(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/265 20180101AFI20241028BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20241028BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20241028BHJP
F21S 41/26 20180101ALI20241028BHJP
F21S 41/275 20180101ALI20241028BHJP
F21S 41/29 20180101ALI20241028BHJP
F21S 41/43 20180101ALI20241028BHJP
F21S 41/47 20180101ALI20241028BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20241028BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20241028BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241028BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241028BHJP
【FI】
F21S41/265
F21S41/143
F21S41/16
F21S41/26
F21S41/275
F21S41/29
F21S41/43
F21S41/47
F21V5/04 600
F21V5/04 650
F21W102:155
F21Y115:10
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021548889
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035552
(87)【国際公開番号】W WO2021060201
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019173250
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019173251
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】元辻 彩香
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0335191(US,A1)
【文献】特表2016-534503(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/265
F21S 41/143
F21S 41/16
F21S 41/26
F21S 41/275
F21S 41/29
F21S 41/43
F21S 41/47
F21V 5/04
F21W 102/155
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記複数の光学系が有する複数の前記入射側レンズ部には、焦点距離が異なる少なくとも2種以上の入射側レンズ部が含まれ、かつ、前記少なくとも2種以上の入射側レンズ部
間において、前記入射側レンズ部の有効口径は同一であり、
前記複数の光学系のうち少なくとも2以上の光学系はそれぞれ、前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部との間に遮光体を有しており、
前記少なくとも2以上の光学系間において、前記入射側レンズ部
の焦点距離が異なり、
かつ、前記遮光体
が同一形状を有する、
車両用灯具。
【請求項2】
前記複数の光学系
間において、複数の前記出射側レンズ部それぞれの形状は同一である、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記入射側レンズ部は、前記マイクロレンズアレイ毎に同一の形状を有しており、
複数の前記光学ユニットが有する複数の前記マイクロレンズアレイには、前記入射側レンズ部の焦点距離が異なる少なくとも2種以上のマイクロレンズアレイが含まれ、かつ、前記少なくとも2種以上のマイクロレンズアレイ間において前記入射側レンズ部の有効口径が同一であり、
前記少なくとも2種以上のマイクロレンズアレイそれぞれにおける少なくとも一部の光学系は、前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部との間に遮光体を有しており、
前記少なくとも2種以上のマイクロレンズアレイ間において、前記光学系が、同一形状の前記遮光体を有する、
車両用灯具。
【請求項4】
前記少なくとも2種以上のマイクロレンズアレイ間において前記出射側レンズ部の形状が同一である、
