(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】挿入装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20241028BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/1486
(21)【出願番号】P 2021542694
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020030089
(87)【国際公開番号】W WO2021039335
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019157214
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 毅
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500064(JP,A)
【文献】特表2016-507265(JP,A)
【文献】特表2005-520648(JP,A)
【文献】特表2005-500196(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008897(WO,A1)
【文献】特開平07-275227(JP,A)
【文献】特開2012-205676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61M 25/06
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具と、
前記医療器具と共に生体内に挿入される針部と、
前記針部の挿入方向において、前記針部に対して相対的に移動可能な移動部と、
を備え、
前記針部は、前記移動部を収容可能な収容空間を内部に区画し、
前記収容空間を区画する前記針部の側壁部には、開口部が形成されており、
前記医療器具は、前記側壁部のうち前記開口部を区画する壁面部に係留される係留部
と、前記係留部より基端側の延在部と、を備え、
前記係留部の一部は、前記開口部から前記収容空間に入り込み、前記収容空間
における前記移動部の移動経路内に位置
し、
前記延在部は、前記側壁部の外周面に沿って配置されており、
前記移動部は、前記針部に対して前記挿入方向に移動することにより、前記医療器具の前記係留部と接触し、更に前記針部に対して前記挿入方向に移動することにより、前記係留部を、前記針部に対して前記挿入方向に相対的に移動させることができ、
前記係留部は、前記挿入方向に向かって、前記針部に対して相対的に移動されると、前記係留部の少なくとも一部が、前記壁面部に沿って前記側壁部の前記外周面よりも径方向の外側に移動し、前記側壁部の前記外周面よりも前記径方向の外側に突出する、挿入装置。
【請求項2】
前記側壁部は、前記壁面部に係留されている状態の前記係留部と当接し、前記係留部の前記挿入方向とは反対の抜去方向への移動を規制する規制部を有する、請求項1に記載の挿入装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記係留部を前記挿入方向側から前記抜去方向側に差し込み可能な溝の一部として構成されている、請求項2に記載の挿入装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記壁面部の前記挿入方向側の部分が、前記挿入方向に向かうにつれて、前記側壁部の
前記外周面に近づくように、形成されている、請求項2又は3に記載の挿入装置。
【請求項5】
前記係留部は、前記医療器具の前記挿入方向側の端部に設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の挿入装置。
【請求項6】
前記針部は、前記側壁部の
前記外周面の少なくとも一部に、前記医療器具の少なくとも一部を収容する、前記挿入方向に沿って延在する収容溝を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の挿入装置。
【請求項7】
前記医療器具の
前記延在部は、前記側壁部の
前記外周面に沿って螺旋状に巻かれている、請求項1から5のいずれか一項に記載の挿入装置。
【請求項8】
前記針部及び前記移動部の前記針部の長手方向以外の相対的な移動を規制する規制機構を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の挿入装置。
【請求項9】
前記係留部は、生分解性材料により構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者等の被測定者の生体内にセンサ等の医療器具を埋め込む場合がある。一例として、被測定者の生体内にセンサを埋め込み、被測定者の血液中又は体液中のアナライト(例えば、グルコース、pH、コレステロール、たんぱく質等)をモニタリングする。この場合、被測定者の皮膚を貫通してセンサを迅速かつ容易に生体内に埋め込むために挿入装置が使用される(特許文献1参照)。特許文献1に記載の挿入装置では、針部と共にセンサを生体内に挿入し、センサを留置して針部のみを生体外に抜去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、センサを生体内に埋め込むために、例えば粘着剤を用いて挿入部材と医療器具とを接着している。この状態で、挿入部材ごと医療器具を生体内に挿入し、その後、挿入部材を生体外に抜去することにより接着部を破壊して、医療器具を生体内に留置させることができる。しかしながら、この方法によれば、医療器具を生体内の所望の位置に留置できるか否かが、接着性能に依存する。例えば接着が弱すぎると、医療器具を所望の位置に配置させる前に医療器具が挿入部材から外れ、医療器具を生体内の所望の位置に留置できなくなる。反対に、接着が強すぎると、医療器具が挿入部材から剥がれにくくなり、この場合も、医療器具を生体内の所望の位置に留置できなくなる。
【0005】
本開示は、医療器具を生体内の所望の深さに留置しやすい挿入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様としての挿入装置は、医療器具と、前記医療器具と共に生体内に挿入される針部と、前記針部の挿入方向において、前記針部に対して相対的に移動可能な移動部と、を備え、前記針部は、前記移動部を収容可能な収容空間を内部に区画し、前記収容空間を区画する前記針部の側壁部には、開口部が形成されており、前記医療器具は、前記側壁部のうち前記開口部を区画する壁面部に係留される係留部を備え、前記係留部の一部は、前記開口部から前記収容空間に入り込み、前記収容空間おける前記移動部の移動経路内に位置する。
【0007】
本開示の1つの実施形態として、前記側壁部は、前記壁面部に係留されている状態の前記係留部と当接し、前記係留部の前記挿入方向とは反対の抜去方向への移動を規制する規制部を有する。
