含むトランジスタ(以下、Siトランジスタともいう)によって構成してもよいし、チャネル形成領域に酸化物半導体を含むトランジスタ(以下、OSトランジスタともいう)によって構成してもよい。特に、OSトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、積和演算回路のアナログメモリを構成するトランジスタとして好適である。なお、SiトランジスタとOSトランジスタの両方を用いて積和演算回路を構成してもよい。
【0066】
積和演算をハードウェアによって行う場合、積和演算回路は、特性予測システム100が有する演算部103に含まれるとよい。
【0067】
以上が、ニューラルネットワークについての説明である。なお、本発明の一態様においては、ディープラーニングを用いることが好ましい。つまり、2層以上の隠れ層HLを有するニューラルネットワークを用いることが好ましい。
【0068】
以上が、発光デバイスの特性を予測する方法の一例についての説明である。
【0069】
<発光デバイスの特性を予測する方法の詳細>
以下では、発光デバイスの特性を予測する方法の詳細について、
図5乃至
図11Bを用いて説明する。
【0070】
<<発光デバイスの構造>>
はじめに、発光デバイスの構造について説明する。
【0071】
発光デバイスは、基本的には、一対の電極間に発光性の材料を含む層(発光層ともいう。)を挟持したデバイスである。当該デバイスに電圧を印加することにより、発光性の材料から発光を得ることができる。発光性の材料として、有機化合物、または無機化合物を用いることができる。なお、発光層は、一の有機化合物または一の無機化合物を用いて設けてられてもよいし、複数の有機化合物を混合または積層して設けられてもよいし、複数の無機化合物を混合または積層して設けられてもよいし、有機化合物および無機化合物を混合または積層して設けられてもよい。以降では、発光性の材料として有機化合物を用いる発光デバイスを例として説明する。
【0072】
図5は、発光デバイス10の構造を示す模式図である。発光デバイス10は、複数の層が積層した構造を有する。例えば、発光デバイス10は、n個(nは、3以上の整数である。)の層が積層した層20を有する。つまり、層20は、層20(1)乃至層20(n)で構成される。なお、
図5では、基板を図示してない。
【0073】
発光デバイスは、一対の電極間に発光性の材料を含む層を挟持した構造を有する。よって、層20(1)は、発光デバイス10の陽極および陰極の一方として機能し、層20(n)は、発光デバイスの陽極および陰極の他方として機能する。なお、発光デバイス10の陽極および/または陰極は、単層に限られず、積層であってもよい。このとき、発光デバイス10の陽極および陰極の一方は、層20(1)乃至層20(j)(jは1以上(n-2)以下の整数である。)で構成され、発光デバイス10の陽極および陰極の他方は、層20(k)乃至層20(n)(kは(j+2)以上n以下の整数である。)で構成される。以降では、説明を容易にするため、発光デバイス10の陽極および陰極はいずれも単層で構成されるとみなす。
【0074】
発光デバイス10の陽極および陰極がいずれも単層である場合、層20(2)乃至層20(n-1)の一部または全ては、有機化合物を含む層である。さらに、層20(2)乃至層20(n-1)のいずれか一または複数は、発光性の材料を有する。以降では、層20(2)乃至層20(n-1)の全ては、有機化合物を含む層であるとみなす。また、一対の電極間に位置する層(層20(2)乃至層20(n-1))をまとめて、中間層25と表記する場合がある。
【0075】
nが3である場合、中間層25は、単層で構成される。つまり、中間層25は層20(2)のみで構成される。nが3である発光デバイス10の構造を、シングル構造と呼ぶ場合がある。また、nが4以上である場合、中間層25は、複数の層で構成される。つまり、中間層25は、積層構造を有する。
【0076】
[中間層が積層構造で構成される発光デバイス]
以下では、中間層が積層構造で構成される発光デバイス10について説明する。
【0077】
nが5である場合、中間層25は、3層の積層構造を有する。このとき、中間層25は、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、の積層構造を有することができる。これにより、発光デバイス10の電流効率および外部量子効率を高めることができる。また、nが6以上である場合、中間層25は4以上の層が積層された構造を有する。よって、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層のいずれか一または複数が、積層構造を有することができる。
【0078】
層20(1)が陽極として機能し、層20(n)が陰極として機能する場合、中間層25は、正孔輸送層、発光層、電子輸送層が順次積層された構造を有する。なお、層20(1)が陰極として機能し、層20(n)が陽極として機能する場合、積層順は逆になる。
【0079】