請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記一対に設けられた前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部は、共通の光軸上に設けられている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~2などにより、マイクロレンズアレイ(以下、「MLA」とも称する)を用いた車両用灯具が提案されている。特許文献1では、MLAに遮光体を設けて光源から出射された光の一部を遮ることにより、車両用灯具の配光パターンを形成することが提案されている。また、特許文献2では、有効口径の異なるマイクロレンズを複数用いることにより、配光パターンを形成することが提案されている。
【0003】
また、特許文献1では、MLAに遮光体を設けて光源から出射された光の一部を遮ることにより、所定のアスペクト比を有する投影像を形成することが提案されている。また、特許文献2では、MLAの有効口径が縦横方向のそれぞれで異なるように制御することにより、所定のアスペクト比を有する投影像を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特表2016-534503号公報
【文献】米国特許出願公開第2018/0335191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、新たな構成により所望の配光パターンを形成可能な車両用灯具を提供することを第一の課題とする。
【0006】
本開示は、新たな構成により所望のアスペクト比を有する投影像を形成可能な車両用灯具を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第一の課題を解決するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記複数の光学系が有する複数の前記入射側レンズ部には、焦点距離が異なる少なくとも2種以上の入射側レンズ部が含まれ、かつ、前記少なくとも2種以上の入射側レンズ部それぞれの有効口径は同一である。
【0008】
この構成によれば、所望の配光パターンを形成可能になる。
【0009】
また、上記第一の課題を解決するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記入射側レンズ部は、前記マイクロレンズアレイ毎に同一の形状を有しており、
複数の前記光学ユニットが有する複数の前記マイクロレンズアレイには、前記入射側レンズ部の焦点距離が異なる少なくとも2種以上のマイクロレンズアレイが含まれ、かつ、前記少なくとも2種以上のマイクロレンズアレイ間において前記入射側レンズ部の有効口径が同一である。
【0010】
この構成によれば、所望の配光パターンを形成可能になる。
【0011】
上記第二の課題を解決するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記複数の光学系は、前記入射側レンズ部の出射方向に直交する第1方向、及び、前記出射方向と前記第1方向とに直交する第2方向に沿って並列して一体化されており、
前記複数の光学系における複数の入射側レンズ部の各々は、
前記第1方向における有効口径が前記第2方向における有効口径よりも短く、かつ、
前記第1方向における焦点距離が前記第2方向における焦点距離よりも短い。
【0012】
この構成によれば、所望のアスペクト比を有する投影像を形成可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、新たな構成により所望の配光パターンを形成可能な車両用灯具を提供することができる。
【0014】
また、本開示の一態様によれば、新たな構成により所望のアスペクト比を有する投影像を形成可能な車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第一実施形態及び第三実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【
図2】マイクロレンズアレイを構成する光学系の分解斜視図である。
【
図3】第一実施形態に係る車両用灯具の構成を示す模式図である。
【
図4】第一実施形態に係る車両用灯具によって形成される配光パターンの模式図である。
【
図5A】本開示の車両用灯具に適用可能なプライマリレンズの一例である。
【
図5B】本開示の車両用灯具に適用可能なプライマリレンズの一例である。
【
図5C】本開示の車両用灯具に適用可能なプライマリレンズの一例である。
【
図5D】本開示の車両用灯具に適用可能なプライマリレンズの一例である。
【
図6】第二実施形態に係る車両用灯具の構成を示す模式図である。
【
図7】本開示の車両用灯具によって形成可能な配光パターンの一例である。
【
図8A】第三実施形態の車両用灯具の鉛直面における構成を示す模式図である。
【
図8B】第三実施形態の車両用灯具の水平面における構成を示す模式図である。
【
図9】第三実施形態の車両用灯具によって形成される投影像の模式図である。
【