【0008】
本開示の1つの実施形態として、前記規制部は、前記係留部を前記挿入方向側から前記抜去方向側に差し込み可能な溝の一部として構成されている。
【0009】
本開示の1つの実施形態として、前記開口部は、前記壁面部の前記挿入方向側の部分が、前記挿入方向に向かうにつれて、前記側壁部の外周面に近づくように、形成されている。
【0010】
本開示の1つの実施形態として、前記係留部は、前記医療器具の前記挿入方向側の端部に設けられている。
【0011】
本開示の1つの実施形態として、前記針部は、前記側壁部の少なくとも一部に、前記医療器具の少なくとも一部を収容する、前記挿入方向に沿って延在する収容溝を有する。
【0012】
本開示の1つの実施形態として、前記医療器具の少なくとも一部は、前記側壁部の外周面に沿って螺旋状に巻かれている。
【0013】
本開示の1つの実施形態として、前記針部及び前記移動部の前記針部の長手方向以外の相対的な移動を規制する規制機構を備える。
【0014】
本開示の1つの実施形態として、前記係留部は、生分解性材料により構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、医療器具を生体内の所望の深さに留置しやすい挿入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の第1実施形態としての挿入装置を示す図であり、針部が待機位置にある状態を示す図である。
【
図2】
図1に示す挿入装置の針部が待機位置から挿入位置に移動する途中の状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す挿入装置の針部が挿入位置にある状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す挿入装置の針部が挿入位置から生体外へと抜去された状態を示す図である。
【
図5】
図1に示す状態の挿入装置における、針部、移動部、及び、医療器具を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す針部、移動部及び医療器具を示す側面図である。
【
図7A】
図5のI-I断面図であり、針部が待機位置にある状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
【
図7B】
図7Aと同じ断面視で、針部が待機位置から挿入位置に移動する途中の状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
【
図7C】
図7Aと同じ断面視で、針部が挿入位置にある状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
【
図7D】
図7Aと同じ断面視で、針部が挿入位置で医療器具を留置した後にハウジング内に戻る途中の状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
【
図9】一変形例に係る挿入装置の
図8と同じ位置での断面図である。
【
図10】本開示の第2実施形態としての挿入装置における、針部材の針部、移動部材の移動部、及び、医療器具を示す斜視図である。
【
図11A】
図10のIII-III断面図であり、針部が待機位置にある状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
【
図11B】
図11Aと同じ断面視で、針部が待機位置から挿入位置に移動する途中の状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
【
図11C】
図11Aと同じ断面視で、針部が挿入位置にある状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
【
図11D】
図11Aと同じ断面視で、針部が挿入位置で医療器具を留置した後にハウジング内に戻る途中の状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通の構成部には、同一の符号を付している。
【0018】
(第1実施形態)
図1~
図4は、本開示に係る挿入装置の一実施形態としての挿入装置1を示す図である。また、詳細は後述するが、
図1~
図4それぞれは、挿入装置1を用いて生体内に医療器具100を挿入及び留置する際の、挿入装置1の動作の概要を示している。
図1~
図4に示す挿入装置1は、医療器具100としてのセンサ100aを生体内に挿入することができる。以下、本実施形態では、医療器具100としてのセンサ100aを生体内に挿入する挿入装置1を例示説明するが、挿入装置1により生体内に挿入される医療器具100はセンサ100aに限られない。したがって、センサ100a以外のカニューレ等の管部材を挿入する挿入装置であってもよい。
【0019】
図1~
図4に示すように、挿入装置1は、針部材2と、移動部材3と、ハウジング4と、付勢部材5と、制御装置6と、医療器具100としてのセンサ100aと、を備える。
図1~
図4に示すように、本実施形態の針部材2は、針部11と、保持部12と、を備える。本実施形態の移動部材3は、移動部21と、本体部22と、を備える。
【0020】
まず、
図1~
図4を参照して、本実施形態の挿入装置1の使用方法について説明する。本実施形態の挿入装置1は、上述したようにセンサ100aを生体内に挿入・留置するために用いることができる。挿入装置1は、
図1に示す状態で生体表面BS上に配置される。すなわち、
図1は、針部材2の針部11、及び、センサ100aが、生体内に挿入される前の状態を示している。その後、医療従事者等の操作者が挿入装置1を操作することにより、針部材2の針部11、及び、センサ100aが、生体内に挿入される(
図2、
図3参照)。
図2は、挿入装置1により、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入している途中の状態を示す図である。
図3は、針部11及びセンサ100aが、挿入装置1により挿入可能な生体内の最も深い位置まで到達している状態を示す図である。次に、
図4に示すように、センサ100aを生体内に残した状態で、針部材2の針部11が生体外に抜去される。このようにすることで、挿入装置1により、センサ100aを生体内に挿入及び留置することができる。以下、説明の便宜上、針部11がハウジング4内に収容されている
図1の針部11の位置を「針部11の待機位置」と記載する。また、説明の便宜上、針部11がハウジング4から最も突出する
図3の針部11の位置を「針部11の挿入位置」と記載する。
【0021】
生体内に留置されるセンサ100aは、被計測物質(アナライト)を検出し、検出結果の情報を例えば制御装置6に送信する。制御装置6は、センサ100aと有線接続されるとともに、センサ100aと共に生体表面BS上に留置される。制御装置6は、プロセッサやメモリ、電池等により構成される。
図1~