なお、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および陰極の、それぞれの膜厚を適切に調整することで、発光効率、外部量子効率などの、発光デバイスの特性を向上させることができる。別言すると、発光デバイスの特性は、層20(1)乃至層20(n)のそれぞれの膜厚に影響される。
【0080】
nが7である場合、中間層25は、5層の積層構造を有する。このとき、中間層25は、正孔注入層と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、電子注入層と、の積層構造を有することができる。これにより、発光デバイス10の電流効率および外部量子効率をより高めることができる。また、nが8以上である場合、中間層25は6以上の層が積層された構造を有する。よって、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層のいずれか一または複数が、積層構造を有することができる。
【0081】
層20(1)が陽極として機能し、層20(n)が陰極として機能する場合、中間層25は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層が順次積層された構造を有する。なお、層20(1)が陰極として機能し、層20(n)が陽極として機能する場合、積層順は逆になる。
【0082】
発光層は、発光性の材料や複数の材料を適宜組み合わせて有しており、所望の発光色を呈する蛍光発光や燐光発光が得られる構成とすることができる。また、発光層を発光色の異なる積層構造としてもよい。なお、この場合、積層された各発光層に用いる発光物質やその他の物質は、それぞれ異なる材料を用いればよい。
【0083】
発光デバイス10において、例えば、層20(1)を反射電極とし、層20(n)を半透過・半反射電極とし、微小光共振器(マイクロキャビティ)構造とすることにより、中間層25に含まれる発光層から得られる発光を両電極間で共振させ、層20(n)を透過して射出される発光を強めることができる。
【0084】
なお、発光デバイス10の層20(1)が、反射性を有する導電性材料と透光性を有する導電性材料(透明導電膜)との積層構造からなる反射電極である場合、透明導電膜の膜厚を制御することにより光学調整を行うことができる。具体的には、発光層から得られる光の波長λに対して、層20(1)と、層20(n)との電極間距離がm1λ/2(ただし、m1は自然数である。)近傍となるように調整するのが好ましい。
【0085】
また、発光層から得られる所望の光(波長:λ)を増幅させるために、層20(1)から発光層の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、層20(n)から発光層の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、をそれぞれ(2m2+1)λ/4(ただし、m2は自然数である。)近傍となるように調節するのが好ましい。なお、ここでいう発光領域とは、発光層における正孔(ホール)と電子との再結合領域を示す。
【0086】
このような光学調整を行うことにより、発光層から得られる特定の単色光のスペクトルを狭線化させ、色純度のよい発光を得ることができる。
【0087】
上記の場合、層20(1)と層20(n)との電極間距離は、厳密には層20(1)における反射領域から層20(n)における反射領域までの総厚ということができる。しかし、層20(1)や層20(n)における反射領域を厳密に決定することは困難であるため、層20(1)と層20(n)の任意の位置を反射領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。また、層20(1)または層20(n)と、所望の光が得られる発光層との光学距離は、厳密には層20(1)または層20(n)における反射領域と、所望の光が得られる発光層における発光領域との光学距離であるということができる。しかし、層20(1)または層20(n)における反射領域、及び所望の光が得られる発光層における発光領域を厳密に決定することは困難であるため、層20(1)または層20(n)の任意の位置を反射領域、所望の光が得られる発光層の任意の位置を発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0088】
上記の場合、発光デバイス10は、マイクロキャビティ構造を有するため、同じ中間層25を有していても、異なる波長の光(単色光)を取り出すことができる。従って、表示装置の表示素子として発光デバイス10を用いる場合、異なる発光色を得るための塗り分け(例えば、RGB)が不要となる。従って、高精細化を実現することが容易である。また、着色層との組み合わせも可能である。さらに、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることができる。
【0089】