図10】第三実施形態の変形例におけるマイクロレンズアレイの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る車両用灯具の実施の形態の例を、図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、異なる図面であっても同一又は相当の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0017】
なお、本明細書において、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」とは、本開示に係る車両用灯具について、説明の便宜上、設定された相対的な方向である。「前後方向」とは、「前方向」および「後方向」を含む方向である。「左右方向」とは、「左方向」および「右方向」を含む方向である。「上下方向」とは、「上方向」および「下方向」を含む方向である。
【0018】
本開示に係る車両用灯具を車両用前照灯として用いる場合、車両用灯具における「前後方向」、「左右方向」、及び「上下方向」は、車両における「前後方向」、「左右方向」、及び「上下方向」とそれぞれ一致する。なお、以下の説明において、「左右方向」を「水平方向」と称することもある。同様に、「上下方向」を「垂直方向」と称することもある。また、本明細書では、車両用灯具の水平方向における構成を主に説明するが、水平方向における各構成は、垂直方向においても適用可能である。
【0019】
[第一実施形態]
図1は、本開示の第一実施形態に係る車両用灯具10の水平断面図である。
図1に示すように、車両用灯具10は、ランプボディ11及び透光カバー12によって形成される灯室内に、光源20と、プライマリレンズ30と、マイクロレンズアレイ40と、を備えた構成となっている。
【0020】
光源20は、ランプボディ11によって支持される基板21に搭載された状態で、前方向へ向けて配置されている。光源20から出射される光は、プライマリレンズ30及びマイクロレンズアレイ40を通過して、車両用灯具10の前方向へと出射される。
【0021】
光源20は、例えば、白色発光ダイオード又は半導体レーザである。光源20は、例えば、矩形状(例えば、正方形や長方形)の発光面を有している。発光面の形状として長方形を採用した場合、車両用灯具に適した横長の配光パターンを形成することが容易になる。
【0022】
プライマリレンズ30は、光源20に対して第1焦点距離f1を有する第1部位31aと、光源20に対して第1焦点距離f1よりも長い第2焦点距離f2を有する第2部位31b及び31cとを有している。これらの焦点距離の違いにより、第1部位31aからマイクロレンズアレイ40へ向けて出射される平行光と、第2部位31b及び31cからマイクロレンズアレイ40へ向けて出射される平行光とでは、マイクロレンズアレイ40を介して投影される投影像の投影画角が異なることになる。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。プライマリレンズ30における光源20に対する焦点距離が小さいほど、投影画角が大きくなる。
【0023】
なお、後述するように、車両用灯具10は、マイクロレンズアレイ40の作用によって、所望の配光パターンを形成可能である。プライマリレンズ30の上記構成および以下で説明する構成は、好ましい構成であって、必須の構成ではない。例えば、プライマリレンズ30として、光源に対する焦点距離fがレンズ内で変化せずに一定のコリメートレンズ(例えば、アプラナートレンズ)を用いてもよい。
【0024】
プライマリレンズ30は、光源20に対する焦点距離(以下、「焦点距離f」とも称する)がレンズ内で変化するコリメートレンズである。プライマリレンズ30は、例えば、3種類以上の焦点距離fを有する構成であってもよい。また、プライマリレンズ30は、焦点距離fが光軸Ax1からの距離等に応じて連続的に変化するよう構成してもよいし、不連続的に変化するよう構成してもよい。プライマリレンズ30の各部位における焦点距離fは、例えば、その部位と光源20との距離に応じたものとすることが好ましい。プライマリレンズ30は、光源20に近接して配置されていてもよく、光源20から一定の距離を置いて配置されていてもよい。
【0025】
プライマリレンズ30は、光源20からの光を入射させる入射面32a~32cと、入射面32a~32cから入射した光をマイクロレンズアレイ40へ向けて出射させる出射面33とを備えている。プライマリレンズ30の形状は、特に制限はされないが、例えば、後方視において円形状である。プライマリレンズ30は、出射面33の外周部に形成されるフランジ部34において、ランプボディ11に支持される。
【0026】
入射面32aは、光源20の発光中心を通るようにして前後方向に延びる光軸Ax1を中心とする回転曲面で構成されている。入射面32aから入射する光は、例えば、入射面32aにおいて屈折し、光軸Ax1に略平行な光となって、出射面33から出射される。
【0027】
入射面32bから入射する光は、例えば、光軸Ax1から離れる方向に向けて進んだ後、第2部位31bの周辺領域において全反射によって内面反射し、光軸Ax1と略平行な光となって、出射面33から出射される。入射面32cから入射する光も、上記と同様である。
【0028】