図4に示す本実施形態のセンサ100aは、検出結果の情報を制御装置6に送信する。センサ100aを制御装置6とともに使用することで、被計測物質の濃度に応じて信号を検出できる。検出信号は、制御装置6によって信号処理されて、被測定者のスマートフォンや専用端末へ送信される。被測定者や使用者は、スマートフォンや専用端末の画面に表示される被測定物質の測定結果を経時的に確認することができる。センサ100aが被測定者に装着されている期間は、例えば数時間、数日、1週間、1カ月など、医師等の判断で適宜決定される。被計測物質は特に限定されないが、センサ100aの検出部100bの選択によって、血液中または間質液中のグルコース、酸素、pH、乳酸等を測定することができる。なお、制御装置6は、センサ100aの挿入完了後に、別体として設けたトランスミッタ(図示しない)に接続させてもよい。この場合、制御装置6ではなくトランスミッタがメモリや電池等を有する構成としてもよい。また、トランスミッタはセンサ100aよりも長期間使用する構成でもよい。
【0022】
以下、挿入装置1の各部材・各部位の詳細を説明する。
【0023】
図5は、
図1に示す状態の挿入装置1における、針部材2の針部11、移動部材3の移動部21、及び、センサ100aを示す斜視図である。
【0024】
以下、本明細書では、針部材2の針部11の生体内に挿入される側の端を「針部11の先端」と記載する。また、針部材2の針部11の先端と反対側の端を「針部11の基端」と記載する。更に、針部材2の針部11の長手方向Aのうち基端から先端に向かう方向を「挿入方向A1」又は「先端側」と記載する。更に、針部材2の針部11の長手方向Aのうち先端から基端に向かう方向を「抜去方向A2」又は「基端側」と記載する。針部11の径方向Bとは、針部11の長手方向Aと直交する平面において、針部11を中心とした針部11周りの円を定義した場合の当該円の径方向を意味する。針部材2の針部11の中心軸から、外側に向かう方向を「径方向Bの外側」と記載する。針部材2の針部11周りの円を定義した場合の当該円の円周から針部11の中心軸に向かう方向を「径方向Bの内側」と記載する。なお、当該円の中心は、円筒形状の針部11の短軸方向の断面における中心をいう。
【0025】
また、本実施形態では、詳細については後述するが、針部材2の径方向Bの外側のうち、針部11において医療器具100の一部が載置される方向を上、その反対方向を下という。「針部11の側面視」とは、針部材2の長手方向Aの中心軸と、針部材2の先端(刃先26)とを通る断面を、針部材2の先端を下側に置いた場合に、該断面に直交する方向から見た場合をいう。側面視においては、径方向Bにおいて、針部材2の先端側が位置する方向(つまり下方向)をB2方向、針部材2の先端側が位置しない方向(つまり上方向)をB1方向とする。すなわち、長手方向Aと、B1方向及びB2方向とは、それぞれ直交する。
【0026】
図6は、
図5に示す針部11及びセンサ100aの側面図である。
図7Aは、
図5のI-I断面図(すなわち、側面視の図)である。
図7Aでは、
図1に示す挿入装置1の針部11が待機位置にある状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す。
【0027】
図5~
図7Aに示すように、針部11は、移動部21を収容可能な収容空間13を内部に区画している。
図5及び
図6に示すように、本実施形態の針部11は、収容空間13を区画する側壁部15を備える。
【0028】
側壁部15は長手方向Aに延在している。また、本実施形態の側壁部15は、刃面が形成されている先端部分を除いて、全体が概略円筒形状に形成されている管体である。収容空間13は、円筒形状の側壁部15の内側の中空部分である。
【0029】
図5~
図7Aに示すように、側壁部15の先端には刃先26が形成されている。本実施形態の側壁部15では、側壁部15の下側の先端が刃先26を構成する。より具体的には、本実施形態の側壁部15では、長手方向Aに対して傾斜する複数(本実施形態では3つ)の斜面により構成される刃面が形成されている。ただし、側壁部15の刃先26は、この構成に限られない。
【0030】
本実施形態において、側壁部15の内径は、例えば、0.2mm~0.6mmとすることができる。側壁部15のうち生体内に挿入される長さは、例えば、1mm~10mm、好ましくは3~6mmとすることができる。また、側壁部15の厚さは、例えば、0.02mm~0.15mmの範囲から設定される。
【0031】
針部11の側壁部15において、収容空間13に貫通する開口部16が形成されている。本実施形態では、開口部16は、側壁部15の上側に設けられている。本実施形態の開口部16は、側壁部15の中心軸線を通り上下方向に平行な長手方向Aに沿う断面に対して、左右対称に形成されている。側壁部15のうち開口部16を区画する壁面部17には、後述する医療器具100としてのセンサ100aの係留部101が係留される。針部11は、センサ100aの係留部101が壁面部17に係留された状態で、センサ100aと共に生体内に挿入される。本実施形態の係留部101は、壁面部17に係合する鉤部により構成される。本実施形態の係留部101としての鉤部は、壁面部17の一部に引っ掛かることで、係留される。
【0032】
側壁部15は、壁面部17に係留されている状態の係留部101と当接し、係留部101の抜去方向A2への移動を規制する規制部18を有する。本実施形態では、規制部18は、針部11の側面視において、係留部101を挿入方向A1側から抜去方向A2側に差し込み可能な溝19の一部として構成されている。換言すれば、壁面部17には、抜去方向A2に向かって窪む溝19が形成されている。センサ100aの係留部101は、上述の溝19に嵌合する。本実施形態の規制部18は、溝19の溝底16bにより構成されている。この場合、針部11が生体内に挿入される前に、係留部101を溝19に差し込み、この状態で、針部11をセンサ100aと共に生体内に挿入する。このようにすることで、規制部18により、センサ100aの抜去方向A2への移動が規制される。そのため、針部11を生体内に挿入するときに、より確実に針部11と共にセンサ100aを生体内に挿入することができる。また、本実施形態のように、係留部101を、溝19に差し込むことにより、側壁部15において、センサ100aを安定して保持することができる。
【0033】
規制部18は、必ずしも上述した溝19の一部により構成されていなくてもよい。規制部18は、係留部101の抜去方向A2への移動を規制できる任意の態様で実現することができる。ただし、規制部18は、本実施形態のように、溝19の溝底16bにより構成されることが好ましい。このようにすることで、簡易な構成で、係留部101の抜去方向A2への移動を規制でき、かつ、係留部101の径方向Bへの移動についても規制できる。すなわち、溝19を設ける簡易な構成で、針部11が生体内の所定の位置に挿入されるまで、係留部101を壁面部17に係留できる。
【0034】
更に、