なお、発光デバイス10は、マイクロキャビティ構造を有していなくてもよい。この場合、発光層が白色光を発する構造とし、着色層を設けることにより、所定の色の光(例えば、RGB)を取り出すことができる。また、中間層25を形成する際、異なる発光色を得るための塗り分けを行えば、着色層を設けなくても所定の色の光を取り出すことができる。
【0090】
層20(1)と層20(n)の少なくとも一方は、透光性を有する電極(透明電極、半透過・半反射電極等)とすることができる。透光性を有する電極が透明電極の場合、透明電極の可視光の透過率は、40%以上とする。また、半透過・半反射電極の場合、半透過・半反射電極の可視光の反射率は、20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下とする。また、これらの電極の抵抗率は、1×10-2Ωcm以下が好ましい。
【0091】
層20(1)または層20(n)が、反射性を有する電極(反射電極)である場合、反射性を有する電極の可視光の反射率は、40%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下とする。また、この電極の抵抗率は、1×10-2Ωcm以下が好ましい。
【0092】
nが5である場合、中間層25は、3層の積層構造を有する。このとき、中間層25は、第1の発光層と、電荷発生層と、第2の発光層と、の積層構造を有することができる。つまり、発光デバイス10は、タンデム構造を有することができる。発光デバイス10をタンデム構造とすることで、発光デバイス10の電流効率および外部量子効率を高めることができる。
【0093】
また、nが6以上である場合、中間層25は4以上の層が積層された構造を有する。このとき、層20(1)と電荷発生層との間に挟まれた層(第1の中間層と呼ぶ場合がある)、電荷発生層、および電荷発生層と層20(n)との間に挟まれた層(第2の中間層と呼ぶ場合がある)のいずれか一または複数は、積層構造を有することができる。例えば、nが13である場合、第1の中間層および第2の中間層のそれぞれは、上述した5層の積層構造を有する中間層25と同様の構成とすることができる。
【0094】
電荷発生層は、層20(1)と層20(n)との間に電圧を供給したときに、第1の中間層および第2の中間層のうち、一方に電子を注入し、他方に正孔(ホール)を注入する機能を有する。したがって、層20(1)の電位が層20(n)の電位より高くなるように電圧を供給すると、電荷発生層から第1の中間層に電子が注入され、電荷発生層から第2の中間層に正孔が注入されることになる。
【0095】
なお、電荷発生層は、光取り出し効率の点から、可視光を透過することが好ましい。具体的には、電荷発生層の可視光の透過率が、40%以上であることが好ましい。また、電荷発生層の導電率は、層20(1)の導電率、または層20(n)の導電率より低くてもよい。
【0096】
nが7である場合、中間層25は、5層の積層構造を有する。このとき、中間層25は、第1の発光層と、第1の電荷発生層と、第2の発光層と、第2の電荷発生層と、第3の発光層と、の積層構造を有することができる。つまり、発光デバイス10は、タンデム構造を有することができる。発光デバイス10をタンデム構造とすることで、発光デバイス10の電流効率および外部量子効率をさらに高めることができる。
【0097】
また、nが8以上である場合、中間層25は6以上の層が積層された構造を有する。層20(1)と第1の電荷発生層との間に挟まれた層(第1の中間層と呼ぶ場合がある)、第1の電荷発生層、第1の電荷発生層と第2の電荷発生層との間に挟まれた層(第2の中間層と呼ぶ場合がある。)、第2の電荷発生層、および第2の電荷発生層と層20(n)との間に挟まれた層(第3の中間層と呼ぶ場合がある。)のいずれか一または複数は、積層構造を有することができる。例えば、nが19である場合、第1の中間層、第2の中間層、および第3の中間層のそれぞれは、上述した5層の積層構造を有する中間層25と同様の構成とすることができる。
【0098】
ここまでは、中間層25が、1つの電荷発生層と2つの中間層とを有する構成、または2つの電荷発生層と3つの中間層とを有する構成について説明したが、これに限られない。中間層25が、3つ以上の電荷発生層と、4つ以上の中間層とを有する構成にしてもよい。電荷発生層の数と中間層の数を増やすことで、発光デバイス10の電流効率および外部量子効率を高めることができる。なお、nは、電荷発生層の層数に合わせて適宜調整されるとよい。
【0099】
以上が、中間層が積層構造で構成される発光デバイス10についての説明である。
【0100】
なお、中間層25に含まれる層において、複数の有機化合物を共蒸着することで形成される場合がある。共蒸着により形成された層は、複数の有機化合物を有する。よって、中間層25に、複数の有機化合物を有する層が含まれる場合がある。中間層25に、複数の有機化合物を有する層が含まれる場合、当該複数の有機化合物の濃度比は、発光デバイスの特性に影響する。
【0101】