出射面33は、光軸Ax1と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されている。出射面33は、例えば、入射面32a~32cから入射した光を光軸Ax1と平行な光としてマイクロレンズアレイ40へ向けて出射する。
【0029】
マイクロレンズアレイ40は、複数の光学系によって構成されている。
図2は、マイクロレンズアレイ40を構成する光学系44の分解斜視図である。
図2に示す光学系44は、光軸Ax2を有する入射側レンズ部41と、光軸Ax2’を有する出射側レンズ部42と、遮光板43とを備えている。光軸Ax2と光軸Ax2’は一致してもよいし、ずれていてもよい。光軸Ax2と光軸Ax2’は一致している場合(光軸が共通の場合)、マイクロレンズアレイ40の設計が容易になる。光軸Ax2と光軸Ax2’は、
図1に示す光軸Ax1に略平行である。
【0030】
入射側レンズ部41は、プライマリレンズ30の出射面33から出射された光が入射する部位であり、例えば、出射面33に対向する面が凸曲面を有するように形成されている。一方で、入射側レンズ部41における出射側レンズ部42と対向する面は、光軸Ax2と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されている。
【0031】
入射側レンズ部41の垂直方向における長さ(有効口径)avと、水平方向における長さ(有効口径)ahとは、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。車両用灯具に適した横長の配光パターンを形成することを容易にするという観点からは、長さavよりも長さahを長くすることが好ましい。
【0032】
遮光板43は、入射側レンズ部41と出射側レンズ部42との間に設けられている。遮光板43は、投影像の形状を規定するものであり、例えば、カットオフラインを形成するものである。遮光板43は、開口部43aと、遮光部43bとを有している。入射側レンズ部41に入射した光は、その一部が遮光部43bによって遮られる。遮られなかった光は、開口部43aを通過して、出射側レンズ部42から前方向へと出射される。
【0033】
マイクロレンズアレイ40を構成する複数の光学系44のうちの一部は、遮光板43を有していなくてもよい。また、カットオフラインを必要としない場合等は、マイクロレンズアレイ40は、遮光板43を有さないように構成してもよい。また、マイクロレンズアレイ40は、入射側レンズ部41と出射側レンズ部42との間に、光源20から出射された光の色を変更するためのカラーフィルタを備えていてもよい。
【0034】
また、複数の光学系44それぞれが遮光板43を有する場合、各遮光板43の形状は、異なっていてもよいし、同一の形状であってもよい。各遮光板43の形状を同一の形状とした場合、マイクロレンズアレイの製造難度や製造コストを過度に上昇させることなく、ロービーム用の配光パターン等を形成することが容易になる。
【0035】
出射側レンズ部42は、入射側レンズ部41から入射した光を前方向へ向けて出射する部位である。出射側レンズ部42における前方向側の面は、凸曲面を有するように形成されている。一方で、出射側レンズ部42における後方向側の面(入射側レンズ部41と対向する面)は、光軸Ax2’と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されている。
【0036】
入射側レンズ部41と、出射側レンズ部42とは、互いに対向する面同士が同一形状を有するように構成されている。入射側レンズ部41と、出射側レンズ部42とは、互いの間に遮光板43を挟んだ状態で一体化されている。
【0037】
図1に示すマイクロレンズアレイ40は、上記の光学系44を複数備えており、各々の光学系44が光軸Ax1に交差する方向に隣接して並んだ状態(例えば、左右方向および上下方向に並んだ状態)で一体化したアレイ状の構造を有している。マイクロレンズアレイ40の形状は、特に制限はされないが、例えば、後方視において矩形状または円形状である。
【0038】
図1では示していないが、本実施形態において、光学系44における入射側レンズ部41の入射側焦点距離f’は、その光学系44の位置に応じて異なっている。以下、この点について、
図3を用いて詳述する。
【0039】
図3は、第一実施形態に係る車両用灯具10の構成を示す模式図である。
図3に示すように、マイクロレンズアレイ40は、入射側レンズ部41a及び出射側レンズ部42aを有する光学系(想像線L1の左方向側の部分)と、入射側レンズ部41b及び出射側レンズ部42bを有する光学系(想像線L1及びL2の間の部分)と、入射側レンズ部41c及び出射側レンズ部42cを有する光学系(想像線L2の右方向側の部分)と、を備えている。なお、
図3では遮光板を図示していないが、マイクロレンズアレイ40は、上述した遮光板43を備えていてもよい。
【0040】