図6に示すように、本実施形態の開口部16は、針部11の側面視において、壁面部17の挿入方向A1側の部分が、挿入方向A1に向かうにつれて、側壁部15の外周面に近づくように、形成されている。つまり、本実施形態では、
図6に示す側面視の壁面部17において、溝底16bから挿入方向A1側の端部16aまでの部分が、挿入方向A1に向かうにつれて、B1方向に推移するように凹形状に湾曲して形成されている。ここで、挿入方向A1側の端部16aは、壁面部17のうち最も挿入方向A1側の位置を言う。
【0035】
このように、規制部18としての溝底16bから、挿入方向A1側の端部16aに向かって、壁面部17が側壁部15の外周面に近づくように形成される。これにより、係留部101が、針部11に対して相対的に挿入方向A1側に移動したときに、係留部101が針部11の外周面よりも径方向Bの外側に抜け出しやすくなる。この動作の詳細は後述する。
【0036】
針部11の材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、マグネシウム合金等の金属材料を用いることができる。針部11は、これらの金属材料から形成された管状部材から製造される。針部11の製造方法としては、塑性加工があげられ、より具体的には、引き抜き管の切削加工、平板からのプレス加工があげられる。このようにして得られた管状部材を、レーザー加工により、規制部18や刃面を形成し、針部11とする。レーザー加工を行うと、規制部18や刃面の加工を連続して行える利点がある。
【0037】
図5に示すように、センサ100aは、係留部101と、延在部102と、を備える。
図5及び
図7Aに示すように、係留部101は、延在部102の先端に設けられている。検出部100bは、係留部101に設けられる。
【0038】
係留部101は、側壁部15のうち開口部16を区画する壁面部17に係留される部位である。係留部101は、壁面部17に係留されている状態において、少なくとも一部が収容空間13内に位置する。より具体的には、係留部101の一部は、壁面部17に係留されている状態において、開口部16から収容空間13に入り込み、収容空間13における移動部21の移動経路内に位置している。本実施形態の係留部101は、延在部102よりも左右方向に突出している。本実施形態では、検出部100bは、係留部101が壁面部17に係留した状態において、円筒形状の針部11の収容空間13内に配置される。係留部101の左右方向の長さWは、円筒形状の針部11の側壁部15の内径より大きいことが好ましい。長さWが側壁部15の内径より大きいことで、係留部101の左右方向の両端部が安定して壁面部17に係留しやすくなる。また、係留部101の左右方向の長さWは、側壁部15の外径以下であることが好ましい。長さWが側壁部15の外径以下であることで、側壁部15の左右の端部が、側壁部15の径方向外側に突出しない。そのため、針部11を生体内に挿入する際に、係留部101の両端部が生体と接触しにくくなり、針部11を生体内に挿入しやすくなる。また、針部11の挿入時の患者の痛みを軽減できる。
【0039】
ただし、係留部101の形状及び大きさは、上述した形状及び大きさに限られず、係留される壁面部17の形状及び大きさ等に応じて、適宜定められてよい。
【0040】
また、検出部100bは、係留部101に設けられていなくてもよい。例えば、検出部100bと、係留部101とは、分離して設けられていてもよい。しかしながら、検出部100bをより確実に所望の深さに挿入させるためには、検出部100bを係留部101に設けることが好ましい。本実施形態においては、係留部101の一部に検出部100bを設ける。検出部100bは、センサ100aにおいて、開口部16の開口方向側(側面視におけるB1方向側)に設けられる。検出部100bは、針部11および移動部21に接触しない構成とするのがよい。
【0041】
本実施形態では、
図5~
図7Aに示すように、係留部101は、センサ100aの挿入方向A1側の端部に設けられている。これにより、センサ100aの先端側が針部11の壁面部17に係留されるため、センサ100aの先端の留置位置を定めやすくなる。センサ100aの生体内への挿入が妨げられない限り、係留部101は、センサ100aの先端側に設けられなくてもよい。
【0042】
係留部101は、生分解性材料により構成されていることが好ましい。係留部101が生分解性材料で構成されていることにより、センサ100aを生体内に挿入した後、係留部101が生体内で分解して消失する。そのため、センサ100aを生体内から抜去する際に、係留部101が抜去の妨げとなりにくい。生分解性材料としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン共重合体、ポリオルソエステル、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリリンゴ酸、ポリα-アミノ酸、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ヘパラン硫酸、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ポリペプチド、キチン、及びキトサン等を用いることができる。ここで、係留部101が生分解性材料により構成される場合は、センサ100aの検出部100bは延在部102に設ければよい。
【0043】
保持部12は、針部11の基端部を保持している。本実施形態の保持部12は、本体部51と、係止爪部52と、を備える。本体部51は、長手方向Aに貫通する保持開口51aを備える。針部11の基端部は、保持開口51aに内挿されている状態で、本体部51に固定されている。係止爪部52は、本体部51から抜去方向A2に向かって突出している。係止爪部52は、針部11の径方向Bにおいて、針部11の外側に位置している。また、本実施形態の針部材2では、針部11の径方向B外側で、針部11の周囲を囲むように複数の係止爪部52が設けられている。係止爪部52は、本体部51から突設されている延在部53と、この延在部53の抜去方向A2の端部に設けられた係合凸部54と、を備える。延在部53は、本体部51と連続する位置を支点として、長手方向Aと直交する方向に弾性変形可能である。より具体的には、本実施形態の延在部53は、本体部51と連続する位置を支点として、針部11の径方向Bに弾性変形可能である。係合凸部54は、延在部53の端部から、長手方向Aと直交する方向に突出している。係合凸部54の抜去方向A2に位置する上面54aは、挿入方向A1に向かうにつれて径方向Bの内側に延在するように、長手方向Aに対して傾斜している。この係合凸部54の上面54aは、移動部材3の後述する本体部22と係合することで径方向Bの外側に押圧される。この詳細は後述する。
【0044】
保持部12の材料としては、例えば樹脂材料が挙げられる。この樹脂材料としては、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、熱可塑性ポリウレタン、ポリメチレンメタクリレート、ポリオキシエチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の射出成形で用いられる熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0045】