以上が、発光デバイスの構造についての説明である。
【0102】
<<発光デバイスの特性>>
以下では、発光デバイスの特性について説明する。発光デバイスの特性として、例えば、発光デバイスの初期特性、発光デバイスの信頼性試験の結果(発光デバイスの信頼性と表記する場合がある。)などがある。
【0103】
発光デバイスの初期特性として、例えば、輝度-電流密度特性、電流効率-輝度特性、輝度-電圧特性、電流-電圧特性、外部量子効率-輝度特性、色度-輝度特性、発光スペクトルなどがある。
【0104】
発光デバイスの信頼性試験として、例えば、初期輝度をある値に設定し、電流密度一定の条件で発光デバイスを駆動させて、駆動時間に伴う輝度の変化を測定する試験などがある。このとき、輝度は、初期輝度を100%とした規格化輝度としてもよい。駆動時間に伴う輝度低下が小さいほど、良好な信頼性を有する発光デバイスであるといえる。
【0105】
発光デバイスの初期特性、発光デバイスの信頼性などの、発光デバイスの特性のデータは、2変数データであり、数値化されていることが多い。
【0106】
以上が、発光デバイスの特性についての説明である。
【0107】
<<学習用データセット>>
ここでは、教師あり学習に用いる学習用データセットについて説明する。
【0108】
図6A、および
図6Bは、学習用データセット50の構成を示す図である。学習用データセット50は、学習用データ51_1乃至学習用データ51_m(mは2以上の整数である。)を有する。学習用データ51_1乃至学習用データ51_mはそれぞれ、入力データ52_1乃至入力データ52_mと、教師データ53_1乃至教師データ53_mと、を有する。なお、学習用データ51_1乃至学習用データ51_mにはそれぞれ、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mに関する情報と、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mの特性のデータとが含まれる。
【0109】
本実施の形態で予測する対象は、発光デバイスの特性である。発光デバイスの特性は、上述したように、中間層25に用いる有機化合物の種類、電極として機能する層20(1)および層20(n)に用いる導電性材料の種類、層20(1)乃至層20(n)それぞれの膜厚、複数の有機化合物を有する層における、当該複数の有機化合物の濃度比などに影響される。したがって、これらのデータを、学習用データセットに含むことが好ましい。
【0110】
学習用データセット50は、
図1Aおよび
図1Bに示す処理部102により生成される。処理部102に入力されるデータIN1には、上述した発光デバイスに関する情報、上述した発光デバイスの特性のデータなどが含まれる。したがって、学習用データセットは、データIN1に含まれるデータに対して抽出および加工または変換を行うことで、生成される。
【0111】
なお、教師あり学習に用いる学習用データセットに含まれるデータは、数値化されていることが好ましい。学習用データセットが数値以外のデータを含む場合と比べて、学習用データセットに含まれるデータが数値化されることで、機械学習モデルが複雑になることを防ぐことができる。
【0112】
図6Aに示す学習用データセット50においては、入力データ52_1乃至入力データ52_mはそれぞれ、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mに関する情報を含む。また、教師データ53_1乃至教師データ53_mはそれぞれ、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mの特性のデータを含む。
【0113】
上述したように、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mの特性のデータは、数値化されたデータであるため、特に変換することなく、それぞれ教師データ53_1乃至教師データ53_mに含めることができる。なお、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mの特性のデータは、特徴的な点を抽出して、それぞれ教師データ53_1乃至教師データ53_mに含めてもよい。また、制御変数の値が等間隔となるように点を抽出して、それぞれ教師データ53_1乃至教師データ53_mに含めてもよい。
【0114】
ここで、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mに関する情報について説明する。はじめに、入力データ52_1に含まれる発光デバイス10_1に関する情報について、
図6Cを用いて説明する。
【0115】
発光デバイスに関する情報として、発光デバイスの構造、発光デバイスの作製条件(プロセス条件)などがある。発光デバイスの構造に関する情報として、例えば、各層の膜厚、各層に含まれる材料、各層に含まれる材料の濃度比などがある。また、発光デバイスの作製条件に関する情報として、例えば、蒸着源の種類(形状など)、蒸着レート、成膜温度、蒸着チャンバーの状態(真空度など)もしくは成膜過程における発光デバイスが晒された雰囲気、蒸着源の有機化合物の純度(含まれる不純物の種類など)、測定装置の種類、成膜装置の種類、成膜手法などがある。