入射側レンズ部41a~41cの各入射面の曲率半径は、小さい順から、入射側レンズ部41a~41cとなっている。すなわち、入射側レンズ部41aの入射側焦点距離f’が最も小さく、入射側レンズ部41bの入射側焦点距離f’が次に大きく、入射側レンズ部41cの入射側焦点距離f’が最も大きい。これらの入射側焦点距離f’の違いにより、車両用灯具10の前方へと投影される投影像の投影画角を異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部41の入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0041】
一方で、入射側レンズ部41aの有効口径ah1、入射側レンズ部41bの有効口径ah2、及び入射側レンズ部41cの有効口径ah3の大きさは、互いに略等しくなっている。本実施形態に係る車両用灯具10によれば、各入射側レンズ部41の有効口径を変えなくとも所望の配光パターンを形成可能になるので、マイクロレンズアレイ40のサイズが大きくなることを抑制でき、省スペース性に寄与できる。
【0042】
また、出射側レンズ部42a~42cそれぞれの形状は同一である。すなわち、出射側レンズ部42a~42cの各有効口径の大きさは、互いに略等しくなっている。同様に、出射側レンズ部42a~42cの各出射面の曲率半径も、互いに略等しくなっている。このような構成により、マイクロレンズアレイ140を製造し易くし、製造コストを抑えることを可能にしている。
【0043】
図4は、第一実施形態に係る車両用灯具10によって形成される配光パターンの模式図である。
図4に示す領域Z1は、入射側レンズ部41cを通過した光が照射される領域である。領域Z2は、入射側レンズ部41cを通過した光、および入射側レンズ部41bを通過した光が照射される領域である。領域Z3は、入射側レンズ部41cを通過した光、入射側レンズ部41bを通過した光、および入射側レンズ部41aを通過した光が照射される領域である。なお、
図4に示す配光パターンは、遮光板43の影響を考慮しない場合のものである。
【0044】
車両用灯具10において、例えば、マイクロレンズアレイ40を更に複数種類の入射側焦点距離f’を有するものにしたり、マイクロレンズアレイ40における各光学系の配置を変更したりすることで、更に多様な配光パターンを形成することも可能である。
【0045】
図5A~
図5Dは、本開示の車両用灯具10に適用可能なプライマリレンズの一例である。
図5Aに示すプライマリレンズ50は、いわゆるフレネルレンズである。プライマリレンズ50は、部位51a(想像線L3及びL4の間の部位)の焦点距離fが、部位51b(想像線L4及びL5の間の部位)及び部位51c(想像線L2及びL3の間の部位)の焦点距離fよりも短いレンズである。
【0046】
図5Bに示すプライマリレンズ60は、部位61a(想像線L3及びL4の間の部位)の焦点距離fが、部位61b(想像線L4及びL5の間の部位)及び部位61c(想像線L2及びL3の間の部位)の焦点距離fよりも長いレンズである。
【0047】
図5Cに示すプライマリレンズ70では、焦点距離fが短い順に、部位71a(想像線L3及びL4の間の部位)、部位71b(想像線L4及びL5の間の部位)及び部位71c(想像線L2及びL3の間の部位)、部位71d(想像線L5の下の部位)及び部位71e(想像線L2の上の部位)となっている。
【0048】
図5Dに示すプライマリレンズ80は、いわゆるアプラナートレンズであり、光源に対する焦点距離fがレンズ内で変化せずに一定のコリメートレンズである。
【0049】
[第二実施形態]
本開示の第二実施形態に係る車両用灯具は、複数の光学ユニットから構成される。
図6は、第二実施形態に係る車両用灯具110の一部の構成を示す模式図である。
図6に示すように、車両用灯具110は、光学ユニット90a~90cを備えている。光学ユニット90aは、光源20aと、プライマリレンズ50aと、マイクロレンズアレイ140aとを光軸Ax3上に備えている。光学ユニット90bは、光源20bと、プライマリレンズ50bと、マイクロレンズアレイ140bとを光軸Ax4上に備えている。光学ユニット90cは、光源20cと、プライマリレンズ50cと、マイクロレンズアレイ140cとを光軸Ax5上に備えている。
【0050】
光源20a~20cは、第一実施形態における光源20と同様の構成を採用できる。光源20a~20cは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。プライマリレンズ50a~50cは、
図5Aに示すフレネルレンズである。プライマリレンズ50a~50cは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0051】
マイクロレンズアレイ140aを構成する各光学系は、全て同一である。すなわち、マイクロレンズアレイ140aの入射面は、1種類の入射側レンズ部141aで構成されており、各入射側レンズ部141aの入射側焦点距離f’及び有効口径ah4は等しい。同様に、マイクロレンズアレイ140b及び140cも、それぞれ1種類の光学系により構成されている。
【0052】