上述したように、本実施形態の移動部材3は、移動部21と、本体部22と、を備える。
【0046】
移動部21は、針部11の挿入方向A1において、収容空間13内を針部11に対して相対的に移動可能である。また、移動部21は、針部11に対して挿入方向A1に移動することにより、センサ100aの係留部101と接触し、更に針部11に対して挿入方向A1に移動することにより、係留部101を、針部11に対して挿入方向A1に相対的に移動させる。係留部101は、挿入方向A1に向かって、針部11に対して相対的に移動されると、溝19から脱落し、壁面部17に沿って針部11の上側に移動し、針部11の外周面よりも径方向Bの外側に抜け出る。このようにして、センサ100aが針部11から脱離する。
【0047】
移動部21は、針部11の収容空間13内の移動経路を挿入方向A1に移動可能な形状を有している。本実施形態では、移動部21は、収容空間13において、針部11の側壁部15の内周面に沿って延在する部材として構成されている。換言すれば、本実施形態の移動部21は、側壁部15の内部の収容空間13全てを移動経路として利用している。具体的には、本実施形態の移動部21は、
図5~
図7Aに示すように、針部11の長手方向Aに沿って延在する、概略中空の円筒形状に構成されている。移動部21は、例えば概略中実の円柱形状に形成されていてもよい。また、移動部21は、収容空間13の一部のみを挿入方向A1への移動経路として利用する構成であってもよい。
【0048】
本実施形態では、移動部21は、
図5~
図7Aに示すように、挿入方向A1側の端部に切り欠き23が設けられている。具体的には、本実施形態の移動部21には、挿入方向A1側の端部の一部が、長手方向Aにおける所定の長さにわたって切り欠かれることにより、切り欠き23が設けられている。切り欠き23が設けられることにより、移動部21が挿入方向A1側に移動したときに、移動部21の挿入方向A1側の端面24が、係留部101から抜去方向A2に延びる延在部102に接触することなく、係留部101に接触できる。切り欠き23の長手方向Aにおける長さxは、端面24が係留部101に接触したときに、移動部21の切り欠き端面23aが、センサ100aに接触しない長さとする。切り欠き23のB1方向の長さyは、側面視において移動部21の外周面から係留部101までの長さよりも短い。なお、
図7Aや
図7Bに図示する範囲において、延在部102のうち針部11に接触していない部分の長さzは、z
2≧x
2+y
2の関係で表される。移動部21の端面24が係留部101に接触した後、移動部21が針部11に対して相対的に更に挿入方向A1側に移動すると、係留部101が端面24に押され、針部11に対して相対的に挿入方向A1側に移動する。このとき、係留部101は、その少なくとも一部が、壁面部17に沿って針部11の外周面よりも径方向Bの外側に移動するように構成されている。従って、係留部101は、係留部101が端面24に押された状態で、少なくとも一部が針部11の外周面よりも径方向Bの外側に突出するような大きさで構成されている。これにより、針部11を生体外に抜去するときに、針部11の外周面よりも径方向Bの外側に突出した係留部101の少なくとも一部が、生体に引っ掛かり、開口部16から外部に脱離して、針部11が生体外に抜去されるとともに、係留部101は生体内に留置される。このように、移動部21は、切り欠き23を有することにより、壁面部17に係留した係留部101が挿入方向A1側に押し出されやすくなる。
【0049】
移動部21の材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、マグネシウム合金等の金属材料を用いることができる。移動部21は、金属材料からなる管状体を加工することで形成することができる。移動部21は、針部11と同じ方法で製造できる。
【0050】
図8は、
図6のII-II断面図である。
図8に示すように、本実施形態の針部11は、側壁部15の内周面の下部において、収容空間13に向かって突出するリブ44を有する。リブ44は、移動部21における受け溝25と嵌合し、受け溝25と共に規制機構80を構成する。リブ44は針部11の長手方向Aの少なくとも一部に設ければよい。
【0051】
なお、規制機構80は、ここで示した例に限られず、針部11及び移動部21の長手方向A以外の相対的な移動を規制する構成であれば、具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0052】
本体部22は、移動部21の抜去方向A2の端部を保持している。本実施形態の本体部22は、ハウジング4内で、長手方向Aに移動可能に取り付けられている。本実施形態の本体部22は、その抜去方向A2の上面がハウジング4から外部に露出している。そのため、挿入装置1の操作者は、ハウジング4から露出する本体部22を挿入方向A1に押圧することで、本体部22を挿入方向A1に移動させることができる。これにより、本体部22に取り付けられている移動部21も、針部11の収容空間13内を挿入方向A1に移動することができる。つまり、本体部22は、挿入装置1の操作部を兼ねる。
【0053】
本体部22は、針部材2の保持部12の係止爪部52を針部11の径方向Bの外側に押圧する係合部61を備える。また、本体部22は、係合部61の抜去方向A2に隣接する位置に、係止爪部52の係合凸部54が嵌合可能な係合凹部62を区画している。係合凹部62は、係合部61よりも径方向Bの内側に窪んでいる。
図1~
図4に示すように、係合部61は、例えば、円盤部により構成される。また、
図1~
図4に示すように、係合凹部62は、例えば、係合部61としての円盤部の抜去方向A2に隣接し、円盤部の外縁よりも径方向Bの内側に向かって窪む環状溝により構成される。但し、係合部61及び係合凹部62の構成は、本実施形態で示す形状・位置に限られない。
【0054】
図1~
図3に示すように、本実施形態の挿入装置1は、本体部22を挿入方向A1に押し込むことにより、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入することができる。その際に、本体部22の係合部61は、係止爪部52の係合凸部54の抜去方向A2に位置する上面54aと係合し、係合凸部54を径方向Bの外側に押圧する。これにより、
図2に示すように、係止爪部52の延在部53は、径方向Bの外側に弾性変形する。つまり、針部11の径方向Bの外側の周囲に位置する複数の係止爪部52は、径方向Bの外側に離間するように弾性変形する。そのため、
図3に示すように、本体部22の係合部61は、係合凸部54の上面54aと摺動しながら係合凸部54を挿入方向A1に乗り越えることができる。
【0055】