【0116】
図6Cに示すように、例えば、入力データ52_1には、発光デバイス10_1に関する情報として、発光デバイス10_1の構造に関する情報が含まれる。具体的には、層20(1)乃至層20(n)それぞれの膜厚(膜厚22(1)乃至膜厚22(n))、層20(1)乃至層20(n)のそれぞれが有する、一または複数の材料(材料21(1)乃至材料21(n))、層20(1)乃至層20(n)のそれぞれが有する、一または複数の材料の濃度比(濃度比23(1)乃至濃度比23(n))などである。以降では、膜厚22(1)乃至膜厚22(n)をまとめて膜厚22と表記する場合がある。また、材料21(1)乃至材料21(n)をまとめて材料21と表記する場合がある。また、濃度比23(1)乃至濃度比23(n)をまとめて濃度比23と表記する場合がある。
【0117】
入力データに含まれる濃度比23は、層内における重量比で記述されることが好ましい。例えば、材料Aと材料BがA:B=p:q(wt%)(p、およびqは、それぞれ0以上の実数である。)の重量比で混合して、1つの層が形成される場合、入力データに含まれる濃度比23は、p:qと記述するとよい。なお、1つの層が材料Aのみで構成される場合、入力データに含まれる濃度比23は、1:0、または、0:0と記述するとよい。また、例えば、3つの材料が混合する場合を想定して、入力データに含まれる濃度比23は、p:q:r(rは0以上の実数である。)と記述してもよい。
【0118】
なお、入力データに含まれる濃度比23は、重量比で記述される場合に限られず、モル濃度比で記述されてもよい。また、入力データに含まれる濃度比23は、層内における濃度比で記述される場合に限られず、共蒸着時の濃度比で記述されてもよい。また、入力データに含まれる濃度比23は、p:qのように比で記述する場合に限られず、q/pのように比率で記述されてもよい。
【0119】
膜厚22(1)乃至膜厚22(n)では、膜厚の単位が統一されていることが好ましい。膜厚の単位を統一することで、学習用データセット50に含まれるデータ量を削減することができる。よって、データの送受信、教師あり学習、推論などに費やす時間を低減することができる。
【0120】
上述したように、教師あり学習に用いる学習用データセットに含まれるデータは、数値化されていることが好ましい。膜厚22、および濃度比23は数値として入力されるため、特に変換することなく、入力データ52_1に含めることができる。
【0121】
一方、データIN1では、発光デバイスが有する有機化合物に関する情報は、構造式、SMILES(Simplified molecular input line entry specification syntax)表記で表記された分子構造(単に、分子構造と表記する場合がある。)、IUPACにより決められた化合物命名法による名称など、数値以外のデータとして入力されることが多い。よって、数値以外のデータとして入力される有機化合物に関する情報(例えば、分子構造)を、数値化することが好ましい。
【0122】
分子構造を数値化する手段として、例えば、当該分子構造で表される有機化合物の物性に置き換える方法がある。有機化合物の物性として、例えば、発光スペクトル、吸収スペクトル、透過スペクトル、反射スペクトル、S1準位、T1準位、酸化電位、還元電位、HOMO準位、LUMO準位、ガラス転移点、融点、結晶化温度、キャリア移動度などを挙げることができる。これらの物性は数値として取り扱うことができるが、測定やシミュレーションを行う必要があるため、学習用データセットを生成するのに大きな労力を要する。
【0123】
そこで、本発明の一態様では、材料21を特定する分子構造を、一定の方法で変換する。なお、当該一定の方法では、分子類似性を表現できればよい。分子類似性を表現する方法として、定量的構造活性相関(QSAR)、Fingerprints、グラフ構造などがよく知られている。例えば、分子構造を、線形表記法または行列表記法を用いて数値化することが好ましい。材料21を特定する分子構造を数値化することで学習用データとして用いることができる。
【0124】
なお、無機化合物の構造を数値化する場合、動径分布関数(RDF)、Orbital Field Matrix(OFM)などの記述子などを利用するとよい。
【0125】
[有機化合物の分子構造の数値化の例]
ここでは、有機化合物の分子構造の数値化(数式化)の一例について説明する。
【0126】
有機化合物に関する情報が、SMILES表記以外の、数値以外のデータとして入力される場合、はじめに、SMILES表記に変換すると好適である。SMILES表記は、有機化合物を連続した文字列として表記するため、コンピュータの扱うデータとして好ましい。また、SMILES表記と、後述するフィンガープリント法は、ともに線形表記法に分類され、相互変換しやすいため好ましい。