一方で、マイクロレンズアレイ140a~140c間で比較すると、それらを構成する各光学系は、入射側レンズ部141a~141cの入射側焦点距離f’が異なっている。入射側レンズ部141a~141cにおける各入射面における曲率半径は、小さい順から、入射側レンズ部141a~141cとなっている。すなわち、入射側レンズ部141aの入射側焦点距離f’が最も小さく、入射側レンズ部141bの入射側焦点距離f’が次に大きく、入射側レンズ部141cの入射側焦点距離f’が最も大きい。これらの入射側焦点距離f’の違いにより、車両用灯具110の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット90a~90c毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部141の入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0053】
また、出射側レンズ部142a~142cそれぞれの形状は同一である。すなわち、出射側レンズ部142a~142cの各有効口径の大きさは、互いに略等しくなっている。同様に、出射側レンズ部142a~142cの各出射面の曲率半径も、互いに略等しくなっている。このような構成により、マイクロレンズアレイ140を製造し易くし、製造コストを抑えることを可能にしている。
【0054】
なお、
図6では遮光板を図示していないが、各マイクロレンズアレイ140a~140cは、遮光板を備えていてもよい。また、上記で説明していない構成については、第一実施形態で説明した内容を矛盾が生じない範囲で適宜採用することができる。
【0055】
図7は、本開示の車両用灯具10又は110によって形成可能な配光パターンの一例である。
図7は、具体的には、車両用灯具10又は110を車両用の前照灯に適用し、当該前照灯からの照射光によって形成したロービーム用配光パターンPtを示した図である。
【0056】
ロービーム用配光パターンPtは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁にカットオフラインCL1及びCL2を有している。具体的には、前照灯の正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線よりも右側の対向車線側部分が水平方向のカットオフラインCL1として形成され、V-V線よりも左側の自車線側部分が斜め方向のカットオフラインCL2として形成されている。また、両者の交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。
【0057】
ロービーム用配光パターンPtにおける領域Z1は、例えば、投影画角が最も大きい光によって照射される部分であり、領域Z2及びZ3よりも光度が低い。領域Z2は、例えば、投影画角が最も大きい光および投影画角が二番目に大きい光によって照射される部分であり、Z3よりも光度が低い。領域Z3は、例えば、投影画角が最も大きい光、投影画角が二番目に大きい光、及び投影画角が最も小さい光によって照射される部分であり、各領域の中で最も光度が高い。
【0058】
[第三実施形態]
本開示の第三実施形態に係る車両用灯具10の水平断面図は、
図1に示すものと同様であってよい。本開示の第三実施形態において、マイクロレンズアレイ40を構成する光学系44の分解斜視図は、
図2に示すものと同様であってよい。以下、第三実施形態に係る車両用灯具10について説明するが、第一実施形態において説明した事項については適宜省略する。
【0059】
入射側レンズ部41の上下方向(垂直方向)における有効口径(長さ)avは、左右方向(水平方向)における有効口径(長さ)ahよりも短い。また、入射側レンズ部41の上下方向における入射側焦点距離f’は、左右方向における入射側焦点距離f’よりも短い。これらの構成については、後の段落にて
図8A及び8Bを用いて詳述する。
【0060】
マイクロレンズアレイ40を構成する複数の光学系44は、同一のものであってもよいし、異なるものを含んでいてもよい。例えば、複数の光学系44における複数の入射側レンズ部41は、全て同一の形状(上下方向および左右方向のそれぞれにおける有効口径および曲率半径が同一)であってもよいし、異なる形状(上下方向および左右方向のそれぞれにおける有効口径および曲率半径のうち1以上の要素が異なる)のものを含んでいてもよい。
【0061】
なお、複数の入射側レンズ部41が互いに異なる形状のものを含む場合、複数の入射側レンズ部41は、例えば、上下方向の有効口径および左右方向の有効口径のどちらかが全て同一であることが好ましく、上下方向の有効口径が全て同一であることがより好ましい。このような構成により、マイクロレンズアレイ40を製造し易くなる。
【0062】
図8Aは、第三実施形態の車両用灯具10の鉛直面における構成を示す模式図である。
図8Bは、第三実施形態の車両用灯具10の水平面における構成を示す模式図である。
図8A及び
図8Bに示すように、マイクロレンズアレイ40を構成する各入射側レンズ部41は、上下方向(垂直方向)と左右方向(水平方向)とにおいて、有効口径および入射面の曲率半径が異なっている。具体的には、マイクロレンズアレイ44を構成する複数の入射側レンズ部41の各々において、左右方向の有効口径ah11が、上下方向の有効口径av11よりも大きくなっている。また、入射側レンズ部41の各々において、左右方向の曲率半径が、上下方向の曲率半径よりも大きくなっている。すなわち、入射側レンズ部41の入射側焦点距離f’は、上下方向よりも左右方向において大きくなっている。