図3に示すように、本体部22の係合部61が、針部材2の係合凸部54を乗り越えると、この係合凸部54は、本体部22の係合凹部62に嵌合する。これにより、移動部材3の本体部22と、針部材2の保持部12と、が長手方向Aにおいて干渉する。つまり、針部材2及び移動部材3は、長手方向Aにおいて一体となって移動可能となる。具体的には、移動部材3を抜去方向A2に移動させると、移動部材3の本体部22の係合凹部62の挿入方向A1の内面が、針部材2の保持部12の係合凸部54の挿入方向A1の外面と当接する。これにより、針部材2及び移動部材3を一体化させ、両者を共に抜去方向A2に移動させることができる。そのため、
図4に示すように、針部11を生体外に抜去する際は、針部11と共に、針部11内の移動部21を生体外に抜去することができる。
【0056】
本体部22の材料としては、例えば樹脂材料が挙げられる。この樹脂材料としては、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、熱可塑性ポリウレタン、ポリメチレンメタクリレート、ポリオキシエチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の射出成形で用いられる熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0057】
ハウジング4は、針部材2、移動部材3、付勢部材5、制御装置6、及び、後述するセンサ100a、を覆う外装部材である。
図1~
図4に示すように、本実施形態のハウジング4は、針部11が待機位置(
図1参照)にある状態で、針部材2、移動部材3、付勢部材5、制御装置6、及び、後述するセンサ100aの径方向Bの周囲を覆う筒状部材71と、この筒状部材71の挿入方向A1の端面を覆うベースプレート72と、を備える。ベースプレート72は、筒状部材71に対して脱着可能である。
【0058】
ベースプレート72のうち挿入方向A1の面は、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入する際に生体表面BSに当接させる当接面72aを構成する。ベースプレート72には、長手方向Aに貫通する貫通孔74が形成されている。待機位置(
図1参照)にある針部11が挿入位置(
図3参照)に移動する際に、針部11は貫通孔74を通じて当接面72aから挿入方向A1に突出する。当接面72aには、生体表面BSに接着するための貼付部が設けられる。
【0059】
ハウジング4の構成は特に限定されない。本実施形態では、針部材2及び移動部材3がハウジング4に対して長手方向Aに移動可能に取り付けられているが、ハウジング4とは別の部材に移動可能に取り付けられていてもよい。
【0060】
更に、本実施形態の挿入装置1ではハウジング4を備えるが、ハウジング4を備えない構成であってもよい。但し、本実施形態のハウジング4のように、挿入装置1は、医療従事者や患者等が誤って針部11に触れることを抑制するため、待機位置にある針部11の径方向Bの外側の周囲を少なくとも覆う部材を備えることが好ましい。
【0061】
また、本実施形態のハウジング4は、筒状部材71及びベースプレート72が脱着可能な構成であるが、この構成に限られず、両者が一体で形成されていてもよい。但し、両者を脱着可能とすることで、生体表面BS上に留置される部分の大きさを小さくし易く、被測定者の負担を軽減できる。
【0062】
ハウジング4の材料としては、例えば樹脂材料が挙げられる。この樹脂材料としては、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、熱可塑性ポリウレタン、ポリメチレンメタクリレート、ポリオキシエチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の射出成形で用いられる熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0063】
本実施形態の付勢部材5は、長手方向Aにおいて弾性変形可能である。本実施形態の付勢部材5は、長手方向Aに弾性変形するコイルバネである。付勢部材5としてのコイルバネは、針部材2の保持部12と、ハウジング4のベースプレート72と、の間に配置されている。したがって、本実施形態の付勢部材5としてのコイルバネは、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動することで圧縮変形する。また、針部11が挿入位置(
図3参照)にある状態で付勢部材5としてのコイルバネの復元力を解放することで、針部11を挿入位置(
図3参照)から抜去方向A2に移動させることができる。
【0064】
したがって、本実施形態の挿入装置1では、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入する際に、上述の針部材2及び移動部材3を、付勢部材5としてのコイルバネの復元力に抗して挿入方向A1に移動させる。これにより、
図2、
図3に示すように、針部材2及び移動部材3が挿入方向A1に移動し、針部11及びセンサ100aが生体内に挿入される。そして、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入した後に、針部材2及び移動部材3に付加されていた挿入方向A1の押圧力を解除することで、付勢部材5としてのコイルバネの復元力により、針部材2及び移動部材3が抜去方向A2に移動する。これにより、センサ100aを生体内に残した状態で針部11を生体外に抜去することができる。本実施形態では、付勢部材5としてのコイルバネの復元力により、針部11は挿入位置(
図3参照)から再びハウジング4内に収容される位置(例えば
図1と同じ待機位置)に戻る(
図4参照)。
【0065】
上述したように、本実施形態の付勢部材5はコイルバネにより構成されているが、例えば他の弾性部材を用いてもよく、コイルバネに限られない。また、挿入装置1は付勢部材5を備えない構成であってもよい。
【0066】
制御装置6は、センサ100aと動作可能に接続する。そのため、制御装置6は、生体内に留置されるセンサ100aから、センサ100aの検出情報を受信することができる。また、上述したように、制御装置6は、センサ100aから受信した検出信号を解析し、解析結果を必要に応じて表示装置等の外部装置に送信する。制御装置6は、プロセッサやメモリ、電池等により構成される。センサ100aを保持するベースプレート72上に、別体のトランスミッタ(図示しない)を取り付ける構成とした場合は、制御装置6の機能の一部をトランスミッタに保持させる。この場合、制御装置6の代わりに、ベースプレート72上にセンサ100aから延びる配線を設けて接点部とし、さらに、トランスミッタがこの接点部に接続する構成とすることができる。
【0067】
図1~
図4に示すように、本実施形態の制御装置6は、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入する際に、針部11及びセンサ100aと共に挿入方向A1に移動する。より具体的には、本実施形態の制御装置6は、針部11が待機位置(