【0127】
分子構造の数値化には、オープンソースのケモインフォマティクスツールキットであるRDKitを利用することができる。RDKitでは、入力した分子構造のSMILES表記をフィンガープリント法によって数式データへ変換する(数値化する)ことができる。
【0128】
フィンガープリント法では、例えば
図7に示すように、分子構造の部分構造(フラグメント)を各ビットに割り振ることで分子構造を表し、対応する部分構造が分子中に存在すれば「1」、しなければ「0」がビットにセットされる。すなわち、フィンガープリント法を用いることで、分子構造の特徴を抽出した数式を得ることができる。また、一般的にフィンガープリント法で表された分子構造の式は数百から数万のビット長であり、扱いやすい大きさである。また、分子構造を0と1の数式で表すために、フィンガープリント法を用いることで、非常に高速な計算処理を実現することが可能となる。
【0129】
また、フィンガープリント法には多くの種類(ビット生成のアルゴリズムの違い、原子タイプや結合タイプ、芳香族性の条件を考慮したもの、ハッシュ関数を用いて動的にビット長を生成するものなど)が存在しており、各々特徴がある。
【0130】
図8A乃至
図8Dに、フィンガープリント法の種類の一例を示す。代表的なフィンガープリント法の種類としては、
図8Aに示すCircular型(起点となる原子を中心に、指定した半径までの周辺原子を部分構造とする)、
図8Bに示すPath-based型(起点となる原子から指定したパスの長さ(path length)までの原子を部分構造とする)、
図8Cに示すSubstructure keys型(ビット毎に部分構造が規定されている)、
図8Dに示すAtom pair型(分子中のすべての原子について生成させた原子ペアを部分構造とする)等がある。RDKitにはこれらの各型のフィンガープリントが実装されている。
【0131】
図9は実際に、ある有機化合物の分子構造をフィンガープリント法により数式として表した例である。このように、分子構造をいったんSMILES表記に変換してからフィンガープリントに変換することができる。
【0132】
なお、有機化合物の分子構造をフィンガープリント法で表現する際に、類似する構造を有する異なる有機化合物間で、得られる数式が同一となってしまう場合がある。上述したように、フィンガープリント法は、表記方法によっていくつかの種類が存在するが、同一となってしまう化合物の傾向は、
図10のCircular型(Morgan Fingerprint)、Path-based型(RDK Fingerprint)、Substructure keys型(Avalon Fingerprint)、Atom pair型(Hash atom pair)に示したように、表記方法によって異なっている。なお
図10では、それぞれの両矢印内の分子同士がそれぞれ同一の数式(表記)を示す。そのため、学習に用いるフィンガープリント法としては、その少なくとも1を用いて学習させる各有機化合物の分子構造を表記した際に、各有機化合物の表記が全て異なるフィンガープリント法を用いることが好ましい。
図10では、Atom pair型が異なる化合物間で重複なく表記することができることがわかるが、学習させる有機化合物の母集団によってはその他の表記方法でも重複なく表記可能である場合もある。
【0133】
そこで、有機化合物の分子構造をフィンガープリント法で記述する際に、複数の異なる種類のフィンガープリント法を用いることが好ましい。用いる種類は何種類でも構わないが、2種類または3種類程度がデータ量的にも扱いやすく好ましい。複数種類のフィンガープリント法を用いる場合、有機化合物の分子構造を、ある種類のフィンガープリント法により表記された数式の後ろに、他の種類のフィンガープリント法により表記された数式を繋げて記述してもよいし、一つの有機化合物に対してそれぞれ複数種類の異なる数式が存在するとして記述してもよい。
図11A、および
図11Bに、型の異なるフィンガープリントを複数用いて、有機化合物の分子構造を記述する方法の一例を示す。
【0134】
フィンガープリント法は部分構造の有無を記述する方法であり、分子構造全体の情報は失われる。しかしながら、型の異なるフィンガープリントを複数用いて分子構造を数式化すれば、それぞれのフィンガープリントの型で異なる部分構造が生成され、これらの部分構造の有無の情報から分子構造全体に関わる情報が補完されうる。あるフィンガープリントでは表現しきれない特徴が、発光デバイスの特性に大きく影響する場合、他のフィンガープリントによってそれが補完されるため、型の異なるフィンガープリントを複数用いて分子構造を記述する方法は有効である。
【0135】
なお、
図11Aに示すように、2種類のフィンガープリント法により表記を行う際は、Atom Pair型と、Circular型とを用いることが精度よく物性予測が可能であるため、好ましい構成である。
【0136】
また、