【0063】
本実施形態においては、これらの構成により、車両用灯具10の前方へと投影される投影像の投影画角を、上下方向と左右方向とで異ならせている。具体的には、有効口径が大きいほど投影画角が大きくなるので、左右方向では上下方向よりも投影画角が大きくなる。同様に、入射側焦点距離f’が大きいほど投影画角が大きくなるので、左右方向では上下方向よりも投影画角が大きくなる。よって、有効口径および入射側焦点距離f’のどちらか一方のみで投影画角を制御するよりも、所望のアスペクト比を有する投影像を形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を高めることが可能になっている。
【0064】
出射側レンズ部42の上下方向および左右方向におけるそれぞれの有効口径は、当該出射側レンズ部42とともに光学系44を形成する入射側レンズ部41の各有効口径と略等しい。出射側レンズ部42の出射側焦点距離は、特に制限されず、車両用灯具10における他の構成に応じて、適宜決定することができる。なお、
図8A及び
図8Bでは遮光板43を図示していないが、マイクロレンズアレイ40は、上述した遮光板43を備えていてもよい。
【0065】
図9は、第三実施形態の車両用灯具10によって形成される投影像の模式図である。領域Z11は、車両用灯具10によって形成される投影像が投影される領域である。
図9に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10によれば、鉛直方向に通るV-V線の方向よりも、水平方向に通るH-H線の方向の方に広がった投影像が容易に形成可能である。なお、得られる投影像のアスペクト比は、垂直方向と水平方向とにおいて、入射側レンズ部41の有効口径および/または入射側焦点距離f’を調整することで変更可能である。
【0066】
図5A~
図5Dに示した各レンズは、第三実施形態の車両用灯具10のプライマリレンズとしても適用可能である。
【0067】
[第三実施形態の変形例]
以下、第三実施形態の車両用灯具10の変形例を説明する。
図10は、本変形例におけるマイクロレンズアレイ240の構成を示す模式図である。
図10は、具体的には、マイクロレンズアレイ240を光源20側から視た場合の模式図である。本変形例では、マイクロレンズアレイ40に代えて、
図10に示すマイクロレンズアレイ240を用いる。その他の構成は、第三実施形態と同一の構成を採用できるため、以下では、マイクロレンズアレイ240についてのみ説明する。
【0068】
マイクロレンズアレイ240は、複数種類の形状の光学系244(光学系244a~d)から構成されている。マイクロレンズアレイ240の中央部(光軸Ax1の近傍)には、左右方向の有効口径ahが最も大きい入射側レンズ部を有する光学系244aが配置されている。光学系244aの周囲には、左右方向の有効口径ahが2番目に大きい入射側レンズ部を有する光学系244b及び244cが配置されている。また、光学系244cの上部には、左右方向の有効口径ahが最も小さい入射側レンズ部を有する光学系244dが配置されている。なお、光学系244bと光学系244cとは、同一形状のものである。
【0069】
一般的に、光軸Ax1近傍の焦点距離が短いプライマリレンズを用いた場合、光軸Ax1の近傍ではクロストークが発生し易く、光軸Ax1から離れるにつれてクロストークが発生しにくくなる。本変形例では、クロストークが発生し易い光軸Ax1の近傍に、左右方向の有効口径ahが最も大きい入射側レンズ部を有する光学系244aを配置することで、左右方向におけるクロストークを抑制し易くしている。また、光軸Axから離れるにつれ、そこに配置される光学系244の入射側レンズ部の有効口径ahが小さくなるように構成しているので、左右方向におけるクロストークを抑制しつつ、マイクロレンズアレイ240を小型化することが可能である。さらに、上記のような有効口径ahの違いにより、配光パターンを形成することも可能になっている。
【0070】
また、光学系244a~244dのそれぞれを構成する入射側レンズ部の各々における上下方向の有効口径avは、全て略同一になっている。このような構成により、マイクロレンズアレイ240を製造し易くすることができる。
【0071】
なお、マイクロレンズアレイ240における上記以外の構成は、第三実施形態と同一の構成を採用できる。例えば、光学系244a~244dの各々において、入射側レンズ部の上下方向の有効口径avは左右方向の有効口径ahよりも短く、かつ、入射側レンズ部の上下方向の入射側焦点距離f’は左右方向の入射側焦点距離f’よりも短くなっている。
【0072】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0073】
本出願は、2019年9月24日出願の日本特許出願2019-173250号、及び日本特許出願2019-173251号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。