図1参照)にある状態で、針部材2に保持されている。針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する際に、制御装置6は針部材2と共に挿入方向A1に移動する。針部11が挿入位置(
図3参照)に到達すると、制御装置6は、ハウジング4のベースプレート72と係合し、針部材2に保持された状態が解除される。これにより、制御装置6は、ベースプレート72上に保持される状態となる。そのため、針部11が生体外に抜去される際、すなわち、針部11が挿入位置から待機位置に戻る際に、針部材2は抜去方向A2に移動するが、制御装置6は、抜去方向A2に移動せず、ハウジング4のベースプレート72上に残される。
【0068】
本実施形態のセンサ100aは、係留部101が壁面部17に係留された状態で、針部11に保持される線状部材である。センサ100aとしては、被計測物質の量または濃度に応じた電気的信号を検出する部材を用いることができる。本実施形態のセンサ100aの延在部102は、係留部101が壁面部17に係留された状態で、収容空間13外の側壁部15の外周面上で、針部11の長手方向Aに沿って延在している。
【0069】
センサ100aは、横断面形状が円形のワイヤ電極からなる延在部102と、この延在部102の先端に設けられた係留部101と、からなる構成としてよい。ワイヤ電極は、開口部16において、針部11の収容空間13に配置される。ワイヤ電極の外径は、例えば0.02mm~0.2mmとすることができる。収容空間13には、例えば、作用電極及び参照電極の2本のワイヤ電極が配置されてよい。作用電極は、導電性表面を有する芯材をベースに構成され、芯材の外壁上に被計測物質を検出するよう構成された検出部100bと、芯材の外壁上が絶縁性の素材でコーティングされた保護部と、を備える構成としてよい。検出部100bにより、被計測物質に対する電気的特性の変化を検出することができる。検出部100bは、芯材表面にディッピング、電解重合、スパッタリング等の薄膜形成手段を用いて形成される。作用電極の表面には被計測物質と特異的に反応する試薬が塗布される。被計測物質がグルコースの場合、グルコースオキシダーゼやフェニルボロン酸化合物が含まれる試薬を用いる。参照電極は、上述の作用電極に対する参照電極として使用される。作用電極の周囲に参照電極や対極をコイル状に巻き付けて1本のワイヤ電極としてもよい。あるいは、収容空間13に3本のワイヤ電極を配置してもよい。その3本のワイヤ電極それぞれにより、作用電極、参照電極及び対極を構成してもよい。また、参照電極または対極として、針部11自体を利用してもよい。作用電極の検出部100bによって検出された被計測物質の情報は、制御装置6に送信される。
【0070】
次に、挿入装置1を用いてセンサ100aを生体内に挿入及び留置する際の針部11、移動部21及びセンサ100aの動作の詳細について説明する。
図7Aは、
図5のI-I断面図であり、針部11が待機位置(
図1参照)にある状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。
図7Bは、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する途中の状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。
図7Cは、針部11が挿入位置(
図3参照)にある状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。
図7Dは、針部11が挿入位置(
図3参照)でセンサ100aを留置した後にハウジング4内に戻る途中の状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。
図7B~
図7Dは、いずれも、
図7Aと同じ断面視の図である。
【0071】
図7Aに示すように、針部11が待機位置(
図1参照)にある状態では、センサ100aの係留部101が壁面部17に係留している。具体的には、センサ100aは、係留部101が溝19に差し込まれた状態であり、この状態で針部11に保持されている。
【0072】
図1~
図3に示すように、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3はいずれも挿入方向A1に移動する。更に、
図1~
図3に示すように、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3の長手方向Aの相対的な位置関係も変動する。つまり、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3はいずれも挿入方向A1に移動し、かつ、移動部材3が針部材2に対して挿入方向A1に近づくように相対的にも移動する。そのため、
図7Bに示すように、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する途中で、移動部材3の移動部21は、針部材2の針部11に対して、挿入方向A1に移動する。このとき、端面24が係留部101に接触する。移動部21が、針部11に対して更に挿入方向A1に移動すると、係留部101は、溝19から抜け、
図7Bに示すように、針部11に対して挿入方向Aに移動するとともに、壁面部17に沿って、針部11の径方向外側に移動する。
【0073】
移動部材3が、針部材2に対して相対的に移動することで、移動部材3が挿入方向A1に移動すると、
図7Cに示すように、係留部101の少なくとも一部が針部11の外周面よりも径方向Bの外側に突出し、突出した部分が生体組織に引っ掛かる。そして、移動部材3は、針部材2に対して、更に挿入方向A1に移動し、針部11が挿入位置まで挿入された状態(
図3参照)となる。その後、付勢部材5としてのコイルバネの復元力により、針部11は挿入位置(
図3参照)から再びハウジング4内に収容される位置(例えば
図1と同じ待機位置)に戻っていく。このとき、係留部101は、少なくとも一部が生体組織に引っ掛かっていることにより、開口部16から外部に脱離する。これにより、センサ100aが針部11から脱離する。このようにして、
図7Dに示すように、検出部100bが生体内に留置されたまま、針部11が移動部21と共に生体外に抜去される。
【0074】
以上のように、本実施形態の挿入装置1では、センサ100aが生体内の所定の深さに達した状態で、センサ100aが針部11から脱離される。そのため、センサ100aを生体内の所定の深さに留置させやすくなる。また、本実施形態の挿入装置1では、係留部101を側壁部15に係留させることにより、センサ100aを針部11に係留させている。そのため、接着剤を用いることなく、センサ100aを生体内の所定の深さに留置させることができる。
【0075】
上記実施形態において、針部11は、側壁部15の少なくとも一部に、センサ100aの少なくとも一部を収容する収容溝を有してもよい。