図11Bに示すように、3種類のフィンガープリント法を用いて表記を行う際は、Atom Pair型と、Circular型と、Substructure keys型とを用いることが精度よく物性予測が可能であるため、好ましい構成である。
【0137】
また、Circular型のフィンガープリント法を用いる場合は、半径rは3以上であることが好ましく、5以上であることがさらに好ましい。なお、半径rとは、起点となるある原子を0として、当該原子から連結して数えた原子の個数である。
【0138】
なお、用いるフィンガープリント法を選択する際には、先にも述べたように、各有機化合物の分子構造を表記した際に、各有機化合物の表記が全て異なるものを少なくとも一つ選ぶことが好ましい。
【0139】
フィンガープリントは、表現するビット長(ビット数)を大きくすることで、各有機化合物間で完全に表記が一致する記載が生成される可能性を低くすることができるが、ビット長を大きくしすぎてしまうと、計算コストやデータベースの管理コストが大きくなるというトレードオフが生じる。一方、複数のフィンガープリントを同時に用いて表現することで、あるフィンガープリント型で表記が完全一致となる複数の分子構造があっても、異なるフィンガープリント型を組み合わせることで、全体として表記の完全一致が生じない可能性がある。その結果、なるべく小さなビット長で、フィンガープリントによる表記が完全一致となる複数の有機化合物が生じない状態を生成できる。生成するフィンガープリントのビット長に特に制限はないが、計算コストや、データベースの管理コストを考慮すると、各分子量が2000程度までの分子であれば、フィンガープリントの型毎にビット長は4096以下、好ましくは2048以下、場合によっては1024以下でも、各有機化合物間で表記が完全一致する状態とならないフィンガープリントを生成することができる。
【0140】
また、それぞれのフィンガープリント型で生成するフィンガープリントのビット長は、その型の特徴や分子構造の全体を考慮して適宜調整すればよく、統一する必要はない。たとえば、ビット長をAtom Pair型では1024ビット、Circular型では2048ビットで表し、それらを連結するなどとしても良い。
【0141】
以上が、有機化合物の分子構造の数値化についての説明である。
【0142】
以上により、数値化されたデータを含む学習用データ51_1を生成することができる。数値化されたデータを含む学習用データ51_2乃至学習用データ51_mは、学習用データ51_1と同様の構成を有する。
【0143】
なお、k個(kは3以上、(n-1)以下の整数である。)の層からなる発光デバイスに関する情報を学習用データに含ませる場合、当該学習用データでは、材料21(k+1)乃至材料21(n)、膜厚22(k+1)乃至膜厚22(n)、および濃度比23(k+1)乃至濃度比23(n)に対して、ゼロを入力する(ゼロ埋めする)とよい。
【0144】
学習用データセットにおいて、nの値は指定しておくことが好ましい。nの値を固定しておくことで、入力層ILが有するニューロン(ユニット)の数を決定することができる。
【0145】
nは、5以上が好ましく、7以上がさらに好ましい。なお、nの上限については、特に限定はしないが、nの値が大きすぎると、入力層ILが有するニューロンの数が増え、教師あり学習や推論に費やす時間が増える恐れがある。よって、例えば、nは30以下とするとよい。
【0146】
また、入力データ52_1乃至入力データ52_mのそれぞれには、発光デバイス10の陽極または陰極である、層20(1)および層20(n)に関する情報を含めなくてもよい場合がある。このとき、学習用データセット50に含まれるデータ量が削減される。よって、データの送受信、教師あり学習、推論に費やす時間を低減することができる。
【0147】
図6Aでは、入力データ52_1乃至入力データ52_mにはそれぞれ、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mに関する情報が含まれる場合を示しているが、これに限られない。例えば、
図6Bに示すように、入力データ52_1乃至入力データ52_mにはそれぞれ、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mに関する情報と、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mの第1の特性のデータと、が含まれ、教師データ53_1乃至教師データ53_mにはそれぞれ、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mの第2の特性のデータが含まれてもよい。
【0148】
上記の場合、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mの第1の特性と、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mの第2の特性とは、異ならせる。例えば、発光デバイス10の第1の特性には、発光デバイス10の初期特性を用い、発光デバイス10の第2の特性には、発光デバイス10の信頼性を用いるとよい。発光デバイスの信頼性は、信頼性に影響する要因は多く、各要因は複雑に絡んでいるため、経験による予測が難しく、推測する対象として好適である。また、発光デバイス10の初期特性には、発光デバイスの作製条件、測定条件などの情報が間接的に含まれる。よって、入力データに発光デバイス10の第1の特性を追加することで、教師あり学習に当該情報が与えられ、発光デバイスの信頼性の予測の精度を向上させることができる。
【0149】
また、
図6Cでは、入力データ52_1乃至入力データ52_mにはそれぞれ、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mの構造に関する情報が含まれる場合を示しているが、これに限られない。例えば、
図6Dに示すように、入力データ52_1乃至入力データ52_mにはそれぞれ、発光デバイス10_1乃至発光デバイス10_mの構造に関する情報と、発光デバイスの作製条件に関する情報と、が含まれてもよい。例えば、入力データ52_1には、材料21(1)、膜厚22(1)、濃度比23(1)、材料21(1)の蒸着レート31(1)、材料21(1)の成膜温度32(1)などが含まれるとよい。
【0150】
なお、学習用データセット50は、発光色が同じまたは類似する発光デバイスのデータのみで構成されてもよい。別言すると、学習用データセット50は、発光色別に作成されてもよい。これにより、発光デバイスの特性の予測の精度を向上させることができる。また、学習用データセット50は、発光色に関わらず発光デバイスのデータで構成されてもよい。これにより、汎用性の高い、発光デバイスの特性の予測が可能となる。
【0151】
以上が、学習用データセットについての説明である。入力データと教師データとを用いて機械学習モデルを訓練することで、発光デバイスの特性を予測することができる。なお、発光デバイスの初期特性を予測する場合は、入力データに発光デバイスの構造に関する情報を含め、教師データとして発光デバイスの初期特性を与えるとよい。
【0152】
<<特性の予測に用いるデータ>>
ここでは、特性の予測に用いるデータについて説明する。
【0153】
特性の予測に用いるデータは、
図1Aおよび
図1Bに示す処理部102により生成される。処理部102に入力されるデータIN2には、少なくとも発光デバイスの構造に関する情報が含まれる。また、データIN2には、発光デバイスの特性などのデータが含まれる場合がある。
【0154】
なお、特性の予測に用いるデータは、上述した学習用データの入力データと同様の構成を有するとよい。例えば、学習用データの入力データに、発光デバイスの構造に関する情報が含まれる場合、特性の予測に用いるデータには、発光デバイスの構造に関する情報が含まれるとよい。また、例えば、学習用データの入力データに、発光デバイスの構造に関する情報と、発光デバイスの特性のデータとが含まれる場合、特性の予測に用いるデータには、発光デバイスの構造に関する情報と、発光デバイスの特性のデータとが含まれるとよい。
【0155】
特性の予測に用いるデータとして、具体的には、膜厚22(1)乃至膜厚22(n)、材料21(1)乃至材料21(n)、濃度比23(1)乃至濃度比23(n)などである。
【0156】
以上が、特性の予測に用いるデータについての説明である。
【0157】
以上より、本発明の一態様は、発光デバイスの特性を予測する方法を提供することができる。また、本発明の一態様は、発光デバイスの特性を予測する特性予測システムを提供することができる。
【0158】
本発明の一態様により、発光デバイスに含まれる有機化合物の物性などを用いずに、発光デバイスの特性を予測することができる。また、過去の実験データを用いることで、発光デバイスの構造の最適化を仮想スクリーニングによって高速化することができる。これは人がデータを閲覧し内挿的でなかったとしても、機械学習モデルの非線形もしくは高次な表現によって内挿的になる場合がある。また、機械学習モデルが得た表現を断片的に切り出し、調べることで従来では気付かなかった法則性を知ることができる。
【0159】
本実施の形態は、その一部を適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0160】
DI:データ、DS:学習用データセット、HL:隠れ層、IL:入力層、IN1:データ、IN2:データ、OL:出力層、OUT:データ、10:発光デバイス、10_1:発光デバイス、10_m:発光デバイス、20:層、21:材料、22:膜厚、23:濃度比、25:中間層、31:蒸着レート、32:成膜温度、50:学習用データセット、51_1:学習用データ、51_2:学習用データ、51_m:学習用データ、52_1:入力データ、52_m:入力データ、53_1:教師データ、53_m:教師データ、100:特性予測システム、101:入力部、102:処理部、103:演算部、104:出力部、105:記憶部