図9は、一変形例に係る挿入装置1の
図8と同じ位置での断面図であり、側壁部15が収容溝を有する場合の一例を示す図である。
図9に示すように、針部11は、側壁部15の少なくとも一部に、収容溝20を有してよい。収容溝20は、挿入方向A1に沿って延在し、
図9に示す例では、針部11の側壁部15の上側に、側壁部15の外周面から中心側に窪んだ凹部として形成されている。収容溝20は、例えば、側壁部15のうち、開口部16よりも抜去方向A2側にのみ設けられていてよい。収容溝20は、例えば、センサ100aの延在部102の一部を収容するように構成されている。収容溝20が設けられる場合、センサ100aの延在部102を、安定して針部11に収容することができる。
【0076】
(第2実施形態)
図10は、上述した挿入装置1とは別の第2実施形態としての挿入装置における、針部材2の針部11、移動部材3の移動部21、及び、センサ100aを示す斜視図である。第2実施形態に係る構成について、第1実施形態と同様の点については適宜説明を省略しながら、説明する。例えば、第2実施形態において、針部11及び移動部21の構成は、第1実施形態と同様であるため、その詳細な説明については省略する。また、開口部16の壁面部17における係留部101の係留の態様も、第1実施形態と同様であるため、その詳細な説明については省略する。本実施形態の挿入装置を第1実施形態の挿入装置1と区別しない場合は単に「挿入装置1」と記載し、
図1~
図7Dを適宜参照する。
【0077】
本実施形態では、
図10に示すように、センサ100aの少なくとも一部が、側壁部15の外周面に沿って螺旋状に巻かれている。具体的には、本実施形態では、センサ100aの延在部102が、側壁部15の外周面に沿って、挿入方向A1側から見て時計回りに螺旋状に巻かれている。
【0078】
次に、本実施形態における、挿入装置1を用いてセンサ100aを生体内に挿入及び留置する際の針部11、移動部21及びセンサ100aの動作の詳細について説明する。
図11Aは、
図10のIII-III断面図(すなわち、側面視の図)であり、針部11が待機位置(
図1参照)にある状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。
図11Bは、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する途中の状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。
図11Cは、針部11が挿入位置(
図3参照)にある状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。
図11Dは、針部11が挿入位置(
図3参照)でセンサ100aを留置した後にハウジング4内に戻る途中の状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。
図11B~
図11Dは、いずれも、
図11Aと同じ断面視の図である。
【0079】
図11Aに示すように、針部11が待機位置(
図1参照)にある状態では、センサ100aの係留部101が壁面部17に係留している。具体的には、センサ100aは、係留部101が溝19に差し込まれた状態であり、この状態で針部11に保持されている。
【0080】
図1~
図3に示すように、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3はいずれも挿入方向A1に移動する。更に、
図1~
図3に示すように、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3の長手方向Aの相対的な位置関係も変動する。つまり、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3はいずれも挿入方向A1に移動し、かつ、移動部材3が針部材2に対して挿入方向A1に近づくように相対的にも移動する。そのため、
図11Bに示すように、針部11が待機位置(
図1参照)から挿入位置(
図3参照)に移動する途中で、移動部材3の移動部21は、針部材2の針部11に対して、挿入方向A1に移動する。このとき、端面24が係留部101に接触する。移動部21が、針部11に対して更に挿入方向A1に移動すると、係留部101は、溝19から抜け、
図11Bに示すように、針部11に対して挿入方向Aに移動するとともに、壁面部17に沿って、針部11の径方向外側に移動する。
【0081】
移動部材3が針部材2に対して更に挿入方向A1に近づくように相対的に移動すると、
図11Cに示すように、係留部101の少なくとも一部が針部11の外周面よりも径方向Bの外側に突出し、突出した部分が生体に引っ掛かる。そして、移動部材3は、針部材2に対して更に挿入方向A1に近づくように相対的に移動し、針部11が挿入位置まで挿入された状態(
図3参照)となる。その後、付勢部材5としてのコイルバネの復元力により、針部11は挿入位置(
図3参照)から再びハウジング4内に収容される位置(例えば
図1と同じ待機位置)に戻っていく。このとき、係留部101は、少なくとも一部が生体に引っ掛かっていることにより、開口部16から外部に脱離する。これにより、センサ100aが針部11から脱離する。このようにして、
図11Dに示すように、センサ100aが生体内に留置されたまま、針部11が移動部21と共に生体外に抜去される。
【0082】
以上のように、本実施形態の挿入装置1では、センサ100aが生体内の所定の深さに達した状態で、センサ100aが針部11から離脱する。そのため、医療器具100を生体内の所定の深さに留置させやすくなる。また、本実施形態の挿入装置1では、係留部101を側壁部15に係留させることにより、センサ100aを針部11に係留させている。そのため、接着剤を用いることなく、センサ100aを生体内の所定の深さに留置させることができる。
【0083】
本開示に係る挿入装置は、上述した実施形態に示す具体的な構成・工程に限られず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示は挿入装置に関する。
【符号の説明】
【0085】
1:挿入装置
2:針部材
3:移動部材
4:ハウジング
5:付勢部材
6:制御装置
11:針部
12:保持部
13:収容空間
15:側壁部
16:開口部
16a:端部
16b:溝底
17:壁面部
18:規制部
19:溝
20:収容溝
21:移動部
22:本体部
23:切り欠き
23a:切り欠き端面
24:端面
25:受け溝
26:刃先
44:リブ
51:本体部
51a:保持開口
52:係止爪部
53:延在部
54:係合凸部
54a:上面
61:係合部
62:係合凹部
71:筒状部材
72:ベースプレート
72a:当接面
74:貫通孔
80:規制機構
100:医療器具
100a:センサ
100b:検出部
101:係留部
102:延在部
A:針部の長手方向
A1:挿入方向
A2:抜去方向
B:針部の径方向
BS:生体表面